IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリオン機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-発電システムおよび燃料供給システム 図1
  • 特開-発電システムおよび燃料供給システム 図2
  • 特開-発電システムおよび燃料供給システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019610
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】発電システムおよび燃料供給システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20250131BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20250131BHJP
   H01M 8/04119 20160101ALI20250131BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/0606
H01M8/04119
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123304
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】高井 希紗
(72)【発明者】
【氏名】北條 芙美
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】竹前 昭宏
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC18
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA33
5H127BA55
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB37
5H127EE20
5H127EE23
(57)【要約】
【課題】発電コストを十分に低減し得る発電システムおよび燃料供給システムを提供する。
【解決手段】水素タンク20から排出される第2の気体をセパレータ12に供給する配管5a~5cと、セパレータ12を通過させられた第2の気体に含まれている水分を分離させる気液分離槽6と、水素タンク20から排出される第2の気体の通過によって導入口8dから気体を吸気して水素タンク20から排出される第2の気体に合流可能に配管5a,5c間に配設されたエジェクター8と、気液分離槽6において水分を分離された第2の気体をエジェクターの導入口8dに案内する配管7とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤を含む第1の気体が通過させられる第1のセパレータ、水素を含む第2の気体が通過させられる第2のセパレータ、および当該第1のセパレータと当該第2のセパレータとの間に配設される当該膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物が積層されて一体化されると共に当該膜電極接合体を介して当該第1の気体と当該第2の気体とを反応させて発電可能に構成された発電用セルを備えた発電システムであって、
前記第2の気体が貯蔵された貯蔵部から排出される当該第2の気体を前記第2のセパレータに供給する第1の配管と、
前記第2のセパレータを通過させられた前記第2の気体に含まれている水分を分離させる分離装置と、
前記貯蔵部から排出される前記第2の気体の通過によって吸気ポートから気体を吸気して当該貯蔵部から排出される当該第2の気体に合流可能に前記第1の配管に配設されたエジェクターと、
前記分離装置において水分を分離された前記第2の気体を前記エジェクターの前記吸気ポートに案内する第2の配管とを備えている発電システム。
【請求項2】
酸化剤を含む第1の気体が通過させられる第1のセパレータ、水素を含む第2の気体が通過させられる第2のセパレータ、および当該第1のセパレータと当該第2のセパレータとの間に配設される当該膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物が積層されて一体化されると共に当該膜電極接合体を介して当該第1の気体と当該第2の気体とを反応させて発電可能に構成された発電用セルに対して当該第2の気体を供給可能に構成された燃料供給システムであって、
前記第2の気体を貯蔵する貯蔵部と、
前記貯蔵部から排出される前記第2の気体を前記第2のセパレータに供給する第1の配管と、
前記第2のセパレータを通過させられた前記第2の気体に含まれている水分を分離させる分離装置と、
前記貯蔵部から排出される前記第2の気体の通過によって吸気ポートから気体を吸気して当該貯蔵部から排出される当該第2の気体に合流可能に前記第1の配管に配設されたエジェクターと、
前記分離装置において水分を分離された前記第2の気体を前記エジェクターの前記吸気ポートに案内する第2の配管とを備えている燃料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤を含む第1の気体と水素を含む第2の気体との反応によって発電可能に構成された発電システム、および発電システムの発電用セルに第2の気体を供給可能に構成された燃料供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献には、燃料電池スタックと、燃料電池スタックに対して水素ガスを燃料として供給する燃料供給系とを備えて構成された燃料電池システムが開示されている。この場合、燃料供給系(水素タンク)は、水素供給管によって燃料電池スタックにおけるアノード側の導入口に接続されている。また、水素供給管には、水素タンクからの水素ガスの供給/停止を切り替えるメインバルブ、水素の圧力を調整する減圧バルブ(レギュレータ)、水素ガスの供給量を調整するインジェクタ、およびインジェクタから噴射された水素ガスの圧力を測定する圧力センサなどが配設されている。
【0003】
また、燃料電池スタックにおけるアノード側の排出口には、排気(未反応水素ガスと水との混合物)を水素ガスと水とに分離する気液分離器が接続されている。この気液分離器には排気排水バルブを介して排気排水管が接続されており、排気排水バルブが開状態に制御されることによって、気液分離器内に貯留されている水(排気から分離された水)が不純物を含むガスと共に排気排水管に排出される構成が採用されている。また、気液分離器には、分離された水素ガスを水素供給管に戻す(水素タンクから燃料電池スタックに供給される水素ガスに合流させる)ための循環流路が接続されており、循環流路には、気液分離器から水素供給管に水素ガスを圧送する水素ポンプが配設されている。
【0004】
この燃料電池システムでは、メインバルブが開状態に制御されることで水素タンクからの水素ガスの供給が開始され、この水素ガスが減圧バルブによって圧力調整された後にインジェクタから噴射されて燃料電池スタックにおけるアノード側に供給される。この際には、制御部が、圧力センサによる測定結果に応じてインジェクタを制御することで燃料電池スタック(アノード側)に対する水素ガスの供給量が調整される。
【0005】
また、燃料電池スタック(アノード側)から排出された排気は、気液分離器において水素ガスと水とに分離される。ここで、分離された水は、気液分離器内に貯留され、排気排水バルブが開状態に制御されたときに不純物を含むガスと共に排気排水管に排出される。また、分離された水素ガスは、水素ポンプによって循環流路を介して水素供給管に圧送される。これにより、水素タンクから燃料電池スタックに供給されている水素ガスに対して、気液分離器において分離された水素ガスが合流させられるため、発電に寄与しなかった未反応の水素ガスが燃料の一部として再利用されて水素ガスの消費量が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2023-038620号公報(第4-11頁、第1-7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献に開示の燃料電池システムには、以下のような解決すべき問題点が存在する。具体的には、上記の燃料電池システムでは、燃料供給系(水素タンク)から水素供給管を介して燃料電池スタック(アノード側)に水素ガスが供給されて発電が行われると共に、燃料電池スタックからの排気(未反応水素ガスと水との混合物)が気液分離器において水素ガスと水とに分離され、分離された水素ガスが循環流路を介して水素供給管中の水素ガスに合流されて再利用される構成が採用されている。
【0008】
この場合、この燃料電池システムでは、気液分離器において分離された水素ガスを水素ポンプによって水素供給管に圧送する構成が採用されている。つまり、この燃料電池システムでは、発電に寄与しなかった水素ガスを回収して再利用することで水素ガスの消費量が低減されるものの、回収した水素ガスを水素供給管に戻すための水素ポンプによって電力が消費されており、これに起因して、発電コストの低減が困難となっているという問題点がある。また、水素ポンプの価格も高額であるため、この点においても、発電コストの低減が一層困難となっている。
【0009】
本発明は、かかる解決すべき問題点に鑑みてなされたものであり、発電コストを十分に低減し得る発電システムおよび燃料供給システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の発電システムは、酸化剤を含む第1の気体が通過させられる第1のセパレータ、水素を含む第2の気体が通過させられる第2のセパレータ、および当該第1のセパレータと当該第2のセパレータとの間に配設される当該膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物が積層されて一体化されると共に当該膜電極接合体を介して当該第1の気体と当該第2の気体とを反応させて発電可能に構成された発電用セルを備えた発電システムであって、前記第2の気体が貯蔵された貯蔵部から排出される当該第2の気体を前記第2のセパレータに供給する第1の配管と、前記第2のセパレータを通過させられた前記第2の気体に含まれている水分を分離させる分離装置と、前記貯蔵部から排出される前記第2の気体の通過によって吸気ポートから気体を吸気して当該貯蔵部から排出される当該第2の気体に合流可能に前記第1の配管に配設されたエジェクターと、前記分離装置において水分を分離された前記第2の気体を前記エジェクターの前記吸気ポートに案内する第2の配管とを備えている。
【0011】
請求項2記載の燃料供給システムは、酸化剤を含む第1の気体が通過させられる第1のセパレータ、水素を含む第2の気体が通過させられる第2のセパレータ、および当該第1のセパレータと当該第2のセパレータとの間に配設される当該膜電極接合体を少なくとも含む平板状の複数の被積層物が積層されて一体化されると共に当該膜電極接合体を介して当該第1の気体と当該第2の気体とを反応させて発電可能に構成された発電用セルに対して当該第2の気体を供給可能に構成された燃料供給システムであって、前記第2の気体を貯蔵する貯蔵部と、前記貯蔵部から排出される前記第2の気体を前記第2のセパレータに供給する第1の配管と、前記第2のセパレータを通過させられた前記第2の気体に含まれている水分を分離させる分離装置と、前記貯蔵部から排出される前記第2の気体の通過によって吸気ポートから気体を吸気して当該貯蔵部から排出される当該第2の気体に合流可能に前記第1の配管に配設されたエジェクターと、前記分離装置において水分を分離された前記第2の気体を前記エジェクターの前記吸気ポートに案内する第2の配管とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発電システム、および請求項2記載の燃料供給システムでは、貯蔵部から排出される第2の気体を第2のセパレータに供給する第1の配管と、第2のセパレータを通過させられた第2の気体に含まれている水分を分離させる分離装置と、貯蔵部から排出される第2の気体の通過によって吸気ポートから気体を吸気して貯蔵部から排出される第2の気体に合流可能に第1の配管に配設されたエジェクターと、分離装置において水分を分離された第2の気体をエジェクターの吸気ポートに案内する第2の配管とを備えている。
【0013】
したがって、請求項1記載の発電システム、および請求項2記載の燃料供給システムによれば、貯蔵部から排出される未反応の第2の気体(水素)を回収して再利用することで、発電のための水素の消費量を十分に低減することができるだけでなく、貯蔵部から排出されている第2の気体に対して回収した第2の気体を合流させるためのポンプ等が不要となり、合流させるための電力の消費も生じないことから、発電コストを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】発電システム1の構成を示す構成図である。
図2】エジェクター8の構成について説明するための説明図である。
図3】加湿器30の構成について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、燃料供給装置および発電システムの実施の形態について説明する。
【0016】
図1に示す発電システム1は、発電用の気体(「酸化剤を含む第1の気体」の一例である空気(大気:酸素)、および「水素を含む第2の気体」の一例である水素ガス)を反応させることで電力を生じさせることができるように構成されている。具体的には、発電システム1は、ポンプ2、配管3a~3c、気液分離槽4、配管5a~5d、気液分離槽6、配管7、エジェクター8、配管9a,9b、燃料電池セル10、水素タンク20および加湿器30を備えている。なお、本例の発電システム1では、水素タンク20、配管5bおよび加湿器30を除く各構成要素によって「第1の気体と第2の気体とを反応させて発電可能に構成された発電用セルを備えた発電システム」が構成されると共に、ポンプ2、配管3a~3cおよび燃料電池セル10を除く各構成要素によって「発電用セルに対して第2の気体を供給可能に構成された燃料供給システム」が構成されている。
【0017】
この場合、燃料電池セル10は、「発電用セル」の一例であって、「第1のセパレータ」の一例であるセパレータ11、「第2のセパレータ」の一例であるセパレータ12、および「膜電極接合体」の一例であるMEA13からなる発電用スタックや、冷却用の流体(空気や冷却液)を通過させるためのセパレータ(図示せず)、および各積層物の積層方向における両端に配設されたエンドプレート(図示せず)などを備えている。なお、この例では、セパレータ11,12、MEA13、冷却用のセパレータ、およびエンドプレートなどの各板体が「平板状の複数の被積層物」に相当し、これらが積層されて一体化されることで燃料電池セル10が構成されている。
【0018】
また、セパレータ11には、空気(大気)を通過させるための溝部(図示せず)が形成されると共に、セパレータ12には、水素ガスを通過させるための溝部(図示せず)が形成され、両セパレータ11,12の間にMEA13が挟み込まれるようにしてこれらが積層されることにより、セパレータ11の溝部およびMEA13の一面によって空気流路11cが構成されると共に、セパレータ12の溝部およびMEA13の他の一面によって水素流路12cが構成されている。また、MEA13は、電解質膜、触媒層およびガス拡散層などを備えて構成されている。なお、実際の燃料電池セル10は、発電システム1に求められる発電能力に応じて、上記の発電用スタックや冷却用のセパレータを複数備えて構成されるが、発電システム1の構成およびその動作に関する理解を容易とするために1つの発電用スタックのみを図示すると共に、冷却用のセパレータやエンドプレートについての図示および説明を省略する。
【0019】
また、水素タンク20は、「第2の気体が貯蔵された貯蔵部」の一例であって、別所で生成されて発電システム1(水素タンク20)の設置場所に搬送された水素ガスや、発電システム1と共に発電システム1の設置場所に設置された水素生成装置(図示せず)によって生成された水素ガスなどを貯蔵し、この水素ガスを燃料電池セル10のセパレータ12に「第2の気体:燃料」として供給することが可能に構成されている。
【0020】
また、加湿器30は、水素タンク20から燃料電池セル10(セパレータ12)に供給する水素ガスを加湿可能に構成されている。具体的には、図3に示すように、加湿器30は、発電の開始に先立って注水された水や配管9aを介して気液分離槽4,6から供給される水を貯留可能な密閉容器31と、エジェクター8から排出された水素ガスを加湿器30に案内する配管5bの先端部に配設されたノズル32と、密閉容器31内に収容された多数の球体33,33・・とを備え、水中を通過させられることで加湿された水素ガスを燃料電池セル10(セパレータ12)に対して配管5cを介して供給することができるように構成されている。この場合、球体33は、密閉容器31内に貯留された水に対する浮力を生じ得る素材・構造の小球状に形成されている。なお、この加湿器30による水素ガスの加湿については、後に詳細に説明をする。
【0021】
一方、ポンプ2は、セパレータ11の空気流路11c内に空気を圧送する(供給する)。配管3aは、ポンプ2の吸気口に接続され、配管3bは、一端部がポンプ2の排気口に接続されると共に他端部がセパレータ11の配管接続部11a(吸気口)に接続され、配管3cは、一端部がセパレータ11の配管接続部11b(排気口)に接続されると共に他端部が気液分離槽4に接続されている。なお、ポンプ2および各配管3a~3cについては、上記のような構成に代えて、配管3aをセパレータ11の配管接続部11aに直接接続すると共に、配管3cの他端部をポンプ2の吸気口に接続し、かつポンプ2の排気口を他の配管を介して気液分離槽4に接続することもできる(図示せず)。このような構成を採用したときには、ポンプ2によってセパレータ11(空気流路11c)内の空気が吸引されることで配管3aからセパレータ11(空気流路11c)に新たな空気が吸引(供給)され、ポンプ2によって吸引された空気(セパレータ11からの排気)が気液分離槽4に圧送される。
【0022】
気液分離槽4は、セパレータ11から排出されて配管3cを介して流入させられる排気(空気と水との混合体)を空気と水とに分離させることができるように構成されている。この場合、燃料電池セル10における発電に際しては、セパレータ11(空気流路11c)を通過させられる空気(酸素)がセパレータ12(水素流路12c)を通過させられる水素ガスと反応して空気流路11c内に水が発生し、この水が排気(水素と反応させられた空気)と共にセパレータ11から排出される。したがって、本例の発電システム1では、この水を気液分離槽4において回収し、回収した水を加湿器30に供給する構成が採用されている。
【0023】
配管5aは、一端部が水素タンク20に接続されると共に他端部がエジェクター8に接続され、配管5bは、一端部がエジェクター8に接続されると共に他端部が加湿器30に接続され、配管5cは、一端部が加湿器30に接続されると共に他端部がセパレータ12の配管接続部12a(吸気口)に接続され、配管5dは、一端部がセパレータ12の配管接続部12b(排気口)に接続されると共に他端部が気液分離槽6に接続されている。なお、本例では、配管5a~5cが相俟って「貯蔵部から排出される当該第2の気体を第2のセパレータに供給する第1の配管」が構成されている。
【0024】
気液分離槽6は、「第2のセパレータを通過させられた第2の気体に含まれている水分を分離させる分離装置」の一例であって、セパレータ12の水素流路12cを通過させられて配管接続部12bから配管5dに排気される排気(未反応の水素ガスと水との混合体)を水素ガスと水とに分離させることができるように構成されている。
【0025】
この場合、後述するように水素タンク20から供給された水素ガスが燃料電池セル10(セパレータ12)に供給されるときには、水素タンク20からセパレータ12に至る流路(配管5a~5cやエジェクター8および加湿器30)やセパレータ12(水素流路12c)内において水素ガスの圧力や温度が逐次変化するため、流路内やセパレータ12内において結露が生じて液相の水分(水滴)が発生することがある。
【0026】
また、水素タンク20から排出される水素ガスは、タンク内において結露が生じる事態を回避すべく除湿されており、その湿度が低くなっている。このような低湿の水素ガスが燃料電池セル10(セパレータ12)に供給されたときには、MEA13のドライアップが生じて発電効率が低下するため、本例の発電システム1では、水素タンク20から排出された低湿の水素ガスを加湿器30において加湿した後に燃料電池セル10に対して供給する構成が採用されている。ここで、詳しくは後述するが、本例の発電システム1では、加湿器30から液相の水分が水素ガスと共に排出されるのを回避する構成が採用されているが、極く少量の液相の水分が水素ガスと共に排出されることがある。
【0027】
このため、発電システム1による発電時には、前述のように流路内やセパレータ12内における結露によって生じた水や、加湿器30から水素ガスと共に排出された水が、未反応の水素ガスと共に配管接続部12bから排出されることがある。したがって、本例の発電システム1では、この水を気液分離槽6において回収し、回収した水を加湿器30に供給して再利用する構成が採用されている。
【0028】
配管7は、「分離装置において水分を分離された第2の気体をエジェクターの吸気ポートに案内する第2の配管」の一例であって、一端部が気液分離槽6の排気口に接続され、他端部がエジェクター8の導入口8dに接続されている。エジェクター8は、「貯蔵部から排出される第2の気体の通過によって吸気ポートから気体を吸気して貯蔵部から排出される第2の気体に合流可能に第1の配管に配設されたエジェクター」の一例であって、図2に示すように、ノズル8a、ディフューザー8b、密閉容器8cおよび導入口8dを備え、前述のように、ノズル8aが配管5aを介して水素タンク20に接続され、ディフューザー8bが配管5bを介して加湿器30に接続されている。
【0029】
このエジェクター8では、導入口8d(「吸気ポート」の一例)が密閉容器8c内に連通させられており、導入口8dに接続された配管7を介して気液分離槽6と密閉容器8c内とが連通させられている。また、このエジェクター8では、ノズル8aの排気口とディフューザー8bの導入口とが密閉容器8c内において僅かに離間した状態で対向するようにノズル8aおよびディフューザー8bが密閉容器8cに配設されている。これにより、このエジェクター8では、密閉容器8c内においてノズル8aからディフューザー8bに向かって高速移動する水素ガス(水素タンク20から排出されて燃料電池セル10に向かって移動している水素ガス)の流れによって密閉容器8c内に負圧が生じ、この負圧によって気液分離槽6内の水素ガスが配管7を介して導入口8dから密閉容器8c内に吸引されて、ノズル8aから導入口8dに向かって流れている水素ガスに合流させられる構成が採用されている。
【0030】
配管9aは、気液分離槽4,6において排気から分離されて槽内に貯留された水を加湿器30に供給可能に配設されている。なお、実際には、気液分離槽4,6からの水の排出を許容/規制する弁機構などが配管9aに配設されているが、発電システム1の構成に関する理解を容易とするために、それらの図示および説明を省略する。配管9bは、分離された空気を大気中に放出可能に気液分離槽4に接続されている。
【0031】
この発電システム1では、前述のように、空気(大気:酸素)と、水素タンク20から供給される水素ガス(水素)とを燃料電池セル10において反応させて発電を行う。具体的には、図示しない操作部の操作によって発電の開始を指示されたときに、ポンプ2が空気(酸素)の圧送を開始する。この際には、配管3aを介して吸引された空気が配管3bを介してセパレータ11供給される。また、セパレータ11への空気の供給と並行して、水素タンク20からの水素ガスの供給が開始され、水素タンク20から排出された水素ガスが、配管5a、エジェクター8、配管5b、加湿器30および配管5cを介してセパレータ12に供給される。これにより、空気流路11cを通過させられる空気(酸素)と水素流路12cを通過させられる水素ガス(水素)との反応によって電力が発生する。
【0032】
この場合、本例の発電システム1では、前述したように、水素タンク20から排出される低湿の水素ガスが燃料電池セル10(セパレータ12)に供給されてMEA13のドライアップが生じるのを回避すべく、水素タンク20から排出された水素ガスを加湿器30において加湿した後に燃料電池セル10(セパレータ12)に供給する構成が採用されている。具体的には、図3に示すように、配管5bを介して供給されてノズル32から密閉容器31内に排出された水素ガスが、密閉容器31内の水の中を浮上する際に水分を吸収することで、その相対湿度が上昇する。また、水面近傍まで浮上した水素ガスは、各球体33,33・・の間を通過して配管5cに排出される。これにより、水素ガスと共に密閉容器31内の水が大量に排出される事態を招くことなく、湿度が十分に高い水素ガスが配管5cを介して燃料電池セル10(セパレータ12)に供給される。
【0033】
一方、燃料電池セル10における発電に際しては、配管接続部12aから水素流路12cに導入される水素ガスのうちの85%程度が空気(酸素)との反応によって消費されるものの、残りの15%程度の水素ガスは、空気(酸素)と反応せずに配管接続部12bから配管5dに排気される。したがって、本例の発電システム1では、配管接続部12bから排出される水素ガス(未反応の水素)を回収し、回収した水素ガスを水素タンク20からセパレータ12(配管接続部12a)に供給されている水素ガスに合流させて再利用することにより、システム全体としての水素ガス(水素)の消費量を低減する構成が採用されている。
【0034】
この場合、前述したように、セパレータ12に供給される水素ガスは、水素タンク20からセパレータ12に至る流路や水素流路12c内における圧力や温度の変化による結露によって生じた水分や、エジェクター8から排出された水分などを含んだ状態となることがある。このため、配管接続部12bから排出される水素ガスに水滴が含まれた状態となることがあり、そのような水素ガスをそのままの状態で再利用したとき(そのままの状態でセパレータ12に供給したとき)には、配管接続部12aから水素流路12cに流入する水分量が非常に多くなるおそれがある。
【0035】
かかる状態においては、水素流路12c内に流入した水滴が水素ガスの通過抵抗となり、空気(酸素)と反応させるべき十分な量の水素ガスを通過させるのが困難となるおそれがある。したがって、本例の発電システム1では、配管接続部12bから配管5dに水素ガスと共に排出される水分を気液分離槽6において水と水素ガスとに分離させ、液相の水分を殆ど含まない水素ガスを、水素タンク20から供給されている水素ガスに合流させてセパレータ12に供給する構成が採用されている。
【0036】
ここで、水素タンク20から排出される水素ガスを燃料電池セル10に供給して発電を行う本例の発電システム1では、配管5a内の水素ガスの圧力(水素タンク20からの水素ガスの排出圧)が1.0MPa程度の高圧となっている。したがって、本例の発電システム1では、図2に示すように、水素タンク20から排出された高圧の水素ガスをエジェクター8のノズル8aからディフューザー8bに向かって矢印Aで示すように高速噴射させることにより、ノズル8aとディフューザー8bとの間に負圧を生じさせ、この負圧を利用して、ノズル8aから噴射させた水素ガス(水素タンク20から排出された水素ガス)に対して密閉容器8c内の水素ガスを矢印Baで合流させて、矢印Cで示すように、ディフューザー8bから配管5bに排出させる構成が採用されている。
【0037】
この場合、密閉容器8cの導入口8dには配管7を介して気液分離槽6が接続されている。したがって、水素タンク20から排出された水素ガスと共に密閉容器8c内の水素ガスがディフューザー8bから配管5bに排出されることにより、配管接続部12bから排出されて気液分離槽6において水分を分離された水素ガスが配管7を介してエジェクター8(密閉容器8c)に吸引されて、上記のように水素タンク20からの水素ガスに合流させられる。これにより、水素タンク20から排出された水素ガスだけでなく、セパレータ12から排出されて気液分離槽6において水分を除去された水素ガスが発電用の水素ガスとして使用されるため、発電システム1による水素ガスの消費量が十分に低減される。
【0038】
一方、上記のように燃料電池セル10における発電を継続することにより、気液分離槽4には、セパレータ11からの排気に含まれていた水分が分離されて貯留され、気液分離槽6には、セパレータ12からの排気に含まれていた水分が分離されて貯留される。これらの水は、加湿器30において水素ガスを加湿するための水として気液分離槽4,6から配管9aを介して加湿器30に供給される。これにより、加湿器30では、供給された水による水素ガスの加湿が行われ、ドライアップを招くことのない好適な湿度の水素ガスがセパレータ12に対して継続的に供給される。この後、発電を終了する指示が行われるまで、発電システム1による上記の発電が継続される。
【0039】
このように、この発電システム1では、水素タンク20から排出される水素ガスをセパレータ12に供給する配管5a~5cと、セパレータ12を通過させられた水素ガスに含まれている水分を分離させる気液分離槽6と、水素タンク20から排出される水素ガスの通過によって導入口8d(吸気ポート)から密閉容器8c内に水素ガスを吸気して水素タンク20から排出される水素ガスに合流可能に配管5a,5b間に配設されたエジェクター8と、気液分離槽6において水分を分離された水素ガスをエジェクター8の導入口8dに案内する配管7とを備えている。
【0040】
したがって、この発電システムおよび燃料供給システムによれば、セパレータ12から排出される未反応の水素ガスを回収して再利用することで、発電のための水素ガスの消費量を十分に低減することができるだけでなく、水素タンク20から排出されている水素ガスに対して回収した水素ガスを合流させるためのポンプ等が不要となり、合流させるための電力の消費も生じないことから、発電コストを十分に低減することができる。
【0041】
なお、「発電システム」および「燃料供給システム」の構成は、上記の発電システム1の構成の例に限定されない。
【0042】
例えば、水素タンク20(水素ガスの供給源)を備えた発電システム1の構成を例に挙げて説明したが、水素タンク20に代えて、外部装置としての「貯蔵部」から供給される水素ガスを使用して発電を行う「発電システム」に本発明の構成を適用することもできる。また、ポンプ2、配管3a~3cおよび燃料電池セル10と同様の外部装置としての発電ユニットに対して水素ガスを燃料として供給する「燃料供給システム」に本発明の構成を適用することもできる。さらに、気液分離槽4,6において回収した水を、加湿器30における水素ガスの加湿に使用する構成を例に挙げて説明したが、セパレータ11やセパレータ12から排出された水を使用せずに水素ガスを加湿する「加湿器」を採用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 発電システム
2 ポンプ
3a~3c,5a~5d,7,9a,9b 配管
4,6 気液分離槽
8 エジェクター
8a ノズル
8b ディフューザー
8c 密閉容器
8d 導入口
10 燃料電池セル
11,12 セパレータ
11a,11b,12a,12b 配管接続部
11c 空気流路
12c 水素流路
13 MEA
20 水素タンク
30 加湿器
31 密閉容器
32 ノズル
33 球体
図1
図2
図3