(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019627
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ヒータ、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20250131BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
H05B3/20 312
G03G15/20 555
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123333
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100196999
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 和之
(72)【発明者】
【氏名】峯山 祐実
(72)【発明者】
【氏名】玉井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】青野 伸二郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】大橋 剛
【テーマコード(参考)】
2H033
3K034
【Fターム(参考)】
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BB02
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA17
2H033CA48
3K034AA02
3K034AA03
3K034AA10
3K034AA16
3K034AA34
3K034BA05
3K034BA06
3K034BB02
3K034BB06
3K034BB14
3K034BC12
3K034GA10
3K034JA10
(57)【要約】
【課題】保護部の、基板側とは反対側の面に段差が生じるのを抑制することができるヒータ、および画像形成装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係るヒータは、第1の方向に延びる基板と;前記基板の一方の面側に設けられ、前記第1の方向に延びる発熱体と;前記基板の前記一方の面側において、前記発熱体が設けられる面に設けられた凸部と;前記基板の前記一方の面側に設けられ、前記発熱体と、前記凸部と、を覆う保護部と;を具備している。前記発熱体が設けられる前記面に垂直な方向から見た場合に、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記凸部は、前記発熱体と並べて設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる基板と;
前記基板の一方の面側に設けられ、前記第1の方向に延びる発熱体と;
前記基板の前記一方の面側において、前記発熱体が設けられる面に設けられた凸部と;
前記基板の前記一方の面側に設けられ、前記発熱体と、前記凸部と、を覆う保護部と;
を具備し、
前記発熱体が設けられる前記面に垂直な方向から見た場合に、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記凸部は、前記発熱体と並べて設けられているヒータ。
【請求項2】
前記発熱体の厚みをTr(mm)とし、前記凸部の厚みをTm(mm)とした場合に、以下の式を満足する請求項1記載のヒータ。
0.5×Tr(mm)≦Tm(mm)≦1.5×Tr(mm)
【請求項3】
前記第2の方向において、前記凸部と、前記発熱体との間の距離をL(mm)とした場合に、以下の式を満足する請求項1または2に記載のヒータ。
0mm≦L(mm)≦1.0mm
【請求項4】
前記基板は金属を含み、
前記基板と、前記発熱体および前記凸部と、の間に設けられた絶縁層をさらに具備した請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項5】
請求項1記載のヒータを具備した画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒータ、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンタなどの画像形成装置には、トナーを定着させるためのヒータが設けられている。例えば、この様なヒータには、長尺状の基板と、基板の一方の面に設けられ、基板の長手方向に延びる発熱体と、基板の一方の面に設けられ、発熱体を覆う保護部と、が設けられている。保護部は、耐熱性、および絶縁性を有し、熱伝導率が高く、化学的安定性の高い材料から形成される。例えば、保護部は、ガラスから形成される。
【0003】
ここで、ヒータを形成する際には、基板の一方の面に発熱体を形成し、基板の一方の面に、ペースト状の材料を塗布して発熱体を覆い、塗布した材料を焼成することで、発熱体を覆う保護部を形成している。
【0004】
ところが、この様にして保護部を形成すると、基板の面の、発熱体が設けられた領域においては、発熱体の上に保護部が形成される。基板の面の、発熱体が設けられていない領域においては、基板の面の上に保護部が形成される。そのため、保護部の、基板側とは反対側の面に、発熱体の厚みに起因する段差が生じる場合がある。
【0005】
ヒータを使用する際には、保護部の、基板側とは反対側の面が、加熱対象物(例えば、トナーが付着した紙など)に向けられる。そのため、この面に段差があると、加熱対象物と、保護部との間の距離がばらついて、加熱対象物に加熱ムラが生じるおそれがある。
そこで、保護部の、基板側とは反対側の面に段差が生じるのを抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、保護部の、基板側とは反対側の面に段差が生じるのを抑制することができるヒータ、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るヒータは、第1の方向に延びる基板と;前記基板の一方の面側に設けられ、前記第1の方向に延びる発熱体と;前記基板の前記一方の面側において、前記発熱体が設けられる面に設けられた凸部と;前記基板の前記一方の面側に設けられ、前記発熱体と、前記凸部と、を覆う保護部と;を具備している。前記発熱体が設けられる前記面に垂直な方向から見た場合に、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記凸部は、前記発熱体と並べて設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、保護部の、基板側とは反対側の面に段差が生じるのを抑制することができるヒータ、および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係るヒータを例示するための模式正面図である。
【
図3】
図1におけるヒータのA-A線方向の模式断面図である。
【
図5】(a)~(c)は、凸部の断面形状を例示するための模式断面図である。
【
図6】本実施の形態に係る画像形成装置を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、各図面中の矢印X、Y、Zは互いに直交する三方向を表している。例えば、基板の長手方向(長さ方向)をX方向(第1の方向の一例に相当する)、基板の短手方向(幅方向)をY方向(第2の方向の一例に相当する)、基板の面に垂直な方向(厚み方向)をZ方向としている。
【0012】
(ヒータ)
図1は、本実施の形態に係るヒータ1を例示するための模式正面図である。
なお、
図1は、発熱部20が設けられた側からヒータ1を見た図である。
図2は、ヒータ1を例示するための模式背面図である。
なお、
図2は、反り緩和部50が設けられた側(発熱部20が設けられた側とは反対側)からヒータ1を見た図である。
図3は、
図1におけるヒータ1のA-A線方向の模式断面図である。
図1~
図3に示すように、ヒータ1は、例えば、基板10、絶縁層11、発熱部20、配線部30、保護部40、反り緩和部50、および凸部60を有する。
【0013】
基板10は、板状を呈し、面10aと、面10aに対向する面10bとを有する。基板10は、X方向に延びる形状を有している。Z方向から見た基板10の形状は、例えば、長尺状の長方形である。基板10の厚みは、例えば、0.5mm~1.0mm程度である。X方向における基板10の寸法、およびY方向における基板10の寸法は、加熱対象物(例えば、トナーが付着した紙など)の大きさや、後述する発熱体の数や配置などに応じて適宜変更することができる。
【0014】
基板10は、耐熱性を有し、熱伝導率の高い材料から形成される。基板10は、例えば、ステンレスやアルミニウム合金などの金属や、セラミックスなどの無機材料から形成することができる。
【0015】
金属の熱伝導率は、セラミックスなどの無機材料の熱伝導率よりも高い。そのため、基板10が金属から形成されていれば、ヒータ1の温度に面内分布が生じるのを抑制することができる。また、基板10の剛性の向上や、製造コストの低減などを図ることができる。
一般的に、セラミックスなどの無機材料は絶縁性を有しているので、基板10が無機材料から形成されていれば、後述する絶縁層11を省くことができる。
なお、
図1~
図3に例示をしたヒータ1は、金属を含む基板10と、絶縁層11とを有している。
【0016】
絶縁層11は、基板10の、発熱部20が設けられる側の面10aに設けられている。絶縁層11は、基板10と、発熱部20および後述する凸部60と、の間に設けられている。絶縁層11は、基板10の面10aの、発熱部20が設けられる領域を覆っている。絶縁層11は、耐熱性と絶縁性を有する材料から形成される。絶縁層11の材料は、耐熱性と絶縁性を有していれば特に限定はない。絶縁層11の材料は、例えば、ガラスやセラミックスなどとすることができる。絶縁層11の厚みは、絶縁性が確保できるのであれば特に限定がない。
【0017】
発熱部20は、印加された電力を熱(ジュール熱)に変換する。発熱部20は、基板10の面10a側に設けられている。発熱部20と基板10は、絶縁層11により絶縁されている。
【0018】
発熱部20は、例えば、発熱体21、および発熱体22を有する。なお、一例として、発熱体21、および発熱体22が設けられる場合を例示したが、発熱体の数や大きさは、基板10の大きさや加熱対象物の大きさなどに応じて適宜変更することができる。また、長さ、幅、形状などが異なる複数種類の発熱体を設けることもできる。すなわち、発熱体は少なくとも1つ設けられていればよい。
【0019】
発熱体21、および発熱体22は、例えば、Y方向(基板10の短手方向)に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。発熱体21、および発熱体22は、例えば、X方向(基板10の長手方向)に延びている。
【0020】
発熱体21、および発熱体22のX方向の寸法(長さ寸法)は、例えば、略同一とすることができる。この場合、発熱体21、および発熱体22のそれぞれの中心が、直線1aの上に位置するようにすることが好ましい。すなわち、発熱体21、および発熱体22のそれぞれは、直線1aを対称軸として線対称となる形状を有することが好ましい。
【0021】
ヒータ1を画像形成装置100に取り付ける際には、例えば、直線1aが加熱対象物の搬送経路の中心線に重なるようにする。この様にすれば、加熱対象物の、搬送方向に直交する方向の寸法が変化した場合であっても、加熱対象物を略均一に加熱することができる。
【0022】
発熱体21、および発熱体22の電気抵抗値は、略同一とすることもできるし、異なるものとすることもできる。例えば、発熱体21、および発熱体22の、X方向の寸法(長さ寸法)、Y方向の寸法(幅寸法)、およびZ方向の寸法(厚み寸法)をそれぞれ略同一とすることで、発熱体21、および発熱体22の電気抵抗値が略同一となるようにすることができる。また、これらの寸法の少なくともいずれかを変えることで、発熱体21、および発熱体22の電気抵抗値が異なるようにすることができる。また、材料を変えることで、発熱体21、および発熱体22の電気抵抗値が異なるようにすることができる。
【0023】
また、発熱体21の、単位長さ当たりの電気抵抗値は、X方向において略均一とすることができる。例えば、発熱体21の、Y方向の寸法(幅寸法)、およびZ方向の寸法(厚み寸法)は、略一定とすることができる。この場合、Z方向から見た発熱体21の形状は、例えば、X方向に延びる略長方形とすることができる。
【0024】
また、発熱体22の、単位長さ当たりの電気抵抗値は、X方向において略均一とすることができる。例えば、発熱体22の、Y方向の寸法(幅寸法)、およびZ方向の寸法(厚み寸法)は、略一定とすることができる。この場合、Z方向から見た発熱体22の形状は、例えば、X方向に延びる略長方形とすることができる。
【0025】
発熱体21、および発熱体22は、例えば、酸化ルテニウム(RuO2)、銀・パラジウム(Ag-Pd)合金などを用いて形成することができる。発熱体21、および発熱体22は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を絶縁層11の上に塗布し、焼成法などを用いてこれを硬化させることで形成することができる。
基板10が絶縁性を有する材料から形成される場合には、発熱体21、および発熱体22は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を基板10の面10aの上に塗布し、焼成法などを用いてこれを硬化させることで形成することができる。
【0026】
配線部30は、基板10の面10a側に設けられている。配線部30と基板10は、絶縁層11により絶縁されている。
【0027】
配線部30は、例えば、端子31、端子32、配線33、配線34、および配線35を有する。
【0028】
端子31、および端子32は、例えば、X方向における基板10の一方の端部の近傍に設けられる。端子31、および端子32は、例えば、X方向に並べて設けられる。端子31、および端子32は、コネクタ、および配線などを介して、例えば、後述する画像形成装置100のコントローラ210に電気的に接続される。
【0029】
配線33は、例えば、X方向において、基板10の、端子31が設けられる側に設けられる。配線33は、X方向に延びている。配線33は、端子31と、発熱体21の端子31側の端部とに電気的に接続されている。
【0030】
配線34は、例えば、X方向において、基板10の、端子31、および端子32が設けられる側とは反対側の端部の近傍に設けられる。配線34には、発熱体21の、配線33側とは反対側の端部、および、発熱体22の、配線35側とは反対側の端部が電気的に接続されている。
【0031】
配線35は、例えば、X方向において、基板10の、端子32が設けられる側に設けられる。配線35は、X方向に延びている。配線35は、端子32と、発熱体22の端子32側の端部とに電気的に接続されている。
【0032】
配線部30(端子31、および端子32、および配線33~35)は、例えば、銀や銅などを含む材料を用いて形成される。例えば、端子31、端子32、および配線33~35は、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を絶縁層11の上に塗布し、焼成法などを用いてこれを硬化させることで形成することができる。
なお、基板10が絶縁性を有する材料から形成される場合には、端子31、端子32、および配線33~35は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を基板10の面10aの上に塗布し、焼成法などを用いてこれを硬化させることで形成することができる。
【0033】
保護部40は、基板10の面10a側に設けられている。例えば、保護部40は、絶縁層11の上に設けられる。基板10が絶縁性を有する材料から形成される場合には、保護部40は、基板10の面10aの上に設けられる。保護部40は、発熱部20(発熱体21、および発熱体22)、配線部30の一部(配線33、配線34、および配線35)、および、後述する凸部60を覆っている。この場合、配線部30の端子31、および端子32は、保護部40から露出している。
【0034】
保護部40は、X方向に延びている。保護部40は、例えば、発熱部20、および配線部30の一部を絶縁する機能、発熱部20において発生した熱を加熱対象物に伝える機能、および、外力や腐食性ガスなどから発熱部20や配線部30の一部を保護する機能を有する。保護部40は、耐熱性、および絶縁性を有し、化学的安定性、および熱伝導率の高い材料から形成される。保護部40は、例えば、ガラスから形成される。この場合、酸化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料を含むフィラーが添加されたガラスを用いて保護部40を形成することもできる。
【0035】
また、ヒータ1には、発熱部20の温度や、基板10の温度を検出する検出部をさらに設けることもできる。検出部は、例えば、サーミスタなどである。検出部は、基板10の、発熱部20が設けられる側、および、基板10の、発熱部20が設けられる側とは反対側の少なくともいずれかに設けることができる。例えば、検出部、および検出部に電気的に接続された配線と端子は、絶縁層11の上に設けることができる。なお、基板10が絶縁性を有する材料から形成される場合には、検出部、および検出部に電気的に接続された配線と端子は、基板10の上に設けることができる。また、検出部、および配線は、保護部40により覆うことができる。検出部に電気的に接続された端子は、保護部40から露出させることができる。
【0036】
前述したように、基板10の材料と、絶縁層11の材料および保護部40の材料とが異なる場合がある。材料が異なると、線膨張係数が異なるものとなる。また、ヒータ1の使用時に、発熱部20を発熱させると、基板10、絶縁層11、および保護部40が加熱される。ヒータ1の製造時に、発熱部20、配線部30、絶縁層11、および保護部40を焼成すると、基板10、絶縁層11、および保護部40が加熱される。そのため、ヒータ1の使用時やヒータ1の製造時に、材料の線膨張係数の差に起因して熱応力が発生する。基板10の一方の面側において熱応力が発生すると、ヒータ1に反りが発生する場合がある。ヒータ1の反りが大きくなると、ヒータ1と加熱対象物との間の距離がばらついて、加熱対象物に加熱ムラが生じるおそれがある。
【0037】
そこで、
図2、および
図3に示すように、ヒータ1には反り緩和部50が設けられている。反り緩和部50は、基板10の、面10aに対向する面10bに設けられている。基板10の面10bに反り緩和部50が設けられていれば、基板10の面10a側において発生した熱応力を、基板10の面10b側において発生させた熱応力により相殺することができる。そのため、ヒータ1の使用時やヒータ1の製造時などに、ヒータ1に反りが発生するのを抑制することができる。
【0038】
反り緩和部50の材料は、例えば、保護部40の材料と同じとすることができる。反り緩和部50の寸法、配置、および数は、発生する反りに応じて適宜決定することができる。反り緩和部50の材料、寸法、配置、および数は、例えば、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することができる。
なお、発生する反りが小さい場合には、反り緩和部50を省くこともできる。
【0039】
次に、凸部60について説明する。
図4は、比較例に係るヒータ70の模式断面図である。
なお、
図4は、
図3に対応する図である。
【0040】
前述した様に、保護部40は、スクリーン印刷法および焼成法などを用いて、発熱部20(発熱体21、および発熱体22)を覆うように設けられる。そのため、発熱体21、および発熱体22が設けられた領域においては、これらの上に保護部40が形成される。発熱体21、および発熱体22が設けられていない領域においては、絶縁層11の上(絶縁層11が設けられていない場合には基板10の面10aの上)に保護部40が形成される。そのため、
図4に示すように、保護部40の、基板10側とは反対側の面に、発熱体や配線の厚みに起因する段差40aが生じる場合がある。
【0041】
ヒータ1を使用する際には、保護部40の、基板10側とは反対側の面が、加熱対象物に向けられる。そのため、段差40aが大きくなると、加熱対象物と、保護部40との間の距離のばらつきが大きくなって、加熱対象物に加熱ムラが生じるおそれがある。
【0042】
そこで、
図1、および
図3に示すように、ヒータ1には凸部60が設けられている。凸部60は、基板10の面10a側において、発熱体21、および発熱体22が設けられる面に設けられている。例えば、絶縁層11が設けられる場合には、凸部60は、絶縁部11の上に設けることができる。絶縁層11が設けられない場合には、凸部60は、基板10の面10aに設けることができる。凸部60は、例えば、発熱体が延びる方向(X方向)に延びている。
【0043】
発熱体21、および発熱体22が設けられる面に垂直な方向(Z方向)から見た場合に、Y方向において、凸部60は、発熱体21、および発熱体22と並べて設けることができる。複数の発熱体が並べて設けられる場合には、凸部60は、発熱体と発熱体の間に設けることができる。
図1、および
図3に例示をしたヒータ1には、発熱体21、および発熱体22が設けられているため、凸部60は、発熱体21と発熱体22との間に設けることができる。例えば、
図3に示すように、Y方向において、凸部60と発熱体21との間の距離L1(mm)は、凸部60と発熱体22との間の距離L2(mm)と同じとすることができる。
【0044】
また、一般的に、配線33、配線34、および配線35は、加熱対象物を加熱する領域の外側に設けられる。そのため、配線33、配線34、および配線35の上方に段差が形成されたとしても、加熱対象物の加熱ムラには、ほとんど影響しない。例えば、Z方向から見た場合に、凸部60は、配線33、配線34、および配線35の少なくともいずれかと重なっていてもよい。この様にすれば、凸部60、配線33、配線34、および配線35の配置に関する設計の自由度を大きくすることができる。
【0045】
ただし、端子31、および端子32は、コネクタ、および配線などを介して、例えば、後述する画像形成装置100のコントローラ210に電気的に接続される。そのため、Z方向から見た場合に、凸部60が、端子31、および端子32と重なっていると、端子31、および端子32と、コネクタとの接続が困難となるおそれがある。そのため、Z方向から見た場合に、凸部60は、端子31、および端子32と重ならないようにすることが好ましい。
【0046】
図3に示すように、凸部60の上には保護部40が形成される。そのため、保護部40の、凸部60が設けられた領域においては、保護部40の、発熱体21、および発熱体22が設けられた領域と同様に、保護部40が上方に突出する。そのため、例えば、
図4に示す、保護部40の、発熱体が設けられていない領域(発熱体21と発熱体22との間の領域)において、保護部40の、基板10側とは反対側の面を上方に突出させることができる。そのため、保護部40の、基板10側とは反対側の面に段差40aが生じるのを抑制することができる。
【0047】
この場合、凸部60の厚みにより、保護部40の、基板10側とは反対側の面の突出量、ひいては、Z方向における段差40aの寸法を制御することができる。この場合、発熱体の厚みに対して、凸部60の厚みを薄くし過ぎても、凸部60の厚みを厚くし過ぎても、Z方向における段差40aの寸法が大きくなる。そのため、例えば、発熱体の厚みをTr(mm)とし、凸部60の厚みをTm(mm)とした場合に、「0.5×Tr(mm)≦Tm(mm)≦1.5×Tr(mm)」とすることが好ましい。この様にすれば、Z方向における段差40aの寸法を小さくすることができる。
【0048】
また、Y方向において、凸部60と発熱体21との間の距離L1(mm)を大きくし過ぎると、Z方向における段差40aの寸法が大きくなる。
また、Y方向において、凸部60と発熱体22との間の距離L2(mm)を大きくし過ぎると、Z方向における段差40aの寸法が大きくなる。
【0049】
そのため、「0mm≦L1(mm)≦1.0mm」、「0mm≦L2(mm)≦1.0mm」とすることが好ましい。この様にすれば、Z方向における段差40aの寸法を小さくすることができる。
【0050】
また、Y方向において、凸部60と発熱体21との間の距離L1(mm)を小さくし過ぎると、凸部60と発熱体21との間の絶縁耐圧が小さくなり過ぎる場合がある。また、Y方向において、凸部60と発熱体22との間の距離L2(mm)を小さくし過ぎると、凸部60と発熱体22との間の絶縁耐圧が小さくなり過ぎる場合がある。
そのため、「0.3mm≦L1(mm)≦1.0mm」、「0.3mm≦L2(mm)≦1.0mm」とすることが好ましい。この様にすれば、Z方向における段差40aの寸法を小さくすることができ、更に、凸部60と発熱体21(発熱体22)との間の絶縁耐圧を確保するのが容易となる。
【0051】
なお、凸部60が絶縁性を有していれば、L1(mm)=0mm、L2(mm)=0mmとすることができる。すなわち、凸部60が絶縁性を有していれば、凸部60と、発熱体21および発熱体22とを接触させることができる。例えば、発熱体21と発熱体22との間を埋めるように、凸部60を設けることができる。この様にすれば、保護部40の、基板10側とは反対側の面に段差40aが生じるのをさらに抑制することができる。
絶縁性を有する凸部60の材料は、例えば、絶縁部11の材料、または保護部40の材料と同じにすればよい。この様にすれば、製造コストの低減を図ることができる。
【0052】
なお、凸部60の材料は、例えば、発熱部20の材料、または配線部30の材料と同じにすることもできる。この場合、凸部60が導電性を有するものとなるが、凸部60と発熱体21との間の距離L1(mm)、および凸部60と発熱体22との間の距離L2(mm)が、前述した範囲となるようにすればよい。
【0053】
Y方向における凸部60の寸法(幅寸法)は、発熱体21と発熱体22との間の距離などに応じて適宜変更することができる。
【0054】
凸部60は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を絶縁部11の上(絶縁層11が設けられていない場合には基板10の面10aの上)に塗布し、焼成法などを用いてこれを硬化させることで形成することができる。
なお、凸部60は、耐熱性の接合材を用いて、絶縁部11の上(絶縁層11が設けられていない場合には基板10の面10aの上)に接合することもできる。
また、凸部60は、絶縁部11と一体に形成することもできる。
【0055】
また、
図3においては、凸部60が延びる方向(X方向)から見た場合の凸部60の断面形状が四角形の場合を例示したが、これに限定されるわけではない。
図5(a)~(c)は、凸部の断面形状を例示するための模式断面図である。
図5(a)~(c)に示すように、凸部60a、60b、60cの断面形状は適宜変更することができる。この場合、凸部の頂面は平坦面とすることが好ましい。凸部の頂面が平坦面であれば、より広い領域において段差40aが形成されるのを抑制することができる。
【0056】
また、以上においては、発熱体が延びる方向に延びる凸部60を例示したが、発熱体が延びる方向に並ぶ複数の凸部を設けることができる。また、発熱体が延びる方向と直交する方向に並ぶ複数の凸部を設けることもできる。
凸部の寸法、断面形状、数、および配置は、例えば、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することができる。
【0057】
(画像形成装置)
本発明の1つの実施形態において、ヒータ1を具備した画像形成装置100を提供することができる。前述したヒータ1に関する説明、およびヒータ1の変形例(例えば、凸部60a、60b、60cや、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもので、本発明の特徴を備えているもの)は、いずれも画像形成装置100に適用することができる。
【0058】
また、以下においては、一例として、画像形成装置100が複写機である場合を説明する。ただし、画像形成装置100は複写機に限定されるわけではなく、プリンタや、リライタブルカードリーダ・ライタなどであってもよい。
【0059】
図6は、本実施の形態に係る画像形成装置100を例示するための模式図である。
図7は、定着部200を例示するための模式図である。
図6に示すように、画像形成装置100は、例えば、フレーム110、照明部120、結像素子130、感光ドラム140、帯電部150、放電部151、現像部160、クリーナ170、収納部180、搬送部190、定着部200、およびコントローラ210を有する。
【0060】
フレーム110は、箱状を呈し、その内部に、照明部120、結像素子130、感光ドラム140、帯電部150、現像部160、クリーナ170、収納部180の一部、搬送部190、定着部200、およびコントローラ210を収納する。
フレーム110の上面には、ガラスなどの透光性材料を用いた窓111を設けることができる。窓111の上には、複写される原稿500が載置される。また、原稿500の位置を移動させる移動部を設けることができる。
【0061】
照明部120は、窓111の近傍に設けられる。照明部120は、例えば、ランプなどの光源121、および反射鏡122を有する。
結像素子130は、窓111の近傍に設けられる。
感光ドラム140は、照明部120、および結像素子130の下方に設けられる。感光ドラム140は、回転可能に設けられる。感光ドラム140の表面には、例えば、酸化亜鉛感光層または有機半導体感光層が設けられる。
帯電部150、放電部151、現像部160、およびクリーナ170は、感光ドラム140の周辺に設けられる。
【0062】
収納部180は、例えば、カセット181、およびトレイ182を有する。カセット181は、フレーム110の一方の側部に着脱可能に取り付けられる。トレイ182は、フレーム110の、カセット181が取り付けられる側とは反対側の側部に設けられる。カセット181には、複写が行われる前の紙510(例えば、白紙)が収納される。トレイ182には、複写像511aが定着した紙511が収納される。
【0063】
搬送部190は、感光ドラム140の下方に設けられる。搬送部190は、カセット181とトレイ182との間で紙510を搬送する。搬送部190は、例えば、搬送される紙510を支持するガイド191、および紙510を搬送する搬送ローラ192~194を有する。また、搬送部190には、搬送ローラ192~194を回転させるモータを設けることができる。
【0064】
定着部200は、感光ドラム140の下流側(トレイ182側)に設けられる。
図7に示すように、定着部200は、例えば、ヒータ1、ステー201、フィルムベルト202、および加圧ローラ203を有する。
ステー201の、紙510の搬送ライン側にはヒータ1が取り付けられる。ヒータ1は、ステー201に埋め込むことができる。この場合、ヒータ1の、保護部40が設けられた側がステー201から露出する。
【0065】
フィルムベルト202は、ヒータ1が設けられたステー201を覆っている。フィルムベルト202は、例えば、ポリイミドなどの耐熱性を有する樹脂を含むことができる。
【0066】
加圧ローラ203は、ステー201と対向するように設けられる。加圧ローラ203は、例えば、芯金203a、駆動軸203b、および弾性部203cを有する。駆動軸203bは、芯金203aの端部から突出し、モータなどの駆動装置に接続される。弾性部203cは、芯金203aの外面に設けられる。弾性部203cは、耐熱性を有する弾性材料から形成される。弾性部203cは、例えば、シリコーン樹脂などを含むことができる。
【0067】
コントローラ210は、フレーム110の内部に設けられている。コントローラ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部、および制御プログラムが格納された記憶部を有する。演算部は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、画像形成装置100に設けられた各要素の動作を制御する。また、コントローラ210は、使用者が複写条件などを入力する操作部、動作状態や異常表示などを表示する表示部などを備えることもできる。
なお、画像形成装置100に設けられた各要素の制御には、既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0069】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0070】
(付記1)
第1の方向に延びる基板と;
前記基板の一方の面側に設けられ、前記第1の方向に延びる発熱体と;
前記基板の前記一方の面側において、前記発熱体が設けられる面に設けられた凸部と;
前記基板の前記一方の面側に設けられ、前記発熱体と、前記凸部と、を覆う保護部と;
を具備し、
前記発熱体が設けられる前記面に垂直な方向から見た場合に、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記凸部は、前記発熱体と並べて設けられているヒータ。
【0071】
(付記2)
前記発熱体の厚みをTr(mm)とし、前記凸部の厚みをTm(mm)とした場合に、以下の式を満足する付記1記載のヒータ。
0.5×Tr(mm)≦Tm(mm)≦1.5×Tr(mm)
【0072】
(付記3)
前記第2の方向において、前記凸部と、前記発熱体との間の距離をL(mm)とした場合に、以下の式を満足する付記1または2に記載のヒータ。
0mm≦L(mm)≦1.0mm
【0073】
(付記4)
前記基板は金属を含み、
前記基板と、前記発熱体および前記凸部と、の間に設けられた絶縁層をさらに具備した付記1~3のいずれか1つに記載のヒータ。
【0074】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載のヒータを具備した画像形成装置。
【符号の説明】
【0075】
1 ヒータ、10 基板、10a 面、10b 面、11 絶縁層、20 発熱部、21 発熱体、22 発熱体、30 配線部、40 保護部、50 反り緩和部、60 凸部、60a 凸部、60b 凸部、60c 凸部、100 画像形成装置、200 定着部