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特開2025-19629エクオール含有組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019629
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】エクオール含有組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20250131BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20250131BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20250131BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20250131BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20250131BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L27/30 C
A23L27/30 Z
A23L27/00 101A
A23L27/00 101Z
A23L27/00 Z
A23L5/20
A23L5/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123335
(22)【出願日】2023-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】三橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】西脇 友美
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB04
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE03
4B018LE05
4B018LE06
4B018MD08
4B018MD43
4B018MD58
4B018MD85
4B018ME04
4B018ME05
4B018ME06
4B018ME08
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF03
4B018MF04
4B018MF05
4B018MF08
4B018MF12
4B018MF13
4B018MF14
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4B035LG57
4B035LK02
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4B047LF07
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4B047LP01
4B047LP06
4B047LP07
4B047LP08
4B047LP18
4B047LP19
(57)【要約】
【課題】苦みを抑えたエクオール含有組成物、特に食品への応用に制限が全くないか又は制限がないに等しい、苦みを抑えたエクオール含有組成物の提供。
【解決手段】ソーマチン及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物であって、必要によりアスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、クルクリン、モネリン、モナチン、ミラクリン、及びヘルナンドゥルシンからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料をさらに有するエクオール含有組成物により上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーマチン及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物。
【請求項2】
前記マスキング剤が、ソーマチンである請求項1に記載のエクオール含有組成物。
【請求項3】
前記エクオール含有組成物は、イソフラボン5.6重量部に対して、前記マスキング剤を0.1~20重量部含有する請求項1に記載のエクオール含有組成物。
【請求項4】
前記エクオール含有組成物がサポニンを有し、前記エクオール含有組成物は、サポニン30重量部に対して、前記マスキング剤を0.1~20重量部含有する請求項1に記載のエクオール含有組成物。
【請求項5】
前記エクオール含有組成物は、エクオール含有物1000重量部に対して、前記マスキング剤を0.1~20重量部含有する請求項1に記載のエクオール含有組成物。
【請求項6】
アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、クルクリン、モネリン、モナチン、ミラクリン、及びヘルナンドゥルシンからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料をさらに有する請求項1に記載のエクオール含有組成物。
【請求項7】
前記甘味料がアスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムである請求項6に記載のエクオール含有組成物。
【請求項8】
前記甘味料がアスパルテームである請求項6に記載のエクオール含有組成物。
【請求項9】
前記エクオール含有組成物は、イソフラボン5.6重量部に対して、前記甘味料が3~20重量部含有する請求項6に記載のエクオール含有組成物。
【請求項10】
前記エクオール含有組成物がサポニンを有し、前記エクオール含有組成物は、サポニン30重量部に対して、前記甘味料を3~20重量部含有する請求項6に記載のエクオール含有組成物。
【請求項11】
前記エクオール含有組成物は、エクオール含有物1000重量部に対して、前記甘味料3~20重量部含有する請求項6に記載のエクオール含有組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のエクオール含有組成物を有する食品。
【請求項13】
(A)エクオール含有物を準備する工程;及び
(B)エクオール含有物に、ソーマチン及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤を加えて混合する工程;
を有することにより、ソーマチン及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物を得るエクオール含有組成物の製造方法。
【請求項14】
前記エクオール含有物が液状であり、該液状物に前記(B)工程を行い、その後、液状物を乾燥させる工程を行う請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記エクオール含有物が固形状であり、該固形物に前記(B)工程を行う請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記(B)工程の前、又は前記(B)工程とほぼ同時に、又は前記(B)工程後に、
(C)前記マスキング剤以外の甘味料であって、アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、クルクリン、モネリン、モナチン、ミラクリン、及びヘルナンドゥルシンからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料を加えて混合する工程;
を有する請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクオール含有組成物、特にマスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物、より特にソーマチン及びラカンカエキスから選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を含有するエクオール含有組成物に関する。
また、本発明は、該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆、葛などのマメ科の植物に多く含まれているイソフラボン類はポリフェノールの分類のひとつであり、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。近年の調査により、イソフラボン類は女性ホルモン作用(エストロゲン)や抗酸化作用を有し、イソフラボン類を摂取することにより、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、高コレステロール血症、心疾患、更年期障害などに対して予防効果があることが明らかとなっている。
イソフラボン類は、たとえば大豆内では、糖と共有結合した配糖体の形、ダイジン(daidzin)、グリシチン(glycitin)、ゲニスチン(genistin)として存在しており、アグリコンの形ではごく少量存在しているのみである。これら配糖体はさらにマロニル化、アセチル化されているものも存在している。これらの配糖体は、ヒトや動物の体内に入ると消化酵素又は腸内細菌の産生する酵素であるβグルコシダーゼ等の働きにより、それぞれダイゼイン(daidzein)、グリシテイン(glycitein)、ゲニステイン(genistein)となる。さらに、ダイゼインは腸内細菌の働きにより、ジヒドロダイゼイン(dihydrodaidzein)を経て、O-デスメチルアンゴレンシン(O-desmethylangolensin:O-DMA)又はエクオール(equol)へと酵素的に変換されることが知られている。
【0003】
エクオールは、これらの代謝産物の中で最もエストロゲン活性が高いことが知られている。しかしながら、人間の場合、イソフラボンの代謝には個人差があり、上記のようにダイゼインを発酵させてエクオールを産生する能力を有する腸内細菌を保有する人は少なく、その保有率は日本人で約5割、欧米人で約3割程度であることが明らかとなっている。そのため、エクオール産生菌を保有しない人は、大豆等のマメ科食物を摂取してもエクオールを体内で産生することができないという問題点が存在していた。
これらの課題を克服するために、乳酸菌等の嫌気性微生物を用いて体外的にエクオールを産生させる試みがなされている(特許文献1~4)。
【0004】
このように得られたエクオールを含有する大豆胚軸発酵物には苦みがあり、エクオールを摂取する際の問題となっていた。
この苦みを低減させるために、特許文献5は、カカオマスを配合する手法を採用している。カカオマスは苦みをマスキングできるが、カカオマスの苦みが残るという問題や、カカオマスの風味、特に香りが残存しており、得られたエクオール含有大豆胚軸発酵物の食品としての用途が限られるという問題があった。
【0005】
また、特許文献6は、サポニンの苦みを低減させるために、エタノール水溶液で抽出する手法を採用している。しかしながら、エタノール水溶液での抽出は、抽出工程を設けることにより加工に手間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-204296号公報。
【特許文献2】特表2006-504409号公報。
【特許文献3】特開2008-61584号公報。
【特許文献4】特開2010-104241号公報。
【特許文献5】WO2008/153158。
【特許文献6】特開2013-188220号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、苦みを抑えたエクオール含有組成物を提供することにある。
本発明の目的は、具体的には、食品への応用に制限が全くないか又は制限がないに等しい、苦みを抑えたエクオール含有組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、加工の手間を少なくした、苦みを抑えたエクオール含有組成物を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、上記エクオール含有組成物を含有する食品を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的の他に、又は上記目的に加えて、上記のエクオール含有組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者らは、以下の発明を見出した。
<1> ソーマチン及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物。
<2> 上記<1>において、マスキング剤がソーマチンであるのがよい。
【0009】
<3> 上記<1>又は<2>において、エクオール含有組成物は、イソフラボン5.6重量部に対して、マスキング剤を0.1~20重量部、好ましくは0.5~12重量部、より好ましくは1~10重量部、最も好ましくは2~7重量部含有するのがよい。なお、本明細書において、イソフラボンとは、ダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテインをいう。
【0010】
<4> 上記<1>~<3>のいずれかにおいて、エクオール含有組成物がサポニンを有し、エクオール含有組成物は、サポニン30重量部に対して、マスキング剤を0.1~20重量部、好ましくは0.5~12重量部、より好ましくは1~10重量部、最も好ましくは2~7重量部含有するのがよい。
<5> 上記<1>~<4>のいずれかにおいて、エクオール含有組成物は、エクオール含有物1000重量部に対して、マスキング剤を0.1~20重量部、好ましくは0.5~12重量部、より好ましくは1~10重量部、最も好ましくは2~7重量部含有するのがよい。
【0011】
<6> 上記<1>~<5>のいずれかにおいて、アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、クルクリン、モネリン、モナチン、ミラクリン、及びヘルナンドゥルシンからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料をさらに有するのがよい。
【0012】
<7> 上記<1>~<6>のいずれかにおいて、甘味料がアスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムであるのがよく、好ましくはアスパルテームであるのがよい。
【0013】
<8> 上記<1>~<7>のいずれかにおいて、エクオール含有組成物は、イソフラボン5.6重量部に対して、前記甘味料を3~20重量部、好ましくは5~15重量部、より好ましくは7~12重量部含有するのがよい。
【0014】
<9> 上記<1>~<8>のいずれかにおいて、エクオール含有組成物がサポニンを有し、エクオール含有組成物は、サポニン30重量部に対して、甘味料を3~20重量部、好ましくは5~15重量部、より好ましくは7~12重量部含有するのがよい。
<10> 上記<1>~<9>のいずれかにおいて、エクオール含有組成物は、エクオール含有物1000重量部に対して、甘味料を3~20重量部、好ましくは5~15重量部、より好ましくは7~12重量部含有するのがよい。
【0015】
<11> 上記<1>~<10>のいずれかに記載のエクオール含有組成物を有する食品。
【0016】
<12> (A)エクオール含有物を準備する工程;及び
(B)エクオール含有物に、ソーマチン及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤を加えて混合する工程;
を有することにより、ソーマチン及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物を得るエクオール含有組成物の製造方法。
【0017】
<13> 上記<12>において、エクオール含有物が液状であり、該液状物に前記(B)工程を行い、その後、液状物を乾燥させる工程を行うのがよい。
<14> 上記<12>において、エクオール含有物が固形状であり、該固形物に前記(B)工程を行うのがよい。
【0018】
<15> 上記<12>~<14>のいずれかにおいて、前記(B)工程の前、又は前記(B)工程とほぼ同時に、又は前記(B)工程後に、
(C)マスキング剤以外の甘味料であって、アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、クルクリン、モネリン、モナチン、ミラクリン、及びヘルナンドゥルシンからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料を加えて混合する工程;
を有するのがよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、苦みを抑えたエクオール含有組成物を提供することができる。
また、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、食品への応用に制限が全くないか又は制限がないに等しい、苦みを抑えたエクオール含有組成物を提供することができる。
さらに、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、加工の手間を少なくした、苦みを抑えたエクオール含有組成物を提供することができる。
【0020】
さらに、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、上記エクオール含有組成物を含有する食品を提供することができる。
また、本発明により、上記効果の他に、又は上記効果に加えて、上記のエクオール含有組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願は、苦みを抑えたエクオール含有組成物、特にソーマチン及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物を提供する。
また、本願は、該エクオール含有組成物を含有する食品を提供する。
さらに、本願は、該エクオール含有組成物を提供する。以下、順に説明する。
【0022】
<エクオール含有組成物>
本発明のエクオール含有組成物は、ソーマチン及びラカンカエキスからなる群(A群)から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を有する。
<<マスキング剤>>
マスキング剤は、A群から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはソーマチンであるのがよい。
【0023】
マスキング剤は、エクオール含有組成物中、苦みを抑える効果を奏する量であれば、特に限定されないが、次のような量で含むのがよい。
エクオール含有組成物は、イソフラボン5.6重量部に対して、マスキング剤を0.1~20重量部、好ましくは0.5~12重量部、より好ましくは1~10重量部、最も好ましくは2~7重量部含有するのがよい。なお、マスキング剤としてラカンカエキスを用いる場合、ラカンカエキスは、イソフラボン5.6重量部に対して、2~6重量部、好ましくは2~3重量部含有するのがよい。
【0024】
また、例えば、エクオール含有組成物がサポニンを有する場合、エクオール含有組成物は、サポニン30重量部に対して、マスキング剤を0.1~20重量部、好ましくは0.5~12重量部、より好ましくは1~10重量部、最も好ましくは2~7重量部含有するのがよい。なお、マスキング剤としてラカンカエキスを用いる場合、エクオール含有組成物は、サポニン30重量部に対して、ラカンカエキスを2~6重量部、好ましくは2~3重量部含有するのがよい。
【0025】
さらに、マスキング剤は、エクオール含有物1000重量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.5~12重量部、より好ましくは1~10重量部、最も好ましくは2~7重量部含有するのがよい。なお、マスキング剤としてラカンカエキスを用いる場合、ラカンカエキスは、エクオール含有物1000重量部に対して、2~6重量部、好ましくは2~3重量部含有するのがよい。
【0026】
<<エクオール含有物>>
エクオール含有物は、エクオールを含有するものであれば、特に限定されない。
エクオール含有物は、市販されているエクオール含有物であっても、自ら製造するエクオール含有物であってもよい。
エクオール含有物は、好ましくはエクオール含有発酵物であるのがよく、より好ましくはエクオール含有大豆胚軸発酵物又はエクオール含有大豆胚軸抽出発酵物であるのがよい。例えば、エクオール含有物がエクオール含有大豆胚軸発酵物である場合、エクオール含有物は、エクオール含有大豆胚軸発酵物由来の成分を有する。また、エクオール含有物がエクオール含有大豆胚軸抽出発酵物である場合、エクオール含有物は、エクオール含有大豆胚軸抽出発酵物由来の成分を有する。
【0027】
エクオール含有大豆胚軸発酵物又はエクオール含有大豆胚軸抽出発酵物は、液状であっても固形状であってもよい。エクオール含有組成物も液状であっても固形状であってもよいが、好ましくは固形状、より好ましくは粉末状であるのがよい。
【0028】
エクオール含有大豆胚軸発酵物由来の成分は、その製造方法などに依存するが、例えばダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、サポニン、油脂類、タンパク質類などの成分を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0029】
エクオール含有物がエクオール含有大豆胚軸発酵物又はエクオール含有大豆胚軸抽出発酵物である場合、該エクオール含有大豆胚軸発酵物又はエクオール含有大豆胚軸抽出発酵物は、市販のものであっても、自ら製造したものであってもよい。
エクオール含有大豆胚軸発酵物又はエクオール含有大豆胚軸抽出発酵物を製造する場合、従来公知の製造方法などにより製造することができる。
【0030】
<<甘味料>>
本発明のエクオール含有組成物は、マスキング剤に加えて甘味料を有するのがよい。
甘味料は、アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、クルクリン、モネリン、モナチン、ミラクリン、及びヘルナンドゥルシンからなる群(B群)から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
甘味料は、好ましくはアスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムであるのがよく、より好ましくはアスパルテームであるのがよい。
【0031】
本発明のエクオール含有組成物が甘味料を有する場合、該甘味料は、イソフラボン5.6重量部に対して、3~20重量部、好ましくは5~15重量部、より好ましくは7~12重量部含有するのがよい。
また、例えば、エクオール含有組成物がサポニンを有する場合、エクオール含有組成物は、サポニン30重量部に対して、甘味料を3~20重量部、好ましくは5~15重量部、より好ましくは7~12重量部含有するのがよい。
【0032】
さらに、甘味料は、エクオール含有物1000重量部に対して、3~20重量部、好ましくは5~15重量部、より好ましくは7~12重量部含有するのがよい。
マスキング剤に関する上記の含有量、及び甘味料に関する上記の含有量とすることにより、苦みを抑えたエクオール含有組成物、特にほどよい甘さを呈し苦みを抑えたエクオール含有組成物を提供することができる。
【0033】
本発明のエクオール含有組成物は、エクオール含有物及びマスキング剤を有し、場合によって甘味料を有していれば、どのような形態であってもよい。また、エクオール含有物及びマスキング剤以外の成分、甘味料を有する場合にはエクオール含有物、マスキング剤及び甘味料以外の成分を含んでもよい。
【0034】
<エクオール含有組成物を有する食品>
本願は、エクオール含有組成物を有する食品を提供する。
ここで、「エクオール含有組成物」は上述と同じ定義を有する。
食品として、例えば、サプリメント、もち、わらび餅、トースト、白玉団子、アイスクリーム、ゼリー、グミ、キャンディ、ジュース、チョコレート、クッキー、ビスケットなどおよそきな粉を使用する食品を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0035】
<マスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物の製造方法>
本願は、マスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物の製造方法を提供する。
マスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物は、例えば次のように製造することができる。
(A)エクオール含有物を準備する工程;及び
(B)エクオール含有物に、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤を加えて混合する工程;
を有することにより、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム及びラカンカエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種のマスキング剤及びエクオール含有物を有するエクオール含有組成物を得ることができる。
なお、ここで、「エクオール含有物」、「マスキング剤」については、上述と同じ定義を有する。「マスキング剤」の添加量は、上述の「マスキング剤」についての含有量と同じ量とすることができる。
【0036】
(A)工程は、エクオール含有物を準備する工程である。なお、「エクオール含有物」の定義は上述と同じ定義を有する。
エクオール含有物の準備には、市販されているエクオール含有物を入手すること、及び/又はエクオール含有物を製造することが含まれる。
【0037】
(B)工程は、エクオール含有物にマスキング剤を加えて混合する工程である。
マスキング剤は、上述したとおり、上述の「マスキング剤」と同じ定義を有する。
マスキング剤は、エクオール含有物に含まれるエクオール量、エクオール含有物に含まれるサポニン量などに依存する。マスキング剤の添加量は、上記「マスキング剤」についての含有量と同じ量とするのがよい。
【0038】
エクオール含有物が液状である場合、(B)工程は、液状であるエクオール含有物にマスキング剤を加え混合するのがよい。なお、その後、液状物を乾燥させる工程を行い、固形状、特に粉末状にするのがよい。マスキング剤の添加、混合は、従来公知の方法により行うことができる。
また、エクオール含有物が固形状である場合、(B)工程は、固形状であるエクオール含有物にマスキング剤を加え混合するのがよい。マスキング剤が固形状、特に粉末状であり、エクオール含有物が粉末状であれば、従来公知の方法により混合することができる。なお、固形状のマスキング剤を水などの溶媒に溶かして液状とし、その液状のものをエクオール含有物に添加し、混合してもよい。この場合、その後、水などの溶媒を乾燥させる工程を行い、固形状、特に粉末状にするのがよい。
【0039】
(B)工程の前、又は前記(B)工程とほぼ同時に、又は前記(B)工程後に、
(C)アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、クルクリン、モネリン、モナチン、ミラクリン、及びヘルナンドゥルシンからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料を加えて混合する工程;
を有するのがよい。
なお、「甘味料」は、上記「甘味料」と同じ定義を有し、その添加量は、「甘味料」についての含有量と同じ量とするのがよい。
【0040】
甘味料は、エクオール含有物に含まれるエクオール量、エクオール含有物に含まれるサポニン量などに依存するが、例えばエクオール含有物1000重量部に対して、3~20重量部、好ましくは5~15重量部、より好ましくは7~12重量部であるのがよい。
【0041】
甘味料が液状である場合、「マスキング剤が液状」の場合と同様に、混合するのがよく、甘味料が固形状である場合、「マスキング剤が固形状」の場合と同様に、混合するのがよい。
【0042】
本発明のエクオール含有組成物の製造方法は、(A)工程及び(B)工程以外の工程を有してもよい。なお、本発明のエクオール含有組成物の製造方法が(C)工程を有する場合、(A)工程、(B)工程及び(C)工程以外の工程を有してもよい。
そのような工程として、例えばエクオール含有物を製造する工程、上述した液状物を固形状にする乾燥工程、固形状のものを粉末状にする粉砕工程などを挙げることができるがこれらに限定されない。なお、乾燥工程、粉砕工程などは、従来公知の方法を用いることができる。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0043】
[製造例1]
(酵素処理)
大豆胚芽(不二製油製)をワーリングブレンダーにより、粉砕した。粉砕した大豆胚芽27gに脱イオン水を加え、pHを4~7に調整して135mLとした。ここに270mgのペクチナーゼGアマノを加え、50℃で20~24時間、撹拌しながらアグリコン化を行い、酵素処理液を得た。
【0044】
(種培養)
GAMブイヨン培地(日水製薬製)5.9gとL-アルギニン塩酸塩1.2gを純水100mLに溶かし、窒素ガスを通じながら20mLずつ嫌気性菌培養用18mm試験管(三紳工業製)に分注し、ブチルゴム栓、プラスチックキャップをして115℃、15分間滅菌した。
この培地に-80℃で凍結保存していたアサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM18785株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後、37℃、200spmで20時間振とう培養を行い、種培養液を得た。
【0045】
(発酵)
前記酵素処理液に、L-アルギニン塩酸塩、GAMブイヨン培地を添加し、180mLとした後、115℃、15分間蒸気オートクレーブ滅菌し、室温まで冷却後、上述した前記種培養液を植菌し、気相を水素ガスで無菌的に2分間以上置換した後、37℃、250spmの条件で振とう培養し、発酵を行い、発酵後培養液を得た。
【0046】
(粉末化)
上記発酵後培養液を80℃、10分加熱処理を行い、凍結乾燥することによりエクオール含有大豆胚芽発酵物を得た。この発酵物中のエクオール、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、及びサポニンの含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で測定したところ、次の結果を得た。HPLC法の条件は例えば以下のものを例示することができるがこれに限定されない。
【0047】
[高速液体クロマトグラフィー条件]
カラム:Phenomenox Luna 5uC18、2.0mm×150mm(島津ジーエルシー)
移動相:水/メタノール[55:45,v/v]
流速:0.2mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV280nm
保持時間:ダイゼインが19.6分、グリシテインが22.5分、エクオールが25.6分、ゲニステインが35.0分
【0048】
なお、サポニンの分析は、次のように行った。
検体(サポニン含有量1mg相当)から水1mL+メタノール18mLの混液で抽出した。不溶物に対し、さらにメタノール20mLで抽出し、抽出液を混合した。この混合液から減圧濃縮によりメタノールを留去した。10%塩酸メタノール10mLを添加し、80℃、2時間加熱還流後、エタノールを加え、これをHPLC分析用サンプルとした。
ソヤサポゲノールA(分子量:474.72)およびソヤサポゲノールB(分子量:458.73)の標準品それぞれ10mgを100mLのメスフラスコに精秤し、エタノールに溶解、定容して標準溶液とした。
大豆サポニンAb(分子量:1437.52)、大豆サポニンBb(分子量:943.12)の含有量を求めるには、ソヤサポゲノールA、ソヤサポゲノールBの分子量から換算した。
【0049】
[高速液体クロマトグラフィー条件]
カラム:Inertsil ODS-2 5μm、φ2.0mm×150mm(ジーエルサイエンス)
移動相:アセトニトリル/1%酢酸水=7:3
流速:0.2mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV 210nm
保持時間:サポゲノールA 6.78分、サポゲノールB 14.13分
【0050】
含有量
エクオール 4.5mg/g
ダイゼイン 1.7mg/g
ゲニステイン 0.29mg/g
グリシテイン 3.6mg/g
サポニン 30mg/g
【0051】
[実施例1]
製造例1で得られたエクオール含有大豆胚芽発酵物に、アセスルファムK、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、ラカンカエキス(モグロシドV 72%含有)、及びステビアエキス(ステビオール配糖体を80.0%以上含む)のうち1種を添加し、よく混合しエクオール含有組成物を得た。該エクオール含有組成物について、パネラー5名による試食を行った。なお、添加量は、砂糖換算で同等の甘味となるように算出した。
試食は、甘み又は苦みが口に残るため、適宜、水道水で口をゆすぎながら行った。無添加のものの苦みを5、甘みを1、大豆胚芽発酵物と当重量の砂糖を添加したものの甘みを5として、5段階で数値化を行った。その結果を表1に示す。
表1から、アセスルファムK、アスパルテーム、スクラロースの添加では、甘みはあるものの苦みも感じられ、効果としては十分ではないことがわかった。一方、ソーマチン、ラカンカエキスでは、甘みはあまり感じられないものの、苦みが軽減されることがわかり、マスキング剤として有用であることがわかった。
【0052】
【表1】
【0053】
[実施例2]
添加物をソーマチンとしその量を表2に示す量に変えた以外、実施例1と同様にエクオール含有組成物を得た。その組成物について、実施例1と同様に、パネラー5名による試食を行った。その結果を表2に示す。
表2から、ソーマチンの添加量を増やすことによって、甘みは弱めであるが、苦みが低減されることがわかった。試食を行ったパネラーによると、ソーマチンの添加量を増やすことによりきな粉様の味に近づくことがわかった。
【0054】
【表2】
【0055】
[実施例3]
添加物をラカンカエキスとしその量を表3に示す量に変えた以外、実施例1及び実施例2と同様にエクオール含有組成物を得た。その組成物について、実施例1及び実施例2と同様に、パネラー5名による試食を行った。その結果を表3に示す。
表3から、ラカンカエキスの添加量を増やすことによって、甘みは徐々に増し、苦みが低減されるが、量を増やすと、エクオール含有大豆胚芽発酵物とは異なる苦みがでてくることがわかった。
【0056】
【表3】
【0057】
[実施例4]
添加物を表4に示すアスパルテーム及びソーマチンとし且つその量を表4に示す量に変えた以外、実施例1~実施例3と同様に、エクオール含有組成物を得た。その組成物について、実施例1~実施例3と同様に、パネラー5名による試食を行った。その結果を表4に示す。
【0058】
表4から、アスパルテーム量が多くなると甘みが強くなり、ソーマチン添加による苦み抑制効果を軽減することがわかった。また、表4から、特に実施例4-3~4-7から、ソーマチン量が多くなりすぎるとと、苦みを感じることがわかった。なお、パネラーによると、アスパルテーム量が多くなると後に残る甘さを感じることがわかった。また、パネラーによると、総じて、きな粉砂糖のような風味を感じることがわかった。
以上のことから、アスパルテーム量が5~10重量部において、適度な甘みを感じ、ソーマチン量2~7重量部において、後に残る苦みをマスキングできることがわかった。
【0059】
【表4】
【0060】
[参考例2]
実施例4-4の苦みを改善したエクオール含有組成物を、1)もち、2)わらび餅、3)トースト、4)白玉団子、5)アイスクリームに用いて、食品として摂取を試みた。
1)もち
市販の切り餅を、水に漬けた後電子レンジで温め、やわらかくした。このもちに実施例4-4の苦みを改善したエクオール含有組成物をまぶし、パネラーによる試食を行った。パネラーによると、きな粉餅様であり、おいしく食することができたとのことであった。
2)わらび餅
市販のわらび餅に、実施例4-4の苦みを改善したエクオール含有組成物をまぶし、パネラーによる試食を行った。パネラーによると、わらび餅に添付されたきな粉砂糖と食べ比べてもそん色のない味であるとのことであった。
【0061】
3)トースト
市販の食パン(六枚切りのうちの1枚)をトースターで焼きマーガリンを塗った。これに実施例4-4の苦みを改善したエクオール含有組成物をまぶし、パネラーによる試食を行った。パネラーによると、きな粉をかけたトーストと同様の味であるとのことであった。
4)白玉団子
市販の白玉粉に水を加え、よく混ぜた後、3cmほどの大きさに丸めた。これを沸騰したお湯に入れ、浮き上がってきたところを掬い上げた。これに実施例4-4の苦みを改善したエクオール含有組成物をまぶし、パネラーによる試食を行った。パネラーによると、苦みを感じることなく、きな粉白玉団子様であり、食することができたとのことであった。
5)アイスクリーム
市販のバニラアイスに実施例4-4の苦みを改善したエクオール含有組成物をまぶし、パネラーによる試食を行った。パネラーによると、アイスクリームのバニラ味が和風テイストとなり、苦みを感じることなく食することができたとのことであった。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項14
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項14】
前記エクオール含有物が液状であり、該液状物に前記(B)工程を行い、その後、液状物を乾燥させる工程を行う請求項13に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項15
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項15】
前記エクオール含有物が固形状であり、該固形物に前記(B)工程を行う請求項13に記載の方法。