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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001963
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241226BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
E04B1/58 505M
E04B1/30 E
E04B1/58 508Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101789
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】村木 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】太田 和也
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB12
2E125AC29
2E125AG22
2E125AG32
2E125AG50
(57)【要約】
【課題】柱梁接合部の製作や施工を容易にできる柱梁接合構造を提供する。
【解決手段】接合部外周鋼板219には、外周面に梁リブ鋼板35が接合され、内周面に接合部リブ鋼板6が接合され、接合部リブ鋼板6は、上下方向から見た平面視における柱梁接合部1の角部それぞれに対応する位置に複数設けられ、柱梁接合部1に梁3が接合される方向に対して斜めとなる斜め方向に延び、斜め方向の両端部それぞれが接合部外周鋼板219と接合され、同一の角部に設けられる接合部リブ鋼板6は、平行に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板コンクリート構造の柱と、
前記柱の柱梁接合部に接合される鋼板コンクリート構造の梁と、を有し、
前記梁は、それぞれ、
両側面を形成して対向する一対のウェブ鋼板と、
上面および下面を形成する一対のフランジ鋼板と、
前記一対のウェブ鋼板および前記一対のフランジ鋼板に囲まれた空間に充填された梁コンクリートと、
前記一対のフランジ鋼板のうちの上側のフランジ鋼板には下方に突出するように接合され、下側のフランジ鋼板には上方に突出するように接合され前記梁コンクリートに埋設される梁リブ鋼板と、を有し、
前記梁リブ鋼板は、それぞれ前記梁の長さ方向に延び、
前記柱梁接合部は、
上端部および下端部に設けられ、それぞれ前記フランジ鋼板が接合される一対のダイアフラムと、
前記一対のダイアフラムの間に設けられ外周面を形成する接合部外周鋼板と、
前記一対のダイアフラムおよび前記接合部外周鋼板に囲まれた空間に充填された接合部コンクリートと、
前記一対のダイアフラムのうちの上側のダイアフラムには下方に突出するように接合され、下側のダイアフラムには上方に突出するように接合され前記接合部コンクリートに埋設される接合部リブ鋼板と、を有し、
前記接合部外周鋼板には、外周面に前記梁リブ鋼板が接合され、内周面に前記接合部リブ鋼板が接合され、
前記接合部リブ鋼板は、
上下方向から見た平面視における前記柱梁接合部の角部それぞれに対応する位置に複数設けられ、前記柱梁接合部に前記梁が接合される方向に対して斜めとなる斜め方向に延び、前記斜め方向の両端部それぞれが前記接合部外周鋼板と接合され、
同一の角部に設けられる前記接合部リブ鋼板は、平行に配置される柱梁接合構造。
【請求項2】
前記接合部コンクリートは、それぞれ前記上側のダイアフラムに接合されて隣接する前記接合部リブ鋼板の間に嵌め込まれるプレキャストコンクリート部材を有する請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
前記プレキャストコンクリート部材には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、前記上側のダイアフラムを上下方向に貫通する空気抜き孔と上下方向に重なる位置に配置される請求項2に記載の柱梁接合構造。
【請求項4】
前記柱梁接合部は、
前記上側のダイアフラムには下方に突出するように接合され、前記下側のダイアフラムには上方に突出するように接合され前記接合部コンクリートに埋設される中間部リブ鋼板を有し、
前記中間部リブ鋼板は、
上下方向から見た平面視における前記柱梁接合部の中央部に対応する位置に設けられ、前記梁の長さ方向に延び、両端部が前記接合部外周鋼板と接合されている請求項1から3のいずれか一項に記載の柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板コンクリート構造(SC構造)は、構造部材の外殻となる鋼板を型枠としてその内部にコンクリートを充填し、鋼板の内側面に接合した多数のスタッドボルトを介して鋼板とコンクリートとが構造的に一体化する構造である。このようなSC構造において、鋼板にリブ鋼板を設けることで断面性能を向上させた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。SC構造は、鋼板の板厚制限があるため、鋼板の板厚を上限とした上でリブ鋼板を設けることにより、さらなる断面性能の向上が可能である。
SC構造では、リブ鋼板を設けた梁を柱に接合する場合、柱梁接合部の上端部および下端部に設けられるダイアフラムにも梁の長さ方向に延びるリブ鋼板を設けている。柱梁接合部に対して直交する2方向から梁を接合する場合には、ダイアフラムに格子状にリブ鋼板を設けることが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5737548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイアフラムに格子状にリブ鋼板を設ける場合、溶接作業が多くなり、製作および検査の工程が増えるという問題がある。
柱梁接合部の上端部に設けられるダイアフラムに下方に突出するように格子状のリブ鋼板が設けられている場合、コンクリート打設時にリブ鋼板の格子の間に空気が溜まりやすく、作業性が良くないとともに、コンクリートの充填不良の虞がある。
発電所のタービンの架台のように柱、梁が大型であり、柱梁接合部も大型の場合、施工性を考慮して柱梁接合部のダイアフラムに施工用の開口を設けることがある。しかしながら、ダイアフラムにリブ鋼板が格子状に設けられていると、開口の形状や配置に制約が生じ、施工性に影響が出る虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、柱梁接合部の製作や施工を容易にできる柱梁接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る柱梁接合構造は、鋼板コンクリート構造の柱と、前記柱の柱梁接合部に接合される鋼板コンクリート構造の梁と、を有し、前記梁は、それぞれ、両側面を形成して対向する一対のウェブ鋼板と、上面および下面を形成する一対のフランジ鋼板と、前記一対のウェブ鋼板および前記一対のフランジ鋼板に囲まれた空間に充填された梁コンクリートと、前記一対のフランジ鋼板のうちの上側のフランジ鋼板には下方に突出するように接合され、下側のフランジ鋼板には上方に突出するように接合され前記梁コンクリートに埋設される梁リブ鋼板と、を有し、前記梁リブ鋼板は、それぞれ前記梁の長さ方向に延び、前記柱梁接合部は、上端部および下端部に設けられ、それぞれ前記フランジ鋼板が接合される一対のダイアフラムと、前記一対のダイアフラムの間に設けられ外周面を形成する接合部外周鋼板と、前記一対のダイアフラムおよび前記接合部外周鋼板に囲まれた空間に充填された接合部コンクリートと、前記一対のダイアフラムのうちの上側のダイアフラムには下方に突出するように接合され、下側のダイアフラムには上方に突出するように接合され前記接合部コンクリートに埋設される接合部リブ鋼板と、を有し、前記接合部外周鋼板には、外周面に前記梁リブ鋼板が接合され、内周面に前記接合部リブ鋼板が接合され、前記接合部リブ鋼板は、上下方向から見た平面視における前記柱梁接合部の角部それぞれに対応する位置に複数設けられ、前記柱梁接合部に前記梁が接合される方向に対して斜めとなる斜め方向に延び、前記斜め方向の両端部それぞれが前記接合部外周鋼板と接合され、同一の角部に設けられる前記接合部リブ鋼板は、平行に配置される。
【0007】
本発明では、接合部リブ鋼板は、上下方向から見た平面視における柱梁接合部の角部それぞれに対応する位置に設けられ、同一の角部に設けられる接合部リブ鋼板は、平行に配置されるため、リブ鋼板が格子状に設けられることが無い。これにより、ダイアフラム全体にリブ鋼板を格子状に設ける場合と比べて、溶接作業を少なくできるとともに、柱梁接合部に接合部コンクリートを充填する際に、隣り合う接合部リブ鋼板の間に空気が溜まりにくく、接合部コンクリートを良好に打設できる。ダイアフラムの中央部分には、接合部リブ鋼板が接合されないため、ダイアフラムに施工用の開口を設ける場合に、開口の形状や配置の制約が少ない。
【0008】
また、本発明に係る柱梁接合構造では、前記接合部コンクリートは、それぞれ前記上側のダイアフラムに接合されて隣接する前記接合部リブ鋼板の間に嵌め込まれるプレキャストコンクリート部材を有していてもよい。
【0009】
このような構成とすることにより、上側のダイアフラムに接合された隣接する接合部リブ鋼板の間にプレキャストコンクリート部材を嵌め込むことによって、隣接する接合部リブ鋼板の間にコンクリートが充填された状態を確実にかつ容易に実現できる。
【0010】
また、本発明に係る柱梁接合構造では、前記プレキャストコンクリート部材には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔は、前記上側のダイアフラムを上下方向に貫通する空気抜き孔と上下方向に重なる位置に配置されていてもよい。
【0011】
このような構成とすることにより、上側のダイアフラムにプレキャストコンクリート部材を取り付けた状態で、接合部コンクリートの打設を行う際に、プレキャストコンクリート部材がダイアフラムの空気抜き孔を塞ぐことが無く、接合部コンクリートの打設を良好に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る柱梁接合構造では、前記柱梁接合部は、前記上側のダイアフラムには下方に突出するように接合され、前記下側のダイアフラムには上方に突出するように接合され前記接合部コンクリートに埋設される中間部リブ鋼板を有し、前記中間部リブ鋼板は、上下方向から見た平面視における前記柱梁接合部の中央部に対応する位置に設けられ、前記梁の長さ方向に延び、両端部が前記接合部外周鋼板と接合されていてもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、柱梁接合部の断面性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、柱梁接合部の製作や施工を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態による柱梁接合構造の鉛直断面図であり、図2のA-A線断面図である。
図2図1のB-B線断面図である。
図3】梁の断面図である。
図4図2のC-C線断面図である。
図5】接合部材が取り付けられたプレキャストコンクリート部材である。
図6】接合部材をプレキャストコンクリート部材に取り付ける様子を示す図である。
図7】プレキャストコンクリート部材を上側ダイアフラムに取り付ける様子を示す図である。
図8】上側ダイアフラムに取り付けられたプレキャストコンクリート部材を示す図である。
図9】第2実施形態による柱梁接合構造の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態による柱梁接合構造について、図1図8に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態による柱梁接合構造は、鋼板コンクリート構造の梁3が接合される鋼板コンクリート構造の柱2の柱梁接合部1の構造である。以下では、互いに直交する水平方向をX方向、Y方向と表記する。図面では、X方向を矢印X、Y方向を矢印Y、鉛直方向を矢印Zで示す。
梁3は、柱2に対してX方向の両側、Y方向の両側それぞれから接合されている。柱2にX方向から接合される梁3を第1梁31と表記する。柱2にY方向から接合される梁3を第2梁32と表記する。第1梁31は、X方向に延びている。第2梁32は、Y方向に延びている。第1梁31および第2梁32の説明において、それぞれが延びる方向を長さ方向と表記し、長さ方向に直交する水平方向を幅方向と表記することがある。図3では、幅方向を矢印Aで示す。第1梁31と第2梁32とは、同じ形態である。第1梁31と第2梁32とは、同じ高さにおいて柱梁接合部1に接合されている。
【0017】
図1-4に示すように、梁3(第1梁31および第2梁32)は、それぞれ、梁外周鋼板33と、梁コンクリート34と、上側梁リブ鋼板35と、下側梁リブ鋼板36と、スタッド37と、を有する。図2および図3では、梁コンクリート34の図示を省略している。
梁外周鋼板33は、梁の長さ方向全体にわたって延び、断面形状が長方形となる角筒状の外殻を形成する。梁外周鋼板33は、一対のウェブ鋼板331,332と、上フランジ鋼板333と、下フランジ鋼板334と、を有する。一対のウェブ鋼板331,332、上フランジ鋼板333および下フランジ鋼板334は、それぞれ平板状に形成されている。一対のウェブ鋼板331,332は、梁3の両側面を形成する。一対のウェブ鋼板331,332は、それぞれ板面が梁3の幅方向を向き、互いに幅方向に間隔をあけて対向して配置されている。上フランジ鋼板333は、梁3の上面を形成する。下フランジ鋼板334は、梁3の下面を形成する。上フランジ鋼板333および下フランジ鋼板334は、それぞれ板面が水平面となり、互いに上下方向に間隔をあけて対向して配置されている。
梁コンクリート34は、梁外周鋼板33の内部に充填されたコンクリートである。
【0018】
上側梁リブ鋼板35および下側梁リブ鋼板36は、それぞれ梁3の長さ方向全体にわたってのびる長尺の平板状の鋼板である。上側梁リブ鋼板35および下側梁リブ鋼板36は、それぞれ板面が梁3の幅方向を向く姿勢に配置される。上側梁リブ鋼板35および下側梁リブ鋼板36には、それぞれ長さ方向に間隔をあけて複数のジベル孔351,361が形成されている。上側梁リブ鋼板35は、上フランジ鋼板333の下面に溶接されている。下側梁リブ鋼板36は、下フランジ鋼板334の上面に溶接されている。
【0019】
本実施形態では、4枚の上側梁リブ鋼板35が上フランジ鋼板333の下面に梁3の幅方向に等間隔をあけて溶接されている。4枚の下側梁リブ鋼板36が下フランジ鋼板334の上面に梁3の幅方向に等間隔をあけて溶接されている。梁3の幅方向の両端部に設けられた上側梁リブ鋼板35と、フランジ鋼板313,314との間隔は、幅方向に隣り合う上側梁リブ鋼板35の間隔と略等しく設定されている。梁3の幅方向の両端部に設けられた下側梁リブ鋼板36と、フランジ鋼板313,314との間隔は、幅方向に隣り合う下側梁リブ鋼板36の間隔と略等しく設定されている。
【0020】
スタッド37は、一対のウェブ鋼板331,332、上フランジ鋼板333および下フランジ鋼板334それぞれの内周面に複数溶接されている。
上側梁リブ鋼板35、下側梁リブ鋼板36およびスタッド37は、梁外周鋼板33と梁コンクリート34との付着強度を増大させるために設けられている。
【0021】
図1図2および図4に示すように、柱2には、梁3が接合する高さに柱梁接合部1が設けられている。柱2は、柱外周鋼板21と、柱コンクリート22と、を有する。柱コンクリート22は、柱外周鋼板21の内部に充填されたコンクリートである。
【0022】
柱外周鋼板21は、上下方向に延び、断面形状が正方形となる角筒状の外殻を形成する。柱外周鋼板21は、第1-第4鋼板211-214を有する。第1-第4鋼板211-214は、それぞれ平板状に形成され、この順に柱2の鉛直軸線回りに配列されている。第1鋼板211および第3鋼板213は、それぞれ板面がX方向を向き、互いにX方向に間隔をあけて対向して配置されている。第2鋼板212および第4鋼板214は、それぞれ板面がY方向を向き、互いにY方向に間隔をあけて対向して配置されている。第1鋼板211および第3鋼板213には、第1梁31の端面が対向する。第2鋼板212および第4鋼板214には、第2梁32の端面が対向する。以下では、第1鋼板211と第4鋼板214とが成す角部を第1角部215と表記する。第2鋼板212と第1鋼板211とが成す角部を第2角部216と表記する。第3鋼板213と第2鋼板212とが成す角部を第3角部217と表記する。第4鋼板214と第3鋼板213とが成す角部を第4角部218と表記する。
【0023】
柱2の柱梁接合部1には、柱外周鋼板21および柱コンクリート22に加えて、上側ダイアフラム4と、下側ダイアフラム5と、上側接合部リブ鋼板6と、下側接合部リブ鋼板7と、プレキャストコンクリート部材8(図1および図2参照)と、が設けられている。
上側ダイアフラム4および下側ダイアフラム5は、それぞれ板面が水平面となる平板状の鋼板である。上側ダイアフラム4および下側ダイアフラム5の板面形状は、柱外周鋼板21の外形よりもやや大きい正方形である。上側ダイアフラム4および下側ダイアフラム5は、それぞれの外縁部がX方向およびY方向に延びる向きに設置される。
【0024】
上側ダイアフラム4は、柱梁接合部1の上端部の高さであり、梁3の上フランジ鋼板333の高さに設けられている。下側ダイアフラム5は、柱梁接合部1の下端部の高さであり、梁3の下フランジ鋼板334の高さに設けられている。上側ダイアフラム4と下側ダイアフラム5の間には、柱外周鋼板21および柱コンクリート22が設けられている。柱梁接合部1の柱外周鋼板21と、柱梁接合部1の上に設けられる柱外周鋼板21との間に上側ダイアフラム4が設けられている。柱梁接合部1の柱外周鋼板21と、柱梁接合部1の下に設けられる柱外周鋼板21との間に下側ダイアフラム5が設けられている。柱梁接合部1の柱外周鋼板21および柱コンクリート22を接合部外周鋼板219および接合部コンクリート221と表記する。上側ダイアフラム4および下側ダイアフラム5それぞれの外縁部は、接合部外周鋼板219の外周面よりも外側に突出している。接合部外周鋼板219は、上側ダイアフラム4および下側ダイアフラム5に溶接されている。
上側ダイアフラム4および下側ダイアフラム5の中央部には、それぞれ上下方向に貫通する施工用の開口部41,51が形成されている(図2および図4参照)。開口部41,51は、丸孔である。上側ダイアフラム4には、開口部41とは別に、接合部コンクリート221の充填コンクリート222を充填する際の空気抜き孔42(図1参照)が複数形成されている。
【0025】
上側接合部リブ鋼板6は、平板状の鋼板である。上側接合部リブ鋼板6には、複数のジベル孔61が形成されている(図1参照)。上側接合部リブ鋼板6は、板面が鉛直面となる向きで上側ダイアフラム4の下面に溶接されている。上側接合部リブ鋼板6は、上側ダイアフラム4の下面から下方に突出している。上側接合部リブ鋼板6は、平面視における上側ダイアフラム4の外周部であり、接合部外周鋼板219の4つの角部215-218の内側となる位置それぞれに設けられている。上側接合部リブ鋼板6は、上側ダイアフラム4の開口部41と干渉しない位置に設けられている。
本実施形態では、上側接合部リブ鋼板6は、接合部外周鋼板219の4つの角部215-218の内側それぞれに2枚ずつ設けられている。
【0026】
第1角部215の内側および第3角部217の内側に設けられる2枚の上側接合部リブ鋼板6は、板面が角部215,217と柱梁接合部1の中心軸とを結ぶ水平方向(図2の矢印Bの方向、以下、第1斜め方向と表記する)を向き、第1斜め方向に間隔をあけて配置されている。第2角部216の内側および第4角部218の内側に設けられる2枚の上側接合部リブ鋼板6は、板面が角部216,217と柱梁接合部1の中心軸とを結ぶ水平方向(図2の矢印Cの方向、以下、第2斜め方向と表記する)を向き、第2斜め方向に間隔をあけて配置されている。第1斜め方向と第2斜め方向とは直交している。第1斜め方向および第2斜め方向は、それぞれX方向およびY方向に対して45°傾斜する角度である。同じ角部の内側に設けられた2枚の上側接合部リブ鋼板6は、平行に配置されている。
【0027】
各角部の内側に設けられた2枚の上側接合部リブ鋼板6は、それぞれ一方の端部が角部を形成する一方の鋼板と接合され、他方の端部が角部を形成する他方の鋼板と接合されている。上記の鋼板とは、接合部外周鋼板219を形成する第1-第4鋼板211-214のいずれかの鋼板を示す。
例えば、第1角部215の内側に設けられた上側接合部リブ鋼板6は、一方の端部が第1鋼板211と接合され、他方の端部が第4鋼板214と接合されている。鋼板における上側接合部リブ鋼板6が接合される位置は、その裏側に上側梁リブ鋼板35が接合されている位置である。各角部の内側に設けられた2枚の上側接合部リブ鋼板6のうち、角部に近い側の上側接合部リブ鋼板6は、その角部に一番目に近い上側梁リブ鋼板35と鋼板を挟んで隣接している。各角部の内に設けられた2枚の上側接合部リブ鋼板6のうち、角部と離れる側の上側接合部リブ鋼板6は、その角部に二番目に近い上側梁リブ鋼板35と鋼板を挟んで隣接している。
各角部の内側に2枚ずつ設けられた8枚の上側接合部リブ鋼板6は、互いに干渉しないように配置されている。すなわち、上側接合部リブ鋼板6は、格子状に配置されていない。
上側ダイアフラム4の空気抜き孔42は、同じ角部の内側に設けられた上側接合部リブ鋼板6の間、接合部外周鋼板219の角部と上側接合部リブ鋼板6との間に形成されている。
【0028】
下側接合部リブ鋼板7は、上側接合部リブ鋼板6と上下対称となる形態である。下側接合部リブ鋼板7は、上側接合部リブ鋼板6が上側ダイアフラム4の下面に接合されているのと同様に下側ダイアフラム5の上面に接合されている。下側接合部リブ鋼板7の説明を省略する。
接合部コンクリート221は、柱梁接合部1の内部、すなわち接合部外周鋼板219、上側ダイアフラム4および下側ダイアフラム5に囲まれた空間に充填されている。プレキャストコンクリート部材8は、接合部コンクリート221の一部である。接合部コンクリート221は、予め所定の形状に形成されてから柱梁接合部1の内部に設置されるプレキャストコンクリート部材8と、柱梁接合部1の内部に充填される充填コンクリート222と、から構成されている。
上側接合部リブ鋼板6および下側接合部リブ鋼板7は、接合部コンクリート221に埋設される。
【0029】
図1および図2に示すように、プレキャストコンクリート部材8は、ブロック状の部材で、同じ角部の内側に配置される2枚の上側接合部リブ鋼板6の間の領域231、および接合部外周鋼板219の角部と上側接合部リブ鋼板6とに囲まれた領域232それぞれに嵌め込まれている。プレキャストコンクリート部材8は、同じ角部の内側に配置される2枚の上側接合部リブ鋼板6の間の領域231、および接合部外周鋼板219の角部と上側接合部リブ鋼板6とに囲まれた領域232に対応する形状に形成されている。プレキャストコンクリート部材8の下面は、上側接合部リブ鋼板6の下端部と略同じ高さに配置されている。同じ角部の内側に配置される2枚の上側接合部リブ鋼板6の間の領域231に嵌め込まれるプレキャストコンクリート部材8の形状は、底面および上面が台形の四角柱である。接合部外周鋼板219の角部と上側接合部リブ鋼板6とに囲まれた領域232に嵌め込まれるプレキャストコンクリート部材8の形状は、三角柱である。
【0030】
プレキャストコンクリート部材8には、上下方向に貫通する貫通孔81が形成されている。プレキャストコンクリート部材8が上記の領域231,232に嵌め込まれると、接合部材82は、上側ダイアフラム4の空気抜き孔42と上下方向に重なる。
プレキャストコンクリート部材8は、図5に示す接合部材82によって上側ダイアフラム4に取り付けられている。接合部材82は、プレキャストコンクリート部材8の貫通孔81および上側ダイアフラム4の空気抜き孔42に挿通された状態でプレキャストコンクリート部材8と上側ダイアフラム4とを接合している。
【0031】
接合部材82は、鋼製の部材である。接合部材82は、筒状部821と、下板部822と、を有する。筒状部821は、円筒状であり、上下方向に延びる向きで貫通孔81および孔42に挿通される。筒状部821の高さ寸法は、プレキャストコンクリート部材8の高さ寸法よりも大きく形成されている。
下板部822は、筒状部821の下端部から外側に突出している。下板部822は、筒状部821の外形よりも大きく、プレキャストコンクリート部材8の貫通孔81には挿入不可能な大きさに形成されている。下板部822は、筒状部821の孔を塞がないように設けられている。接合部材82は、筒状部821がプレキャストコンクリート部材8に挿入されて、下板部822がプレキャストコンクリート部材8の下面に沿って配置される。筒状部821の上端部821aは、プレキャストコンクリート部材8の上面よりも上方に突出している。図6に示すように、接合部材82は、プレキャストコンクリート部材8の貫通孔81に下方から挿入される。
【0032】
プレキャストコンクリート部材8は、以下のように上側ダイアフラム4に取り付けられる。プレキャストコンクリート部材8を上側ダイアフラム4に取り付けるときには、上側ダイアフラム4は、接合部外周鋼板219の上縁部に接合されている。接合部外周鋼板219の内部には、充填コンクリート222が充填されていない。
まず、プレキャストコンクリート部材8の貫通孔81に接合部材82を挿入し、接合部材82の筒状部821上端部821aをプレキャストコンクリート部材8の上面よりも上方に突出させる。接合部材82に吊りワイヤ83を接続し、吊りワイヤ83を上側ダイアフラム4の空気抜き孔42に下側から挿入する。上側ダイアフラム4の上方から吊りワイヤ83を引き上げ、プレキャストコンクリート部材8を上方に引き上げて、上側接合部リブ鋼板6の間の領域231および角部と上側接合部リブ鋼板6との間の領域232に嵌め込む。接合部材82の筒状部821上端部821aを上側ダイアフラム4の上方に突出させる。筒状部821の上端部を上側ダイアフラム4の上面に溶接する。
このようにして、プレキャストコンクリート部材8が上側ダイアフラム4に取り付けられる。筒状部821は、上側ダイアフラム4の空気抜き孔42に挿入されているため、筒状部821の孔を介して上側ダイアフラム4の下方と上方とが連通している。このため、筒状部821の孔が、柱梁接合部1の内部に充填コンクリート222を充填する際の空気抜き孔になる。
【0033】
次に、本実施形態による柱梁接合構造の作用・効果について説明する。
本実施形態による柱梁接合構造では、上側接合部リブ鋼板6および下側接合部リブ鋼板7は、上下方向から見た平面視における柱梁接合部の角部それぞれに対応する位置に設けられるとともに、同一の角部に設けられる上側接合部リブ鋼板6および下側接合部リブ鋼板7は、平行に配置される。上側接合部リブ鋼板6および下側接合部リブ鋼板7が格子状に設けられることが無いため、ダイアフラム全体に上側接合部リブ鋼板6および下側接合部リブ鋼板7を格子状に設ける場合と比べて、溶接作業を少なくできるとともに、柱梁接合部に接合部コンクリートを充填する際に、上側接合部リブ鋼板6の間に空気が溜まりにくく、接合部コンクリートの充填不良の虞を軽減できて作業性が良い。ダイアフラムの中央部分には、上側接合部リブ鋼板6および下側接合部リブ鋼板7が接合されないため、ダイアフラムに施工用の開口を設ける場合に、開口の形状や配置の制約が少ない。
【0034】
隣接する上側接合部リブ鋼板6の間、および上側接合部リブ鋼板6と接合部外周鋼板219との間にはプレキャストコンクリート部材8が嵌め込まれている。
このような構成とすることにより、隣接する上側接合部リブ鋼板6の間、上側接合部リブ鋼板6と接合部外周鋼板219との間にプレキャストコンクリート部材8を嵌め込むことによって、接合部コンクリート221が充填された状態を確実にかつ容易に実現できる。
【0035】
プレキャストコンクリート部材8は、上下方向に貫通する貫通孔81を有し、貫通孔81は、上側ダイアフラム4を上下方向に貫通する空気抜き孔42と上下方向に重なる位置に配置されている。
このような構成とすることにより、上側ダイアフラム4にプレキャストコンクリート部材を取り付けた状態で、柱梁接合部1の内部に充填コンクリート222の打設を行う際に、プレキャストコンクリート部材8が上側ダイアフラム4の空気抜き孔42を塞ぐことが無く、充填コンクリート222の打設を良好に行うことができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、説明する。上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図9に示すように、第2実施形態による柱梁接合構造では、柱梁接合部1Bの断面形状がX方向に長い長方形状であり、柱梁接合部1BにX方向から接合される第1梁31BとY方向から接合される第2柱32Bとの断面形状が異なっている。第2梁32Bの梁幅寸法は、第1梁31Bの梁幅寸法よりも大きい。第1梁31Bには、第1実施形態の第1梁31と同様に4つの上側梁リブ鋼板35および4つの下側梁リブ鋼板36が幅方向(Y方向)に間隔をあけて配列されている。第2梁32Bには7つの上側梁リブ鋼板35および7つの下側梁リブ鋼板36が幅方向(X方向)に間隔をあけて配列されている。第1梁31および第2梁32における幅方向に隣り合う上側梁リブ鋼板35および幅方向に隣り合う下側梁リブ鋼板36の間隔は同じ寸法である。
【0037】
第2実施形態の上側ダイアフラム4Bには、4つの角部215B-218Bの内側に第1実施形態と同様の上側接合部リブ鋼板6Bが接合されている。下側ダイアフラムには、4つの角部215B-218Bの内側に第1実施形態と同様の下側接合部リブ鋼板が接合されている。上側ダイアフラム4Bおよび下側ダイアフラムには、X方向の中央部にY方向に延びる3本の中間部リブ鋼板9がX方向に間隔をあけて接合されている。中間部リブ鋼板9は、平板状の鋼板で、板面がX方向を向く姿勢である。中間部リブ鋼板9は、上側ダイアフラム4Bの下面から下方に突出している。中間部リブ鋼板9は、下側ダイアフラムの上面から上方に突出している。中間部リブ鋼板9は、Y方向の端部が接合部外周鋼板219と接合されている。上側ダイアフラム4Bに接合された中間部リブ鋼板9と上側接合部リブ鋼板6Bとは、離れて配置されている。下側ダイアフラムに接合された中間部リブ鋼板9と下側接合部リブ鋼板とは、離れて配置されている。上側ダイアフラム4Bにおける中間部リブ鋼板9と上側接合部リブ鋼板6Bとの間、すなわち3本の中間部リブ鋼板9のX方向の両側それぞれには、作業用の開口部41B,41Bが形成されている。下側ダイアフラムにおける中間部リブ鋼板9と下側接合部リブ鋼板との間、すなわち3本の中間部リブ鋼板9のX方向の両側それぞれには、作業用の開口部が形成されている。
【0038】
上記の第2実施形態による柱梁接合構造では、柱2Bの断面形状が正方形でなく、第1梁31Bと第2柱32Bとの断面形状が異なる場合であっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。上側ダイアフラム4Bには、X方向の中央部に中間部リブ鋼板9が接合されていることにより、柱梁接合部1Bの断面性能を向上させることができる。
第2実施形態では、隣り合う中間部リブ鋼板9の間に、隣り合う上側接合部リブ鋼板6Bとの間に設けられているプレキャストコンクリート部材8と同様のプレキャストコンクリート部材84が嵌め込まれていてもよい。このようにすることにより、隣り合う中間部リブ鋼板9の間にも接合部コンクリート221を確実に充填できる。
【0039】
以上、本発明による柱梁接合構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、上側ダイアフラム4,4Bにプレキャストコンクリート部材8,84が取り付けられているが、プレキャストコンクリート部材8,84を取り付けずに、柱梁接合部1,1Bの内部全体に充填コンクリート222を充填してもよい。このような場合でも、上側接合部リブ鋼板6,6Bが格子状に配置されていないことによって、充填コンクリート222を充填する際に、上側接合部リブ鋼板6の間に空気が溜まることが無く、作業性を向上できる。
また、上側ダイアフラム4の下面に接合部外周鋼板219および上側接合部リブ鋼板6を接合し、上下反転させて、隣り合う上側接合部リブ鋼板6の間、および上側接合部リブ鋼板6と接合部外周鋼板219との間にコンクリートを充填して硬化した後に上側ダイアフラム4を上下反転させて姿勢を戻し、上側ダイアフラム4の下側に接合された接合部外周鋼板219の下端部を下側ダイアフラム5と接合して、柱梁接合部1の内部に充填コンクリート222を充填するようにしてもよい。
【0040】
上記の実施形態では、プレキャストコンクリート部材8には、上下方向に貫通する貫通孔81が形成され、貫通孔81が、上側ダイアフラム4の空気抜き孔42と上下方向に重なる位置に配置されている。上側ダイアフラム4におけるプレキャストコンクリート部材8と重ならない部分に充填コンクリート222を打設する際の空気抜き孔が確保されている場合は、プレキャストコンクリート部材8に貫通孔81が形成されていなくてもよい。
また、プレキャストコンクリート部材8が上側ダイアフラム4に取り付けられる構造は上記以外であってもよい。
【0041】
上記の実施形態では、柱梁接合部1にX方向の両側およびY方向の両側から梁3が接合されているが、X方向およびY方向のいずれかの方向からのみ梁3が接合されていてもよい。また、柱梁接合部1にX方向から接合される梁3およびY方向から接合される梁3は、接合される方向の両側から接合されていてもよいし、片側からのみ接合されていてもよい。
【0042】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。
本実施形態に係る柱梁接合構造は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基板をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0043】
1,1B 柱梁接合部
2,2B 柱
3 梁
4,4B 上側ダイアフラム
5 下側ダイアフラム
6,6B 上側接合部リブ鋼板(接合部リブ鋼板)
7 下側接合部リブ鋼板(接合部リブ鋼板)
8,84 プレキャストコンクリート部材
9 中間部リブ鋼板
21 柱外周鋼板
22 柱コンクリート
31 第1梁
32 第2梁
33 梁外周鋼板
34 梁コンクリート
35 上側梁リブ鋼板
36 下側梁リブ鋼板
41,51,41B 開口部
42 空気抜き孔
81 貫通孔
82 接合部材
215-218 角部
219 接合部外周鋼板
221 接合部コンクリート
222 充填コンクリート
231,232 領域
313,314 フランジ鋼板
331,332 ウェブ鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9