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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019678
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】設計支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20250131BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20250131BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123412
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】598117366
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】尾見 賢司
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA07
5B146DG01
5B146DL02
(57)【要約】
【課題】本発明は、合板素材からなるパーツを用いて組立体の設計を行う設計支援システムにおいて、合板素材における積層面という観点を付与することを目的とする。
【解決手段】設計支援システム1は、合板素材のパーツを用いて組立体Aの設計を行うためのものであって、合板の積層面となる短辺側面b、長辺側面cを判別可能に表示したものとなっている。本発明の設計支援システム1により、平面aと異なる、短辺側面b、長辺側面cの合板積層面が表示からわかるので、積層面を意識した上で組立体の設計を行うことができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板素材のパーツを用いて組立体の設計を行うための設計支援システムであって、
合板積層面を判別可能に表示したことを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
前記合板積層面の判別可能な表示は、積層模様の表示であることを特徴とする請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記合板素材のパーツと共に、前記合板素材以外の素材からなるパーツも用いて組立体の設計を行うこともできることを特徴とする請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項4】
前記パーツに関するパーツ情報が記憶されているパーツ情報記憶手段を有しており、
前記パーツ情報には、前記パーツのX方向、Y方向、Z方向のローカル座標情報が含まれていることを特徴とする請求項3に記載の設計支援システム。
【請求項5】
前記合板素材のパーツの積層面を接合面とする設計の場合に、注意警告を行うことを特徴とする請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項6】
特定用途での使用とするモード選択の機能を備えており、該モード選択により、前記合板素材のパーツにおける特定のパーツのみ使用できることを特徴とする請求項1に記載の設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援システムに関し、詳しくは合板素材からなるパーツを用いて設計を行う設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
木材等からなるパーツを用いて家具や物置小屋等の組立体を自分自身で行う、所謂DIY(Do It Yourself)の人気が高まっている。そして、この組立体を作るにあたって、最近ではCAD(Computer Aided Design)と呼ばれるようなコンピュータを用いた設計支援システムも広く使用されるようになってきている。このような設計支援システムに関する発明としては、特許文献1や特許文献2のようなものが知られている。
【0003】
また、実際に使用されている設計支援システムとしては、従前から使用され、ある程度の専門知識が必要とされるものだけでなく、DIYの人気もあって一般の人に特化した設計支援システムもあり、例えば、非特許文献1や非特許文献2にあるように専門知識をあまり必要としない手軽な設計支援システムも最近では複数実用化されている。
そして、本願の出願人においても非特許文献3の「caDIY3D」(登録商標)を販売しており、非常に好評を得ている。
【0004】
例えば、非特許文献1の設計支援システムは、あらかじめ用意された机や椅子といった家具の種類が準備されており、その中から選択した家具の寸法を変えることで、簡単な設計支援を実現している。
【0005】
一方、本願の出願人が提供する設計支援システムは、図面にパーツ(材料)を追加し、追加したパーツの大きさを調整し、パーツを動かしてレイアウトするという、まるで積木で遊ぶような感覚で、簡単に組立体の3Dモデルが作成できるようになっている。
【0006】
そして、本願の出願人が提供する設計支援システムは、このような簡単な操作性から教育機関においても注目されており、例えば、中学校の技術・家庭科の設計・製図アプリとして利用が広がっている。
【0007】
以前の学校教育では、物を作ることそのものに主眼が置かれていたので、例えば、木板から効率的に木材を切り出して、その木材を組み立てるというようなことが主であった。しかし、最近は物を作る製造段階の前段階である設計段階での思考に主眼が置かれており、組み立て前の設計に時間を費やすことが増えてきている。したがって、授業での設計支援システムの利用も、今後もますます広がるものと考えられる。
【0008】
ところで、本願の出願人が提供する非特許文献3の設計支援システムにおいて使用できるパーツとして、合板素材からなるパーツがある。合板とは、原木を薄くむいた単板(たんぱん・ベニヤとも)に接着剤を塗布し、複数枚を貼り合わせたものであり、無垢素材と比べて、一般的に、値段が安いこと、また、品質が安定していること、入手し易いこと等から、DIYとしても非常に適した素材といえる。
【0009】
そして、このような合板素材のメリットを生かし、合板素材からなる規格材のパーツについても非特許文献4のような「合板DL」として、教育の現場において普及する活動も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-323242号公報
【特許文献2】特開第6000486号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】株式会社岡田金属工業所、簡単木工作図ツールもでりんクラウド、検索日:令和5年7月15日〈https://life-diy.com/modelin2019new.html〉
【非特許文献2】インターノウス株式会社、HOME>CADコラム>CADお役立ち情報>家具設計図が簡単に書ける!無料で使えるスマホアプリ&フリーソフト8選、検索日:令和5年7月15日〈https://www.lulucad.jp/2019/08/21/furniture_design_app_soft/〉
【非特許文献3】株式会社日本マイクロシステム、caDIY3DでDIYをはじめよう!、検索日:令和5年7月15日〈https://cadiy3d.com/wp/〉
【非特許文献4】一般社団法人 合板DL普及協会、検索日:令和5年7月15日〈https://gia.gouhan-dl-fukyu-kyoukai.com/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
合板素材は、単板に接着剤を塗布し、複数枚を貼り合わせたものであるため、層がいくつも重なった状態、つまり積層の木材となっている。
【0013】
この合板素材のパーツを使った組立体を作る際に、パーツ同士を接合することも当然あるが、接合する手段としては、ビスや釘の他に接着剤を用いることができる。大きなものを作るには、強度の面ではビスや釘での接合が必要となるが、本立てのような比較的小型のものであれば、手軽さや作業の安全性という点では接着剤が非常に便利であり、非特許文献4においても接着剤による接合が紹介されている。
【0014】
このように合板素材のパーツを接着剤で接着することもあるが、合板は無垢材と異なり積層面がある。この合板素材のパーツを接着する際、積層面を接着面にしてしまうと、積層面に接着剤が吸収されやすくなってしまい十分な強度を発揮できないおそれがある。したがって、合板素材のパーツを接着する際には、積層面を接着面としない方が好ましい。
【0015】
また、合板素材の特徴として、合板の向きによって強度が異なるという点がある。具体的には非特許文献4にある合板DLという規格材について、1×1材(12×12×300mm)に対して、積層面(木端)側での中央荷重と、平面(木表/木裏)側での中央荷重を比較すると、積層面からの荷重ではおよそ16kgで破断し、平面からの荷重ではおよそ22kgで破断する。このように合板素材のパーツを使用する向きによって強度が大きくことなることから、この点からも積層面の向きは重要となる。
一方で、合板素材のパーツを使った組立体において、この積層面をデザイン的な観点で活用したいということも考えられる。
従って、合板素材のパーツを用いて組立体を作るには、他の素材とは異なり、積層面に関する思考も重要となってくる。
【0016】
しかしながら、合板素材のパーツを用いて組立体の設計を行う設計支援システムにおいては、従来、合板素材における積層面という観点まではなかった。
先述したように、今後の教育現場において、設計支援システムの導入が進むであろうと思われる中、合板素材のパーツを用いた設計において、積層面に関する設計強度の観点やデザインの観点が加わることは、思考力を育てる教育という点からも非常に重要となってくる。
【0017】
そこで、本発明は、合板素材からなるパーツを用いて組立体の設計を行う設計支援システムにおいて、合板素材における積層面という観点を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は、合板素材のパーツを用いて組立体の設計を行うための設計支援システムであって、合板積層面を判別可能に表示したことを特徴とする。
【0019】
このような本発明により、合板素材のパーツを用いた設計において、合板積層面が表示からわかるので、積層面を意識した上で組立体の設計を行うことができる。なお、合板積層面を判別可能な表示とは、例えば、合板積層面と合板平面とで表示の色を変えることで可能となる。
【0020】
そして、合板積層面が判別できることで、例えば、合板積層面同士を接着剤により接合すると、強度が低くなることや、合板素材のパーツの向きによって強度が異なることから、設計時にそのことを意識した設計を行うことができる。また、設計した後であればその点を指摘して、実際に製造する前に設計変更を行うことができる。従って、合板素材における積層面という観点を画面上の表示から意識することになるので、思考力を養うという点でとくに教育現場における設計支援システムとして非常に適する。
【0021】
また、本発明の設計支援システムの前記合板積層面の判別可能な表示は、積層模様の表示であることを特徴とする。
本発明の設計支援システムによれば、合板積層面の判別可能な表示を積層模様の表示とすることにより、実際の合板素材のパーツを意識した設計を行うことができ、例えば、デザイン的な観点からも積層模様の向きを意識した設計を行うことができる。
【0022】
また、本発明の設計支援システムは、前記合板素材のパーツと共に、前記合板素材以外の素材からなるパーツも用いて組立体の設計を行うこともできることを特徴とする。
【0023】
本発明の設計支援システムによれば、合板素材以外のパーツも用いて設計できることから、設計のバリエーションが拡大することになる。この合板素材以外の素材からなるパーツとしては、例えば、無垢素材、金属素材等の他、キャスターや、取手、蝶番のようにDIYとして使用頻度の高いパーツでも構わない。
【0024】
また、本発明の設計支援システムは、前記パーツに関するパーツ情報が記憶されているパーツ情報記憶手段を有しており、前記パーツ情報には、前記パーツのX方向、Y方向、Z方向のローカル座標情報が含まれていることを特徴とする。
【0025】
本発明の設計支援システムによれば、パーツのX方向、Y方向、Z方向のローカル座標情報が含まれているので、X方向、Y方向、Z方向にそれぞれに対応した模様(テクスチャ)を設定しておくことで、3D表示を行った際、3D空間内でパーツを様々な方向に移動や回転させたとしても、常にX方向、Y方向、Z方向に対応したテクスチャを表示しておくことができる。したがって、システム利用者がわざわざ積層面の表示を設定するような操作を行う必要もない。
【0026】
また、本発明の設計支援システムは、前記合板素材のパーツの積層面を接合面とする設計の場合に、注意警告を行うことを特徴とする。本発明の設計支援システムによれば、積層面ついて設計の際に注意すべきことが生じたことを簡単に気付くことができる。
【0027】
また、本発明の設計支援システムは、特定用途での使用とするモード選択の機能を備えており、該モード選択により、前記合板素材のパーツにおける特定のパーツのみ使用できることを特徴とする。本発明の設計支援システムによれば、例えば、教育現場で本システムを使用するような場合や、本設計システムの利用研修会で使用するような場合のような特定状況で多数の人が使用する場合に効率的な使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(A)は実際の組立体の撮像であり、(B)は従来の設計支援システムにより設計した組立体の表示であり、(C)は本発明の設計支援システムにより設計した組立体の表示である。
図2】(A)は図1Bの領域IIBの拡大図であり、(B)は図1Cの領域IICの拡大図である。
図3】合板素材のパーツの斜視図である。
図4】(A)は合板素材のパーツにおける木口同士の接着例を示した図であり、(B)は木端同士の接着例を示した図であり、(C)は木口と木端の接着例を示した図である。
図5】本実施形態の設計支援システムのハード構成を示したブロック図である。
図6】本実施形態の設計支援システムの機能構成を示したブロック図である。
図7】(A)は本実施形態のパーツ情報であり、(B)はパーツのローカル座標を示す図である。
図8】本実施形態のパーツ選択手段におけるパーツ選択の表示画面である。
図9】本実施形態のテクスチャ処理手段の処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0030】
本発明の設計支援システムは、合板素材からなるパーツを表示した場合に、合板素材の積層面が判別できるようになっている。この点について図面を用いて、最初に具体的に説明する。図1Aは、合板素材からなるパーツを用いた実際の組立体Aである本立ての撮像であり、図1Bは従来の設計支援システムを用いて設計した組立体Aの表示例であり、図1Cは本発明の設計支援システムを用いて設計した組立体Aの表示例である。また、図2Aは、図1Bにおける領域IIBの拡大図であり、図2Bは、図1Cにおける領域IICの拡大図である。
図1Aにあるこの組立体Aは、合板素材からなるパーツを複数個用い、パーツ同士の接合は接着剤を用いて接合して組み立てたものである。
【0031】
また、この合板素材は、原木を薄くむいた単板に接着剤を塗布し、複数枚を貼り合わせた積層材である。更にこの合板素材からなるパーツは、非特許文献4にもある規格材である合板DL材を用いている。
【0032】
図3には、合板素材からなる角材のパーツの一例の斜視図を示している。図3に示すように、合板素材からなるパーツは、木表や木裏と呼ばれる平面aの模様と異なり、木口と呼ばれるような短辺側面bや、木端と呼ばれる長辺側面cには、積層材特有の積層模様からなる積層面が現れている。これは実際の合板DL材でも、木口や木端には積層面が現れているのと同様である。ただし、当然ながら、現物の合板DL材の模様は多少異なる。
【0033】
そして、このような合板素材からなるパーツを複数用いて組立体Aを製造する前に、設計支援システムが活用されることになり、設計支援システムを利用して事前の設計が行われる。
【0034】
図1Bは、従来の設計支援システムを使い、合板素材のパーツを用いて組立体Aを設計したものである。この従来の設計支援システムにおいては、合板素材のパーツであっても、平面aや短辺側面b、長辺側面cの模様は同じ模様や色で表示されていた。つまり、短辺側面bや長辺側面cの積層面を表示上で識別できるようになっているわけではなく、平面aと同じように表示されていた。
【0035】
したがって、従来の設計支援システムを用いた設計では、合板素材における積層面を表示画面上では意識することができないことから、例えば、生徒による設計において、図4に示すような積層面同士での接着(図4Aの木口同士の接着や、図4Bの木端同士の接着、図4Cの木口と木端の接着)が発生していた。また、合板素材のパーツの向きによって強度が異なることから、例えば、本立てである組立体Aにおける書籍載置面を強度の低い積層面(木端)側とするような設計が発生していた。このため、実際の製造段階において、組立体Aを組み立てた段階で強度不足であったことを知ることになってしまっていた。また、生徒による設計を教師がチェックする段階においても、多くの生徒の設計を確認する中では、積層面同士での接着を見落としてしまうこともあった。
【0036】
一方、図1Cは、本発明の設計支援システムを使い、合板素材のパーツを用いて組立体Aを設計したものである。本発明の設計支援システムにおいては、合板素材のパーツは、図3のように平面aの模様と異なり、短辺側面b、長辺側面cの模様は積層模様で表示されている。つまり、短辺側面bや長辺側面cは、平面aの模様と異なる模様で表示されている。
【0037】
したがって、本発明の設計支援システムを用いた設計では、合板素材における積層面を表示画面上で意識しながら設計を行うことができる。このため、生徒による設計において、図4に示すような積層面同士での接着や、合板素材のパーツにおける使用向きの間違いは発生し難くなるので、実際の製造段階において、組立体Aの強度不足というようなことも生じ難い。また、生徒による設計を教師がチェックする段階においても、積層面同士での接着が行われていること等も判りやすいことから、多くの生徒の設計を確認する場合にも見落としは生じ難い。
【0038】
更には、本発明の設計支援システムにおいては、合板素材のパーツの積層面が画面上にも現れていることから、完成品である実際の組立体Aと同じイメージで設計を行うことができるため、積層面をデザイン的な観点で活かした設計を行うこともできる。
【0039】
このように本発明の設計支援システムは、実際の合板素材の角材パーツのように、短辺側面bや長辺側面cの模様を積層用とすることで、合板積層面を判別可能に表示したものとなっている。
【0040】
[実施形態]
次に、このような本発明の設計支援システムの具体的な実施形態について説明する。図5は、本実施形態における設計支援システム1のハード構成を示したブロック図である。設計支援システム1は、図5に示すように、制御部11、記憶部12、表示出力部13、入力操作部14、通信部15を備えている。
【0041】
制御部11は、CPU等の演算装置からなり、各種のプログラムを実行し、各種の処理を実行する。記憶部12は、RAM、ROM等の記憶装置からなり、制御部11で実行されるプログラムを記憶したり、プログラムによる処理結果や、各種のデータを記憶したりする。また、後述する積層模様のテスクチャ画像や、木目模様のテクスチャ画像のデータが記憶されている。
【0042】
表示出力部13は、LCD等の表示装置からなり、その画面上に各種のパーツや情報、組立体等を表示しながら、システム利用者は設計を行う。なお、図1Cの画面もこの表示出力部13で表示された表示例である。
【0043】
入力操作部14は、キーボードやマウス、タッチパネル等からなり、表示出力部13に表示するパーツの選択やサイズの変更や調整をしたり、パーツの向きや角度を変更するための操作を表示出力部13の画面を介して行ったりするものである。
通信部15は、設計支援システム1をインターネットやLAN等を介して、ネットワークへ接続するものである。
【0044】
なお、図5に示す設計支援システム1のハード構成を備える具体的なものとしては、パーソナルコンピュータ(PC)の他にタブレットのような携帯端末を用いることができる。また、設計支援システム専用の端末で実現することも可能である。
【0045】
また、設計支援システム1を実現するプログラムは、通信部15を介してネットワークに接続するサーバからアプリケーションプログラムとして取得することができる他、最初から記憶部12に内蔵しておくことでもよい。
また、設計支援システム1は、図5に示す構成の端末をクライアント端末として、所謂シンクライアントのような形で実現しても構わない。
【0046】
このようなハード構成により実現される設計支援システム1において、図6に示す機能が実現されている。具体的には、図6に示すように、設計支援システム1は、パーツ情報記憶手段110、パーツ選択手段120、テクスチャ処理手段130を備えている。
【0047】
パーツ情報記憶手段110は、主に制御部11、記憶部12で構成されており、組立体Aを製造するために用いる各種のパーツに関する情報が記憶されている。図7Aには、パーツ記憶手段110に記憶されるパーツ情報の一例を示している。
【0048】
パーツ情報には、パーツに関する素材情報が含まれており、図7Aに示すように、少なくとも合板素材が含まれており、また本実施形態では、無垢素材が含まれている。なお、図7Aはあくまでも一部のパーツの例示であり、金属素材等他の素材が含まれていてもよい。
【0049】
また、パーツ情報には、サイズに関するサイズ情報が含まれている。なお、図7Aに示す合板素材の1×1材(12×12×300mm)や1×2材(12×24×300mm)は、非特許文献4にある合板による角材の規格材のことである。一方、無垢素材に示す1×1材(19×19×910mm)や2×2材(38×38×910mm)は、入手し易くDIYでよく使用され、ワンバイ材やツーバイ材と呼ばれる角材のことである。また、合板素材における12×910×1820mmは、サブロク板と呼ばれたりする長方形の板材である。このように本実施形態においては、DIYにおいて使い易い規格化されたパーツの情報を有することで、実際の組立体Aの設計や製造を容易に行えるようになっている。
【0050】
また、パーツ情報には、教材情報が含まれている。この教材情報とは、非特許文献4の合板DL普及協会にて普及が図られている合板DL材にて教材用として用いられているパーツを示すものである。従って、本実施形態においては図7Aに示す合板素材の1×1材や1×2材であっても、教材用パーツと教材用ではないパーツの2種類のデータがある。
【0051】
このようにパーツ情報に教材情報が含まれることで、例えば、教材用のみのパーツを選択して組立体の設計を行うことができる。本発明者が、パーツ情報に教材情報を含めている理由は、非特許文献4の合板DL普及協会にて、教材用として数種のパーツがセットとなった教材用の木工キット(合板DL・モジュール木工キット(登録商標))を用いて普及が図られている。このような木工キットは、決められた時間内で行わなければならない学校教育に非常に適していることから、今後普及していくものと思われる。その木工キットの普及と共に、この設計支援システム1も併せて使用された場合に、設計支援システム1もこの数種の合板のパーツからなる木工キットに特化した使用にも対応できるようするためである。このため、木工キットに含まれるパーツがわかるようにするために、パーツ情報に教材情報を含めている。なお、「教材情報」の名称自身に特に意味はなく、木工キットのように特定商品に特化しているパーツであることがわかれば、他の名称、例えば、具体的な商品名のような名称を用いて識別できるようしてあればよい。このため「教材情報」とは「特定用途情報」というような広い意味のことである。
【0052】
また、パーツ情報には、パーツのX方向、Y方向、Z方向の座標系の情報が含まれている。この座標系の情報は、3DのCADにおいて、3D表示を行う場合の3D空間の絶対座標(ワールド座標)に対するローカル座標のことである。本実施形態では図7Bに示すように、木口と呼ばれる短辺側面b方向をX方向とし、木表・木裏と呼ばれる平面a方向をY方向とし、木端と呼ばれる長辺側面b方向をZ方向と定義して情報を有している。そして、このようにパーツがローカル座標の情報を持つことによって、3D空間のワールド座標内でパーツを様々な方向に移動させたり、回転させたりした表示が可能となる。
【0053】
つまり、ワールド座標の3D空間の中で、パーツを様々な方向に移動、回転させたり、ワールド座標の向きを変更したりしたとしても、パーツ自身のローカル座標に対応した平面a、短辺側面b、長辺側面cに対応した模様表示を行うことが可能となる。したがって、システム利用者自身が、パーツの移動・回転や、視点を変更しても、それに伴って平面a、短辺側面b、長辺側面cも移動・回転、変更することになる。
【0054】
このようなパーツ情報をパーツ情報記憶手段110は記憶している。なお、図7Aに示したパーツ情報はあくまでも一例である。実際には合板素材のパーツもその他、複数あり、無垢素材のパーツについても複数あっても構わない。また、角材のパーツだけでなく、丸棒のようなパーツ情報があってもよい。また、DIYで組立体を製造する際に使用頻度の高いパーツ、例えば、キャスター、取手、蝶番、その他、沓石やブロックのような情報が含まれていても構わない。
【0055】
また、パーツ情報記憶手段110は、通信部15を介してネットワークのサーバから新たなパーツ情報を入手したり、パーツ情報を更新したりして、パーツ情報を変更する機能を備えることもできる。
【0056】
パーツ選択手段120は、主に制御部11、記憶部12、表示出力部13、入力操作部14で構成されている。具体的には、図8に示すように、表示出力部13に、パーツ情報記憶手段110により記憶されているパーツ情報を基に、素材毎のコマンドが表示(図8では合板パーツと無垢パーツ)されている。そして、入力操作部14(例えば、マウス)を操作して選択された素材のパーツ(図8では合板パーツ)については、パーツ情報のサイズ情報を基に記憶されている各種の合板パーツの情報が表示される(図8では、1×1材、1×2材、1×3材)。そして、選択された合板パーツの画像が3D表示されることになる(図8では、1×2材を表示)。
【0057】
このようにしてパーツ選択手段120によって、画面上に表示したパーツが選択されることになる。そして、組立体Aを設計するために必要となるその他のパーツも、同様の操作を繰り返して選択される。
【0058】
テクスチャ処理手段130は、主に制御部11、記憶部12で構成されており、パーツ選択手段120で選択されたパーツが表示出力部13の画面上に表示される際に、このパーツの模様を描画する処理を行う。このテクスチャ処理の具体的な処理フローについて、図9に示す。
【0059】
まず、パーツ選択手段120によって合板パーツが選択されるとこの処理が開始される。具体的には、選択されたパーツについて、図7に示すパーツ情報を基に、教材用のパーツか否かの判定を行う(S1)
【0060】
教材用のパーツであれば(S1でYES)、そのパーツのX方向、つまり木口となる両方の短辺側面bに積層模様のテクスチャ画像のデータを用いて、積層模様の描画処理を行う(S2)。次に、そのパーツのY方向、つまり木表(木裏)となる両方の平面aに木目模様のテクスチャ画像のデータを用いて、木目模様の描画処理を行う(S3)。次に、そのパーツのZ方向、つまり木端となる両方の長辺側面cに積層模様のテクスチャ画像のデータを用いて、積層模様の描画処理を行う(S4)。このような処理を行った合板のパーツは、従来と異なり、木口、木端には積層模様が表示されたパーツとなり、合板における積層面が表示上で判別できるようになっている。
【0061】
また、教材用のパーツでなければ(S1でNO)、そのパーツのX方向である両方の短辺側面bに木目模様のテクスチャ画像のデータを用いて、木目模様の描画処理を行う(S5)。次に、そのパーツのY方向である両方の平面aに木目模様のテクスチャ画像のデータを用いて、木目模様の描画処理を行う(S6)。次に、そのパーツのZ方向である両方の長辺側面cに木目模様のテクスチャ画像のデータを用いて、木目模様の描画処理を行う(S4)。このような処理を行った合板のパーツは、従来と同じく木口、木端、木表、木裏が同じ模様のパーツとなり、合板における積層面が表示上では判別できるようにはなっていない。
【0062】
このような処理を終えて、図8に示したような合板パーツの表示が出力表示部13の画面上で行われる。そして、システム利用者は、このようなパーツの選択、処理をパーツ毎に繰り返しながら、各パーツの大きさを調整し、パーツをレイアウトしながら、まるで積木で遊ぶような感覚で組立体Aの設計を行う。
【0063】
なお、本実施形態のテクスチャ処理手段130では、合板素材のパーツの合板積層面の描画処理の有無について、パーツ情報の教材用パーツか否かの判定によって行っていた。
【0064】
これは、先にも説明した木工キットが教育現場で使用された場合に、設計支援システム1も一緒に使用された場合を想定しているためである。つまり、学校教育で用いられた場合、教育という点で合板の積層面を意識した設計が重要になるので、必ず積層面を識別できるように表示することが重要となる。一方で、学校教育以外で設計支援システム1が使用された場合には、使用者によっては、合板の積層面をあまり意識する必要がない場合もある。例えば、木工キットでは、接着剤で接合できるような組立体Aまでしか設計することを想定していないが、一般のDIYであれば接着剤ではなく、ビスや釘による接合が必要となる大型の組立体Aを設計する場合もある。このようなビスや釘を用いるような大型の組立体Aであれば合板の積層面を意識する必要性も薄れる。従って、教材用パーツであれば、合板の積層面表示が必要となるということから、図9に示す本実施形態のようなテクスチャ処理手段130を採用している。
【0065】
しかしながら、テクスチャ処理手段130はあくまでも一例であり、図9に示す処理フロー以外を採用することも勿論可能であり、例えば、合板素材であるか否かを判定し、合板素材であれば、必ず積層面を描画するような処理を採用してもよい。
【0066】
以上のように、本実施形態の設計支援システム1は、合板素材のパーツを用いて組立体Aの設計を行うためのものであって、合板の積層面となる短辺側面b、長辺側面cを判別可能に表示したものとなっている。このような設計支援システム1により、従来の設計支援システムでは、合板素材のパーツにおいて、平面a、短辺側面b、長辺側面cは、形状のみから識別できるだけで、合板の積層面を表示上では意識することができなかったが、合板積層面が表示からわかるので、積層面を意識した上で組立体の設計を行うことができる。
【0067】
なお、本実施形態においては、合板積層面の判別可能な表示は、積層模様のテクスチャ表示により行っていた。これにより、実際の組立体Aの完成状態の外観を意識した設計を行うことが可能となる。しかしながら、合板積層面の判別が可能であれば、他の方法でもよく、例えば、積層面の色を変えたり、特殊な模様を描画したりすることで実現できる。このような描画は、例えば、テクスチャ処理手段において、X方向とZ方向の描画に、特定の色をベタ塗り処理をしたり、記憶しておいた特殊な模様を描画したりすることで実現できる。
【0068】
また、本実施形態の設計支援システム1を使用して組立体Aの設計を行うことで、図4に示すような合板素材のパーツによる積層面同士での接着は発生し難くなるが、例えば、図4に示したような積層面同士での接着や、積層面同士に限らず合板素材のパーツと接合するように設計された場合に、警告表示や警告音等の注意警告を行うような構成を採用することも可能である。このような構成は、積層面について注意が必要なことにいち早く確実に気付くだけでなく、教育現場での設計支援システムを使用した場合に、教師の確認負担の軽減にもなる。なお、注意警告は、積層面同士での接合の場合と、積層面と他のパーツとの接合の場合のように、危険度に応じて異なる注意警告としてもよい。また、警告表示としては、例えば、表示出力部13を使い、色を変えることで表示したり、コメントを表示したりすることで実現できる。
【0069】
また、本実施形態の設計支援システム1は、教育現場において非特許文献4にあるような木工キットと共に使用されるような特定用途での使用も想定したものであり、そのために図7Aにあるようなパーツ情報において、教育情報を含めた構成としている。このため、例えば、教育現場で木工キットと共に使用するような場合や、本設計システムの利用研修会で使用するような場合、このような用途に特化した使用に限定できるよう、設計支援システム1にモード選択の機能を追加し、該当するモードでは該当する合板素材のパーツしか使用できないようにすることも可能である。このような構成は、生徒による使用や、研修会での使用のような、多数の使用者に使用させる場合に、効率的な運用を行うことができる。なお、モードの選択機能は、制御部11、表示出力部13、入力操作部14により実現可能であり、選択モードに紐付けられたパーツ情報内の情報を基にパーツを限定することで実現可能である。
【0070】
また、本実施形態の設計支援システム1の説明において、表示出力部13の画面表示の例は、何れも合板素材のパーツを所謂3D表示したものとなっていたが、本発明の設計支援システム1は3D表示に限っているわけではなく、パーツの画面表示が所謂2D表示であっても構わない。
【符号の説明】
【0071】
1 設計支援システム
11 制御部
12 記憶部
13 表示出力部
14 入力操作部
15 通信部
a 平面(木表・木裏)
b 短辺側面(木口)
c 長辺側面(木端)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9