(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019693
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ずり搬出システムにおけるずり積込み機およびその自動運転制御方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/12 20060101AFI20250131BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20250131BHJP
E21F 13/08 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
E21D9/12 A
E21D9/00 C
E21F13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123433
(22)【出願日】2023-07-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 令和4年8月2日 ウェブサイトのアドレス https://fjt2.sharepoint.com/sites/koho/DocLib2/Forms/AllItems.aspx?id=%2Fsites%2Fkoho%2FDocLib2%2F04%5F%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%2F2022%E5%B9%B4%E5%BA%A6%2F0802%5FAI%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%80%E3%82%92%E9%96%8B%E7%99%BA%2Epdf&parent=%2Fsites%2Fkoho%2FDocLib2%2F04%5F%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%2F2022%E5%B9%B4%E5%BA%A6 公開者 株式会社フジタ 公開された発明の内容 株式会社フジタが、上記アドレスのウェブサイトで公開されている株式会社フジタのウェブサイトにて、石井 翔太、浅沼 廉樹、松尾 陽介、山田 照之が発明したずり搬出システムにおけるずり積込み機およびその自動運転制御方法(ロックローダのAI自動化の開発)について公開した。 開催日 令和4年8月24日~令和4年8月26日 集会名、開催場所 第20回建設ロボットシンポジウム 早稲田大学 西早稲田キャンパス(東京都新宿区大久保3-4-1) 公開者 浅沼 廉樹 公開された発明の内容 浅沼 廉樹が、第20回建設ロボットシンポジウムにて、石井 翔太、浅沼 廉樹、松尾 陽介、山田 照之が発明したずり搬出システムにおけるずり積込み機およびその自動運転制御方法(ロックローダのAI自動化の開発)について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】000005924
【氏名又は名称】株式会社三井三池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】石井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 廉樹
(72)【発明者】
【氏名】松尾 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山田 照之
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054DA17
2D054DA21
2D054DA32
2D054DA37
2D054GA13
2D054GA20
2D054GA25
(57)【要約】
【課題】ずり搬出待ちによるサイクルロスを抑制してトンネル工事の施工期間の短縮化を達成できるずり積込み機を提供する。
【解決手段】ホイールローダが所定地点に運搬したずりを掻き込んで後続搬送装置に積載するずり積込み機であって、自動運転制御装置250が、ホイールローダからずり積載終了通知を受信すると、可視光カメラS22およびサーマルカメラS23によりそれぞれ得られる画像データ並びに3次元スキャナS21により得られる3次元データに基づいて所定地点のずり領域を認識し、ずり仮置き場のずり領域のずりを掻き込んで後続搬送装置へ積み込み、後続搬送装置に所定量のずりが積み込まれることでずり掻き込み機構および積込み機構を停止する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽と坑口との間に前記切羽から前記坑口へ向けて少なくともホイールローダ、ずり積込み機および後続搬送装置を配置し、前記切羽前のずりを少なくとも前記ホイールローダ、前記ずり積込み機および前記後続搬送装置を通して坑口へ搬送するトンネル工事におけるずり搬出システムにおける前記ずり積込み機であって、
少なくとも前記ホイールローダにより前記ずり積込み機の前記切羽側にある所定地点に積載されたずりを掻き込むずり掻き込み機構と、
前記刷り掻き込み機能により掻き込まれたずりを前記後続搬送装置へ積み込む積込み機構と、
3次元スキャナ、可視光カメラおよびサーマルカメラを含むセンサ部と、
前記ホイールローダおよび前記後続搬送装置と通信可能な通信部と、
前記センサ部の出力に基づいて、前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を制御する自動運転制御部と、
を有し、
前記自動運転制御部が、
a)前記ホイールローダからずり積載終了通知を受信すると、前記3次元スキャナにより得られる3次元データと、前記可視光カメラおよび前記サーマルカメラによりそれぞれ得られる画像データと、に基づいて前記所定地点のずりを認識し、
b)前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を駆動し、前記所定地点のずりを掻き込んで前記後続搬送装置へ積み込み、
c)前記後続搬送装置に所定量のずりが積み込まれることで前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、
ことを特徴とするずり積込み機。
【請求項2】
前記後続搬送装置のずり積載部を撮像する可視光カメラを含む第2センサ部を更に有し、前記自動運転制御部が、前記第2センサ部により得られた画像データに基づいて前記後続搬送装置のずり積載状況を認識する、ことを特徴とする請求項1記載のずり積込み機。
【請求項3】
前記通信部を通して前記後続搬送装置から前記所定量のずりが積み込まれたことを示す積込み終了通知を受信すると、前記自動運転制御部が前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、ことを特徴とする請求項1記載のずり積込み機。
【請求項4】
前記ずり積込み機を移動させる走行機構を更に有し、前記自動運転制御部が前記3次元スキャナからの3次元データに基づいて前記走行機構を制御する、ことを特徴とする請求項1-3のいずれか1項記載のずり積込み機。
【請求項5】
前記積込み機構のずりを撮像する3次元スキャナ、可視光カメラおよびサーマルカメラを含む第3センサ部をさらに有し、前記自動運転制御部が、前記第3センサ部により得られた3次元データおよび画像データに基づいて、前記積込み機構のずり積載状況を認識する、ことを特徴とする請求項1-3のいずれか1項記載のずり積込み機。
【請求項6】
前記自動運転制御部が、前記積込み機構のずり積載状況に応じて前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構の動作速度を調整することを特徴とする請求項5記載のずり積込み機。
【請求項7】
前記後続搬送装置は、ずり運搬車、クラッシャおよびダンプの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1-3のいずれか1項記載のずり積込み機。
【請求項8】
切羽と坑口との間に前記切羽から前記坑口へ向けて少なくともホイールローダ、ずり積込み機および後続搬送装置を配置し、前記切羽前のずりを少なくとも前記ホイールローダ、前記ずり積込み機および前記後続搬送装置を通して坑口へ搬送するトンネル工事におけるずり搬出システムにおける前記ずり積込み機の自動運転制御方法であって、
前記ずり積込み機が、前記切羽側にある所定地点に少なくとも前記ホイールローダにより積載されたずりを掻き込むずり掻き込み機構と、前記ずり掻き込み機能により掻き込まれたずりを前記後続搬送装置へ積み込む積込み機構と、3次元スキャナ、可視光カメラおよびサーマルカメラを含むセンサ部と、前記ホイールローダおよび前記後続搬送装置と通信可能な通信部と、プロセッサ部と、を有し、
前記プロセッサ部が、
a)前記ホイールローダからずり積載終了通知を受信すると、前記3次元スキャナにより得られる3次元データと、前記可視光カメラおよび前記サーマルカメラによりそれぞれ得られる画像データと、に基づいて、前記所定地点のずりを認識し、
b)前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を駆動し、前記所定地点のずりを掻き込んで前記後続搬送装置へ積み込み、
c)前記後続搬送装置に所定量のずりが積み込まれることで前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、
ことを特徴とするずり積込み機の自動運転制御方法。
【請求項9】
前記後続搬送装置のずり積載部を撮像する可視光カメラを含む第2センサ部を更に有し、前記プロセッサ部が、前記第2センサ部により得られた画像データに基づいて前記後続搬送装置のずり積載状況を認識する、ことを特徴とする請求項8記載のずり積込み機の自動運転制御方法。
【請求項10】
前記通信部を通して前記後続搬送装置から前記所定量のずりが積み込まれたことを示す積込み終了通知を受信すると、前記プロセッサ部が前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、ことを特徴とする請求項8記載のずり積込み機の自動運転制御方法。
【請求項11】
前記積込み機構のずりを撮像する3次元スキャナ、可視光カメラ、およびサーマルカメラを含む第3センサ部を更に有し、前記プロセッサ部が、前記第3センサ部により得られた3次元データおよび画像データに基づいて、前記積込み機構のずり積載状況を認識する、ことを特徴とする請求項8-10のいずれか1項記載のずり積込み機の自動運転制御方法。
【請求項12】
前記プロセッサ部が前記積込み機構のずり積載状況に応じて前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構の動作速度を調整することを特徴とする請求項11記載のずり積込み機の自動運転制御方法。
【請求項13】
切羽と坑口との間に前記切羽から前記坑口へ向けて少なくともホイールローダ、ずり積込み機および後続搬送装置を配置し、前記切羽前のずりを少なくとも前記ホイールローダ、前記ずり積込み機および前記後続搬送装置を通して坑口へ搬送するトンネル工事におけるずり搬出システムであって、
前記ホイールローダが、
ずり積載部と、
3次元データを出力する3次元スキャナ、可視光画像データを出力する可視光カメラ、および赤外線画像データを出力するサーマルカメラを含む第1センサ部と、
少なくとも前記ずり積込み機と通信可能な第1通信部と、
前記第1センサ部の出力に基づいて、前記ホイールローダの走行および前記ずり積載部の駆動を制御する第1自動運転制御部と、
を有し、
前記第1自動運転制御部が、
a)前記第1センサ部により得られる3次元データ、、可視光画像データおよび赤外線画像データに基づいて前記切羽での発破完了および前記切羽前のずり領域を認識し、
b)発破完了を認識すると、認識された前記切羽前のずりを前記ずり積載部に積載し、前記ずり積込み機から前記切羽側にある所定地点へ移動し、前記ずり積載部に積載されたずりを前記所定地点へ投入し、
c)所定量のずりを前記所定地点へ投入すると、前記ずり積込み機へ投入終了通知を送信し、
前記ずり積込み機が、
前記所定地点に前記ホイールローダにより積載されたずりを掻き込むずり掻き込み機構と、
前記刷り掻き込み機能により掻き込まれたずりを前記後続搬送装置へ積み込む積込み機構と、
3次元データを出力する3次元スキャナ、可視光画像データを出力する可視光カメラ、および赤外線画像データを出力するサーマルカメラを含む第2センサ部と、
前記ホイールローダおよび前記後続搬送装置と通信可能な第2通信部と、
前記第2センサ部の出力に基づいて、前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を制御する第2自動運転制御部と、
を有し、前記第2自動運転制御部が、
d)前記第2センサ部により得られる3次元データ、可視光画像データおよび赤外線画像データに基づいて前記所定地点のずり領域を認識し、
e)前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を駆動し、前記所定地点のずりを掻き込んで前記後続搬送装置へ積み込み、
f)前記後続搬送装置に所定量のずりが積み込まれることで前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、
ことを特徴とするずり搬出システム。
【請求項14】
前記ずり積込み機が、前記後続搬送装置のずり積載部を撮像する可視光カメラを含む第3センサ部を更に有し、前記第2自動運転制御部が、前記第3センサ部により得られた画像データに基づいて前記後続搬送装置のずり積載状況を認識する、ことを特徴とする請求項13記載のずり搬出システム。
【請求項15】
前記第2通信部を通して前記後続搬送装置から前記所定量のずりが積み込まれたことを示す積込み終了通知を受信すると、前記第2自動運転制御部が前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、ことを特徴とする請求項13記載のずり搬出システム。
【請求項16】
前記ずり積込み機は走行機構を更に有し、前記第2自動運転制御部が前記第2センサ部の3次元データに基づいて前記走行機構を制御する、ことを特徴とする請求項13-15のいずれか1項記載のずり搬送システム。
【請求項17】
前記後続搬送装置はずり運搬車、クラッシャおよびダンプの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項13-15のいずれか1項記載のずり搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はずり搬出システムに係り、特にずり仮置き場からずり運搬機へずりを積み込むずり積込み機の自動運転技術に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳地のトンネル工事では、岩盤を掘削する工法として発破工法が採用されている。発破により切羽前に発生したずりは速やかに坑口へ搬出される必要である。このずり搬出作業はトンネル施工サイクルにおいて大きなウェイトを占める。そこでトンネル工事の工期短縮のために効率的なずり搬出システムがいくつか提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたずり搬出方法によれば、切羽とクラッシャーとの中間地点にずり仮置き場を設け、そこにずり積込み機を配置し、さらにずり積込み機の坑口側にずり運搬車を配置する。ホイールローダは切羽前とずり仮置き場との間を往復し、発破により生じた切羽前のずりをずり仮置き場まで運搬して積載する。ずり積込み機は、ずり仮置き場に積載されたずりを掻き込んでずり運搬車に積載する。ずり運搬車はずり積込み機とクラッシャとの間を往復し、積載されたずりをクラッシャに投入する。クラッシャにより破砕されたずりは連続ベルトコンベア装置によって坑口に向けて搬送される。
【0004】
このように切羽とクラッシャとの中間地点にずり仮置き場を設け、そこにずり積込み機を配置することで、爆破工程後の切羽のずりの後処理を従来に比べて短時間で済ませることができ、トンネル工事の効率化、ひいてはトンネル工事の施工期間の短縮化およびコストダウンを達成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホイールローダによるずり搬送は発破直後のトンネル素掘り面での作業となり、狭い限られた空間での往復移動を強いられる。このためにホイールローダが切羽前のずりを積載してずり仮置き場まで運搬するための時間は一定ではなく状況によって変動する。このような作業の時間的な変動は、ずり積込み機の作業および後段のずり運搬車の作業にズリ運搬待ちによるサイクルロスを発生させ、トンネル工事の施工期間の更なる短縮化を困難にしていた。
【0007】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであり、その目的は、ずり搬出待ちによるサイクルロスを抑制してトンネル工事の施工期間の短縮化を達成できるずり搬出システム、ずり積込み機およびその自動運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明は、切羽と坑口との間に前記切羽から前記坑口へ向けて少なくともホイールローダ、ずり積込み機および後続搬送装置を配置し、前記切羽前のずりを少なくとも前記ホイールローダ、前記ずり積込み機および前記後続搬送装置を通して坑口へ搬送するトンネル工事におけるずり搬出システムにおける前記ずり積込み機であって、少なくとも前記ホイールローダにより前記ずり積込み機の前記切羽側にある所定地点に積載されたずりを掻き込むずり掻き込み機構と、前記刷り掻き込み機能により掻き込まれたずりを前記後続搬送装置へ積み込む積込み機構と、3次元スキャナ、可視光カメラおよびサーマルカメラを含むセンサ部と、前記ホイールローダおよび前記後続搬送装置と通信可能な通信部と、前記センサ部の出力に基づいて、前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を制御する自動運転制御部と、を有し、前記自動運転制御部が、a)前記ホイールローダからずり積載終了通知を受信すると、前記3次元スキャナにより得られる3次元データと、前記可視光カメラおよび前記サーマルカメラによりそれぞれ得られる画像データと、に基づいて前記所定地点のずりを認識し、b)前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を駆動し、前記所定地点のずりを掻き込んで前記後続搬送装置へ積み込み、c)前記後続搬送装置に所定量のずりが積み込まれることで前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、ことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記後続搬送装置のずり積載部を撮像する可視光カメラを含む第2センサ部を更に有し、前記自動運転制御部が、前記第2センサ部により得られた画像データに基づいて前記後続搬送装置のずり積載状況を認識することができる。
本発明の一態様によれば、前記通信部を通して前記後続搬送装置から前記所定量のずりが積み込まれたことを示す積込み終了通知を受信すると、前記自動運転制御部が前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止することができる。
本発明の一態様によれば、前記ずり積込み機を移動させる走行機構を更に有し、前記自動運転制御部が前記3次元スキャナからの3次元データに基づいて前記走行機構を制御することができる。
本発明の一態様によれば、前記積込み機構のずりを撮像する3次元スキャナ、可視光カメラおよびサーマルカメラを含む第3センサ部をさらに有し、前記自動運転制御部が、前記第3センサ部により得られた3次元データおよび画像データに基づいて、前記積込み機構のずり積載状況を認識することができる。
本発明の一態様によれば、前記自動運転制御部が、前記積込み機構のずり積載状況に応じて前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構の動作速度を調整することができる。
本発明の一態様によれば、前記後続搬送装置はずり運搬車、クラッシャおよびダンプの少なくとも1つを含むことができる。
上述の目的を達成するため、本発明は、切羽と坑口との間に前記切羽から前記坑口へ向けて少なくともホイールローダ、ずり積込み機および後続搬送装置を配置し、前記切羽前のずりを少なくとも前記ホイールローダ、前記ずり積込み機および前記後続搬送装置を通して坑口へ搬送するトンネル工事におけるずり搬出システムにおける前記ずり積込み機の自動運転制御方法であって、前記ずり積込み機が、前記切羽側にある所定地点に少なくとも前記ホイールローダにより積載されたずりを掻き込むずり掻き込み機構と、前記ずり掻き込み機能により掻き込まれたずりを前記後続搬送装置へ積み込む積込み機構と、3次元スキャナ、可視光カメラおよびサーマルカメラを含むセンサ部と、前記ホイールローダおよび前記後続搬送装置と通信可能な通信部と、プロセッサ部と、を有し、前記プロセッサ部が、a)前記ホイールローダからずり積載終了通知を受信すると、前記3次元スキャナにより得られる3次元データと、前記可視光カメラおよび前記サーマルカメラによりそれぞれ得られる画像データと、に基づいて、前記所定地点のずりを認識し、b)前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を駆動し、前記所定地点のずりを掻き込んで前記後続搬送装置へ積み込み、c)前記後続搬送装置に所定量のずりが積み込まれることで前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、ことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、前記後続搬送装置のずり積載部を撮像する可視光カメラを含む第2センサ部を更に有し、前記自動運転制御部が、前記第2センサ部により得られた画像データに基づいて前記後続搬送装置のずり積載状況を認識することができる。
本発明の一態様によれば、前記通信部を通して前記後続搬送装置から前記所定量のずりが積み込まれたことを示す積込み終了通知を受信すると、前記プロセッサ部が前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止することができる。
上述の目的を達成するため、本発明は、切羽と坑口との間に前記切羽から前記坑口へ向けて少なくともホイールローダ、ずり積込み機および後続搬送装置を配置し、前記切羽前のずりを少なくとも前記ホイールローダ、前記ずり積込み機および前記後続搬送装置を通して坑口へ搬送するトンネル工事におけるずり搬出システムであって、前記ホイールローダが、ずり積載部と、3次元データを出力する3次元スキャナ、可視光画像データを出力する可視光カメラ、および赤外線画像データを出力するサーマルカメラを含む第1センサ部と、少なくとも前記ずり積込み機と通信可能な第1通信部と、前記第1センサ部の出力に基づいて、前記ホイールローダの走行および前記ずり積載部の駆動を制御する第1自動運転制御部と、を有し、前記第1自動運転制御部が、a)前記第1センサ部により得られる3次元データ、、可視光画像データおよび赤外線画像データに基づいて前記切羽での発破完了および前記切羽前のずり領域を認識し、b)発破完了を認識すると、認識された前記切羽前のずりを前記ずり積載部に積載し、前記ずり積込み機から前記切羽側にある所定地点へ移動し、前記ずり積載部に積載されたずりを前記所定地点へ投入し、c)所定量のずりを前記所定地点へ投入すると、前記ずり積込み機へ投入終了通知を送信し、前記ずり積込み機が、前記所定地点に前記ホイールローダにより積載されたずりを掻き込むずり掻き込み機構と、前記刷り掻き込み機能により掻き込まれたずりを前記後続搬送装置へ積み込む積込み機構と、3次元データを出力する3次元スキャナ、可視光画像データを出力する可視光カメラ、および赤外線画像データを出力するサーマルカメラを含む第2センサ部と、前記ホイールローダおよび前記後続搬送装置と通信可能な第2通信部と、前記第2センサ部の出力に基づいて、前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を制御する第2自動運転制御部と、を有し、前記第2自動運転制御部が、d)前記第2センサ部により得られる3次元データ、可視光画像データおよび赤外線画像データに基づいて前記所定地点のずり領域を認識し、e)前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を駆動し、前記所定地点のずりを掻き込んで前記後続搬送装置へ積み込み、f)前記後続搬送装置に所定量のずりが積み込まれることで前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構を停止する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホイールローダからずり積載終了通知を受信すると、画像認識により所定地点のずり領域を認識して、ずり掻き込み機構および積込み機構を駆動してずりを後続搬送装置へ積み込み、後続搬送装置に所定量のずりが積み込まれることでずり掻き込み機構および積込み機構を停止する。これにより、ずり搬出待ちによるサイクルロスを抑制してトンネル工事の施工期間の短縮化を達成できる。また、掘削ズリ積込み作業時の省力化・省人化を可能とするともに,発破後の切羽ズリを迅速に処理することで切羽作業エリアを早期解放し、トンネル掘削サイクルの円滑化を達成できる。
本発明の一態様によれば、自動運転制御部が画像認識により後続搬送装置のずり積載状況を認識するので、ずり積込み機だけでずり積込み作業の起動および停止の自動化が可能となる。
本発明の一態様によれば、後続搬送装置からの積込み終了通知を受信することでずり積込み作業の起動および停止の自動化が可能となる。自動運転制御部がずり積載状況を認識する必要がないので、自動運転制御部の負荷を軽減できる。
本発明の一態様によれば、3次元スキャナによりずり積込み機の走行が可能となり、所定地点のずりをより効率的に掻き込むことができ、さらにトンネル工事の進展と共に移動するずり仮置き場に容易に追従できる。
本発明の一態様によれば、自動運転制御部が画像認識により積込み機構のずり積載状況を認識するので、ずり積込み機だけでずり積込み作業の起動および停止の自動化が可能となる。
本発明の一態様によれば、前記積込み機構のずり積載状況に応じて前記ずり掻き込み機構および前記積込み機構の動作速度を調整することができるので、ずりの搬出をより効率化できる。
本発明によれば、ホイールローダ、ずり積込み機およびずり運搬車が無線通信しながらそれぞれの作業を実行するので、切羽前のずりをクラッシャまで効率的に自動搬出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態によるずり積込み機を用いたずり搬送システムの動作を説明するための模式的なトンネル縦断面側面図である。
【
図2】
図1に例示するずり搬送システムの動作を説明するための模式的なトンネル縦断面平面図である。
【
図3】
図1に例示するずり搬送システムにおけるホイールローダの構成を示す模式的側面図である。
【
図4】
図1に例示するずり搬送システムにおけるホイールローダの機能的構成を示す模式的ブロック図である。
【
図5】
図1に例示するずり搬送システムにおけるホイールローダの自動運転制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図1に例示するずり搬送システムにおけるホイールローダの自動運転制御装置により認識された切羽前の画像の一例を示す模式図である。
【
図7】本
図1に例示するずり搬送システムにおけるホイールローダの自動運転制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態によるずり積込み機の側面構成図である。
【
図9】本実施形態によるずり積込み機の機能的構成を示す模式的ブロック図である。
【
図10】本実施形態によるずり積込み機の自動運転制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】本実施形態によるずり積込み機の自動運転制御装置により認識された前方画像の一例を示す模式図である。
【
図12】本実施形態によるずり積込み機の自動運転制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図1に示すずり搬送システムにおけるずり運搬車の側面図である。
【
図14】(A)は
図13における矢印I方向から見たずり運搬車の正面図であり、(B)は同じくずり運搬車のII-II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成要素は例示であって、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨ではない。
【0012】
1.システム構成
図1および
図2に例示するように、トンネル10の床面11には、切羽12から抗口へ向けて順にホイールローダ100、本実施形態によるずり積込み機200、ずり運搬車300、クラッシャ400その他機器が配置されている。ここではホイールローダ100、ずり積込み機200および後続搬送装置がずり搬出システムを構成する。ここで後続搬送装置は、ずり運搬車300、クラッシャ400および後続する作業機器、さらに図示しないダンプの1つあるいは複数の組み合わせであってもよい。ホイールローダ100、ずり積込み機200および後続搬送装置は、それぞれの後続する作業機器と無線通信を行うことで効率的なずり搬出作業を可能にする。あるいは坑外に設けられた監視システム500がこれらの運転状況を無線回線を通して監視してもよい。
【0013】
切羽12の付近には一台または複数台のホイールローダ100が配置され、矢印A方向に往復移動しながら、切羽前のずり13をずり仮置き場14へ運搬する。ずり仮置き場14は、ずり積込み機200から切羽側にある所定地点に設けられる。本実施形態では、ずり仮置き場14がずり積込み機200のずり掻き込み領域となる。本実施形態によるホイールローダ100はサイドダンプ方式とし、狭い切羽前の空間でホイールローダ本体をできるだけ回転させないようにしている。後述するように、ホイールローダ100は切羽12および切羽前のずり13の状況を認識しながら自動運転により切羽前ずり13を積載し、所定地点にあるずり仮置き場14へ運搬することができる。
【0014】
ずり仮置き場14は、切羽12とクラッシャ400との間の地点、望ましくは中間点より切羽12に近い地点に設けられる。例えば、切羽12とクラッシャ400との距離の約1/4程度の距離だけ切羽12から離れた地点に、たとえば切羽12から約30m程度離れた地点にずり仮置き場14が設けられる。したがって、この場合、ホイールローダ100の搬送距離は30~50m程度である。当然、ずり仮置き場14は切羽12の掘進に対応して前進していく。
【0015】
ずり仮置き場14は、
図2に示すようにトンネル床面11の幅方向の一側に、トンネルの長さ方向に沿った細長状に、例えば、約20m程度延在して設けられる。なお、ずり仮置き場14は、複数のポールや仕切り板などにより、ずり仮置き場であることが認識しやすいようにトンネル床面11に対して区切られてもよい。
図2に例示するように、ずり仮置き場14の配置に合わせて、ずり積込み機200およびずり運搬車300もトンネル床面11の幅方向の一側に配置される。
【0016】
ずり積込み機200はずり仮置き場14の坑口側に配置される。ホイールローダ100からのずり仮置き場14への積載通知を受信すると、ずり積込み機200は、ずり仮置き場14のずりを掻き込み、ずり積込み機200の坑口側に待機するずり運搬車300へ積載する。ずり積込み機200の詳細な構成および動作については後述する。
【0017】
ずり運搬車300は、ずり積込み機200から所定量のずりが積載されると、無線通信によりずり積込み機200の積込み動作を停止させる。次に、ずり運搬車300は、坑口方向のクラッシャ400まで移動して、ずりをクラッシャ400のホッパ401に投入する。ずり運搬車300は、矢印B方向に往復しながら、ずり運搬動作を繰り返す。なお、ずり積込み機200からクラッシャ400に直接積み込んでもよい。あるいは、ずり積込み機200からダンプに直接積み込み、坑口に向けて搬送することもできる。
【0018】
クラッシャ400に投入されたずりは破砕される。粉砕されたずりは、クラッシャ400のベルトコンベア402からテールピース台車403上で連続ベルトコンベア装置404の搬送路に積載され、連続コンベアベルト404により坑口に向けて搬送される。あるいは、クラッシャ400からダンプに積載することもできる。
【0019】
このようにホイールローダ100が切羽12とずり仮置き場14との間を往復移動し、ずり積込み機200がずり仮置き場14のずりを掻き取ってずり運搬車300へ積込み、ずり運搬車300がずり積込み機200とクラッシャ400との間を往復移動することで、切羽前のずり13が坑口方向に搬出される。以下、ずり搬出システムにおけるホイールローダ100およびずり積込み機200の構成および機能について詳細に説明する。
【0020】
2.ホイールローダ
2.1)構成
図3に例示するように、ホイールローダ100は、本体120と自動運転制御装置140とからなり、自動運転制御装置140によりホイールローダ100の運転およびずり搬送動作が自動制御される。
【0021】
本体120は、バケット122がブーム124の先端部に回動可能に設けられ、バケット122およびブーム124が複数の油圧シリンダ126により駆動される。本体120はタイヤ128からなる操舵輪(前輪)および駆動輪(後輪)を有する。本体120は、さらに制御部150、駆動・制動系160、エンジン170および油圧系180を有し、次に述べる構成および機能を有する。
【0022】
図4に例示するように、制御部150は走行制御部151およびバケット・ブーム制御部152を含み、自動運転制御装置140の制御下で本体120の自動運転を実行する。通常、制御部150は、たとえば電子制御ユニットから構成され、プログラムされた走行制御およびバケット・ブーム制御を実現することができる。
【0023】
走行制御部151は駆動・制動系160を制御し、本体120の走行を制御する。具体的には、動力源であるエンジン170のオン/オフ制御、動力伝達の調整、回転数制御、操舵量制御、制動制御等を行なう。
【0024】
また、駆動・制動系160は、図示しない操舵アクチュエータ、ブレーキおよびブレーキアクチュエータを搭載している。操舵アクチュエータは、操舵輪の操舵角を変更させる。ブレーキは操舵輪および駆動輪の制動を行なう。ブレーキアクチュエータは、ブレーキの駆動を行なう。なお、本実施形態では、ホイールローダについて説明したが、本体部がクローラによって走行する重機であっても同様である。エンジン170は、動力源として駆動輪に回転駆動力を与えるものであり、内燃機関に限定されるものではなく、モータ(電動機)であってもよい。
【0025】
油圧系180は複数の油圧シリンダ126を含む油圧シリンダ181および油圧モータ182、さらに制御弁183、油圧ポンプ184、および作動油タンク185を有する。制御弁183はバケット・ブーム制御部152によりバケット・ブーム122および124の動作を制御する。すなわち、制御弁183は、圧油の供給先油圧シリンダを変更することでバケット・ブームの伸縮、旋回、起伏等の動作を制御する。油圧ポンプ184は動力源であるエンジン170により駆動され、圧油を作動油タンク185から制御弁183へ供給する。圧油は制御弁183を通して所望の油圧シリンダ181および油圧モータ182に供給され、その後、作動油タンク185に回収され、以下油圧系180内で循環する。
【0026】
図5に例示するように、自動運転制御装置140はセンサ部S1の出力信号を用いてホイールローダの本体120の自動運転制御を行う。センサ部S1は3次元スキャナS11、ビデオカメラS12およびサーマルカメラS13を含む。3次元スキャナS11は、本体120の前方(ここでは切羽方向)あるいは周辺の3次元データ(X,Y,Z点群データ)を出力する。ビデオカメラS12は可視光カメラであり、本体120の前方(ビデオカメラS12の向いている方向であり、ここでは切羽方向)の可視光画像データを出力する。サーマルカメラS13は赤外線カメラであり、本体120の前方(サーマルカメラS13の向いている方向であり、ここでは切羽方向)の赤外線画像(温度分布画像)データを出力する。たとえば、3次元スキャナS11の3次元データを用いて水の流れ、凹凸(盛り上がり)、奥行、距離等を認識することができる。また、ビデオカメラS12の可視光画像データを用いて壁面やずり領域等を認識することができ、サーマルカメラS13の赤外線画像データを用いてずりと機械の区別、水領域等の認識が可能となる。
【0027】
自動運転制御装置140は、センサ部S1の出力データを入力するインターフェース141を有し、さらにGPU(Graphics Processing Unit)を含む少なくとも1つのプロセッサからなるプロセッサ部142、データ蓄積部143、通信制御部144、および無線通信部145を有する。通信制御部144は本体120の制御部150と接続して、プロセッサ部142からの制御信号を送信すると共に、本体120の制御部150からの各種状態を示す検出信号を受信する。
【0028】
無線通信部145は、プロセッサ部142の指令に従って、後続するずり積込み機200へずり投入あるいはずり積載終了を通知する。このずり投入あるいは積載終了通知は、後述するように、ずり積込み機200の積込み動作を起動する起動開始指令でもある。あるいは、無線通信部145は、監視システム500と無線通信を行う方式であってもよい。
【0029】
プロセッサ部142は図示しないメモリに格納されたプログラムを実行することで種々の機能が実現できる。ここではプロセッサ部142に、制御部142.1、発破完了認識部142.2、ずり領域認識部142.3、位置検出部142.4および自動制御部142.5が実装されているものとする。
【0030】
発破完了認識部142.2は、主にビデオカメラS12からの可視光画像データを用いて発破工程が完了したことを認識する。ずり領域認識部142.3は、主にビデオカメラS12およびサーマルカメラS13からの可視光画像データおよび赤外線画像データを用いて発破後の切羽前のずり領域を認識する。位置検出部142.4は3次元スキャナS11からの3次元データを用いて本体120が切羽12およびトンネル壁面からどの程度の距離にあるかを検出する。より詳しくは、ビデオカメラS12の情報に基づいて切羽と壁面の認識、発破が完了したか否かの認識、切羽前のずり領域の認識が可能となる。またサーマルカメラS12の情報に基づいて水(湧き水)の認識、機械とずりの認識が、3次元スキャナの情報に基づいて、本体120から切羽やずり等の周辺対象までの距離の認識が、それぞれ可能となる。
【0031】
自動制御部142.5は、位置検出部142.4により検出された本体120の位置と、ずり領域認識部142.3により認識された切羽前のずり領域の位置とを参照しながら、本体120の制御部150を制御し、切羽前ずり13の積載、ずり仮置き場14への運搬、ずり仮置き場14へのずり投入、切羽前への移動、という一連の自動運転動作を実行する。ただし、発破時には、事前に切羽12から少なくとも約100m程度坑口側に離れた場所に退避する。
【0032】
発破完了認識部142.2、ずり領域認識部142.3および位置検出部142.4は、ディープラーニングにより構築された学習モデルを用いたAI認識部である。周知のように、ディープラーニング技術は画像認識能力に優れており、ビデオカメラおよびサーマルカメラで得られた実際の発破完了画像や切羽前のずり画像などの多くの特徴的な画像データと、3次元スキャナS11で得られた3次元データを教師データとして与えることで、ニューロンパラメータを調整し誤差の十分小さい学習モデルを構築できる。
【0033】
発破完了認識部142.2、ずり領域認識部142.3および位置検出部142.4のAI認識部は、汎用サーバあるいはパーソナルコンピュータに構築可能であるが、ディープラーニングの演算を行うにはGPUを搭載したものが望ましい。たとえば、ずり領域認識部142.3は、位置検出部142.4による本体120の位置の3次元データと、ずり領域認識部142.3によるビデオカメラおよびサーマルカメラからの可視光画像データおよび赤外線画像データとに基づいて、
図6に例示するように切羽前の状況を認識し、ずりの領域を推定することができる。
【0034】
図6に模式的に示すように、ずり領域認識部142.3は、学習モデルを用いて切羽方向の画像領域600を、切羽領域601、トンネル壁面領域602、切羽前ずり領域603およびトンネル床面の可能領域604に分割化する。この分割化された画像に基づいて、自動制御部142.5はホイールローダ100をずり領域603の前に移動させ、一連のずり積載、運搬、投入の作業を実行する。以下、ホイールローダ100の全体的な制御フローを
図7を参照しながら説明する。
【0035】
2.2)自動運転制御
図7において、自動運転制御装置140の制御部142.1は、切羽12の発破が行われる前に本体120の制御部150を制御して、切羽12から少なくとも約100m程度坑口側に離れた場所に移動して待機する(動作701)。
【0036】
発破完了認識部142.2は、3次元スキャナS11、ビデオカメラS12およびサーマルカメラS13のデータから発破作業が安全に完了したことを検知する(動作702)。発破後にトンネルの崩落や湧き水の流出の可能性を推定することは、安全上極めて重要である。発破完了認識部142.2は、3次元データ、赤外線画像データおよび可視光画像データから形状の変状を認識することで切羽付近およびトンネル側面の崩落可能性を推定することができ、さらに赤外線画像データの温度分布から湧き水の可能性を推定することもできる。
【0037】
続いて、ずり領域認識部142.3は、主にビデオカメラS12およびサーマルカメラS13の画像データから切羽前のずり領域603を認識し、3次元スキャナS11で取得した3次元データからずり領域603に対するホイールローダの本体120の位置を特定する(動作S703)。その際、切羽前のずり量を推定してもよい。
【0038】
切羽前のずり領域603に対するホイールローダの本体120の位置が特定されると、自動制御部142.5は、本体120の走行制御部151を制御して本体120をずり領域603の前まで移動させ、バケット・ブーム制御部152を制御してバケット122にずりを積み込む(動作704)。続いて、自動制御部142.5は、本体120を坑口方向にずり仮置き場14まで移動させ、バケット・ブーム制御部152はバケット122のずりをずり仮置き場14に投入する(動作705)。ずり領域603のずりを全てずり仮置き場14に搬出させるまで、以上の動作703~705を繰り返す(動作706のYES)。
【0039】
ずり領域認識部142.3がずり領域603に残存するずりがなくなったと判断する
と(動作706のNO)、制御部142.1は通信制御部144を介して無線通信部145からずり積載終了通知をずり積込み機200へ送信する(動作707)。ずり積載終了通知を送信すると、ホイールローダ100は次の発破作業が行われる前に待機場所へ戻る(動作708)。
【0040】
なお、ここでは切羽前のずりをすべてずり仮置き場14まで運搬したときにずり積載終了を通知したが、これに限定されない。たとえば所定量のずりをずり仮置き場14へ投入したときに、ずり投入終了通知をずり積込み機200へ送信してもよい。この場合、ホイールローダ100のずり運搬作業とずり積込み機200のズリ積込み作業とが並行して進行し、効率的なずり搬出が可能となる。
【0041】
3.ずり積込み機
上述したように、本実施形態によるずり積込み機200は、ホイールローダ100からずり積載終了通知を受信すると、ずり仮置き場14のずりをずり運搬車300へ積み込むズリ積込み作業を開始する。以下、ずり積込み機200の構成および機能について説明する。
【0042】
3.1)構成
図8に例示するように、ずり積込み機200は、走行体210と、ずり掻き込み機構220と、積み込み機構240と、自動運転制御装置250と、センサ部S2およびS3と、を備えている。センサ部S2は切羽方向の画像を取得する。センサ部S3は後述する積込み機構240の坑口側に配置され、ずり運搬車300のずり積載部の画像を取得する。なお本実施形態では、ずり運搬車300のずり積載状況はずり積込み機200で認識するものとするが、後述するようにずり運搬車300で認識してもよい。
【0043】
走行体210は、左右一対のクローラ212と、それらクローラ212を正逆転させる駆動部214と、左右一対のクローラ212で支持された機体216とを含んで構成されている。なお、走行体210の構成には従来公知の様々な構成が採用可能である。
【0044】
ずり掻き込み機構220は、ブーム230とずり掻き込み用のバケット221とを備えている。ブーム230は、機体216にブーム支持フレーム231、水平旋回部232、ブラケット233を介して揺動可能に支持された後ブーム234と、後ブーム234に揺動可能に支持された前ブーム235と、後ブーム234を上下に揺動させる後油圧シリンダ236と、前ブーム235を上下に揺動させる前油圧シリンダ237と、を備えている。
【0045】
バケット221は前ブーム235の先端に上下に揺動可能に設けられ、前ブーム235に、バケット221を上下に揺動させるバケット油圧シリンダ238が設けられている。なお、このようなブーム230、バケット221の構成には従来公知の様々な構成が採用可能である。なお、後ブーム234の後端が結合される水平旋回部232は、機体216幅方向の一側に設けられている。
【0046】
積み込み機構240はコンベア装置で構成されているので、以下、コンベア装置に参照番号240を付けて記す。コンベア装置240は機体216上で支持され、トンネル10の延在方向に沿って延在している。コンベア装置240は、コンベアフレーム241と、駆動ローラ242と、従動ローラ243と、それらローラ242および243に巻装されたベルト244と、ベルト244の張力装置(不図示)と、一対のコンベア側板245と、コンベア前板246と、を含んで構成されている。なお、コンベア装置240は機体216の車幅方向の中央に設けられている。
【0047】
コンベアフレーム241は機体216で支持され、駆動ローラ242、従動ローラ243、ベルト244の張力装置はコンベアフレーム241で支持されている。ベルト244が駆動ローラ242と従動ローラ243とに巻装されることで、ベルト244の走行によりずりを搬送する第1搬送路244A(往路)と、この第1搬送路244Aの下方に復路244Bが構成され、第1搬送路244Aの下面には複数のガイドローラ(不図示)が配置されている。
【0048】
一対のコンベア側板245は、第1搬送路244Aの両側に設けられ、第1搬送路244Aの幅方向において第1搬送路244Aの両側から次第に高さが大きくなる傾斜を有し、第1搬送路244Aによりずりの搬送が円滑になされるように図られている。
【0049】
第1搬送路244Aは、平面視した場合、機体216の幅方向の中央を通り、第1搬送路244Aの上流端247は走行体210および機体216よりも切羽12側に突出しており、第1搬送路244Aの下流端248は走行体210および機体216よりも坑口側に大きく突出している。また、第1搬送路244Aは、側面視した場合、上流端247がトンネル床面11の近傍に位置し、上流端247から下流端248に向かうにつれて次第に上昇する傾斜で設けられている。そして、下流端248の高さは、下流端248の下方にずり運搬車300の前部が入りこむことが可能で、下流端248から後述するずり運搬車300上にずりを落下できる寸法で設けられている。コンベア後板246は、第1搬送路244Aの上流端247に設けられ、両側のコンベア側板245の後端を接続しており、従動ローラ243はコンベア後板246の切羽12側に位置している。
【0050】
バケット221により掻き取られたずりは、コンベア後板246、両側のコンベア側板245の内側の第1搬送路244Aの上流端247に積載され、下流端248からずり運搬車300のずり積載部にずりが落下される。センサ部S3はコンベア装置240の下流端248の近傍に配置され、下方向にあるずり運搬車300のずり積載部に積載されるずりの画像を撮像する。なお、コンベア装置240の構成には従来公知の様々な構成が採用可能である。
【0051】
図9に例示するように、ずり積込み機200の動作は制御部260により制御される。より詳しくは、制御部260は積込み制御部261、走行制御部262およびパケット・ブーム制御部263を含み、積込み制御部261がコンベア装置240を制御し、走行制御部262が走行体210および駆動部214を制御し、パケット・ブーム制御部263が油圧計270を通してずり掻き込み機構220を制御する。そして制御部260は後述する自動運転制御装置250により制御される。
【0052】
図10に例示するように、自動運転制御装置250はセンサ部S2およびS3の出力信号を用いてずり積込み機200の自動運転制御を行う。センサ部S2は3次元スキャナS21、ビデオカメラS22およびサーマルカメラS23を含む。3次元スキャナS21は、ずり積込み機200の前方(3次元スキャナS21の向いている方向、ここでは切羽方向)あるいは周辺の3次元データ(X,Y,Z点群データ)を出力する。ビデオカメラS22は可視光カメラであり、ずり積込み機200の前方(ビデオカメラS22の向いている方向、ここでは切羽方向)の可視光画像データを出力する。サーマルカメラS23は赤外線カメラであり、ずり積込み機200の前方(サーマルカメラS23の向いている方向、ここでは切羽方向)の赤外線画像(温度分布画像)データを出力する。センサ部S3は可視光カメラであるビデオカメラS31を含む。
【0053】
自動運転制御装置250は、センサ部S2およびS3の出力データを入力するインターフェース251を有し、さらにGPU(Graphics Processing Unit)を含む少なくとも1つのプロセッサからなるプロセッサ部252、データ蓄積部253、通信制御部254、および無線通信部255を有する。通信制御部254は制御部260と接続して、プロセッサ部252からの制御信号を送信すると共に、制御部260からの各種状態を示す検出信号を受信する。
【0054】
無線通信部255は前段のホイールローダ100および後段のずり運搬車300と無線接続することができる。上述したように無線通信部255は、ホイールローダ100からずり積載終了通知を受信し、あるいはずり積込み機200の動作状態をホイールローダ100およびずり運搬車300へ通知することも可能である。あるいは無線通信部255は監視システム500と無線通信を行う方式であってもよい。
【0055】
プロセッサ部252は図示しないメモリに格納されたプログラムを実行することで種々の機能が実現できる。本実施形態では、プロセッサ部252に制御部252.1、状況認識部252.2、ずり領域認識部252.3、積載状況認識部252.4、および自動制御部252.5が実装されているものとする。
【0056】
状況認識部252.2は、3次元スキャナS21からの3次元データおよびビデオカメラS22からの可視光画像を用いてずり積込み機200の前方(ここでは切羽方向)の状況を認識する。ずり領域認識部252.3は、3次元スキャナS21からの3次元データおよびビデオカメラS22およびサーマルカメラS23からの可視光画像および赤外線画像を用いてずり仮置き場14のずり領域を認識する。積載状況認識部252.4は、センサ部S3からの可視光画像を用いてずり運搬車300のずり積載部の積載状況を認識する。この積載状況はずり積載部に投入されたずりの積載状態であり、積載状況認識部252.4はずり積載部の上限までずりが積載されているかどうかを認識する。
【0057】
自動制御部252.5は、3次元スキャナS21からの3次元データを用いて取得されるずり積込み機200の位置とずり仮置き場14のずり領域の位置とを参照しながら、制御部260を制御し、ずり掻き込み機構220を動作させてずり仮置き場14のずりを積載し、コンベア装置240を動作させてずりをずり運搬車300へ投入するという一連の自動運転動作を実行する。またセンサ部S3の画像データによりずり運搬車300の積載状況から所定量のずりがずり運搬車300に積載されると認識されると、その旨をずり運搬車300に通知するとともに、ずり掻き込み機構220およびコンベア装置240の動作を停止させる。
【0058】
上述したように、本実施例では、センサ部S3がコンベア装置240の下流端248の近傍に配置され、その撮像データを用いてずり運搬車300のずり積載状況を認識することができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、別のセンサ部S3aがコンベア装置240におけるコンベヤ側壁板245上に設けられてもよい。この場合、センサ部S3aはベルトコンベアの上流を撮像し、その撮像データを用いてベルトコンベアに搭載されたズリの量を推定することができる。たとえばセンサ部S3aは3Dスキャナ、サーマルカメラおよびビデオカメラで構成され、サーマルカメラにより、ずりとベルト244/コンベヤ側壁板245とを区別することができる。したがって積載状況認識部252.4は、センサ部S3aから3次元データ、赤外線画像データおよび可視光画像データを取得することで機械学習モデルを用いたAI処理により、ベルトコンベアに対するずりの搭載量が十分か否かを判断することができる。たとえば、ずりの搭載量が少なければ、ベルコトンベアのスピードを遅くしたり、ブーム230の動きを速くしたりすることで、ずりの搬出をより効率化できる。
【0059】
本実施形態において、状況認識部252.2、ずり領域認識部252.3および積載状況認識部252.4はディープラーニングにより構築された学習モデルを用いたAI認識部である。周知のように、ディープラーニング技術は画像認識能力に優れており、ビデオカメラおよびサーマルカメラで得られた実際のずり仮置き場14のずり画像、ずり運搬車300に積載されたずり画像などの多くの特徴的な画像データと、3次元スキャナS11で得られた3次元データとを教師データとして与えることで、ニューロンパラメータを調整し誤差の十分小さい学習モデルを構築できる。
【0060】
状況認識部252.2、ずり領域認識部252.3および積載状況認識部252.4のAI認識部は汎用サーバあるいはパーソナルコンピュータに構築可能であるが、ディープラーニングの演算を行うにはGPUを搭載したものが望ましい。たとえば状況認識部252.2およびずり領域認識部252.3は、ずり積込み機200の位置の3次元データと、ビデオカメラS22およびサーマルカメラS23で得られた可視光画像および赤外線画像とに基づいて、
図11に例示するように状況を認識し、ずり仮置き場14のずり領域を識別することができる。
【0061】
図11に模式的に示すように、状況認識部252.2およびずり領域認識部252.3は学習モデルを用いて、切羽方向の画像領域800を、切羽領域801、トンネル壁面領域802、およびずり仮置き場14のずり領域803に分割化する。この分割化された画像に基づいて、自動制御部252.5は、ずり積込み機200のずり掻き込み機構220およびコンベア装置240を駆動し、ずり領域803のずりをコンベア装置240に掻き込みずり運搬車300に投入する。
【0062】
積載状況認識部252.4についても同様の方法で、ずり運搬車300のずり積載部での積載状況を機械学習モデルを構築することで認識できる。以下、ずり積込み機200の全体的な制御フローを
図12を参照しながら説明する。
【0063】
3.2)自動運転制御
図12において、自動運転制御装置250の制御部252.1は、待機状態でホイールローダ100からずり積載終了通知を受信したものとする(動作901のYES)。
【0064】
状況認識部252.2は、3次元スキャナS21、ビデオカメラS22およびサーマルカメラS23のデータから前方(カメラが向いている方向、ここでは切羽方向)の状況を認識し、ずり領域認識部252.3は、3次元スキャナS21、ビデオカメラS22およびサーマルカメラS23のデータからずり仮置き場14のずり領域803を識別する(動作S902)。その際、ずり仮置き場14のずり量を推定してもよい。
【0065】
ずり領域803が識別されると、自動制御部252.4は、制御部260の積込み制御部261およびバケット・ブーム制御部263を制御し、バケット221でずりをコンベア装置240へ掻き込み、コンベア装置240で移送されたずりをずり運搬車300へ投入する(動作903)。積載状況認識部252.4は、センサ部S3あるいはセンサ部S3aからのデータを用いてずり運搬車300のずり積載部の積載状況を認識し、ずり積載部に所定量のずりが投入されたか否かを判断する。
【0066】
ずり投入が所定量に達するまで、あるいはずり領域認識部252.3がずり仮置き場14の残存ずりがなくなったと認識するまで、動作902および903が繰り返される(動作904のNO、動作905のYES)。なお、ずり運搬車300へのずり投入量は、ずり積込み機200で推定しても良いが、ずり運搬車300が重量を計測して、所定量に達したときに自動運転制御装置140へ通知しても良い。本実施形態では、ずり運搬車300の所定ずり量は1台のホイールローダ100の運搬量の複数倍、例えば4~5台分である。したがって、ホイールローダ100の運搬量からずり運搬車300の投入量を推定することもできる。
【0067】
ずり仮置き場14のずりがなくなると(動作905のNO)、制御部252.1はその旨を無線通信部255を通してホイールローダ100あるいは監視システム500へ通知する。所定量のずりをずり運搬車300へ投入した場合(動作904のYES)、制御部252.1はずり掻き込み機構220およびコンベア装置240を停止し(動作907)、ずり投入終了通知をずり運搬車300へ送信する(動作908)。この場合、複数台のずり運搬車300を用意して、連続的にずりをずり運搬車に積載してクラッシャ400へ運搬することもできる。
【0068】
なお、ずり運搬車300は、ずり積込み機200からずり投入終了通知を受信することで、積載されたずりをクラッシャ400まで運搬する運搬作業を開始することができる。
【0069】
3.3)効果
上述したように、本実施形態によるずり積込み機200は、ずり仮置き場14に運搬された掘削ずりをずり掻き込み機構220により掻き寄せ、コンベア装置240により後方へ配置されたずり運搬車300へ直接投入することができる。本実施形態では、センサ部S2およびS3/S3aと自動運転制御装置250のAI認識部によりオペレータ不要の自動ズリ積込み作業を実現できる。
【0070】
これにより掘削ズリ積込み作業時の省力化・省人化を可能とするともに,発破後の切羽ズリを迅速に処理することで切羽作業エリアを早期解放し、次工程の支保工作業へ移行を容易にすることでトンネル掘削サイクルの円滑化を達成できる。
【0071】
4.ずり運搬車
上述したように、ずり運搬車300は、積載されたずり量が所定量、すなわちずり積載部の上限に達すると、ずり積込み機200からクラッシャ400まで移動するずり運搬作業を開始する。ずり積載量の所定量への到達は、上述したようにずり積込み機200からずり投入終了通知を受信することで検知することができる。ただし、以下に説明するずり運搬車300では、ずり運搬車300にずり積載状況を判断するためのセンサ部を設けている。
【0072】
図13および
図14(A)、(B)に例示するように、ずり運搬車300は、走行体310と、ずり積載部320と、自動制御装置330と、センサ部S4と、を備えている。走行体310は、左右一対のクローラ311と、それらクローラ311を正逆転させる駆動部(不図示)と、左右一対のクローラ311で支持された機体312とを含んで構成されている。なお、走行体310の構成には従来公知の様々な構成が採用可能である。
【0073】
ずり積載部320はコンベア装置321を含んで構成されている。コンベア装置321は機体312上のフレーム313で支持されている。コンベア装置321は、駆動ローラ322と、従動ローラ323と、それらローラ322、323に巻装されたベルト324と、ベルト324の張力装置(不図示)、一対のコンベア側板325、コンベア後板326、コンベア前板327を含んで構成され、コンベア装置321は機体312の車幅方向の中央に設けられている。
【0074】
ベルト324が駆動ローラ322と従動ローラ323とに巻装されることで、ベルト324の走行によりずりを搬送する搬送路321A(往路)と、この搬送路321Aの下方に復路321Bが構成され、搬送路321Aの下面には複数のガイドローラ(不図示)が配置されている。
【0075】
搬送路321Aの下流端は走行体310およびフレーム313よりも坑口側に突出した搬送路突出部328となっている。この搬送路突出部328の走行体310およびフレーム313からの突出長さは、搬送路突出部328の端部をクラッシャ400のホッパ401の内側に位置させることができる寸法で形成され、搬送路突出部328のトンネル床面11からの高さは、ずりをクラッシャ400のホッパ401に落下できるように、ホッパ401よりも高い高さで設けられている。
【0076】
一対のコンベア側板325は、フレーム313上の搬送路321Aの両側に設けられ、搬送路321Aの幅方向において搬送路321Aの両側から次第に高さが大きくなる傾斜を有し、コンベア後板326は、搬送路321Aの上流端に設けられ、コンベア前板327は、搬送路321Aの下流部分でフレーム313の端部上に設けられている。
【0077】
コンベア前板327は昇降用油圧シリンダの伸縮により上下動され、コンベア前板327の上下動により開閉されるゲート329が両側のコンベア側板325の抗口側の端部に設けられている。なお、コンベア装置321の構成には従来公知の様々な構成が採用可能である。
【0078】
なお、本実施の形態ではベルト324の幅が1.4m、一対のコンベア側板325、コンベア後板326、コンベア前板327で構成されるずり積載部320の平面視の輪郭は長辺が約5.5m、短辺が約3mの長方形であり、深さは約1.5mであり、ずりの積載量は、ホイールローダ100の一台の運搬量の複数倍、例えば4~5台分である。
【0079】
ずり運搬車300は、ずり積込み機200の第1搬送路244Aの下流端248の下方に、第2搬送路321Aが位置するように配置され、ずりがずり運搬車300のずり積載部320に落下し積載される。その際、ずり運搬車300のずり積載部320の全域にずりが積載されるように、ずり運搬車300を矢印B方向に移動させるなど任意である。
【0080】
センサ部S4はコンベア前板327の上部に配置され、ずり積載部320に積載されたずりの量を画像監視するためのビデオカメラからなる。自動制御装置330は、センサ部S4からの可視光画像データを用いて、ずり積載部320に積載されたずりの量あるいはずりの積載状況をAI画像認識する。他の例として、センサ部S4はビデオカメラおよび3Dスキャナからなり、3Dスキャナの3次元データとビデオカメラの可視光画像データとを用いて、ずり積載部320に積載されたずりの量や積載状況をAI画像認識してもよい。このAI画像認識は、上述したずり積込み機200の状況認識部252.4と同様に機械学習モデルを用いて実現できる。
【0081】
自動制御装置330は機体312内に設置され、駆動部および走行体310を制御する制御部と、ずり積込み機200あるいは監視システム500と無線通信可能な無線通信部と、を有する。自動制御装置330は、センサ部S4によりずり積載部320に所定量のずりが投入されたと判断すると(ずり投入完了)、その旨をずり積込み機200へ無線通信部を通して通知すると共に、走行体310を制御してずり運搬車300をずり積込み機200からクラッシャ400へ向けて走行させる。また、ずり投入完了通知を受信すると、ずり積込み機200のずり掻き込み機構220のバケットおよびブームの駆動およびおよび積込み機構(コンベア装置)240のベルト搬送を停止する。
【0082】
ずり運搬車300の自動制御装置330は、クラッシャ400のホッパ401の上方に搬送路突出部328を位置させて停止する。そして、コンベア前板327を上昇させてゲート329を開放し、コンベア装置321を駆動し、ベルト324を走行させて搬送路321A上に積載されたずりを、クラッシャ400のホッパ401に落下させる。
【0083】
搬送路321A上に積載されたずりを全てクラッシャ400のホッパ401に落下させた後、コンベア前板327を下降させてゲート329を閉塞し、ずり運搬車300はずり積込み機200に向かって走行し、ずり積込み機200の搬送路244Aの下流端248の下方にずり積載部320を位置させて停止する。このとき、自動制御装置330はずり積込み機200へ積載準備完了の通知を送信しても良い。こうしてずり積込み機200はズリ積込み作業を開始し、ずり仮置き場14のずりをずり運搬車300のずり積載部320へ投入する。
【0084】
5.ずり搬送システム
以上述べたホイールローダ100、ずり積込み機200およびずり運搬車300は、相互に無線通信しながら、あるいは監視システム500からの指示に従って動作し、切羽前のずり13をクラッシャ400まで効率的に自動搬出することができる。
【0085】
ホイールローダ100は、切羽方向の可視光画像に基づいて切羽での発破完了を認識し、3次元データ、可視光画像および赤外線画像に基づいて切羽前のずり領域603を認識し、発破完了後、切羽前のずりをずり仮置き場14へ運搬してずり仮置き場14へ投入する。ずり積込み機200は、ずり仮置き場14に運搬された掘削ずりをずり掻き込み機構220により掻き寄せ、コンベア装置240により後方へ配置されたずり運搬車300へ直接投入する。ずり運搬車300は、積載されたずりをクラッシャ400まで運搬する。
【0086】
クラッシャ400のホッパ401に投入されたずりは、クラッシャ400の破砕部で破砕され、ベルトコンベア402からテールピース台車403上で連続ベルトコンベア装置404の搬送路の上流端に積載され、連続コンベアベルト404により坑口に向けて搬送される。
【0087】
なお、ずり運搬車300を用いることなく、ずり積込み機200からクラッシャ400へ直接ずりを投入することもできる。この場合、ずり積込み機200からクラッシャ400に投入されたずりは、クラッシャ400で破砕され、粉砕されたずりが後続搬送装置により坑口方向に搬出される。あるいは、ずり積込み機200から図示しないダンプへ直接ずりを投入して坑口に向けて搬出されてもよい。
【0088】
本実施形態によるずり搬出システムによれば、ホイールローダ100は切羽12のずりを運搬するにあたって、切羽12とずり仮置き場14との間を往復すればよい。ずり仮置き場14は、切羽12から約30m程度離れた箇所から坑口に向けて約20m程度延在しているため、ホイールローダ100は30mから50mの距離を往復すればよく、従来の100mの距離に比べ短い。なお、ずり積込み機200の切羽側にシャトルカーを設けてホイールローダ100の往復移動距離を更に短縮することもできる。
【0089】
この場合、切羽12が30m程度前進する直前の状態では、言い換えると、ストレージカセットに収容されたゴムベルトを延伸させる直前の状態では、ホイールローダ100は60mから80mの距離を往復すればよく、従来の距離の130mに従来に比べて短い。そのため、爆破工程後に生じたずりを、従来に比べて短時間でホイールローダ100によりずり仮置き場14に運搬することができ、爆破工程後の切羽12の後処理を従来に比べて極めて短時間で済ませることができる。これにより、切羽12付近におけるトンネル周壁面へのコンクリートの吹き付け工程や、ロックボルトの打設工程、ドリルジャンボによる装薬孔穿孔工程など、次の爆破工程の前に行なう各種の作業を早期に行なうことが可能となり、トンネル工事の効率化を図り、トンネル工事の施工期間の短縮化を図る上で有利となる。
【0090】
また、ずり運搬車300が往復するずり積込み機200とクラッシャ400との距離は、33mから53mであり、ホイールローダ100が往復する距離とほぼ同等になるため、爆破工程後の切羽12の後処理にホイールローダ100が要する時間と略同等となり、爆破工程後に生じた全てのずりをクラッシャ400のホッパ401に投入するまでの時間を短縮できる。
【0091】
この場合、ストレージカセットに収容されたゴムベルトを延伸させる直前の状態では、ずり運搬車300が往復するずり積込み機200とクラッシャ400との距離は、63mから83mとなるが、従来のホイールローダが移動する距離である130mに比べて短い。しかも、本実施形態では、ずり運搬車300のずりの積載量は、ホイールローダ100の一台の運搬量の複数倍となっていることから、すり運搬車がずり仮置き場14とクラッシャ400のホッパ401との間を往復する回数も少ない。
【符号の説明】
【0092】
10 トンネル
11 トンネル床面
12 切羽
13 切羽前ずり
14 ずり仮置き場
100 ホイールローダ
120 本体
122 バケット
124 ブーム
140 自動運転制御装置
150 制御部
160 駆動・制動系
170 エンジン
180 油圧系
200 ずり積込み機
210 走行体
220 ずり掻き込み機構
240 積込み機構(コンベア装置)
250 自動運転制御装置
251 インターフェース
252 プロセッサ部
252.1 制御部
252.2 状況認識部
252.3 ずり領域認識部
252.4 積載状況認識部
252.5 自動制御部
253 データ蓄積部
254 通信制御部
255 無線通信部
260 制御部
261 積込み制御部
262 走行制御部
263 パケット・ブーム制御部
300 ずり運搬車
400 クラッシャ