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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019698
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20250131BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 C
B60C11/12 C
B60C11/03 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123440
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】石原 誠也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC11
3D131BC31
3D131CB05
3D131EB03U
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB83X
3D131EB91V
3D131EB91W
3D131EB91X
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB94X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】波型形状のサイプを有するタイヤにおいて、接地性及び耐久性が向上する空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド10を備え、トレッド10は、タイヤ周方向に交差する方向に延在するサイプ14を有するブロック13を含み、サイプ14は、ブロック13の表面における開口から底にわたり、当該サイプ14の延在方向に波型形状の振幅を有し、振幅は、開口で最も大きく、かつ、底で最も小さく、開口から底にかけて一定の変化率で振幅が減少することにより、サイプ14の延在方向に略直交する深さ方向断面視において、サイプ14は開口から底にわたり直線状である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備える空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、タイヤ周方向に交差する方向に延在するサイプを有するブロックを含み、
前記サイプは、前記ブロックの表面における開口から底にわたり、当該サイプの延在方向に波型形状の振幅を有し、
前記振幅は、前記開口で最も大きく、かつ、前記底で最も小さく、前記開口から前記底にかけて一定の変化率で前記振幅が減少することにより、前記サイプの延在方向に略直交する深さ方向断面視において、前記サイプは前記開口から前記底にわたり直線状である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記サイプの前記開口の前記振幅は、0.5mm以上1.5mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記サイプの前記底の前記振幅は、0.1mm以上0.6mm以下である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記サイプの幅は、0.5mm以上1.5mm以下である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記サイプの前記開口の前記振幅Asと、前記サイプの前記底での前記振幅Abとの比As/Abは、4.0以上7.0以下である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面に接地する踏面を含むトレッドを備え、そのトレッドに、タイヤ周方向やタイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の溝で区画された複数のブロックがタイヤ周方向に並ぶいわゆるブロックパターンを有するタイヤが知られている。特許文献1には、そのようなブロックに、タイヤ表面視で波型形状の振幅を有するサイプと呼ばれる細い溝が複数形成された空気入りタイヤが開示されている。サイプを有することにより、エッジ効果が高まりタイヤのグリップ性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP3805019A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に示されるサイプは、タイヤ表面での振幅が最大であって底に向かうにつれて振幅は減少しており、深さ方向断面視では、深さ方向の途中でサイプが緩やかに屈曲するように変形している。このように深さ方向の途中でサイプが変形していると、車両の制動時や発進時においてその変形点を起点にサイプ間のゴムが変形しやすい。このため、サイプ間のゴム表面の接地面積が減少して接地性が低下したり、ブロック欠けが生じて耐久性が低下したりする。
【0005】
そこで本発明は、波型形状のサイプを有するタイヤにおいて、接地性及び耐久性が向上する空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、トレッドを備える空気入りタイヤであって、前記トレッドは、タイヤ周方向に交差する方向に延在するサイプを有するブロックを含み、前記サイプは、前記ブロックの表面における開口から底にわたり、当該サイプの延在方向に波型形状の振幅を有し、前記振幅は、前記開口で最も大きく、かつ、前記底で最も小さく、前記開口から前記底にかけて一定の変化率で前記振幅が減少することにより、前記サイプの延在方向に略直交する深さ方向断面視において、前記サイプは前記開口から前記底にわたり直線状である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、波型形状のサイプを有するタイヤにおいて、接地性及び耐久性が向上する空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す図であって、タイヤの外周面の一部展開図である。
図2】実施形態に係るショルダーサイプを示す斜視図である。
図3A図2のIIIA-IIIA矢視図である。
図3B図2のIIIB-IIIB断面図である。
図3C図2のIIIC-IIIC断面図である。
図3D図2のIIID-IIID断面図である。
図4図3AのIV-IV断面図である。
図5】実施形態に係る中央サイプを示す斜視図である。
図6A図5のVIA-VIA矢視図である。
図6B図5のVIB-VIB断面図である。
図6C図5のVIC-VIC断面図である。
図6D図5のVID-VID断面図である。
図7図6AのVII-VII断面図である。
図8A】実施形態のショルダーサイプにおける波型形状の開口を模式的に示す平面図である。
図8B】実施形態のショルダーサイプにおける波型形状の底を模式的に示す平面図である。
図9A】実施形態の中央サイプにおける波型形状の開口を模式的に示す平面図である。
図9B】実施形態の中央サイプにおける波型形状の底を模式的に示す平面図である。
図10A】実施形態の中間サイプにおける波型形状の開口を模式的に示す平面図である。
図10B】実施形態の中間サイプにおける波型形状の底を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1を平面視した場合の外周面の一部を展開した図である。実施形態のタイヤ1は、乗用車用のタイヤに適用できるが、この他には、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用のタイヤとしても適用できる。
【0010】
図1には、タイヤ軸方向X及びタイヤ周方向Cを示している。実施形態のタイヤ1には、装着される車両の前進時における回転方向がタイヤ周方向の一方側に定められており、図1に示すC1方向がその回転方向である。なお、以下の説明でいう前側は、図1の右側であってタイヤ回転方向C1に応じた車両の前進方向の側をいい、後側は、図1の左側であってタイヤ回転方向C1と反対方向の回転方向C2に応じた車両の後退方向の側をいう。
【0011】
図1には、タイヤ1のトレッド10と、トレッド10のタイヤ軸方向両側のショルダー30と、が示されている。ショルダー30は、トレッド10から、タイヤ軸方向両側の不図示のサイドウォールのそれぞれに移行する部分であって、タイヤ1の肩に当たる部分である。ショルダー30は、図1において上側の第1ショルダー31と、図2において下側の第2ショルダー32と、を含む。
【0012】
(トレッドパターン)
トレッド10は、路面に接地するトレッド面20を有する。トレッド面20には、トレッドパターン11が形成されている。トレッドパターン11は、複数の溝12と、それら溝12で区画される複数のブロック13と、により、主たるデザインが形成されている。図1には、トレッド面20のタイヤ軸方向中央をタイヤ周方向に沿って延びる仮想的な線であるタイヤ赤道S1が示されている。
【0013】
タイヤ軸方向を左右方向とすると、トレッドパターン11は、タイヤ周方向にやや位置ずれしている点を除いて、タイヤ赤道S1を対称線として実質的に左右対称である。トレッド面20は、タイヤ赤道S1を境として、第1ショルダー31側の第1トレッド面21と、第2ショルダー32側の第2トレッド面22と、を含む。
【0014】
(トレッドパターンの溝)
トレッドパターン11の溝12は、複数の傾斜溝40と、複数の連通溝50と、を含む。実施形態の傾斜溝40及び連通溝50は、溝幅が1mmを超える溝である。
【0015】
傾斜溝40は、タイヤ軸方向の両側からタイヤ赤道S1に向かって延びる溝である。これら傾斜溝40は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。複数の傾斜溝40は、第1ショルダー31からタイヤ赤道S1に向かって延びる第1傾斜溝41と、第2ショルダー32からタイヤ赤道S1に向かって延びる第2傾斜溝42と、を含む。第1傾斜溝41は、主に第1トレッド面21に形成され、第2傾斜溝42は、主に第2トレッド面22に形成されている。
【0016】
連通溝50は、タイヤ周方向に隣接する一対の第1傾斜溝41を連通する第1連通溝51と、タイヤ周方向に隣接する一対の第2傾斜溝42を連通する第2連通溝52と、を含む。第1連通溝51は、第1トレッド面21に形成され、第2連通溝52は、第2トレッド面22に形成されている。
【0017】
トレッドパターン11が左右対称であることから、第1傾斜溝41と第2傾斜溝42とは同様の態様を有し、かつ、第1連通溝51と第2連通溝52とは同様の態様を有する。
【0018】
第1傾斜溝41は、第1ショルダー31からタイヤ赤道S1に向かって、後側が凸となるようにしだいに湾曲しながら前側に延びる溝であって、全体的にタイヤ周方向に対して傾斜している。第2傾斜溝42は、第2ショルダー32からタイヤ赤道S1に向かって、後側が凸となるようにしだいに湾曲しながら前側に延びる溝であって、全体的にタイヤ周方向に対して傾斜している。ここで、各傾斜溝41、42においては、ショルダー30(第1ショルダー31、第2ショルダー32)側の端を基端とし、タイヤ赤道S1側の端を先端とする。
【0019】
第1傾斜溝41は、基端から第1トレッド面21のタイヤ軸方向中央を過ぎるあたりまでの基端側湾曲部43と、基端側湾曲部43のタイヤ赤道S1側の端からタイヤ赤道S1に向かって湾曲して先端に至る先端側湾曲部44と、を含む。基端側湾曲部43は、比較的小さな曲率で湾曲し、かつ、前側に若干傾斜している。先端側湾曲部44は、基端側湾曲部43と同様の曲率で湾曲し、かつ、基端側湾曲部43よりも急な角度で前側に傾斜している。
【0020】
第2傾斜溝42も第1傾斜溝41と同様の態様である。すなわち第2傾斜溝42は、基端から第2トレッド面22のタイヤ軸方向中央を過ぎるあたりまでの基端側湾曲部43と、基端側湾曲部43のタイヤ赤道S1側の端からタイヤ赤道S1に向かって湾曲して先端に至る先端側湾曲部44と、を含む。
【0021】
タイヤ周方向に並ぶ複数の第1傾斜溝41のそれぞれは、交互に長さが異なっている。短い方の第1傾斜溝41の先端は、タイヤ赤道S1の直前で第2傾斜溝42に合流する態様で終端している。長い方の第1傾斜溝41の先端は、タイヤ赤道S1を通過してから、タイヤ周方向に隣接する2つの第2傾斜溝42の先端側湾曲部44を横断した後に終端している。
【0022】
第2傾斜溝42の長さも、第1傾斜溝41と同様にタイヤ周方向で交互に長さが異なっている。すなわち、短い方の第2傾斜溝42の先端は、タイヤ赤道S1の直前で第1傾斜溝41に合流する態様で終端している。長い方の第2傾斜溝42の先端は、タイヤ赤道S1を通過してから、タイヤ周方向に隣接する2つの第1傾斜溝41の先端側湾曲部44を横断した後に終端している。
【0023】
第1連通溝51は、第1傾斜溝41の先端側湾曲部44における基端側湾曲部43に近い端から、タイヤ周方向前側の第1傾斜溝41の、基端側湾曲部43から先端側湾曲部44へ移行する屈曲点付近に真っ直ぐ延びている。
【0024】
第2連通溝52も第1連通溝51と同様であって、第2傾斜溝42の先端側湾曲部44における基端側湾曲部43に近い端から、タイヤ周方向前側の第2傾斜溝42の、基端側湾曲部43から先端側湾曲部44へ移行する屈曲点付近に真っ直ぐ延びている。
【0025】
第1連通溝51及び第2連通溝52は、いずれも後側から前側に延びるにつれてタイヤ周方向外側に向かうようにタイヤ周方向に対して傾斜している。
【0026】
(トレッドパターンのブロック)
トレッドパターン11のブロック13は、タイヤ軸方向で最も外側に配置される複数のショルダーブロック60と、タイヤ軸方向で中央に配置される複数の中央ブロック70と、タイヤ軸方向でショルダーブロック60と中央ブロック70との間に配置される複数の中間ブロック80と、を含む。
【0027】
ショルダーブロック60は、第1ショルダー31側の第1ショルダーブロック61と、第2ショルダー32側の第2ショルダーブロック62と、を含む。
【0028】
第1ショルダーブロック61は、タイヤ周方向に隣接する一対の第1傾斜溝41と、第1連通溝51とにより、略矩形形状に区画されている。第1ショルダーブロック61の第1ショルダー31側の縁は、第1ショルダー31の外表面に連続している。複数の第1ショルダーブロック61は、第1傾斜溝41の基端側湾曲部43を挟んでタイヤ周方向に並んでいる。
【0029】
第2ショルダーブロック62は、タイヤ周方向に隣接する一対の第2傾斜溝42と、第2連通溝52とにより、略矩形形状に区画されている。第2ショルダーブロック62の第2ショルダー32側の縁は、第2ショルダー32の外表面に連続している。複数の第2ショルダーブロック62は、第2傾斜溝42の基端側湾曲部43を挟んでタイヤ周方向に並んでいる。
【0030】
傾斜溝40の基端側湾曲部43を挟んでタイヤ周方向に並ぶ第1ショルダーブロック61及び第2ショルダーブロック62のそれぞれは、タイヤ周方向に等間隔をおいて配置されてもよく、不等間隔であるバリアブルピッチで配置されてもよい。
【0031】
中央ブロック70は、第1トレッド面21と第2トレッド面22との双方にまたがる態様で配置されている。すなわちすべての中央ブロック70には、タイヤ赤道S1が通っている。複数の中央ブロック70は、主に第1トレッド面21側に存在する複数の第1中央ブロック71と、主に第2トレッド面22側に存在する複数の第2中央ブロック72と、を含む。
【0032】
第1中央ブロック71は、その表面積が占める割合が、第2トレッド面22側よりも第1トレッド面21側の方が大きい。第1中央ブロック71は、タイヤ周方向に隣接する一対の第1傾斜溝41の先端側湾曲部44と、複数の第2傾斜溝42のうちの長さが大きい方の第2傾斜溝42の先端側湾曲部44と、により、略矩形形状に区画されている。
【0033】
第2中央ブロック72は、その表面積が占める割合が、第1トレッド面21側よりも第2トレッド面22側の方が大きい。第2中央ブロック72は、タイヤ周方向に隣接する一対の第2傾斜溝42の先端側湾曲部44と、複数の第1傾斜溝41のうちの長さが大きい方の第1傾斜溝41の先端側湾曲部44と、により、略矩形形状に区画されている。
【0034】
複数の第1中央ブロック71及び複数の第2中央ブロック72のそれぞれは、タイヤ周方向に交互に並んでいる。
【0035】
中間ブロック80は、第1トレッド面21側の第1中間ブロック81と、第2トレッド面22側の第2中間ブロック82と、を含む。
【0036】
第1中間ブロック81は、タイヤ周方向に隣接する一対の第1傾斜溝41の先端側湾曲部44と、第1連通溝51と、長さが大きい方の第2傾斜溝42の先端側湾曲部44と、により、略矩形形状に区画されている。複数の第1中間ブロック81は、第1傾斜溝41の先端側湾曲部44を挟んでタイヤ周方向に並んでいる。
【0037】
第2中間ブロック82は、タイヤ周方向に隣接する一対の第2傾斜溝42の先端側湾曲部44と、第2連通溝52と、長さが大きい方の第2傾斜溝42の先端側湾曲部44と、により、略矩形形状に区画されている。複数の第2中間ブロック82は、第2傾斜溝42の先端側湾曲部44を挟んでタイヤ周方向に並んでいる。
【0038】
第1中間ブロック81及び第2中間ブロック82のそれぞれは、タイヤ軸方向で、ショルダーブロック60と中央ブロック70との間に配置されている。
【0039】
上述のように、すべての中央ブロック70にはタイヤ赤道S1が通っている。一方、ショルダーブロック60及び中間ブロック80には、タイヤ赤道S1は通っていない。
【0040】
第1トレッド面21においては、第1傾斜溝41に沿った複数のブロック13として、第1ショルダー31側からタイヤ赤道S1に向かって、第1ショルダーブロック61、第1中間ブロック81及び第1中央ブロック71の3つのブロック13がこの順で延在するブロック列13Aと、第1ショルダーブロック61及び第1中間ブロック81の2つのブロック13がこの順で延在するブロック列13Bとが、タイヤ周方向に交互に並んでいる。
【0041】
これと同様に、第2トレッド面22においては、第2傾斜溝42に沿った複数のブロック13として、第2ショルダー32側からタイヤ赤道S1に向かって、第2ショルダーブロック62、第2中間ブロック82及び第2中央ブロック72の3つのブロック13がこの順で延在するブロック列13Aと、第2ショルダーブロック62及び第2中間ブロック82の2つのブロック13がこの順で延在するブロック列13Bとが、タイヤ周方向に交互に並んでいる。
【0042】
第1トレッド面21及び第2トレッド面22のいずれにおいても、中央ブロック70がない列の中間ブロック80は、中央ブロック70がある列の中間ブロック80よりも、傾斜溝40に沿った延在方向の長さが大きい。一方、ショルダーブロック60及び中央ブロック70のそれぞれは、傾斜溝40に沿った延在方向の長さは等しい。
【0043】
(ブロックのサイプ)
図1に示すように、トレッド10の各ブロック13は、複数のサイプ14を有する。複数のサイプ14は、第1ショルダーブロック61及び第2ショルダーブロック62(以下、ショルダーブロック60と総称する場合がある)のそれぞれに形成されたショルダーサイプ110と、第1中央ブロック71及び第2中央ブロック72(以下、中央ブロック70と総称する場合がある)のそれぞれに形成された中央サイプ120と、第1中間ブロック81及び第2中間ブロック82(以下、中間ブロック80と総称する場合がある)のそれぞれに形成された中間サイプ130と、を含む。いずれのサイプも、上述した傾斜溝40及び連通溝50)よりも溝幅は小さく、その溝幅は1mm以下である。各ブロック13あたりのサイプ14の数は任意であるが、例えば2つ以上5つ以下程度の数のサイプ14が1つのブロック13に配置される。
【0044】
ショルダーサイプ110、中央サイプ120及び中間サイプ130は、いずれも各ブロック60、70、80の表面に開口し、タイヤ表面視で全体的に波型形状を有する。各サイプ110、120、130の深さ方向は、概ねタイヤ径方向に沿っている。
【0045】
図1に示すように、各ショルダーブロック60は、複数のショルダーサイプ110をそれぞれ有する。ショルダーサイプ110は、全体的には略真っ直ぐに延在している。各ショルダーブロック60のそれぞれにおいて、複数のショルダーサイプ110は間隔をおいて互いに平行に配置されている。複数のショルダーサイプ110は、傾斜溝40に沿ったショルダーブロック60の延在方向と略平行に延在している。すなわちショルダーサイプ110は、タイヤ周方向と交差する方向に延在している。ショルダーサイプ110の、タイヤ軸方向内側(タイヤ赤道S1側)の端は、第1連通溝51及び第2連通溝52(以下、連通溝50と総称する場合がある)に連通している。ショルダーサイプ110の、タイヤ軸方向外側(ショルダー30側)の端は、ショルダーブロック60のタイヤ軸方向外側の端に至らずに終端している。
【0046】
図2は、1つのショルダーサイプ110を示す斜視図である。図3Aは、図2のIIIA-IIIA矢視図である。図3Bは、図2のIIIB-IIIB断面図である。図3Cは、図2のIIIC-IIIC断面図である。図3Dは、図2のIIID-IIID断面図である。図4は、図3AのIV-IV断面図である。
【0047】
図2に示すように、ショルダーサイプ110は、延在方向に沿って波型形状に形成された波型形状部113と、波型形状部113の一端から連通溝50まで真っ直ぐ延び、波型形状部113よりも深さが小さいサイプブリッジ114と、を有する。また、ショルダーサイプ110は、ショルダーブロック60の表面における開口113Aと、底113Bと、を有する。波型形状部113は、ショルダーサイプ110の延在方向長さの、例えば70%以上といった大きな部分を占めている。波型形状部113の、開口113Aから底113Bまでの深さは、例えば5.0mm以上7.0mm以下程度とされ、サイプブリッジ114の深さは、例えば2.0mm以上4.0mm以下程度とされるが、これらに限定されない。
【0048】
図2及び図3A図3Dに示すように、ショルダーサイプ110の波型形状部113は、開口113Aから底113Bにわたり、一定の周期を有する波型形状に形成されている。波型形状部113の振幅は、開口113Aで最も大きく、かつ、底113Bで最も小さい。すなわち、底113Bにおいても振幅を有し、底113Bは直線形状を有さない。複数のショルダーサイプ110のショルダーブロック60の表面における開口113Aの振幅は、互いに同じである。さらに、ショルダーサイプ110の振幅は、開口113Aから底113Bにかけて一定の変化率で減少している。また、図4に示すように、ショルダーサイプ110の、相対向する内面間の隙間である幅は、開口113Aから底113Bまで略一定の寸法を有する。これにより、図4に示すように、ショルダーサイプ110の延在方向に略直交する深さ方向断面視において、ショルダーサイプ110は開口113Aから底113Bにわたり直線状である。ショルダーサイプ110の幅は、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0049】
なお、実施形態のショルダーサイプ110は、図2及び図3B図3Dに示すように、波型形状部113の一部が延在方向で連続しておらず、一部が欠損している部分を有する。これは、ショルダーサイプ110の一態様例であり、ショルダーサイプ110としてはこれに限定されず、波型形状が連続する態様であってもよい。
【0050】
図1に示すように、各中央ブロック70は、複数の中央サイプ120をそれぞれ有する。中央サイプ120は、全体的には真っ直ぐに延在している。各中央ブロック70のそれぞれにおいて、複数の中央サイプ120は間隔をおいて互いに平行に配置されている。複数の中央サイプ120は、タイヤ軸方向と略平行に延在している。すなわち中央サイプ120は、タイヤ周方向と交差する方向に延在している。中央サイプ120の両端のそれぞれは、第1傾斜溝41及び第2傾斜溝42(以下、傾斜溝40と総称する場合がある)のいずれかに連通している。
【0051】
図5は、1つの中央サイプ120を示す斜視図である。図6Aは、図5のVIA-VIA矢視図である。図6Bは、図5のVIB-VIB断面図である。図6Cは、図5のVIC-VIC断面図である。図6Dは、図5のVID-VID断面図である。図7は、図6AのVII-VII断面図である。
【0052】
図5に示すように、中央サイプ120は、延在方向に沿って波型形状に形成された波型形状部123と、波型形状部123の一端から傾斜溝40まで真っ直ぐ延び、波型形状部123よりも深さが小さい第1サイプブリッジ121と、波型形状部123の他端から傾斜溝40まで真っ直ぐ延び、第1サイプブリッジ121よりもさらに深さが小さい第2サイプブリッジ122と、を有する。また、中央サイプ120は、中央ブロック70の表面における開口123Aと、底123Bと、を有する。波型形状部123は、中央サイプ120の延在方向長さの、例えば50%以上を占めている。波型形状部123の、開口123Aから底123Bまでの深さは、例えば6.0mm以上7.0mm以下程度とされ、第1サイプブリッジ121の深さは、例えば4mm程度とされ、第2サイプブリッジ122の深さは、例えば2mm程度とされるが、これらに限定されない。
【0053】
図5及び図6A図6Dに示すように、中央サイプ120の波型形状部123は、開口123Aから底123Bにわたり、一定の周期を有する波型形状に形成されている。波型形状部123の振幅は、開口123Aで最も大きく、かつ、底123Bで最も小さい。すなわち、底123Bにおいても振幅を有し、底123Bは直線形状を有さない。複数の中央サイプ120の中央ブロック70の表面における開口123Aの振幅は、互いに同じである。さらに、中央サイプ120の振幅は、開口123Aから底123Bにかけて一定の変化率で減少している。また、図7に示すように、中央サイプ120の、相対向する内面間の隙間である幅は、開口123Aから底123Bまで略一定の寸法を有する。これにより、図7に示すように、中央サイプ120の延在方向に略直交する深さ方向断面視において、中央サイプ120は開口123Aから底123Bにわたり直線状である。中央サイプ120の幅は、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0054】
図1に示すように、各中間ブロック80は、複数の中間サイプ130をそれぞれ有する。中間サイプ130は、全体的には真っ直ぐに延在している。各中間ブロック80のそれぞれにおいて、複数の中間サイプ130は間隔をおいて互いに平行に配置されている。複数の中間サイプ130は、いずれも後側から前側に延びるにつれてタイヤ周方向外側に向かうようにタイヤ周方向に対して傾斜している。すなわち中間サイプ130は、タイヤ周方向と交差する方向に延在している。中間サイプ130の両端のそれぞれは、傾斜溝40及び連通溝50のいずれかに連通している。
【0055】
中間サイプ130は、上述の中央サイプ120と同様の構成を有する。すなわち、図示は省略するが、中間サイプ130は、中央サイプ120における波型形状部123、第1サイプブリッジ121、第2サイプブリッジ122のそれぞれと同様の部分を有する。そして、中間サイプ130の波型形状部の周期は一定で、振幅は、中央ブロック70の表面における開口で最も大きく、かつ、底で最も小さい。複数の中間サイプ130の中間ブロック80の表面における開口の振幅は、互いに同じである。中間サイプ130の幅は、開口から底まで略一定である。これにより、中間サイプ130の延在方向に略直交する深さ方向断面視において、中間サイプ130は開口から底にわたり直線状である。中間サイプ130の幅は、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0056】
図8Aは、ショルダーサイプ110における波型形状の開口113Aを模式的に示す平面図であり、開口113Aの振幅ShAを示している。図8Bは、ショルダーサイプ110における波型形状の底113Bを模式的に示す平面図であり、底113Bの振幅ShBを示している。図9Aは、中央サイプ120における波型形状の開口123Aを模式的に示す平面図であり、開口123Aの振幅CeAを示している。図9Bは、中央サイプ120における波型形状の底123Bを模式的に示す平面図であり、底123Bの振幅CeBを示している。図10Aは、中間サイプ130における波型形状の開口133Aを模式的に示す平面図であり、開口133Aの振幅MeAを示している。図10Bは、中間サイプ130における波型形状の底133Bを模式的に示す平面図であり、底133Bの振幅MeBを示している。
【0057】
実施形態においては、上記振幅ShA、CeA、MeAは同じではなく、ショルダーサイプ110の振幅ShAが最も小さく、中央サイプ120の振幅CeAと中間サイプ130の振幅MeAとは、互いに同じか、もしくは中央サイプ120の振幅CeAの方が中間サイプ130の振幅MeAよりも大きい。すなわち、「CeA≧MeA>ShA」に規定されている。
【0058】
「CeA≧MeA>ShA」を条件として、これら振幅CeA、MeA、ShAは、それぞれ0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0059】
また、ショルダーサイプ110の底113Bの振幅ShB、中央サイプ120の底123Bの振幅CeB、中間サイプ130の底133Bの振幅MeBは、それぞれ0.1mm以上0.6mm以下であることが好ましい。
【0060】
また、各サイプ110、120、130の開口113A、123A、133Aの振幅をAとし、各サイプ110、120、130の底113B、123B、133Bの振幅をBとした場合、サイプごとの振幅Aと振幅Bとの比A/Bは、4.0以上7.0以下であることが好ましい。すなわち、ショルダーサイプ110におけるShA/ShB、中央サイプ120におけるCeA/CeB、中間サイプ130におけるMeA/MeBのそれぞれは、4.0以上7.0以下であることが好ましい。
【0061】
上記実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0062】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、トレッド10を備え、トレッド10は、タイヤ周方向に交差する方向に延在するサイプ14を有するブロック13を含み、サイプ14は、ブロック13の表面における開口から底にわたり、当該サイプ14の延在方向に波型形状の振幅を有し、その振幅は、開口で最も大きく、かつ、底で最も小さく、開口から底にかけて一定の変化率で振幅が減少することにより、サイプ14の延在方向に略直交する深さ方向断面視において、サイプ14は開口から底にわたり直線状である。ここでいうサイプの開口は、ショルダーサイプ110の開口113A、中央サイプ120の開口123A、中間サイプ130の開口133Aである。ここでいうサイプの底は、ショルダーサイプ110の底113B、中央サイプ120の底123B、中間サイプ130の底133Bである。
【0063】
実施形態の各サイプ14の底は、サイプ14の延在方向に沿って直線形状を有さず、振幅を有している。車両の制動時あるいは発進時などにおいてトレッド面20のブロック13に応力がかかった際には、その応力がかる方向に応じて、ブロック13のサイプ14の両側部分が倒れ込もうとする。このとき、サイプ14の底が直線形状の場合と、実施形態のように波型形状の場合とを比べると、その応力に抗する力が波型形状の方が高い。したがって、ブロック13は歪みにくく、ブロック13の表面の接地面積の低下が抑制される。このため、接地性が向上する。また、ブロック13の歪みが抑制されるため、ブロック13の一部、あるいは全体が剥がれ落ちるブロック欠けという不具合が抑制され、これによりタイヤ1の耐久性が向上する。
【0064】
実施形態の各サイプ14は、各ブロック13の表面における開口から底にかけて一定の変化率で振幅が減少することにより、各サイプ14の延在方向に略直交する深さ方向断面視において、各サイプ14は開口から底にわたり直線状である。これにより、上述したブロック13の倒れ込みの起点がサイプ14の底になる。また、ブロック13におけるサイプ14の両側部分どうしが噛み合いやすくなるため、接地性が向上する。接地性の向上は、コーナリング特性や操縦安定性の向上につながる。
【0065】
(2)実施形態に係る上記(1)のタイヤ1においては、サイプ14のブロック13の表面における開口の振幅は、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0066】
これにより、上述した効果を得やすい。
【0067】
(3)実施形態に係る上記(1)及び(2)のタイヤ1においては、サイプ14の底の振幅は、0.1mm以上0.6mm以下であることが好ましい。
【0068】
これにより、上述した効果を得やすい。
【0069】
(4)実施形態に係る上記(1)~(3)のタイヤ1においては、サイプ14の幅は、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0070】
これにより、上述した効果を得やすい。
【0071】
(5)実施形態に係る上記(1)~(4)のタイヤ1においては、サイプ14のブロック13の表面における開口の振幅Asと、サイプ14の底での振幅Abとの比As/Abは、4.0以上7.0以下であることが好ましい。
【0072】
これにより、上述した効果を得やすい。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0074】
例えば、各サイプの波型形状部は、三角関数の周期のような波型形状であってもよく、頂点部分のみが比較的大きな曲率のR状であって頂点間は直線である波型形状であってもよい。頂点のR、あるいは、サイプブリッジから波型形状部に移行するR部分の曲率半径は任意であるが、例えば0.6mm程度であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…タイヤ(空気入りタイヤ)
10…トレッド
13…ブロック
14…サイプ
110…ショルダーサイプ
113A…ショルダーサイプの開口
113B…ショルダーサイプの底
120…中央サイプ
123A…中央サイプの開口
123B…中央サイプの底
130…中間サイプ
133A…中間サイプの開口
133B…中間サイプの底
ShA…ショルダーサイプの開口の振幅
ShB…ショルダーサイプの底の振幅
CeA…中央サイプの開口の振幅
CeB…中央サイプの底の振幅
MeA…中間サイプの開口の振幅
MeB…中間サイプの底の振幅
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B