IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019701
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/16 20060101AFI20250131BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
C09J123/16
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123443
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀平
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DA121
4J040JB01
4J040KA26
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】
易解体性、保持力、塗工性、低温ラミネート性、耐可塑剤性に優れる塩化ビニル内装基材用ホットメルト接着剤の提供。
【解決手段】
本発明の課題は、メタロセン触媒で重合されたポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)および粘着付与剤(B)を含み、共重合樹脂(A)を構成するモノマーの主成分はプロピレンであり、共重合樹脂(A)の軟化点が85~115℃である、家屋の塩化ビニル基材用ホットメルト接着剤によって解決される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒で重合されたポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)および粘着付与剤(B)を含み、
共重合樹脂(A)を構成するモノマーの主成分はプロピレンであり、
共重合樹脂(A)の軟化点が85~115℃である、
塩化ビニル基材用ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量%中、前記共重合樹脂(A)を30~90質量%、粘着付与剤(B)を10~70質量%含有する、請求項1記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
粘着付与剤(B)が水添石油樹脂を含有する、請求項1記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
さらに酸化防止剤(C)を含み、
酸化防止剤(C)の含有量が、前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下である、
請求項1記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
さらに難燃剤(D)を含み、
難燃剤(D)の含有量が、前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して0質量部を超えて30質量部以下である、
請求項1~4いずれか1項記載のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル基材用ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘接着シート、粘接着フィルム、粘接着テープ等の、基材層の少なくとも一部の表面上に粘接着層を有する粘接着製品に使用される粘接着剤として、ゴム系粘接着剤やアクリル系粘接着剤等のベースポリマーからなる溶剤型粘接着剤が多用されている。
【0003】
一方、特に最近では、環境規制への対応、防災、人体への悪影響防止等の見地から脱溶剤の動きが強まっており、ホットメルト型粘接着剤が提案されている。中でも、耐熱性、耐久性の点でオレフィン樹脂系のホットメルト型粘接着剤が注目されている。
先行文献1には、プロピレン成分が20質量%以上含む非晶性ポリオレフィンと粘着付与樹脂を特定量含有するホットメルト型の粘接着剤組成物が開示されている。
【0004】
ホットメルト型粘接着剤の用途として、壁紙や床材の内装用粘接着シートが挙げられる。このような内装用粘着シートは、安価で高耐久の点で塩化ビニル基材が多用されている。
塩化ビニル基材は、多量の可塑剤を含有していること、高温で変形してしまうことから、塩化ビニル基材用のホットメルト型粘接着剤には、耐可塑剤性や低温シール性が求められる。
先行文献2には、塩ビ基材に対して優れた接着性を有するホットメルト型の粘接着剤組成物が開示されている。
【0005】
先行文献1および先行文献2に記載されるホットメルト型の粘接着剤組成物を塩化ビニル基材用に用いた場合、低温ヒートシール性、保持力、塗工性、耐可塑剤性、再加熱剥離性などにおいてなお改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-109360号公報
【特許文献2】特開平8-3526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低温ヒートシール性、保持力、塗工性、耐可塑剤性および再加熱剥離性に優れる塩化ビニル基材用ホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] メタロセン触媒で重合されたポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)および粘着付与剤(B)を含み、共重合樹脂(A)を構成するモノマーの主成分はプロピレンであり、共重合樹脂(A)の軟化点が85~115℃である塩化ビニル基材用ホットメルト接着剤。
[2]前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量%中、前記共重合樹脂(A)を30~90質量%、粘着付与剤(B)を10~70質量%含有する、[1]記載のホットメルト接着剤。
[3] 粘着付与剤(B)が水添石油樹脂を含有する、[1]または[2]記載のホットメルト接着剤。
[4] さらに酸化防止剤(C)を含み、酸化防止剤(C)の含有量が、前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下である、 [1]~[3]いずれか記載のホットメルト接着剤。
[5] さらに難燃剤(D)を含み、難燃剤(D)の含有量が、前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して0質量部を超えて30質量部以下である、[1]~[4]いずれか記載のホットメルト接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低温ヒートシール性、保持力、塗工性、耐可塑剤性および再加熱剥離性に優れる塩化ビニル基材用ホットメルト接着剤を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
また、本明細書において、メタロセン触媒で重合されたポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)を「ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)」または「共重合樹脂(A)」と略記する場合がある。
【0011】
本明細書において共重合樹脂(A)の軟化点は、JIS K6863:1994『ホットメルト接着剤の軟化点試験方法』に準じて測定した値である。
【0012】
本発明のホットメルト接着剤は、「発明の効果」の段落でも述べたように、低温ヒートシール性、保持力、塗工性、耐可塑剤性および再加熱剥離性のすべての性能に優れる。一般的なホットメルト接着剤の製品は古くから市場に存在し、個々の性能を満足するようなものはあるが、これらすべての性能を同時に満たすことは難しい。例えば、低温でヒートシール性を持たせるために柔らかい組成にすると、50℃のような高温環境で評価する保持力が低下してしまう。反対に保持力を優先すると低温ヒートシール性が悪化してしまう。また、低温ヒートシール性と再加熱剥離は似て非なる性能であり、低温ヒートシール性を有するものが必ずしも再加熱剥離を有するとは限らない。低温ヒートシール性はヒートシール温度が80~120℃のような低温であっても接着力を有する性能を指し、再加熱剥離はホットメルト接着剤を溶解する一般的な温度(およそ120~180℃程度)に加熱し、60秒放冷しても被着体から基材を剥がすことができる性能(易解体性)を指す。例えば低温ヒートシール性を優先して柔らかい組成とすれば、再加熱剥離で放冷後に再接着してしまい剥がれない場合があり、両立は困難であった。
【0013】
しかしながら、発明者は鋭意検討の結果、特定の構造と特定の軟化点を有するメタロセン触媒で重合されたポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)および粘着付与剤(B)を用いる事で、上述したような性能を全て満たす事が出来るという驚くべき効果を見出した。
【0014】
≪ホットメルト接着剤≫
本発明のホットメルト接着剤は、ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)および粘着付与剤(B)を含む。さらに酸化防止剤(C)と難燃剤(D)を含むことが好ましい。
ホットメルト接着剤の粘度は特に限定されないが、160℃における粘度が、500~15000mPa・sであることが好ましい。粘度がこの範囲にあることで、塗工性が良好となる。1000~10000mPa・sがより好ましい。
【0015】
<ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)>
本発明のホットメルト接着剤に含まれるポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)は、メタロセン触媒で重合されたポリプロピレンとポリエチレンの共重合樹脂であり、共重合樹脂(A)を構成するモノマーの主成分はプロピレンであり、軟化点が85℃~115℃である。軟化点が85~115℃であることで、低温ヒートシール性と保持力を両立することができる。軟化点85~100℃がより好ましい。
メタロセン触媒で重合された樹脂は、他の触媒で重合した場合に比べ非常に分子量分布が狭くなることが知られている。分子量分布が狭いということは、即ち分子量が均一であり、そのような樹脂は凝集力低下の原因となる低分子量体が生じる可能性が低いため、保持力が良好となる。
共重合樹脂(A)はポリプロピレンとポリエチレンの構成であることで、最適な柔軟性と軟化点になるため、低温ヒートシール性と保持力を両立することができる。
共重合樹脂(A)を構成するポリプロピレン量がポリエチレン量よりも多いことで、低密度となり結晶性が低下するため固化時間が長く、再加熱剥離が良好になる。
【0016】
ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)の粘度は特に限定されないが、170℃で1500~10000mPa・sが好ましい。粘度がこの範囲にあることで、塗工性と保持力を両立することができる。2000~7000mPa・sがより好ましい。
【0017】
ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)として、密度は特に限定されないが、0.85~0.90g/cmが好ましい。密度がこの範囲にあることで、再加熱剥離と保持力を両立することができる。0.87~0.90g/cmがより好ましい。
【0018】
前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量%中、共重合樹脂(A)を30~90質量%含むことが好ましい。含有率が30~90質量%であることで、塗工性と保持力を両立することができる。40~80質量%がより好ましい。
【0019】
共重合樹脂を構成するモノマーの主成分がプロピレンであるポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)として具体的には、リコセンPP1502(メタロセン触媒重合、軟化点86℃) 、リコセンPP1602(メタロセン触媒重合、軟化点88℃)、リコセンPP2502(メタロセン触媒重合、軟化点103℃)、リコセンPP2602(メタロセン触媒重合、軟化点98℃)、リコセンPP3602(メタロセン触媒重合、軟化点111℃) 以上、クラリアント社製などが挙げられ、それぞれを単独で使用することもできるし、併用することも可能である。
【0020】
<粘着付与剤(B)>
本発明のホットメルト接着剤に含まれる粘着付与剤(B)としては、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレンフェノール樹脂、キシレン樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、脂肪族系、芳香族系等の石油樹脂、フェノール-変性石油樹脂、ロジンエステル、重合ロジン、水添されたロジンエステル及び重合ロジン、低分子量ポリスチレン系樹脂、テルペン樹脂、スチレン系樹脂、水添された脂肪族系及び芳香族系等の石油樹脂などが挙げられ、それぞれを単独で使用することもできるし、併用することも可能である。共重合樹脂(A)との相溶性の観点から水添石油樹脂が好ましい。
粘着付与剤(B)の軟化点は特に限定されないが、70~150℃が好ましい。軟化点がこの範囲にあることで、塗工性と保持力を両立することができる。75~140℃がより好ましい。
【0021】
前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量%中、粘着付与剤(B)は10~70質量%含むことが好ましい。含有率が10~70質量%であることで、低温ヒートシールと保持力を両立することができる。20~60質量%がより好ましい。
【0022】
<酸化防止剤(C)>
酸化防止剤(C)としては、ラジカル捕捉剤および過酸化物分解剤等が挙げられる。
ラジカル捕捉剤としては、フェノール系化合物が挙げられる。過酸化物分解剤としては、リン系化合物等が挙げられる。
【0023】
フェノール系化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、およびトコフェロール等が挙げられる。
【0024】
リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0025】
酸化防止剤(C)はそれぞれを単独で使用することもできるし、併用することも可能である。
【0026】
酸化防止剤(C)の含有量は、前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下が好ましい。この範囲であることで塗工性と安定性の両立ができる。0質量部を超えて5質量部以下がより好ましい。
【0027】
<難燃剤(D)>
難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルジエチルホスフィン酸亜鉛、シアヌル酸メラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンアンモニウム、ピロリン酸メラミンアンモニウム、ホウ酸メラミン、リン酸トリフェニル、レゾルシノールビス-(リン酸ジフェニル)、ビスフェノールA-ビス-(リン酸ジフェニル)、レゾルシナール-ビス-(2,6-ジキシリレニルリン酸)、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、三酸化モリブデン、酸化アンチモン、三水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ジヒドロキサホスファフェナントレン、ジヒドロキサホスファフェナントレン-ヒドロキノン、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム、ポリメチルフェニルシロキサン、ブチルペルフルオロスルホン酸カリウムおよびそれらの混合物等が挙げられる。
難燃剤(D)の含有量は、前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)の合計100質量部に対して、0質量部を超えて30質量部以下が好ましい。この範囲であることで塗工性と安定性の両立ができる。0.5~20質量部がより好ましい。
【0028】
本発明のホットメルト接着剤は、課題解決が出来る範囲であれば任意成分として、共重合樹脂(A)および粘着付与剤(B)以外の各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤及び帯電防止剤等を配合しても良い。
【0029】
本発明のホットメルト接着剤の製造方法は特に限定されず、例えば、前記共重合樹脂(A)と粘着付与剤(B)を160℃に加熱したステンレスビーカーへ投入し、加熱しながら溶融撹拌することによって製造できる。各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤は、塩化ビニル基材用であり、加熱溶融して使用される。接着剤の塗工方法は特に制限されず、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、スリットコーターなどが挙げられる。塗工厚みは塗工性と接着強度の観点から10~100μmが好ましい。
【0031】
塩化ビニル基材は、特に制限されない。塩化ビニル基材には通常可塑剤が含まれているが、塩化ビニル基材に含まれる可塑剤の種類も特に限定されない。
【0032】
塩化ビニル基材が含有する可塑剤としては、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ2 - エチルヘキシル、フタル酸ジn-オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジブチル、イソフタル酸ジヘプチル、イソフタル酸ジ2 -エチルヘキシル、イソフタル酸ジn - オクチル、イソフタル酸ジイソノニル、イソフタル酸ジイソデシル、イソフタル酸ジトリデシル、イソフタル酸ブチルベンジル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジヘプチル、テレフタル酸ジ2 - エチルヘキシル、テレフタル酸ジn - オクチル、テレフタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジイソデシル、テレフタル酸ジトリデシル、テレフタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル系可塑剤; トリメリット酸トリ2 - エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸エステル系可塑剤; ピロメリット酸テトラ2 - エチルヘキシル等のピロメリット酸エステル系可塑剤; アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸誘導体系可塑剤; マレイン酸ジn - ブチル、マレイン酸ジ2 - エチルヘキシル等のマレイン酸エステル系可塑剤; 安息香酸エステル系可塑剤; アジピン酸エステル系可塑剤( 例えば、アジピン酸ジ2 - エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル) 、アゼライン酸エステル系可塑剤( 例えば、アゼライン酸ジ2 - エチルヘキシル) 、セバシン酸エステル系可塑剤( 例えば、セバシン酸ジ2 - エチルヘキシル) 等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤; 二塩基酸( 例えば、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、及びフタル酸) 及び二価アルコール( 例えば、グリコール) などから合成される低分子量ポリエステルを主として含むポリエステル系可塑剤; リン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸トリ2 - エチルヘキシル、リン酸トリキレニル等のリン酸エステル系可塑剤; エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチル等のエポキシ系可塑剤; ポリエーテルエステル系可塑剤等が挙げられる。
【0033】
塩化ビニル基材は、壁紙や床材等、家屋の内装用に用いられることが多く、本発明のホットメルト接着剤は、耐可塑剤性及び低温シール性に優れることから、塩化ビニル基材を用いた内装用粘接着シートに好適である。
【実施例0034】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によってその範囲を限定されるものではない。
【0035】
<共重合樹脂(A)の軟化点の測定>
JIS K6863:1994『ホットメルト接着剤の軟化点試験方法』に準じて測定した。
【0036】
<共重合樹脂の粘度の測定>
JIS K 6862(A法)に準じて共重合樹脂(A)の170℃粘度を測定した。予め加熱浴槽に180℃で溶融させた共重合体(A)300gを試験容器に入れ、大気中において棒温度計で充分に撹拌しながら170℃になったところで、B型粘度計(東機産業(株)製 TOKIMEC VISCOMETER MODEL:BM)を用いて測定した。ローターは、試料に応じて適当なものを用いた。
なお、棒温度計での攪拌が困難な共重合樹脂は粘度の測定ができないため、棒温度計での攪拌が困難な共重合樹脂の粘度は棒温度計で攪拌可能な粘度の上限である20000mPa・s以上と判断した。
【0037】
実施例及び比較例で用いた原料および混合物は以下のとおりである。
【0038】
[共重合樹脂(A)]
PP1602:メタロセン触媒重合ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(クラリアント製、製品名:リコセンPP1602、軟化点:88℃、170℃粘度:6000mPa・s)
PP2602:メタロセン触媒重合ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(クラリアント製、製品名:リコセンPP2602、軟化点:98℃、170℃粘度:6300mPa・s)
PP3602:メタロセン触媒重合ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(クラリアント製、製品名:リコセンPP3602、軟化点:111℃、170℃粘度:9300mPa・s)
【0039】
[その他共重合樹脂]
RT2330:チーグラーナッタ触媒重合ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(レックスタック製、製品名:RT2330、軟化点:141℃、170℃粘度:5500mPa・s)
RT2730:チーグラーナッタ触媒重合ポリプロピレン/ポリブテン-1共重合樹脂(レックスタック製、製品名:RT2730、軟化点:90℃、170℃粘度:5000mPa・s)
PP6502:メタロセン触媒重合ポリプロピレン樹脂(クラリアント製、製品名:リコセンPP6502、軟化点:148℃、170℃粘度:1700mPa・s)
TZ421:メタロセン触媒重合ポリエチレン/ポリヘキセン共重合樹脂(東ソー製、製品名:ニポロンTZ421、軟化点:145℃、170℃粘度:20000mPa・s以上)
6202:メタロセン触媒重合ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(エクソンモービル製、製品名:ビスタマックス6202、エチレン含有量12質量%、軟化点:130℃、170℃粘度:20000mPa・s以上)
【0040】
[粘着付与剤(B)]
F-75:変性ロジン樹脂(ハリマ化成製、製品名:ハリタックF-75、軟化点75℃)
P-100:水素化石油樹脂(荒川化学工業製、製品名:アルコンP-100、軟化点100℃)
P-140:水素化石油樹脂(荒川化学工業製、製品名:アルコンP-140、軟化点140℃)
【0041】
[酸化防止剤(C)]
1010:フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン製、製品名:Irganox 1010)
PEP-36:リン系酸化防止剤(アデカ製、製品名:アデカスタブPEP-36)
【0042】
[難燃剤(D)]
FP-600:リン酸エステル系難燃剤(アデカ製、製品名:アデカスタブFP-600)
【0043】
[オイル]
PW-90:パラフィン系プロセスオイル(出光興産製、製品名:ダイアナプロセスPW-90)
【0044】
[実施例1]ホットメルト接着剤の製造
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、ポリプロピレン/ポリエチレン共重合樹脂(A)としてPP1602を60質量部と、粘着付与剤(B)としてF-75を40質量部、投入し加熱撹拌した。加熱は内容物が190℃以上にならないように注意して行なった。
160℃で1時間以上撹拌し溶融均一混合物とし、冷却してホットメルト接着剤を作製した。
【0045】
[実施例1]接着シートの作製
得られたホットメルト接着剤を160℃に加熱したロールコーターを用いて2.0mm厚ポリ塩化ビニルシート上に厚さが50μmになるように、塗工速度5m/分で熱溶融塗工を行い、接着剤層を形成した。次いで、この接着剤層に、厚さ38μmの剥離性シート(PET製)を貼り合せることで「ポリ塩化ビニルシート/接着剤層/剥離性シート」という構成の接着シートを得た。
【0046】
[実施例2~16、比較例1~6]
表1の組成にしたがって、実施例1と同様の方法で、実施例2~16、比較例1~6のホットメルト接着剤および接着シートを得た。
【0047】
得られた接着シートを用いて、下記の方法で塗工性、低温ヒートシール性、耐可塑剤性、保持力および再加熱剥離性を評価した。
【0048】
<塗工性>
JIS K 6862(A法)に準じて160℃粘度を測定した。予め加熱浴槽に170℃で溶融させたホットメルト接着剤300gを試験容器に入れ、大気中において棒温度計で充分に撹拌しながら160℃になったところで、B型粘度計(東機産業(株)製 TOKIMEC VISCOMETER MODEL:BM)を用いて測定し、塗工性を評価した。ローターは、試料に応じて適当なものを用いた。
○:「粘度が1000~10000mPa・s。良好。」
△:「粘度が500mPa・s以上1000mPa・s未満または10000mPa・s超15000mPa・s以下。実用可能レベル。」
×:「粘度が500mPa・s未満または15000mPa・s超。実用不可。」
【0049】
<低温ヒートシール性>
幅25mm縦100mmの接着シートを準備した。ステンレス(SUS)板に接着シートのポリ塩化ビニル面から120℃、0.1MPa10秒でヒートシールした。24時間後、23℃環境下で引張試験機を用いて90度方向に300mm/分の速度で引っ張り、接着強度を測定した。
○:「接着強度が2N/25mm以上。良好。」
△:「接着強度が1N/25mm以上2N/25mm未満。実用可能レベル。」
×:「接着強度が1N/25mm未満。実用不可。」
【0050】
<耐可塑剤性>
幅25mm縦100mmの接着シートを準備した。SUS板に接着シートのポリ塩化ビニル面から140℃、0.1MPa10秒でヒートシールした。40℃環境下で240時間静置後、接着シートを取り出し23℃、2時間静置後、23℃環境下で引張試験機を用いて90度方向に300mm/分の速度で引っ張り、接着強度を測定した。
○:「接着強度が2N/25mm以上。良好。」
△:「接着強度が1N/25mm以上2N/25mm未満。実用可能レベル。」
×:「接着強度が1N/25mm未満。実用不可。」
【0051】
<保持力>
幅25mm縦100mmの接着シートを準備した。SUS板に接着シートのポリ塩化ビニル面から140℃、0.1MPa10秒でヒートシール(接着部分の面積25mm×20mm)した。24時間静置後、50℃環境下にて吊り下げて、ポリ塩化ビニル基材端部にせん断方向に荷重200gをかけ、試験片が落下するまでの時間(保持時間)を計測し、保持力を評価した。
○:「8時間経過しても試験片が落下しない。良好。」
△:「保持時間が4時間以上8時間未満。実用可能レベル。」
×:「保持時間が4時間未満。実用不可。」
【0052】
<再加熱剥離>
幅25mm縦100mmの接着シートを準備した。SUS板に接着シートのポリ塩化ビニル面から140℃、0.1MPa10秒でヒートシールした。24時間後、ポリ塩化ビニル面から160℃、0.1MPa10秒で再びヒートシールした。60秒放置後、23℃環境下で引張試験機を用いて90度方向に300mm/分の速度で引っ張り、接着強度を測定した。
○:「接着強度が1N/25mm未満。良好。」
△:「接着強度が1N/25mm以上2N/25mm未満。実用可能レベル。」
×:「接着強度が2N/25mm以上。実用不可。」
【0053】
【表1】