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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019713
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】多段圧延機の形状制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/00 20060101AFI20250131BHJP
   B21B 37/42 20060101ALI20250131BHJP
   B21B 37/38 20060101ALI20250131BHJP
   B21B 37/72 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B21B37/00 261Z
B21B37/42
B21B37/00 221Z
B21B37/38 B
B21B37/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123469
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】前田 恭志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 武次
(72)【発明者】
【氏名】宮園 太介
(72)【発明者】
【氏名】細川 晴行
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA02
4E124AA07
4E124DD05
4E124DD18
4E124EE02
4E124EE05
4E124EE13
4E124FF01
(57)【要約】
【課題】パスの開始時のアクチュエータの初期位置を適切な位置に設定する。
【解決手段】圧延荷重差演算ステップ(S37)は、実測された前パス定常部荷重実測値と演算された次パス先端部荷重予測値とを用いて、圧延荷重差ΔPを演算する。アクチュエータ初期位置演算ステップ(S41~S45)は、演算された圧延荷重差ΔPに因る被圧延材Wの形状の変化と、n回目の圧延パスにおける先端部の目標形状と、に基づいて、アクチュエータ初期位置Xxを演算する。アクチュエータ設定ステップ(S52)は、n回目の圧延パスでの被圧延材Wの圧延開始前に、形状制御アクチュエータ53の位置を、演算されたアクチュエータ初期位置Xxに設定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段圧延機の形状制御方法であって、
前記多段圧延機は、被圧延材の板幅方向における前記被圧延材の平坦度の分布である形状を制御する形状制御アクチュエータを備え、前記被圧延材の圧延方向を圧延パス毎に入れ替えながら前記被圧延材を圧延するリバース圧延を行うものであり、
nを2以上の整数としたとき、n-1回目の圧延パスにおける前記被圧延材の定常部の圧延荷重の実測値である前パス定常部荷重実測値を実測する前パス定常部荷重実測ステップと、
n回目の圧延パスにおける前記被圧延材の先端部の圧延荷重の予測値である次パス先端部荷重予測値を演算する次パス先端部荷重予測値演算ステップと、
実測された前記前パス定常部荷重実測値と演算された前記次パス先端部荷重予測値とを用いて、n-1回目の圧延パスにおける前記被圧延材の圧延荷重とn回目の圧延パスにおける前記先端部の圧延荷重との差である圧延荷重差を演算する圧延荷重差演算ステップと、
演算された前記圧延荷重差に因る前記被圧延材の形状の変化と、n回目の圧延パスにおける前記先端部の目標形状と、に基づいて、n回目の圧延パスにおいて前記先端部を圧延する時の前記形状制御アクチュエータの位置であるアクチュエータ初期位置を演算するアクチュエータ初期位置演算ステップと、
n回目の圧延パスでの前記被圧延材の圧延開始前に、前記形状制御アクチュエータの位置を、演算された前記アクチュエータ初期位置に設定するアクチュエータ設定ステップと、
を備える、多段圧延機の形状制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多段圧延機の形状制御方法であって、
n回目の圧延パスにおける前記定常部の圧延荷重の予測値である次パス定常部荷重予測値を演算する次パス定常部荷重予測値演算ステップと、
n回目の圧延パスにおける圧延条件に基づいて、n回目の圧延パスにおける前記定常部の圧延荷重に対する、n回目の圧延パスにおける前記先端部の圧延荷重の増加率である先端部荷重増加率を演算する先端部荷重増加率演算ステップと、
を備え、
前記次パス先端部荷重予測値演算ステップは、演算された前記次パス定常部荷重予測値と、演算された前記先端部荷重増加率と、に基づいて、前記次パス先端部荷重予測値を演算する、
多段圧延機の形状制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の多段圧延機の形状制御方法であって、
前記圧延条件と、前記先端部の圧延荷重の実測値と、前記定常部の圧延荷重の実測値と、から、前記圧延条件と前記先端部荷重増加率との関係が、予め抽出され、
前記先端部荷重増加率演算ステップは、予め抽出された前記関係に基づいて、n回目の圧延パスにおける前記圧延条件から、前記先端部荷重増加率を演算する、
多段圧延機の形状制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の多段圧延機の形状制御方法であって、
前記アクチュエータ初期位置演算ステップは、前記形状制御アクチュエータの位置が前記被圧延材の形状に与える影響を示すアクチュエータ影響係数と、前記被圧延材の圧延荷重が前記被圧延材の形状に与える影響を示す荷重影響係数と、に基づいて、前記アクチュエータ初期位置を演算する、
多段圧延機の形状制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の多段圧延機の形状制御方法であって、
前記多段圧延機は、前記被圧延材の形状を自動的に制御する自動形状制御を行うものであり、
前記アクチュエータ影響係数および前記荷重影響係数の、一方の係数または両方の係数は、前記自動形状制御に用いられる係数である、
多段圧延機の形状制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載の多段圧延機の形状制御方法であって、
前記アクチュエータ初期位置演算ステップは、n-1回目の圧延パスの終了前の、前記被圧延材の減速中に、前記アクチュエータ初期位置を演算する、
多段圧延機の形状制御方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の多段圧延機の形状制御方法であって、
前記形状制御アクチュエータは、ラテラル制御アクチュエータ、および、クラウン制御アクチュエータの、いずれか1つまたは両方である、
多段圧延機の形状制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧延材を圧延する多段圧延機の形状制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、多段圧延機が記載されている。この多段圧延機は、被圧延材の圧延方向を圧延パス毎に入れ替えるリバース圧延を行う。同文献の請求項1には、次回のパスの圧延開始時におけるプリセット位置に、中間ロールを移動させることが記載されている。同文献の段落0020には、このプリセット位置は、中央制御装置により予め求められていると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-344813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献には、この中間ロールのプリセット位置(初期位置)がどのような位置であるかは記載されていない。ここで、多段圧延機では、ロール(例えば中間ロール)は、アクチュエータにより移動させられる。同文献には、パスの開始時のアクチュエータの初期位置がどのような位置であるかは記載されていない。パスの開始時のアクチュエータの初期位置を適切な位置に設定できることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、パスの開始時のアクチュエータの初期位置を、適切な位置に設定することができる、多段圧延機の形状制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多段圧延機の形状制御方法は、前パス定常部荷重実測ステップと、次パス先端部荷重予測値演算ステップと、圧延荷重差演算ステップと、アクチュエータ初期位置演算ステップと、アクチュエータ設定ステップと、を備える。前記多段圧延機は、被圧延材の板幅方向における前記被圧延材の平坦度の分布である形状を制御する形状制御アクチュエータを備える。前記多段圧延機は、前記被圧延材の圧延方向を圧延パス毎に入れ替えながら前記被圧延材を圧延するリバース圧延を行うものである。前記前パス定常部荷重実測ステップは、nを2以上の整数としたとき、n-1回目の圧延パスにおける前記被圧延材の定常部の圧延荷重の実測値である前パス定常部荷重実測値を実測する。前記次パス先端部荷重予測値演算ステップは、n回目の圧延パスにおける前記被圧延材の先端部の圧延荷重の予測値である次パス先端部荷重予測値を演算する。圧延荷重差演算ステップは、実測された前記前パス定常部荷重実測値と演算された前記次パス先端部荷重予測値とを用いて、圧延荷重差を演算する。前記圧延荷重差は、n-1回目の圧延パスにおける前記被圧延材の圧延荷重とn回目の圧延パスにおける前記先端部の圧延荷重との差である。アクチュエータ初期位置演算ステップは、演算された前記圧延荷重差に因る前記被圧延材の形状の変化と、n回目の圧延パスにおける前記先端部の目標形状と、に基づいて、アクチュエータ初期位置を演算する。前記アクチュエータ初期位置は、n回目の圧延パスにおいて前記先端部を圧延する時の前記形状制御アクチュエータの位置である。前記アクチュエータ設定ステップは、n回目の圧延パスでの前記被圧延材の圧延開始前に、前記形状制御アクチュエータの位置を、演算された前記アクチュエータ初期位置に設定する。
【発明の効果】
【0007】
上記の多段圧延機の形状制御方法により、パスの開始時のアクチュエータの初期位置を、適切な位置に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】圧延システム1を示す図である。
図2図1に示すロール群20を、ロールの軸方向から見た図である。
図3図2に示すロール群20などを、圧延方向から見た図である。
図4図1に示す圧延システム1での圧延に関する各種状態と時間との関係を示すグラフである。
図5図4に示す圧延荷重Pと時間との関係を示すグラフである。
図6図1に示す圧延システム1の作動のフローチャートである。
図7図6に示すステップS32およびステップS33で演算される定常部の圧延荷重Pの実測値と予測値との関係を表すグラフである。
図8図6に示すステップS35で演算される先端部荷重増加率λの実測値と予測値との関係を表すグラフである。
図9図1に示す圧延システム1および比較例のそれぞれで圧延したときの、形状評価関数と時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図9を参照して、圧延システム1について説明する。
【0010】
圧延システム1は、図1に示すように、被圧延材Wを圧延するシステムである。圧延システム1は、多段圧延機10と、制御装置60と、入力装置71と、教示装置73と、を備える。
【0011】
多段圧延機10は、被圧延材Wを圧延する圧延機(設備、装置)である。被圧延材Wは、多段圧延機10により圧延されるもの(ワーク)である。被圧延材Wは、板状である。被圧延材Wは、例えば金属などである。多段圧延機10は、第一リール11と、第二リール12と、一対の方向変更部15と、一対の形状センサ17と、ロール群20と、アクチュエータ50と、を備える。
【0012】
第一リール11および第二リール12は、コイル状に被圧延材Wが巻かれたリールである。第一リール11および第二リール12の一方は、被圧延材Wを巻き出す巻出リールである。第一リール11および第二リール12の他方(巻出リールとは異なる方)は、被圧延材Wを巻き取る巻取リールである。被圧延材Wの圧延方向が変わることで、巻出リールと巻取リールとの役割は、第一リール11と第二リール12との間で交代する。
【0013】
方向変更部15は、被圧延材Wの移動方向(経路の方向)を変える。方向変更部15は、デフレクタを備えるデフレクタロールである。図1に示す例では、方向変更部15は、一対に設けられる。詳しくは、方向変更部15は、第一リール11とロール群20との間(被圧延材Wの経路における間)、および、第二リール12とロール群20との間に設けられる。方向変更部15は、円筒状または円柱状の部材である。
【0014】
形状センサ17は、被圧延材Wの形状を検出する。被圧延材Wの「形状」は、被圧延材Wの板幅方向における、被圧延材Wの平坦度の分布である。形状センサ17は、平坦度センサである。形状センサ17は、ワークロール21(図2参照)で圧延された(出側の)被圧延材Wの形状を検出する。後述するように、多段圧延機10ではリバース圧延が行われるので、形状センサ17は、一対に設けられる。詳しくは、形状センサ17は、ワークロール21(図2参照)に対して第1リール側および第2リール側のそれぞれに設けられる。形状センサ17は、被圧延材Wの張力の分布を検出することで、被圧延材Wの平坦度の分布(すなわち形状)を検出する。さらに詳しくは、形状センサ17は、被圧延材Wの板幅方向に並ぶ複数の素子を備える。各素子は、被圧延材Wから作用する板厚方向の力を検出する。これにより、形状センサ17は、被圧延材Wの板幅方向における被圧延材Wの張力分布を検出する。その結果、形状センサ17は、被圧延材Wの板幅方向における被圧延材Wの平坦度の分布(すなわち形状)を検出する。
【0015】
ロール群20は、被圧延材Wを圧延する。図2に示すように、ロール群20は、多数のロール(後述するワークロール21、中間ロール30、およびバックアップロール40)を備える。ロール群20のロールの数(多段圧延機10の段数)は様々に設定可能である。多段圧延機10は、図2に示す例では20段圧延機であり、6段圧延機、12段圧延機、14段圧延機などでもよい。ロール群20は、ワークロール21と、中間ロール30と、バックアップロール40と、を備える。
【0016】
このロール群20のロール(ワークロール21、中間ロール30、およびバックアップロール40)のそれぞれは、略円筒状または略円柱状の部材である。ロールは、ロール群20を支持するハウジング(図示なし)に回転自在に支持される。ロールは、ロールの長手方向に延びる中心軸を中心に回転自在である。
【0017】
このロール群20では、被圧延材W、ワークロール21、中間ロール30(例えば、第一中間ロール31、第二中間ロール32)、バックアップロール40が、この順に、クラスタ状(ぶどうの房状)に互いに接触する。この接触の順における、被圧延材W側とは反対側を、「ロール背面側」という。具体的には、ワークロール21のロール背面側は、ワークロール21を基準として、被圧延材Wに接触する側とは反対側の、中間ロール30側である。第一中間ロール31のロール背面側は、第一中間ロール31を基準として、ワークロール21に接触する側とは反対側の、第二中間ロール32側である。第二中間ロール32の背面側は、第二中間ロール32を基準として、第一中間ロール31に接触する側とは反対側の、バックアップロール40側である。
【0018】
ワークロール21は、被圧延材Wに接触し、被圧延材Wを挟むことで、被圧延材Wを圧延する。ワークロール21は、被圧延材Wの板厚方向の両側に、一対に(2つ)設けられる。2つのワークロール21・21が被圧延材Wを挟む方向(すなわち被圧延材Wの板厚方向)は、例えば上下方向である。
【0019】
中間ロール30は、ワークロール21とバックアップロール40との間に設けられる。なお、多段圧延機10の段数によっては、中間ロール30は設けられなくてもよい。例えば多段圧延機10の段数が6段(6段圧延機)の場合、中間ロール30は設けられなくてもよい。中間ロール30は、被圧延材Wの板厚方向の両側に設けられる。中間ロール30は、複数本設けられる。中間ロール30は、第一中間ロール31と、第二中間ロール32と、を備える。
【0020】
第一中間ロール31は、ワークロール21をロール背面側から回転自在に支持する。第一中間ロール31の外周面は、ワークロール21の外周面のロール背面側の部分に接触する。複数の第一中間ロール31のそれぞれは、ワークロール21の外周面に接触しながら回転する。第一中間ロール31は、複数設けられる。複数の第一中間ロール31のそれぞれは、ワークロール21をロール背面側から回転自在に支持する。第一中間ロール31の数は、様々に設定可能である。図2に示す例では、多段圧延機10は20段圧延機なので、第一中間ロール31は、被圧延材Wの板厚方向の両側に(例えば上下一対に)2つずつ(合計4つ)設けられる。図3に示すように、第一中間ロール31は、テーパ部31tを備える。
【0021】
テーパ部31tは、被圧延材Wの形状制御に用いられる。テーパ部31tは、主に、被圧延材Wの板幅方向における外側部分(板端部分)の形状の制御に用いられる。テーパ部31tでは、第一中間ロール31の直径は、第一中間ロール31の長手方向外側の端部に近づくにしたがって小さくなる(先細りになる)。ある第一中間ロール31(例えば被圧延材Wよりも上の第一中間ロール31)は、この第一中間ロール31の長手方向の一方側(例えば右)の端部に、テーパ部31tを有する。他の第一中間ロール31(例えば被圧延材Wよりも下の第一中間ロール31)は、この第一中間ロール31の長手方向の他方側(上記「一方側」とは反対側、例えば左)の端部に、テーパ部31tを有する。後述するラテラル制御アクチュエータ53cが、第一中間ロール31の長手方向に第一中間ロール31を移動させる結果、テーパ部31tは、第一中間ロール31の長手方向に移動する。なお、この第一中間ロール31の形状は、第一中間ロール31の長手方向の一方側の端部のみにテーパ部31tを有する形状とは異なる形状であってもよい。
【0022】
第二中間ロール32は、図2に示すように、第一中間ロール31をロール背面側から回転自在に支持する。第二中間ロール32の外周面は、第一中間ロール31の外周面のロール背面側の部分に接触する。第二中間ロール32は、第一中間ロール31の外周面に接触しながら回転する。第二中間ロール32は、複数設けられる。複数の第二中間ロール32のそれぞれは、第一中間ロール31をロール背面側から回転自在に支持する。第二中間ロール32の数は、様々に設定可能である。図2に示す例では、多段圧延機10は20段圧延機なので、第二中間ロール32は、被圧延材Wの板厚方向の両側に(例えば上下一対に)3つずつ(合計6つ)設けられる。第二中間ロール32は、駆動装置(図示なし)に駆動される駆動ロールでもよい。なお、駆動ロールは、第二中間ロール32以外のロールでもよい。
【0023】
バックアップロール40(支持ロール)は、ワークロール21をロール背面側から回転自在に支持する。詳しくは、バックアップロール40は、中間ロール30を介して、ワークロール21をロール背面側から支持する。図2に示す例では、バックアップロール40は、中間ロール30を(詳しくは、第二中間ロール32を)、ロール背面側から回転自在に支持する。バックアップロール40の外周面は、中間ロール30(詳しくは、第二中間ロール32)の外周面のロール背面側の部分に接触する。バックアップロール40は、中間ロール30(詳しくは、第二中間ロール32)に接触しながら回転する。バックアップロール40は、複数設けられる。複数のバックアップロール40のそれぞれは、中間ロール30を介してワークロール21をロール背面側から支持する。
【0024】
このバックアップロール40の数は、様々に設定可能である。図2に示す20段のロール群20では、バックアップロール40は、被圧延材Wの板厚方向の両側に(例えば上下一対に)4つずつ(合計8つ)設けられる。図3に示すように、バックアップロール40は、バックアップロール40の長手方向(被圧延材Wの板幅方向)に分割された構造を有する。具体的には、複数のバックアップロール40のそれぞれは、複数の分割ロール40rを備える。
【0025】
複数の分割ロール40rは、バックアップロール軸40sに回転自在に支持される。複数の分割ロール40rは、バックアップロール軸40sが延びる方向に互いに隣り合うように配置される。1つのバックアップロール40を構成する分割ロール40rの数は、様々に設定可能であり、図3に示す例では6つである。分割ロール40rは、ベアリングを備えるロール(ベアリングロール)である。
【0026】
バックアップロール軸40sは、分割ロール40rを回転自在に支持する軸芯(シャフト)である。バックアップロール軸40sは、サドル53b1を介して、ロール群20を支持するハウジング(図示なし)と繋がっている。以下では、ロール群20の各ロールについては、図2を参照して説明する。
【0027】
アクチュエータ50は、図1に示すように、被圧延材Wの板厚および形状を制御する装置である。アクチュエータ50は、板厚制御アクチュエータ51と、形状制御アクチュエータ53と、を備える。
【0028】
板厚制御アクチュエータ51は、被圧延材Wの板厚を制御する装置である。具体的には、板厚制御アクチュエータ51は、ウェッジ式圧下アクチュエータ51aを備える。ウェッジ式圧下アクチュエータ51aは、ウェッジ(くさび)機構により、バックアップロール40の外周面を圧下(加圧)する。その結果、ウェッジ式圧下アクチュエータ51aは、ワークロール21を介して被圧延材Wを圧下する。
【0029】
形状制御アクチュエータ53は、被圧延材Wの形状を制御する装置である。形状制御アクチュエータ53は、傾斜制御アクチュエータ53aと、クラウン制御アクチュエータ53bと、ラテラル制御アクチュエータ53cと、ロール偏心制御アクチュエータ53dと、を備える。
【0030】
傾斜制御アクチュエータ53a(チルチング装置、傾斜圧下装置)は、被圧延材Wよりも、板厚方向の一方側(例えば上)の複数のロールのすべてを(一体的に)傾斜させる装置である。傾斜制御アクチュエータ53aは、ロールを支持するハウジングの傾斜(水平方向に対する傾斜)を変える。
【0031】
クラウン制御アクチュエータ53bは、図3に示すように、被圧延材Wの圧延が加速状態の時のサーマルクラウンによる、被圧延材Wの形状の変化の修正などに用いられる装置である。クラウン制御アクチュエータ53bは、複数のサドル53b1を個別に押し出すことで、分割ロール40rを個別に押し出す。
【0032】
ラテラル制御アクチュエータ53cは、被圧延材Wの板幅方向における端部の形状修正などに用いられる装置である。ラテラル制御アクチュエータ53cは、テーパ部31tを有するロール(具体的には、第一中間ロール31)を、板幅方向に移動させる。その結果、ラテラル制御アクチュエータ53cは、テーパ部31tの、板幅方向における位置を変える。
【0033】
ロール偏心制御アクチュエータ53dは、バックアップロール40全体のたわみ量(クラウン量)を変更するための装置である。ここで、クラウン制御アクチュエータ53bは、サドル53b1を個別に押し出すことで、分割ロール40rを個別に押し出す装置である。一方、ロール偏心制御アクチュエータ53dは、1本のバックアップロール40全体をたわませる装置である。詳しくは、1本のバックアップロール40を支持する複数のサドル53b1のそれぞれは、偏心カム(偏心リング)を有する。偏心カムの偏心量は、複数のサドル53b1ごとに相違する。ロール偏心制御アクチュエータ53dは、バックアップロール軸40sを回転させることで、この偏心カムを回転させる。その結果、ロール偏心制御アクチュエータ53dは、1本のバックアップロール40を支持する全てのサドル53b1を移動させることで、1本のバックアップロール40全体をたわませる。
【0034】
制御装置60は、図1に示すように、信号の入出力、演算(処理)、情報の記憶などを行うコンピュータである。例えば、制御装置60の機能は、制御装置60の記憶部に記憶されたプログラムが演算部で実行されることにより実現される。制御装置60は、多段圧延機10の内部に設けられてもよく、多段圧延機10の外部(例えば制御室など)に設けられてもよい。制御装置60は、パーソナルコンピュータでもよく、制御盤に設けられてもよい。制御装置60と、制御装置60の外部の機器との接続は、有線接続(通信ケーブルなどを介した接続)でもよく、無線接続(例えば無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)など)でもよい。制御装置60の各構成要素どうしの接続は、有線接続でもよく、無線接続でもよい。制御装置60は、圧延の各種制御を行う。制御装置60には、圧延の計画であるパススケジュールが設定される。制御装置60には、各パス(後述)での圧延条件(後述)が設定される。制御装置60は、板厚制御装置61と、形状制御装置63と、セットアップ演算装置65と、を備える。
【0035】
板厚制御装置61は、圧延中の被圧延材Wの板厚を制御する。板厚制御装置61は、板厚制御アクチュエータ51を制御し、板厚制御アクチュエータ51の位置を制御する。具体的には、板厚制御装置61は、ウェッジ式圧下アクチュエータ51aを制御する。板厚制御装置61は、圧延中に被圧延材Wに作用する荷重である圧延荷重P(図4参照)を制御する。例えば、板厚制御装置61は、圧延荷重Pを形状制御装置63に転送する。例えば、板厚制御装置61は、圧延時間と、圧延荷重Pと、の関係を記録する(蓄える、ロギングする)。
【0036】
形状制御装置63は、圧延中の被圧延材Wの形状を制御する。形状制御装置63は、形状制御アクチュエータ53を制御し、形状制御アクチュエータ53の位置を制御する。具体的には、形状制御装置63は、傾斜制御アクチュエータ53a、クラウン制御アクチュエータ53b(図3参照)、ラテラル制御アクチュエータ53c(図3参照)、および、ロール偏心制御アクチュエータ53d(図3参照)を制御する。以下では、形状制御アクチュエータ53の位置を「アクチュエータ位置」ともいう。
【0037】
この形状制御装置63は、被圧延材Wの形状を自動的に制御する自動形状制御装置(AFC;Automatic Flatness Control System)でもよい。この場合、形状制御装置63は、形状センサ17が検出した被圧延材Wの形状を取得し(取り込み、読み込み)、取得した形状に基づいて、形状制御アクチュエータ53を制御する。詳しくは、形状制御装置63は、被圧延材Wの板形状が平坦(フラット)になるように、自動的にアクチュエータ位置を制御する(自動形状制御を行う)。このとき、形状制御装置63は、例えば、フィードバック制御を行い、多変数制御を行う。
【0038】
この形状制御装置63は、例えば、圧延時間と、アクチュエータ位置と、の関係を記録する(蓄える、ロギングする)。形状制御装置63は、後述する影響係数Aを記憶していてもよい。
【0039】
セットアップ演算装置65は、アクチュエータ初期位置Xx(後述、図4参照)を演算(計算、算出)する。セットアップ演算装置65は、例えば、形状制御装置63と信号のやり取りを行う。
【0040】
入力装置71は、オペレータが情報を入力するための装置である。入力装置71は、オペレータの操作に応じて、制御装置60に信号を出力する。入力装置71は、キーを備えてもよく、マウスを備えてもよく、スイッチを備えてもよく、タッチパネルを備えてもよい。入力装置71は、音声入力装置を備えてもよく、画像入力装置(例えば1次元コード、2次元コードなどの符号を読み取る装置)を備えてもよい。入力装置71は、パーソナルコンピュータの一部でもよく、スマートフォンの一部でもよく、タブレットの一部でもよい。
【0041】
教示装置73は、オペレータに情報を教示する。教示装置73は、例えば、アクチュエータ初期位置Xx(後述、図4参照)を示す情報などを教示する。教示装置73は、表示による教示を行ってもよい。この場合、教示装置73は、モニタを備えてもよい。教示装置73は、音声による教示を行ってもよい。この場合、教示装置73は、スピーカを備えてもよい。
【0042】
(作動)
圧延システム1は、以下のように作動するように構成される。多段圧延機10の形状制御方法(平坦度制御方法)は、次のように行われる。以下の各作動を、その作動の「ステップ」としてもよい。
【0043】
(リバース圧延)
多段圧延機10は、リバース圧延を行う。リバース圧延は、被圧延材Wの圧延方向を圧延パス毎に入れ替えながら、被圧延材Wを圧延することである。詳しくは、多段圧延機10は、下記の第1圧延方向の圧延と、第2圧延方向の圧延と、を交互に行う。第1圧延方向の圧延では、被圧延材Wは、第一リール11から巻き出され、ロール群20で圧延され、第二リール12で巻き取られる。第2圧延方向の圧延では、被圧延材Wは、第二リール12から巻き出され、ロール群20で圧延され、第一リール11で巻き取られる。
【0044】
上記「圧延パス」は、一方向の圧延方向への、圧延の開始から終了までである。以下では、圧延パスを単に「パス」ともいう。具体的には例えば、1回目のパスが、第1圧延方向の圧延である場合、2回目のパスは、第2圧延方向の圧延であり、3回目のパスは、第1圧延方向の圧延である。nを2以上の整数としたとき、n-1回目のパスを「前パス」といい、n回目のパスを「次パス」という。ここで、後述するように、制御装置60は、次パスのアクチュエータ初期位置Xx(図4参照)を演算する。「前パス」は、アクチュエータ初期位置Xxが演算される回のパス(すなわち次パス)の、1回前のパスである。
【0045】
図4に、圧延速度の大きさ、圧延荷重P、アクチュエータ位置(ラテラル位置およびクラウン位置)、および目標形状、のそれぞれと、時間と、の関係を模式的に表すグラフを示す。以下では、圧延システム1の各構成要素(制御装置60など)については主に図1を参照し、ロール群20の各ロールについては主に図2を参照して説明する。
【0046】
(圧延速度)
図4に示す、圧延速度の大きさと時間との関係(圧延速度の大きさの時間変化)を表すグラフの詳細は、次の通りである。パスの開始時は、圧延速度は0である。パスの開始後に、圧延速度は0から徐々に上がる。このときの、圧延の状態を加速状態という。加速状態で圧延される被圧延材Wを「先端部」という。なお、第一リール11または第二リール12に巻かれた被圧延材Wの、最もリール側の部分(最先端部)およびその近傍は、端材として廃棄される。被圧延材Wのうち廃棄される部分の一部は、「先端部」に含まれなくてよい。詳しくは、被圧延材Wのうち廃棄される部分には、被圧延材Wのうち最もリール側の未圧部(ワークロール21で圧延されない部分)と、未圧部よりも内側(巻出側)のオフゲージ部と、がある。オフゲージ部は、ワークロール21で圧延されるが、オフゲージ部の板厚は、目標板厚スペックから外れているので、オフゲージ部は廃棄される。このオフゲージ部は、本実施形態における被圧延材Wの「先端部」に含まれる。本実施形態の圧延システム1は、被圧延材Wの「先端部」のうちオフゲージ部となる部分(廃棄される部分)を可能な限り減少させることを目的としてもよい。
【0047】
圧延速度が、ある速度(定常速度)に達すると、圧延速度は、この定常速度で維持される。このときの圧延の状態を定常状態という。定常状態で圧延される被圧延材Wを「定常部」という。なお、図4に示すグラフでは、定常状態での圧延速度は完全に一定であるが、実際に計測される圧延速度は、常時変動する。
【0048】
圧延速度は、所定のタイミングで、定常速度から徐々に下げられる。このときの圧延の状態を減速状態という。減速状態で圧延される被圧延材Wを「尾端部」という。上記「所定のタイミング」は、例えば、被圧延材Wが繰り出されるリール(第一リール11または第二リール12)に巻かれている被圧延材Wの量が所定量以下となった時などである。
【0049】
圧延速度が減少し、0になると、1回のパスが終了する。
【0050】
圧延速度の大きさの時間変化を表すグラフは、前パスと次パスとで同じような形状となる。パスの回数が増えるごとに(すなわち被圧延材Wが薄くなるごとに)、圧延速度の大きさが、徐々に増やされる。
【0051】
(圧延荷重P)
圧延荷重Pと時間との関係(圧延荷重Pの時間変化)を表すグラフの詳細は、次の通りである。図4および図5では、圧延荷重Pと時間との関係の一例を、模式的に示した。このグラフは、後述する各値の意味を把握しやすくするためのグラフである。実際は、圧延荷重Pは、被圧延材Wの状態に応じて常に変動し、グラフは複雑な曲線となる。一例を模式的に示したことについては、図4に示す、アクチュエータ位置(ラテラル位置、クラウン位置)と時間との関係を表すグラフも同様である。また、これらのグラフの縦軸の最小値は0ではない。これらのグラフの縦軸は、縦軸が示す数値が変化する部分を拡大したものである。
【0052】
圧延荷重Pは、主に、ワークロール21と被圧延材Wとが接する部分(圧延ロールバイト)の摩擦係数の影響を受け、また、副次的に、被圧延材Wの板厚の影響も受ける。詳しくは、圧延速度が速いほど、圧延ロールバイトへの圧延油の引き込み量(導入油膜)が増加し、圧延速度が遅いほど、圧延ロールバイトへの圧延油の引き込み量が減少する。よって、圧延速度が遅いほど、ワークロール21と被圧延材Wとの摩擦係数が増加する。よって、圧延速度が遅いほど、圧延荷重Pは増加する。よって、被圧延材Wの先端部および尾端部での圧延荷重Pは、定常部での圧延荷重Pに比べて大きくなる。さらに、ワークロール21間の隙間に対して、被圧延材Wの板厚が厚いほど、圧延荷重Pが大きくなる。被圧延材Wの先端部および尾端部での摩擦係数が、定常部での摩擦係数に比べて大きくなる結果として、通常、被圧延材Wの先端部および尾端部は、定常部に比べて厚くなりやすい。そのため、被圧延材Wの先端部および尾端部での圧延荷重Pは、定常部での圧延荷重Pに比べて、大きくなる。図4に示す例では、圧延荷重Pの時間変化を表すグラフは、次のようになる。パスの開始時には、圧延荷重Pは、パスの開始前の荷重から、ある値まで増加する。加速状態では、圧延速度が上がることで、圧延荷重Pは、徐々に低下する。定常状態では、圧延荷重Pは、ほぼ一定になる。減速状態では、圧延速度が下がることで、圧延荷重Pは、徐々に上昇する。
【0053】
被圧延材Wの先端部の圧延荷重Pを、先端部荷重PTともいう。被圧延材Wの定常部の圧延荷重Pを、定常部荷重PSともいう。
【0054】
圧延荷重Pの時間変化を表すグラフは、前パスと次パスとで同じような形状となる。通常、パスの回数が増えるごとに(すなわち被圧延材Wが薄くなるごとに)、圧延荷重Pが小さくされる。
【0055】
(アクチュエータ位置)
アクチュエータ位置(ラテラル位置およびクラウン位置)と、時間と、の関係の一例を模式的に表すグラフの詳細は、次の通りである。アクチュエータ位置は、被圧延材Wが平坦になるように、自動形状制御により(またはオペレータによる入力装置71の操作により)決定される。ラテラル位置は、ラテラル制御アクチュエータ53c(図3参照)の、アクチュエータ位置である。図4のグラフに示したラテラル位置は、複数本の第一中間ロール31のうちの1本の、板幅方向における位置の例を示す。クラウン位置は、クラウン制御アクチュエータ53b(図3参照)の、アクチュエータ位置である。図4のグラフに示したクラウン位置は、複数のサドル53b1(図3参照)のうち1つのサドル53b1の位置の例を示す。上記のように、図4では、アクチュエータ位置(ラテラル位置およびクラウン位置)と時間との関係の一例を、模式的に示した。図4では、被圧延材Wの定常部の大部分において、ラテラル位置およびクラウン位置を一定として示した。しかし、実際のラテラル位置およびクラウン位置は、形状制御装置63の出力に応じて、被圧延材Wの板形状を平坦にするように常時変動する。なお、目標形状については後述する。
【0056】
以下では、圧延荷重Pについては、主に図5を参照して説明する。図6に示すフローチャートの各ステップ(S11~S52)については、図6を参照して説明する。
【0057】
(セットアップ演算の概要)
制御装置60(詳しくは、セットアップ演算装置65)は、図4に示すアクチュエータ初期位置Xxを演算(計算、算出)する。制御装置60によるアクチュエータ初期位置Xxの演算を、セットアップ演算ともいう。
【0058】
アクチュエータ初期位置Xxは、次パスの開始時のアクチュエータ位置(形状制御アクチュエータ53の位置)である。アクチュエータ初期位置Xxは、次パスで被圧延材Wの先端部が圧延される時の、形状制御アクチュエータ53の位置である。アクチュエータ初期位置Xxは、具体的にはベクトルで表される(後述)。
【0059】
セットアップ演算の概要は、次の通りである。制御装置60は、次パスでの被圧延材Wの形状収束時間ができるだけ短くなるようなアクチュエータ初期位置Xxを演算する。ここで、次パスでの被圧延材Wの先端部の形状は、前パスの圧延荷重P(定常部または尾端部での圧延荷重P)に対する、次パスでの被圧延材Wの先端部での圧延荷重Pの変化量(圧延荷重差ΔP(図5参照))に応じて変わる。そこで、制御装置60は、圧延荷重差ΔPを予測(推定)する(図6のステップS31~S37)。制御装置60は、圧延荷重差ΔPを用いて、前パスでの被圧延材Wの形状(定常部または尾端部での形状)に対する、次パスでの被圧延材Wの先端部での形状の変化量を予測する(図6のステップS41~S43)。制御装置60は、予測した形状の変化量に基づいて、図4に示すアクチュエータ初期位置Xxを演算する(図6のステップS44、S45)。形状制御アクチュエータ53は、次パスの開始前に、アクチュエータ位置を、アクチュエータ初期位置Xxに設定する(プリセットする、セットアップする)(図6のステップS52)。
【0060】
(セットアップ演算などの具体例)
圧延システム1の作動(主にセットアップ演算)の具体例は、次の通りである。多段圧延機10の形状制御方法の具体例は、次の通りである。
【0061】
ステップS11およびステップS12では、制御装置60は、後述する影響係数Aを読み込む。詳しくは、制御装置60は、アクチュエータ影響係数AAを読み込む(ステップS11)。制御装置60は、荷重影響係数APを読み込む(ステップS12)。影響係数Aは、例えば、形状制御装置63の記憶装置に予め記憶されている。アクチュエータ影響係数AAは、具体的にはマトリックスで表される(後述)。荷重影響係数APは、具体的にはベクトルで表される(後述)。
【0062】
ステップS20では、制御装置60は、セットアップ演算を開始する。セットアップ演算の開始のタイミングについては後述する。
【0063】
ステップS31~ステップS37では、制御装置60は、アクチュエータ初期位置Xxの演算に使われる圧延荷重差ΔPを演算する。
【0064】
制御装置60による、図5に示す圧延荷重差ΔPの演算の概要は、次の通りである。制御装置60は、次パスでの被圧延材Wの定常部の圧延条件などから、次パスでの被圧延材Wの定常部の圧延荷重P(次パス定常部荷重PS(n)という)を演算(予測)する(ステップS31~ステップS34)。制御装置60は、次パス定常部荷重PS(n)に対する、次パスでの被圧延材Wの先端部の圧延荷重P(次パス先端部荷重PT(n)という)の増加率である先端部荷重増加率λを演算(予測)する(ステップS35)。このとき、制御装置60は、前パスでの被圧延材Wの定常部の圧延荷重Pの実測値と、前パスでの被圧延材Wの定常部の圧延荷重Pの予測値と、を用いることで(ステップS31~ステップS34)、先端部荷重増加率λを精度良く予測することができる。制御装置60は、次パス定常部荷重PS(n)の予測値(推定値)と、先端部荷重増加率λと、を用いて、次パス先端部荷重PT(n)の予測値(推定値)を演算する(ステップS36)。制御装置60は、前パスの圧延荷重Pと、次パス先端部荷重PT(n)と、の差である圧延荷重差ΔPを演算(予測)する(ステップS37)。制御装置60による圧延荷重差ΔPの演算の詳細は、次の通りである。
【0065】
ステップS31では、前パス定常部荷重PS(n-1)の実測値である前パス定常部荷重実測値が測定される(前パス定常部荷重実測ステップ)。そして、制御装置60は、前パス定常部荷重実測値を読み込む。圧延荷重Pの実測値は、例えば、ワークロール21に作用する荷重に基づいて測定されてもよく、中間ロール30に作用する荷重に基づいて測定されてもよく、バックアップロール40に作用する荷重に基づいて測定されてもよい。圧延荷重Pの実測値は、アクチュエータ50に作用する荷重に基づいて測定されてもよい。
【0066】
前パス定常部荷重PS(n-1)が実測される、前パスでの被圧延材Wの定常部の平坦度は、できるだけ良好であることが好ましい。前パスでの被圧延材Wの定常部の平坦度が良好であることで、演算されるアクチュエータ初期位置Xxの値がより適切になる(具体的には形状収束性が向上する)。
【0067】
ここで、前パス定常部荷重PS(n-1)は、図5に示すグラフでは一定だが、実際は常に変動する。そこで、予め決めたタイミングにおける、前パス定常部荷重PS(n-1)が実測される。上記「予め決めたタイミング」は、例えば、被圧延材Wの圧延の位置(長手方向の長さ)に基づいて決められてもよい。具体的には例えば、上記「予め決めたタイミング」は、被圧延材Wの長手方向における全長の所定割合(例えば90%など)の圧延が完了した時点でもよい。上記「予め決めたタイミング」は、パスの開始から所定時間が経過した時点でもよい。なお、前パス定常部荷重PS(n-1)の実測値と同様に、後述する圧延荷重Pの各種予測値も、予め決めたタイミングにおける圧延荷重Pの予測値である。
【0068】
ステップS32では、制御装置60は、前パス定常部荷重PS(n-1)の予測値(演算値)である前パス定常部荷重演算値を演算する。制御装置60は、次パス定常部荷重PS(n)の予測値をより精度良く演算するために、前パス定常部荷重PS(n-1)の予測値を演算する(ステップS34の説明を参照)。
【0069】
ここで、定常部荷重PSは、先端部荷重PTに比べ、精度良く(容易に)予測可能である。具体的には、定常部荷重PSは、被圧延材Wの定常部の圧延条件に基づいて予測可能である。この「圧延条件」は、圧延プロセスの条件を含んでもよく、被圧延材Wの材料の条件を含んでもよい。例えば、圧延プロセスの条件は、ワークロール21での圧延前後の(入側と出側の)被圧延材Wの板厚の差、ワークロール21の直径、ワークロール21と被圧延材Wとの摩擦係数、および、被圧延材Wの張力、のうち1または複数の条件を含んでもよい。例えば、被圧延材Wの材料の条件は、被圧延材Wの降伏応力、および圧延抵抗、の一方または両方の条件を含んでもよい。定常部荷重PSは、圧延理論を用いた荷重予測式を用いて予測されてもよい。定常部荷重PSは、経験的(実験的)に導出された荷重予測式を用いて予測されてもよい。定常部荷重PSは、機械学習を用いて予測されてもよい。
【0070】
定常部荷重PSが、機械学習を用いて予測(演算)される場合について説明する。制御装置60は、機械学習により予め抽出された、圧延条件と定常部荷重PSとの関係を用いて、定常部荷重PSを演算する。詳しくは、被圧延材Wの定常部を実際に圧延したときの圧延条件と、そのときの定常部荷重PSの実測値と、の情報が記憶(記録)される。この情報に基づいて、圧延条件と定常部荷重PSとの関係が、予め抽出される。そして、制御装置60は、予め抽出された関係に基づいて、圧延時の圧延条件(入力)から、定常部荷重PSの予測値(ステップS32では前パス定常部荷重演算値)(出力)を予測する。
【0071】
図7に、定常部の単位幅WI当たりの定常部荷重PSの、予測値(PS/WIの予測値)と、実測値(PS/WIの実測値)と、の関係を表すグラフを示す。この予測値(PS/WIの予測値)は、機械学習により予め抽出された関係と、圧延条件と、に基づいて予測された値である。図7に示す例では、PS/WIの予測値と実測値との、重相関係数の2乗である決定係数(R2)は、0.987であった。これにより、定常部荷重PSは、精度良く予測可能であることが示される。
【0072】
ステップS33では、制御装置60は、図5に示す次パス定常部荷重PS(n)の予測値である次パス定常部荷重演算値を演算(予測)する。前パス定常部荷重演算値(ステップS32参照)と同様に、次パス定常部荷重演算値は、次パスでの被圧延材Wの定常部の圧延条件に基づいて精度良く演算(予測)可能である。
【0073】
ステップS34では、制御装置60は、次パス定常部荷重PS(n)の予測値である次パス定常部荷重予測値を演算する(次パス定常部荷重予測値演算ステップ)。この次パス定常部荷重予測値は、次パスでの被圧延材Wの定常部の圧延条件のみに基づいて予測した次パス定常部荷重演算値(ステップS33)よりも、さらに精度が良い、次パス定常部荷重PS(n)の予測値である。
【0074】
次パス定常部荷重予測値が演算されることが好ましい理由は、次の通りである。例えば、定常部荷重PSの予測に用いられる圧延条件には、ワークロール21と被圧延材Wとの摩擦係数、および、被圧延材Wの変形抵抗などが含まれる。ここで、これらの圧延条件が、コイル(第一リール11および第二リール12に巻かれた被圧延材W)(チャンス)ごとに変えられることなく(一定の圧延条件に基づいて)、定常部荷重PSが予測されてもよい。一方、これらの圧延条件は、コイル毎に、変化することが想定される。すると、定常部荷重PSの実測値と予測値とが、コイルごとにずれる場合がある。そこで、制御装置60は、このずれを考慮した、次パス定常部荷重予測値を演算することが好ましい。
【0075】
具体的には、制御装置60は、前パス定常部実測値(ステップS31)と、前パス定常部演算値(ステップS32)と、の割合(ズレの割合、修正係数)を用いて、次パス定常部荷重予測値を演算する。制御装置60は、この修正係数と、次パス定常部荷重演算値(ステップS33)と、に基づいて、次パス定常部荷重予測値を演算する。具体的には例えば、制御装置60は、次の式(1)により、次パス定常部荷重予測値を演算(算出)する。
【0076】
【数1】
【0077】
なお、変形例として、制御装置60は、修正係数を用いた修正を行っていない次パス定常部荷重演算値(ステップS33)を、次パス定常部荷重予測値としてもよい。
【0078】
ステップS35では、制御装置60は、先端部荷重増加率λを演算(予測)する(先端部荷重増加率演算ステップ)。制御装置60は、次パスの圧延条件に基づいて、先端部荷重増加率λを演算する。先端部荷重増加率λは、次パス定常部荷重PS(n)に対する、次パス先端部荷重PT(n)の増加率である。
【0079】
具体的には例えば、先端部荷重増加率λは、次の式で表される。
【0080】
λ=(PT(n)-PS(n))÷PS(n)
【0081】
なお、この式は、先端部荷重増加率λの一例である(一例であることは他の式も同様)。例えば、先端部荷重増加率λは、λ=PT(n)÷PS(n)、などでもよい。以下では、先端部荷重増加率λが、λ=(PT(n)-PS(n))÷PS(n)、で表される例について説明する。
【0082】
(先端部荷重増加率λが用いられる理由)
先端部荷重増加率λが演算(予測)される理由の概要は、次の通りである。次パスの圧延条件から次パス先端部荷重PT(n)を直接的に予測することは困難である。一方、次パスの圧延条件から先端部荷重増加率λを予測することは可能である。そのため、先端部荷重増加率λが演算される。
【0083】
先端部荷重増加率λが演算(予測)される理由の詳細は、次の通りである。上記のように、次パスの圧延条件から次パス先端部荷重PT(n)を直接的に予測することは困難である。その理由は、先端部荷重PTを予測する理論モデルの構築が難しいからである。ここで、先端部荷重PTには、ある程度予測できる部分と、予測困難な部分がある。
【0084】
被圧延材Wの先端部の圧延速度は、低い(具体的には定常部の圧延速度に比べて低い)(図4参照)。そのため、圧延油が、ワークロール21と被圧延材Wとが接する部分(ロールバイト)に十分引きまれない。そのため、ワークロール21と被圧延材Wとの摩擦係数が高くなり、圧延荷重Pが(先端部荷重PTが)高くなる。この摩擦係数の変化による、圧延荷重Pの変化は、ある程度予測可能である。
【0085】
一方、以下の圧延荷重Pは予測困難である。被圧延材Wの材料には、変形抵抗のひずみ速度依存性を有する材料がある。ひずみ速度依存性を有する材料では、圧延速度が低速のときに、圧延速度が高速のときよりも、ひずみ速度が小さくなり、変形抵抗が低くなる結果、圧延荷重Pが低くなる。この変形抵抗による圧延荷重Pの影響は、予測困難である。
【0086】
また、先端部荷重PTは、被圧延材Wの先端部の入側板厚(ワークロール21に入る前の板厚)によって変わる。この「被圧延材Wの先端部の入側板厚」は、前回のパスの被圧延材Wの尾端部の出側板厚(ワークロール21から出た板厚)である。ここで、被圧延材Wの尾端部の圧延速度は低い(0または略0である)(図4参照)結果、被圧延材Wの尾端部の出側板厚の精度は低い(すなわち、実際の板厚が、目標の板厚に対して大きくずれる)。よって、被圧延材Wの尾端部の出側板厚は、予測不可能または困難である。すなわち、次回のパスでの被圧延材Wの先端部の入側板厚は、予測不可能または困難である。その結果、先端部荷重PTは予測困難である。
【0087】
摩擦係数の変化、ひずみ速度依存性を有する材料の変形抵抗、および、先端部の板厚の精度が、先端部荷重PTに与える影響は、圧延の加速パターンにより変化する。そのため、先端部荷重PTを予測することは困難である(予測のための理論モデルの構築は難しい)。したがって、次パス先端部荷重PT(n)を、次パスでの被圧延材Wの先端部の圧延条件から直接的に予測することは、困難である。
【0088】
一方、次パス定常部荷重PS(n)は、上記のように、次パスでの被圧延材Wの定常部の圧延条件から、精度良く予測可能である(ステップS33、S34参照)。また、次パス定常部荷重PS(n)に対する、次パス先端部荷重PT(n)の増加率(すなわち先端部荷重増加率λ)も、予測可能である(後述)。そこで、制御装置60は、次パス定常部荷重PS(n)の予測値(ステップS33、S34参照)と、先端部荷重増加率λと、を用いて、次パス先端部荷重PT(n)の予測値(次パス先端部荷重予測値)を演算する(後述するステップS36)。
【0089】
(次パス定常部荷重PS(n)と先端部荷重増加率λとを別々に予測する理由)
制御装置60が、次パス定常部荷重PS(n)と先端部荷重増加率λとを別々に演算(予測)する(ステップS34、S35参照)理由は、次の通りである。次パス定常部荷重PS(n)は、上記のように、精度良く予測可能である。例えば、次パス定常部荷重PS(n)は、操業状態の変化に対して安定的である。一方、先端部荷重増加率λは、予測可能であるが、先端部荷重増加率λの予測の精度は、次パス定常部荷重PS(n)の予測の精度に比べて低い。例えば、操業状態の変化に対して、先端部荷重増加率λは変化しやすい(操業状態に依存する)。そこで、制御装置60は、次パス定常部荷重PS(n)と、先端部荷重増加率λと、を別々に演算(予測)する。これにより、例えば圧延条件から次パス先端部荷重PT(n)を直接的に予測する場合などに比べ、次パス先端部荷重PT(n)の予測精度が向上する(トータルでの予測精度が向上する)。
【0090】
(先端部荷重増加率λの演算の具体例)
先端部荷重増加率λが、機械学習を用いて予測(演算)される場合について説明する。制御装置60は、機械学習により予め抽出された、圧延条件と先端部荷重増加率λとの関係を用いて、先端部荷重増加率λを演算する。詳しくは、被圧延材Wが実際に圧延されたときの、圧延条件と、先端部荷重PTの実測値と、定常部荷重PSの実測値と、の情報が記憶(記録)される。この情報に基づいて、圧延条件と、先端部荷重増加率λと、の関係が、予め抽出される。そして、制御装置60は、予め抽出された関係に基づいて、圧延時の圧延条件(入力)から、先端部荷重増加率λ(出力)を予測する。この「圧延時の圧延条件(入力)」の具体例は、前パス定常部荷重予測値の演算(ステップS32)での圧延条件と同様である。先端部荷重増加率λを予測する際に用いられる圧延条件は、制御装置60に予め(圧延前に)設定されたパススケジュールの情報を含んでもよい。
【0091】
図8に、先端部荷重増加率λの予測値と実測値との関係を表すグラフを示す。先端部荷重増加率λの予測値は、機械学習により予め抽出された関係と、圧延条件と、に基づいて予測された値である。図8に示す例では、先端部荷重増加率λの予測値と実測値との重相関係数の2乗である決定係数(R2)は、0.664であった。これにより、先端部荷重増加率λを予測精度は、図7に示す定常部での圧延荷重Pに比べると限定的な予測精度であることが示される。しかし、ある程度の精度で先端部荷重増加率λを予測可能であることが示される。
【0092】
ステップS36では、制御装置60は、次パス先端部荷重PT(n)の予測値(次パス先端部荷重予測値)を演算(予測)する(次パス先端部荷重予測値演算ステップ)。制御装置60は、次パス定常部荷重予測値(ステップS34)と、先端部荷重増加率λ(ステップS35)と、に基づいて、次パス先端部荷重予測値を演算する。具体的には、制御装置60は、次の式(2)により、次パス先端部荷重予測値を演算する。
【0093】
【数2】
【0094】
なお、この数2では、数1で説明した記号(具体的には次パス定常部荷重予測値)の説明を省略した。前の数式で説明した記号の説明を省略することは、以下の数式も同様である。
【0095】
なお、変形例として、制御装置60は、先端部荷重増加率λを用いずに次パス先端部荷重予測値を演算してもよい。例えば、図5に示す前パス定常部荷重PS(n-1)の実測値と次パス先端部荷重PT(n)との関係を示す予測式が、経験的(実験的)に導出される。そして、制御装置60は、経験的に導出された予測式と、前パス定常部荷重PS(n-1)の実測値と、に基づいて、次パス先端部荷重予測値を演算してもよい。
【0096】
ステップS37では、制御装置60は、圧延荷重差ΔPを演算する(圧延荷重差演算ステップ)。圧延荷重差ΔPは、アクチュエータ初期位置Xx(図4参照)の演算に用いられる値である。圧延荷重差ΔPは、前パスの圧延荷重Pと、次パス先端部荷重PT(n)と、の差である。圧延荷重差ΔPは、前パスの圧延荷重Pから、次パス先端部荷重PT(n)への、圧延荷重Pの変化量である。制御装置60は、前パス定常部荷重PS(n-1)の実測値(前パス定常部荷重実測値、ステップS31)と、次パス先端部荷重PT(n)の予測値(次パス先端部荷重予測値、ステップS34)と、を用いて、圧延荷重差ΔPを演算する。圧延荷重差ΔPは、次パス先端部荷重PT(n)の予測値と、前パス定常部荷重PS(n-1)の実測値と、の差である必要はない。具体的には例えば、制御装置60は、圧延荷重差ΔPを、以下のように演算する。
【0097】
(ΔP1、ΔP2の演算)
制御装置60は、圧延荷重差ΔPの演算に用いる、ΔP1、およびΔP2を演算する。
【0098】
ΔP1は、次パス定常部荷重PS(n)と、前パス定常部荷重PS(n-1)と、の差である。具体的には、ΔP1は、次の式で表される。
【0099】
ΔP1=PS(n)-PS(n-1)
【0100】
ΔP1の演算に用いられる次パス定常部荷重PS(n)は、次パス定常部荷重予測値(ステップS34)が好ましく、次パス定常部荷重演算値(ステップS33)でもよい。ΔP1の演算に用いられる前パス定常部荷重PS(n-1)は、前パス定常部荷重実測値(ステップS31)が好ましく、前パス定常部荷重演算値(ステップS32)でもよい。
【0101】
ΔP2は、次パス先端部荷重PT(n)と、前パス定常部荷重PS(n-1)と、の差である。具体的には、ΔP2は、次の式で表される。
【0102】
ΔP2=PT(n)-PS(n-1)
【0103】
ΔP2の演算に用いられる次パス先端部荷重PT(n)は、次パス先端部荷重予測値(ステップS36)である。ΔP2の演算に用いられる前パス定常部荷重PS(n-1)は、前パス定常部荷重実測値(ステップS31)が好ましく、前パス定常部荷重演算値(ステップS32)でもよい。
【0104】
(調整パラメータcを用いたΔPの演算)
これらのΔP1とΔP2の間に、圧延荷重差ΔPがあるとする。その理由は、次の通りである。上記のように、ΔP2は、次パス先端部荷重PT(n)と、前パス定常部荷重PS(n-1)と、の差である。次パス先端部荷重PT(n)は、ある程度の精度で予測可能であるが、定常部荷重PSの予測精度に比べて低い精度で予測可能である。そのため、ΔP2をそのまま使ってアクチュエータ初期位置Xx(図4参照)を決定すると、被圧延材Wの形状収束性(後述)が限定的になる(制御結果が芳しくない)場合がある。一方、ΔP1は、次パス定常部荷重PS(n)と、前パス定常部荷重PS(n-1)と、の差であり、精度良く(ΔP2に比べて精度良く)予測可能である。そこで、ΔP1とΔP2の間に、圧延荷重差ΔPがあるとする。具体的には例えば、圧延システム1を、調整パラメータcを用いて、次の式(3)のように表す。
【0105】
ΔP=c・ΔP1+(1-c)・ΔP2――――(3)
【0106】
調整パラメータcは、圧延荷重差ΔPを、ΔP1およびΔP2にどれだけ近づけるか(または一致させるか)を決めるパラメータである。調整パラメータcは、例えば、0以上であり、例えば、1以下である。調整パラメータcが0の場合、圧延荷重差ΔPはΔP2となる。調整パラメータcが1の場合、圧延荷重差ΔPはΔP1となる。
【0107】
調整パラメータcは、被圧延材Wの形状制御の制御結果がより良くなるように調整される。調整パラメータcは、例えば、形状収束性(後述)が向上する(早く収束する)値に調整される。調整パラメータcは、例えば、先端部荷重PTの実測値と予測値との差ができるだけ小さくなる値に調整されてもよい。調整パラメータcの値は、調整前の値(初期値)(具体的には0.5など)から、制御結果が良くなるように、所定範囲内(例えば0以上1以下)で調整される(変えられる)。調整パラメータcの調整は、オペレータが入力装置71を操作することにより(手動操作で)行われてもよい。調整パラメータcの調整は、被圧延材Wの形状制御の制御結果に基づいて、制御装置60が自動的に行ってもよい。
【0108】
ステップS41~ステップS45では、制御装置60は、図4に示すアクチュエータ初期位置Xxを演算する(アクチュエータ初期位置演算ステップ)。アクチュエータ初期位置Xxは、次パスの開始時のアクチュエータ位置(n回目の圧延パスにおいて先端部を圧延する時の形状制御アクチュエータ53の位置)である。
【0109】
アクチュエータ初期位置Xxの演算の概要は、次の通りである。制御装置60は、圧延荷重差ΔP(ステップS37)に因る被圧延材Wの形状の変化と、次パス先端部目標形状ft2と、に基づいて、アクチュエータ初期位置Xxを演算する。詳しくは、制御装置60は、前パス目標形状ft1と次パス先端部目標形状ft2との差と、圧延荷重差ΔPに因る被圧延材Wの形状の変化と、に基づいて、アクチュエータ位置変化量ΔXSOLを演算する(ステップS41~S44)。アクチュエータ位置変化量ΔXSOLは、前パスでのアクチュエータ位置(BxまたはFx)から、次パスの開始時のアクチュエータ初期位置Xxまでの、アクチュエータ位置の変位量である。制御装置60は、アクチュエータ位置変化量ΔXSOLから、アクチュエータ初期位置Xxを演算する(ステップS45)。前パス目標形状ft1、次パス先端部目標形状ft2、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL、前パス定常部アクチュエータ位置Bx、および前パス尾端部アクチュエータ位置Fxのそれぞれは、例えばベクトルで表される(後述)。なお、図6および以下の数式(数3~数10)では、ベクトルを表す記号に上線を付した。アクチュエータ初期位置Xxの演算の詳細は、次の通りである。
【0110】
ステップS41では、制御装置60は、図4に示す前パス目標形状ft1と、次パス先端部目標形状ft2と、を読み込む。
【0111】
前パス目標形状ft1は、前パスの被圧延材Wの目標形状である。前パス目標形状ft1は、制御装置60に予め(ステップS41の前に)設定されてもよい。形状制御装置63による自動形状制御、またはオペレータの操作により、前パスでの被圧延材Wの定常部の実際の形状が、前パス目標形状ft1と一致している場合がある。この場合は、前パス目標形状ft1は、形状センサ17に検出された(実測された)前パスでの被圧延材Wの定常部の形状でもよい。具体的には、前パス目標形状ft1は、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの、目標形状を示す値(例えば張力など)のベクトルである。上記「センサ位置」は、形状センサ17の各素子の板幅方向における位置である(以下の「センサ位置」も同様)。
【0112】
次パス先端部目標形状ft2は、次パスでの被圧延材Wの先端部の目標形状である。次パス先端部目標形状ft2は、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの、目標形状を示す値のベクトルである。次パス先端部目標形状ft2は、制御装置60に予め(ステップS41の前に)設定されてもよい。次パス先端部目標形状ft2は、圧延条件などに基づいて演算(算出)されてもよい。
【0113】
次パス先端部目標形状ft2は、通販安定性を確保できるように設定(決定、選択)される。具体的には例えば、次パス先端部目標形状ft2は、ワークロール21の隙間(ロールギャップ)と、被圧延材Wの先端部の厚さと、の差が所定範囲内になるように設定される。ワークロール21の隙間に対して被圧延材Wが厚すぎると、被圧延材Wがワークロール21の隙間を通過しにくい。また、ワークロール21の隙間に対して被圧延材Wが薄すぎると、ワークロール21の隙間で被圧延材Wが板厚方向に動く(暴れる)。次パス先端部目標形状ft2は、これらの問題を抑制できるように設定される。また、次パス先端部目標形状ft2は、形状収束時間が短くなるように設定されることが好ましい。次パス先端部目標形状ft2は、通板安定性を確保でき、かつ、形状収束時間が短くなるように設定されることが好ましい。
【0114】
ステップS42では、制御装置60は、前パスでのアクチュエータ位置を読み込む。
【0115】
(セットアップ方法の2つの例)
次パス開始時のアクチュエータ位置(すなわちアクチュエータ初期位置Xx)は、前パスでのアクチュエータ位置を基準として、セットアップ(設定)される。このアクチュエータ位置の基準には、例えば、次のセットアップ例1、およびセットアップ例2がある。なお、図6では、セットアップ例1、およびセットアップ例2を、単に例1、例2と記載した。
【0116】
[セットアップ例1]上記の基準は、前パスの終了時の(前パスの被圧延材Wの尾端部での)アクチュエータ位置でもよい。この場合、制御装置60は、前パスの終了時のアクチュエータ位置を基準として、アクチュエータ初期位置Xx(次パスの開始時のアクチュエータ位置)を演算する。
【0117】
[セットアップ例2]上記の基準は、前パスの定常状態の(前パスの被圧延材Wの定常部での)アクチュエータ位置でもよい。この場合、制御装置60は、前パスの定常状態のアクチュエータ位置を基準として、アクチュエータ初期位置Xxを演算する。
【0118】
セットアップ例1の場合、制御装置60は、図4に示す前パス定常部アクチュエータ位置Bxと、前パス尾端部アクチュエータ位置Fxと、を読み込む。前パス定常部アクチュエータ位置Bxは、前パスでの被圧延材Wの定常部でのアクチュエータ位置である。具体的には、前パス定常部アクチュエータ位置Bxは、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの、アクチュエータ位置を示す値のベクトルである。前パス尾端部アクチュエータ位置Fxは、前パスでの被圧延材Wの尾端部での(前パスの終了時の)アクチュエータ位置である。前パス尾端部アクチュエータ位置Fxは、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの、アクチュエータ位置を示す値のベクトルである。
【0119】
セットアップ例2の場合、制御装置60は、前パス尾端部アクチュエータ位置Fxを読み込む。セットアップ例2の場合、制御装置60は、前パス定常部アクチュエータ位置Bxを読み込む必要はない。
【0120】
ステップS43では、制御装置60は、形状変化V1または形状変化V2を演算する。形状変化V1および形状変化V2のそれぞれは、例えばベクトルで表される(後述)。
【0121】
(セットアップ例1の場合の形状変化V1
上記のセットアップ例1の場合、制御装置60は、形状変化V1を演算する。形状変化V1は、前パスでの被圧延材Wの尾端部(終了時)から次パスでの被圧延材Wの先端部(開始時)までの被圧延材Wの形状の変化量である。形状変化V1は、アクチュエータ位置の変化と、圧延荷重差ΔPと、影響係数Aと、を考慮した被圧延材Wの形状の変化量である。具体的には、形状変化V1は、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの、形状の変化を示す値のベクトルである。
【0122】
例えば後述する式(5)(数4参照)のように、形状変化V1は、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1を用いて表される。アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1は、前パスの終了時から次パスの開始時までに変化させるべきアクチュエータ位置の変化量(セットアップすべきアクチュエータ増加量)である。アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1は、前パスの終了時のアクチュエータ位置から、アクチュエータ初期位置Xxまでの、アクチュエータ位置の変化量(増加量)である。
【0123】
例えば後述する式(4)(数3参照)のように、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1は、目標形状の差(ft2-ft1)と、アクチュエータ位置の差(Bx-Fx)と、圧延荷重差ΔPと、影響係数Aと、を用いて表すことができる。ここで、目標形状の差(ft2-ft1)は、前パス目標形状ft1と次パス先端部目標形状ft2との差である。アクチュエータ位置の差(Bx-Fx)は、前パス定常部アクチュエータ位置Bxと前パス尾端部アクチュエータ位置Fxとの差である。アクチュエータ位置の差(Bx-Fx)は、前パスにおいて圧延される被圧延材Wが定常部から尾端部に進むに従って生じる荷重変化の際に、自動形状制御またはオペレータ操作により、形状制御アクチュエータ53が動かされる量である。
【0124】
(影響係数A)
形状変化V1は(アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1は)、影響係数Aを用いて表される(後述する式(4)および式(5)参照)。その結果、アクチュエータ初期位置Xxは、影響係数Aを考慮して演算される。影響係数Aには、アクチュエータ影響係数AA(ステップS11参照)と、荷重影響係数AP(ステップS12参照)と、がある。
【0125】
アクチュエータ影響係数AAは、形状制御アクチュエータ53の位置が被圧延材Wの形状に与える影響を示す係数である。アクチュエータ影響係数AAは、形状制御アクチュエータ53が単位量移動した時の、被圧延材Wの形状の変化量を示す係数である。具体的には、アクチュエータ影響係数AAは、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの係数を、複数種類の形状制御アクチュエータ53ごとに示す(縦横に並べた)マトリックスである。
【0126】
荷重影響係数APは、被圧延材Wの圧延荷重Pが被圧延材Wの形状に与える影響を示す係数である。荷重影響係数APは、圧延荷重Pが単位量変化した時の、被圧延材Wの形状の変化量を示す係数である。具体的には、荷重影響係数APは、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの係数を示すベクトルである。
【0127】
具体的には例えば、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1は、次の式(4)のように表される。
【0128】
【数3】
【0129】
上記の式(4)を、次の式(5)および式(6)のように表すことができる。
【0130】
【数4】
【0131】
上記の式(5)は、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1に、アクチュエータ影響係数AAを乗算したものが、前パスの終了時から次パスの開始時までの形状変化V1であることを表す式である。
【0132】
自動形状制御において、上記の式(5)と同じ形の式が用いられる場合がある。この場合、自動形状制御で用いられる演算方法と同様の演算方法で、アクチュエータ初期位置Xxの演算を行うことができる。また、アクチュエータ初期位置Xxに用いられる影響係数Aとして、自動形状制御に用いられる影響係数Aを流用できることが好ましい。
【0133】
(セットアップ例2の場合の形状変化V2
上記のセットアップ例2の場合、制御装置60は、形状変化V2を演算する。形状変化V2は、前パスでの被圧延材Wの定常部(定常状態)から次パスでの被圧延材Wの先端部(開始時)までの被圧延材Wの形状の変化量である。形状変化V2は、アクチュエータ位置の変化と、圧延荷重差ΔPと、影響係数Aと、を考慮した被圧延材Wの形状の変化量である。具体的には、形状変化V2は、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの、形状の変化を示す値のベクトルである。
【0134】
例えば後述する式(8)(数6参照)のように、形状変化V2は、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL2を用いて表される。アクチュエータ位置変化量ΔXSOL2は、前パスでの被圧延材Wの定常部から次パスでの被圧延材Wの先端部(開始時)までに変化させるべきアクチュエータ位置の変化量(セットアップすべきアクチュエータ増加量)である。アクチュエータ位置変化量ΔXSOL2は、前パスでの被圧延材Wの定常部のアクチュエータ位置から、アクチュエータ初期位置Xxまでの、アクチュエータ位置の変化量(増加量)である。
【0135】
例えば後述する式(7)のように、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL2は、目標形状の差(ft2-ft1)と、圧延荷重差ΔPと、影響係数Aと、を用いて表すことができる。ここで、セットアップ例1では、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1は、アクチュエータ位置の差(Bx-Fx)を用いて表された(上記の式(4)参照)。一方、セットアップ例2では、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL2は、アクチュエータ位置の差(Bx-Fx)は不要である。
【0136】
具体的には例えば、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL2は、次の式(7)のように表される。
【0137】
【数5】
【0138】
上記の式(7)を、次の式(8)および式(9)のように表すことができる。
【0139】
【数6】
【0140】
セットアップ例1の式(5)と、セットアップ例2の式(8)とは、は同型である。そこで、これらの式を、添え字「1」および「2」を無視して表す。具体的には、前パスから次パスの先端部までの形状変化Vを、前パスから次パスの先端部までのアクチュエータ位置変化量ΔXSOLと、アクチュエータ影響係数AAと、を用いて、次の式(10)のように表すことができる。
【0141】
【数7】
【0142】
ステップS44では、制御装置60は、最小二乗法を適用したアクチュエータ位置変化量ΔXSOLを演算する。制御装置60は、AA・ΔXSOL-Vの大きさが最小となる、アクチュエータ位置変化量ΔXSOLを演算(算出)する(上記の式(10)に、最小二乗法を適用する)。具体的には、制御装置60は、次の式(11)の演算を行う。
【0143】
【数8】
【0144】
なお、AA Tは、AAの転置行列である。(AA T・AA-1は、(AA T・AA)の逆行列である。また、上記の式(11)では、図6に示すステップS44の拘束係数K(後述)はない。
【0145】
(形状制御に用いられない形状制御アクチュエータ53がある場合の演算)
圧延システム1は、複数種類の形状制御アクチュエータ53(例えば、図3に示すクラウン制御アクチュエータ53b、ラテラル制御アクチュエータ53cなど)を備える場合がある。この場合に、圧延システム1が備える複数種類の形状制御アクチュエータ53のうち、一部の種類の形状制御アクチュエータ53のみが、選択され、形状制御に用いられる場合がある(アクチュエータ選択モードという)。アクチュエータ選択モードが行われる場合、制御装置60は、例えば次のように演算を行う。
【0146】
アクチュエータ選択モードが行われる場合と行われない場合とで、アクチュエータ影響係数AAが変えられてもよい。
【0147】
アクチュエータ選択モードが行われる場合と行われない場合とで、アクチュエータ影響係数AAが変えられずに、拘束係数Kが用いられてもよい。拘束係数Kは、対角成分のみに値を持つマトリックスである。拘束係数Kのマトリックスでは、形状制御に用いられる種類の形状制御アクチュエータ53に対応する成分に比べ、形状制御に用いられない種類の形状制御アクチュエータ53に対応する成分が、十分大きな値とされる。これにより、形状制御に用いられない種類の形状制御アクチュエータ53の移動量(被圧延材Wの形状に与える影響)が、近似的に0とされる。具体的には例えば、形状制御に用いられる種類の形状制御アクチュエータ53の成分が1とされ、形状制御に用いられない種類の形状制御アクチュエータ53の成分が巨大数の1010などと設定される。
【0148】
この拘束係数Kが用いられる場合、制御装置60は、上記の式(11)に変えて、次の式(12)により、アクチュエータ位置変化量ΔXSOLを演算する。
【0149】
【数9】
【0150】
(形状制御に与える影響が小さい形状制御アクチュエータ53がある場合の演算)
圧延システム1が備える複数種類の形状制御アクチュエータ53のうち、一部の種類の形状制御アクチュエータ53の形状制御に与える影響(制御結果への効き方)が、他の種類の形状制御アクチュエータ53の形状制御に与える影響よりも小さくされてもよい。これを影響低減モードという。以下、影響低減モードについて、主に、アクチュエータ選択モードとの相違点を説明する。
【0151】
影響低減モードが行われる場合と行われない場合とで、アクチュエータ影響係数AAが変えられてもよい。
【0152】
影響低減モードが行われる場合と行われない場合とで、アクチュエータ影響係数AAが変えられずに、拘束係数Kが用いられてもよい(アクチュエータ選択モードと同様)。影響低減モードが行われる場合、拘束係数Kのマトリックスでは、影響が小さくされない種類の形状制御アクチュエータ53に対応する成分に比べ、影響が小さくされる種類の形状制御アクチュエータ53に対応する成分が、十分大きな値とされる。影響が小さくされる種類の形状制御アクチュエータ53の成分の大きさを調整することで、この種類の形状制御アクチュエータ53が被圧延材Wの形状に与える影響を調整することができる。具体的には例えば、影響が小さくされない種類の形状制御アクチュエータ53の成分が1とされ、影響が小さくされる種類の形状制御アクチュエータ53の成分が102などと設定される。影響が小さくされる種類の形状制御アクチュエータ53の成分の大きさを、この程度の大きさに設定すれば、この種類の形状制御アクチュエータ53は、形状制御に多少の影響(他の種類の形状制御アクチュエータ53に比べて小さい影響)を与えることができる。
【0153】
ステップS45では、制御装置60は、アクチュエータ初期位置Xxを演算する。
【0154】
上記のセットアップ例1の場合、アクチュエータ初期位置Xxは、前パス尾端部アクチュエータ位置Fxに対して、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL1だけアクチュエータ位置を変化させた位置である。この場合、アクチュエータ初期位置Xxは、下記の式(13)(数10参照)により表される。アクチュエータ初期位置Xxは、被圧延材Wの板幅方向における複数のセンサ位置ごとの、アクチュエータ位置を示す値のベクトルである。
【0155】
上記のセットアップ例2の場合、アクチュエータ初期位置Xxは、前パス定常部アクチュエータ位置Bxに対して、アクチュエータ位置変化量ΔXSOL2だけアクチュエータ位置を変化させた位置である。この場合、アクチュエータ初期位置Xxは、下記の式(14)により表される。
【0156】
【数10】
【0157】
ステップS51では、制御装置60は、アクチュエータ初期位置Xxを出力する。
【0158】
ステップS52では、次パスでの被圧延材Wの圧延開始前に、形状制御アクチュエータ53の位置が、アクチュエータ初期位置Xxに設定(セットアップ)される(アクチュエータ設定ステップ)。この設定は、オペレータの手動による設定でもよく、制御装置60による自動設定でもよい。
【0159】
アクチュエータ初期位置Xxの出力(ステップS51)、および、形状制御アクチュエータ53の設定(ステップS52)の具体例は、次の通りである。
【0160】
(アクチュエータ初期位置Xxが手動設定される例)
制御装置60は、演算(算出)したアクチュエータ初期位置Xxを教示装置73(図1参照)に出力する(ステップS51)。教示装置73は、アクチュエータ初期位置Xxを示す情報を、オペレータに教示する(オペレータガイダンスを行う)。例えば、教示装置73は、アクチュエータ初期位置Xxを示す情報を表示する。オペレータは、教示装置73に教示された情報を元に、入力装置71(図1参照)を操作する。このとき、オペレータは、アクチュエータ位置が、アクチュエータ初期位置Xxになるように、入力装置71を操作する。その結果、アクチュエータ位置は、アクチュエータ初期位置Xxに設定される(ステップS52)。
【0161】
(アクチュエータ初期位置Xxが自動設定される例)
制御装置60は、演算(算出)したアクチュエータ初期位置Xxに基づいて、アクチュエータ位置を自動的に制御してもよい(ステップS51)。その結果、アクチュエータ位置が、アクチュエータ初期位置Xxに設定されてもよい(ステップS52)。
【0162】
(アクチュエータ初期位置Xxに設定される形状制御アクチュエータ53の種類)
形状制御アクチュエータ53の種類には、傾斜制御アクチュエータ53a(図1参照)と、クラウン制御アクチュエータ53b(図3参照)と、ラテラル制御アクチュエータ53c(図3参照)と、ロール偏心制御アクチュエータ53d(図3参照)と、がある。制御装置60が演算したアクチュエータ初期位置Xxに設定される形状制御アクチュエータ53の種類は、1種類でもよく、複数種類でもよい。例えば、アクチュエータ初期位置Xxに設定される形状制御アクチュエータ53は、ラテラル制御アクチュエータ53c(図3参照)、および、クラウン制御アクチュエータ53b(図3参照)の、いずれか1つまたは両方でもよい。アクチュエータ初期位置Xxに設定される形状制御アクチュエータ53は、圧延停止時でも動かすことが容易なクラウン制御アクチュエータ53b(図3参照)を含むことが好ましい。
【0163】
(セットアップ演算の開始タイミング)
アクチュエータ初期位置Xxの演算が開始されるタイミング(ステップS20)(セットアップ演算の開始タイミングという)は、少なくとも、次パスの開始前である。
【0164】
上記のセットアップ例1では、制御装置60は、図4に示す前パス尾端部アクチュエータ位置Fxを基準としてアクチュエータ初期位置Xxを演算する。よって、セットアップ例1では、セットアップ演算の開始タイミングは、前パスの終了後である必要がある。
【0165】
上記のセットアップ例2では、制御装置60は、前パス定常部アクチュエータ位置Bxを基準として、アクチュエータ初期位置Xxを演算する。よって、制御装置60は、前パスの終了時の情報を用いることなく、アクチュエータ初期位置Xxを演算できる。よって、制御装置60は、前パスの終了前に、セットアップ演算を開始できる。その結果、セットアップ例2では、セットアップ例1に比べ、アクチュエータ初期位置Xxを早期に算出することができる。その結果、前パスの終了から次パスの開始までの時間を短縮することができ、圧延システム1での被圧延材Wの生産性を向上させることができる。アクチュエータ初期位置Xxが早期に算出されるので、オペレータがアクチュエータ位置を手動で設定する場合、オペレータの操作が早期に完了しやすい。
【0166】
具体的には、セットアップ例2では、セットアップ演算の開始タイミングは、前パスでの被圧延材Wの定常部の、基準となる位置での圧延の終了後である必要がある。例えば、セットアップ演算の開始タイミングは、前パスの終了前の、被圧延材Wの減速中でもよい。この場合、制御装置60は、圧延速度が減速していると判断したときに、セットアップ演算を開始してもよい。なお、セットアップ例2でのセットアップ演算の開始タイミングは、前パスでの被圧延材Wの定常部の基準となる位置での圧延の終了後であれば、定常部の圧延中(定常状態)でもよい。また、セットアップ演算の開始タイミングを早くすることができる効果は得られないが、セットアップ例2でのセットアップ演算が、前パスの終了後に行われてもよい。
【0167】
(比較)
図9に示すように、本実施形態の一例(例E)と比較例とについて、被圧延材Wの形状収束時間を比較した。例Eは、次パスの開始時のアクチュエータ位置が、制御装置60に演算されたアクチュエータ初期位置Xxに設定された例である。比較例は、次パスの開始時のアクチュエータ位置が、制御装置60に演算されたアクチュエータ初期位置Xxではなく、オペレータの感覚により(オペレータのノウハウにより)設定された例である。なお、例Eおよび比較例では、被圧延材Wの形状を制御する形状制御アクチュエータ53は、ラテラル制御アクチュエータ53c(図3参照)およびクラウン制御アクチュエータ53b(図3参照)である。図9に示すグラフの横軸は、パス(例Eでは次パス)の圧延開始からの時間である。グラフの縦軸は、形状評価関数である。形状評価関数は、被圧延材Wの目標形状と実測形状との偏差である。
【0168】
図9に示すように、比較例では、形状評価関数が、圧延開始後に乱れている(大きく変動している)。一方、例Eでは、形状評価関数が、圧延開始直後から単調に減少し、比較例の半分以下の時間で安定している(図9中の矢印を参照)。すなわち、例Eでは、被圧延材Wの形状が、比較例の半分以下の時間で、安定形状(収束形状)に到達していることが分かる。例Eでは、比較例よりも、形状収束性が向上していることが分かる。
【0169】
(検討)
形状制御装置63が、被圧延材Wの形状を、自動形状制御により制御する場合がある。この場合、形状収束性は、パスの開始時の被圧延材Wの形状(初期形状)によって変わる。この初期形状は、次パスの開始前の形状制御アクチュエータ53の初期位置によって決まる。従来、この初期位置は、オペレータのノウハウによって決められていた。そのため、形状収束性は、オペレータの技能に依存していた。そのため、オペレータの技能により、形状収束性のばらつきがあった。また、コイルごとに形状収束性にばらつきがあり、パスごとに形状収束性のばらつきがあった。形状収束性のばらつきがある結果、被圧延材Wの先端部の形状精度のばらつきがあった。また、形状収束性のばらつきがある結果、圧延の加速パターン(増速タイミング)のばらつきがあった。そのため、形状収束性のばらつきが、被圧延材Wの製品品質、および、多段圧延機10での被圧延材Wの生産性の妨げとなっていた。
【0170】
一方、本実施形態では、制御装置60は、上記のように、アクチュエータ初期位置Xxを演算する。そして、次パスの開始時のアクチュエータ位置が、演算されたアクチュエータ初期位置Xxに設定される。その結果、オペレータの技能による形状収束性のばらつきを抑制することができ、コイルおよびパスごとの形状収束性のばらつきを抑制することができる。
【0171】
(第1の発明の効果)
図1に示す多段圧延機10の形状制御方法による効果は、次の通りである。多段圧延機10は、形状制御アクチュエータ53を備える。形状制御アクチュエータ53は、被圧延材Wの板幅方向における被圧延材Wの平坦度の分布である形状を制御する。多段圧延機10は、被圧延材Wの圧延方向を圧延パス毎に入れ替えながら被圧延材Wを圧延するリバース圧延を行うものである。多段圧延機10の形状制御方法は、前パス定常部荷重実測ステップと、次パス先端部荷重予測値演算ステップと、圧延荷重差演算ステップと、アクチュエータ初期位置演算ステップと、アクチュエータ設定ステップと、を備える。
【0172】
[構成1]前パス定常部荷重実測ステップ(ステップS31参照)は、前パス定常部荷重実測値を実測する。前パス定常部荷重実測値は、nを2以上の整数としたとき、n-1回目の圧延パスにおける被圧延材Wの定常部の圧延荷重Pの実測値(前パス定常部荷重PS(n-1)図5参照)の実測値)である。次パス先端部荷重予測値演算ステップ(ステップS36参照)は、次パス先端部荷重予測値を演算する。次パス先端部荷重予測値は、n回目の圧延パスにおける被圧延材Wの先端部の圧延荷重Pの予測値(次パス先端部荷重PT(n)図5参照)の予測値)である。圧延荷重差演算ステップ(ステップS37参照)は、実測された前パス定常部荷重実測値(ステップS31参照)と演算された次パス先端部荷重予測値(ステップS36参照)とを用いて、圧延荷重差ΔP(図5参照)を演算する。圧延荷重差ΔPは、n-1回目の圧延パスにおける被圧延材Wの圧延荷重P(前パスの圧延荷重P)と、n回目の圧延パスにおける先端部の圧延荷重P(次パス先端部荷重PT(n))と、の差である。アクチュエータ初期位置演算ステップ(ステップS41~S45参照)は、演算された圧延荷重差ΔPに因る被圧延材Wの形状の変化と、n回目の圧延パスにおける先端部の目標形状(次パス先端部目標形状ft2)と、に基づいて、アクチュエータ初期位置Xxを演算する。アクチュエータ初期位置Xx(図4参照)は、n回目の圧延パスにおいて先端部を圧延する時の形状制御アクチュエータ53の位置である。アクチュエータ設定ステップ(ステップS52参照)は、n回目の圧延パスでの(次パスでの)被圧延材Wの圧延開始前に、形状制御アクチュエータ53の位置を、演算されたアクチュエータ初期位置Xxに設定する。
【0173】
上記[構成1]により、次パスの開始時の形状制御アクチュエータ53の位置を、オペレータの感覚のみに依存したアクチュエータ位置の初期位置ではなく、演算により決められたアクチュエータ初期位置Xxに設定することができる。よって、パス(次パス)の開始時の形状制御アクチュエータ53の初期位置を、適切な位置に設定することができる。
【0174】
ここで、次パスの開始時の形状制御アクチュエータ53の初期位置によって、次パスの開始時の被圧延材Wの形状(初期形状)が変わり、次パスの開始後の形状収束性が変わる。上記[構成1]では、次パスの開始時の形状制御アクチュエータ53の位置を、演算により決めたアクチュエータ初期位置Xxに設定することができる。よって、オペレータの感覚のみに依存した初期位置が設定される場合に比べ、次パスの開始後の形状収束性のばらつきを抑制することができる。
【0175】
(第2の発明の効果)
[構成2]多段圧延機10の形状制御方法は、次パス定常部荷重予測値演算ステップと、先端部荷重増加率演算ステップと、を備える。次パス定常部荷重予測値演算ステップ(ステップS34参照)は、次パス定常部荷重予測値を演算する。次パス定常部荷重予測値は、n回目の圧延パスにおける定常部の圧延荷重Pの予測値(次パス定常部荷重PS(n)図5参照)の予測値)である。先端部荷重増加率演算ステップ(ステップS35参照)は、n回目の圧延パスにおける圧延条件に基づいて、先端部荷重増加率λ(図5参照)を演算する。先端部荷重増加率λは、n回目の圧延パスにおける定常部の圧延荷重P(次パス定常部荷重PS(n))に対する、n回目の圧延パスにおける先端部の圧延荷重P(次パス先端部荷重PT(n))の増加率である。次パス先端部荷重予測値演算ステップ(ステップS36参照)は、演算された次パス定常部荷重予測値(ステップS34参照)と、演算された先端部荷重増加率λ(ステップS35参照)と、に基づいて、次パス先端部荷重予測値を演算する。
【0176】
上記[構成2]により、次の効果が得られる。被圧延材Wの定常部の圧延荷重P(定常部荷重PS)は、精度良く予測可能である。一方、被圧延材Wの先端部の圧延荷重P(先端部荷重PT)は、定常部荷重PSに比べて予測が困難である。先端部荷重増加率λの予測の精度は、定常部荷重PSの予測の精度よりも低いが、先端部荷重PTの予測の精度よりも高い。そこで、上記[構成2]では、精度良く予測可能な次パス定常部荷重予測値(ステップS34参照)と、予測可能な先端部荷重増加率λ(ステップS35参照)と、が演算される。そして、次パス定常部荷重予測値と先端部荷重増加率λとに基づいて、次パス先端部荷重予測値が演算される(ステップS36参照)。よって、例えば、圧延条件などに基づいて直接的に次パス先端部荷重PT(n)が予測される場合などに比べ、次パス先端部荷重PT(n)を精度良く予測することができる。その結果、次パス先端部荷重PT(n)を用いて演算されるアクチュエータ初期位置Xx(図4参照)を、より適切な値にすることができる。具体的には、次パスの開始後の被圧延材Wの形状収束性をより向上させることができる。
【0177】
(第3の発明の効果)
[構成3]圧延条件と、先端部荷重PTの実測値と、定常部荷重PSの実測値と、から、圧延条件と先端部荷重増加率λとの関係が、予め抽出される(ステップS35の説明を参照)。先端部荷重増加率演算ステップ(ステップS35参照)は、予め抽出された関係に基づいて、n回目の圧延パスにおける圧延条件から、先端部荷重増加率λを演算する。
【0178】
上記[構成3]により、次パスでの先端部荷重増加率λを、次パスの圧延条件に基づいて適切に予測することができる。その結果、先端部荷重増加率λを用いて演算されるアクチュエータ初期位置Xxを、より適切な値にすることができる。
【0179】
(第4の発明の効果)
[構成4]アクチュエータ初期位置演算ステップ(ステップS41~S45参照)は、アクチュエータ影響係数AAと、荷重影響係数APと、に基づいて、アクチュエータ初期位置Xxを演算する(ステップS43参照)。アクチュエータ影響係数AAは、形状制御アクチュエータ53の位置が被圧延材Wの形状に与える影響を示す係数である。荷重影響係数APは、被圧延材Wの圧延荷重Pが被圧延材Wの形状に与える影響を示す係数である。
【0180】
上記[構成4]により、形状制御アクチュエータ53の位置が被圧延材Wの形状に与える影響、および、被圧延材Wの圧延荷重Pが被圧延材Wの形状に与える影響を考慮した、アクチュエータ初期位置Xxを算出することができる。よって、アクチュエータ影響係数AAおよび荷重影響係数APの少なくとも一方が用いられずに、アクチュエータ初期位置Xxが演算される場合に比べ、アクチュエータ初期位置Xxを、より適切な値にすることができる。
【0181】
(第5の発明の効果)
[構成5]多段圧延機10は、被圧延材Wの形状を自動的に制御する自動形状制御を行うものである。アクチュエータ影響係数AAおよび荷重影響係数APの、一方の係数または両方の係数は、自動形状制御に用いられる係数である。
【0182】
上記[構成5]により、アクチュエータ初期位置演算ステップ(ステップS41~S45参照)で用いられるアクチュエータ影響係数AAおよび荷重影響係数APの、一方の係数または両方の係数として、自動形状制御に用いられる係数を流用することができる。よって、アクチュエータ初期位置Xxを演算するための影響係数Aを、自動形状制御で用いられる係数とは別に設定する必要はない。
【0183】
(第6の発明の効果)
[構成6]アクチュエータ初期位置演算ステップ(ステップS41~S45参照)は、n-1回目の圧延パスの終了前の、被圧延材Wの減速中に、アクチュエータ初期位置Xxを演算する。
【0184】
上記[構成6]により、前パスの終了後にアクチュエータ初期位置Xxの演算が開始される場合に比べ、アクチュエータ初期位置Xxを早く算出することができる。よって、より早く次パスを開始することができる。よって、多段圧延機10が行うリバース圧延全体での作業時間を短縮することができ、多段圧延機10による被圧延材Wの生産性を向上させることができる。
【0185】
(第7の発明の効果)
[構成7]図3に示す形状制御アクチュエータ53は、ラテラル制御アクチュエータ53c、および、クラウン制御アクチュエータ53bの、いずれか1つまたは両方である。
【0186】
上記[構成7]により、次の効果が得られる。ラテラル制御アクチュエータ53c、および、クラウン制御アクチュエータ53bのそれぞれは、被圧延材Wの形状を確実に制御可能である。これらの形状制御アクチュエータ53が、次パスの開始時にアクチュエータ初期位置Xxに設定される(ステップS52)。よって、次パスの開始時の被圧延材Wの形状(初期形状)が適切に制御される。その結果、次パスの開始後の被圧延材Wの形状収束性を向上させることができる。
【0187】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態中の変形例どうしが様々に組み合わされてもよい。例えば、上記実施形態の構成要素(変形例を含む)の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、図1に示す制御装置60の各構成要素の接続は変更されてもよい。例えば、構成要素の配置は変更されてもよい。例えば、構成要素の包含関係は様々に変更されてもよい。例えば、ある上位の構成要素に含まれる下位の構成要素として説明したものが、この上位の構成要素に含まれなくてもよく、他の構成要素に含まれてもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。例えば、図6に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、制御装置60の制御に用いられる各種パラメータ(例えば調整パラメータcなど)は、この各種パラメータと同一でなくてもよく、各種パラメータに換算可能なパラメータでもよい。例えば、制御装置60は、上記実施形態(変形例を含む)の処理(計算、判定など)と実質的に同一の処理(計算、判定など)を行ってもよい。各種処理は様々に組み合わされてもよい。例えば、制御装置60による計算は、様々に行われてもよい。計算に用いられる数式、および、計算手順などは様々に変形されてもよい。計算に用いられる値、および、計算により算出される値などは様々に変更されてもよい。具体的には例えば、ある値を用いて計算が行われることに代えて、この値に換算可能な値を用いて計算が行われてもよい。また、ある値が演算(算出)されることに代えて、この値に換算可能な値が演算(算出)されてもよい。例えば、各構成要素は、各特徴(作用機能、配置、形状、作動など)の一部のみを有してもよい。
【符号の説明】
【0188】
10 多段圧延機
53 形状制御アクチュエータ
53b クラウン制御アクチュエータ
53c ラテラル制御アクチュエータ
A アクチュエータ影響係数
P 荷重影響係数
P 圧延荷重
S 定常部荷重(定常部の圧延荷重P)
S(n) 次パス定常部荷重(n回目の圧延パスにおける被圧延材Wの定常部の圧延荷重P)
S(n-1) 前パス定常部荷重(n-1回目の圧延パスにおける被圧延材Wの定常部の圧延荷重P)
T 先端部荷重(先端部の圧延荷重P)
T(n) 次パス先端部荷重(n回目の圧延パスにおける被圧延材Wの先端部の圧延荷重P)
W 被圧延材
Xx アクチュエータ初期位置
ΔP 圧延荷重差
λ 先端部荷重増加率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9