(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019717
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】口栓、及び口栓付きパウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 33/38 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123474
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翔平
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA26
3E064BC18
3E064EA04
3E064HM01
3E064HN65
3E064HS04
(57)【要約】
【課題】口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制する。
【解決手段】パウチに用いられる高密度ポリエチレン製の口栓10は、第一方向D1に延びる流路11と、第一方向D1に延びて流路11の一部を形成する注出部12と、第一方向D1に延びて流路11の他の一部を形成する溶着部13と、を備え、溶着部13は、第二方向D2の中央部から第二方向D2の端部に向かうに従い第三方向D3の厚みが薄くなる形状を有している。そして、第三方向D3において圧子52を溶着部13に4.5mm押し込んだ場合の、溶着部13の降伏点を超えた所定領域における、圧子52の押込量Xに対する、圧子52の荷重Fを溶着部13と圧子52との接触面積Aで割った値の傾きSが、1.70N/mm
3以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチに用いられる高密度ポリエチレン製の口栓であって、
第一方向に延びる流路と、
前記第一方向に延びて前記流路の一部を形成する注出部と、
前記第一方向に延びて前記流路の他の一部を形成する溶着部と、を備え、
前記溶着部は、前記第一方向と直交する第二方向の中央部から前記第二方向の端部に向かうに従い前記第一方向及び前記第二方向と直交する第三方向の厚みが薄くなる形状を有しており、
前記第三方向において圧子を前記溶着部に4.5mm押し込んだ場合の、前記溶着部の降伏点を超えた所定領域における、前記圧子の押込量に対する、前記圧子の荷重を前記溶着部と前記圧子との接触面積で割った値の傾きが、1.70N/mm3以下である、
口栓。
【請求項2】
前記溶着部は、基部と、前記基部から突出するリブと、を有する、
請求項1に記載の口栓。
【請求項3】
前記溶着部は、基部と、前記基部から凹む溝と、を有する、
請求項1に記載の口栓。
【請求項4】
一対のフィルムを有するパウチ本体と、
一対のフィルムの間に配置されて一対のフィルムに溶着された請求項1~3の何れか一項に記載の口栓と、を備え、
一対のフィルムのそれぞれは、ポリエチレンを含むシーラント層を最内面に有する、
口栓付きパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチに用いられる口栓及び当該口栓を備えた口栓付きパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体等の内容物を収容する容器として、一対の樹脂製のフィルムに樹脂製の口栓(スパウト)が溶着された口栓付きパウチが用いられている。口栓付きパウチでは、加熱したシールバーをフィルムの上から口栓に押し付けてフィルムのシーラント層及び口栓を融解させることで、フィルムが口栓に溶着されている。特許文献1には、このような口栓付きパウチの口栓として、高密度ポリエチレンを材料とした口栓が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、リサイクル性を向上するために包装資材のモノマテリアル化(単一素材化)が取り組まれている。そこで、本発明者は、高密度ポリエチレン製の口栓を作製し、この口栓とポリエチレン系のフィルムとの溶着性の評価を行ったところ、口栓の近傍においてフィルムに穴が開く口栓があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制することができる高密度ポリエチレン製の口栓及び当該口栓を備える口栓付きパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について更に鋭意研究を行った結果、次のような知見が得られた。すなわち、フィルムを口栓に溶着するためにシールバーをフィルム上から口栓に押し付けた際に、フィルムが過加熱される場合がある。このような場合、ポリエチレンは融点が比較的低く熱収縮率が高いため、フィルムは融解しながら大きく熱収縮する。このとき、口栓は、変形してフィルムの熱収縮に追従しようとする。しかしながら、口栓が変形しにくいものである場合は、口栓の変形がフィルムの熱収縮に追従できず、口栓の近傍においてフィルムに穴が開く可能性があることが分かった。このようなことから、口栓が変形しやすいものとすることで、シールバーがフィルム上から溶着部に押し付けられることでフィルムが過加熱されたとしても、口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制することができるとの知見を得た。本発明は、上記知見に基づきなされたものである。
【0007】
[1] 本発明に係る口栓は、パウチに用いられる高密度ポリエチレン製の口栓であって、第一方向に延びる流路と、第一方向に延びて流路の一部を形成する注出部と、第一方向に延びて流路の他の一部を形成する溶着部と、を備え、溶着部は、第一方向と直交する第二方向の中央部から第二方向の端部に向かうに従い第一方向及び第二方向と直交する第三方向の厚みが薄くなる形状を有しており、第三方向において圧子を溶着部に4.5mm押し込んだ場合の、溶着部の降伏点を超えた所定領域における、圧子の押込量に対する、圧子の荷重を溶着部と圧子との接触面積で割った値の傾きが、1.70N/mm3以下である。
【0008】
この口栓では、溶着部が、第二方向の中央部から第二方向の端部に向かうに従い第三方向の厚みが薄くなる複雑な形状を有しているため、シールバーをフィルム上から溶着部に押し付けると、フィルムが局部的に過加熱されるやすくなる。しかしながら、溶着部の降伏点を超えた所定領域における、圧子の押込量に対する、圧子の荷重を溶着部と圧子との接触面積で割った値の傾きが、1.70N/mm3以下となっているため、変形しやすいものとなっている。このため、シールバーがフィルム上から溶着部に押し付けられることでフィルムが過加熱されたとしても、溶着部がフィルムの熱収縮に追従するように変形することで、口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制することができる。
【0009】
[2] 上記[1]に記載の口栓において、溶着部は、基部と、基部から突出するリブと、を有してもよい。この口栓では、溶着部が基部から突出するリブを有するため、シールバーをフィルム上から溶着部に押し付けた際の溶着部とフィルムとの接触面積が小さくなって、フィルムが局部的に過加熱されやすくなる。しかしながら、上記傾きが1.70N/mm3以下となっているため、溶着部がフィルムの熱収縮に追従するように変形することで、口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制することができる。
【0010】
[3] 上記[1]又は[2]に記載の口栓において、溶着部は、基部と、基部から凹む溝と、を有してもよい。この口栓では、溶着部が基部から凹む溝を有するため、シールバーをフィルム上から溶着部に押し付けた際の溶着部とフィルムとの接触面積が小さくなって、フィルムが局部的に過加熱されやすくなる。しかしながら、上記傾きが1.70N/mm3以下となっているため、溶着部がフィルムの熱収縮に追従するように変形することで、口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制することができる。
【0011】
[4] 本発明に係る口栓付きパウチは、一対のフィルムを有するパウチ本体と、一対のフィルムの間に配置されて一対のフィルムに溶着された上記[1]~[3]の何れか一つに記載の口栓と、を備え、一対のフィルムのそれぞれは、ポリエチレンを含むシーラント層を最内面に有する。この口栓付きパウチでは、上記の口栓が一対のフィルムに溶着されているため、口栓付きパウチの製造時において、シールバーがフィルム上から口栓の溶着部に押し付けられることでフィルムが局部的に過加熱されたとしても、溶着部がフィルムの熱収縮に追従するように変形することで、口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制することができる。これにより、フィルムに穴が開いていないものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る口栓付きパウチを示す正面図である。
【
図3】口栓の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の一例を示す図である。
【
図7】押込試験を行っている状態を示す正面図である。
【
図13】変形例の口栓における接触面積を説明するための図である。
【
図17】他の変形例における接触面積を説明するための図である。
【
図18】実施例1,2及び比較例1における押込試験の測定結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(口栓付きパウチ)
図1は、実施形態に係る口栓付きパウチを示す正面図である。
図1に示す口栓付きパウチ1は、詰め替え用ボトル等の容器(不図示)に対する内容物の詰め替えや、飲料用包装、化粧品用包装等に用いられる。
図2は、
図1に示すII-II線における断面図である。
図1及び
図2に示すように、実施形態に係る口栓付きパウチ1は、パウチ本体2と、口栓3と、を備える。なお、口栓は、スパウト等とも呼ばれる。パウチ本体2は、互いに対向された樹脂製の一対のフィルムである第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bと、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に折り込まれた樹脂製の折込フィルム5と、を備える。なお、パウチ本体2は、折込フィルム5を備えないものであってもよく、更に他のフィルムを備えるものであってもよい。
【0016】
そして、口栓付きパウチ1の内部に内容物を収容するための収容領域6を形成するように、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとが、その外縁部において互いにヒートシール(溶着)されているとともに、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bと折込フィルム5とが、その外縁部において互いにヒートシールされている。また、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に口栓3が配置されて、第一胴フィルム4Aの外縁部及び第二胴フィルム4Bの外縁部と口栓3とが、互いにヒートシールされている。なお、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとは、互いに同じ形状、構造等を有して口栓3とヒートシールされているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを胴フィルム4として纏めて説明する。
【0017】
胴フィルム4は、基材層7と、シーラント層8と、が積層された積層シートにより形成されている。シーラント層8は、胴フィルム4の最内面を形成する。すなわち、胴フィルム4は、シーラント層8を最内面に有する。なお、胴フィルム4を構成する積層シートは、基材層7及びシーラント層8以外の層を備えていてもよい。例えば、胴フィルム4を構成する積層シートは、基材層7とシーラント層8との間に配置されるバリア層を備えていてもよい。
【0018】
基材層7は、胴フィルム4に所定の剛性を与えるとともに、気体及び液体の通過を阻止するバリア性を有する。基材層7の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又はポリプロピレン)、又はポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とすることができる。超低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm3未満である。低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である。中密度ポリエチレンの密度は、0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である。高密度ポリエチレンの密度は、0.945g/cm3以上、又は0.945g/cm3以上0.980g/cm3以下である。
【0019】
シーラント層8は、口栓3と溶着されるために溶融可能な層である。つまり、シーラント層8は、ヒートシール可能な層である。シーラント層8は、ポリエチレンを含む。シーラント層8に含まれるポリエチレンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、又は高密度ポリエチレンとすることができる。また、シーラント層8は、ポリエチレン以外にも、ポリプロピレン、又はポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)等を含んでもよい。
【0020】
口栓付きパウチ1の収容領域6に収容される内容物は、特に限定されるものではないが、液体であることが好ましい。内容物としては、例えば、液体洗剤、洗浄剤、薬品、化粧品、シャンプー、リンス等の日用品、液体調味料、スープ、ヨーグルト、清涼飲料、食用油等の食品、及び潤滑油、工業用油等の工業製品が挙げられる。なお、口栓付きパウチ1は、収容領域6に内容物が収容された内容物入り口栓付きパウチであってもよい。
【0021】
口栓3は、高密度ポリエチレン製である。高密度ポリエチレン製であるとは、口栓3を構成する材料として高密度ポリエチレンを主に含むことを意味し、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の他のポリマー、及び添加剤等を含んでもよい。口栓3における高密度ポリエチレンの重量割合は、例えば、80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。
【0022】
本実施形態においては、口栓3の融点は、DSC曲線の吸熱ピークの頂点で示される温度である。つまり、示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点で示される温度を、口栓3の融点とする。吸熱ピークは、融解による吸熱のピークであり、融解ピークとも呼ばれる。
【0023】
図3は、口栓の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線の一例を示す図である。
図3では、縦軸において吸熱の熱流が上向きとなるように示している。
図3に示す例では、DSC曲線の吸熱ピークの頂点Pで示される温度が、口栓3の融点となる。口栓3の融点は、例えば、130.0℃以下であってもよく、129.0℃以下であってもよい。なお、口栓3の融点の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、125.0℃以上であってもよく、127.0℃以上であってもよい。
【0024】
口栓3は、パウチ本体2に収容された内容物を流通させるための流路31と、パウチ本体2の外側に配置されて流路31の一部を形成する注出部32と、胴フィルム4に溶着されて流路31の他の一部を形成する溶着部33と、注出部32と溶着部33との間に位置するフランジ部34と、を有する。なお、口栓3の詳細については、後述する。
【0025】
(口栓)
次に、実施形態に係る口栓について説明する。
図4は、実施形態に係る口栓を示す正面図である。
図5は、実施形態に係る口栓を示す側面図である。
図6は、実施形態に係る口栓を示す底面図である。
図4~
図6に示すように、実施形態に係る口栓10は、
図1及び
図2に示す口栓付きパウチ1の口栓3となる口栓である。つまり、
図4~
図6に示す口栓10は、胴フィルム4にヒートシールすることで、
図1及び
図2に示す口栓付きパウチ1の口栓3となる。このため、口栓10の素材、口栓10を構成する樹脂の密度等は、口栓付きパウチ1の口栓3と同様とすることができる。
【0026】
口栓10は、流路11と、注出部12と、溶着部13と、フランジ部14と、を備える。
【0027】
流路11は、口栓付きパウチ1の収容領域6に収容された内容物を流通するために、第一方向D1に延びて口栓10を貫通している。つまり、流路11は、注出部12、溶着部13、及びフランジ部14の内周面により区画される穴であって、口栓10を第一方向D1に貫通する貫通穴である。
【0028】
注出部12は、口栓付きパウチ1のパウチ本体2の外側に配置されて、口栓付きパウチ1の収容領域6に収容された内容物を注出するための部位である。注出部12は、第一方向D1に延びて、流路11の一部を形成する。注出部12は、円筒状に形成されている。注出部12の内周面には、流路11が形成されており、注出部12の外周面には、キャップ(不図示)を着脱可能に取り付けるためのねじ部12aが形成されている。キャップは、流路11を開閉可能に閉じる部材である。
【0029】
溶着部13は、胴フィルム4に溶着される部位である。つまり、溶着部13は、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に配置されて、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに溶着される部位である。溶着部13は、第一方向D1に延びて、流路11の他の一部を形成する。
【0030】
フランジ部14は、注出部12と溶着部13との間に位置するフランジ状の部位である。フランジ部14は、口栓付きパウチ1のパウチ本体2の外側に配置されて、第一方向D1と直交する方向に延びている。フランジ部14は、例えば、胴フィルム4に対する溶着部13の位置決めに利用される。なお、本実施形態では、フランジ部14は、1つのみ設けられているが、第一方向D1に複数設けられていてもよい。
【0031】
溶着部13は、第一方向D1と直交する第二方向D2の中央部から第二方向D2の端部に向かうに従い第一方向D1及び第二方向D2と直交する第三方向D3の厚みが薄くなる形状を有している。つまり、溶着部13は、第一方向D1と直交する断面が略菱形形状となっており、第三方向D3よりも第二方向D2の方が長くなっている。溶着部13の外表面は、例えば、第二方向D2の中央部から第二方向D2の端部に向って、曲面状に延びている。
【0032】
溶着部13は、第一胴フィルム4Aに溶着される第一側壁部16Aと、第二胴フィルム4Bに溶着される第二側壁部16Bと、を有する。第一側壁部16Aと第二側壁部16Bとは、第三方向D3に対向するように位置して、第二方向D2における両端において互いに鋭角となるように接続されている。なお、第一側壁部16Aと第二側壁部16Bとは、互いに同じ形状、構造等を有しているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、第一側壁部16A及び第二側壁部16Bを側壁部16として纏めて説明する。
【0033】
溶着部13の側壁部16は、基部17と、複数のリブ19と、を有する。
【0034】
基部17は、側壁部16の本体を成して、胴フィルム4と溶着される部位である。基部17は、平坦な表面を有している。基部17の表面は、側壁部16と略同一となっている。つまり、基部17は、第二方向D2の中央部から第二方向D2の端部に向かうに従い第三方向D3の厚みが薄くなる形状を有している。そして、第一側壁部16Aの基部17と第二側壁部16Bの基部17とは、第二方向D2に対向するように位置して、第三方向D3における両端において互いに鋭角となるように接続されている。
【0035】
複数のリブ19は、基部17から突出する部位である。複数のリブ19は、第一方向D1に配列されている。複数のリブ19のそれぞれは、基部17の表面において第一方向D1と垂直な方向に延びている。複数のリブ19のそれぞれは、基部17の第二方向D2における一方側の先端から他方側の先端まで延びている。複数のリブ19の数は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第一側壁部16A及び第二側壁部16Bのそれぞれに、3本のリブ19が形成されている。
【0036】
このように構成される口栓10を用いて口栓付きパウチ1を製造する場合は、まず、パウチ本体2において、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとが上辺部において互いにヒートシールされていないパウチ中間体(不図示)を用意する。次に、予熱工程を行う。予熱工程では、加熱したシールバー(不図示)を溶着部13に押し付けることにより、溶着部13を予熱する。なお、リブ19は、予熱工程又は次のヒートシールにおいて、シールバーにより押し潰されることで、基部17の表面に沿った平坦面となる。次に、口栓10の溶着部13を第一胴フィルム4Aの上辺部と第二胴フィルム4Bの上辺部との間に配置する。次に、ヒートシール工程を行う。ヒートシール工程では、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4B上から加熱したシールバーを溶着部13に押し付ける。すると、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bのシーラント層8が溶融するとともに、口栓10の溶着部13が溶融して、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bのシーラント層8が口栓10の溶着部13に溶着される。これにより、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが溶着部13に溶着される。ヒートシール工程は、複数回行うことができ、例えば、二回行う。なお、予熱工程は必ずしも行わなくてもよいが、溶着部13の溶融を適切に行わせる観点から、予熱工程を行うことが好ましい。予熱工程を行わない場合は、予熱工程での溶着部13の溶融がヒートシール工程で生じる。次に、冷却工程を行う。冷却工程では、第一胴フィルム4A、第二胴フィルム4B、及び溶着部13を冷却する。これにより、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが溶着部13に完全に溶着されて、上述した口栓付きパウチ1が製造される。
【0037】
ところで、ヒートシール工程では、シールバーを第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4B上から溶着部13に押し付けた際に、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが過加熱される場合がある。このような場合、ポリエチレンは融点が比較的低く熱収縮率が高いため、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bは融解しながら大きく熱収縮する。このとき、溶着部13は、変形して第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの熱収縮に追従しようとする。しかしながら、溶着部13が変形しにくいものである場合は、溶着部13の変形が第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの熱収縮に追従できず、溶着部13の近傍において第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bムに穴が開く可能性がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、溶着部13が、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの熱収縮に追従するように変形しやすいものとなっている。すなわち、第三方向D3において圧子52(
図9参照)を溶着部13に4.5mm押し込んだ場合の、溶着部13の降伏点を超えた所定領域における、圧子52の押込量X[mm]に対する、圧子52の荷重F[N]を溶着部13と圧子52との接触面積A[mm
2]で割った値(F/A)の傾きS[N/mm
3]が、1.70N/mm
3以下となっている。つまり、傾きSは、荷重Fを接触面積Aで割った値(F/A)を縦軸とし、押込量Xを横軸とした線図の傾きとなり、この線図の傾きが、1.70N/mm
3以下となっている。また、傾きSは、第三方向D3において圧子52を溶着部13に4.5mm押し込んだ場合の、溶着部13の降伏点を超えた所定領域において、荷重Fを接触面積Aで割った値(F/A)の変化量Δ(F/A)を押込量Xの変化量ΔXで割った値でもある。荷重Fは、圧子52を溶着部13に押し込むために圧子52に付与する力である。押込量Xは、溶着部13に対する圧子52の押込量である。この場合、傾きSは、1.50N/mm
3以下であってもよく、1.45N/mm
3以下であってもよい。なお、溶着部13の降伏点を超えた所定領域における傾きSの下限は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0N/mm
3以上とすることができる。
【0039】
次に、傾きSの求め方について説明する。まず、押込試験を行う。
図7は、押込試験を行っている状態を示す正面図である。
図7に示すように、押込試験では、溶着部13を載置するための載置台50を用意する。載置台50には、溶着部13の外表面に沿った形状の載置面51が形成されている。そして、溶着部13を載置台50の載置面51に載置する。
【0040】
次に、株式会社イマダ製のフォースゲージ EMXシリーズ EMX-500Nを用いて、圧子52を溶着部13に押し込み、その際の圧子52の荷重F及び圧子52の押込量Xを測定する。溶着部13に対する圧子52の押し込みは、押込速度20mm/min、最大押込量4.5mmの条件で、溶着部13の第二方向D2における中央部に圧子52を第三方向D3に押し込むことにより行う。圧子52の押込面53は、直径10mmの円形とする。圧子52としては、例えば、金属製のΦ10mmの円盤形状の圧子を用いる。押込試験の計測結果の例を
図8に示す。
図8では、荷重Fを接触面積Aで割った値(F/A)を縦軸とし、押込量Xを横軸としている。
【0041】
ここで、溶着部13は、高密度ポリエチレン製で、第二方向D2の中央部から第二方向D2の端部に向かうに従い第三方向D3の厚みが薄くなる複雑な形状を有している。このため、第三方向D3において圧子52を溶着部13に押し込んでいくと、溶着部13と圧子52との接触面積が変化(増大)する。そこで、
図9に示すように、第三方向D3において圧子52を溶着部13に5.4mm押し込んだ際に、溶着部13と圧子52とが最終的に接触する面の面積を、溶着部13と圧子52との接触面積Aとする。接触面積Aは、第三方向D3において圧子52を溶着部13に5.4mm押し込んだ際の、溶着部13と圧子52との最大接触面積でもある。
【0042】
図9は、接触面積を説明するための図であり、第三方向D3において圧子52を溶着部13に5.4mm押し込んだ状態を示している。
図9において、斜線のハッチングを付した領域の面積が、接触面積Aとなる。ここで、圧子52を溶着部13に押し込むと、圧子52は、まずリブ19に接触する。圧子52を溶着部13に更に押し込むと、リブ19が圧子52に押し潰されて基部17の表面に沿った平坦面となる。これにより、圧子52は基部17及びリブ19の双方と接触する。このため、接触面積Aは、第三方向D3において圧子52の押込面53を溶着部13に投影した投影面のうちの、基部17及びリブ19に対応する領域の面積となる。
【0043】
図8に示すように、降伏点に至る前の弾性領域では、圧子52を溶着部13に押し込んでいくと、
図8に示す線図の傾きである傾きSが変動する。一方、降伏点を超えた塑性領域では、圧子52を溶着部13に押し込んでいっても、
図8に示す線図の傾きである傾きSは変動しにくい。
【0044】
そこで、塑性領域である溶着部13の降伏点を超えた所定領域において傾きSを算出する。そして、本実施形態では、この算出した傾きSが、1.70N/mm
3以下、1.50N/mm
3以下、又は1.45N/mm
3以下となっている。所定領域としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶着部13の降伏点を超えて、傾きSが一定になっている領域としてもよく、降伏点を超えて傾きSが一定になってから押込量Xが0.5mm増加するまでの区間を、所定領域としてもよい。この場合、
図8では、押込量Xが1.25mm~1.75mmとなる区間が、所定領域となる。そして、この所定領域において傾きSを算出し、この算出した傾きSが、1.70N/mm
3以下、1.50N/mm
3以下、又は1.45N/mm
3以下となっている。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る口栓10では、溶着部13が、第二方向D2の中央部から第二方向D2の端部に向かうに従い第三方向D3の厚みが薄くなる複雑な形状を有しているため、シールバーを第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4B上から溶着部13に押し付けると、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが局部的に過加熱されるやすくなる。しかしながら、溶着部の降伏点を超えた所定領域における傾きSが1.70N/mm3以下、1.50N/mm3以下、又は1.45N/mm3以下となっているため、変形しやすいものとなっている。このため、シールバーが第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4B上から溶着部13に押し付けられることで第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが過加熱されたとしても、溶着部13が第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの熱収縮に追従するように変形することで、口栓10の近傍において第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに穴が開くのを抑制することができる。
【0046】
また、この口栓10では、溶着部13が基部17から突出するリブ19を有するため、シールバーを第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4B上から溶着部13に押し付けた際の溶着部13と第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bとの接触面積が小さくなって、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが局部的に過加熱されやすくなる。しかしながら、上記の傾きSが1.70N/mm3以下、1.50N/mm3以下、又は1.45N/mm3以下となっているため、溶着部13が第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの熱収縮に追従するように変形することで、口栓10の近傍において第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに穴が開くのを抑制することができる。
【0047】
本実施形態に係る口栓付きパウチ1では、上記の口栓10が第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに溶着されているため、口栓付きパウチ1の製造時において、シールバーが第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4B上から口栓10の溶着部13に押し付けられることで第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが局部的に過加熱されたとしても、溶着部13が第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの熱収縮に追従するように変形することで、口栓10の近傍において第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに穴が開くのを抑制することができる。これにより、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに穴が開いていないものとすることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0049】
例えば、上記実施形態では、口栓の形状を具体的に説明したが、口栓の形状は特に限定されるものではなく、
図10~
図12に示す変形例の口栓や
図14~
図16に示す他の変形例の口栓等のように、適宜変更することができる。また、上記実施形態では、口栓の溶着部は、基部から突出するリブを有するものとしたが、
図10~
図12に示す変形例の口栓や
図14~
図16に示す他の変形例の口栓等のように、基部からリブを有しないものであってもよく、基部から凹む溝を有するものであってもよく、溶着部に穴が形成されたものであってもよい。
【0050】
(変形例の口栓)
図10は、変形例の口栓を示す正面図である。
図11は、変形例の口栓を示す側面図である。
図12は、変形例の口栓を示す底面図である。
図10~
図12に示す変形例の口栓110は、基本的には上記実施形態の口栓10と同様であるが、形状の一部が上記実施形態の口栓10と異なっている。口栓110は、口栓10と同じ流路11と、注出部12に対応する注出部112と、溶着部13に対応する溶着部113と、フランジ部14に対応するフランジ部114と、を備える。なお、注出部112及びフランジ部114は、注出部12及びフランジ部14と形状が異なるが、本発明の特徴と直接関係が無いため、その説明を省略する。
【0051】
溶着部113は、第二方向D2の中央部から第二方向D2の端部に向かうに従い第三方向D3の厚みが薄くなる形状を有している。溶着部113は、第一側壁部16Aに対応する第一側壁部116Aと、第二側壁部16Bに対応する第二側壁部116Bと、を有する。第一側壁部116Aと第二側壁部116Bとは、互いに同じ形状、構造等を有しているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、第一側壁部116A及び第二側壁部116Bを側壁部116として纏めて説明する。
【0052】
溶着部113の側壁部116は、基部117と、複数の溝118と、を有する。
【0053】
基部117は、側壁部116の本体を成して、胴フィルム4と溶着される部位である。
【0054】
複数の溝118は、基部117から凹む部位である。複数の溝118は、第一方向D1に配列されている。複数の溝118のそれぞれは、基部117の表面において第一方向D1と垂直な方向に延びている。複数の溝118のそれぞれは、基部117の第二方向D2における一方側の先端の近傍から他方側の先端の近傍まで延びており、基部117の第二方向D2における両端部には形成されていない。第一方向D1に配列される溝118の数は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第一側壁部116A及び第二側壁部116Bのそれぞれに、3つの溝118が第一方向D1に配列(形成)されている。
【0055】
このように構成される口栓110の傾きSは、上述した口栓10の傾きSと同様に求めることができるが、溶着部113の形状が溶着部13の形状と異なるため、溶着部113と圧子52との接触面積Aは、
図13に示すようになる。
図13は、変形例の口栓における接触面積を説明するための図であり、第三方向D3において圧子52を溶着部113に5.4mm押し込んだ状態を示している。
図13において、斜線のハッチングを付した領域の面積が、接触面積Aとなる。ここで、圧子52を溶着部113に押し込むと、圧子52は基部117と接触するが、溝118は基部117とともに沈み込んでいくため、圧子52は溝118と接触しない。このため、接触面積Aは、第三方向D3において圧子52の押込面53を溶着部113に投影した投影面のうちの、溝118に対応する領域を除いた面積となる。
【0056】
以上説明したように、変形例の口栓110では、溶着部113が基部117から凹む溝118を有するため、シールバーを第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4B上から溶着部113に押し付けた際の溶着部113と第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bとの接触面積が小さくなって、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが局部的に過加熱されやすくなる。しかしながら、上記の傾きSが1.70N/mm3以下、1.50N/mm3以下、又は1.45N/mm3以下となっているため、溶着部113が第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの熱収縮に追従するように変形することで、口栓110の近傍において第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに穴が開くのを抑制することができる。
【0057】
(他の変形例の口栓)
図14は、他の変形例の口栓を示す正面図である。
図15は、他の変形例の口栓を示す側面図である。
図16は、他の変形例の口栓を示す底面図である。
図14~
図16に示す他の変形例の口栓210は、基本的には変形例の口栓110と同様であるが、形状の一部が変形例の口栓110と異なっている。口栓210は、口栓110と同じ流路11と、注出部112に対応する注出部212と、溶着部113に対応する溶着部213と、フランジ部114に対応するフランジ部214と、を備える。なお、注出部212及びフランジ部214は、注出部112及びフランジ部114と形状が異なるが、本発明の特徴と直接関係が無いため、その説明を省略する。
【0058】
溶着部213は、第二方向D2の中央部から第二方向D2の端部に向かうに従い第三方向D3の厚みが薄くなる形状を有している。溶着部213は、第一側壁部116Aに対応する第一側壁部216Aと、第二側壁部116Bに対応する第二側壁部216Bと、を有する。第一側壁部216Aと第二側壁部216Bとは、互いに同じ形状、構造等を有しているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、第一側壁部216A及び第二側壁部216Bを側壁部216として纏めて説明する。
【0059】
溶着部213の側壁部216は、口栓110と同じ基部117と、口栓110と同じ複数の溝118と、複数の支持部221と、を有する。
【0060】
複数の支持部221は、溝118内に形成されて、基部117を支持する部位である。基部117は、複数の溝118が形成されることで薄くなっているため、そのままでは座屈しやすい形状となっている。このため、支持部221は、基部117が座屈するのを抑制するために、溝118から基部117を支持している。複数の支持部221のそれぞれは、フランジ部214から注出部212とは反対側に向けて第一方向D1に延びており、最も注出部112側に位置する溝118の第一方向D1における全域と、当該溝118に隣接する溝118の第一方向D1における一部と、に形成されている。複数の支持部221の数は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第一側壁部16A及び第二側壁部16Bのそれぞれに、2本の支持部221が形成されている。
【0061】
このように構成される口栓210の傾きSは、上述した口栓10の傾きSと同様に求めることができるが、溶着部213の形状が溶着部13の形状と異なるため、溶着部213と圧子52との接触面積Aは、
図17に示すようになる。
図17は、他の変形例の口栓における接触面積を説明するための図であり、第三方向D3において圧子52を溶着部213に5.4mm押し込んだ状態を示している。
図17において、斜線のハッチングを付した領域の面積が、接触面積Aとなる。ここで、圧子52を溶着部213に押し込むと、圧子52は基部117と接触するが、溝118及び支持部221は基部117とともに沈み込んでいくため、圧子52は溝118及び支持部221と接触しない。このため、接触面積Aは、第三方向D3において圧子52の押込面53を溶着部213に投影した投影面のうちの、溝118及び支持部221に対応する領域を除いた面積となる。
【実施例0062】
次に、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
(積層体の作製)
以下の材料を使用して積層体を作製した。
・基材層…未延伸HDPEフィルム(厚さ:35μm、密度:0.948g/cm3、融点:135℃)
・接着剤層…ウレタン系接着剤
・第一のシール層…低温シール性LLDPE(密度:0.916g/cm3、MFR:4.0g/10分、融点:102℃)
・第二のシール層…密着防止VLDPE(密度:0.913g/cm3、MFR:10.0g/10分、融点:104℃)
【0064】
支持フィルムの表面上に第一のシール層(厚さ:80μm)を設けた。この第一のシール層の表面上に第二のシール層(厚さ:20μm)を設けることによって、二層構造のシーラント層を得た。このシーラント層と基材層とを接着剤層(厚さ:1~2μm)を介して貼り合わせることによって積層体を得た。なお、基材層とシーラント層と貼り合わせた後、上記支持フィルムは剥がした。
【0065】
(口栓の作製)
高密度ポリエチレン(HDPE)により実施例1,2及び比較例1の口栓を作製した。実施例1,2及び比較例1の口栓は、何れも、第一方向に延びる流路と、第一方向に延びて流路の一部を形成する注出部と、第一方向に延びて流路の他の一部を形成する溶着部と、を備え、溶着部は、第一方向と直交する第二方向の中央部から第二方向の端部に向かうに従い第一方向及び第二方向と直交する第三方向の厚みが薄くなる形状を有しているものとした。
【0066】
(融点の測定)
各口栓の融点を測定した。融点の測定では、示差走査熱量計(DSC8000,PerkinElmer社製)を用いて各口栓の示差走査熱量を2回測定した。1回目の示差走査熱量測定では、口栓の作製時の熱履歴が残っている可能性があることから、2回目の示差走査熱量測定で得られたDSC曲線の吸熱ピークの頂点の温度を、各口栓の融点とした。実施例1の口栓の融点は、127.63℃であった。実施例2の口栓の融点は、127.27℃であった。比較例1の口栓の融点は、129.69℃であった。
【0067】
(押込試験)
各口栓について、押込試験を行った。押込試験では、各口栓の溶着部を載置するための載置台を作製した。載置台には、各口栓の溶着部の外表面に沿った形状の載置面が形成されたものとした。そして、各口栓の溶着部を載置台の載置面に載置した次に、株式会社イマダ製のフォースゲージ EMXシリーズ EMX-500Nを用いて、金属製のΦ10mmの円盤形状の圧子を各口栓の溶着部に押し込み、その際の圧子の荷重F及び圧子の押込量Xを測定した。溶着部に対する圧子の押し込みは、押込速度20mm/min、最大押込量4.5mmの条件で、溶着部の第二方向における中央部に圧子を第三方向に押し込むことにより行った。圧子の押込面は、直径10mmの円形であった。
【0068】
(傾きSの算出)
図18は、実施例1,2及び比較例1における押込試験の測定結果をプロットしたグラフである。
図18に示すように、押込試験の測定結果を、圧子の荷重Fを溶着部と圧子との接触面積Aで割った値(F/A)を縦軸とし、圧子の押込量Xを横軸としたグラフにプロットした。接触面積Aは、第三方向において圧子を溶着部に5.4mm押し込んだ際に、溶着部と圧子とが最終的に接触する面の面積とした。押込試験の測定結果をプロットしたグラフにおいて、溶着部の降伏点を超えて傾きSが一定になってから押込量Xが0.5mm増加するまでの区間を、所定領域とした。この所定領域は、圧子の押込量Xが1.25mm~1.75mmとなる区間であった。そして、各口栓について、この所定領域において、圧子52の押込量Xに対する、圧子52の荷重Fを溶着部13と圧子52との接触面積Aで割った値(F/A)の傾きSを算出した。傾きSは、この所定領域における、荷重Fを接触面積Aで割った値(F/A)の変化量Δ(F/A)を押込量Xの変化量ΔXで割った値とした。算出結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
(サンプルの作製)
トタニ技研工業株式会社製の溶着機を用いたヒートシールにより、各口栓に一対の積層体を溶着することで、実施例1~5及び比較例1のサンプルを得た。このヒートシールでは、温度:150℃、時間:0.9sec、圧力:0.6MPaの条件で溶着部を予熱した後、温度:100℃、時間:10minの条件で恒温槽に保管した。その後、溶着部を一対の積層体の間に配置して、温度:135℃、時間:0.9sec、圧力:0.6MPaの条件で一次シールを行い、温度:130℃、時間:0.9sec、圧力:0.6MPaの条件で二次シールを行った。その後、温度:常温、時間:1.5秒の条件で冷却した。
【0071】
(ヒートシール評価)
実施例1~5及び比較例1のサンプルについて、ヒートシール評価を行った。ヒートシール評価では、口栓の近傍において積層体に穴が観察された場合を、Bと評価し、口栓の近傍において積層体に穴が観察されなかった場合を、Aと評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(考察)
表1に示すように、外観評価では、傾きSが1.70N/mm3より大きくなる比較例1は、口栓の近傍において積層体に穴が観察されたのに対し、傾きSが1.70N/mm3以下となる実施例1,2は、何れも口栓の近傍において積層体に穴が観察されなかった。この結果から、傾きSが1.70N/mm3以下であれば、口栓の近傍においてフィルムに穴が開くのを抑制することができるものと推察される。
1…口栓付きパウチ、2…パウチ本体、3…口栓、4…胴フィルム、4A…第一胴フィルム、4B…第二胴フィルム、5…折込フィルム、6…収容領域、7…基材層、8…シーラント層、10…口栓、11…流路、12…注出部、12a…ねじ部、13…溶着部、14…フランジ部、16…側壁部、16A…第一側壁部、16B…第二側壁部、17…基部、19…リブ、31…流路、32…注出部、33…溶着部、34…フランジ部、50…載置台、51…載置面、52…圧子、53…押込面、110…口栓、112…注出部、113…溶着部、114…フランジ部、116…側壁部、116A…第一側壁部、116B…第二側壁部、117…基部、118…溝、210…口栓、212…注出部、213…溶着部、214…フランジ部、216…側壁部、216A…第一側壁部、216B…第二側壁部、221…支持部、D1…第一方向、D2…第二方向、D3…第三方向。