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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019718
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】アングル型コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/38 20110101AFI20250131BHJP
   H01R 13/41 20060101ALI20250131BHJP
   H01R 13/6474 20110101ALI20250131BHJP
【FI】
H01R24/38
H01R13/41
H01R13/6474
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123475
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】平野 智之
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FB02
5E021FC21
5E021FC23
5E021FC32
5E021LA09
5E021LA15
5E087EE08
5E087FF18
5E087GG06
5E087JJ09
5E087MM04
5E087RR02
5E087RR25
5E223AB60
5E223AC23
5E223BA12
5E223BA17
5E223CA13
5E223CD01
5E223CD15
5E223DB09
5E223DB13
5E223DB33
5E223DB36
5E223GA08
5E223GA11
5E223GA13
5E223GA14
5E223GA32
5E223GA44
5E223GA62
5E223GA74
(57)【要約】
【課題】特性インピーダンスを調整して信号伝送特性を向上させながらも容易に組み立てることができるアングル型コネクタを提供する。
【解決手段】L形状に打ち抜かれた金属板からなるコンタクト12が、嵌合軸Cに沿って直線状に延び且つ内部インシュレータ13に圧入される圧入部12Aと、圧入部12Aの先端から嵌合軸Cに沿って直線状に延びる接点部12Bと、圧入部12Aの基端から嵌合軸Cに対して交差する交差方向に沿って延びるリード部12Cを有し、リード部12Cの幅は、接点部12Bの幅および圧入部12Aの幅よりも広く、リード部12Cは、嵌合軸C上に位置し且つ接点部12Bとは反対方向を向いた圧入力受け面12Eを有し、コンタクト12は、嵌合軸Cから嵌合軸Cに直交する方向に外れた位置においてリード部12Cの一部が嵌合軸Cに沿った方向に切り欠かれたインピーダンス調整部12Fを有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合軸に沿って相手側コネクタに嵌合するアングル型コネクタであって、
L形状に打ち抜かれた金属板からなる少なくとも1つのコンタクトと、
前記少なくとも1つのコンタクトを保持する絶縁性のハウジングと、
前記ハウジングに保持され且つ前記少なくとも1つのコンタクトを囲む導電性のシェルと
を備え、
前記少なくとも1つのコンタクトは、それぞれ、
前記嵌合軸に沿って直線状に延び且つ前記ハウジングに圧入される圧入部と、
前記圧入部の先端から前記嵌合軸に沿って直線状に延び且つ前記相手側コネクタとの嵌合時に前記相手側コネクタの相手側コンタクトに接続される接点部と、
前記圧入部の基端から前記嵌合軸に対して交差する交差方向に沿って延びるリード部と、
前記交差方向における前記リード部の先端から突出する実装部と
を有し、
前記交差方向に直交する方向における前記リード部の幅は、前記嵌合軸に直交する方向における前記接点部の幅および前記圧入部の幅よりも広く、
前記リード部は、前記嵌合軸上に位置し且つ前記接点部とは反対方向を向いた圧入力受け面を有し、
前記少なくとも1つのコンタクトは、それぞれ、前記圧入力受け面と前記実装部との間に配置され且つ前記嵌合軸から前記嵌合軸に直交する方向に外れた位置において前記リード部の一部が前記嵌合軸に沿った方向に切り欠かれたインピーダンス調整部を有するアングル型コネクタ。
【請求項2】
前記インピーダンス調整部は、前記接点部とは反対方向を向いた前記リード部の端面の前記交差方向の中間部分が切り欠かれたものである請求項1に記載のアングル型コネクタ。
【請求項3】
前記圧入力受け面は、前記嵌合軸に対して直交している請求項1に記載のアングル型コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、内部インシュレータと外部インシュレータを含み、
前記内部インシュレータは、前記少なくとも1つのコンタクトの前記圧入部および前記リード部を囲み、
前記シェルは、前記内部インシュレータを囲み、
前記外部インシュレータは、前記シェルを囲む請求項1~3のいずれか一項に記載のアングル型コネクタ。
【請求項5】
前記内部インシュレータは、前記嵌合軸に沿って前記内部インシュレータを貫通する挿入孔と、前記挿入孔に連通し且つ前記少なくとも1つのコンタクトの前記接点部とは反対方向を向いた凹状のリード部収容部を有し、
前記少なくとも1つのコンタクトの前記リード部は、それぞれ、前記内部インシュレータの前記リード部収容部内に収容されている請求項4に記載のアングル型コネクタ。
【請求項6】
前記シェルは、前記コンタクトの前記接点部および前記圧入部を囲む第1シェルと、前記少なくとも1つのコンタクトの前記リード部を囲み且つ前記第1シェルに電気的に接続された第2シェルを含む請求項4に記載のアングル型コネクタ。
【請求項7】
前記交差方向は、前記嵌合軸に直交する方向である請求項4に記載のアングル型コネクタ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのコンタクトとして、1つのコンタクトを備え、
同軸コネクタとして用いられる請求項4に記載のアングル型コネクタ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのコンタクトとして、差動信号を伝送するための一対のコンタクトを備え、
差動信号コネクタとして用いられる請求項4に記載のアングル型コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アングル型コネクタに係り、特に、嵌合軸に沿って相手側コネクタに嵌合するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に実装されるコネクタであって、基板の実装面に平行な嵌合軸に沿って相手側コネクタと嵌合するコネクタが使用されている。例えば、特許文献1には、図13に示されるように、それぞれ屈曲された上側コンタクト1および下側コンタクト2を有する、いわゆるアングル型コネクタが開示されている。上側コンタクト1および下側コンタクト2は、それぞれ、絶縁性の筒状のハウジング3および4に収容され、さらに、ハウジング3および4が、導電性の筒状のシェル5および6に収容されている。また、アングル型コネクタは、基板7に実装されている。
【0003】
図14に示されるように、上側コンタクト1は、ほぼL形状を有する金属板により形成され、相手側コネクタとの嵌合方向に直線状に延びる水平延伸部1Aと、水平延伸部1Aの先端から嵌合方向に沿って前方に直線状に延びる接点部1Bと、水平延伸部1Aの後端から下方に直線状に延びる下方延伸部1Cと、下方延伸部1Cの下端から下方に突出し且つ基板7の対応する回路パターンに接続される実装部1Dを有している。
下方延伸部1Cがハウジング3に突き当たるまで水平延伸部1Aをハウジング3の挿通孔3Aに圧入することにより、上側コンタクト1はハウジング3に保持される。
【0004】
上側コンタクト1と同様に、下側コンタクト2も、水平延伸部2Aと接点部2Bと下方延伸部2Cと実装部2Dを有し、下方延伸部2Cがハウジング4に突き当たるまで水平延伸部2Aをハウジング4の挿通孔4Aに圧入することにより、下側コンタクト2はハウジング4に保持される。
【0005】
さらに、特許文献1に記載されたコネクタにおいては、上側コンタクト1の下方延伸部1Cおよび下側コンタクト2の下方延伸部2Cに、それぞれ、後方に向かって膨出する膨出部1Eおよび2Eを形成することにより、コネクタの特性インピーダンスの調整を行っている。コネクタの特性インピーダンスは、膨出部1Eおよび2Eの膨出長さを変化させることにより調整することができ、後方に向かう膨出部1Eおよび2Eの膨出長さを大きくすると、特性インピーダンスが小さくなり、逆に、膨出部1Eおよび2Eの膨出長さを小さくすると、特性インピーダンスが大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2023-77187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コネクタの特性インピーダンスを調整するために形成された膨出部1Eおよび2Eが、ハウジング3および4の挿通孔3Aおよび4Aに圧入される水平延伸部1Aおよび2Aよりも実装部1Dおよび2Dに向かって下方にずれた位置に存在するため、例えば、ツールを用いて上側コンタクト1および下側コンタクト2をハウジング3および4に対して後方から前方に押し込もうとしても、上側コンタクト1および下側コンタクト2の姿勢が安定しなくなり、上側コンタクト1および下側コンタクト2を圧入し難くなる。
すなわち、特許文献1のコネクタでは、特性インピーダンスの調整と組み立てやすさを両立させることができないという問題がある。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、特性インピーダンスの調整と組み立ての容易さを両立させることができるアングル型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るアングル型コネクタは、
嵌合軸に沿って相手側コネクタに嵌合するアングル型同軸コネクタであって、
L形状に打ち抜かれた金属板からなる少なくとも1つのコンタクトと、
少なくとも1つのコンタクトを保持する絶縁性のハウジングと、
ハウジングに保持され且つ少なくとも1つのコンタクトを囲む導電性のシェルと
を備え、
少なくとも1つのコンタクトは、それぞれ、
嵌合軸に沿って直線状に延び且つハウジングに圧入される圧入部と、
圧入部の先端から嵌合軸に沿って直線状に延び且つ相手側コネクタとの嵌合時に相手側コネクタの相手側コンタクトに接続される接点部と、
圧入部の基端から嵌合軸に対して交差する交差方向に沿って延びるリード部と、
交差方向におけるリード部の先端から突出する実装部と
を有し、
交差方向に直交する方向におけるリード部の幅は、嵌合軸に直交する方向における接点部の幅および圧入部の幅よりも広く、
リード部は、嵌合軸上に位置し且つ接点部とは反対方向を向いた圧入力受け面を有し、
少なくとも1つのコンタクトは、それぞれ、圧入力受け面と実装部との間に配置され且つ嵌合軸から嵌合軸に直交する方向に外れた位置においてリード部の一部が嵌合軸に沿った方向に切り欠かれたインピーダンス調整部を有するものである。
【0010】
インピーダンス調整部は、接点部とは反対方向を向いたリード部の端面の交差方向の中間部分が切り欠かれたものであることが好ましい。
また、圧入力受け面は、嵌合軸に直交する方向に延びていることが好ましい。
ハウジングは、内部インシュレータと外部インシュレータを含み、
内部インシュレータは、少なくとも1つのコンタクトの圧入部およびリード部を囲み、
シェルは、内部インシュレータを囲み、
外部インシュレータは、シェルを囲むことが好ましい。
【0011】
内部インシュレータは、嵌合軸に沿って内部インシュレータを貫通する挿入孔と、挿入孔に連通し且つ少なくとも1つのコンタクトの接点部とは反対方向を向いた凹状のリード部収容部を有し、少なくとも1つのコンタクトのリード部は、それぞれ、内部インシュレータのリード部収容部内に収容されていることが好ましい。
シェルは、少なくとも1つのコンタクトの接点部および圧入部を囲む第1シェルと、コンタクトのリード部を囲み且つ第1シェルに電気的に接続された第2シェルを含むことが好ましい。
交差方向は、嵌合軸に直交する方向とすることができる。
【0012】
少なくとも1つのコンタクトとして、1つのコンタクトを備え、同軸コネクタとして用いられるように構成することができる。
あるいは、少なくとも1つのコンタクトとして、差動信号を伝送するための一対のコンタクトを備え、差動信号コネクタとして用いられるように構成することもできる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、L形状に打ち抜かれた金属板からなる少なくとも1つのコンタクトが、それぞれ、嵌合軸に沿って直線状に延び且つハウジングに圧入される圧入部と、圧入部の先端から嵌合軸に沿って直線状に延びる接点部と、圧入部の基端から嵌合軸に対して交差する交差方向に沿って延びるリード部を有し、交差方向に直交する方向におけるリード部の幅は、嵌合軸に直交する方向における接点部の幅および圧入部の幅よりも広く、リード部は、嵌合軸上に位置し且つ接点部とは反対方向を向いた圧入力受け面を有し、少なくとも1つのコンタクトは、それぞれ、圧入力受け面と実装部との間に配置され且つ嵌合軸から嵌合軸に直交する方向に外れた位置においてリード部の一部が嵌合軸に沿った方向に切り欠かれたインピーダンス調整部を有するので、特性インピーダンスの調整と組み立ての容易さを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】基板に実装された実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタを示す正面図である。
図2】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタの組立図である。
図3】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタに用いられるコンタクトを示す斜視図である。
図4】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタに用いられるコンタクトを示す側面図である。
図5】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタに用いられる内部インシュレータを示す斜視図である。
図6】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタに用いられる内部インシュレータを示す断面図である。
図7】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタに用いられる第1シェルを示す斜視図である。
図8】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタに用いられる第2シェルを示す斜視図である。
図9】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタに用いられる外部インシュレータを示す斜視図である。
図10】実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタを斜め下方から見た斜視図である。
図11図1のA-A線断面図である。
図12】実施の形態2に係るアングル型差動信号コネクタの組立図である。
図13】従来のアングル型コネクタを示す断面図である。
図14】従来のアングル型コネクタに用いられる上側コンタクトおよび下側コンタクトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、基板21に実装された実施の形態1に係るアングル型同軸コネクタ11を示す。アングル型同軸コネクタ11は、嵌合軸Cに沿って図示しない相手側コネクタに嵌合するものであり、1つのコンタクト12と、コンタクト12を囲む内部インシュレータ13と、内部インシュレータ13を囲む導電性のシェル14と、シェル14を囲む外部インシュレータ15を有している。
【0016】
外部インシュレータ15は、アングル型同軸コネクタ11が相手側コネクタに嵌合する際に相手側コネクタの一部が挿入されて収容される凹状の相手側コネクタ収容部15Aを有しており、コンタクト12と内部インシュレータ13とシェル14のそれぞれの一部が相手側コネクタ収容部15A内に露出している。
外部インシュレータ15が基板21の表面上に配置された状態で、アングル型同軸コネクタ11は、基板21に実装されている。
【0017】
ここで、便宜上、基板21の表面がXY面に沿って延び、図示しない相手側コネクタの一部が外部インシュレータ15の相手側コネクタ収容部15Aに挿入される方向を+Y方向、基板21の表面に垂直な方向をZ方向と呼ぶことにする。Y方向は、嵌合軸Cが延びる方向となる。
【0018】
図2に、アングル型同軸コネクタ11の組立図を示す。嵌合軸Cに沿って、外部インシュレータ15の+Y方向側に第1シェル16が配置され、第1シェル16の+Y方向側に内部インシュレータ13が配置され、内部インシュレータ13の+Y方向側にコンタクト12が配置され、コンタクト12の+Y方向側に第2シェル17が配置されている。
内部インシュレータ13および外部インシュレータ15により、コンタクト12を保持する絶縁性のハウジング18が構成され、第1シェル16および第2シェル17により、ハウジング18に保持され且つコンタクト12を囲む導電性のシェル14が構成されている。
【0019】
図3に示されるように、コンタクト12は、概ねL形状に打ち抜かれた1枚の金属板から形成されており、嵌合軸Cに沿ってY方向に直線状に延びる圧入部12Aと、圧入部12Aの-Y方向の先端に接続されている接点部12Bと、圧入部12Aの+Y方向の基端に接続されているリード部12Cを有している。
【0020】
接点部12Bは、圧入部12Aの先端から嵌合軸Cに沿って-Y方向に直線状に延びる円柱形状を有している。
リード部12Cは、圧入部12Aの基端から嵌合軸Cに直交する-Z方向に向かって延びる平板形状を有している。
コンタクト12は、さらに、リード部12Cの-Z方向の先端から-Z方向に突出するピン形状の実装部12Dを有している。
【0021】
リード部12Cの+Z方向端部で且つ+Y方向端部には、嵌合軸C上に位置し且つ接点部12Bとは反対方向である+Y方向を向いた圧入力受け面12Eが形成されている。圧入力受け面12Eは、嵌合軸Cに対して直交するXZ面に沿って延びている。
【0022】
ここで、コンタクト12は、金属板をL形状に屈曲したものではなく、L形状に打ち抜かれた金属板から形成されている。従って、嵌合軸C上に位置する圧入力受け面12Eに嵌合軸Cに沿った圧入力を作用させることで、ハウジング18にコンタクト12を圧入して保持させることが可能となる。圧入力受け面12Eに嵌合軸Cに沿った圧入力を作用させるためには、圧入力受け面12Eは、嵌合軸Cに対して直交するXZ面に沿って延びることが望ましい。
【0023】
また、コンタクト12は、リード部12Cの圧入力受け面12Eと実装部12Dとの間に配置されたインピーダンス調整部12Fを有している。インピーダンス調整部12Fは、嵌合軸Cから嵌合軸Cに直交する-Z方向に外れた位置において、+Y方向を向いたリード部12Cの端面のZ方向の中間部分が-Y方向に向かって切り欠かれたものである。
【0024】
このように、圧入力受け面12Eとインピーダンス調整部12Fは、嵌合軸Cに直交するZ方向において、互いに異なる位置に配置されている。このため、嵌合軸Cに沿った圧入力を受けるための圧入力受け面12Eにおける形状の最適化と、特性インピーダンスを整合させるためのインピーダンス調整部12Fにおける形状の最適化を、互いに干渉されることなく行うことができる。
【0025】
図4に示されるように、リード部12Cが伸長するZ方向に直交するY方向におけるリード部12Cの幅W1は、嵌合軸Cに直交するZ方向における接点部12Bの幅W2および圧入部12Aの最大の幅W3よりも広く設定されている。
【0026】
図5に示されるように、内部インシュレータ13は、嵌合軸Cに沿って延びる筒状部13Aと、筒状部13Aの+Y方向部分から嵌合軸Cに直交する-Z方向に延びる直交延伸部13Bを有している。
図6に示されるように、筒状部13Aには、嵌合軸Cに沿って内部インシュレータ13を貫通し且つコンタクト12の圧入部12Aが挿入される挿入孔13Cが形成されている。挿入孔13Cは、図4に示されるコンタクト12の圧入部12Aの最大の幅W3よりもわずかに狭いZ方向の幅を有するものとする。また、筒状部13Aの+Y方向部分および直交延伸部13Bには、挿入孔13Cに連通し且つ+Y方向および-Z方向に向かって開放された凹状のリード部収容部13Dが形成されている。
【0027】
図7に示されるように、第1シェル16は、屈曲された1枚の金属板から形成されており、嵌合軸Cに沿って延びる円筒部16Aと、円筒部16Aの+Y方向端部からXZ面に沿って-Z方向に延びる前板部16Bを有している。前板部16Bの+X方向端部は、-Y方向に屈曲され、YZ面に沿って-Y方向に延びる固定部16Cを形成している。図5には示されていないが、前板部16Bの-X方向端部も、+X方向端部と同様に、-Y方向に屈曲され、YZ面に沿って-Y方向に延びる固定部16Cを形成している。
【0028】
図8に示されるように、第2シェル17は、屈曲された1枚の金属板から形成されており、嵌合軸Cを中心とする円筒の一部を形成する湾曲部17Aと、湾曲部17Aの+Y方向端部を覆うようにXZ面に沿って延びる後板部17Bと、湾曲部17Aの+X方向端部および-X方向端部からそれぞれYZ面に沿って-Z方向に延びる一対の側板部17Cを有している。
【0029】
湾曲部17Aの-Y方向端部には、それぞれ-Y方向に延びる複数のバネ接点部17Dが突出形成され、一対の側板部17Cの-Z方向端部には、それぞれ、-Z方向に突出する複数のシェル実装部17Eが形成されている。
さらに、後板部17Bの+X方向端部および-X方向端部は、それぞれ、-Y方向に屈曲され、YZ面に沿って-Y方向に延びる固定部17Fを形成している。同様に、一対の側板部17Cの-Y方向端部は、それぞれ、YZ面に沿って-Y方向に突出する固定部17Gを形成している。
【0030】
図9に示されるように、外部インシュレータ15は、直方体状の外形を有するハウジング本体部15Bと、ハウジング本体部15Bの+Y方向端部に接続された後側カバー部15Cを有している。ハウジング本体部15Bの内部には、-Y方向に向かって開放された凹状の相手側コネクタ収容部15Aが形成されている。後側カバー部15Cの内部には、相手側コネクタ収容部15Aに連通し且つ+Y方向および-Z方向に向かって開放された凹状の第2シェル収容部15Dが形成されている。
【0031】
アングル型同軸コネクタ11を組み立てる際には、まず、コンタクト12を内部インシュレータ13に向けて+Y方向から-Y方向に移動させることにより、コンタクト12が内部インシュレータ13に保持される。このとき、図4に示されるコンタクト12の接点部12Bおよび圧入部12Aが、嵌合軸Cに沿って内部インシュレータ13の挿入孔13Cに挿入され、例えば、図示しないツールを用いて、嵌合軸C上に位置するコンタクト12の圧入力受け面12Eに-Y方向を向いた力を作用させることにより、圧入部12Aが挿入孔13Cに圧入される。
【0032】
ここで、コンタクト12のインピーダンス調整部12Fは、上述した特許文献1の上側コンタクト1および下側コンタクト2の膨出部1Eおよび2Eのように、+Y方向を向いたリード部12Cの端面から+Y方向に膨出するものではなく、+Y方向を向いたリード部12Cの端面のZ方向の中間部分が-Y方向に向かって切り欠かれることにより形成されている。このため、インピーダンス調整部12Fに干渉されることなく、図示しないツールを用いて、圧入力受け面12Eに-Y方向を向いた力を作用させることにより、圧入部12Aを挿入孔13Cに圧入することが可能となる。
【0033】
また、コンタクト12の圧入力受け面12Eは、嵌合軸C上に位置し且つ嵌合軸Cに対して直交するXZ面に沿って延びているため、圧入力受け面12Eに-Y方向の力を作用させることで、安定した圧入を行うことが可能となる。
図4に示されるリード部12Cの-Y方向端部が、図6に示される内部インシュレータ13のリード部収容部13D-Y方向端部に位置する直交延伸部13Bの内壁面に突き当たったところで、挿入孔13Cに対する圧入部12Aの圧入作業が完了する。コンタクト12の接点部12Bは、内部インシュレータ13の挿入孔13Cから-Y方向に突出する状態となる。
【0034】
次に、第1シェル16を外部インシュレータ15に向けて+Y方向から-Y方向に移動させ、図7に示される第1シェル16の固定部16Cを外部インシュレータ15内部の図示しない被固定部に圧入することにより、第1シェル16が外部インシュレータ15に保持される。
【0035】
このようにして外部インシュレータ15に保持された第1シェル16に対して、コンタクト12が保持された内部インシュレータ13を+Y方向から-Y方向に移動させることにより、図5に示される内部インシュレータ13の筒状部13Aが図7に示される第1シェル16の円筒部16Aに挿入され、内部インシュレータ13の直交延伸部13Bが第1シェル16の前板部16Bの+Y方向側に位置した状態となる。
【0036】
さらに、第1シェル16に対して、第2シェル17を+Y方向から-Y方向に移動させることにより、内部インシュレータ13の筒状部13Aの+Y方向部分および直交延伸部13Bと第1シェル16の+Y方向端部が第2シェル17により覆われる。第2シェル17は、一対の固定部17Fおよび一対の固定部17Gを、それぞれ、外部インシュレータ15内部の図示しない被固定部に圧入することにより、外部インシュレータ15に保持され、これにより、アングル型同軸コネクタ11の組み立てが完了する。
【0037】
このようにして組み立てられたアングル型同軸コネクタ11を斜め下方から見た斜視図を図10に示す。コンタクト12のリード部12Cが内部インシュレータ13のリード部収容部13D内に収容され、第1シェル16の前板部16Bと第2シェル17の後板部17Bおよび一対の側板部17Cにより囲まれている。
また、コンタクト12の実装部12Dと第2シェル17の複数のシェル実装部17Eが、外部インシュレータ15から-Z方向に突出している。
【0038】
基板21に実装されたアングル型同軸コネクタ11の断面図を図11に示す。第1シェル16の円筒部16Aが、外部インシュレータ15のハウジング本体部15Bと後側カバー部15Cの境界に配置され且つXZ面に沿う隔壁部15Eに形成された貫通孔15Fを通って、後側カバー部15Cの第2シェル収容部15Dからハウジング本体部15Bの相手側コネクタ収容部15Aに延びている。
【0039】
コンタクト12は、圧入部12Aが内部インシュレータ13の挿入孔13Cに挿入され且つリード部12Cが内部インシュレータ13のリード部収容部13Dに収容された状態で、第1シェル16の円筒部16Aおよび前板部16Bと第2シェル17の湾曲部17Aおよび後板部17Bと図10に示される一対の側板部17Cにより囲まれている。
第2シェル17は、複数のバネ接点部17Dが、第1シェル16の円筒部16Aの外周面に弾性的に接触することで、第1シェル16に電気的に接続されている。
【0040】
基板21は、コンタクト12の実装部12Dに対応して、基板21をZ方向に貫通し且つ内壁面にメッキ層等の導電層が形成されたスルーホール21Aを有しており、コンタクト12の実装部12Dは、スルーホール21Aに通されてハンダ付けされることにより、スルーホール21Aに接続されている基板21の図示しない配線層に電気的に接続される。
【0041】
同様に、基板21は、第2シェル17の複数のシェル実装部17Eに対応する複数のスルーホールを有しており、それぞれのシェル実装部17Eは、基板21の対応するスルーホールに通されてハンダ付けされることにより、スルーホールに接続されている基板21の図示しないグランド層に電気的に接続される。
【0042】
コンタクト12のリード部12Cは、+Y方向を向いたリード部12Cの端面のZ方向の中間部分が切り欠かれることにより構成されたインピーダンス調整部12Fを有している。このため、インピーダンス調整部12Fにおける切り欠きのY方向の深さおよびZ方向の長さを選択することにより、リード部12Cにおける特性インピーダンスを調整することができ、信号伝送特性を向上させて、安定した高速伝送を行うことが可能となる。
【0043】
コンタクト12は、L形状に打ち抜かれた金属板から形成されており、嵌合軸Cから-Z方向に外れた位置におけるリード部12Cの+Y方向を向いた端面が-Y方向に向かって切り欠かれることにより形成されたインピーダンス調整部12Fを有している。このため、インピーダンス調整部12Fに干渉されることなく、嵌合軸C上に位置する圧入力受け面12Eに嵌合軸Cに沿った圧入力を作用させて、圧入部12Aを内部インシュレータ13の挿入孔13Cに圧入することができ、アングル型同軸コネクタ11を容易に組み立てることが可能となる。
【0044】
また、コンタクト12の圧入力受け面12Eとインピーダンス調整部12Fは、嵌合軸Cに直交するZ方向に沿って互いに異なる位置に配置されているため、圧入力受け面12Eにおける形状の最適化とインピーダンス調整部12Fにおける形状の最適化を、互いに干渉されることなく行うことができる。
すなわち、アングル型同軸コネクタ11の特性インピーダンスの調整と組み立ての容易さを両立させることが可能となる。
【0045】
上記の実施の形態1では、内部インシュレータ13を囲むシェル14が、第1シェル16および第2シェル17の2つの部品により構成されているが、これに限るものではなく、単一部品からなるシェルにより内部インシュレータ13を囲むこともできる。
ただし、実施の形態1のように、第1シェル16および第2シェル17によりシェル14を構成すれば、アングル型同軸コネクタ11を効率よく組み立てることができる。
【0046】
同様に、上記の実施の形態1では、コンタクト12を保持するハウジング18が、内部インシュレータ13および外部インシュレータ15の2つの部品により構成されているが、これに限るものではなく、単一部品からなるハウジングによりコンタクト12を保持することもできる。
ただし、実施の形態1のように、内部インシュレータ13および外部インシュレータ15によりハウジング18を構成すれば、アングル型同軸コネクタ11を効率よく組み立てることができる。
【0047】
なお、上記の実施の形態1では、コンタクト12のリード部12Cが、圧入部12Aの基端から嵌合軸Cに直交する-Z方向に向かって延びているが、嵌合軸Cに直交する方向に限らず、リード部12Cは、嵌合軸Cに交差する方向に延びていればよい。
【0048】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、本発明を同軸コネクタに適用することにより、アングル型同軸コネクタ11を構成しているが、これに限るものではない。
図12に、実施の形態2に係るアングル型差動信号コネクタ31の組立図を示す。嵌合軸Cに沿って、外部インシュレータ35の+Y方向側に第1シェル36が配置され、第1シェル36の+Y方向側に内部インシュレータ33が配置され、内部インシュレータ33の+Y方向側に一対のコンタクト32が配置され、一対のコンタクト32の+Y方向側に第2シェル37が配置されている。
【0049】
内部インシュレータ33および外部インシュレータ35により、一対のコンタクト32を保持する絶縁性のハウジング38が構成され、第1シェル36および第2シェル37により、ハウジング38に保持され且つ一対のコンタクト32を囲む導電性のシェル34が構成されている。
一対のコンタクト32は、差動信号を伝送するためのものであり、互いにX方向に所定の間隔を隔てた状態で内部インシュレータ33に保持されるように構成されている。
【0050】
一対のコンタクト32は、それぞれ、図3および図4に示される実施の形態1におけるコンタクト12と同様の構成を有している。すなわち、コンタクト32は、概ねL形状に打ち抜かれた1枚の金属板から形成されており、嵌合軸Cに沿ってY方向に直線状に延びる圧入部と、圧入部の-Y方向の先端に接続されている接点部と、圧入部の+Y方向の基端に接続されているリード部と、リード部の-Z方向の先端から-Z方向に突出する実装部を有している。
【0051】
さらに、実施の形態1におけるコンタクト12と同様に、コンタクト32のリード部の+Y方向端部には、嵌合軸C上に位置し且つ+Y方向を向いた圧入力受け面と、嵌合軸Cから-Z方向に外れた位置で且つ-Y方向に向かって切り欠かれたインピーダンス調整部が形成されている。
【0052】
アングル型差動信号コネクタ31を組み立てる際には、実施の形態1のアングル型同軸コネクタ11と同様に、まず、一対のコンタクト32が内部インシュレータ33に保持される。次に、第1シェル36が外部インシュレータ35に保持され、一対のコンタクト32が保持された内部インシュレータ33を、第1シェル36と第2シェル37で覆うことにより、アングル型差動信号コネクタ31が組み立てられる。
【0053】
ここで、一対のコンタクト32は、それぞれ、嵌合軸Cから-Z方向に外れた位置において、リード部の+Y方向端部が-Y方向に向かって切り欠かれたインピーダンス調整部を有しているため、インピーダンス調整部に干渉されることなく、嵌合軸C上に位置する圧入力受け面に嵌合軸Cに沿った力を作用させて、コンタクト32を内部インシュレータ33に圧入保持させることができ、アングル型差動信号コネクタ31を容易に組み立てることが可能となる。
【0054】
このように、本発明を差動信号コネクタに適用することにより、特性インピーダンスの調整と組み立ての容易さを両立させることが可能なアングル型差動信号コネクタ31が構成されることとなる。
【0055】
なお、実施の形態2においても、内部インシュレータ33を囲むシェル34が、第1シェル36および第2シェル37の2つの部品により構成されているが、これに限るものではなく、単一部品からなるシェルにより内部インシュレータ33を囲むこともできる。
また、一対のコンタクト32を保持するハウジング38が、内部インシュレータ33および外部インシュレータ35の2つの部品により構成されているが、これに限るものではなく、単一部品からなるハウジングにより一対のコンタクト32を保持することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 上側コンタクト、1A,2A 水平延伸部、1B,2B 接点部、1C,2C 下方延伸部、1D,2D 実装部、1E,2E 膨出部、2 下側コンタクト、3,4 ハウジング、3A,4A 挿通孔、5,6 シェル、11 アングル型同軸コネクタ、12、32 コンタクト、12A 圧入部、12B 接点部、12C リード部、12D 実装部、12E 圧入力受け面、12F インピーダンス調整部、13、33 内部インシュレータ、13A 筒状部、13B 直交延伸部、13C 挿入孔、13D リード部収容部、14、34 シェル、15、35 外部インシュレータ、15A 相手側コネクタ収容部、15B ハウジング本体部、15C 後側カバー部、15D 第2シェル収容部、15E 隔壁部、15F 貫通孔、16、36 第1シェル、16A 円筒部、16B 前板部、16C 固定部、17、37 第2シェル、17A 湾曲部、17B 後板部、17C 側板部、17D バネ接点部、17E シェル実装部、17F,17G 固定部、18、38 ハウジング、21 基板、21A スルーホール、31 アングル型差動信号コネクタ、C 嵌合軸、W1,W2,W3 幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14