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特開2025-19757グラウト材充填管理システム及びグラウト材充填管理方法
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  • 特開-グラウト材充填管理システム及びグラウト材充填管理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019757
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】グラウト材充填管理システム及びグラウト材充填管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123557
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江守 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 弘毅
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA06
2D040AC04
2D040BB05
2D040FA09
(57)【要約】
【課題】管部材の内部に対するグラウト材の充填高を推定するとともに、管部材の内部に存在する海水を排水して、グラウト材充填高さを確保できるように管理する。
【解決手段】グラウト材gの充填作業中に、管部材1の内部における水位、管部材1の外部における水位(潮位)、及び、管部材1の下端における圧力をそれぞれ検出し、これらの検出値を用いて管部材1の内部におけるグラウト材gの充填高をリアルタイムに推定する。具体的には、水の密度をγwとし、グラウト材gの密度をγGとし、管部材1の内部における静水圧をP0とし、グラウト材gの充填作業中に圧力センサで得られる圧力をP1としたとき、グラウト材gの上端面から圧力センサ111の位置までの距離x(つまり管部材1内部におけるグラウト材の充填高x)は、x=(P1-P0)/(γG-γw)によって算出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地盤に挿入された管部材の内部に配置されたトレミー管から、前記管部材の内部にグラウト材を充填するとともに、前記管部材の下端と前記水底地盤との間隙を介して前記管部材の外周面及び前記水底地盤の間隙にグラウト材を充填するグラウト材充填管理システムであって、
グラウト材の充填作業中に、前記管部材の内部におけるグラウト材の上端面の高さをリアルタイムに推定するグラウト材充填管理システム。
【請求項2】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力と、前記管部材の内部における水面の位置と、前記管部材の外部における水面の位置とをそれぞれ検出する検出装置を備え、
前記管部材の内部における水面と前記管部材の外部における水面との差をhとし、水底面から前記管部材の外部における水面までの距離をH1とし、水底面から前記管部材に充填されたグラウト材のまでの距離をH2とし、グラウト材の上端面から前記検出装置までの距離をxとし、水の密度をγwとし、グラウト材の密度をγGとし、前記管部材の内部における静水圧をP0とし、グラウト材の充填作業中に前記検出装置で得られる圧力をP1とした場合に、
x=(P1-P0)/(γG-γw)
によって算出される、前記管部材に充填されたグラウト材の上端の位置xをリアルタイムに推定する
請求項1記載のグラウト材充填管理システム。
【請求項3】
前記管部材の内部から排水を行う排水装置を備え、
前記圧力P1が
P1=H1×γw+H2×γG
となるまで、前記管部材の内部、並びに、前記管部材の外周面及び前記水底地盤の間隙に対してグラウト材を充填し、
前記管部材の内部から排水を行う排水速度をvとした場合に、
vG=(γw/γG)×v
によって算出される充填速度vGでグラウト材を充填し、
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P2が
P2=H1×γw+H2×γG
となるまで、前記管部材の内部における排水およびグラウト材の追加充填を行う
請求項1記載のグラウト材充填管理システム。
【請求項4】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで前記管部材の内部における排水およびグラウト材の追加充填を行うことに加えて、又は、代えて、
Vw=π×(d/2)^2×hにより算出される体積Vwの水を前記管部材の内部から排水する
請求項3記載のグラウト材充填管理システム。
【請求項5】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力を検出する検出装置は、
前記管部材の下端部、又は、前記トレミー管の下端部に設けられている
請求項1記載のグラウト材充填管理システム。
【請求項6】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力を検出する検出装置は、
前記水底地盤に対する前記管部材の挿入長の下から1/3以下の位置に設けられている
請求項1記載のグラウト材充填管理システム。
【請求項7】
水底地盤に挿入された管部材の内部に配置されたトレミー管から、前記管部材の内部にグラウト材を充填するとともに、前記管部材の下端と前記水底地盤との間隙を介して前記管部材の外周面及び前記水底地盤の間隙にグラウト材を充填するグラウト材充填方法であって、
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力と、前記管部材の内部における水面の位置と、前記管部材の外部における水面の位置とをそれぞれ検出し、
前記管部材の内部における水面と前記管部材の外部における水面との差をhとし、水底面から前記管部材の外部における水面までの距離をH1とし、水底面から前記管部材に充填されたグラウト材の圧力を検出する検出装置までの距離をH2とし、グラウト材の上端面から前記検出装置までの距離をxとし、水の密度をγwとし、グラウト材の密度をγGとし、前記管部材内部における静水圧をP0とし、グラウト材の充填作業中に前記検出装置で得られる圧力をP1とした場合に、
第1の行程において、
x=(P1-P0)/(γG-γw)
によって算出される、前記管部材に充填されたグラウト材の上端の位置xをリアルタイムに推定し、
第2の行程において、
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P1が、
P1=H1×γw+H2×γG
となるまで、前記管部材の内部、並びに、前記管部材の外周面及び前記水底地盤の間隙に対してグラウト材を充填し、
第3の行程において、
前記管部材の内部から排水を行う排水速度をvとした場合に、
vG=(γw/γG)×v
によって算出される充填速度vGでグラウト材を充填し、
第4の行程において、
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P2が
P2=H1×γw+H2×γG
となるまで前記管部材の内部における排水およびグラウト材の追加充填を行う、グラウト材充填管理方法。
【請求項8】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで前記管部材の内部から排水を行うことに加えて、又は、代えて、
Vw=π×(d/2)^2×hにより算出される体積Vwの水を前記管部材の内部における排水およびグラウト材の追加充填を行う
請求項7記載のグラウト材充填管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地盤に挿入された管部材の内部に対するグラウト材の充填を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタル等の各種グラウト材を水中構造物に充填する場合、その充填量の管理が重要となる。例えば特許文献1には、圧送ポンプとケーブルシースのグラウト注入口との間に、グラウト注入圧測定用の圧力センサ、注入グラウトの単位時間当たりの流量を測定する流量計及びその時間経過に伴う積算量を測定する積算流量計を設け、これら圧力センサ、流量計及び積算流量計から時々刻々出力される測定データの時間的推移をディスプレイに表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-133395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図5は、従来において水底地盤Gに挿入された鋼管杭等の管部材1の内部にグラウト材gを充填するときの課題を説明する図である。図5において、トレミー管(図示略)から管部材1の内部に対してグラウト材gが充填されると、管部材1の下端と水底地盤Gとの間隙W2を介して管部材1の外周面及び水底地盤の間隙W1(アニュラースペースという)に対してもグラウト材gが充填される。グラウト材gの充填前の時点において管部材1の内部には海水が存在しているから、グラウト材gの充填に伴って、管部材1の内部の水位S2は、管部材1の外部の水位S1(潮位)より高い位置となる。
【0005】
て管部材1の内外水頭差によって、トレミー管から充填されたグラウト材gのうち一定量が、矢印Aに示すように、アニュラースペースの上端から水中に流出することになる。この結果、目標量のグラウト材gの充填が完了したとしても、管部材1の内部におけるグラウト材gの天端高は、管部材1の外部(アニュラースペース)におけるグラウト材gの天端高よりも低くなり、管部材1の内部に対するグラウト材gの充填量が不十分となる。これにより、例えば管部材1の内部に充填されたグラウト材gの出来形が不足し、設計上の引抜き抵抗力を満足しない、管部材1の外部に大量のグラウト材gを流出させてしまう、グラウト材gの充填完了を潜水士による目視確認とした場合、管部材1の外部に漏れ出たグラウト材gによる濁りを原因とした視認性の低下や潜水時間の長時間化が発生する、といった諸問題が懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、管部材の内部に対するグラウト材の充填高を推定するとともに、管部材の内部に存在する海水を排水して、グラウト材充填高さ(出来形)を確保できるように管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るグラウト材充填管理システムは、水底地盤に挿入された管部材の内部に配置されたトレミー管から、前記管部材の内部にグラウト材を充填するとともに、前記管部材の下端と前記水底地盤との間隙を介して前記管部材の外周面及び前記水底地盤の間隙にグラウト材を充填するグラウト材充填管理システムであって、グラウト材の充填作業中に、前記管部材の内部におけるグラウト材の上端面の高さをリ アルタイムに推定する。
【0008】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力と、前記管部材の内部における水面の位置と、前記管部材の外部における水面の位置とをそれぞれ検出する検出装置を備え、前記管部材の内部における水面と前記管部材の外部における水面との差をhとし、水底面から前記管部材の外部における水面までの距離をH1とし、水底面から前記管部材に充填されたグラウト材の圧力を検出する検出装置までの距離をH2とし、グラウト材の上端面から前記検出装置までの距離をxとし、水の密度をγwとし、グラウト材の密度をγGとし、前記管部材の内部における静水圧をP0とし、グラウト材の充填作業中に前記検出装置で得られる圧力をP1とした場合に、x=(P1-P0)/(γG-γw)によって算出される、前記管部材に充填されたグラウト材の上端の位置xをリアルタイムに推定するようにしてもよい。
【0009】
前記管部材の内部から排水を行う排水装置を備え、前記圧力P1が P1=H1×γw+H2×γGとなるまで、前記管部材の内部、並びに、前記管部材の外周面及び前記水底地盤の間隙に対してグラウト材を充填し、前記管部材の内部から排水を行う排水速度をvとした場合に、vG=(γw/γG)×vによって算出される充填速度vGでグラウト材を充填し、前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで、前記管部材の内部における排水およびグラウト材の追加充填を行うようにしてもよい。
【0010】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで前記管部材の内部における排水およびグラウト材の追加充填を行うことに加えて、又は、代えて、Vw=π×(d/2)^2×hにより算出される体積Vwの水を前記管部材の内部から排水するようにしてもよい。
【0011】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力を検出する検出装置は、前記管部材の下端部、又は、前記トレミー管の下端部に設けられているようにしてもよい。
【0012】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力を検出する検出装置は、前記水底地盤に対する前記管部材の挿入長の下から1/3以下の位置に設けられているようにしてもよい。
【0013】
本発明に係るグラウト材充填管理方法は、水底地盤に挿入された管部材の内部に配置されたトレミー管から、前記管部材の内部にグラウト材を充填するとともに、前記管部材の下端と前記水底地盤との間隙を介して前記管部材の外周面及び前記水底地盤の間隙にグラウト材を充填するグラウト材充填方法であって、前記管部材に充填されたグラウト材の圧力と、前記管部材の内部における水面の位置と、前記管部材の外部における水面の位置とをそれぞれ検出し、前記管部材の内部における水面と前記管部材の外部における水面との差をhとし、水底面から前記管部材の外部における水面までの距離をH1とし、水底面から前記管部材に充填されたグラウト材の圧力を検出する検出装置までの距離をH2とし、グラウト材の上端面から前記検出装置までの距離をxとし、水の密度をγwとし、グラウト材の密度をγGとし、前記管部材内部における静水圧をP0とし、グラウト材の充填作業中に前記検出装置で得られる圧力をP1とした場合に、第1の行程において、x=(P1-P0)/(γG-γw)によって算出される、前記管部材に充填されたグラウト材の上端の位置xをリアルタイムに推定し、第2の行程において、前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P1が、P1=H1×γw+H2×γGとなるまで、前記管部材の内部、並びに、前記管部材の外周面及び前記水底地盤の間隙に対してグラウト材を充填し、第3の行程において、前記管部材の内部から排水を行う排水速度をvとした場合に、vG=(γw/γG)×vによって算出される充填速度vGでグラウト材を充填し、第4の行程において、前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで、前記管部材の内部における排水およびグラウト材の追加充填を行う。
【0014】
前記管部材に充填されたグラウト材の圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで前記管部材の内部から排水を行うことに加えて、又は、代えて、Vw=π×(d/2)^2×hにより算出される体積Vwの水を前記管部材の内部における排水およびグラウト材の追加充填を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、管部材の内部に対するグラウト材の充填高を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態において管部材に設けられたグラウト材充填管理システムの概要を示す図である。
図2】本発明の一実施形態において管部材に設けられたグラウト材充填管理システムの概要を示す図である。
図3】グラウト材充填管理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】グラウト材充填管理システムの動作を示すフローチャートである。
図5】従来において水底地盤に挿入された管部材にグラウト材を充填するときの問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態の一例について説明する。図1,2において、管部材1は例えば中空の鋼管杭であり、その長手方向の一部が水底地盤Gに挿入されている。管部材1の内部(中空空間)にはトレミー管T及び排水管Dが配置されている。グラウト材gはトレミー管Tを介して管部材1の内部へと充填される。グラウト材gは、管部材1の内部において下方より上方に向けて充填されるとともに、管部材1の下端と水底地盤との間隙W2を介して管部材1の外周面及び水底地盤の間隙W1(アニュラースペース)に充填される。管部材1の内部に存在する水(海水)は、図示せぬポンプの駆動により排水管Dを介して管部材1の外部に排水される。
【0018】
水底地盤Gに対する管部材1の挿入長の下から1/3以下の位置、より望ましくは管部材1の下端部の位置には、管部材1の内部に充填されたグラウト材gの圧力を検出する圧力センサ111が設けられている。この圧力センサ111の検出値は図示せぬ通信ケーブルを介して、後述するコンピュータ100(図3)に出力される。
【0019】
管部材1の内周面の所定の位置には、管部材1の内部の水位を検出するため、例えば電波式やフロート式等の水位センサ(図1,2では図示略、図3にて水位センサ112として図示)が設けられている。この水位センサ112の検出値は図示せぬ通信ケーブルを介して、コンピュータ100(図3)に出力される。
【0020】
また、本実施形態では、管部材1の外部の水位(潮位)を検出する潮位センサ(図1,2では図示略、図3にて潮位センサ113として図示)が設けられている。この潮位センサ113の検出値は図示せぬ通信ケーブルを介して、コンピュータ100(図3)に出力される。例えばNOWPHAS(Nationwide Ocean Wave information network for Ports and HArbourS)等により潮位データが得られる場合は、潮位センサの設置を省略しても良い。
【0021】
本実施形態では、グラウト材gの充填作業中に、管部材1の内部における水位、管部材1の外部における水位(潮位)、及び、管部材1の下端における圧力をそれぞれ検出し、これらの検出値を用いて、管部材1の内部におけるグラウト材gの充填高をリアルタイムに推定することを特徴としている。
【0022】
図3は、グラウト材gの充填を行う作業船等に設けられたグラウト材充填管理システムのハードウェア構成を示すブロック図である。グラウト材充填管理システムは、管部材1に充填されたグラウト材gの圧力を検出する圧力センサ111、管部材1の内部における水位(水面の位置)を検出する水位センサ112及び管部材1の外部における水面の位置(潮位)を検出する潮位センサ113を含む検出装置110と、前述したトレミー管T等を含み管部材1の内部にグラウト材gを充填する充填装置120と、前述した排水管D等を含み管部材1の内部から排水を行う排水装置130と、これら検出装置110、充填装置120及び排水装置130に通信可能に接続されたコンピュータ100を備える。コンピュータ100は検出装置110の検出値を取得し、取得した検出値を用いて、充填装置120及び排水装置130を制御する。
【0023】
図1,2に示すように、管部材1の内部における水面と管部材1の外部における水面との差をhとし、水底面から管部材1の外部における水面までの距離をH1とし、水底面から管部材1に充填されたグラウト材gの(つまり圧力センサ111の位置)までの距離をH2とし、グラウト材gの上端面から圧力センサ111の位置をxとする。また、水(ここでは海水)の密度をγwとし、グラウト材gの密度をγGとする。コンピュータ100は、次のようにして、管部材1に充填されたグラウト材gの上端の位置xをリアルタイムに推定する。
【0024】
ここで、管部材1の内部における静水圧をP0とし、グラウト材gの充填作業中に圧力センサで得られる圧力をP1とした場合、グラウト材gの充填中に圧力センサ111によって検出される圧力P1は、
P1={h+H1+(H2-x)}×γw+x×γG
=(h+H1+H2)×γw+(γG-γw)×x
となる。
【0025】
上記数式において右辺第1項「(h+H1+H2)×γw」は管部材1の内部における静水圧P0を示しているので、既知の値である。また、グラウト材gの単位体積重量γGも所定の配合表から特定可能である。よって、グラウト材gの上端面から圧力センサ111の位置までの距離x(つまり管部材1内部におけるグラウト材の充填高x)は、上記数式を変形して、
x=(P1-P0)/(γG-γw)
によって算出される。
【0026】
図2に示すように、間隙W2(アニュラースペース)に充填されたグラウト材gが水底面に到達した状態において、管部材1の下端の位置では、管部材1の内外における水頭差は平衡が保たれる。よって、管部材1の下端にある圧力センサ111によって検出された圧力P2がP2= H1×γw+H2×γGとなった時点で、コンピュータ100は間隙W2(アニュラースペース)へのグラウト材gの充填が完了したと判断すればよい。
【0027】
ただし、図2の状態では、管部材1の内部におけるグラウト材gの天端高は、目標とする充填高を満たしていない。そこで、管部材1の内部からの排水を行いながら、不足分に相当するグラウト材gを充填(追加充填)する必要がある。この場合、図2の状態で管部材1の内部からの排水とグラウト材gの充填を、管部材1の下端における検出圧力が変化しないように実施する必要がある。つまり、排水重量>充填重量となった場合には、管部材1の内外の水頭差における外部側が高くなり、グラウト材gが管部材1内に逆流し、アニュラースペースに充填したグラウト材gが海水を巻き込んでそのグラウト材gの付着力の低下が懸念される。一方、排水重量<充填重量となった場合には、管部材1の内外の水頭差における内部側が高くなり、グラウト材gが管部材1内部から外部へと流出してしまうことになる。よって、排水重量=充填重量を維持しながら排水及びグラウト材gの充填を行うべきである。
【0028】
ここで、排水装置130の排水速度をvとしたとき、グラウト材gの充填速度vGは、
vG=(γw/γG)×v
となる。コンピュータ100は、このような排水速度をvとグラウト材gの充填速度vGとの関係を維持しながら排水及びグラウト材gの充填を行えばよい。
【0029】
なお、管部材1からの排水終了時点は、圧力センサ111の検出値がP2= H1×γw+H2×γGとなった時点か、又は、管部材の直径をdとしたとき、体積Vw=π×(d/2)^2×hの水を排水した時点である。
【0030】
以上のようにコンピュータ100は、圧力P1がP1=H1×γw+H2×γGとなるまで、管部材1の内部、並びに、管部材1の外周面及び水底地盤Gの間隙に対してグラウト材gを充填する。そして、コンピュータ100は、管部材1の内部から排水を行う排水速度をvとした場合に、vG=(γw/γG)×vによって算出される充填速度vGでグラウト材を充填し、管部材1に充填されたグラウト材gの圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで、管部材1の内部における排水およびグラウト材gの追加充填を行うようにすればよい。
【0031】
次に、本実施形態の動作を説明する。図4はグラウト材gの充填工程を説明するフローチャートである。図4において、グラウト材gの充填が開始されると、コンピュータ100は、管部材1に充填されたグラウト材gの圧力と、管部材1の内部における水面の位置と、管部材1の外部における水面の位置とをそれぞれ検出した検出値を検出装置110から取得する(ステップS1)。
【0032】
次に、コンピュータ100は、グラウト材gの上端の位置xをリアルタイムに推定する(ステップS2)。具体的には、コンピュータ100は、前述した数式x=(P1-P0)/(γG-γw)に従って、位置xを推定する(第1の行程)。
【0033】
次に、コンピュータ100は、充填量及び排水量の制御を行う(ステップS3)。具体的には、コンピュータ100は、管部材1に充填されたグラウト材gの圧力P1がP1=H1×γw+H2×γGとなるまで、管部材1の内部、並びに、管部材1の外周面及び水底地盤Gの間隙に対してグラウト材gを充填し(第2の行程)、管部材1の内部から排水を行う排水速度をvとした場合に、vG=(γw/γG)×vによって算出される充填速度vGでグラウト材gを充填する(第3の行程)。
【0034】
そして、コンピュータ100は、管部材1に充填されたグラウト材gの圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで(ステップS4;YES)、管部材1の内部における排水およびグラウト材gの追加充填を行う(第4の行程)。
【0035】
なお、グラウト材gの充填と同時に管部材1からの排水を実施してもよいが、間隙W2(アニュラースペース)への充填完了後に排水を実施することが好ましい。管部材1の内外において内部側の水頭差が高い状態を維持したほうが、間隙W2(アニュラースペース)に対するグラウト材の充填効率が良いからである。
【0036】
以上の本実施形態によれば、管部材1の内部における水位、その外部における水位(潮位)、及び管部材1の下端におけるグラウト材gの圧力を用いることで、管部材1の内部におけるグラウト材gの充填高を推定することが可能となる。これにより、例えば管部材1の内部に充填されたグラウト材gの出来形が不足し、設計上の引抜き抵抗力を満足しない、管部材1の外部に大量のグラウト材gを流出させてしまう、グラウト材gの充填完了を潜水士による目視確認とした場合、管部材1の外部に漏れ出たグラウト材gによる濁りを原因とした視認性の低下や潜水時間の長時間化が発生する、といった諸問題を解決することが可能となる。
【0037】
上記実施形態を次のように変形してもよい。例えば上記実施形態では、管部材1に充填されたグラウト材の圧力P2がP2=H1×γw+H2×γGとなるまで管部材1の内部における排水およびグラウト材gの追加充填を行っていた。この排水及び追加充填を行うことに加えて、又は、代えて、Vw=π×(d/2)^2×hにより算出される体積Vwの水を管部材1の内部から排水するようにしてもよい。
【0038】
圧力センサ111は、管部材1の下端部のほか、トレミー管Tの下端部に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1:管部材、100:コンピュータ、110:検出装置、111:圧力センサ、112:水位センサ、113:潮位センサ、120:充填装置、130:排水装置、T:トレミー管、D:排水管、G:水底地盤、g:グラウト材、W1,W2:間隙。
図1
図2
図3
図4
図5