(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019776
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ワークの加工方法、プログラム、及び、工作機械
(51)【国際特許分類】
G05B 19/416 20060101AFI20250131BHJP
B23Q 15/12 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
G05B19/416 F
G05B19/416 Q
B23Q15/12
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123584
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【弁理士】
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【弁理士】
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】新▲徳▼ 公輔
(72)【発明者】
【氏名】井関 晃
(72)【発明者】
【氏名】角田 康晴
【テーマコード(参考)】
3C001
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KB01
3C001KB09
3C001SB02
3C001TA05
3C001TB05
3C001TC02
3C269AB02
3C269AB31
3C269BB05
3C269CC02
3C269EF02
3C269GG01
3C269MN07
3C269MN29
3C269QC01
3C269QC02
3C269QD02
(57)【要約】
【課題】回転工具の耐久性を維持しつつアプローチ時間を短縮する。
【解決手段】ワークの加工方法は、回転工具をモータによって回転させ、ワークに向かう第1方向に加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で回転工具を移動させ、アプローチ速度で第1方向に移動中に回転工具がワークに接触したことを、モータの負荷によって検出し、ワークに接触したことが検出されると、第1方向に回転工具を移動させる速度を送り速度に変更することを含む。アプローチ速度は、速度の変更が開始される時点での回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が加工プログラムで回転工具がワークを第1方向に送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量を上回らないように決定される。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具をモータによって回転させ、
ワークに向かう第1方向に加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で前記回転工具を移動させ、
前記アプローチ速度で前記第1方向に移動中に前記回転工具が前記ワークに接触したことを、前記モータの負荷によって検出し、
前記ワークに接触したことが検出されると、前記第1方向に前記回転工具を移動させる速度を前記送り速度に変更する、
ことを含み、
前記アプローチ速度は、前記速度の変更が開始される時点での前記回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が前記加工プログラムで前記回転工具が前記ワークを前記第1方向に前記送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量を上回らないように決定される、
ワークの加工方法。
【請求項2】
前記みなし切削量は、前記回転工具が前記ワークを前記送り速度で切削するときの理論上の前記単位時間あたりの最大切削量とみなせる切削量である、請求項1に記載のワークの加工方法。
【請求項3】
前記みなし切削量は、前記第1方向に見える前記回転工具の表面の面積に前記送り速度を掛けた値に相当する体積である、請求項1に記載のワークの加工方法。
【請求項4】
前記回転工具の回転軸は前記第1方向に対して垂直であって、
前記みなし切削量は、前記回転工具の前記回転軸に沿う軸方向の切込量と、前記回転工具の直径と、前記送り速度との積に相当する体積である、請求項1に記載のワークの加工方法。
【請求項5】
前記アプローチ速度は、前記第1切削量を前記みなし切削量と等しくするときの前記アプローチ速度が前記送り速度の2倍よりも大きくなるとき、前記送り速度の2倍となるように決定される、
請求項1に記載のワークの加工方法。
【請求項6】
回転工具をモータによって回転させ、
ワークに向かう第1方向に加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で前記回転工具を移動させ、
前記アプローチ速度で前記第1方向に移動中に前記回転工具が前記ワークに接触したことを、前記モータの負荷によって検出し、
前記ワークに接触したことが検出されると、前記第1方向に前記回転工具を移動させる速度を前記送り速度に変更する、
ことを含み、
前記アプローチ速度は、前記速度の変更が開始される時点での前記回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が前記加工プログラムで前記回転工具が前記ワークを前記第1方向に前記送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量に近似するように決定される、
ワークの加工方法。
【請求項7】
前記みなし切削量は、前記回転工具が前記ワークを前記送り速度で切削するときの理論上の前記単位時間あたりの最大切削量とみなせる切削量である、請求項6に記載のワークの加工方法。
【請求項8】
前記アプローチ速度は、複数の候補速度のうち、前記第1切削量と前記みなし切削量との差の絶対値が最小となる速度に決定される、
請求項6または7に記載のワークの加工方法。
【請求項9】
前記アプローチ速度は、複数の候補速度のうち、前記みなし切削量から前記第1切削量を引いた差が正の最小となる速度に決定される、
請求項6または7に記載のワークの加工方法。
【請求項10】
前記アプローチ速度は、前記第1切削量が前記みなし切削量と近似するときの前記アプローチ速度が前記送り速度の2倍よりも大きくなるとき、前記送り速度の2倍となるように決定される、
請求項6または7に記載のワークの加工方法。
【請求項11】
前記アプローチ速度は、前記回転工具が前記ワークに接触してから前記ワークに接触したことが検出されるまでの検知遅れ時間に基づいて決定される、
請求項1から7のいずれかに記載のワークの加工方法。
【請求項12】
前記アプローチ速度は、前記ワークに接触したことが検出されてから前記アプローチ速度から前記送り速度までの前記速度の変更が開始されるまでのラグ時間と前記検知遅れ時間との和である速度変更遅延時間に基づいて決定される、
請求項11に記載のワークの加工方法。
【請求項13】
請求項1から7に係るワークの加工方法を工作機械のプロセッサに実行させるプログラム。
【請求項14】
回転工具を回転軸の周りに回転可能に支持するように構成された工具主軸と、
前記回転工具を前記回転軸の周りに回転させるように構成されたモータと、
前記モータの負荷を検出するように構成されたドライバと、
ワークに向かう第1方向に前記工具主軸を移動させるように構成させた少なくとも1つのアクチュエータと、
前記ドライバからの前記負荷に関する信号を取得し、前記モータと前記少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で前記第1方向に前記回転工具を移動させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記第1方向に前記アプローチ速度で移動中に前記回転工具が前記ワークに接触したことを、前記負荷によって検出し、
前記ワークに接触したことが検出されると、前記回転工具を前記第1方向に移動させる速度を前記送り速度に変更するように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記速度の変更が開始される時点での前記回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が前記加工プログラムで前記回転工具が前記ワークを前記第1方向に前記送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量を上回らないように前記アプローチ速度を決定する、
工作機械。
【請求項15】
前記みなし切削量は、前記回転工具が前記ワークを前記送り速度で切削するときの理論上の前記単位時間あたりの最大切削量とみなせる切削量である、請求項14に記載の工作機械。
【請求項16】
前記みなし切削量は、前記第1方向に見える前記回転工具の表面の面積に前記送り速度を掛けた値に相当する体積である、請求項14に記載の工作機械。
【請求項17】
前記回転工具の回転軸は前記第1方向に対して垂直であって、
前記みなし切削量は、前記回転工具の前記回転軸に沿う軸方向の切込量と、前記回転工具の直径と、前記送り速度との積に相当する体積である、請求項14に記載の工作機械。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記第1切削量を前記みなし切削量と等しくするときの前記アプローチ速度が前記送り速度の2倍よりも大きくなるとき、前記送り速度の2倍となるように前記アプローチ速度を決定する、
請求項14から17のいずれかに記載の工作機械。
【請求項19】
回転工具を回転軸の周りに回転可能に支持するように構成された工具主軸と、
前記回転工具を前記回転軸の周りに回転させるように構成されたモータと、
前記モータの負荷を検出するように構成されたドライバと、
ワークに向かう第1方向に前記工具主軸を移動させるように構成させた少なくとも1つのアクチュエータと、
前記ドライバからの前記負荷に関する信号を取得し、前記モータと前記少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で前記第1方向に前記回転工具を移動させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記第1方向に前記アプローチ速度で移動中に前記回転工具が前記ワークに接触したことを、前記負荷によって検出し、
前記ワークに接触したことが検出されると、前記回転工具を前記第1方向に移動させる速度を前記送り速度に変更するように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記速度の変更が開始される時点での前記回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が前記加工プログラムで前記回転工具が前記ワークを前記第1方向に前記送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量に近似するように前記アプローチ速度を決定する、
工作機械。
【請求項20】
前記みなし切削量は、前記回転工具と前記ワークとの接触面積が最大となるときの理論上の前記単位時間あたりの切削量である、請求項19に記載の工作機械。
【請求項21】
前記プロセッサは、複数の候補速度のうち、前記第1切削量と前記みなし切削量との差の絶対値が最小となる速度に前記アプローチ速度を決定する、
請求項19または20に記載の工作機械。
【請求項22】
前記プロセッサは、複数の候補速度のうち、前記みなし切削量から前記第1切削量を引いた差が正の最小となる速度に前記アプローチ速度を決定する、
請求項19または20に記載の工作機械。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記第1切削量が前記みなし切削量と近似するときの前記アプローチ速度が前記送り速度の2倍よりも大きくなるとき、前記送り速度の2倍となるように前記アプローチ速度を決定する、
請求項19または20に記載の工作機械。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記回転工具が前記ワークに接触してから前記ワークに接触したことが検出されるまでの検知遅れ時間に基づいて前記アプローチ速度を決定する、
請求項19または20に記載の工作機械。
【請求項25】
前記プロセッサは、前記ワークに接触したことが検出されてから前記アプローチ速度から前記送り速度までの前記速度の変更が開始されるまでのラグ時間と前記検知遅れ時間との和である速度変更遅延時間に基づいて前記アプローチ速度を決定する、
請求項24に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの加工方法、プログラム、及び、工作機械
に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドリルなどの切削工具が早送り終了点からワークに喰込むまでのエアーカット区間の時間を合理的に可能の限り短縮する工作機械を記述している。特許文献1の方法は、切削工具がワークに接触してから、当該接触を検出器が検知してから送り速度までの減速を開始するまでに上昇する工具負荷の最大値が、工具が破損しない程度の送り速度の限界値を超えない程度に最大の速度を、エアーカット区間の工具の送り速度であるアプローチ速度とするように決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アプローチ速度をこの程度まで設定してしまうと、切削工具が減速を開始する直前における工具負荷が加工プログラムで送り速度として想定された工具負荷よりも大きくなるため、ユーザの想定する工具寿命よりも短くしてしまう問題があった。
【0005】
本願に開示される技術の目的は、ユーザの想定する工具寿命を維持しつつアプローチ時間を短縮するワークの加工方法、プログラム、及び、工作機械を実現することである。
を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係るワークの加工方法は、回転工具をモータによって回転させ、ワークに向かう第1方向に加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で回転工具を移動させ、アプローチ速度で第1方向に移動中に回転工具がワークに接触したことを、モータの負荷によって検出し、ワークに接触したことが検出されると、第1方向に回転工具を移動させる速度を送り速度に変更することを含む。アプローチ速度は、速度の変更が開始される時点での回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が加工プログラムで回転工具がワークを第1方向に送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量を上回らないように決定される。
【0007】
本開示の第2態様に係るワークの加工方法は、回転工具をモータによって回転させ、ワークに向かう第1方向に加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で回転工具を移動させ、アプローチ速度で第1方向に移動中に回転工具がワークに接触したことを、モータの負荷によって検出し、ワークに接触したことが検出されると、第1方向に回転工具を移動させる速度を送り速度に変更することを含む。アプローチ速度は、速度の変更が開始される時点での回転工具がワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が加工プログラムで回転工具がワークを第1方向に送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量に近似するように決定される。
【0008】
本開示の第3態様に係るプログラムは、第1態様または第2態様に係るワークの加工方法を工作機械のプロセッサに実行させるプログラムである。
【0009】
本開示の第4態様に係る工作機械は、工具主軸と、モータと、ドライバと、アクチュエータと、プロセッサと、を備える。工具主軸は、回転工具を回転軸の周りに回転可能に支持するように構成される。モータは、回転工具を回転軸の周りに回転させるように構成される。ドライバは、モータの負荷を検出するように構成される。アクチュエータは、ワークに向かう第1方向に工具主軸を移動させるように構成させる。プロセッサは、ドライバからの負荷に関する信号を取得し、モータとアクチュエータを制御するように構成される。プロセッサは、加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で第1方向に回転工具を移動させるようにアクチュエータを制御する。プロセッサは、第1方向にアプローチ速度で移動中に回転工具がワークに接触したことを、負荷によって検出する。プロセッサは、ワークに接触したことが検出されると、回転工具を第1方向に移動させる速度を送り速度に変更するようにアクチュエータを制御する。プロセッサは、速度の変更が開始される時点での回転工具がワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が加工プログラムで回転工具がワークを第1方向に送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量を上回らないようにアプローチ速度を決定する。
【0010】
本開示の第5態様に工作機械は、工具主軸と、モータと、ドライバと、アクチュエータと、プロセッサと、を備える。工具主軸は、回転工具を回転軸の周りに回転可能に支持するように構成される。モータは、回転工具を回転軸の周りに回転させるように構成される。ドライバは、モータの負荷を検出するように構成される。アクチュエータは、ワークに向かう第1方向に工具主軸を移動させるように構成させる。プロセッサは、ドライバからの負荷に関する信号を取得し、モータとアクチュエータを制御するように構成される。プロセッサは、加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で第1方向に回転工具を移動させるようにアクチュエータを制御する。プロセッサは、第1方向にアプローチ速度で移動中に回転工具がワークに接触したことを、負荷によって検出する。プロセッサは、ワークに接触したことが検出されると、回転工具を第1方向に移動させる速度を送り速度に変更するようにアクチュエータを制御する。プロセッサは、速度の変更が開始される時点での回転工具がワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が加工プログラムで回転工具がワークを第1方向に送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量に近似するようにアプローチ速度を決定する。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される技術によれば、第1切削量がみなし切削量を超えない、あるいは、みなし切削量に近似するようにアプローチ速度を決定する。このため、工具の耐久性を維持しつつアプローチ時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る工作機械の外観構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る工作機械の電子回路の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した工作機械の加工ヘッドの概要を示す断面図である。
【
図4】
図4は、工具マガジンと工具交換装置とを示す拡大斜視図である。
【
図5】
図5は、工作機械の加工方法、すなわち、制御プログラムの動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、回転工具による切削の別の一例を示す。
【
図8】
図8は、回転工具による切削の別の一例を示す。
【
図9】
図9は、回転工具による切削の別の一例を示す。
【
図10】
図10は、
図6の例において加工プログラム7で規定される最大計画切削量を示した図である。
【
図11】
図11は、
図6の例において回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量を示した図である。
【
図12】
図12は、
図7の例において加工プログラム7で規定される最大計画切削量を示した図である。
【
図13】
図13は、
図7の例において回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量を示した図である。
【
図14】
図14は、
図6の切削の場合におけるステップS2のアプローチ速度の計算の詳細を表すフローチャートである。
【
図15】
図15は、
図14のステップS24のアプローチ速度の計算の詳細を表すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態に係る工作機械の効果を説明するための図である。
【
図17】
図17は、
図14のステップS24のアプローチ速度の計算の変形例を表すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、図中において同じ符号は、対応するまたは実質的に同一の構成を示している。
<実施形態>
<工作機械1の構成>
図1は、実施形態に係る切削加工を実行するための工作機械1の外観構成を示す斜視図である。
図2は、実施形態に係る工作機械1の電子回路の構成を示す図である。
図1に示すように、工作機械1は、制御盤10と、ワークW(
図3、
図4参照)を保持する加工テーブル11と、ワークWに対してXYZ方向にそれぞれ移動可能な加工ヘッド12と、工具マガジン15と、工具交換装置16とを備える。なお、
図1には表示されていないが、工作機械1は、制御盤10以外の上述の構成を覆うカバーをさらに備えてもよい。
【0014】
図2を参照すると、制御盤10は、工作機械1の動作を制御する数値制御装置2と、当該数値制御装置2が実行する加工制御における加工条件等をユーザが入力するためのキー、ボタン、ダイヤル、タッチパネルなどの入力インタフェース10aと、ユーザに加工条件や各種センサによる検出結果等を表示する表示装置10bと、を備える。数値制御装置2は、ハードウェアプロセッサ3と、メモリ4と、バス5と、入出力インタフェース6とを有している。メモリ4は、接合プログラムや切削プログラム等の加工プログラム7と、回転工具T1等を制御するための制御プログラム8とを記憶する。メモリ4は、記憶手段と呼称してもよい。ハードウェアプロセッサ3は、各種プログラムを実行する。以降の実施形態において、ハードウェアプロセッサ3を単にプロセッサ3と呼称してもよい。
【0015】
図3は、
図1に示した工作機械1の加工ヘッド12の概要を示す断面図である。
図3に示すように、加工ヘッド12は、筐体をなす中空の主軸フレーム12aと、主軸フレーム12aに内包される工具主軸12bと、を含む。加工ヘッド12の主軸フレーム12aは、
図2に示される少なくとも1つのアクチュエータ13に取り付けられてXYZの3軸方向に移動可能とされている。少なくとも1つのアクチュエータ13は、ワークWに向かう第1方向に工具主軸12bを移動させるように構成させる。第1方向は、XYZのいずれか1つの軸に平行であっても、それらの軸に対して交差する方向であってもよい。例えば、少なくとも1つのアクチュエータ13は、それぞれ、サーボモータと、ボールねじなどの運動変換機構と、サーボモータのフィードバック制御を行うためのエンコーダなどの回転センサとを含む。また、工具主軸12bの一端は、
図2に示されるモータ14Mとドライバ14Dを含む回転駆動装置14に接続される。工具主軸12bは、回転工具T1を回転軸AX1の周りに回転可能に支持するように構成される。モータ14Mは、回転工具T1を回転軸AX1の周りに回転させるように構成される。モータ14Mは、好ましくは、サーボモータであって、主軸フレーム12aに固定されたステータ14sと、工具主軸12bに固定されたロータ14rとを含む。少なくとも1つのアクチュエータ13や回転駆動装置14は、入出力インタフェース6を介して数値制御装置2に接続される。
【0016】
加工ヘッド12の下端には、工具ホルダ17が着脱自在に取り付けられる。
図3は、実施形態による切削加工用の回転工具T1を示している。
図3に示すように、回転工具T1は、工具ホルダ17に保持される。
【0017】
工具ホルダ17はその上端にプルスタッド18を有し、プルスタッド18に接続される略円錐台形状のホルダフランジ17Fを有している。ホルダフランジ17Fは、工具主軸12bの回転軸AX1に対する径方向に切り欠いた溝部17Gを有している。一方、工具主軸12bにはプルスタッド18と嵌合可能なコレットチャック19と、溝部17Gと嵌合可能なキー部12Kを有している。コレットチャック19は、工具主軸12bの回転軸AX1に沿う回転軸方向DXに移動可能である。コレットチャック19は、回転軸方向DXのうち、プルスタッド18から回転工具T1に向かう開方向DRRにシフトすると、回転軸AX1に対する径方向に開くように構成され、プルスタッド18が着脱可能となる。コレットチャック19は、回転軸方向DXのうち、回転工具T1からプルスタッド18に向かう閉方向DRCにシフトすると、回転軸AX1に対する径方向に閉じるように構成され、プルスタッド18と嵌合される。プルスタッド18がコレットチャック19に嵌合することによって工具ホルダ17が主軸14bに固定される。このとき、工具主軸12bのキー部12Kが工具ホルダ17の溝部17Gに嵌合するため、工具ホルダ17の工具主軸12bに対する回転が規制される。したがって、工具主軸12bは、切削加工用の回転工具T1を取付け可能である。以降の実施形態において、工具主軸12bに取り付けられた工具を実行工具TEと呼ぶ。
【0018】
工具マガジン15は、回転工具T1を保持する工具ホルダ17と、交換用の回転工具T2を保持する工具ホルダ17との両方を収納可能である。
図4は、工具マガジン15と工具交換装置16とを示す拡大斜視図である。工具マガジン15は、複数の工具ホルダ17を保持する複数の保持部15aと、複数の保持部15aを周囲軌道に沿って移動させる保持部移動装置15bと、を有する。工具マガジン15は、工具マガジン15に保管されている工具ホルダ17を、工具交換装置16がアクセス可能な待機位置PHに移動させるホルダ取出装置15cを有していてもよい。
【0019】
工具交換装置16は、工具マガジン15と工具主軸12bとの間で工具を交換するように構成される。工具交換装置16は、工具交換アーム16aと、工具交換アーム16aを回転させるアーム回転装置16bと、工具交換アーム16aを直線的に移動させるアーム移動装置16cとを有する。アーム回転装置16bは、工具交換アーム16aを、追加回転軸AX2周りに回転させる。また、アーム移動装置16cは、工具交換アーム16aを追加回転軸AX2に平行な方向に移動させる。工具交換装置16は、交換前後の工具ホルダ17を把持可能なマジックハンドに類似した構成の把持部16d、16eを有する。
【0020】
<制御プログラムの動作>
つぎに、
図2の制御プログラム8の動作、すなわち、工作機械1の制御の詳細について説明する。ハードウェアプロセッサ3は、ドライバ14Dからの負荷に関する信号を取得し、モータ14Mと少なくとも1つのアクチュエータ13を制御するように構成される。
図5は、工作機械1の加工方法、すなわち、制御プログラム8の動作のフローチャートである。制御プログラム8は、工作機械1のハードウェアプロセッサ3による実行時に、
図5及び
図5に付随する
図15~
図16に記載の加工方法の処理をハードウェアプロセッサ3に実行させる指示を備える。
図5を参照すると、ステップS1において、当該加工方法において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、回転工具T1をモータ14Mによって回転させる。具体的には、ハードウェアプロセッサ3は、加工プログラム7から回転工具T1の回転速度を読み取り、その回転速度でモータ14Mを回転させるための信号をドライバ14Dに送る。
【0021】
ステップS2において、当該加工方法は、ワークWに向かう第1方向DR1に加工プログラム7で設定された送り速度Fよりも大きいアプローチ速度F’で回転工具T1を移動させることを含む。制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、加工プログラム7で設定された送り速度Fよりも大きいアプローチ速度F’で第1方向DR1に回転工具T1を移動させるように少なくとも1つのアクチュエータ13を制御する。第1方向DR1は、加工プログラム7で設定された送り方向である。
図6~
図9は、回転工具T1による切削の例を示したものである。
図6~
図9におけるワークW内の点線は最終加工形状を表す。
【0022】
図6は、回転工具T1がミル工具であって、回転軸AX1がZ軸に沿い、第1方向DR1が回転軸AX1に対して垂直なX軸正方向である場合を例示したものである。
図7は、第1方向DR1がワークWの角に斜め(X軸正方向、且つ、Y軸正方向)で、回転軸AX1がその角の位置を通るように回転工具T1を動かすことのみが
図6の例と異なる場合を例示したものである。
図8は、回転工具T1が座グリ工具であって、回転軸AX1がZ軸に沿い、第1方向DR1が回転軸AX1に対して平行なZ軸負方向である場合を例示したものである。
図9は、回転工具T1がミル工具であって、回転軸AX1がX軸に垂直で、且つ、Y軸及びZ軸に対して垂直で、第1方向DR1が回転軸AX1に対して平行な方向である場合を例示したものである。アプローチ速度F’は、
図6~
図9それぞれにおいて異なる値が設定されるが、どのように決定するかについては後述する。
【0023】
図2に戻り、ステップS3において、当該加工方法は、アプローチ速度F’で第1方向DR1に移動中に回転工具T1がワークWに接触したことを、モータ14Mの負荷によって検出する。制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、第1方向DR1にアプローチ速度F’で移動中に回転工具T1がワークWに接触したことを、負荷によって検出する。具体的には、ステップS1においてモータ14Mの回転速度が一定となるようにフィードバック制御するようにドライバ14Dが駆動電流をモータ14Mに送る。このため、ワークWとの接触のため、モータ14Mの負荷が上昇すると、モータ14Mの駆動トルクを上昇させるため、ドライバ14Dから出力される駆動電流も上昇される。ハードウェアプロセッサ3は、駆動電流をモニタリングして、駆動電流の大きさが予め定められた閾値を超えたときに、回転工具T1がワークWに接触したと判定する。回転工具T1がワークWに接触されたと判定されていない場合(ステップS3でNo)、ステップS3を繰り返す。
【0024】
ステップS4において、当該加工方法は、ワークWに接触したことが検出されると(ステップS3でYes)、回転工具T1を第1方向DR1に移動させる速度を送り速度Fに変更するように少なくとも1つのアクチュエータ13を制御する。制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、ワークWに接触したことが検出されると(ステップS3でYes)、回転工具T1を第1方向DR1に移動させる速度を送り速度Fに変更するように少なくとも1つのアクチュエータ13を制御する。
【0025】
図6のステップS2では、アプローチ速度F’は、送り速度Fへの速度の変更が開始される時点での回転工具T1がワークWを切削する単位時間あたりの第1切削量V
Fが加工プログラム7で回転工具T1が回転工具T1を第1方向DR1に送り速度Fで切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量V
ESTを上回らないように決定される。つまり、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、送り速度Fへ速度の変更が開始される時点での回転工具T1がワークWを切削する単位時間あたりの第1切削量V
Fが加工プログラム7で回転工具T1がワークWを第1方向DR1に送り速度Fで切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量V
ESTを上回らないようにアプローチ速度F’を決定する。
【0026】
みなし切削量VESTは、回転工具T1がワークWを送り速度Fで切削するときの理論上の単位時間あたりの最大切削量とみなせる切削量である。具体的には、みなし切削量VESTは、加工プログラム7で規定される最大計画切削量Vlimpと、回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量Vlimeとのいずれかである。加工プログラム7で規定される最大計画切削量Vlimpは、加工プログラム7において回転工具T1を送り速度FでワークWに進入させたときの理論上の単位時間あたりの最大切削量である。回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量Vlimeは、第1方向DR1に見てワークWと重畳する回転工具T1のすべての表面がワークWと接触していると仮定したときの切削量であって、第1方向DR1に見てワークWと重畳する回転工具T1の表面の面積に送り速度Fを掛けた値に相当する体積が切削量に相当する。別の言い方をすれば、最大推定切削量Vlimeは、第1方向DR1に見て回転工具T1とワークWとの接触面積が最大となる第1方向DR1の深さに回転工具T1がワークWに進入し、第1方向DR1に送り速度Fで切削するとみなしたときの理論上の単位時間あたりの切削量である。
【0027】
図10は、
図6の例において加工プログラム7で規定される最大計画切削量V
limpを示した図である。
図11は、
図6の例において回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量V
limeを示した図である。
図10及び
図11の例では、取代(cutting stock)CSは、回転工具T1の直径Tdの半分よりも短い。取代CSは、厳密には、ワークWの大きさと加工プログラム7で規定される加工目標(
図6~
図10におけるワークW内の点線)から定まる。ワークWの大きさは誤差を含んでいるため、正確な値は不明であるが、誤差を想定して最大となる取代CSが加工プログラム7もしくは加工プログラム7とは別に与えられることがあるため、以下の説明ではこのように与えられた取代CSがあるものとして以下に説明する。このとき、加工プログラム7で規定される最大切削量は、
図10の水玉模様の両端距離Td’に送り速度Fと回転軸方向DXの切込量Ad(回転工具T1のうち、ワークWに接触する回転軸方向DXの長さ)とを掛けた値である。
図10の水玉模様に示された位置は、回転工具T1が取代CSまで切削した位置である。Td’は、Tdよりも短い。
図11では、第1方向DR1に見て回転工具T1とワークWとの接触面積が最大となる第1方向DR1の深さに回転工具T1がワークWに進入した位置を二点鎖線で示している。
図11では、回転工具T1を第1方向DR1に移動させる速度を送り速度Fに変更する場所を実線で示している。回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量V
limeは、第1方向DR1に見てワークWと重畳する回転工具T1の表面の面積に送り速度Fを掛けた値に相当する体積であるため、回転工具T1の直径Tdに送り速度Fと切込量Adを掛けた値である。
【0028】
図12は、
図7の例において加工プログラム7で規定される最大計画切削量V
limpを示した図である。
図13は、
図7の例において回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量V
limeを示した図である。
図12及び
図13の例では、取代CSは、回転工具T1の直径Tdの半分よりも短い。このとき、加工プログラム7で規定される最大切削量は、
図12の水玉模様の両端距離Td”に送り速度Fと回転軸方向DXの切込量Ad(回転工具T1のうち、ワークWに接触する回転軸方向DXの長さ)とを掛けた値である。
図12の水玉模様に示された位置は、回転工具T1が取代CSまで切削した位置である。Td”は、Tdよりも短い。
図13に示すように、回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量V
limeは、第1方向DR1に見てワークWと重畳する回転工具T1のすべての表面の面積に送り速度Fを掛けた値に相当する体積であるため、回転工具T1の直径Tdに送り速度Fと切込量Adを掛けた値である。
【0029】
図6及び
図7の例においてみなし切削量V
ESTが回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量V
limeであるとし、回転工具T1の直径をTd、回転工具T1がワークWと接触し、アプローチ速度F’から送り速度Fへの速度の変更が開始されるまでの速度変更遅延時間をTeとし、回転軸方向DXの切込量(回転工具T1のうち、ワークWに接触する回転軸方向DXの長さ)をAdすると、
図6の場合、アプローチ速度F’は(式1)を満たすように決定される。
図7の場合において、アプローチ速度F’は(式1)を満たすように決定されるとよい。実際には、
図7の場合、
図6に比べて接触面積が小さくなる分アプローチ速度F’を(式1)よりも高く設定することができるが、工具の負荷が小さくなるように定められるため、問題はない。この速度変更遅延時間Teは、回転工具T1がワークWに接触してからワークWに接触したことが検出されるまでの検知遅れ時間Te1とワークWに接触したことが検出されてからアプローチ速度F’から送り速度Fまでの送り速度Fへの速度の変更が開始されるまでのラグ時間Te2との和である。つまり、アプローチ速度F’は、検知遅れ時間Te1に基づいて決定される。制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、検知遅れ時間Te1に基づいてアプローチ速度F’を決定する。アプローチ速度F’は、検知遅れ時間Te1とラグ時間Te2との和である速度変更遅延時間Teに基づいて決定される。制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、検知遅れ時間Te1とラグ時間Te2との和である速度変更遅延時間Teに基づいてアプローチ速度F’を決定する。なお、送り速度F、アプローチ速度F’、速度変更遅延時間Teの時間単位は同じである。つまり、送り速度F、アプローチ速度F’がmm/minの単位系で表される場合、速度変更遅延時間Teは分単位で表される。
【0030】
【0031】
(式1)の左辺は、単位時間あたりの第1切削量VFに相当する。(式1)の右辺は、回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量Vlimeに相当する。
【0032】
みなし切削量V
ESTが加工プログラム7で規定される最大切削量であるとすると、
図6の場合におけるアプローチ速度F’は(式2)を満たすように決定される。
図7の場合におけるアプローチ速度F’は一例として(式3)を満たすように決定される。(式2)(式3)の左辺は、単位時間あたりの第1切削量V
Fに相当する。(式2)(式3)の右辺は、加工プログラム7で規定される最大切削量に相当する。Td”がTd’より小さいため、(式3)の右辺は、(式2)の右辺よりも小さい。回転軸AX1がワークWの角の位置を通らない場合、角からの位置ずれに応じて(式3)の左辺に1から2までの適当な係数を掛けた値を第1切削量V
Fと定めてもよい。あるいは、角を通る場合であっても全て(式2)とみなして計算してもよい。
【0033】
【0034】
【0035】
図8の例において、回転工具T1の短径をTd
1、長径をTd
2とすると、アプローチ速度F’は(式4)を満たすように決定される。
【0036】
【0037】
(式4)の左辺は、単位時間あたりの第1切削量VFに相当する。(式4)の右辺は、加工プログラム7で規定される最大計画切削量Vlimpに相当する。この場合、加工プログラム7で規定される最大計画切削量Vlimpの計算が容易であるため、回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量Vlimeを求めなくても、加工プログラム7で規定される最大計画切削量Vlimpをみなし切削量VESTとしてもよい。
【0038】
図9の例において、アプローチ速度F’から送り速度Fへの速度の変更が開始されるまでの時間遅れをTeとし、ワークWの切削面の法線ベクトル(Z軸正方向)と、第1方向DR1の反対向きのベクトルとの成す角をθとすると、
図9の拡大図の水玉模様に示された部分(第1方向DR1に見たときの回転工具T1とワークWとの接触部分)の面積にアプローチ速度F’をかけた体積が第1切削量V
Fに該当する。第1切削量V
Fは、(式5)により表される。(式5)に
図9に示したφの値を代入すると、(式6)のようになる。なお、θを0とみなし、(式7)を満たすアプローチ速度F’としてもよい。この場合、アプローチ速度F’は、加工プログラム7で規定される送り速度Fと一致する。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
(式5)(式6)における角度はラジアン単位で表されたものである。
【0043】
このとき、第1切削量VFは、(式8)に示された体積Vlim以下となるように決定される。Vlimは、加工プログラム7で規定される最大計画切削量Vlimpに相当する。この場合、加工プログラム7で規定される最大計画切削量Vlimpの計算が容易であるため、回転工具T1の送り方向から推定される最大推定切削量Vlimeを求めなくても、加工プログラム7で規定される最大計画切削量Vlimpをみなし切削量VESTとしてもよい。
【0044】
【0045】
第1切削量VFは、上述する速度変更遅延時間Teに依存する。したがって、アプローチ速度F’は、検知遅れ時間Te1に基づいて決定される。制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、検知遅れ時間Te1に基づいてアプローチ速度F’を決定する。アプローチ速度F’は、検知遅れ時間Te1とラグ時間Te2との和である速度変更遅延時間Teに基づいて決定される。制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、検知遅れ時間Te1とラグ時間Te2との和である速度変更遅延時間Teに基づいてアプローチ速度F’を決定する。
【0046】
好ましくは、アプローチ速度F’は、送り速度Fへの速度の変更が開始される時点での回転工具T1がワークWを切削する単位時間あたりの第1切削量VFが加工プログラム7で回転工具T1がワークWを第1方向DR1に送り速度Fで切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量VESTに近似するように決定される。当該加工方法において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、送り速度Fへの速度の変更が開始される時点での回転工具T1がワークWを切削する単位時間あたりの第1切削量VFが加工プログラム7で回転工具T1がワークWを第1方向DR1に送り速度Fで切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量VESTに近似するようにアプローチ速度F’を決定する。なお、上記の「近似する」とは「等しい」場合も含む。
【0047】
これは、(式1)~(式4)の左辺と右辺とが概ね等しくなるように、また、(式6)のVFと(式8)のVlimとが概ね等しくなるように、アプローチ速度F’を決定することを意味する。ただし、(式1)~(式4)の左辺と右辺を等しくしたときの方程式、(式6)のVFと(式8)のVlimとを等しくしたときの方程式は、代数的に解くことが通常できないため、F’の近似解を出すことが好ましい。なお、(式4)(式7)の左辺と右辺とを等しくしたときの方程式は代数的に解くことができるが、その場合、これらの方程式の解をアプローチ速度F’とすることが望ましい。
【0048】
さらに言えば、みなし切削量VESTと第1切削量VFの差が0に最も近い正の値となるような近似解を山登り法などの探索アルゴリズムを使用することによって求められる。このとき、アプローチ速度F’は、複数の候補速度のうち、みなし切削量VESTから第1切削量VFを引いた差が正の最小となる速度になる速度に決定される。当該加工方法において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、複数の候補速度のうち、みなし切削量VESTから第1切削量VFを引いた差が正の最小となる速度にアプローチ速度F’を決定する。
【0049】
つぎに、
図6の場合において、(式1)の関係を利用してアプローチ速度F’を算出する場合のアルゴリズムを
図14と
図15とを用いて具体的に説明する。なお、他の場合の近似解についても
図14と
図15のように、あるいは、ニュートンラプソン法などの公知の近似解算出アルゴリズムを利用して算出するとよい。
【0050】
図14を参照すると、ステップS2では、ステップS21において、当該加工方法において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、まず、上述する回転工具T1の直径Td、送り速度F、回転工具T1のうち、ワークWに接触する回転軸方向DXの長さAd、速度変更遅延時間Teを読み込む。速度変更遅延時間Teは、経験値として予め求められ、メモリ4に記憶されている。ハードウェアプロセッサ3は、メモリ4から速度変更遅延時間Teを読み取るとよい。ハードウェアプロセッサ3は、メモリ4に記憶された工具情報から、回転工具T1の直径Tdを読み取ることができる。ハードウェアプロセッサ3は、加工プログラム7から、送り速度F、切込量Adを読み取ることができる。
【0051】
ステップS22において、当該加工方法において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、F・TeがTd/2以上であるか否か判定する。F・TeがTd/2以上である場合(ステップS22でYes)、ステップS23において、当該加工方法において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、アプローチ速度F’を送り速度Fとする。F・TeがTd/2未満である場合(ステップS22でNo)、ステップS24において、当該加工方法において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、tempFを算出する。このtempFは、例えば、上記不等式または大小関係を満たし、且つ、みなし切削量VESTから第1切削量VFを引いた値が正の最も小さい値となるように定められたアプローチ速度F’である。
【0052】
図16は、ステップS24を詳細化したフローチャートである。なお、
図16の解法は1つの近似解の解法であって、他の近似解算出のアルゴリズムが利用されてもよい。
図16のステップS241において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、変数ACDに1を代入する。この変数ACDは、回転工具T1の半径Td/2を100分割してACD倍した距離だけ回転工具T1がワークW内に進入した場所でアプローチ速度F’から送り速度Fに切り換えられたと仮に定めた変数である。
【0053】
ステップS242では、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、以下の(式9)~(式12)に基づいて変数CalcuRD,TmF,JudgeRDをそれぞれ算出する。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
CalcuRDは、回転工具T1の半径Td/2を100分割してACD倍した距離だけ回転工具T1がワークW内に進入した場所において、第1方向DR1に回転工具T1とワークWとの接触部分を見たときの回転軸方向DXに対して垂直な向きの幅である。TmFは、その場所で最大推定切削量Vlimeだけ切削すると仮定したときの送り速度である。JudgeRDは、TmFがアプローチ速度F’であると仮定したときに、アプローチ速度F’から送り速度Fに切り換えられる場所の、第1方向DR1に回転工具T1とワークWとの接触部分を見たときの回転軸方向DXに対して垂直な向きの幅である。つまり、JudgeRDがCalcuRDよりも大きい場合、第1切削量VFが最大推定切削量Vlimeよりも大きいことを意味する。
【0058】
そこで、ステップS243において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、JudgeRDがCalcuRD以下であるか否か判定する。JudgeRDがCalcuRDよりも大きい(ステップS243でNo)とき、ステップS244において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、ACDを10加え、ステップS242の処理を再度実行する。JudgeRDがCalcuRD以下であるとき(ステップS243でYes)、ステップS245において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、ACDを10減じ、ステップS246において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、ACDに1を加える。
【0059】
ステップS247において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、変更されたACDに基づいて、(式9)~(式11)を利用して変数CalcuRD,TmF,JudgeRDをそれぞれ算出する。ステップS248において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、JudgeRDがCalcuRD以下であるか否か判定する。JudgeRDがCalcuRDよりも大きい(ステップS248でNo)とき、ステップS249において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、ACDを1加え、ステップS247の処理を再度実行する。JudgeRDがCalcuRD以下であるとき(ステップS248でYes)、ステップS250において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、このときの変数TmFの値をtempFと決定する。このようにして求められたtempFは、下記の(式12)を満たすtmFの最大値となるので、(式1)を満たすとともに、(式1)の左辺から右辺を引いた値が最も0に近い近似解となる。
【0060】
【0061】
図14に戻り、ステップS25において、当該加工方法において制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、tempFが送り速度Fの2倍より大きいか否か判定する。tempFが送り速度Fの2倍より大きいとき(ステップS25でYes)、ステップS26において、当該加工方法において制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、アプローチ速度F’を送り速度Fの2倍以上か否か判定する。つまり、ハードウェアプロセッサ3は、第1切削量V
Fをみなし切削量V
ESTと近似する(等しくする)ときのアプローチ速度F’が送り速度Fの2倍よりも大きくなるとき、送り速度Fの2倍となるようにアプローチ速度F’を決定する。つまり、当該加工方法では、アプローチ速度F’は、第1切削量V
Fがみなし切削量V
ESTと近似する(等しくする)ときのアプローチ速度F’が送り速度Fの2倍よりも大きくなるとき、送り速度Fの2倍となるように決定される。急激な回転工具T1の負荷の上昇を抑えるため、工作機械の通常の送り速度の変更も2倍以内程度の変更に抑えており、このアプローチ速度F’の変更もそのようなポリシーに沿ってアプローチ速度F’を送り速度Fの2倍以下に制限している。
【0062】
図14と
図15とは、
図6の加工方法の具体的なアプローチ速度算出アルゴリズムを示しているが、
図7~9の加工方法についても同様の近似計算等や既知の近似計算アルゴリズムで算出することができる。また、
図14と
図15との例では、最大推定切削量V
limeを利用した切削量を利用しているが、最大計画切削量V
limpを利用する場合、変数TmFの分子をF・Ad・Td’(
図10参照)とするとよい。なお、ステップS25~S27の処理は、
図7~9の加工方法についても同様に適用される。
<本実施形態における工作機械の加工方法の特徴及び効果>
本実施形態にかかる工作機械1及びその加工方法、プログラムの効果について説明する。
図16は、実施形態に係る工作機械の効果を説明するための図である。
図16では、実線が本願発明に係る工作機械1の送り速度や単位時間あたりの切削量を表したものであり、一点鎖線が特開昭57-205013号公報の回転工具に係る送り速度や単位時間あたりの切削量を比較例として表したものである。
図16中の時間t0は、加工プログラム7にて設定される切削送り開始点であるアプローチ点に回転工具T1が配置される時間である。t1は、回転工具T1がワークWへの接触を開始した時間である。t0からt1までの間の時間で回転工具T1は空転している。t2は、ワークWに接触したことがドライバ14Dの信号から検出される時間である。t1からt2までの間の時間は、検知遅れ時間Te1に相当する。t3は、アプローチ速度F’から送り速度Fまでの送り速度Fへの速度の変更が開始される時間である。t2からt2までの間の時間は、ラグ時間Te2に相当する。t4は、送り速度が、加工プログラム7にて設定される送り速度Fに変化した時間である。
【0063】
本実施形態にかかる工作機械1及びその加工方法、プログラムでは、アプローチ速度F’は、アプローチ速度F’から送り速度Fへの速度の変更が開始される時点t3での回転工具T1がワークWを切削する単位時間あたりの第1切削量V
Fが加工プログラム7で回転工具T1がワークWを第1方向DR1に送り速度Fで切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量V
ESTを超えないように決定される。より好ましくは、第1切削量V
Fがみなし切削量V
ESTと近似するように決定される。このため、
図16の実線のように送り速度や単位時間あたりの切削量が遷移する。したがって、ユーザが加工プログラム7を構築する際に想定した工具寿命を維持しつつアプローチ時間をできるかぎり短縮することができる。
【0064】
図16では、本願発明との比較例として、特開昭57-205013号公報に示されたアプローチ速度の制御方法を示している。特開昭57-205013号公報に示された発明は、エアーカット区間の時間を合理的に可能の限り短縮することを目的とし、そのために工具破損の上限となる動力を決めて、速度変更遅延時間Teを考慮しても工具破損の上限となる動力を超えないようにアプローチ速度F”が決定されている。より具体的には、アプローチ速度F”から送り速度Fまでの送り速度Fへの速度の変更が開始される時点t3での動力が工具破損の上限となる動力を超えない程度に高くするように、アプローチ速度F”が設定される。
図16のV
CPが工具破損の上限となる動力がかかるときの単位時間当たりの切削量を示したものである。この切削量V
CPは、みなし切削量V
ESTよりもずっと大きい。また、時間t3での動力が工具破損の上限となる動力を超えない程度に高くするように設定される送り速度F”は、本実施形態にかかる工作機械1及びその加工方法、プログラムにて求められるアプローチ速度F’よりも大きくなる。したがって、特開昭57-205013号公報に示された発明では、工具の破損は抑止されるものの、ユーザが加工プログラム7を構築する際に想定した工具寿命を下回る恐れがある。
<変形例>
上述の実施形態では、アプローチ速度F’は第1切削量V
Fがみなし切削量V
ESTを上回らないように決定されているが、アプローチ速度F’は第1切削量V
Fがみなし切削量V
ESTと近似するレベルで上回っていてもよい。
【0065】
例えば、アプローチ速度F’は、初期値から一定値だけ増減させ、みなし切削量VESTと第1切削量VFの差を求め、この差が0に最も近くなるような近似解を山登り法などの探索アルゴリズムを使用することによって求められる。この場合、アプローチ速度F’は、複数の候補速度(初期値+一定値の整数倍)のうち、みなし切削量VESTと第1切削量VFとの差の絶対値が最小となる速度に決定される。当該加工方法において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、複数の候補速度のうち、第1切削量VFとみなし切削量VESTとの差の絶対値が最小となる速度にアプローチ速度F’を決定する。
【0066】
図17は、このような近似解を算出する際の
図16のステップS24のアプローチ速度の計算の変形例を表すフローチャートを示す。このアルゴリズムでは、ACDが1~100まで遷移するときに、|CalcuRD-JudgeRD|の極小値が1つしかないことを前提とした山登り法を利用したアルゴリズムである。
図17のステップS251において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、変数ACDに1を代入し、変数tempRDにTdを代入する。ステップS242では、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、上述の(式9)~(式11)に基づいて変数CalcuRD,TmF,JudgeRDをそれぞれ算出する。
【0067】
ステップS253において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、|CalcuRD-JudgeRD|がtempRD未満であるか否か判定する。|CalcuRD-JudgeRD|がtempRD未満である(ステップS253でYes)とき、ステップS254において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、|CalcuRD-JudgeRD|をtempRDに代入し、変数preTmFにTmFを代入する。ステップS254において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、ACDに1を加えて、ステップS242の処理を再度実行する。|CalcuRD-JudgeRD|がtempRD以上であるとき(ステップS253でNo)、ステップS256において、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、このときの変数preTmFの値をtempFと決定する。このようにtempFを決定して、
図14のステップS25~S27の処理が追加で適用されてもよい。このようにアプローチ速度F’を決定してもユーザが加工プログラム7を構築する際に想定した工具寿命を維持しつつアプローチ時間をできるかぎり短縮することができる。
【0068】
上述の実施形態では、工作機械1が立形マシニングセンターである例を示しているが、工作機械1が横形マシニングセンター、旋盤、付加製造装置を含む工作機械においても、切削加工が可能であれば、本実施形態の内容は適用可能である。
【0069】
上述の数値制御装置2の制御プログラム8のロジックの一部または全ての機能が専用のプロセッサや集積回路によって実現されてもよい。上述の制御プログラム8は、数値制御装置2に内蔵されたメモリ4にとどまらず、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROMおよび磁気ディスク等のディスク、SDカード、USBメモリ、外付けハードディスクなど数値制御装置2から取り外し可能で、数値制御装置2に読み取り可能な記憶媒体に記録されたものであってもよい。
【0070】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0071】
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
【0072】
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
【0073】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、実施形態に特段の説明がない限りにおいて、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0074】
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
【0075】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具をモータによって回転させ、
ワークに向かう第1方向に加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で回転工具を移動させ、
前記アプローチ速度で前記第1方向に移動中に前記回転工具が前記ワークに接触したことを、前記モータの負荷によって検出し、
前記ワークに接触したことが検出されると、前記第1方向に前記回転工具を移動させる速度を前記送り速度に変更する、
ことを含み、
前記アプローチ速度は、前記速度の変更が開始される時点での前記回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が前記加工プログラムで前記回転工具が前記ワークを前記第1方向に前記送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量を上回らないように決定される、
ワークの加工方法。
【請求項2】
前記みなし切削量は、前記回転工具が前記ワークを前記送り速度で切削するときの理論上の前記単位時間あたりの最大切削量である、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記みなし切削量は、前記第1方向に見える前記回転工具の表面の面積に前記送り速度を掛けた値に相当する体積である、請求項1に記載の加工方法。
【請求項4】
前記回転工具の回転軸は前記第1方向に対して垂直であって、
前記みなし切削量は、前記回転工具の前記回転軸に沿う軸方向の切込量と、前記回転工具の直径と、前記送り速度との積に相当する体積である、請求項1に記載の加工方法。
【請求項5】
前記アプローチ速度は、前記第1切削量を前記みなし切削量と等しくするときの前記アプローチ速度が前記送り速度の2倍よりも大きくなるとき、前記送り速度の2倍となるように決定される、
請求項1に記載の加工方法。
【請求項6】
回転工具をモータによって回転させ、
ワークに向かう第1方向に加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で回転工具を移動させ、
前記アプローチ速度で前記第1方向に移動中に前記回転工具が前記ワークに接触したことを、前記モータの負荷によって検出し、
前記ワークに接触したことが検出されると、前記第1方向に前記回転工具を移動させる速度を前記送り速度に変更する、
ことを含み、
前記アプローチ速度は、前記速度の変更が開始される時点での前記回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が前記加工プログラムで前記回転工具が前記ワークを前記第1方向に前記送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量に近似するように決定される、
ワークの加工方法。
【請求項7】
前記みなし切削量は、前記回転工具が前記ワークを前記送り速度で切削するときの理論上の前記単位時間あたりの最大切削量である、請求項6に記載の加工方法。
【請求項8】
前記アプローチ速度は、複数の候補速度のうち、前記第1切削量と前記みなし切削量との差の絶対値が最小となる速度に決定される、
請求項6または7に記載の加工方法。
【請求項9】
前記アプローチ速度は、複数の候補速度のうち、前記みなし切削量から前記第1切削量を引いた差が正の最小となる速度に決定される、
請求項6または7に記載の加工方法。
【請求項10】
前記アプローチ速度は、前記第1切削量が前記みなし切削量と近似するときの前記アプローチ速度が前記送り速度の2倍よりも大きくなるとき、前記送り速度の2倍となるように決定される、
請求項6または7に記載の加工方法。
【請求項11】
前記第1切削量は、前記回転工具が前記ワークに接触してから前記ワークに接触したことが検出されるまでの検知遅れ時間に基づいて決定される、
請求項1から7のいずれかに記載の加工方法。
【請求項12】
前記第1切削量は、前記ワークに接触したことが検出されてから前記アプローチ速度から前記送り速度までの前記速度の変更が開始されるまでのラグ時間と前記検知遅れ時間との和である速度変更遅延時間に基づいて決定される、
請求項11に記載のワークの加工方法。
【請求項13】
請求項1から7に係る加工方法を工作機械のプロセッサに実行させるプログラム。
【請求項14】
回転工具を回転軸の周りに回転可能に支持するように構成された工具主軸と、
前記回転工具を前記回転軸の周りに回転させるように構成されたモータと、
前記モータの負荷を検出するように構成されたドライバと、
ワークに向かう第1方向に前記工具主軸を移動させるように構成させた少なくとも1つのアクチュエータと、
前記ドライバからの前記負荷に関する信号を取得し、前記モータと前記少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で前記第1方向に前記回転工具を移動させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記第1方向に前記アプローチ速度で移動中に前記回転工具が前記ワークに接触したことを、前記負荷によって検出し、
前記ワークに接触したことが検出されると、前記回転工具を前記第1方向に移動させる速度を前記送り速度に変更するように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記速度の変更が開始される時点での前記回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が前記加工プログラムで前記回転工具が前記ワークを前記第1方向に前記送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量を上回らないように前記アプローチ速度を決定する、
工作機械。
【請求項15】
前記みなし切削量は、前記回転工具が前記ワークを前記送り速度で切削するときの理論上の前記単位時間あたりの最大切削量である、請求項14に記載の工作機械。
【請求項16】
前記みなし切削量は、前記第1方向に見える前記回転工具の表面の面積に前記送り速度を掛けた値に相当する体積である、請求項14に記載の工作機械。
【請求項17】
前記回転工具の回転軸は前記第1方向に対して垂直であって、
前記みなし切削量は、前記回転工具の前記回転軸に沿う軸方向の切込量と、前記回転工具の直径と、前記送り速度との積に相当する体積である、請求項14に記載の工作機械。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記第1切削量を前記みなし切削量と等しくするときの前記アプローチ速度が前記送り速度の2倍よりも大きくなるとき、前記送り速度の2倍となるように前記アプローチ速度を決定する、
請求項14から17のいずれかに記載の工作機械。
【請求項19】
回転工具を回転軸の周りに回転可能に支持するように構成された工具主軸と、
前記回転工具を前記回転軸の周りに回転させるように構成されたモータと、
前記モータの負荷を検出するように構成されたドライバと、
ワークに向かう第1方向に前記工具主軸を移動させるように構成させた少なくとも1つのアクチュエータと、
前記ドライバからの前記負荷に関する信号を取得し、前記モータと前記少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
加工プログラムで設定された送り速度よりも大きいアプローチ速度で前記第1方向に前記回転工具を移動させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記第1方向に前記アプローチ速度で移動中に前記回転工具が前記ワークに接触したことを、前記負荷によって検出し、
前記ワークに接触したことが検出されると、前記回転工具を前記第1方向に移動させる速度を前記送り速度に変更するように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記速度の変更が開始される時点での前記回転工具が前記ワークを切削する単位時間あたりの第1切削量が前記加工プログラムで前記回転工具が前記ワークを前記第1方向に前記送り速度で切削するときの単位時間あたりの切削量とみなすみなし切削量に近似するように前記アプローチ速度を決定する、
工作機械。
【請求項20】
前記みなし切削量は、前記回転工具と前記ワークとの接触面積が最大となる前記第1方向の深さに前記回転工具が前記ワークに進入し、前記第1方向に前記送り速度で切削するとみなしたときの理論上の前記単位時間あたりの切削量である、請求項19に記載の工作機械。
【請求項21】
前記プロセッサは、複数の候補速度のうち、前記第1切削量と前記みなし切削量との差の絶対値が最小となる速度に前記アプローチ速度を決定する、
請求項19または20に記載の工作機械。
【請求項22】
前記プロセッサは、複数の候補速度のうち、前記みなし切削量から前記第1切削量を引いた差が正の最小となる速度に前記アプローチ速度を決定する、
請求項19または20に記載の工作機械。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記第1切削量が前記みなし切削量と近似するときの前記アプローチ速度が前記送り速度の2倍よりも大きくなるとき、前記送り速度の2倍となるように前記アプローチ速度を決定する、
請求項19または20記載の工作機械。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記回転工具が前記ワークに接触してから前記ワークに接触したことが検出されるまでの検知遅れ時間に基づいて前記第1切削量を決定する、
請求項19または20記載の加工方法。
【請求項25】
前記プロセッサは、前記ワークに接触したことが検出されてから前記アプローチ速度から前記送り速度までの前記速度の変更が開始されるまでのラグ時間と前記検知遅れ時間との和である速度変更遅延時間に基づいて前記第1切削量を決定する、
請求項24に記載の工作機械。