(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019781
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】インジェクタクリップおよびインジェクタ取付構造
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20250131BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
F02M55/02 350H
F02M61/16 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123590
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003502
【氏名又は名称】弁理士法人芳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA53
(57)【要約】
【課題】作業者の手などが作業中にインジェクタクリップに接触することで正規の位置からずれたり、インジェクタから外れたりすることを抑えることができるインジェクタクリップおよびインジェクタ取付構造を提供すること。
【解決手段】インジェクタクリップ4は、インジェクタの外周部に装着される基部41と、基部41の装着方向A1に対する一方の側方A5において基部41に接続され一方の側方A5の接続部から表面411に対して垂直方向A2に延びた第1側部42と、装着方向A1に対する他方の側方A6において基部41に接続され他方の側方A6の接続部から表面411に対して垂直方向A2に延びた第2側部43と、を備える。第1側部42および第2側部43のそれぞれは、垂直方向A2の延出端部における装着方向A1および装着方向A1とは反対方向A3の少なくともいずれかの端部に形成され接触を回避する切り欠き部451、452を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射するインジェクタを保持し、前記インジェクタが燃料供給管に取り付けられた状態を維持するインジェクタクリップであって、
前記インジェクタの外周部に装着される基部と、
前記基部の装着方向に対する一方の側方において前記基部に接続され前記一方の側方の接続部から前記基部の表面に対して垂直方向に延びた第1側部と、
前記装着方向に対する他方の側方において前記基部に接続され前記他方の側方の接続部から前記表面に対して前記垂直方向に延びた第2側部と、
を備え、
前記第1側部および前記第2側部のそれぞれは、前記垂直方向の延出端部における前記装着方向および前記装着方向とは反対方向の少なくともいずれかの端部に形成され接触を回避する切り欠き部を有することを特徴とするインジェクタクリップ。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記装着方向の端部に形成されるとともに前記垂直方向に対して傾斜する方向に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタクリップ。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記反対方向の端部においてラウンド状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタクリップ。
【請求項4】
前記反対方向の端部において前記第1側部、前記第2側部および前記基部の少なくともいずれかに接続され前記垂直方向に延びた背部をさらに備え、
前記背部は、前記垂直方向の一方の端部において前記垂直方向から鋭角方向に延び前記インジェクタの外面から外側に向かって突出した突起部が嵌まる嵌合部を有することを特徴とする請求項1に記載のインジェクタクリップ。
【請求項5】
前記基部は、
前記外周部が嵌まる開口部と、
前記開口部と前記基部の外部とを空間的に接続し前記外周部が通過可能に形成された通過部と、
を有し、
前記開口部と前記通過部との境界部に形成された前記基部の第1ラウンド部の径は、前記外部と前記通過部との境界部に形成された前記基部の第2ラウンド部の径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタクリップ。
【請求項6】
燃料を噴射するインジェクタと、
前記インジェクタに接続された円筒状のカップを有し前記燃料を前記インジェクタに供給する燃料供給管と、
前記インジェクタを保持し前記インジェクタが前記燃料供給管に取り付けられた状態を維持するインジェクタクリップと、
を備え、
前記カップは、円筒の外面から経方向の外側に向かって延びた鍔部を有し、
前記インジェクタクリップは、
前記インジェクタの外周部に装着された基部と、
前記基部の装着方向に対する一方の側方において前記基部に接続され前記一方の側方の接続部から前記基部の表面に対して垂直方向に延びた第1側部と、
前記装着方向に対する他方の側方において前記基部に接続され前記他方の側方の接続部から前記表面に対して前記垂直方向に延びた第2側部と、
を有し、
前記第1側部および前記第2側部のそれぞれは、前記鍔部が嵌まる孔部を有し、前記孔部が延びた方向における両方の端部において前記鍔部から離れたことを特徴とするインジェクタ取付構造。
【請求項7】
前記基部は、前記外周部が嵌まる開口部を有し、
前記両方の端部における前記第1側部および前記第2側部のそれぞれと前記鍔部との間の距離は、前記開口部の内縁と前記外周部との間の距離よりも長いことを特徴とする請求項6に記載のインジェクタ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジェクタクリップおよびインジェクタ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エンジンに燃料を噴射するインジェクタを保持するインジェクタクリップが存在する。特許文献1には、板材をプレスで打ち抜き、打ち抜いた材料を所定の形状に曲げ加工することにより形成された支持クランプが開示されている。特許文献1に記載された支持クランプは、主面部から上方に延出された回転止め突部を有する。
【0003】
特許文献2には、1本の線材から形成された荷重伝達部材と、荷重伝達部材とは別体に形成された嵌合部材と、を備えた燃料噴射弁用クリップが開示されている。特許文献2に記載された燃料噴射弁用クリップの荷重伝達部材は、y方向に直線的に延びた当接部と、ばね部と、被押圧部と、を有する。ばね部は、当接部の一端から上方向に向かって被押圧部との間を接続するように形成されている。被押圧部は、当接部の中間部の直上において、山形の頂点、すなわち極大点に位置している。特許文献2に記載された燃料噴射弁用クリップの嵌合部材は、z方向に延びる板状を呈しており、プラスz方向の端部に、接続管の被嵌合部に嵌合可能な嵌合端部が形成されている。
【0004】
例えば特許文献1および特許文献2に記載されたように、一般的に、インジェクタを保持するインジェクタクリップでは、インジェクタクリップおよびインジェクタの回転を止める部分、接続管等に押圧されて弾性変形し付勢力を与える部分、および接続管等に嵌まる部分などの各種機能部が、外側に向かって突出して形成されている。
【0005】
しかし、インジェクタクリップの部分が外側に向かって突出して形成されていると、例えば作業者の手が作業中にインジェクタクリップに接触し、インジェクタクリップが正規の位置からずれたり、インジェクタから外れたりするおそれがある。インジェクタクリップが正規の位置からずれたり、インジェクタから外れたりすると、インジェクタが正規の位置からずれるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-168965号公報
【特許文献2】特開2016-180321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、作業者の手などが作業中にインジェクタクリップに接触することで正規の位置からずれたり、インジェクタから外れたりすることを抑えることができるインジェクタクリップおよびインジェクタ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、燃料を噴射するインジェクタを保持し、前記インジェクタが燃料供給管に取り付けられた状態を維持するインジェクタクリップであって、前記インジェクタの外周部に装着される基部と、前記基部の装着方向に対する一方の側方において前記基部に接続され前記一方の側方の接続部から前記基部の表面に対して垂直方向に延びた第1側部と、前記装着方向に対する他方の側方において前記基部に接続され前記他方の側方の接続部から前記表面に対して前記垂直方向に延びた第2側部と、を備え、前記第1側部および前記第2側部のそれぞれは、前記垂直方向の延出端部における前記装着方向および前記装着方向とは反対方向の少なくともいずれかの端部に形成され接触を回避する切り欠き部を有することを特徴とするインジェクタクリップである。
【0009】
本発明の第2態様は、燃料を噴射するインジェクタと、前記インジェクタに接続された円筒状のカップを有し前記燃料を前記インジェクタに供給する燃料供給管と、前記インジェクタを保持し前記インジェクタが前記燃料供給管に取り付けられた状態を維持するインジェクタクリップと、を備え、前記カップは、円筒の外面から経方向の外側に向かって延びた鍔部を有し、前記インジェクタクリップは、前記インジェクタの外周部に装着された基部と、前記基部の装着方向に対する一方の側方において前記基部に接続され前記一方の側方の接続部から前記基部の表面に対して垂直方向に延びた第1側部と、前記装着方向に対する他方の側方において前記基部に接続され前記他方の側方の接続部から前記表面に対して前記垂直方向に延びた第2側部と、を有し、前記第1側部および前記第2側部のそれぞれは、前記鍔部が嵌まる孔部を有し、前記孔部が延びた方向における両方の端部において前記鍔部から離れたことを特徴とするインジェクタ取付構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者の手などが作業中にインジェクタクリップに接触することで正規の位置からずれたり、インジェクタから外れたりすることを抑えることができるインジェクタクリップおよびインジェクタ取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るインジェクタ取付構造を表す平面図である。
【
図2】
図1に表した切断面A-Aにおける断面図である。
【
図3】
図1に表した切断面B-Bにおける断面図である。
【
図4】本実施形態に係るインジェクタ取付構造を表す分解図である。
【
図5】本実施形態に係るインジェクタクリップを表す斜視図である。
【
図6】本実施形態に係るインジェクタクリップを表す斜視図である。
【
図7】本実施形態に係るインジェクタクリップを表す上面図である。
【
図8】本実施形態に係るインジェクタクリップを表す側面図である。
【
図9】本実施形態に係るインジェクタクリップを表す背面図である。
【
図10】本実施形態に係るインジェクタクリップを表す底面図である。
【
図11】
図3に表した切断面C-Cにおける断面図である。
【
図12】
図3に表した切断面D-Dにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るインジェクタ取付構造を表す平面図である。
図2は、
図1に表した切断面A-Aにおける断面図である。
図3は、
図1に表した切断面B-Bにおける断面図である。
図4は、本実施形態に係るインジェクタ取付構造を表す分解図である。
【0014】
本実施形態に係るインジェクタ取付構造2は、燃料供給管3と、インジェクタクリップ4と、インジェクタ5と、を備える。
【0015】
燃料供給管3は、レール31と、カップ32と、を有する。
図2および
図3に表したように、レール31は、例えば角筒状に形成されており、フューエルポンプから供給された高圧燃料をエンジン(内燃機関)6の気筒数に応じて複数の経路に分配する。
図1~
図3は、複数の経路のうちの1つの経路を表している。カップ32は、円筒状に形成されており、レール31の底面に取り付けられている。言い換えれば、カップ32は、レール31の底面からエンジン6に向かって突出するように設けられている。
【0016】
インジェクタ5は、燃料供給管3とエンジン6との間に設けられる。具体的には、
図2に表したように、インジェクタ5の燃料入口51の近傍部分が、カップ32に挿入され、Oリング541を介してカップ32の内面321に密着している。つまり、インジェクタ5の燃料入口51の近傍部分は、カップ32に接続されている。また、インジェクタ5の噴射孔52の近傍部分が、エンジン6の取付穴61に挿入され、Oリング542を介して取付穴61の内面611に密着している。つまり、インジェクタ5の噴射孔52の近傍部分は、エンジン6に接続されている。
【0017】
燃料供給管3は、フューエルポンプから供給された燃料をレール31を通して複数の経路に分配し、カップ32に接続されたインジェクタ5に供給する。そして、インジェクタ5は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)からコネクタ53に入力される信号に基づいて例えばソレノイドによりニードル弁を開閉し、燃料供給管3から供給される燃料を噴射孔52からエンジン6に噴射する。
【0018】
インジェクタクリップ4は、インジェクタ5およびカップ32に取り付けられ、インジェクタ5を保持してインジェクタ5が燃料供給管3のカップ32に取り付けられた状態を維持する。
図4に表した矢印A1のように、まず、インジェクタクリップ4は、インジェクタ5の外周部に装着される。具体的には、インジェクタクリップ4は、インジェクタ5の外周部に設けられた溝55に嵌まる。
図4に表した矢印A1の方向は、本発明の「装着方向」の一例である。続いて、
図4に表した矢印A2のように、インジェクタ5は、インジェクタクリップ4がインジェクタ5に装着された状態のままで、燃料供給管3のカップ32に装着される。具体的には、
図3および
図4に表したように、カップ32の鍔部323が、カップ32の円筒の外面324から経方向の外側に向かって延びており、インジェクタクリップ4に形成された第2孔部433に嵌まる。このようにして、インジェクタクリップ4は、インジェクタ5を保持し、インジェクタ5が燃料供給管3のカップ32に取り付けられた状態を維持する。
【0019】
次に、本実施形態に係るインジェクタクリップ4を、図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係るインジェクタクリップを表す斜視図である。
図6は、本実施形態に係るインジェクタクリップを表す斜視図である。
図7は、本実施形態に係るインジェクタクリップを表す上面図である。
図8は、本実施形態に係るインジェクタクリップを表す側面図である。
図9は、本実施形態に係るインジェクタクリップを表す背面図である。
図10は、本実施形態に係るインジェクタクリップを表す底面図である。
【0020】
図7は、
図5に表した矢印A4の方向に向かってインジェクタクリップ4を眺めたときの平面図に相当する。
図8は、
図5に表した矢印A5の方向に向かってインジェクタクリップ4を眺めたときの平面図に相当する。
図9は、
図5に表した矢印A1の方向に向かってインジェクタクリップ4を眺めたときの平面図に相当する。
図10は、
図5に表した矢印A2の方向に向かってインジェクタクリップ4を眺めたときの平面図に相当する。
【0021】
図4に関して前述した通り、矢印A1の方向は、本発明の「装着方向」の一例である。矢印A3の方向は、矢印A1の反対方向であり、本発明の「反対方向」の一例である。矢印A2の方向および矢印A4の方向は、インジェクタクリップ4の基部41の表面411に対して垂直方向であり、本発明の「垂直方向」の一例である。
図4に関して前述した通り、矢印A2の方向は、カップ32に対するインジェクタ5の挿入方向である。矢印A5の方向および矢印A6の方向は、インジェクタクリップ4の基部41の表面411に対して平行方向、かつ矢印A1の方向および矢印A3の方向に対して垂直方向である。すなわち、矢印A5の方向および矢印A6の方向は、矢印A1の方向および矢印A3の方向に対して垂直方向、かつ矢印A2の方向および矢印A4の方向に対して垂直方向である。
【0022】
インジェクタクリップ4は、例えば金属の板材をプレス加工することにより形成される。但し、インジェクタクリップ4の形成方法は、これだけに限定されるわけではない。
図5~
図7に表したように、インジェクタクリップ4は、基部41を有する。基部41は、インジェクタ5の外周部に装着される部分であり、開口部412と、通過部413と、を有する。開口部412は、基部41の中央部を貫通して形成されている。通過部413は、開口部412と基部41の外部とを空間的に接続しており、インジェクタ5の外周部が通過可能に形成されている。
【0023】
基部41が矢印A1の方向(すなわち装着方向)に向かってインジェクタ5の溝55(
図4参照)に挿入されると、インジェクタ5の溝55の底部551(
図4参照)が、インジェクタクリップ4の通過部413を通過する。この際、インジェクタクリップ4の通過部413は、矢印A5の方向および矢印A6の方向に広がる。そして、インジェクタ5の溝55の底部551は、インジェクタクリップ4の通過部413を通過し、開口部412に嵌まる。このようにして、インジェクタクリップ4の基部41は、インジェクタ5の外周部に設けられた溝55に嵌まり、インジェクタ5に装着される。
【0024】
ここで、
図7および
図10に表したように、開口部412と通過部413との境界部に形成された基部41の第1ラウンド部414の径R1は、基部41の外部と通過部413との境界部に形成された基部41の第2ラウンド部415の径R2よりも小さい。言い換えれば、基部41の第2ラウンド部415の径R2は、基部41の第1ラウンド部414の径R1よりも大きい。これにより、インジェクタ5の溝55の底部551は、第2ラウンド部415に案内されてインジェクタクリップ4の通過部413を容易に通過し、開口部412に嵌まりやすい。一方で、第1ラウンド部414の径R1が第2ラウンド部415の径R2よりも小さいため、インジェクタ5の溝55の底部551は、開口部412に一旦嵌まると、開口部412から抜けにくい。つまり、インジェクタクリップ4の基部41がインジェクタ5の溝55から容易に外れることを抑えることができる。
【0025】
図5および
図6に表したように、インジェクタクリップ4は、第1側部42と、第2側部43と、を有する。第1側部42は、基部41の装着方向(すなわち矢印A1の方向)に対する一方の側方において基部41に接続され、基部41の一方の側方の接続部から基部41の表面411に対して垂直方向(本実施形態では矢印A2の方向)に延びている。本実施形態において、基部41の装着方向に対する一方の側方とは、矢印A5の方向である。すなわち、第1側部42は、矢印A5の方向における基部41の側端に接続されている。第2側部43は、基部41の装着方向に対する他方の側方において基部41に接続され、基部41の他方の側方の接続部から基部41の表面411に対して垂直方向(本実施形態では矢印A2の方向)に延びている。本実施形態において、基部41の装着方向に対する他方の側方とは、矢印A6の方向である。すなわち、第2側部43は、矢印A6の方向における基部41の側端に接続されている。
【0026】
第1側部42は、第1側壁部421と、第1拡大部422と、を有する。第1側壁部421は、基部41の装着方向に対する一方の側方において基部41に接続され、基部41の一方の側方の接続部から基部41の表面411に対して垂直方向に延びた部分である。
図5に表したように、第1側壁部421は、第1孔部423を有する。第1孔部423は、矢印A1の方向および矢印A3の方向に沿って延びて形成されており、第1側壁部421を貫通している。
図5および
図9に表したように、第1拡大部422は、矢印A2の方向における第1側壁部421の端部(すなわち上端)に接続され、第1側壁部421から離れるにつれて矢印A5の方向に広がるように延びている。
【0027】
第2側部43は、第2側壁部431と、第2拡大部432と、を有する。第2側壁部431は、基部41の装着方向に対する他方の側方において基部41に接続され、基部41の他方の側方の接続部から基部41の表面411に対して垂直方向に延びた部分である。
図6に表したように、第2側壁部431は、第2孔部433を有する。第2孔部433は、矢印A1の方向および矢印A3の方向に沿って延びて形成されており、第2側壁部431を貫通している。
図6および
図9に表したように、第2拡大部432は、矢印A2の方向における第2側壁部431の端部(すなわち上端)に接続され、第2側壁部431から離れるにつれて矢印A6の方向に広がるように延びている。
【0028】
図5~
図10に表したように、インジェクタクリップ4は、背部44を有する。背部44は、第1側部42および第2側部43に接続され、インジェクタクリップ4の基部41の表面411に対して垂直方向(すなわち矢印A2の方向および矢印A4の方向)に沿って延びている。背部44は、基部41に接続されていてもよい。
【0029】
図5、
図6および
図9に表したように、背部44は、中央部446に形成された凹部441を有する。また、背部44は、嵌合部445を有する。嵌合部445は、矢印A4の方向における背部44の端部に設けられ、第1爪部442と第2爪部443とを有する。矢印A4の方向における背部44の端部は、本発明の「垂直方向の一方の端部」の一例である。
図8に表したように、第1爪部442および第2爪部443は、矢印A4の方向における背部44の端部において矢印A4の方向から鋭角方向に曲げられ延びている。また、
図6および
図10に表したように、第1爪部442および第2爪部443は、矢印A5の方向および矢印A6の方向において互いに離れている。そのため、第1爪部442と第2爪部443との間には、隙間444が形成されている。
【0030】
図1に表したように、インジェクタクリップ4がインジェクタ5に装着されたとき、すなわちインジェクタクリップ4の基部41がインジェクタ5の溝55に嵌まったとき、インジェクタ5の外面から外側に向かって突出した突起部56が、第1爪部442と第2爪部443との間の隙間444に嵌まる。これにより、インジェクタ5に対するインジェクタクリップ4の回転が抑えられる。
【0031】
図4に関して前述したように、インジェクタ5は、インジェクタクリップ4がインジェクタ5に装着された状態のままで、燃料供給管3のカップ32に装着される。このとき、第1拡大部422が第1側壁部421から離れるにつれて矢印A5の方向に広がるように延び、第2拡大部432が第2側壁部431から離れるにつれて矢印A6の方向に広がるように延びているため、作業者等は、インジェクタクリップ4がインジェクタ5に装着された状態のままで、インジェクタ5を燃料供給管3のカップ32に容易に装着できる。そして、カップ32の鍔部323が、第1側壁部421に形成された第1孔部423と、第2側壁部431に形成された第2孔部433と、に嵌まる。
【0032】
このとき、
図1および
図2に表したように、カップ32の突起部322が、カップ32の円筒の外面324から経方向の外側に向かって延びており、インジェクタクリップ4の背部44に形成された凹部441に嵌まる。突起部322は、鍔部323と比較して、カップ32の円筒の外面324から経方向の外側に向かってさらに延びた部分である。カップ32の突起部322がインジェクタクリップ4の凹部441に嵌まることにより、カップ32に対するインジェクタクリップ4の回転が抑えられる。これにより、カップ32に対するインジェクタ5の回転は、インジェクタクリップ4により抑えられる。このようにして、インジェクタクリップ4は、インジェクタ5を保持し、インジェクタ5が燃料供給管3のカップ32に取り付けられた状態を維持する。
【0033】
ここで、
図2および
図3に表したように、インジェクタクリップ4が、インジェクタ5を保持し、インジェクタ5が燃料供給管3のカップ32に取り付けられた状態を維持している状態では、インジェクタ5のコネクタ53がインジェクタクリップ4の近傍に存在する。そのため、例えば、インジェクタクリップの部分が外側に向かって突出して形成されていると、作業者がハーネスをコネクタに接続する作業を行っているときに、作業者の手がインジェクタクリップに接触することがある。そうすると、インジェクタクリップが正規の位置からずれたり、インジェクタから外れたりするおそれがある。インジェクタクリップが正規の位置からずれたり、インジェクタから外れたりすると、インジェクタが正規の位置からずれるおそれがある。作業者の手が作業中にインジェクタクリップに接触するおそれは、作業者がハーネスをコネクタに接続する作業を行っているときだけではなく他の作業中においても起こり得る。
【0034】
これに対して、
図5および
図8に表したように、本実施形態に係るインジェクタクリップ4の第1側部42および第2側部43のそれぞれは、切り欠き部451を有する。切り欠き部451は、第1側部42および第2側部43のそれぞれが基部41の接続部から延びた方向(本実施形態では矢印A2の方向)の延出端部における装着方向(すなわち矢印A1の方向)の端部に形成されている。切り欠き部451は、基部41の表面411の垂直方向に対して傾斜する方向に形成されている。そのため、作業者がハーネスをコネクタ53に接続する作業を行っているときに、作業者の手がインジェクタクリップ4に接触することを回避できる。これにより、作業者の手などが作業中にインジェクタクリップ4に接触することでインジェクタクリップ4が正規の位置からずれたり、インジェクタ5から外れたりすることを抑えることができる。
【0035】
また、
図5および
図8に表したように、本実施形態に係るインジェクタクリップ4の第1側部42および第2側部43のそれぞれは、切り欠き部452を有する。切り欠き部452は、第1側部42および第2側部43のそれぞれが基部41の接続部から延びた方向(本実施形態では矢印A2の方向)の延出端部における装着方向の反対方向(すなわち矢印A3の方向)の端部に形成されている。切り欠き部452は、第1側部42および第2側部43のそれぞれの延出端部における装着方向の反対方向の端部においてラウンド状(すなわち丸い形状)に形成されている。そのため、作業者がコネクタ53の位置とは反対側の位置において作業を行うときに、作業者の手がインジェクタクリップ4に接触することを回避できる。これにより、作業者の手などが作業中にインジェクタクリップ4に接触することでインジェクタクリップ4が正規の位置からずれたり、インジェクタ5から外れたりすることを抑えることができる。
【0036】
前述したように、インジェクタ5の溝55の底部551がインジェクタクリップ4の通過部413を通過する際、インジェクタクリップ4の通過部413は、矢印A5の方向および矢印A6の方向に広がる。具体的には、通過部413の近傍の第1側部42が矢印A5の方向に移動し、通過部413の近傍の第2側部43が矢印A6の方向に移動する。そのため、背部44の中央部446は、曲げ応力を受ける。そこで、カップ32の突起部322が背部44の凹部441に確実に嵌まるための凹部441の深さを確保しつつ、背部44の中央部446の垂直方向(すなわち矢印A2の方向および矢印A4の方向)の寸法L11(
図9参照)を確保しようとすると、第1爪部442および第2爪部443がインジェクタ5の突起部56の表面に対向できないおそれがある。第1爪部442および第2爪部443がインジェクタ5の突起部56の表面に対向できないと、インジェクタ5の突起部56が第1爪部442と第2爪部443との間の隙間444に嵌まることができない。
【0037】
これに対して、第1爪部442および第2爪部443は、矢印A4の方向における背部44の端部において矢印A4の方向から鋭角方向に曲げられ延びている。そのため、カップ32の突起部322が背部44の凹部441に確実に嵌まるための凹部441の深さを確保し、かつ、背部44の中央部446の垂直方向の寸法L11を確保しつつ、第1爪部442および第2爪部443は、インジェクタ5の突起部56の表面に確実に対向できる。そのため、インジェクタ5の突起部56は、第1爪部442と第2爪部443との間の隙間444に確実に嵌まることができる。これにより、背部44の凹部441の深さを確保し、かつ、背部44の中央部446の垂直方向の寸法L11を確保しつつ、嵌合部445は、インジェクタ5に対するインジェクタクリップ4の回転防止の機能を発揮できる。
【0038】
次に、本実施形態に係るインジェクタ取付構造を、図面を参照してさらに説明する。
図11は、
図3に表した切断面C-Cにおける断面図である。
図12は、
図3に表した切断面D-Dにおける断面図である。
【0039】
図5~
図10に関して前述したように、インジェクタクリップ4がインジェクタ5に装着された状態のままで、インジェクタ5が燃料供給管3のカップ32に装着されると、カップ32の鍔部323が、第1側部42の第1側壁部421に形成された第1孔部423と、第2側部43の第2側壁部431に形成された第2孔部433と、に嵌まる。このとき、第1孔部423および第2孔部433が延びた方向(すなわち矢印A1の方向および矢印A3の方向)における両方の端部において、第1側部42および第2側部43は、カップ32の鍔部323から離れている。
【0040】
具体的には、
図11に表したように、第1孔部423の矢印A1の方向の端部において、第1側部42の第1側壁部421と、カップ32の鍔部323と、の間には、距離L1の隙間が生じている。第1孔部423の矢印A3の方向の端部において、第1側部42の第1側壁部421と、カップ32の鍔部323と、の間には、距離L2の隙間が生じている。第2孔部433の矢印A1の方向の端部において、第2側部43の第2側壁部431と、カップ32の鍔部323と、の間には、距離L3の隙間が生じている。第2孔部433の矢印A3の方向の端部において、第2側部43の第2側壁部431と、カップ32の鍔部323と、の間には、距離L4の隙間が生じている。
【0041】
これによれば、カップ32の鍔部323が、第1孔部423および第2孔部433が延びた方向における両方の端部において、第1側部42および第2側部43に接触し、第1側部42および第2側部43に乗り上げることを抑えることができる。これにより、作業者の手などが作業中にインジェクタクリップ4に接触することでインジェクタクリップ4が正規の位置からずれたり、インジェクタ5から外れたりすることを抑えることができる。
【0042】
図11および
図12に表したように、第1孔部423および第2孔部433の両方の端部における第1側部42および第2側部43のそれぞれと、カップ32の鍔部323と、の間の距離L1~L4は、基部41の開口部412の内縁416(
図7および
図10を参照)と、インジェクタ5の外周部と、の間の距離L5、L6よりも長い。具体的には、第1側部42に接続された基部41の開口部412の内縁416と、インジェクタ5の溝55の底部551と、の間の距離L5は、第1孔部423および第2孔部433の両方の端部における第1側部42および第2側部43のそれぞれと、カップ32の鍔部323と、の間の距離L1~L4よりも短い。また、第2側部43に接続された基部41の開口部412の内縁416と、インジェクタ5の溝55の底部551と、の間の距離L6は、第1孔部423および第2孔部433の両方の端部における第1側部42および第2側部43のそれぞれと、カップ32の鍔部323と、の間の距離L1~L4よりも短い。
【0043】
これによれば、作業者の手などが作業中にインジェクタクリップ4に接触することでインジェクタクリップ4が移動した場合、カップ32の鍔部323が第1孔部423および第2孔部433の両方の端部における第1側部42および第2側部43に接触するよりも先に、インジェクタ5の溝55の底部551が、基部41の開口部412の内縁416に接触する。そのため、インジェクタクリップ4が移動した場合であっても、カップ32の鍔部323が、第1孔部423および第2孔部433が延びた方向における両方の端部において、第1側部42および第2側部43に接触し、第1側部42および第2側部43に乗り上げることを抑えることができる。これにより、作業者の手などが作業中にインジェクタクリップ4に接触することでインジェクタクリップ4が正規の位置からずれたり、インジェクタ5から外れたりすることをより確実に抑えることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0045】
2:インジェクタ取付構造、 3:燃料供給管、 4:インジェクタクリップ、 5:インジェクタ、 6:エンジン、 31:レール、 32:カップ、 41:基部、 42:第1側部、 43:第2側部、 44:背部、 51:燃料入口、 52:噴射孔、 53:コネクタ、 55:溝、 56:突起部、 61:取付穴、 321:内面、 322:突起部、 323:鍔部、 324:外面、 411:表面、 412:開口部、 413:通過部、 414:第1ラウンド部、 415:第2ラウンド部、 416:内縁、 421:第1側壁部、 422:第1拡大部、 423:第1孔部、 431:第2側壁部、 432:第2拡大部、 433:第2孔部、 441:凹部、 442:第1爪部、 443:第2爪部、 444:隙間、 445:嵌合部、 446:中央部、 451:切り欠き部、 452:切り欠き部、 541:Oリング、 542:Oリング、 551:底部、 611:内面