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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019784
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】カバーガラス及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20250131BHJP
   C03C 17/36 20060101ALI20250131BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20250131BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20250131BHJP
【FI】
G02B5/00 B
C03C17/36
H04N23/55
G02B1/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123595
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中室 友良
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4G059
5C122
【Fターム(参考)】
2H042AA09
2H042AA15
2H042AA22
2K009AA02
2K009BB02
2K009CC03
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC04
4G059AC20
4G059DA07
4G059DB02
4G059EA01
4G059EA04
4G059EA05
4G059EA12
4G059EB03
4G059EB04
4G059GA02
4G059GA05
4G059GA14
5C122DA03
5C122DA04
5C122EA12
5C122FB01
5C122FC01
5C122FC02
5C122GE01
(57)【要約】
【課題】撮像装置において、イメージセンサへの不要な光の入射を効果的に生じ難くすることができる、カバーガラスを提供する。
【解決手段】撮像装置に用いられ、隣接している透光部1A及び遮光部1Bを有する、カバーガラス1であって、ガラス基板2と、遮光部1Bにおいて、ガラス基板2の主面2a上に設けられており、クロムを含む、遮光膜3と、透光部1Aにおいて、ガラス基板2の主面2a上に設けられている、反射防止膜4とを備え、遮光膜3は、ガラス基板2側に配置されている、第1の主面3aと、第1の主面3aに対向している、第2の主面3bとを有し、第2の主面3bは、平面視において、ガラス基板2側の第1の主面3aよりも透光部1A側に延びている部分を有する、カバーガラス1。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置に用いられ、隣接している透光部及び遮光部を有する、カバーガラスであって、
ガラス基板と、
前記遮光部において、前記ガラス基板の主面上に設けられており、クロムを含む、遮光膜と、
前記透光部において、前記ガラス基板の主面上に設けられている、反射防止膜と、
を備え、
前記遮光膜は、
前記ガラス基板側に配置されている、第1の主面と、
前記第1の主面に対向している、第2の主面と、を有し、
前記第2の主面は、平面視において、前記ガラス基板側の前記第1の主面よりも前記透光部側に延びている部分を有する、カバーガラス。
【請求項2】
前記遮光膜は、前記透光部側の端部において、前記ガラス基板側の第1の主面から前記第2の主面に向かう方向に拡幅している、請求項1に記載のカバーガラス。
【請求項3】
前記ガラス基板の主面上において、前記遮光膜の端部と前記透光部との間に隙間が設けられており、
前記反射防止膜が、前記遮光膜の端部と前記透光部との間の前記隙間を埋めるように設けられている、請求項1又は2に記載のカバーガラス。
【請求項4】
前記反射防止膜が、前記遮光膜上にも設けられている、請求項1又は2に記載のカバーガラス。
【請求項5】
前記遮光膜の厚みが、100nm以上、1000nm以下である、請求項1又は2に記載のカバーガラス。
【請求項6】
前記遮光膜が、
前記ガラス基板の主面上に設けられている、クロム層と、
前記クロム層上に設けられている、窒化クロム層と、
を有する、請求項1又は2に記載のカバーガラス。
【請求項7】
前記遮光膜が、前記窒化クロム層上に設けられている、酸窒化クロム層をさらに有する、請求項6に記載のカバーガラス。
【請求項8】
底部及び枠状の側壁部を有する、筐体と、
前記筐体の前記底部の上に設けられている、イメージセンサと、
前記筐体の前記側壁部の上に設けられている、請求項1又は2に記載のカバーガラスと、
を備え、
前記カバーガラスの前記透光部が、平面視において、前記イメージセンサと重なる位置に配置されており、
前記カバーガラスの前記遮光部が、平面視において、前記イメージセンサと重ならない位置に配置されており、
前記カバーガラスの前記遮光膜及び前記反射防止膜が、前記イメージセンサ側に面するように配置されている、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーガラス及び該カバーガラスを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体にイメージセンサが内蔵された撮像装置が広く用いられている。イメージセンサが、撮像装置の筐体内で反射した光等の不要な光を受光した場合には、フレアやゴースト等の不具合が生じることがある。このような問題を防ぐため、ガラス基板の一方側主面上に遮光膜が設けられたカバーガラス等が用いられることがある。この場合には、撮像装置において光を届かせることが不要な部分を遮光することができる。
【0003】
このようなカバーガラスの一例として、下記の特許文献1には、基体の上面における周囲領域に遮光膜が形成された光学フィルタ部材が開示されている。また、下記の特許文献2には、遮光部及び透光部を有し、遮光部において、ガラス基板の主面上に遮光膜及び反射防止膜が積層されたカバーガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-170182号公報
【特許文献2】特開2021-092605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2のようなカバーガラスにおいても、撮像装置におけるイメージセンサへの不要な光の入射を、なお十分に抑制することが難しいという問題がある。そのため、このようなカバーガラスを用いた撮像装置では、フレアやゴースト等の不具合をより確実に防止することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、撮像装置において、イメージセンサへの不要な光の入射を効果的に生じ難くすることができる、カバーガラス及び該カバーガラスを用いた撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するカバーガラス及び撮像装置の各態様について説明する。
【0008】
本発明の態様1に係るカバーガラスは、撮像装置に用いられ、隣接している透光部及び遮光部を有する、カバーガラスであって、ガラス基板と、前記遮光部において、前記ガラス基板の主面上に設けられており、クロムを含む、遮光膜と、前記透光部において、前記ガラス基板の主面上に設けられている、反射防止膜とを備え、前記遮光膜は、前記ガラス基板側に配置されている、第1の主面と、前記第1の主面に対向している、第2の主面とを有し、前記第2の主面は、平面視において、前記ガラス基板側の前記第1の主面よりも前記透光部側に延びている部分を有することを特徴としている。
【0009】
態様2のカバーガラスは、態様1において、前記遮光膜が、前記透光部側の端部において、前記ガラス基板側の第1の主面から第2の主面に向かう方向に拡幅していてもよい。
【0010】
態様3のカバーガラスは、態様1又は2において、前記ガラス基板の主面上において、前記遮光膜の端部と前記透光部との間に隙間が設けられていてもよい。この場合、前記反射防止膜が、前記遮光膜の端部と前記透光部との間の前記隙間を埋めるように設けられていることが好ましい。
【0011】
態様4のカバーガラスは、態様1~態様3のいずれかの態様において、前記反射防止膜が、前記遮光膜上にも設けられていてもよい。
【0012】
態様5のカバーガラスは、態様1~態様4のいずれかの態様において、前記遮光膜の厚みが、100nm以上、1000nm以下であることが好ましい。
【0013】
態様6のカバーガラスは、態様1~態様5のいずれかの態様において、前記遮光膜が、前記ガラス基板の前記主面上に設けられている、クロム層と、前記クロム層上に設けられている、窒化クロム層とを有していてもよい。
【0014】
態様7のカバーガラスは、態様6において、前記遮光膜が、前記窒化クロム層上に設けられている、酸窒化クロム層をさらに有していてもよい。
【0015】
本発明の態様8に係る撮像装置は、底部及び枠状の側壁部を有する、筐体と、前記筐体の前記底部の上に設けられている、イメージセンサと、前記筐体の前記側壁部の上に設けられている、態様1~態様7のいずれかの態様のカバーガラスとを備え、前記カバーガラスの前記透光部が、平面視において、前記イメージセンサと重なる位置に配置されており、前記カバーガラスの前記遮光部が、平面視において、前記イメージセンサと重ならない位置に配置されており、前記カバーガラスの前記遮光膜及び前記反射防止膜が、前記イメージセンサ側に面するように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮像装置において、イメージセンサへの不要な光の入射を効果的に生じ難くすることができる、カバーガラス及び該カバーガラスを用いた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るカバーガラスを示す模式的平面図である。
図2図2は、図1のカバーガラスにおけるX-X線に沿う部分の模式的断面図である。
図3図3は、図2のカバーガラスにおける遮光膜が設けられる部分を拡大して示す模式的断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係るカバーガラスを備える撮像装置を示す模式的断面図である。
図5図5は、実験例で作製した遮光膜の端部を示す写真である。
図6図6は、図5の遮光膜を覆うように形成した反射防止膜を示す写真である。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係るカバーガラスを示す模式的断面図である。
図8図8は、本発明の第3の実施形態に係るカバーガラスを示す模式的断面図である。
図9図9は、比較例のカバーガラスを備える撮像装置を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るカバーガラスを示す模式的平面図である。図2は、図1のカバーガラスにおけるX-X線に沿う部分の模式的断面図である。また、図3は、図2のカバーガラスにおける遮光膜が設けられる部分を拡大して示す模式的断面図である。
【0020】
カバーガラス1は、撮像装置に用いられるカバーガラスである。カバーガラス1は、隣接している透光部1A及び遮光部1Bを有する。透光部1Aは、撮像装置におけるイメージセンサへの光を透過する部分である。また、遮光部1Bは、撮像装置内に入射する光を遮断する部分である。遮光部1Bを設けることにより、撮像装置におけるイメージセンサへの不要な光の入射を抑制することができる。図1に示すように、遮光部1Bは、平面視において、透光部1Aの周囲領域に設けられている。もっとも、透光部1A及び遮光部1Bの位置関係は、特に限定はされない。
【0021】
図2及び図3に示すように、カバーガラス1は、ガラス基板2と、遮光膜3と、反射防止膜4とを備える。ガラス基板2の主面2a上に、遮光膜3が設けられている。
【0022】
遮光膜3は、平面視において、遮光部1Bと重なる領域に設けられている。また、反射防止膜4は、平面視において、少なくとも透光部1Aと重なる領域に設けられている。
【0023】
遮光膜3は、対向している第1の主面3a及び第2の主面3bを有する。遮光膜3の第1の主面3aは、ガラス基板2の主面2aと接している。従って、遮光膜3の第1の主面3aは、ガラス基板2側に設けられている。また、遮光膜3の第2の主面3bは、ガラス基板2と反対側の外側に設けられている。本実施形態では、遮光膜3の第2の主面3b上にも、反射防止膜4が設けられている。
【0024】
図2及び図3に示すように、遮光膜3の第2の主面3bは、平面視において、第1の主面3aよりも透光部1A側に延びている部分を有する。特に、本実施形態では、遮光膜3が、透光部1A側の端部3cにおいて、ガラス基板2側の第1の主面3aから反射防止膜4側の第2の主面3bに向かう方向に拡幅するように設けられている。
【0025】
本実施形態のカバーガラス1は、上記の構成を備えるので、撮像装置において、イメージセンサへの不要な光の入射を効果的に生じ難くすることができる。これについて、以下詳細に説明する。
【0026】
図9は、比較例のカバーガラスを備える撮像装置を示す模式的断面図である。
【0027】
図9に示すように、比較例のカバーガラス101では、遮光膜103及び反射防止膜104が設けられたガラス基板102の主面102a側が、イメージセンサ106に面するように配置されている。しかしながら、このようなカバーガラス101を用いた撮像装置110においても、イメージセンサ106への不要な光の入射を、なお十分に抑制することが難しく、フレアやゴースト等の不具合をより確実に防止することが難しいという問題があった。
【0028】
この点について、本発明者は、鋭意検討した結果、比較例のようなカバーガラス101では、遮光膜103の透光部101A側の端部103cにおいて、不要な光Aが反射し、その結果反射した光Aがイメージセンサ106に入射する場合があることを見出した。そこで、本発明者は、図4に示すカバーガラス1のような構成とすることにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【0029】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るカバーガラスを備える撮像装置を示す模式的断面図である。
【0030】
図4に示すように、撮像装置10は、本実施形態のカバーガラス1と、筐体5と、イメージセンサ6とを備える。筐体5は、底部5aと、枠状の側壁部5bとを有する。側壁部5bは底部5a上に設けられている。側壁部5b上に、筐体5の内部空間を封止するように、カバーガラス1が設けられている。これにより、イメージセンサ6を収納する筐体が構成されている。イメージセンサ6は、筐体5の底部5a上に配置されている。
【0031】
また、カバーガラス1では、遮光膜3及び反射防止膜4が設けられたガラス基板2の主面2a側が、イメージセンサ6に面するように配置されている。特に、カバーガラス1では、遮光膜3のイメージセンサ6側における第2の主面3bが、平面視において、ガラス基板2側の第1の主面3aよりも透光部1A側に延びている部分を有するので、透光部1A側から入射した不要な光Aを、遮光膜3の端部3cにおいて反射させることで外側へ進行させることができる。これにより、カバーガラス1を備える撮像装置10では、遮光膜3の透光部1A側の端部3cにおいて反射した不要な光Aのイメージセンサ6への入射を確実に生じ難くすることができ、フレアやゴースト等の不具合をより確実に防止することができる。
【0032】
なお、図2及び図3に示すように、遮光膜3は、透光部1A側の端部3cにおいて、ガラス基板2側の第1の主面3aから反射防止膜4側の第2の主面3bに向かう方向に拡幅するように設けられていることが好ましい。この場合、不要な光Aのイメージセンサへの入射をより確実に生じ難くすることができる。
【0033】
また、本実施形態では、ガラス基板2の主面2a上において、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間に隙間3dが設けられており、この隙間3dを埋めるように反射防止膜4が設けられている。そのため、不要な光Aのイメージセンサへの入射をより確実に生じ難くすることができる。もっとも、本発明において、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間の隙間3dには、反射防止膜4が設けられていなくてもよい。
【0034】
以下、カバーガラス1における各部材の詳細について説明する。
【0035】
(ガラス基板)
ガラス基板2は、略矩形板状の形状を有する。もっとも、ガラス基板2は、略円板状の形状を有していてもよく、ガラス基板2の形状は特に限定されない。
【0036】
ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1mm~1.2mmとすることができる。
【0037】
ガラス基板2に用いられるガラスとしては、特に限定されないが、例えば、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス、石英ガラス等を用いることができる。
【0038】
(遮光膜)
図3に示すように、遮光膜3では、ガラス基板2の主面2a上に、クロム層3A、窒化クロム層3B、及び酸窒化クロム層3Cがこの順序で積層されている。なお、クロム層3Aは、クロムを主成分とする膜である。窒化クロム層3Bは、窒化クロムを主成分とする膜である。また、酸窒化クロム層3Cは、酸窒化クロムを主成分とする膜である。なお、本明細書において、各材料を主成分とする膜とは、膜中にその材料を50質量%以上含む膜のことをいい、各材料を主成分とする膜は、不純物を除いてその材料のみにより構成される膜であることが好ましい。
【0039】
遮光膜3では、クロム層3Aが光を反射し、遮光部1Bにおいて不要な光が撮像装置内に入射することを抑制することができる。また、窒化クロム層3Bは、クロム層3Aと反射防止膜4との間に設けられており、反射率調整層として機能する。具体的には、窒化クロム層3Bは、低屈折率層として働き、クロム層3A(高屈折率層)と合わせて光学干渉することによって、反射率を低めることができる。これにより、遮光膜3で反射した不要な光が、イメージセンサに入射することを、より一層効果的に抑制することができる。また、酸窒化クロム層3Cも反射率調整層として機能する。そのため、酸窒化クロム層3Cを用いることにより、遮光膜3で反射した不要な光が、イメージセンサに入射することを、さらに一層効果的に抑制することができる。
【0040】
なお、遮光膜3は、酸窒化クロム層3Cを有していなくてもよい。あるいは、遮光膜3が、クロム層3Aとガラス基板2との間に、別の窒化クロム層や酸窒化クロム層等を有していてもよい。例えば、ガラス基板2の主面2a上に、酸窒化クロム層、窒化クロム層、クロム層、窒化クロム層、及び酸窒化クロム層がこの順で積層されることにより、遮光膜3が形成されていてもよい。また、遮光膜3は、クロムを含んでいればよく、特に限定はされない。
【0041】
遮光膜3における各層の厚みは、特に限定されない。クロム層3Aの厚みは、例えば、50nm以上、250nm以下とすることができる。窒化クロム層3Bの厚みは、例えば、15nm以上、80nm以下とすることができる。また、酸窒化クロム層3Cの厚みは、例えば、10nm以上、70nm以下とすることができる。
【0042】
遮光膜3全体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上、さらに好ましくは200nm以上であり、好ましくは550nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは450nm以下である。カバーガラス1では、遮光膜3の端部3cが上記の構造を有するので、遮光膜3全体の厚みを大きくした場合においても、イメージセンサへの不要な光の入射を効果的に生じ難くすることができる。従って、カバーガラス1では、遮光膜3の厚みを大きく設計することができる。
【0043】
(反射防止膜)
反射防止膜4は、屈折率が相対的に高い高屈折率層と、屈折率が相対的に低い低屈折率層とが積層された誘電体多層膜である。透光部1Aにおいて、反射防止膜4を設けることにより、イメージセンサへの必要な光を効率よく透過させることができる。また、遮光部1Bにおいて、反射防止膜4を設けることにより、遮光膜3で反射した不要な光のイメージセンサへの入射を、より一層効果的に抑制することができる。
【0044】
反射防止膜4は、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層されている部分を有することが好ましい。特に、反射防止膜4では、高屈折率層と低屈折率層とが全て交互に積層されていることがより好ましい。また、反射防止膜4は、高屈折率層から順に積層されていることが好ましいが、低屈折率層から順に積層されていてもよい。なお、反射防止膜4は、上述した機能を有する限りにおいて、誘電体多層膜以外の他の機能膜により構成されていてもよい。
【0045】
高屈折率層の材料としては、例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、窒化ケイ素、又は窒化アルミニウム等が挙げられる。また、低屈折率層の材料としては、例えば、酸化ケイ素、又は酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0046】
反射防止膜4における各層の厚みは、特に限定されない。高屈折率層の厚みは、例えば、1nm以上、150nm以下とすることができる。低屈折率層の厚みは、例えば、1nm以上、200nm以下とすることができる。また、反射防止膜4全体の厚みは、例えば、50nm以上、400nm以下とすることができる。
【0047】
反射防止膜4における各層の数は、特に限定されない。高屈折率層の数は、例えば、2以上、20以下とすることができる。低屈折率層の数は、例えば、2以上、20以下とすることができる。また、反射防止膜4全体の積層数は、例えば、4以上、40以下とすることができる。
【0048】
以下、カバーガラス1の製造方法の一例について説明する。
【0049】
(製造方法)
まず、ガラス基板2を用意する。次に、ガラス基板2の主面2a上に、ポジ型のフォトリソグラフィにより、枠状の遮光膜3を形成する。
【0050】
具体的には、ガラス基板2の主面2aにおける全面に、クロム層3A、窒化クロム層3B、及び酸窒化クロム層3Cをこの順序で成膜する。クロム層3A、窒化クロム層3B、及び酸窒化クロム層3Cの成膜方法としては、特に限定されず、従来公知の成膜方法を用いることができる。クロム層3A、窒化クロム層3B、及び酸窒化クロム層3C(以下、クロム含有層と総称する場合がある)は、例えば、スパッタリング法又は蒸着法により成膜することができる。
【0051】
次に、クロム含有層を成膜したガラス基板2の上に、レジスト材(感光性物質)を塗布する。レジスト材は、例えば、スピンコート法により塗布することができる。次に、レジスト材塗布後のガラス基板2をプリベーグすることにより、溶剤を蒸発させ、レジスト材を固化させる。
【0052】
次に、ガラス基板2に固定したレジスト材に、光照射によりフォトマスクに描写されたパターンを転写する。この際、ガラス基板2のレジスト面とフォトマスクのマスク面とを密着させた状態で露光(コンタクト露光)することが望ましい。なお、フォトマスクとしては、例えば、ガラスマスクを用いることができる。
【0053】
次に、露光したレジスト部分を現像液により除去する。この際、ガラス基板2上で現像液をためて所定時間処理する表面ディップ方式により、露光したレジスト部分を現像液に浸してもよい。現像液に浸した後、水洗し、乾燥処理を施すことにより、露光したレジスト部分を除去することができる。
【0054】
次に、レジスト部分が除去された露出面に位置するクロム含有層を、エッチングにより除去する。
【0055】
エッチングは、例えば、ガラス基板2上でエッチング液をためて所定時間処理する表面ディップ方式により行うことができる。エッチング液としては、例えば、硝酸セリウムアンモニウム、過塩素酸、酢酸、硝酸等を含有する液体を用いることができる。
【0056】
エッチング液の液温は、例えば、10℃以上、50℃以下とすることができる。また、エッチング液への浸漬時間は、例えば、1分以上、5分以下とすることができる。
【0057】
カバーガラス1の製造方法では、上述のようなエッチング工程を経ることにより、遮光膜3の第2の主面3bが、平面視において、第1の主面3aよりも透光部1A側に延びている部分を有する構造を形成することができる。特に、図2及び図3に示すように、遮光膜3が、透光部1A側の端部3cにおいて、ガラス基板2側の第1の主面3aから反射防止膜4側の第2の主面3bに向かう方向に拡幅している構造を形成することができる。
【0058】
次に、クロム含有層の上に設けられているレジスト材を剥離し、ガラス基板2を洗浄する。これにより、枠状の遮光膜3を形成することができる。
【0059】
レジスト材の剥離及びガラス基板2の洗浄は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いて行うことができる。なお、レジスト材の剥離及びガラス基板2の洗浄は、上述の有機溶剤を用いて、超音波洗浄することにより、同時に行うこともできる。
【0060】
次に、ガラス基板2の主面2a上及び遮光膜3を覆うように、反射防止膜4を形成する。これにより、カバーガラス1を形成することができる。
【0061】
反射防止膜4は、高屈折率層及び低屈折率層をこの順に交互に積層することにより形成することができる。このように、反射防止膜4は、高屈折率層から順に積層することが好ましいが、低屈折率層から順に積層してもよい。高屈折率層及び低屈折率層は、それぞれ、蒸着法、スパッタリング法、又はCVD法等により成膜することができる。なかでも、高屈折率層及び低屈折率層は、スパッタリング法により成膜することが好ましい。
【0062】
スパッタリング法により高屈折率層及び低屈折率層を成膜する場合、ガラス基板2の温度は、例えば、20℃以上、300℃以下とすることができる。
【0063】
高屈折率層の成膜は、例えば、高屈折率層を構成する材料のターゲットを用い、キャリアガスとしてのアルゴンガスなどの不活性ガスの流量を50sccm~500sccmとし、印加電力を0.5kW~40kWとして行うことができる。
【0064】
低屈折率層の成膜は、例えば、低屈折率層を構成する材料のターゲットを用い、キャリアガスとしてのアルゴンガスなどの不活性ガスの流量を50sccm~500sccmとし、印加電力を0.5kW~40kWとして行うことができる。
【0065】
スパッタリング法により高屈折率層及び低屈折率層を成膜する場合、成膜圧力を0.05Pa以上、0.8Pa以下とすることが好ましい。このように、成膜圧力を高めに設定する場合、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間の隙間3dにも、反射防止膜4を形成することができる。これは、成膜圧力を高めに設定する場合、スパッタ粒子とガスとの衝突により、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間の隙間3dにも、スパッタ粒子を回り込ませることができるためであると考えられる。また、成膜圧力を低めに設定する場合でも、印加電圧を高めに設定すれば、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間の隙間3dにも、反射防止膜4を形成することができる。なお、スパッタ装置に遮蔽板を設けないなど、スパッタ粒子を斜め方向に飛散させる他の手段によって、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間の隙間3dに、反射防止膜4を形成してもよい。
【0066】
以下、カバーガラス1の製造方法の具体例について、実験例を用いて説明する。
【0067】
(実験例)
まず、ガラス基板2の主面2aにおける全面に、スパッタリング法により、クロム層3A、窒化クロム層3B、及び酸窒化クロム層3Cをこの順序で成膜した。次に、クロム含有層を成膜したガラス基板2の上に、スピンコート法により、レジスト材(感光性物質)を塗布した。次に、レジスト材塗布後のガラス基板2を、110℃で90秒間プリベーグすることにより、溶剤を蒸発させ、レジスト材を固化させた。
【0068】
次に、ガラス基板2に固定したレジスト材に、光照射によりフォトマスクに描写されたパターンを転写した。この際、ガラス基板2のレジスト面とフォトマスクのマスク面とを密着させた状態でコンタクト露光した。なお、フォトマスクとしては、ガラスマスクを用いた。また、光源としては、超高圧水銀灯による光(主波長:i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm))を用いた。
【0069】
次に、スプレー式スピン現像装置を用い、露光したレジスト部分に現像液をためて1分間処理する表面ディップ方式により、露光したレジスト部分を現像液に浸した。なお、現像液としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH、2.38%)を用いた。現像液に浸した後、ガラス基板2を水洗し、乾燥処理を施すことにより、露光したレジスト部分を除去した。
【0070】
次に、露光したレジスト部分が除去された露出面に位置するクロム含有層を、エッチングにより除去した。エッチングは、スプレー式スピン現像装置を用い、ガラス基板2上でエッチング液をためて2分間処理する表面ディップ方式により行った。エッチング液としては、硝酸セリウムアンモニウム17%及び硝酸5%を含有する液体を用いた。エッチング液の液温は、30℃とし、エッチング液への浸漬時間は、2分間とした。
【0071】
次に、超音波洗浄装置を用いて、クロム含有層の上に設けられているレジスト材を剥離し、ガラス基板2を洗浄した。これにより、ガラス基板2の主面2a上に、枠状の遮光膜3を形成した。なお、レジスト材の剥離及び洗浄液としては、N-メチル-2-ピロリドンを用いた。
【0072】
図5は、実験例で作製した遮光膜の端部を示す写真である。
【0073】
図5に示すように、実験例で作製した遮光膜3の端部3cには、ガラス基板2側の第1の主面3aから外側の第2の主面3bに向かう方向に拡幅している構造が形成されていることがわかる。
【0074】
次に、スパッタリング法を用いて、ガラス基板2の主面2a上及び遮光膜3を覆うように反射防止膜4を形成した。具体的には、スパッタリング法を用いて、遮光膜3の上に高屈折率層及び低屈折率層をこの順に交互に積層させることにより反射防止膜4を形成した。
【0075】
スパッタリングに際しては、まず、キャリアガスとしてアルゴンを用い、ニオブ(Nb)のターゲットをスパッタリングし、ガラス基板2の主面2a上及び遮光膜3を覆うように高屈折率層(酸化ニオブ膜)を成膜した。なお、この際、アルゴンガスの流量を330sccmとし、ターゲット印加電力(成膜電力)を4kWとし、成膜圧力を0.3Paとした。次に、キャリアガスとしてアルゴンを用い、シリコン(Si)のターゲットをスパッタリングし、高屈折率層上を覆うように低屈折率層(酸化ケイ素膜)を成膜した。なお、この際、アルゴンガスの流量を330sccmとし、ターゲット印加電力(成膜電力)を5kWとし、成膜圧力を0.3Paとした。この操作を繰り返すことにより、合計6層の膜を有する誘電体多層膜(反射防止膜4)を形成した。
【0076】
図6は、図5の遮光膜を覆うように形成した反射防止膜を示す写真である。
【0077】
図6に示すように、実験例で作製した反射防止膜4は、遮光膜3の端部3cにまで回り込んでおり、遮光膜3の端部3cにおける隙間3dを埋めるように形成されていることがわかる。
【0078】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係るカバーガラスを示す模式的断面図である。
【0079】
図7に示すように、カバーガラス21においては、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間に形成される隙間3dに、反射防止膜4が設けられていない。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0080】
第2の実施形態においても、遮光膜3の第2の主面3bが、平面視において、第1の主面3aよりも透光部1A側に延びている部分を有するので、撮像装置におけるイメージセンサへの不要な光の入射を効果的に生じ難くすることができる。
【0081】
第2の実施形態では、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間に形成される隙間3dに、反射防止膜4が設けられていない。この場合、第1の実施形態のように、スパッタ粒子を斜め方向に飛散させる必要がないことから、遮光膜3の第2の主面3bやガラス基板2の主面2aに、より均一な反射防止膜4を形成することができる。
【0082】
なお、第1の実施形態のように、遮光膜3の端部3cと透光部1Aとの間に形成される隙間3dを埋めるように反射防止膜4を形成すると、隙間3dが空隙である場合と比較して、遮光膜3と空気との界面における反射が生じ難くなる。そのため、隙間3dを埋めるように反射防止膜4を形成する場合、イメージセンサへの不要な光の入射をより確実に生じ難くすることができる。
【0083】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係るカバーガラスを示す模式的断面図である。
【0084】
図8に示すように、カバーガラス31では、ガラス基板2の他方側における主面2b上にも反射防止膜34が設けられている。反射防止膜34は、透光部1A及び遮光部1Bにおいて、ガラス基板2の主面2b上に直接的に設けられている。反射防止膜34は、反射防止膜4と同様に、高屈折率層及び低屈折率層がこの順に積層された誘電体多層膜である。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0085】
第3の実施形態においても、遮光膜3の第2の主面3bが、平面視において、第1の主面3aよりも透光部1A側に延びている部分を有するので、撮像装置におけるイメージセンサへの不要な光の入射を効果的に生じ難くすることができる。
【0086】
第3の実施形態のように、ガラス基板2の両側の主面上に、反射防止膜4,34が設けられていてもよい。この場合、透光部1Aにおいて、イメージセンサに必要な光をより確実に入射させつつ、反射等により生じるイメージセンサへの不要な光の入射をより効果的に生じ難くすることができる。
【0087】
なお、本発明においては、遮光部1Bにおいて、ガラス基板2の両側の主面上に、遮光膜3が設けられていてもよい。あるいは、ガラス基板2の少なくとも一方側の主面上に、遮光膜3や反射防止膜4,34とは異なる他の膜が設けられていてもよい。他の膜は、ガラス基板2と遮光膜3との間に設けられていてもよく、遮光膜3と反射防止膜4との間に設けられていてもよい。また、他の膜は、反射防止膜4,34の上に設けられていてもよい。他の膜としては、例えば、紫外線遮蔽膜、赤外線遮蔽膜、バンドパスフィルタ等を用いることができる。
【0088】
また、本発明においては、遮光部1Bにおいて反射防止膜4が設けられておらず、透光部1Aのみに反射防止膜4が設けられていてもよい。反射防止膜4は、透光部1Aにおけるガラス基板2の主面2a上から、遮光部1Bにおける遮光膜3の第2の主面3b上に至るように連続的に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1,21,31…カバーガラス
1A…透光部
1B…遮光部
2…ガラス基板
2a,2b…主面
3…遮光膜
3a…第1の主面
3b…第2の主面
3c…端部
3d…隙間
3A…クロム層
3B…窒化クロム層
3C…酸窒化クロム層
4,34…反射防止膜
5…筐体
5a…底部
5b…側壁部
6…イメージセンサ
10…撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9