(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001980
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】カテーテルシステム及びカテーテルシステムの操作方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/01 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A61B1/01 511
A61B1/01 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101819
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚実
(72)【発明者】
【氏名】岩切 智佐▲都▼
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA02
4C161AA07
4C161AA15
4C161AA16
4C161AA22
4C161FF35
4C161FF36
4C161GG22
4C161GG25
4C161JJ01
4C161JJ11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外管の内腔に設けられたバルーンを内視鏡と共に外管の先端開口から先端方向に突出させて生体の卵管口に挿入するとき、外管内においてバルーンが撓んで軸方向に重なることがあり、バルーンが重なった部位に内視鏡を進行させることで、内視鏡を先端方向に進行させることができず、内視鏡及びバルーンの破損のリスクが高まるという問題がある。
【解決手段】カテーテルシステム10は、可撓性を有する外管14と、外管14の第1内腔に軸方向に移動可能に設けられる内管18と、外管14の先端部と内管18の先端部とを互いに繋ぐ管状のバルーン20とを備える。カテーテルシステム10は、内管18を通じてバルーン20の内腔に内視鏡22が挿入され、内管18に沿って内視鏡22を進退動作可能である。外管14には、外管14内におけるバルーン20を外管14の外部から視認可能な第1視認部39を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の管腔内に挿入され前記管腔に沿って進行可能なカテーテルシステムであって、
可撓性を有する外管と、
前記外管の内腔に前記外管の軸方向に移動可能に設けられる内管と、
前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐと共に前記外管の径方向内方で拡張する管状のバルーンと、
を備え、
前記内管を通じて前記バルーンの内腔に内視鏡が挿入され、前記内管に沿って前記内視鏡を進退動作可能であり、
前記外管には、前記外管内における前記バルーンを前記外管の外部から視認可能にする視認部を備え、前記視認部は透明部又は半透明部を有する、カテーテルシステム。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテルシステムにおいて、
前記バルーンは、半透明の部材から形成される、カテーテルシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のカテーテルシステムにおいて、
前記視認部は、前記外管の軸方向において少なくとも前記外管の先端から前記バルーンの基端までの範囲に設けられる、カテーテルシステム。
【請求項4】
請求項1又は2記載のカテーテルシステムにおいて、
前記外管の外側に設けられ前記外管に沿って軸方向に移動し、前記外管の先端を収容可能なスライダを備え、
前記スライダは、前記外管を通じて前記バルーンを視認可能な第2視認部を備え、
前記第2視認部は、透明部又は半透明部を有する、カテーテルシステム。
【請求項5】
請求項4記載のカテーテルシステムにおいて、
前記第2視認部は、前記スライダの軸方向における先端から基端までの範囲に設けられる、カテーテルシステム。
【請求項6】
請求項1記載のカテーテルシステムにおいて、
前記カテーテルシステムは、前記外管の前記内腔における前記外管と前記内管との間の空間に拡張用流体を供給し、前記拡張用流体によって前記バルーンを拡張させて前記管腔内に沿って先端方向に向けて進行させ、前記内管と前記内視鏡との間に灌流液を供給し、前記内管及び前記バルーンに対して前記内視鏡を後退させ、
前記バルーンの前記先端方向への進行動作と、前記内管と前記内視鏡との間に対する前記灌流液の供給と、前記内管及び前記バルーンに対する前記内視鏡の後退動作とが、前記拡張用流体によって前記空間を5~7気圧の範囲で加圧した状態で行われる、カテーテルシステム。
【請求項7】
生体の管腔内に挿入され前記管腔に沿って進行可能なカテーテルシステムの操作方法であって、
前記カテーテルシステムは、可撓性を有する外管と、
前記外管の内腔に前記外管の軸方向に移動可能に設けられる内管と、
前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐと共に前記外管の径方向内方で拡張する管状のバルーンと、
を備え、
前記内管を通じて前記バルーンの内腔に内視鏡が挿入され、前記内管に沿って前記内視鏡を進退動作可能であり、
前記外管には、前記外管内における前記バルーンを前記外管の外部から視認可能な視認部を備え、前記視認部は、透明部又は半透明部を有し、
前記操作方法は、前記外管の先端部を前記管腔内に挿入して先端方向に向けて進行させ、且つ前記内視鏡の先端部を前記バルーンの先端部まで進行させる挿入工程と、
前記外管の前記内腔において前記外管と前記内管との間の空間に拡張用流体を供給し、前記空間を5~7気圧の範囲で加圧することで前記バルーンの先端部を拡張させる加圧工程と、
5~7気圧の範囲で前記空間を加圧した状態で、前記バルーンの先端部を前記管腔内で前記先端方向に向けて進行させる前進工程と、
さらに5~7気圧の範囲で前記空間を加圧した状態で、前記バルーンと前記内視鏡との間に灌流液を供給する供給工程と、
前記灌流液を供給した状態で、前記内管に対して前記内視鏡を後退させる後退工程と、
を有する、カテーテルシステムの操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルシステム及びカテーテルシステムの操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、卵管の病変部(狭窄部又は閉塞部)を治療するためのバルーンカテーテルが開示されている。このバルーンカテーテルは、可撓性を有する外管と、外管に対して軸方向に移動可能なように外管の内腔に配設された内管と、外管の先端部と内管の先端部とを互いに繋ぐ管状のバルーンとを備える。バルーンの内側には、卵管鏡(内視鏡)が挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外管の内腔に設けられたバルーンを内視鏡と共に外管の先端開口から先端方向に突出させて生体の卵管口に挿入する。このとき、外管内においてバルーンが撓んで軸方向に重なることがあり、バルーンが重なった部位に内視鏡を進行させることで、内視鏡を先端方向に進行させることができず、さらには内視鏡及びバルーンの破損のリスクが高まるという問題がある。また、カテーテルシステムの使用前の状態において、バルーンを保護するために外管内においてバルーンを軸方向に予め撓ませて収容しておくことがある。この場合、使用前にバルーンを軸方向に伸ばした後に、バルーンの内腔に内視鏡を挿入する必要があるが、撓んだままの状態のバルーンに内視鏡を誤って挿入することで、内視鏡がバルーンと接触して破損することが懸念される。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の第1態様は、生体の管腔内に挿入され前記管腔に沿って進行可能なカテーテルシステムであって、可撓性を有する外管と、前記外管の内腔に前記外管の軸方向に移動可能に設けられる内管と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐと共に前記外管の径方向内方で拡張する管状のバルーンと、を備え、前記内管を通じて前記バルーンの内腔に内視鏡が挿入され、前記内管に沿って前記内視鏡を進退動作可能であり、前記外管には、前記外管内における前記バルーンを前記外管の外部から視認可能にする視認部を備え、前記視認部は透明部又は半透明部を有する、カテーテルシステムである。
【0007】
このカテーテルシステムによれば、カテーテルシステムを使用する前の状態において、外管内にバルーンが軸方向に撓んで収容されている場合、使用時において透明部又は半透明部を有した視認部を通じて外管内におけるバルーンを視認することで、バルーンの撓み状態を確認することができる。これにより、ユーザは、カテーテルシステムに内視鏡を挿入する前に、バルーンの撓みを解消する操作(バルーンを伸ばす操作)を行うべきであることを容易に認識することができる。そのため、バルーンが撓んだ状態で内視鏡が進行することによる内視鏡又はバルーンの破損リスクを効果的に低減できる。
【0008】
また、カテーテルシステムの使用中に、外管内でバルーンが軸方向に重なってバンチングが生じた場合、ユーザは、視認部を通じてバルーンのバンチングを視認することができる。これにより、ユーザは、バルーンのバンチングを解消する操作を行うべきであることを容易に認識することができる。そのため、バルーンの重合部位に内視鏡が進行することによる内視鏡又はバルーンの破損リスクを効果的に低減できる。
【0009】
(2)上記の(1)記載のカテーテルシステムにおいて、前記バルーンは、半透明の部材から形成されてもよい。
【0010】
この構成により、外管内においてバルーンがバンチングして軸方向に重なったとき、重なり合ったバルーンの重合部位の色の変化を確認することで、外管の外側からユーザがバルーンの重合部位を効果的に確認可能である。
【0011】
(3)上記の(1)又は(2)記載のカテーテルシステムにおいて、前記視認部は、前記外管の軸方向において少なくとも前記外管の先端から前記バルーンの基端までの範囲に設けられてもよい。
【0012】
この構成により、外管内におけるバルーンの状態を、バルーンの軸方向の全域において効果的に確認することができる。
【0013】
(4)上記の(1)~(3)のいずれか1つに記載のカテーテルシステムにおいて、前記外管の外側に設けられ前記外管に沿って軸方向に移動し、前記外管の先端を収容可能なスライダを備え、前記スライダは、前記外管を通じて前記バルーンを視認可能な第2視認部を備え、前記第2視認部は、透明部又は半透明部を有してもよい。
【0014】
この構成により、第2視認部によって、スライダの外側から外管を通じてバルーンの状態を効果的に視認できる。
【0015】
(5)上記の(4)記載のカテーテルシステムにおいて、前記第2視認部は、前記スライダの軸方向における先端から基端までの範囲に設けられてもよい。
【0016】
この構成により、外管に沿ってスライダを移動させた場合でも、スライダの移動範囲の全域においてスライダの外側から第2視認部及び外管を通じてバルーンを視認することができる。
【0017】
(6)上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載のカテーテルシステムにおいて、前記カテーテルシステムは、前記外管の前記内腔における前記外管と前記内管との間の空間に拡張用流体を供給し、前記拡張用流体によって前記バルーンを拡張させて前記管腔内に沿って先端方向に向けて進行させ、前記内管と前記内視鏡との間に灌流液を供給し、前記内管及び前記バルーンに対して前記内視鏡を後退させ、前記バルーンの前記先端方向への進行動作と、前記内管と前記内視鏡との間に対する前記灌流液の供給と、前記内管及び前記バルーンに対する前記内視鏡の後退動作とが、前記拡張用流体によって前記空間を5~7気圧の範囲で加圧した状態で行われてもよい。
【0018】
この構成により、空間内において5~7気圧の圧力が継続的にバルーンに対して付与されることで、圧力の付与されたバルーンと内視鏡とが接近し、バルーンを繰り返し前進又は後退させるとき、バルーンと内視鏡とが一体で移動しやすくなる。バルーンと内視鏡とが一体的に移動することでバルーンのバンチングが生じやすい。しかしながら、視認部を介して外管内のバルーンの状態を視認できるため、バルーンのバンチングを効果的に解消することができる。
【0019】
(7)本発明の第2態様は、生体の管腔内に挿入され前記管腔に沿って進行可能なカテーテルシステムの操作方法であって、前記カテーテルシステムは、可撓性を有する外管と、前記外管の内腔に前記外管の軸方向に移動可能に設けられる内管と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐと共に前記外管の径方向内方で拡張する管状のバルーンと、を備え、前記内管を通じて前記バルーンの内腔に内視鏡が挿入され、前記内管に沿って前記内視鏡を進退動作可能であり、前記外管には、前記外管内における前記バルーンを前記外管の外部から視認可能な視認部を備え、前記視認部は、透明部又は半透明部を有し、前記操作方法は、前記外管の先端部を前記管腔内に挿入して先端方向に向けて進行させ、且つ前記内視鏡の先端部を前記バルーンの先端部まで進行させる挿入工程と、前記外管の前記内腔において前記外管と前記内管との間の空間に拡張用流体を供給し、前記空間を5~7気圧の範囲で加圧することで前記バルーンの先端部を拡張させる加圧工程と、5~7気圧の範囲で前記空間を加圧した状態で、前記バルーンの先端部を前記管腔内で前記先端方向に向けて進行させる前進工程と、さらに5~7気圧の範囲で前記空間を加圧した状態で、前記バルーンと前記内視鏡との間に灌流液を供給する供給工程と、前記灌流液を供給した状態で、前記内管に対して前記内視鏡を後退させる後退工程と、を有する、カテーテルシステムの操作方法である。
【0020】
このカテーテルシステムの操作方法によれば、加圧工程から前進工程、後退工程にかけて、5~7気圧の圧力が継続的にバルーンに対して付与されることで、圧力の付与されたバルーンと内視鏡とが接近し、それに伴って、バルーンと内視鏡とが一体的に前進又は後進しやすくなる。バルーンと内視鏡とが一体的に移動することで、バルーンのバンチングが発生しやすくなる。しかしながら、外管内におけるバルーンの状態をユーザが視認部を通じて確認することができるため、ユーザは、バルーンのバンチングを解消する操作を行うべきであることを容易に認識することができる。そのため、バルーンの重合部位に内視鏡が進行することによる内視鏡又はバルーンの破損リスクを効果的に低減できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カテーテルシステムを使用する前の状態において、外管内にバルーンが軸方向に撓んで収容されている場合、透明部又は半透明部を有した視認部を通じてユーザが外管内におけるバルーンを視認することで、バルーンの撓み状態を確認することができる。これにより、ユーザは、カテーテルシステムに内視鏡を挿入する前に、バルーンの撓みを解消する操作を行うべきであることを容易に認識することができる。そのため、バルーンが撓んだ状態で内視鏡が進行することによる内視鏡又はバルーンの破損リスクを効果的に低減できる。また、カテーテルシステムの使用中に、外管内でバルーンが軸方向に重なってバンチングが生じた場合、ユーザは、視認部を通じてバルーンのバンチングを視認することができる。これにより、ユーザは、バルーンのバンチングを解消する操作を行うべきであることを容易に認識することができる。そのため、バルーンの重合部位に内視鏡が進行することによる内視鏡又はバルーンの破損リスクを効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るカテーテルシステムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1のカテーテルシステムの一部省略断面図である。
【
図3】
図3は、使用前のカテーテルシステムが収容されたカテーテルパッケージを示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、
図1のカテーテルシステムを用いた内視鏡下卵管形成術の第1説明図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す内視鏡下卵管形成術の第2説明図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す内視鏡下卵管形成術の第3説明図である。
【
図7】
図7Aは、カテーテルシステムの挿入工程においてバルーンにバンチングが発生した状態を示す拡大模式図である。
図7Bは、
図7Aのバルーンの重合部位を厚さ方向から見た模式図である。
【
図8】
図8Aは、カテーテルシステムの挿入工程においてバルーンに別のバンチングが発生した状態を示す拡大模式図である。
図8Bは、
図8Aのバルーンの重合部位を厚さ方向から見た模式図である。
【
図9】
図9は、カテーテルシステムの挿入工程においてバルーンに撓みが発生した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示されるように、本実施形態に係るカテーテルシステム10は、生体の管腔内に挿入され管腔に沿って進行可能である。カテーテルシステム10は、例えば、管腔である卵管402の病変部404(狭窄部又は閉塞部等)を治療する内視鏡下卵管形成術に用いられる(
図4参照)。なお、カテーテルシステム10は、卵管以外のもの、例えば、血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内の病変部を治療するためのものであってもよい。以下の説明では、
図1中におけるカテーテルシステム10の左方向(矢印X1方向)を「先端方向」、
図1中におけるカテーテルシステム10の右方向(矢印X2方向)を「基端方向」という。
【0024】
カテーテルシステム10は、カテーテル12を備える。カテーテル12は、外管14と、スライダ16と、内管18と、バルーン20と、内管18に挿入される内視鏡22を操作する操作部24と、ハンドル部26とを備える。従って、カテーテル12は、バルーンカテーテルである。
【0025】
図2に示すように、外管14は、可撓性を有する外管本体28と、外管ハブ30と、固定ねじ32とを有する。外管本体28は、管体34と、先端部材36(先端チップ)とを備える。管体34と先端部材36との各々の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、エラストマー樹脂、可撓性を有する高分子材料、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、フッ素樹脂等が挙げられる。外管14は、外側カテーテルである。
【0026】
管体34は、第1内腔341を有する。第1内腔341は、管体34の軸方向における全長に亘って貫通する。管体34の先端部は、管体34の軸方向に円弧状に湾曲するように形状付けられている。管体34は、軸方向における全長に亘って略一定の外径を有する。
【0027】
先端部材36は、管体34の先端部に設けられる。カテーテル12の進行方向に対して湾曲した卵管口402aの形状に対応して、先端部材36の外周面は湾曲している。先端部材36は、バルーン導出孔38を有する。バルーン導出孔38は、外管本体28の先端開口281を含む。バルーン20は、バルーン導出孔38を通り、先端部材36よりも先端方向(矢印X1方向)に導出する。
【0028】
第1視認部(視認部)39は、外管14に設けられる。第1視認部39は、外管14内におけるバルーン20を外管14の外部から視認可能にする。第1視認部39は、外管本体28の管体34に設けられる。第1視認部39は、第1透明部39Aを備える。第1視認部39は、外管14の軸方向(矢印X方向)において少なくとも管体34の先端から、外管14内に収容されるバルーン20の基端までの範囲に設けられる。第1視認部39は、管体34の先端から基端までの全域に亘って設けられる。すなわち、外管14における管体34の全体が第1透明部39Aである。
【0029】
第1透明部39Aは、無色透明であってもよいし有色透明であってもよい。第1視認部39は、第1透明部39Aを有する場合に限定されない。第1視認部39は、半透明部を有してもよい。第1視認部39は、外管14における管体34の外部からバルーン20の長手方向における全域を視認可能な構成であればよい。
【0030】
外管ハブ30は、外管本体28の基端部に固定される。外管ハブ30の構成材料は、例えば、硬質樹脂又は金属材料が用いられる。外管ハブ30を構成する硬質樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド等が挙げられる。外管ハブ30を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等が挙げられる。
【0031】
外管ハブ30は、中空状に形成されている。外管ハブ30は、ユーザによって操作しやすい大きさに形成されている。外管ハブ30は、第1空間301と、第1挿通孔302と、第1導入ポート部303とを有する。第1空間301は、外管本体28の第1内腔341に連通する。第1挿通孔302は、第1空間301の矢印X2方向に位置している。第1挿通孔302には、内管18が挿通する。第1導入ポート部303は、第1空間301に拡張用流体を導入する。
【0032】
拡張用流体は、バルーン20を外管本体28の径方向内方に膨らませる。拡張用流体は、例えば、生理食塩水である。なお、拡張用流体は、滅菌水であってもよい。外管ハブ30の第1空間301には、第1シール部材40を備える。第1シール部材40は、第1空間301内の拡張用流体が第1挿通孔302から外部に漏出することを防止する。
【0033】
固定ねじ32は、外管ハブ30に螺合している。ユーザが固定ねじ32を締めることによって内管18が外管ハブ30に固定される。ユーザが固定ねじ32を緩めることによって内管18が外管ハブ30に対して移動可能となる。
【0034】
スライダ16は、外管14に取り付けられる。スライダ16は、管体34の外周面を外管本体28の軸方向(矢印X方向)にスライドする。スライダ16の軸方向における全長は、外管本体28の軸方向における全長よりも短い。スライダ16は、スライダ本体161と、スライダハブ162とを有する。スライダ本体161は、管状部材である。スライダハブ162は、スライダ本体161の基端部に固定される。スライダハブ162は筒状に形成される。
【0035】
第2視認部163は、外管14の第1視認部39を通じて外管14内のバルーン20を視認可能にする。第2視認部163は、スライダ本体161に設けられる。第2視認部163は、スライダ16の軸方向(矢印X方向)における先端から基端までの範囲に設けられる。なお、第2視認部163は、スライダ本体161のみに設けられる場合に限定されない。スライダ本体161からスライダハブ162に亘って、スライダ16の軸方向における全体に第2視認部163を備えてもよい。
【0036】
第2視認部163は、第2透明部163Aを有する。第2透明部163Aを介してスライダ16の外部から外管14内のバルーン20を視認可能である。第2透明部163Aは、無色透明であってもよいし有色透明であってもよい。第2視認部163は、第2透明部163Aを有する場合に限定されない。第2視認部163は、半透明部を有してもよい。第2視認部163は、スライダ16の先端から基端に亘って、スライダ16の外部から外管14内のバルーン20の長手方向における全域を視認可能な構成であればよい。すなわち、スライダ16と外管14とが径方向に重なっているとき、第1視認部39及び第2視認部163を通じて外管14内のバルーン20をユーザが視認可能である。
【0037】
管体34に対してスライダ16を最も矢印X1方向に移動させた状態(スライダ16の初期状態)で、管体34の先端部は、スライダ本体161の形状に沿って直線状に延在する。前記とは反対に、管体34に対してスライダ16を矢印X2方向に移動させると、管体34の先端部は、スライダ16よりも矢印X1方向に露出する。このとき、管体34の先端部は、円弧状に湾曲する。カテーテルシステム10の使用前において、管体34の先端部が湾曲した状態でカテーテルシステム10が保管される。
【0038】
内管18は、内管本体42と、内管ハブ44とを備える。内管本体42の構成材料としては、比較的硬質な樹脂材料又は金属材料が挙げられる。内管本体42は、内管本体42の軸方向における全長に亘って貫通した第2内腔421を有する。
【0039】
内管本体42は、外管本体28の第1内腔341に外管本体28の軸方向に移動可能に設けられる。内管本体42は、外管ハブ30を挿通する。内管本体42の先端は、管体34の先端よりも矢印X2方向に配置される。内管本体42の外周面と管体34の内周面との間には、拡張用流体が流通する外側ルーメンSaが設けられる。
【0040】
内管本体42の第2内腔421には、内視鏡22の挿入部221が軸方向に沿って進退可能に挿入される。内管本体42の第2内腔421に挿入部221が挿入された状態で、内管本体42と挿入部221との間には灌流液が流通する内側ルーメンSbが設けられる。
【0041】
内管ハブ44は、内管本体42の基端部に固定される。内管ハブ44は、中空状に形成される。内管ハブ44は、第2空間441と、第2挿通孔442と、第2導入ポート部443とを有する。第2空間441は、内管本体42の第2内腔421に連通する。第2挿通孔442は、第2空間441の矢印X2方向に位置している。第2挿通孔442には、内視鏡22の挿入部221が挿通する。第2導入ポート部443は、第2空間441に灌流液を導入する。
【0042】
灌流液は、例えば、生理食塩水である。内管ハブ44の第2空間441には、第2シール部材46が設けられる。第2シール部材46は、第2空間441内の灌流液が第2挿通孔442から外部に漏出することを防止する。
【0043】
バルーン20は、外管本体28の先端部と内管本体42の先端部とを互いに繋ぐ管状部材である。バルーン20は、拡張用流体によって外管本体28の径方向内方に膨らむ。バルーン20は、半透明の部材から径方向に弾性変形可能に形成される。バルーン20は、ポリオレフィン、ポリエステル、エラストマー樹脂、可撓性を有する高分子材料、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイソプレン、ポリエステル、フッ素樹脂等で構成するのが好ましい。
【0044】
なお、バルーン20は、半透明の部材から形成される場合に限定されない。例えば、バルーン20が透明な部材から形成されてもよい。バルーン20が透明な部材から形成される場合は、外管14の第1視認部39が、透明な第1透明部39Aを有し、且つ、スライダ16の第2視認部163が、透明な第2透明部163Aを有することが好ましい。第1及び第2透明部39A、163Aを通じて、透明な部材から形成されたバルーン20をスライダ16の外側から視認可能となる。
【0045】
バルーン20の先端部は、外管本体28の先端部に図示しない接着剤によって接着される。なお、バルーン20の先端部は、例えば、外管本体28の先端部に溶着されてもよい。バルーン20の先端部は、管体34の先端と先端部材36との間に挟持される。
【0046】
バルーン20の基端部は、バルーン固定部材48によって内管本体42の先端部の外周面に固定される。なお、バルーン20の基端部は、内管本体42の内周面の先端部に接着剤によって接着されてもよい。バルーン20の基端部は、内管本体42の内周面の先端部に溶着されてもよい。
【0047】
バルーン20は、内視鏡22の挿入部221が挿入可能な内腔201を有する。バルーン20の外周面と管体34の内周面との間には、先端が閉じた袋状の外側空間Scが設けられる。バルーン20の内腔201には、内管18を通じて内視鏡22の挿入部221が挿入される。
【0048】
バルーン20が径方向内方に膨らんだ状態で、内管本体42からバルーン20へと押込み力(先端方向の押込み力)が伝達されることにより、外管本体28の先端開口281から先端方向にバルーン20が突出する(
図6参照)。このとき、バルーン20の先端部は、バルーン20の内面が外側を向くように捲り返される。すなわち、バルーン20のうち外管本体28の先端開口281よりも矢印X1方向に突出した突出部分は、バルーン20の壁部が径方向に二重に折り重なった部分を含む。
【0049】
図2に示すように、内視鏡22は、卵管402を観察するための内視鏡である。内視鏡22は、可撓性を有する挿入部221を備える。挿入部221は、内管本体42の第2内腔421及びバルーン20の内腔201に挿入される。
【0050】
挿入部221は、図示しないライトガイドと、レンズユニットと、イメージガイド及び被覆部とを含む。ライトガイドは、挿入部221の基端部に接続された図示しない光源からの光を挿入部221の先端に導く。レンズユニットは、挿入部221の先端部に位置する対物レンズである。イメージガイドは、レンズユニットにより得られた像を挿入部221の基端方向に導く。被覆部は、ライトガイドと、レンズユニットと、イメージガイドとを保護するチューブ部材である。内視鏡22は、ディスプレイ等の表示部と、撮像した画像(内視鏡画像)を表示部に表示させるための撮像制御装置と共に使用される。なお、
図2では、挿入部221の構成を簡略化して示している。
【0051】
図1に示すように、操作部24は、内管本体42の基端の外側に設けられる。操作部24は、内視鏡22の挿入部221を内管18に対してカテーテル12の軸方向(矢印X方向)に移動させる。すなわち、操作部24は、内管本体42を通じてバルーン20の内腔201に挿入される内視鏡22を内管本体42に沿って進退動作させる。
【0052】
図3に示すように、操作部24は、ケース50と、送出部材52とを有する。
【0053】
ケース50は、樹脂材料から中空状に形成される。ケース50は、ケース本体56と、第1接続部58と、第2接続部60とを有する。ケース本体56の上部は、開口した開放部70を有する。ケース本体56の先端方向に第1接続部58が設けられる。第1接続部58は、第1アタッチメント72を介して内管ハブ44の基端に接続される。ケース本体56の基端方向に第2接続部60が設けられる。第2接続部60は、第2アタッチメント79を介してハンドル部26の先端に接続される。
【0054】
ケース本体56の内部には、内視鏡22が挿通可能な挿通部62を有する。挿通部62に沿って内視鏡22が軸方向(矢印X方向)に移動可能である。
【0055】
送出部材52は、ケース50の内部に設けられる。送出部材52は、第1及び第2回転体861、862を備える。第1回転体861と第2回転体862とがケース本体56の上下方向に互いに並んで配置される。第1回転体861と第2回転体862とが挿通部62を挟んで互いに向かい合う。第1及び第2回転体861、862は、シャフト90によってケース本体56に回転可能に支持される。
【0056】
第1回転体861は、開放部70を介してケース50の上方に露出する。第1回転体861の上部を周方向に移動させることで、第1回転体861を回転させることが可能である。第1回転体861の外周部は、複数の第1歯部921を有する。
【0057】
第2回転体862は、第1回転体861の下方に配置される。第2回転体862の外周部には複数の第2歯部922を備える。第2歯部922が、第1回転体861の第1歯部921に噛合される。ユーザが第1回転体861を回転させることで、第1回転体861とは反対方向に第2回転体862が回転可能である。挿通部62において、第1回転体861の外周部と第2回転体862の外周部との間に、内視鏡22の外周面が挟持され保持される。第1及び第2回転体861、862が回転することで内管本体42に向けて内視鏡22を送出可能である。なお、
図3に示すように、操作部24の第1回転体861が上方、第2回転体862に配置される場合に限定されるものではない。例えば、カテーテルシステム10を使用するとき、第1アタッチメント72の中心軸線に対して操作部24を回転させることで、第1回転体861及び第2回転体862を上下方向と交差する左右方向に配置して用いることも可能である。以下の説明では、第1回転体861が上方、第2回転体862が下方に配置される場合について説明する。
【0058】
図1に示すように、ハンドル部26は、管状部材102と、保護管部104とを備える。管状部材102は管状に形成される。管状部材102の先端は、操作部24における第2接続部60の基端に接続される。保護管部104は、管状部材102の基端に固定される。
【0059】
次に、カテーテルシステム10を用いた内視鏡下卵管形成術について説明する。
【0060】
内視鏡下卵管形成術は、カテーテルシステム10を準備する準備工程を有する。
図3に示すように、カテーテルシステム10を使用する前の状態において、カテーテルシステム10が包装体11に収容されてカテーテルパッケージPとして構成されている。このカテーテルパッケージPにおいて、バルーン20の引張永久歪みを防止する目的で、バルーン20の自然状態に対してバルーン20を弛緩させた状態(バルーン20が長手方向に撓んだ状態)で収容されている場合がある。
【0061】
この準備工程において、ユーザがカテーテルパッケージPからカテーテルシステム10を取り出した後、バルーン20を長手方向に伸ばすことでバルーン20の撓みを解消させる操作を行う。具体的には、スライダ16の第2視認部163及び外管14の第1視認部39を通じて、外管14の外側から外管14内のバルーン20の状態を視認しながら、ユーザが外管14に対してハンドル部26を基端方向(矢印X2方向)に移動させる。ハンドル部26と共に内管18が基端方向に移動し、バルーン20の基端部が基端方向に引っ張られる。このとき、バルーン20の先端部が外管14の先端部に固定されているため、バルーン20が基端方向に向けて伸張し、長手方向に沿って真っ直ぐとなって撓みが解消される(
図1参照)。撓みの解消操作が完了した後、ユーザは、第1及び第2視認部39、163を通じて、バルーン20の撓みが解消されバルーン20が長手方向に真っ直ぐとなったことを確認する。
【0062】
さらに準備工程において、内管本体42を外管本体28に対して矢印X2方向に完全に引いた状態で固定ねじ32を締める。これにより、内管本体42は、外管本体28に固定される。スライダ16を初期状態にすることで、管体34の先端部がスライダ本体161によって真っ直ぐに延在する。
【0063】
続いて、挿入工程において、カテーテル12を経頸管的に子宮底400まで挿入する。
図4に示すように、スライダ16を外管本体28に対して外管本体28の基端方向(矢印X2方向)に引き戻す。これにより、管体34の先端部は、スライダ16から露出して湾曲する。この際、卵管口402aの近傍に外管本体28の先端開口281を位置させる。
【0064】
挿入工程において、ハンドル部26の保護管部104を通じて、内管本体42の内腔に内視鏡22が挿入される。内視鏡22の先端部22Aをハンドル部26の管状部材102の内部に挿入した後、ユーザが内視鏡22を先端方向(矢印X1方向)に向けて進行させる。内視鏡22の先端部22Aは、第2接続部60を通じて操作部24のケース本体56内(
図1参照)に挿入される。
【0065】
図1に示すように、操作部24の第1回転体861を時計回りに回転させることで、第2回転体862が第1回転体861とは反対方向となる反時計回りに回転し、ケース50内の挿通部62において、第1回転体861と第2回転体862との間に内視鏡22が挿入されて挟持される。さらに第1回転体861を回転させることで、第1及び第2回転体861、862によって内視鏡22が先端方向(進行方向、矢印X1方向)に送出される。
【0066】
図4に示す挿入工程において、操作部24の操作に伴って、操作部24から内管本体42の第2内腔421に沿って内視鏡22を前進させ、内視鏡22の先端部22Aをバルーン20の先端部まで進行させる。このとき、ユーザは、第1及び第2視認部39、163を通じて、バルーン20の状態を視認しながら作業を行うことが可能である。
【0067】
その後、確認工程において、ユーザは、内視鏡22の先端が外管本体28の先端(バルーン導出孔38の先端開口部)に位置するように内視鏡22を前進させることにより、内視鏡22の画像で卵管口402aを確認する。次いで、固定ねじ32の締付を緩めることにより、外管14に対する内管本体42の固定を解除する。
【0068】
次に、バルーン導出工程を行う。
図5に示すように、バルーン導出工程の加圧工程では、第1導入ポート部303に拡張用流体を供給して加圧を行う。拡張用流体は、第1導入ポート部303から外側ルーメンSaを介して外管本体28の内腔において外管本体28と内管本体42との間となるバルーン20の外側空間Scに供給される。加圧工程において、外側空間Scが拡張用流体で5~7気圧の範囲で加圧される。外側空間Scが6気圧に加圧されるとさらに好ましい。
【0069】
外側空間Scに供給された拡張用流体によって、バルーン20は、径方向内方に押圧されて弾性変形する。すなわち、バルーン20のうち、挿入部221の径方向外方に位置する部位は、挿入部221の外周面に密着する。バルーン20のうち挿入部221の先端よりも矢印X1方向に位置する先端部位202は、内面同士が互いに接触する。
【0070】
その後、ユーザは、固定ねじ32を緩め、且つ外側空間Scを拡張用流体によって加圧した状態で内管ハブ44を操作して内管本体42を外管本体28に対して前進させる(前進工程)。この前進工程において、外側空間Scは、拡張用流体によって5~7気圧の範囲で継続的に加圧されている。そうすると、
図6に示すように、内管本体42によって先端方向(矢印X1方向)に押されたバルーン20は外管本体28に対して前進する。つまり、バルーン20は、押込み力が内管本体42からバルーン20に伝達されることにより、挿入部221と一緒に外管本体28の先端開口281から矢印X1方向に突出する。
【0071】
前進工程において、
図5に示すように、外管本体28の第1内腔341において、拡張用流体によってバルーン20が径方向内方に加圧された状態で先端方向に向けて進行する。そのため、バルーン20の先端部位202が軸方向に突っ張った状態となり、バルーン20と内視鏡22とが接触した状態で一体的に進行する。バルーン20と内視鏡22とが一体的に移動することで、
図7Aに示すように、バンチングが発生することがある。バンチングは、例えば、バルーン20の一部が、主に軸方向に複数箇所で折り重なって蛇腹状となった状態である。バンチングが発生したとき、バルーン20の一部が軸方向及び径方向に折り重なって複数の重合部位203が形成される。例えば、外管内が加圧されていない状態でバルーンを進行させる場合と比較し、5~7気圧の範囲内で外管14内を継続的に加圧している場合は、内視鏡22に対して常にバルーン20が接触した状態となりやすく、その結果、バルーン20のバンチングが比較的発生しやすい。
【0072】
バンチングが発生した場合、バルーン20には、バルーン20の周壁204の一部が軸方向に重なり合った重合部位203が形成され、
図7Bに示すように、第1及び第2視認部39、163を通じて重なり合った方向から見たとき、半透明の部材が径方向に重なって複数の重合部位203となる。複数の重合部位203は、重合部位203以外の部位と比較して色が濃く見える。複数の重合部位203は、バルーン20の軸方向に連続するように配置される。ユーザは、第1及び第2視認部39、163を通じてバルーン20を視認したとき、色が濃くなっている部位を確認することでバンチングした重合部位203を確認することができる。
【0073】
バルーン導出工程において、バルーン20のバンチングを確認したときは、バンチングを解消するための操作を行う。第1導入ポート部303への拡張用流体の供給を停止して外管14内の外側空間Scの圧力を減少させ、バルーン20に対する径方向内方への加圧を解消する。同時に、後述する供給工程で行われる第2導入ポート部443から内管本体42の第2内腔421へ灌流液の注入を行う。これにより、バルーン20の内腔201に灌流液が供給され、灌流液によってバルーン20を径方向外方に広げることで重合部位203が広がり、内視鏡22に対してバルーン20が径方向及び軸方向に離間する。ユーザが外管14に対してハンドル部26を基端方向(矢印X2方向)に移動させる。ハンドル部26と共に内管18が基端方向に移動し、バルーン20の基端部が基端方向に引っ張られる。これにより、バルーン20の基端部の移動に伴って、重合部位203でのバルーン20の重なりが解消され、バルーン20の長手方向に沿ってほぼ真っ直ぐな正常な状態に復帰する。
【0074】
なお、バンチングの解消方法は、バルーン20の内腔201への灌流液の供給に加えて、ハンドル部26を基端方向へ移動させる方法に限定されるものではない。例えば、バルーン20の内腔201への灌流液の供給によって、重合部位203が先端方向に向けて押されて先端方向に動き、重合部位203が軸方向に向けて広がることでバンチングを解消させてもよい。この場合、外管14に対するハンドル部26の基端方向への移動動作は不要である。
【0075】
なお、
図7Aに示すように、バンチングは、バルーン20の軸方向において複数の箇所で折り重なった重合部位203が形成される場合に限定されない。例えば、
図8Aに示すように、バンチングでは、バルーン20の周壁204が、径方向に重なり、且つ軸方向の所定範囲で折り重なることで単一の重合部位203Aが形成される場合もある。この場合、
図8Bに示すように、ユーザは、第1及び第2視認部39、163を通じてバルーン20を視認したとき、周壁204が径方向に重なることで色が濃くなっている部位を確認することでバンチングした重合部位203Aを確認することができる。重合部位203Aが、単一で軸方向に所定範囲を有するためバンチングの確認がより容易である。
【0076】
また、
図9に示すように、内視鏡22の先端側において、バルーン20の一部(先端部)が径方向(厚さ方向)屈曲し、軸方向に重なるように撓んで重合部位203Bが形成されることがある。この場合、第1及び第2視認部39、163を通じてバルーン20を視認したとき、径方向及び軸方向に重なって色が濃くなっている重合部位203Bを確認することで、周壁204が撓んでバンチングした部位を確認可能である。
【0077】
前進工程では、バルーン20の先端部が外管本体28の先端部に固定されている。そのため、バルーン20が前進する際に、バルーン20は、バルーン20の先端部(突出端部)で捲り返される。すなわち、バルーン20の内面は、バルーン20の先端部で外側を向く。
【0078】
続いて、ユーザは、内視鏡画像に基づいて内視鏡22がバルーン20の先端まで到達したか否かを判断する。バルーン20が病変部404の手前に位置していた場合には、
図10に示すように、第2導入ポート部443に灌流液を供給する(供給工程)。これにより、内側ルーメンSbを介してバルーン20と内視鏡22の挿入部221との間に灌流液が流通する。灌流液によって、挿入部221に対してバルーン20が径方向外方に離間する。灌流液の供給工程において、バルーン20の外側空間Scが、5~7気圧の範囲内で継続的に加圧された状態で灌流液の供給が行われる。
【0079】
次に、ユーザは、
図11に示すように、内視鏡22を所定距離だけ後退させる(後退工程)。後退工程では、ユーザが、操作部24の第1回転体861を反時計回りに回転させる。第1回転体861の回転に伴って、第2回転体862が時計回りに回転し、第1及び第2回転体861、862に挟持された内視鏡22の挿入部221が基端方向(矢印X2方向)に向けて後退する。後退工程において、バルーン20の外側空間Scが、5~7気圧の範囲内で継続的に加圧された状態で内視鏡22の後退が行われる。その後、上述した加圧工程及び前進工程を再度行う。
【0080】
すなわち、カテーテルシステム10を用いた内視鏡下卵管形成術において、バルーン導出工程におけるバルーン20の先端方向への進行動作(前進動作)と、供給工程における内管本体42と内視鏡22との間に対する灌流液の供給と、後退工程における内管本体42及びバルーン20に対する内視鏡22の後退動作との各々が、拡張用流体によって空間を5~7気圧の範囲で加圧した状態で行われる。
【0081】
図12に示すように、前進工程において、バルーン20の先端部が前進して病変部404に接触する。その後、前進工程を続けることにより、
図13に示すように、バルーン20が病変部404を完全に通過すると、バルーン20によって病変部404が押し広げられる。すなわち、卵管402の狭窄又は閉塞が改善される。
【0082】
バルーン20によって病変部404を径方向外方に向けて広げた後、カテーテル12と内視鏡22とを子宮から抜去する(抜去工程)。抜去工程では、第2導入ポート部443を介して灌流液を注入しつつ内管本体42を引いてバルーン20を後退させ、同時に内視鏡22をバルーン20の先端部に位置するよう操作してもよい。これにより、卵管402内を内視鏡22で観察しながらカテーテル12及び内視鏡22を子宮から抜去することができる。抜去工程の後、内視鏡下卵管形成術は終了する。
【0083】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0084】
図1に示すように、外管14と、内管18と、外管14の先端部と内管18の先端部とを互いに繋ぐと共に外管14の径方向内方で拡張する管状のバルーン20とを備えたカテーテルシステム10において、外管14には、外管14内におけるバルーン20を外管14の外部から視認可能にする第1視認部39を備え、第1視認部39は、第1透明部39A(半透明部)を有する。
【0085】
これにより、
図3に示すように、カテーテルシステム10を使用する前の状態において、外管14内にバルーン20が軸方向に撓んで収容されている場合、使用時において第1透明部39Aを有した第1視認部39を通じて外管14内におけるバルーン20を視認することで、バルーン20の撓み状態を確認することができる。これにより、ユーザは、カテーテルシステム10に内視鏡22を挿入する前に、バルーン20の撓みを解消する操作(内管18を基端方向に移動させバルーン20を長手方向に伸ばす操作)を行うべきであることを容易に認識することができる。そのため、バルーン20が撓んだ状態で内視鏡22が進行することによる内視鏡22又はバルーン20の破損リスクを効果的に低減できる。
【0086】
また、
図7Aに示すように、カテーテルシステム10の使用中に、外管14内でバルーン20が軸方向に重なってバンチングが生じた場合、ユーザは、第1視認部39を通じてバルーン20のバンチングを視認することができる。これにより、ユーザは、バルーン20のバンチングを解消する操作を行うべきであることを容易に認識することができる。そのため、バルーン20の重合部位203に内視鏡22が進行することによる内視鏡22又はバルーン20の破損リスクを効果的に低減できる。
【0087】
バルーン20は、半透明の部材から形成されるため、
図7Bに示すように、カテーテルシステム10の使用時において、外管14内においてバルーン20がバンチングして軸方向に重なったとき、バルーン20が重なった重合部位203の色の変化を確認することで、外管14の外側からユーザがバルーン20の重合部位203を効果的に確認できる。
【0088】
図1に示すように、第1視認部39は、外管14の軸方向において少なくとも外管14の先端からバルーン20の基端までの範囲に設けられる。これにより、外管14内におけるバルーン20の状態を、バルーン20の軸方向の全域において効果的に確認することができる。
【0089】
外管14の外側に設けられ外管14に沿って軸方向に移動し、外管14の先端を収容可能なスライダ16を備え、スライダ16は、外管14を通じてバルーン20を視認可能な第2視認部163を備え、第2視認部163が、第2透明部163A(半透明部)を有する。
【0090】
これにより、第2視認部163によって、スライダ16の外側から外管14を通じてバルーン20の状態を効果的に視認できる。
【0091】
第2視認部163は、スライダ16の軸方向における先端から基端までの範囲に設けられる。これにより、外管14に沿ってスライダ16を軸方向に移動させた場合でも、スライダ16の移動範囲の全域においてスライダ16の外側から外管14を通じてバルーン20を視認することができる。
【0092】
カテーテルシステム10は、バルーン20の先端方向への進行動作と、内管18と内視鏡22との間に対する灌流液の供給と、内管18及びバルーン20に対する内視鏡22の後退動作とが、拡張用流体によって外側空間Scを5~7気圧の範囲で加圧した状態で行われる。
【0093】
これにより、外側空間Sc内において5~7気圧の圧力が継続的にバルーン20に対して付与されることで、バルーン20と内視鏡22とが接近し、バルーン20を繰り返し前進又は後退させるとき、バルーン20と内視鏡22とが一体で移動することでバルーン20のバンチングが生じやすい。しかしながら、第1及び第2視認部39、163を介して外管14内のバルーン20の状態を視認できるため、バルーン20のバンチングを効果的に解消することができる。
【0094】
カテーテルシステム10の操作方法において、バルーン導出工程が、外管本体28の第1内腔341において外管本体28とバルーン20との間の外側空間Scに拡張用流体を供給し、外側空間Scを5~7気圧の範囲で加圧することでバルーン20の先端部を拡張させる加圧工程と、5~7気圧の範囲で外側空間Scを加圧した状態で、バルーン20の先端部を卵管402内で先端方向(矢印X1方向)に向けて進行させる前進工程とを有する。カテーテルシステム10の操作方法は、さらに5~7気圧の範囲で外側空間Scを加圧した状態で、バルーン20と内視鏡22との間に灌流液を供給する供給工程と、灌流液を供給した状態で、内管本体42に対して内視鏡22を後退させる後退工程とを有する。
【0095】
カテーテルシステム10を操作する際、バルーン導出工程の加圧工程から前進工程、後退工程にかけて、5~7気圧の圧力が継続的にバルーン20に対して付与されることで、圧力の付与されたバルーン20と内視鏡22とが接近し、バルーン20と内視鏡22とが一体的に前進又は後進しやすくなり、それに伴って、バルーン20のバンチングが発生しやすくなる。しかしながら、外管14内におけるバルーン20の状態をユーザが第1及び第2視認部39、163を通じて確認することができるため、ユーザは、バルーン20のバンチングを解消する操作を行うべきであることを容易に認識することができる。そのため、バルーン20の重合部位203に内視鏡22が進行することによる内視鏡22又はバルーン20の破損リスクを効果的に低減できる。
【0096】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0097】
10…カテーテルシステム
12…カテーテル
14…外管
18…内管
20…バルーン
22…内視鏡
39…第1視認部
163…第2視認部