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特開2025-19820光変調器、光送受信器及び光トランシーバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019820
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】光変調器、光送受信器及び光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
G02F1/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123655
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高林 和雅
(72)【発明者】
【氏名】三田村 宣明
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102AA28
2K102BA02
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BC10
2K102BD01
2K102CA05
2K102CA20
2K102CA28
2K102DA04
2K102DB04
2K102DC04
2K102DC08
2K102DD04
2K102DD10
2K102EA02
2K102EA05
2K102EA16
2K102EA21
2K102EB11
2K102EB12
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
【課題】光変調器の動作帯域を確保しながら変調効率の向上を図る光変調器等を提供することを目的とする。
【解決手段】光変調器は、電気光学材料を含む電気光学層と、前記電気光学層の下側に配置され、前記電気光学層に比較して低い誘電率を有する材料層と、を有する。光変調器は、前記材料層の下側に配置され、前記電気光学層及び前記材料層の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層と、前記電気光学層に電気信号を印加する電極と、を有する。前記材料層の屈折率は、前記電気光学層の屈折率の0.85倍以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学材料を含む電気光学層と、
前記電気光学層の下側に配置され、前記電気光学層に比較して低い誘電率を有する材料層と、
前記材料層の下側に配置され、前記電気光学層及び前記材料層の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層と、
前記電気光学層に電気信号を印加する電極と、を有し、
前記材料層の屈折率は、
前記電気光学層の屈折率の0.85倍以上であることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記電気光学層の電気光学係数は、
前記材料層の電気光学係数に比較して高いことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記電気光学層の比誘電率は、50に比較して高く、かつ、前記電気光学層の電気光学係数は、50pm/Vに比較して高く、
前記材料層の比誘電率は、50以下、かつ、前記材料層の電気光学係数は、50pm/V以下であることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項4】
前記電気光学層は、
BaTiO(BTO)、PbLaZrTiO(PLZT)、PbZrTiO(PZT)の内、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
前記電気光学層の内、少なくとも前記コア層上にある前記電気光学層上に配置されたクラッド層をさらに有し、
前記クラッド層の比誘電率は、15以下、前記クラッド層の屈折率は、1.8以下であることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項6】
前記電気光学層の内、少なくとも前記コア層上にある前記電気光学層上に配置されたクラッド層をさらに有し、
前記クラッド層は、
SiO、MgF、MgO、Al及び屈折率1.8以下の樹脂の内、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項7】
前記電極と前記電気光学層との間に配置された第1の材料層をさらに有し、
前記第1の材料層の屈折率は、1.8以下であることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項8】
前記電極と前記電気光学層との間に配置された第1の材料層をさらに有し、
前記第1の材料層の比誘電率は、少なくとも8以上であることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項9】
電気信号に応じて導波する光を変調する光変調器素子と、
受光する受信光を電気信号に変換する光受信器素子と、を有し、
前記光変調器素子は、
電気光学材料を含む電気光学層と、
前記電気光学層の下側に配置され、前記電気光学層に比較して低い誘電率を有する材料層と、
前記材料層の下側に配置され、前記電気光学層及び前記材料層の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層と、
前記電気光学層に電気信号を印加する電極と、を有し、
前記材料層の屈折率は、
前記電気光学層の屈折率の0.85倍以上であることを特徴とする光送受信器。
【請求項10】
電気信号に応じて導波する光を変調する光変調器素子と、
受光する受信光を電気信号に変換する光受光器素子と、
前記光変調器素子への電気信号を生成すると共に、前記光受信器素子からの前記電気信号を取得する信号処理部と、を有し、
前記光変調器素子は、
電気光学材料を含む電気光学層と、
前記電気光学層の下側に配置され、前記電気光学層に比較して低い誘電率を有する材料層と、
前記材料層の下側に配置され、前記電気光学層及び前記材料層の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層と、
前記電気光学層に電気信号を印加する電極と、を有し、
前記材料層の屈折率は、
前記電気光学層の屈折率の0.85倍以上であることを特徴とする光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器、光送受信器及び光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムの大容量化に伴って光送受信器の通信高速化や低消費電力化が求められている。特に、光送信器では、高効率の光変調器が強く求められている。そして、小型、かつ、高効率の光変調器を実現する手段として、例えば、電気光学係数の高いPbLaZrTiO(PLZT)やBaTiO(BTO)等の強誘電体電気光学材料を用いたマッハツェンダ型(MZ:Mach-Zehnder)の光変調器がある。例えば、PLZTやBTO等の電気光学係数は、数百pm/Vであるため、従来、光通信用に広く使用されている、例えば、LiNbO(LN:Lithium Niobate)の光変調器の電気光学係数の31pm/Vに比較して著しく高い。従って、PLZTやBTO等の電気光学係数は、小型で高効率な光変調器の材料に適している。
【0003】
図22は、従来の光変調器200の一例を示す略平面模式図である。図22に示す光変調器200は、入力部201と、分岐部202と、2個の平行に配置された変調部203と、合波部204と、出力部205とを有する。光変調器200は、入力部201からの光分岐後の変調部を通過する信号光を電気信号に応じて光位相変調することにより出力部から出射する光信号の強度及び位相を変調する、マッハツェンダ型の光変調器である。分岐部202は、入力部201からの信号光を光分岐し、光分岐した信号光を各変調部203に出力するカプラである。
【0004】
各変調部203は、変調導波路211と、電極212とを有する。変調導波路211は、例えば、PLZTやBTO等の電気光学(EO)材料を使用した導波路である。変調導波路211は、第1の変調導波路211Aと、第2の変調導波路211Bとを有する。電極212は、信号電極212Aと、第1の接地電極212B及び第2の接地電極212Cとを有する。第1の変調部203Aは、第1の接地電極212Bと、信号電極212Aと、第1の接地電極212Bと信号電極212Aとの間に配置された第1の変調導波路211Aとを有する。第2の変調部203Bは、第2の接地電極212Cと、信号電極212Aと、第2の接地電極212Cと信号電極212Aとの間に配置された第2の変調導波路211Bとを有する。
【0005】
図23は、図22に示すC-C線の略断面模式図である。図23に示す断面部位は、光変調器200の第1の変調部203Aの断面部位である。第1の変調部203Aは、図示せぬSi基板と、下部クラッド層221と、EO層222と、上部クラッド層223と、信号電極212Aと、第1の接地電極212Bとを有する。下部クラッド層221は、Si基板上に配置された、例えば、SiO等のバッファ層である。EO層222は、電気光学係数の高い、例えば、BTOやPLZT等の強誘電体のEO材料の層である。EO層222は、信号光が導波するように、例えば、リブ型の断面構造に加工され、第1の変調導波路211Aのコア層となる。上部クラッド層223は、EO層222上に配置された、EO層222のリブ型の第1の変調導波路211Aのコア211A1付近上部を覆う、例えば、SiO等のバッファ層である。第1の変調導波路211Aのコア211A1は、第1の接地電極212Bと信号電極212Aとの間で並列に配置されている。
【0006】
第1の変調部203Aは、信号電極212Aからの高周波の電気信号に応じて信号電極212Aから第1の接地電極212Bへの電界が発生し、電界に応じて第1の変調導波路211Aの光屈折率を変化させる。第1の変調部203Aは、光屈折率の変化に応じて第1の変調導波路211Aを導波する信号光の位相を変調する。第1の変調部203Aは、変調後の信号光を合波部204に出力する。
【0007】
また、第2の変調部203Bは、信号電極212Aからの高周波の電気信号に応じて信号電極212Aから第2の接地電極212Cへの電界が発生し、電界に応じて第2の変調導波路211Bの光屈折率を変化させる。第2の変調部203Bは、光屈折率の変化に応じて第2の変調導波路211Bを導波する信号光の位相を変調する。第2の変調導波路203Bは、変調後の信号光を合波部204に出力する。
【0008】
合波部204は、第1の変調部203Aからの変調後の信号光と、第2の変調部203Bからの変調後の信号光とを合波し、合波後の信号光を出力部205に出力する。合波部において、第1の変調部と第2の変調部の位相の状態に応じて干渉が発生し、その結果、出力部から強度及び位相が変調された信号光が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63-049732号公報
【特許文献2】特開2022-032687号公報
【特許文献3】米国特許第07283689号明細書
【特許文献4】特開2007-333756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
次に光変調器200における電気信号の伝搬特性の誘電率依存性について説明する。図24は、EO層222の材料で決まる物性定数である比誘電率と特性インピーダンスとの関係の一例を示す説明図である。図25は、EO層222の比誘電率と電気信号損失との関係の一例を示す説明図である。図26は、EO層222の比誘電率と電気信号屈折率との関係の一例を示す説明図である。変調導波路211のEO層222に使用する強誘電体のEO材料は、比誘電率が数百と高い。
【0011】
つまり、PLZTやBTO等のEO層222の比誘電率は、従来の光変調器の導波路に使用するLNの比誘電率に比較して著しく高い。その結果、PLZTやBTO等のEO層222を使用した光変調器200の特性インピーダンスは、図24に示すように、LNのEO層を使用した光変調器の特性インピーダンスに比較して低下する。また、PLZTやBTO等のEO層222を使用した光変調器200の電気信号損失は、図25に示すようにLNのEO層に使用した光変調器の電気信号損失に比較して増加する。更に、PLZTやBTO等のEO層222を使用した光変調器200の電気信号屈折率は、図26に示すようにLNのEO層に使用した光変調器の電気信号屈折率に比較して増加する。
【0012】
この中でも、PLZTやBTO等のEO層222を使用した光変調器200の電気信号屈折率の増加については、光の伝搬速度と電気信号の伝搬速度とのズレによる速度不整合を招く。
【0013】
具体的には、BTOやPLZT等のEO材料を使用した光導波路を導波する光の伝搬速度を規定する群屈折率は、例えば、2~2.5の範囲内となる。これに対して、BTOやPLZT等のEO材料を使用した光導波路に印加する電気信号の伝搬速度を規定する電気信号屈折率は、その比誘電率が数百と非常に高くなるため、3以上となる。そして、光の伝搬速度と電気信号の伝搬速度との間で大きく乖離することで速度不整合が発生する。その結果、光変調器200では、例えば、光変調器200の光応答の3dB帯域が著しく制限されてしまうことになる。
【0014】
また、速度不整合が発生する場合には、光変調器200の導波路長を短くすることで速度不整合の影響を抑制することも考えられる。しかしながら、この場合、光変調器200の作用長が短くなるため、光変調器200の位相をπ変化させるのに必要な半波長電圧Vπが増加して光変調器200の変調効率が劣化することになる。つまり、速度不整合が発生した場合には、高い電気光学係数の材料を用いたことによる変調効率の向上の効果が得られなくなる。
【0015】
従って、PLZTやBTO等の高誘電率を有するEO材料を光変調器200のコア211A1に用いる場合には、光変調器の高い3dB帯域の確保と高い変調効率(低いVπ)との両立を図ることが困難である。
【0016】
開示の技術は、光変調器の動作帯域を確保しながら変調効率の向上を図る光変調器等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願が開示する光変調器は、1つの態様において、電気光学材料を含む電気光学層と、前記電気光学層の下側に配置され、前記電気光学層に比較して低い誘電率を有する材料層と、を有する。更に、光変調器は、前記材料層の下側に配置され、前記電気光学層及び前記材料層の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層と、前記電気光学層に電気信号を印加する電極と、を有する。前記材料層の屈折率は、前記電気光学層の屈折率の0.85倍以上である。
【発明の効果】
【0018】
本願が開示する光変調器等の1つの態様によれば、光変調器の動作帯域を確保しながら変調効率の向上を図る光変調器等を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1の光変調器の一例を示す略平面模式図である。
図2図2は、図1に示すA-A線の略断面模式図である。
図3図3は、光変調器のEO層の厚さと電気信号屈折率との関係の一例を示す説明図である。
図4図4は、光変調器のSiコアの厚さと光群屈折率との関係の一例を示す説明図である。
図5図5は、光変調器の材料層の厚さと半波長電圧Vπとの関係の一例を示す説明図である。
図6図6は、光変調器の材料層の厚さと光群屈折率との関係の一例を示す説明図である。
図7A図7Aは、Siコア基板に使用するSOI基板の一例を示す説明図である。
図7B図7Bは、SOI基板のSi薄膜化工程の一例を示す説明図である。
図7C図7Cは、Siパターニング工程の一例を示す説明図である。
図7D図7Dは、SiO膜形成工程の一例を示す説明図である。
図7E図7Eは、表面平坦化研磨後のSiコア基板の一例を示す説明図である。
図8A図8Aは、EO薄膜基板に使用するEO基板の一例を示す説明図である。
図8B図8Bは、第1の貼り合わせ工程の一例を示す説明図である。
図8C図8Cは、第1の除去工程の一例を示す説明図である。
図8D図8Dは、EO薄膜基板の一例を示す説明図である。
図9A図9Aは、第2の貼り合わせ工程の一例を示す説明図である。
図9B図9Bは、第2の除去工程の一例を示す説明図である。
図9C図9Cは、上部クラッド層形成工程の一例を示す説明図である。
図9D図9Dは、メタル成膜成工程の一例を示す説明図である。
図9E図9Eは、メタルパターニング工程の一例を示す説明図である。
図10図10は、実施例2の光変調器の一例を示す略断面模式図である。
図11図11は、光変調器の上部クラッド層の比誘電率と電気信号損失との関係の一例を示す説明図である。
図12図12は、光変調器の上部クラッド層の比誘電率と電気信号屈折率との関係の一例を示す説明図である。
図13図13は、光変調器の上部クラッド層の屈折率と半波長電圧Vπとの関係の一例を示す説明図である。
図14図14は、実施例3の光変調器の一例を示す略断面模式図である。
図15図15は、光変調器の第1の材料層の屈折率と光損失との関係の一例を示す説明図である。
図16図16は、光変調器の第1の材料層の誘電率と半波長電圧Vπとの関係の一例を示す説明図である。
図17図17は、実施例4のIQ光変調器の一例を示す略平面模式図である。
図18図18は、図17に示すB-B線の略断面模式図である。
図19図19は、実施例5のDP-IQ光変調器の一例を示す略平面模式図である。
図20図20は、実施例6の光送受信器の一例を示す略平面模式図である。
図21図21は、光トランシーバの一例を示す説明図である。
図22図22は、従来の光変調器の一例を示す略平面模式図である。
図23図23は、図22に示すC-C線の略断面模式図である。
図24図24は、EO層の材料で決まる物性定数である比誘電率と特性インピーダンスとの関係の一例を示す説明図である。
図25図25は、EO層の比誘電率と電気信号損失との関係の一例を示す説明図である。
図26図26は、EO層の比誘電率と電気信号屈折率との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願が開示する光変調器等の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例0021】
図1は、実施例1の光変調器1の一例を示す略平面模式図である。光変調器1は、入力部11と、分岐部12と、2個の変調部13と、合波部14と、出力部15とを有する。光変調器1は、入力部11からの光分岐後の信号光を電気信号に応じて光変調する、マッハツェンダ型の光変調器である。入力部11は、入力導波路と接続し、入力導波路からの信号光を光変調器1に入力する部位である。出力部15は、出力導波路と接続し、光変調器1からの変調後の信号光を出力導波路に出力する部位である。分岐部12は、入力部11からの信号光を光分岐し、光分岐した信号光を各変調部13に出力する、例えば、1×2のMMIカプラである。合波部14は、各変調部13からの変調後の信号光を合波し、合波後の信号光を出力部15に出力する、例えば、2×1のMMIカプラである。
【0022】
変調部13は、第1の変調部13Aと、第2の変調部13Bとを有する。変調部13は、変調導波路21と、電極22とを有する。変調導波路21は、例えば、Siをコアとする導波路である。変調導波路21は、第1の変調導波路21Aと、第2の変調導波路21Bとを有する。電極22は、信号電極22Aと、第1の接地電極22B及び第2の接地電極22Cとを有するGSG構成である。
【0023】
第1の変調部13Aは、第1の変調導波路21Aと、信号電極22Aと、第1の接地電極22Bとを有し、第1の変調導波路21Aは、第1の接地電極22Bと信号電極22Aとの間に配置している。第1の変調部13Aは、信号電極22Aからの高周波の電気信号に応じて信号電極22Aから第1の接地電極22Bへの電界が発生し、電界に応じて第1の変調導波路21Aの光屈折率を変化させる。第1の変調部13Aは、光屈折率の変化に応じて第1の変調導波路21Aを導波する信号光を位相変調する。第1の変調部13Aは、変調後の信号光を合波部14に出力する。
【0024】
第2の変調部13Bは、第2の変調導波路21Bと、信号電極22Aと、第2の接地電極22Cとを有し、第2の変調導波路21Bは、第2の接地電極22Cと信号電極22Aとの間に配置している。第2の変調部13Bは、信号電極22Aからの高周波の電気信号に応じて信号電極22Aから第2の接地電極22Cへの電界が発生し、電界に応じて第2の変調導波路21Bの光屈折率を変化させる。第2の変調部13Bは、光屈折率の変化に応じて第2の変調導波路21Bを導波する信号光を変調する。第2の変調部13Bは、変調後の信号光を合波部14に出力する。
【0025】
合波部14は、第1の変調部13Aからの変調後の信号光と、第2の変調部13Bからの変調後の信号光とを合波し、合波後の信号光を出力部15に出力する。
【0026】
図2は、図1に示すA-A線の略断面図である。図2に示す断面部位は、図1に示す第1の変調部13Aの断面部位である。第1の変調部13Aは、図示せぬSi基板と、下部クラッド層31と、Siコア35と、材料層32と、EO層33と、上部クラッド層34と、第1の接地電極22Bと、信号電極22Aとを有する。下部クラッド層31は、Si基板上に積層される、例えば、SiOのクラッド層である。Siコア35は、下部クラッド層31に形成された光導波路のコア層であって、例えば、第1の変調導波路21Aのコアである。Siコア35は、EO層33の下にある材料層32の下側に当接して配置されている。
【0027】
材料層32は、下部クラッド層31及びSiコア35の表面に積層される、例えば、TaやアルモファスSi等の層である。EO層33は、材料層32の表面に積層される、例えば、BTO等のEO材料の電気光学層である。上部クラッド層34は、Siコア35付近上に配置され、EO層33表面を覆う、例えば、SiOのクラッド層である。第1の接地電極22B及び信号電極22Aは、Siコア35を挟み、EO層33上に配置する。EO層33及び材料層32は平板構造である。
【0028】
EO層33に使用するEO材料として、例えば、BTOは、形成方法にも依存するが、電気光学係数は100~400pm/V、比誘電率は150以上、屈折率は2.2程度である。材料層32に使用するTaの比誘電率は28、屈折率は2.05程度である。また、光変調器1に使用するEO層33の厚さは0.15μm、材料層32の厚さは0.02μm、Siコア35の幅は0.8μm、Siコア35の厚さは0.07μm、Siコア35を挟む電極22の間隔は4μmとする。材料層32は、EO層33に比較して低誘電率の材料で構成する。Siコア35は、EO層33及び材料層32の屈折率に比較して高い屈折率を有するシリコンで構成する。材料層32の屈折率は、EO層33の屈折率の0.85倍以上である。
【0029】
図3は、光変調器1のEO層33の厚さと電気信号屈折率との関係の一例を示す説明図、図4は、光変調器1のSiコア35の厚さと光群屈折率との関係の一例を示す説明図である。光変調器1は、図3に示すように、EO層33の厚さが、例えば、0.15μm以下になると、高周波の電気信号の屈折率が約3.00以下と比較的低くなる。光変調器1は、図4に示すように、Siコア35の厚さが、例えば、0.07μm以上になると、光変調器1側のSiコア35を伝搬する光の群屈折率も約3.00以上に高くなる。その結果、電気信号の屈折率の方が大きくなってしまうという従来の課題を解消し、光変調器1における高周波の電気信号の伝搬速度と光の伝搬速度とがほぼ同一になるため、速度不整合を改善できる。速度整合の改善の結果、光変調器1では、光変調器1の光応答のレベルの減衰量が3dB以内に抑制できる3dB帯域を65GHz以上の動作帯域でも実現できる。
【0030】
しかも、速度不整合を改善できるため、光変調器長を4mm程度まで長くすることが可能となる。従って、光変調器1の作用長を十分確保できる。上述のような断面構造を持つ光変調器1では、光変調器1の単位長さ当たりの半波長電圧は約0.6Vcmと高くなる。この高い変調効率と速度整合の改善による長い光変調器長とを組み合わせることで半波長電圧Vπは、2.0V以下と高効率な光変調器1を得ることが可能となる。
【0031】
図5は、光変調器1の材料層32の厚さと半波長電圧Vπとの関係の一例を示す説明図、図6は、光変調器1の材料層32の厚さと光群屈折率との関係の一例を示す説明図である。尚、説明の便宜上、材料層32の材料としては、例えば、SiO、Ta、Siを例示する。SiOの屈折率は1.444、Taの屈折率は2.05、Siの屈折率は3.45とする。
【0032】
光変調器1の半波長電圧Vπは、図5に示すように、材料層32の厚さが厚くなるに連れて高くなる傾向にある。材料層32の厚さが、約0.02μmまではどの材料でも、半波長電圧Vπの増加量は無視できるレベルであり、また、約0.05μmまでは、半波長電圧Vπを1Vcm以下に抑制できる。従って、材料層32の厚さは、少なくとも、0.05μm以下に設定するのが望ましい。
【0033】
また、材料層32の材料をSiOにした場合、図6に示すように、材料層32の厚さが増加するに連れて光の群屈折率が下がる傾向にあるため、速度整合の改善の観点で光の群屈折率を上げるという目的に反してしまう。材料層32としては、低い屈折率の材料を用いるのは好ましくなく、例えば、TaのようにEO層33の屈折率(2.2)に近い屈折率を持つ材料、若しくは、アモルファスSi等を含むSiのようにEO層33に比較して高い屈折率を持つ材料が好ましい。
【0034】
特に、材料層32の材料をSiにした場合、材料層32の厚さを厚くするに連れて光群屈折率を増加できるため、速度整合の改善の観点では好ましい。従って、材料層32の屈折率は、EO層33の屈折率とほぼ同程度、若しくは、それ以上が好ましく、少なくともEO層33の屈折率の0.85倍に比較して高い屈折率の材料を材料層32に使用するのが好ましい。
【0035】
また、材料層32は、EO層33とは異なる材料で構成し、電気光学係数及び比誘電率がEO層33に比較して低く、かつ、信号光に対する吸収係数が低い材料が好ましい。
【0036】
また、材料層32は、Siコア35とEO層33との間の密着性を改善する接着層としての役割を兼ね備えた材料が好ましく、例えば、TaやアモルファスSi等は屈折率の観点に加えて接着層としての観点でも適した材料である。
【0037】
尚、光変調器1のEO層33は、電気光学係数が約50pm/V以上、かつ、比誘電率が約50以上の電気光学材料、材料層32は、電気光学係数及び比誘電率がEO層33に比較して低く、かつ、信号光に対する吸収係数が低い材料であれば良い。また、材料層32は、屈折率がEO層33の屈折率の0.85倍以上になる材料であれば良い。また、光変調器1のコア層としてSiコア35を例示したが、EO層33及び材料層32の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層であれば良い。
【0038】
次に実施例1の光変調器1の製造工程について説明する。光変調器1は、例えば、Siコア35のパターンが表面に形成されたSiコア基板40Aと、Si基板上にSiO膜を挟んでBTOやPLZT等のEO層33の薄膜が形成されたEO薄膜基板45Aとを有する。光変調器1は、Siコア基板40AとEO薄膜基板45Aとを貼り合わせてEO層33上に電極22を形成することで構成する。
【0039】
先ずは、Siコア基板40Aの製造工程について説明する。図7Aは、Siコア基板40Aに使用するSOI基板40の一例を示す説明図である。SOI基板40は、Si基板41と、Si基板41上に積層するBOX層42と、BOX層42上に積層するSi層43とを有する。Si層43は、シリコンフォトニクスに使用する厚さ0.22μmのSi層である。
【0040】
図7Bは、SOI基板40のSi薄膜化工程の一例を示す説明図である。SOI基板40内のSi層43は、図7Bに示すようにエッチング等でSi層43を薄膜化して、Si層43の厚さを約0.07μmにする。
【0041】
図7Cは、Siパターニング工程の一例を示す説明図である。Si薄膜後のSi層43は、図7Cに示すようにパターニング化してSi層43Aを形成する。図7Dは、SiO膜形成工程の一例を示す説明図である。パターニング後のSi層43Aは、図7Dに示すようにSi層43A及びBOX層42上にSiO膜44を形成する。
【0042】
図7Eは、表面平坦化研磨後のSiコア基板40Aの一例を示す説明図である。SOI基板40は、SiO膜44をSi層43Aの表面付近まで表面研磨して、図7Eに示すようにSi層43Aを表面から露出させることで、Siコア基板40Aを形成することになる。
【0043】
Siコア基板40Aは、理想的には表面を平坦化し、Si層43Aの表面と、Si層43A両側のSiO膜44の表面とが面一となる構造を例示している。しかしながら、平坦化における材料毎の目減り量の差を考慮して、Si層43Aの表面に比較してSiO膜44の表面の高さが低くする構造にしても良い。この場合でも、ほぼ同等の半波長電圧Vπや光群屈折率を得ることができる。また、SOI基板40のSi基板41の部分は、高周波特性の向上の観点から高抵抗率の1000Ωcm以上の基板を用いるのが好ましい。
【0044】
次に、光変調器1に使用するEO薄膜基板45Aの製造工程について説明する。図8Aは、EO薄膜基板45Aに使用するEO基板45の一例を示す説明図である。図8Aに示すEO基板45は、Si基板46と、Si基板46上に積層された中間層47と、中間層47上に積層されたEO層48とを有する。EO層48は、BTO等の強誘電体のEO材料で形成する。中間層47は、例えば、ZrO、Pt、SrRuO(SROの何れかの層である。尚、EO層48は、Siサブ基板46上に直接形成した場合、強誘電体のEO材料の結晶品質が劣化してしまうため、Si基板46上に中間層47を介して形成している。
【0045】
図8Bは、第1の貼り合わせ工程の一例を示す説明図である。上部クラッド層49Bを積層する支持基板49Aを準備する。EO基板45を上下反転して、図8Bに示すように、上部クラッド層49BとEO基板45内のEO層48とを接着剤で貼り合わせる。尚、EO層48と上部クラッド層49Bとの間の接合面を新たな密着層で接合しても良く、適宜変更可能である。
【0046】
また、上部クラッド層49BとEO基板45内のEO層48との接合面は、例えば、ラップ研磨や化学機械研磨(CMP)加工で平坦化するのが望ましい。また、接合する前に表面洗浄や表面活性化処理を実行するのが好ましい。表面活性化後に、上部クラッド層49BとEO層48とを貼り合わせるが、必要に応じて真空雰囲気中での接合を実行しても良いし、また、接合時には適切な温度で圧力を加えるようにしても良い。
【0047】
図8Cは、第1の除去工程の一例を示す説明図である。次に、上部クラッド層49Bに貼り合わせたEO基板45内のSi基板46、中間層47及びEO層48の一部を除去することで、図8Cに示すように所定の厚さ、例えば、0.15μmのEO層48Aを形成する。尚、除去する方法としては、例えば、ラップ研磨や化学機械研磨(CMP)で加工することが望ましい。
【0048】
図8Dは、薄膜EO基板45Aの一例を示す説明図である。図8Dに示すように、EO層48A上に材料層32を形成することでEO薄膜基板45Aが完成したことになる。材料層32としては、前述の通り、その屈折率がEO層48と同程度、若しくは、それ以上の材料が好ましく、例えば、Ta酸化物やSi膜が好ましい。材料層32は、Siコア基板40AとEO薄膜基板45Aとの間の密着性を確保できる。後述するように、図8DのようなEO層および密着向上用の材料層32を、さらにSiコア導波路が形成される別の基板(図7D)に貼り合わせることによって変調器導波路を形成する。このような貼り合わせによる手法では、異なる基板上に、別途結晶成長がしやすい基板上に形成された良質なEO結晶膜を貼り合わせることが可能であるため、エピタキシャル成長による直接の成膜と比較して比較的簡単に任意の基板材料とEO材料とを組み合わせた構造を作ることが可能となる。
【0049】
次に、Siコア基板40AとEO薄膜基板45Aとの間を接合して光変調器1を製造する方法について説明する。図9Aは、第2の貼り合わせ工程の一例を示す説明図である。図9Aに示すように、EO薄膜基板45Aを反転し、反転後のEO薄膜基板45Aの材料層32と、Siコア基板40AのSi層43Aとを貼り合わせる。尚、説明の便宜上、EO薄膜基板45AとSiコア基板40Aとのサイズが同一であれば、ウエハ同士をそのまま張り合わせるので良い。しかしながら、両者のサイズが異なる場合は、例えば、EO薄膜基板45Aを所定のサイズにダイシングして個片化し、複数の個片化されたEO薄膜基板45AをSiコア基板40A上にダイ接合しても良く、適宜変更可能である。
【0050】
また、EO薄膜基板45AのウエハとSiコア基板40Aのウエハとの間を接合する工程では、Siコア基板40AのSiコア35が露出している面と、EO薄膜基板45Aの材料層32の面とを貼り合わせる。尚、貼り合わせる前には、Siコア基板40Aの面及びEO薄膜基板45Aの面に対して、例えば、平坦化処理、表面洗浄、表面活性化処理を実行しても良い。また、接合時には、必要に応じて真空中での接合や、適切な温度、圧力での接合を実行しても良く、適宜変更可能である。
【0051】
図9Bは、第2の除去工程の一例を示す説明図である。Siコア基板40AとEO薄膜基板45Aとを貼り合わせた後、図9Bに示すように、EO薄膜基板45AのEO層33とは反対面の支持基板49Aを除去する。支持基板49Aの除去には、例えば、XeFガスによるエッチングで他の材料とは選択的にSiのみを除去するような工程を用いるのが好ましい。
【0052】
図9Cは、上部クラッド層形成工程の一例を示す説明図である。図9Bに示す上部クラッド層49Bの一部をエッチングしてEO層33上に上部クラッド層34を形成することになる。EO層33に電極22を配置できるように上部クラッド層49Bの一部を除去できる。尚、エッチングには、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)やイオンミリング等で実行する。
【0053】
図9Dは、メタル層成膜工程の一例を示す説明図である。上部クラッド層34の一部を除去した後、図9Dに示すように、EO層33及び上部クラッド層34の表面に電極22として使用するメタル層22Dを成膜する。メタル層22Dは、例えば、EO層33とのコンタクトメタルとしてのTi膜22D1と、Ti膜22D1上に成膜されたAu膜22D2とを有する。尚、Ti膜22D1/Au膜22D2については、蒸着等の手法で形成し、Au膜22D2で厚い膜をつける場合には、さらにメッキの工程を実行しても良い。尚、Au膜22D2の代わりに、例えば、Al、Ag、Cu等の膜でも良く、適宜変更可能である。
【0054】
図9Eは、メタルパターニング工程の一例を示す説明図である。図9Dに示すメタル層22Dを成膜後の上部クラッド層34は、メタル層22Dの一部を除去してSiコア35付近に電界が印加できるように、図9Eに示すように、Siコア35を挟む形で電極パターン22Eを形成する。その結果、図1に示すように光変調器1が完成したことになる。
【0055】
実施例1の光変調器1では、電気光学材料を含むEO層33と、EO層33の下側に配置され、EO層33に比較して低い誘電率を有する材料層32と、を有する。更に、光変調器1は、材料層32の下側に配置され、EO層33及び材料層32の屈折率に比較して高い屈折率、例えば、3.45の屈折率を有する、例えば、Siコア層35と、EO層33に電気信号を印加する電極22と、を有する。材料層32の屈折率は、EO層33の屈折率の0.85倍以上とする。つまり、高い誘電率を持つEO層33の影響で比較的高くなりやすい電気信号屈折率に対して、高い屈折率を持つSiコア35の適用によって群屈折率を増加させることで、高周波の電気信号の屈折率と光の群屈折率とを近付ける。その結果、光変調器1における高周波の電気信号の伝搬速度と光の伝搬速度とがほぼ同一になるため、電気信号の伝搬速度と光の伝搬速度との間の速度不整合を改善できる。従って、光変調器1の動作帯域が制限されてしまうような事態を回避できる。しかも、光変調器1は、速度不整合を改善しているので、作用長を長くすることが可能であり、半波長電圧Vπを抑制できるため、光変調器1の変調効率を改善できる。
【0056】
光変調器1では、屈折率が3.45と高い材料のSiコア35を使用してSiコア35を伝搬する光の群屈折率を増加させることが可能となる。また、誘電率が高いEO層33を使用して高周波の電気信号の屈折率が高くなるものの、光の群屈折率を増加させることで光の群屈折率と高周波の電気信号の屈折率とを近づけて、速度不整合を緩和する。その結果、光変調器1は、作用長を短くする必要は無く、作用長を長くできるため、変調効率の向上を図りながら、光変調器1の動作帯域を確保できる。
【0057】
また、光変調器1は、EO層33とSiコア35との間に材料層32を配置するため、Siコア35とEO層33との間の密着性を確保できる。そもそも、EO層33は結晶材料であるため、エピタキシャル成長で生成するため、Siコア35及び下部クラッド層31上にEO層33を生成することは困難である。従って、Siコア35及び下部クラッド層31とEO層33との間に材料層32を配置している。加えて、材料層32の屈折率をEO層33の屈折率の0.85倍以上に設定したので、材料層32がない場合に比較して光の群屈折率を維持、若しくは増加させることが可能となる。その結果、光変調器1における高周波の電気信号の伝搬速度と光の伝搬速度との速度整合の改善の効果を損なうことなく、Siコア35とEO層33との間の密着性を高めて安定した光変調器1の構造を実現できる。
【0058】
EO層33の電気光学係数は、材料層32の電気光学係数に比較して高い材料を有する。その結果、低い半波長電圧Vπを実現することが可能となる。
【0059】
電気光学係数が高いEO層33の比誘電率は、50に比較して高く、かつ、EO層33の電気光学係数は、50pm/Vに比較して高く、材料層32の比誘電率は、50以下、かつ、材料層32の電気光学係数は、50pm/V以下にしている。その結果、EO層33の高周波の電気信号の屈折率を比較的低く抑え、かつ、Siコア35により光の群屈折率を増加できる。
【0060】
EO層33は、BaTiO(BTO)、PbLaZrTiO(PLZT)、PbZrTiO(PZT)の内、少なくとも何れか一つを含む材料を有している。材料層32は、Ta及びSiの内、少なくとも何れか一つを含む材料を有している。これらの材料の高い電気光学係数により、半波長電圧Vπを低くすることができる。
【0061】
EO層33の厚さは0.1~0.3μmの範囲内、Siコア35の厚さは0.05~0.10μmの範囲内、材料層32の厚さは0.005~0.05μm以下とする。その結果、EO層33の高周波の電気信号の屈折率を比較的低く抑えつつ、Siコア35により光の群屈折率を増加できる。
【0062】
尚、説明の便宜上、光変調器1のEO層33、材料層32及び上部クラッド層34が夫々単一の材料で構成する場合を例示した。しかしながら、例えば、誘電率・屈折率・電気光学係数がそれぞれの層において好ましいとされる範囲に入っている材料を複数組み合わせても良く、適宜変更可能である。
【0063】
光変調器1の入力部11と接続する入力導波路とSiコア35との間を接続する結合部位又は、光変調器1の出力部15と接続する出力導波路とSiコア35との間を接続する結合部位にコア厚変換部を備えても良い。コア厚変換部は、例えば、Siコア35の厚さが0.05~0.10μmから0.15μm以上の厚さに変換する構造である。コア厚変換部は、入力導波路からSiコア35へのコア幅が徐々に変化するテーパ構造、若しくは、Siコア35から出力導波路へのコア幅が徐々に変化するテーパ構造である。その結果、結合部位での結合損失を抑制できる。
【0064】
また、Siコア35は、チャネル型導波路を例示したが、例えば、リッジ型導波路でも良く、適宜変更可能である。
【実施例0065】
図10は、実施例2の光変調器1の略断面模式図である。尚、実施例1の光変調器1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図10に示す断面部位は、光変調器1内の第1の変調部13Aの断面部位である。実施例2の光変調器1と実施例1の光変調器1とが異なるところは、上部クラッド層34Aの材料と下部クラッド層31の材料とを異なる材料にした点にある。
【0066】
図11は、光変調器1の上部クラッド層34Aの比誘電率と電気信号損失との関係の一例を示す説明図、図12は、光変調器1の上部クラッド層34Aの比誘電率と電気信号屈折率との関係の一例を示す説明図である。上部クラッド層34Aの材料の比誘電率を高くした場合、EO層33の比誘電率を高くした場合と同様に、図11に示すように、電気信号損失(高周波損失)が高くなる。また、上部クラッド層34Aの材料の比誘電率を高くした場合、図12に示すように、電気信号屈折率(高周波屈折率)も高くなる。そこで、上部クラッド層34Aの材料は、材料をSiOにした場合に比較して電気信号損失や電気信号屈折率を夫々10%以下に抑えるために、比誘電率が15以下の材料を採用することが好ましい。
【0067】
図13は、光変調器1の上部クラッド層34Aの屈折率と半波長電圧Vπとの関係の一例を示す説明図である。上部クラッド層34Aの屈折率が高すぎると、EO層33から上部クラッド層34Aへ光分布が広がりすぎるため、図13に示すように、EO層33での光変調効率の劣化(半波長電圧Vπの増加)を招くことになる。そこで、上部クラッド層34Aの材料は、1.8以下の屈折率を有する材料を採用することが好ましい。従って、SiO以外の上部クラッド層34Aとしては、例えば、MgF、MgO、Al、Y等や屈折率1.8以下の樹脂等が好ましい。
【0068】
実施例2の光変調器1は、EO層33上に配置する上部クラッド層34Aの材料を、比誘電率が15以下、屈折率が1.8以下の材料で構成する。その結果、電気信号損失及び電気信号屈折率を抑制しながら、半波長電圧を抑制して光変調器1の変調効率の改善を図ることができる。
【実施例0069】
図14は、実施例3の光変調器1の一例を示す略断面模式図である。尚、実施例1の光変調器1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。実施例3の光変調器1と実施例1の光変調器1とが異なるところは、EO層33と上部クラッド層34Aおよび電極22との間に第1の材料層36を配置した点にある。
【0070】
変調効率の観点からは、実施例1の光変調器1のようにEO層33に電極22が直接接触している構造の方が望ましいが、例えば、製造誤差の観点からEO層33の上に堆積されている層が除去しきれずに電極22の下に残る場合も考えられる。そこで、このような事態に対処すべく、電極22とEO層33との間に意図的に第1の材料層36を配置することで、安定した層構造を確保する。
【0071】
図15は、光変調器1の第1の材料層36の屈折率と光損失との関係の一例を示す説明図である。第1の材料層36は、EO層33の屈折率に比較して低い材料を採用することで、EO層33から電極22への光分布の染み出しを抑制できるため、電極22への光吸収による光損失を抑制できる。光損失の抑制効果は、第1の材料層36の屈折率に依存し、図15に示すように、EO層33の屈折率が2.2前後に対して、第1の材料層36の屈折率が1.8以下の場合、光損失を低減できる。従って、第1の材料層36としては、光損失抑制の観点から、屈折率が1.8以下のSiO、MgF、Al、MgO等の材料が好ましい。
【0072】
図16は、光変調器1の第1の材料層36の誘電率と半波長電圧Vπとの関係の一例を示す説明図である。実施例3の光変調器1では、電極22とEO層33との間に配置される第1の材料層36にも高周波の電気信号が印加されてしまうことも考えられる。特に誘電率が低い材料を第1の材料層36として電極22とEO層33との間に配置した場合、相対的に第1の材料層36に印加される電圧が高くなるため、EO層33へ印加される電界が弱くなる。その結果、図16に示すように半波長電圧Vπが増加してしまう。そこで、半波長電圧Vπの増加を抑制するためには、第1の材料層36の誘電率を8以上の比較的高い材料を使用するのが好ましく、例えば、MgO、HfO、Ta、ZrO及びNb等の材料が好ましい。
【0073】
つまり、実施例3の光変調器1の第1の材料層36は、屈折率が1.8以下の材料及び、比誘電率が8以上の材料の内、少なくとも何れか一つの材料で構成する。
【0074】
実施例3の光変調器1では、電極22とEO層33との間に第1の材料層36を配置し、第1の材料層36の屈折率は、1.8以下にする。その結果、第1の材料層36は、EO層33から電極22への光分布の染み出しを抑制して光損失を抑制できる。
【0075】
光変調器1では、電極22とEO層33との間に第1の材料層36を配置し、第1の材料層36の比誘電率は、少なくとも8以上にする。その結果、EO層33へ印加される電界も強くなるため、半波長電圧Vπの増加を抑制できる。
【実施例0076】
図17は、実施例4のIQ光変調器100の構成の一例を示す平面模式図である。尚、実施例1の光変調器1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図17に示すIQ光変調器100は、第1の分岐部61と、I(Inphase)成分の光変調器1A1と、Q(Quadrature)成分の光変調器1A2と、2個の第1のDCPS(Direct Current Phase Shifter)51と、第1の合波部62とを有する。一方の第1のDCPS51は、I成分の光変調器1A1からI成分の信号光の位相を調整する位相調整素子である。他方の第1のDCPS51は、Q成分の光変調器1A2からI成分の信号光の位相を調整する位相調整素子である。
【0077】
I成分の光変調器1A1は、I成分の光信号を位相変調する。Q成分の光変調器1A2は、Q成分の光信号を位相変調する。I成分の光変調器1A1は、分岐部12と、2個の変調部13A、13B(13)と、2個の第2のDCPS52と、合波部14とを有する。第2のDCPS52は、変調部13からI成分の信号光の位相を調整する位相調整素子である。Q成分の光変調器1A2は、分岐部12と、2個の変調部計13A、13B(13)と、2個の第2のDCPS52と、合波部14とを有する。第2のDCPS52は、変調部13からQ成分の信号光の位相を調整する位相調整素子である。
【0078】
第1の分岐部61は、入力導波路からの信号光を光分岐し、光分岐後の信号光を各光変調器1(1A1,1A2)に出力する。I成分の光変調器1A1は、当該光変調器1A1内の合波部14からのI成分の位相変調後の信号光を第1のDCPS51に出力する。第1のDCPS51は、I成分の位相変調後の信号光を位相シフトし、位相シフト後のI成分の信号光を第1の合波部62に出力する。
【0079】
また、Q成分の光変調器1A2は、当該光変調器1A2内の合波部14からのQ成分の位相変調後の信号光を第1のDCPS51に出力する。第1のDCPS51は、Q成分の位相変調後の信号光を位相シフトし、位相シフト後のQ成分の信号光を第1の合波部62に出力する。第1の合波部62は、I成分の信号光とQ成分の信号光とを合波し、合波後のIQ成分の信号光を出力導波路に出力する。
【0080】
図18は、図17に示すB-B線の略断面模式図である。図18に示す断面部位は、I成分の光変調器1A1の断面部位である。図18に示すI成分の光変調器1A1の変調部13の断面部位は、Si基板41と、下部クラッド層31と、Siコア35と、材料層32と、EO層33と、上部クラッド層34とを有する。
【0081】
I成分の光変調器1A1の第2のDCPS52の断面部位は、Si基板41と、下部クラッド層31と、Siコア基板35と、上部クラッド層34と、熱光学ヒータ52Bと、金属配線52Aとを有する。熱光学ヒータ52Bは、変調導波路21AであるSiコア35に近接した位置に配置するTiN等の電気抵抗である。金属配線52Aは、熱光学ヒータ52Bと電気的に接続し、熱光学ヒータ52Bに電流を供給する配線である。熱光学ヒータ52Bは、金属配線52Aから熱光学ヒータ52Bに電流を流すことで熱が発生する。第2のDCPS52は、熱光学ヒータ52Bの熱で第1の変調導波路21A内のシリコン屈折率が変化して第1の変調導波路21内を通過する光の位相をシフトする。
【0082】
変調部13の断面部位のみ、強誘電体のEO材料を使用すし、分岐部12及び合波部14等をシリコンフォトニクスの技術を用いて構成するため少ない面積で分岐・合波部やDCPSを配置することが可能となる。その結果、小型で高効率・高速動作が可能で、かつ、集積度の高い高機能を持つ光変調器素子を実現できる。
【0083】
光変調器1を構成するための分岐部12及び合波部14も高誘電体のEO材料とSiコア35とのハイブリッド導波路を用いて構成する場合を例示した。しかしながら、シリコンフォトニクス素子上に光変調器1を搭載する場合は、光変調器1を構成するための分岐部12及び合波部14もシリコンフォトニクス導波路で構成することで、シリコンフォトニクスの特徴を生かして小型化が可能となる。また、光変調器1を構成する2つの導波路の一部をシリコンフォトニクス素子側で形成することで、光変調器1の位相を適切に調整するための位相シフタを導波路上に形成されたヒータによって実現することが可能であり、小型かつ低消費電力なDCPSを実現できる。ヒータを用いたDCPSは光変調器1の位相調整だけでなく、IQ光変調器100のIチャンネルとQチャンネルとの間の位相調整にも使用できる。
【0084】
光変調器1AのSiコア35のコア厚は、例えば、0.07μm、分岐部12および合波部14と接続するSi導波路35Aのコア厚は例えば、0.22μm、コア幅は、例えば、0.5μmとする。従って、分岐部12と接続するSi導波路35AとSiコア35との間、合波部14と接続するSi導波路35AとSiコア35Aとをの間の光結合部位には、コア厚が異なるため、低損失で接続するための変換導波路を配置している。
【0085】
実施例4のIQ光変調器100は、I成分の光変調器1A1(1)及びQ成分の光変調器1A2(1)を内蔵した。光変調器1では、電気光学材料を含むEO層33と、EO層33の下側に配置され、EO層33に比較して低い誘電率を有する材料層32と、を有する。更に、光変調器1は、材料層32の下側に配置され、EO層33及び材料層32の屈折率に比較して高い屈折率、例えば、3.45の屈折率を有する、例えば、Siコア層35と、EO層33に電気信号を印加する電極22と、を有する。材料層32の屈折率は、EO層33の屈折率の0.85倍以上とする。つまり、EO層33の電気信号の屈折率を比較的低く抑え、かつ、Siコア35によりの光の群屈折率を増加させることで、電気信号の屈折率と光の群屈折率とを近付ける。その結果、光変調器1における電気信号の伝搬速度と光の伝搬速度とがほぼ同一になるため、IQ光変調器100での速度不整合を改善できる。従って、IQ光変調器100の動作帯域が制限されてしまうような事態を回避できる。しかも、IQ光変調器100は、作用長を長く確保したまま、速度不整合を改善しているので、半波長電圧Vπを抑制できるため、IQ光変調器100の変調効率を改善できる。
【0086】
尚、実施例4のIQ光変調器100は、実施例1の光変調器1を内蔵する場合を例示したが、実施例2又は3の光変調器1を使用しても良く、適宜変更可能である。
【実施例0087】
図19は、実施例5のDP-IQ光変調器110の構成の一例を示す平面模式図である。図17に示すIQ光変調器100と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図19に示すDP-IQ光変調器110は、4個の光変調器1を並列に配置することで構成する。DP-IQ光変調器110は、第2の分岐部63と、X偏波成分のIQ光変調器100A(100)と、Y偏波成分のIQ光変調器100B(100)と、PR(Polarization Rotator)64と、PBC(Polarization Beam Combiner)65とを有する。
【0088】
第2の分岐部63は、入力導波路からの入力光を光分岐し、光分岐後の信号光を各IQ光変調器100に出力する。X偏波成分のIQ光変調器100A(100)は、X偏波成分のI成分の光変調器1A1と、X偏波成分のQ成分の光変調器1A2とを有する。
【0089】
IQ光変調器100は、第1の分岐部61と、I成分の光変調器1A1と、Q成分の光変調器1A2と、2個の第1のDCPS51と、第1の合波部62とを有する。
【0090】
第1の分岐部61は、第2の分岐部63からの信号光を光分岐し、光分岐後の信号光を各光変調器1A1、1A2に出力する。I成分の光変調器1A1は、当該光変調器1A1内の合波部14からのI成分の位相変調後の信号光を第1のDCPS51に出力する。第1のDCPS51は、I成分の位相変調後の信号光を位相シフトし、位相シフト後のI成分の信号光を第1の合波部62に出力する。
【0091】
また、Q成分の光変調器1A2は、当該光変調器1A2内の合波部14からのQ成分の位相変調後の信号光を第1のDCPS51に出力する。第1のDCPS51は、Q成分の位相変調後の信号光を位相シフトし、位相シフト後のQ成分の信号光を第1の合波部62に出力する。第1の合波部62は、I成分の信号光とQ成分の信号光とを合波し、合波後のIQ成分の信号光をPBC65に出力する。
【0092】
X偏波成分のIQ光変調器100A内の第1の合波部62は、I成分の光変調器1A1内の合波部14からのX偏波成分のI成分の信号光と、Q成分の光変調器1A2内の合波部14からのX偏波成分のQ成分の信号光とを合波する。第1の合波部62は、X偏波成分のIQ成分の信号光をPBC65に出力する。
【0093】
Y偏波のIQ光変調器100B内の第1の合波部62は、I成分の光変調器1A1内の合波部14からのY偏波成分のI成分の信号光と、Q成分の光変調器1A2内の合波部14からのY偏波成分のQ成分の信号光とを合波する。第1の合波部62は、Y偏波成分のIQ成分の信号光をPR64に出力する。PR64は、Y偏波成分のIQ成分の信号光を偏波回転し、偏波回転後のY偏波成分のIQ成分の信号光をPBC65に出力する。PBC65は、X偏波成分のIQ成分の信号光と、偏波回転後のY偏波成分のIQ成分の信号光とを合波し、合波後のXY偏波成分の信号光を送信光として出力導波路に出力する。
【0094】
変調部13の断面部位のみ、強誘電体のEO材料を使用するため、光変調器1の入出力の第2の分岐部63、IQ間の第1の分岐部61及び第1の合波部62や偏波分離・結合のためのPR64及びPBC65等をシリコンフォトニクスの技術を用いて構成する。少ない面積で配置することが可能となる。その結果、小型で高効率・高速動作が可能で、かつ、集積度の高い高機能を持つ光変調器素子を実現できる。
【0095】
光変調器1を構成するための分岐部12及び合波部14も高誘電体のEO材料とSiコア35とのハイブリッド導波路を用いて構成する場合を例示した。しかしながら、シリコンフォトニクス素子上に光変調器1を搭載する場合は、光変調器1を構成するための分岐部12及び合波部14もシリコンフォトニクス導波路で構成することで、シリコンフォトニクスの特徴を生かして小型化が可能となる。光変調器1を構成する2つの導波路の一部をシリコンフォトニクス素子側で形成することで、光変調器1の位相を適切に調整するためのDCPSを導波路上に形成されたヒータによって実現することが可能であり、小型かつ低消費電力な位相シフタを実現できる。ヒータを用いたDCPSは光変調器1の位相調整だけでなく、IQ光変調器100のIチャンネルとQチャンネルとの間の位相調整にも使用できる。
【0096】
実施例5のDP-IQ光変調器110は、X偏波のIQ光変調器100Aと、Y偏波のIQ光変調器100Bとを内蔵している。光変調器1では、EO材料を含むEO層33と、EO層33の下側に配置され、EO層33に比較して低い誘電率を有する材料層32と、を有する。更に、光変調器1は、材料層32の下側に配置され、EO層33及び材料層32の屈折率に比較して高い屈折率、例えば、3.45の屈折率を有する、例えば、Siコア層35と、EO層33に電気信号を印加する電極22と、を有する。材料層32の屈折率は、EO層33の屈折率の0.85倍以上とする。つまり、EO層33の電気信号の屈折率を比較的低く抑えつつ、Siコア35の適用によりの光の群屈折率を増加させることで、電気信号の屈折率と光の群屈折率とを近付ける。その結果、光変調器1における電気信号の伝搬速度と光の伝搬速度とがほぼ同一になるため、DP-IQ光変調器110での速度不整合を改善できる。従って、DP-IQ光変調器110の動作帯域が制限されてしまうような事態を回避できる。しかも、DP-IQ光変調器110は、作用長を長く確保したまま、速度不整合を改善しているので、半波長電圧Vπを抑制できるため、DP-IQ光変調器110の変調効率を改善できる。
【0097】
尚、シリコンフォトニクス素子上に強誘電体のEO材料を使用する光変調器1を搭載する構造において、光変調器1とシリコンフォトニクスのSi導波路35Aとの間の光学的な結合は、Siコア25とSi導波路35Aとを接続すればよい。尚、光変調器1内のSiコア35の最適な幅、厚さと、一般的なシリコンフォトニクスで用いられるSi導波路35Aのコア幅又はコア厚とはサイズが異なるため、低損失で接続するための変換導波路を挿入しても良く、適宜変更可能である。
【実施例0098】
図20は、実施例6の光送受信器120の構成の一例を示す平面模式図である。尚、図19に示すDP-IQ光変調器110と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図20に示す光送受信器120は、DP-IQ光変調器110を含む光変調器素子120Aと、DP-QAM信号を受信する光受信器素子120Bとを有する。光送受信器120は、光変調器素子120A及び光受信器素子120Bを、シリコンフォトニクス技術を使用して集積している。光変調器素子120Aは、例えば、DP-IQ光変調器110である。光受信器素子120Bは、第3の分岐部67と、受光入力部72と、PBS(Polarization Beam Splitter)68と、PR(Polarization Rotater)69と、第1の光ハイブリッド回路70A(70)と、第2の光ハイブリッド回路70B(70)と、を有する。光受信器素子120Bは、4個の第1の受光素子71A(71)及び4個の第2の受光素子71B(71)を有する。
【0099】
第3の分岐部67は、入力導波路から図示せぬ光源からの光を光分岐し、光分岐後の光の一方を変調器の入力光源としてDP-IQ光変調器110内の第2の分岐部63に出力し、他方は受信機の局発光として各ハイブリッド回路70に出力する。受光入力部72は、図示せぬ光ファイバからの受信光を入力する。PBS68は、受光入力部72からX偏波の受信光及びY偏波の受信光に分波し、X偏波の受信光を第1の光ハイブリッド回路70Aに出力すると共に、Y偏波の受信光をPR69に出力する。PR69は、Y偏波の受信光を90度偏波回転し、偏波回転後のY偏波の受信光を第2の光ハイブリッド回路70Bに出力する。
【0100】
第1の光ハイブリッド回路70Aは、受信光のX偏波成分に局発光を干渉させてI成分及びQ成分の光信号を取得する。第1の光ハイブリッド回路70Aは、X偏波成分の内、I成分の光信号を第1の受光素子71A1に出力する。第1の光ハイブリッド回路70Aは、X偏波成分の内、Q成分の光信号を第1の受光素子71A2に出力する。
【0101】
第2の光ハイブリッド回路70Bは、受信光のY偏波成分に局発光を干渉させてI成分及びQ成分の光信号を取得する。第2の光ハイブリッド回路70Bは、Y偏波成分の内、I成分の光信号を第2の受光素子71B1に出力する。第2の光ハイブリッド回路70Bは、Y偏波成分の内、Q成分の光信号を第2の受光素子71B2に出力する。
【0102】
第1の受光素子71A1は、第1の光ハイブリッド回路70AからのX偏波成分のI成分の光信号を電気変換し、電気変換後のI成分の電気信号を出力する、例えば、PD(Photo Detector)である。また、第1の受光素子71A2は、第1の光ハイブリッド回路70AからのX偏波成分のQ成分の光信号を電気変換し、電気変換後のQ成分の電気信号を出力する。第2の受光素子71B1は、第2の光ハイブリッド回路70BからのY偏波成分のI成分の光信号を電気変換し、電気変換後のI成分の電気信号を出力する、例えば、PDである。第2の受光素子71B2は、第2の光ハイブリッド回路70BからのY偏波成分のQ成分の光信号を電気変換し、電気変換後のQ成分の電気信号を出力する。
【0103】
実施例6の光送受信器120は、DP-IQ光変調器110を含む光変調器素子120Aと、光受信器素子120Bとをシリコンフォトニクス技術で搭載するため、小型化できる。
【0104】
光変調器素子120Aは、複数の光変調器1を内蔵したDP-IQ光変調器110を有する。光変調器1では、EO材料を含むEO層33と、EO層33の下側に配置され、EO層33に比較して低い誘電率を有する材料層32と、を有する。更に、光変調器1は、材料層32の下側に配置され、EO層33及び材料層32の屈折率に比較して高い屈折率、例えば、3.45の屈折率を有する、例えば、Siコア層35と、EO層33に電気信号を印加する電極22と、を有する。材料層32の屈折率は、EO層33の屈折率の0.85倍以上とする。つまり、EO層33の電気信号の屈折率を比較的低く抑えつつ、Siコア35の適用により光の群屈折率を増加させることで、電気信号の屈折率と光の群屈折率とを近付ける。その結果、光変調器1における電気信号の伝搬速度と光の伝搬速度とがほぼ同一になるため、DP-IQ光変調器110での速度不整合を改善できる。従って、DP-IQ光変調器110の動作帯域が制限されてしまうような事態を回避できる。しかも、DP-IQ光変調器110は、作用長を長く確保したまま、速度不整合を改善しているので、半波長電圧Vπを抑制できるため、DP-IQ光変調器110の変調効率を改善できる。
【0105】
次に本実施例の光変調器1を採用した光トランシーバ130について説明する。図21は、光トランシーバ130の一例を示す説明図である。図21に示す光トランシーバ130は、LD131と、送受信器モジュール132と、DSP(Digital Signal Processor)133とを有する。LD131は、例えば、レーザ光を発光する光源である。送受信器モジュール132は、光送受信器120と、ドライバ回路(DRV)121と、TIA(Transimpedance Amplifier)122と、を有する。光送受信器120は、光変調器素子120Aと、光受信器素子120Bとを有する。光変調器素子120Aは、例えば、DP-IQ光変調器110A等である。DSP133は、光送受信器120全体を制御する。DSP133は、送信信号のIQ変調処理、及び受信信号の復調処理を実行する、デジタル信号処理を実行する電気部品である。
【0106】
DSP133は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、送信データを含む電気信号を生成し、生成した電気信号をドライバ回路121に出力する。ドライバ回路121は、DSP133からの電気信号に応じて光変調器素子120Aを駆動する。
【0107】
光受信器素子120Bは、信号光を電気変換する。TIA122は、電気変換後の電気信号を増幅し、増幅後の電気信号をDSP133に出力する。DSP133は、TIA122から取得した電気信号の復号等の処理を実行して受信データを得る。
【0108】
尚、説明の便宜上、光トランシーバ130は、光変調器素子120A及び光受信器素子120Bを内蔵する場合を例示したが、光変調器素子120Aのみを内蔵した光送信装置にも適用可能である。
【0109】
光トランシーバ130は、光変調器素子120A内の光変調器1の効率がよいためドライバ回路121の出力振幅を抑えて低消費電力動作が可能となると共に、高速で動作するため大容量の光信号伝送が可能となる。その結果、大容量かつ低消費電力の光通信モジュールを実現できる。
【0110】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0111】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。
【0112】
以上、本実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0113】
(付記1)電気光学材料を含む電気光学層と、
前記電気光学層の下側に配置され、前記電気光学層に比較して低い誘電率を有する材料層と、
前記材料層の下側に配置され、前記電気光学層及び前記材料層の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層と、
前記電気光学層に電気信号を印加する電極と、を有し、
前記材料層の屈折率は、
前記電気光学層の屈折率の0.85倍以上であることを特徴とする光変調器。
【0114】
(付記2)前記電気光学層の電気光学係数は、
前記材料層の電気光学係数に比較して高いことを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0115】
(付記3)前記電気光学層の比誘電率は、50に比較して高く、かつ、前記電気光学層の電気光学係数は、50pm/Vに比較して高く、
前記材料層の比誘電率は、50以下、かつ、前記材料層の電気光学係数は、50pm/V以下であることを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0116】
(付記4)前記電気光学層は、
BaTiO(BTO)、PbLaZrTiO(PLZT)、PbZrTiO(PZT)の内、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0117】
(付記5)前記材料層は、
Ta及びSiの内、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0118】
(付記6)前記電気光学層の厚さは0.1~0.3μmの範囲内、前記コア層の厚さは0.05~0.10μmの範囲内、前記材料層の厚さは0.005~0.05μm以下であることを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0119】
(付記7)前記光変調器の入力部と接続する入力導波路と前記コア層との間を接続する結合部位又は、前記光変調器の出力部と接続する出力導波路と前記コア層との間を接続する結合部位は、
前記コア層の厚さが0.05~0.10μmから0.15μm以上の厚さに変換するコア厚変換部を有することを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0120】
(付記8)前記電気光学層の内、少なくとも前記コア層上にある前記電気光学層上に配置されたクラッド層をさらに有し、
前記クラッド層の比誘電率は、15以下、前記クラッド層の屈折率は、1.8以下であることを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0121】
(付記9)前記電気光学層の内、少なくとも前記コア層上にある前記電気光学層上に配置されたクラッド層をさらに有し、
前記クラッド層は、
SiO、MgF、MgO、Al及び屈折率1.8以下の樹脂の内、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0122】
(付記10)前記電極と前記電気光学層との間に配置された第1の材料層をさらに有し、
前記第1の材料層の屈折率は、1.8以下であることを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0123】
(付記11)前記第1の材料層は、
SiO、MgF、Al及びMgOの内、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする付記10に記載の光変調器。
【0124】
(付記12)前記電極と前記電気光学層との間に配置された第1の材料層をさらに有し、
前記第1の材料層の比誘電率は、少なくとも8以上であることを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0125】
(付記13)前記第1の材料層は、
MgO、HfO、Ta、ZrO及びNbの内、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする付記12に記載の光変調器。
【0126】
(付記14)前記光変調器は、
前記コア層である2本の光導波路と、各光導波路に電気信号を印加する電極と、光を2本の光導波路に分岐する分岐部と、2本の光導波路からの光を合波する合波部と、を有し、前記電気信号に応じて前記光導波路を導波する光を変調することを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0127】
(付記15)電気信号に応じて導波する光を変調する光変調器素子と、
受光する受信光を電気信号に変換する光受信器素子と、を有し、
前記光変調器素子は、
電気光学材料を含む電気光学層と、
前記電気光学層の下側に配置され、前記電気光学層に比較して低い誘電率を有する材料層と、
前記材料層の下側に配置され、前記電気光学層及び前記材料層の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層と、
前記電気光学層に電気信号を印加する電極と、を有し、
前記材料層の屈折率は、
前記電気光学層の屈折率の0.85倍以上であることを特徴とする光送受信器。
【0128】
(付記16)前記光変調器素子を駆動するドライバ回路と、
前記光受信器素子からの電気信号を増幅する増幅回路と、をさらに有することを特徴とする付記15に記載の光送受信器。
【0129】
(付記17)電気信号に応じて導波する光を変調する光変調器素子と、
受光する受信光を電気信号に変換する光受光器素子と、
前記光変調器素子への電気信号を生成すると共に、前記光受信器素子からの前記電気信号を取得する信号処理部と、を有し、
前記光変調器素子は、
電気光学材料を含む電気光学層と、
前記電気光学層の下側に配置され、前記電気光学層に比較して低い誘電率を有する材料層と、
前記材料層の下側に配置され、前記電気光学層及び前記材料層の屈折率に比較して高い屈折率を有するコア層と、
前記電気光学層に電気信号を印加する電極と、を有し、
前記材料層の屈折率は、
前記電気光学層の屈折率の0.85倍以上であることを特徴とする光トランシーバ。
【符号の説明】
【0130】
1 光変調器
22 電極
32 材料層
33 EO層
34 上部クラッド層
35 Siコア
36 第1の材料層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26