(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019825
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】行動体存在推定システム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20250131BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20250131BHJP
【FI】
G06T7/00 660B
G06T7/20 300Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123663
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】518126409
【氏名又は名称】株式会社アジラ
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】木村 大介
(72)【発明者】
【氏名】尾上 剛
(72)【発明者】
【氏名】早原 昌司
(72)【発明者】
【氏名】グエン バオ トウアン
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096CA04
5L096FA67
5L096FA72
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】 シート状体を纏った行動体の存在を推定可能な行動体存在推定システムを提供する。
【解決手段】 行動体存在推定システム1は、柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S1を纏ったサンプル行動体Y1が映ったサンプル画像X1におけるシート状体S1の形状に表れるサンプル行動体Y1の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を記憶した記憶部31と、対象画像X2を取得する学習側取得部21と、対象画像X2内の複数の特徴量を検出する学習側検出部23と、記検出された複数の特徴量の中に複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S2を纏った対象行動体Y2が存在すると推定する推定部34と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における前記シート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を記憶した記憶部と、
対象画像を取得する推定側取得部と、
前記対象画像内の複数の特徴量を検出する推定側検出部と、
前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、前記対象画像内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏った対象行動体が存在すると推定する推定部と、
を備えたことを特徴とする行動体存在推定システム。
【請求項2】
前記推定側取得部は、時系列の複数の対象画像を取得し、
前記推定側検出部は、更に、前記時系列の複数の対象画像に映った対象行動体の所定の部位を連続的又は断続的に検出し、
前記推定部は、前記検出されていた前記所定の部位が検出されず、かつ、前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、前記対象映像内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏った前記対象行動体が存在すると推定することを特徴とする請求項1に記載の行動体存在推定システム。
【請求項3】
前記記憶部は、横臥した状態で前記シート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の腰部及び臀部の少なくとも一方特徴量を更に記憶しており、
前記推定側検出部は、更に、前記対象画像に映ったベッドの端部の位置を検出可能であり、
前記推定側推定部は、前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するもの、及び、前記腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものが含まれ、かつ、前記腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものが前記ベッドの端部に対して設定された範囲内に位置する場合に、前記対象行動体が前記ベッドから落下の危険性があると推定することを特徴とする請求項1に記載の行動体存在推定システム。
【請求項4】
前記記憶部は、横臥した状態で前記シート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における前記シート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量を更に記憶しており、
前記推定側取得部は、時系列の複数の対象画像を取得し、
前記推定側検出部は、更に、前記対象画像に映ったベッドの端部の位置を更に検出可能であり、
前記推定部は、前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するもの、及び、前記腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものが含まれ、かつ、前記腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものがベッドの外側へ向けて徐々に移動している場合に、前記対象行動体が前記ベッドから落下の危険性があると推定することを特徴とする請求項1に記載の行動体存在推定システム。
【請求項5】
前記記憶部は、横臥した状態で前記シート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における前記シート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を更に記憶しており、
前記推定側検出部は、更に、前記対象画像に映った対象行動体の顔の向きを検出可能であり、
前記推定部は、前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれ、かつ、前記検出された顔の向きと、垂直下方と、のなす角度が所定以下の場合に、前記対象行動体に窒息の危険性があると推定することを特徴とする請求項1に記載の行動体存在推定システム。
【請求項6】
前記記憶部は、横臥した状態で前記シート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の頭部の特徴量を更に記憶しており、
前記推定側検出部は、前記サンプル行動体の頭部の特徴量を参照して、前記対象画像に映った対象行動体の顔の向きを検出可能であり、
前記推定部は、前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれ、かつ、前記検出された顔の向きと、垂直下方と、のなす角度が所定以下の場合に、前記対象行動体に窒息の危険性があると推定することを特徴とする請求項1に記載の行動体存在推定システム。
【請求項7】
柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における前記シート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を記憶したコンピュータで実行されるプログラムであって、
対象画像を取得するステップと、
前記対象画像内の複数の特徴量を検出するステップと、
前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、前記対象画像内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏った対象行動体が存在すると推定するステップと、
を備えたことを特徴とする行動体存在推定プログラム。
【請求項8】
柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における前記シート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を記憶したコンピュータで実行される方法であって、
対象画像を取得するステップと、
前記対象画像内の複数の特徴量を検出するステップと、
前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、前記対象画像内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏った対象行動体が存在すると推定するステップと、
を備えたことを特徴とする行動体存在推定方法。
【請求項9】
柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像を取得する学習側取得部と、
前記サンプル画像内のシート状体の形状に表れるサンプル行動体の複数の着目部位の位置情報が入力される位置情報入力部と、
前記サンプル画像内の複数の特徴量を検出する学習側検出部と、
前記検出された検出された特徴量のうち、前記位置情報が入力された部分の特徴量の位置関係を学習する学習部と、
を備えたことを特徴とする学習装置。
【請求項10】
コンピュータで実行されるプログラムであって、
柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像を取得するステップと、
前記サンプル画像内のシート状体の形状に表れるサンプル行動体の複数の着目部位の位置情報が入力されるステップと、
前記サンプル画像内の複数の特徴量を検出するステップと、
前記検出された検出された特徴量のうち、前記位置情報が入力された部分の特徴量の位置関係を学習するステップと、
を備えたことを特徴とする学習プログラム。
【請求項11】
コンピュータで実行される方法であって、
柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像を取得するステップと、
前記サンプル画像内のシート状体の形状に表れるサンプル行動体の複数の着目部位の位置情報が入力されるステップと、
前記サンプル画像内の複数の特徴量を検出するステップと、
前記検出された検出された特徴量のうち、前記位置情報が入力された部分の特徴量の位置関係を学習するステップと、
を備えたことを特徴とする学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状体を纏った行動体の存在を推定可能な行動体存在推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、行動体の複数の関節の座標及び深度の複数の時系列画像における変位に基づき、行動体の行動を推定する行動推定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、関節を検出することで行動体の存在を推定しているが、例えば、毛布等のシート状体を纏っている行動体の場合、関節を検出することができないため、行動体の存在を推定することもできない。
【0005】
そこで、本発明は、シート状体を纏った行動体の存在を推定可能な行動体存在推定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における前記シート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を記憶した記憶部と、対象画像を取得する推定側取得部と、前記対象画像内の複数の特徴量を検出する推定側検出部と、前記検出された複数の特徴量の中に前記複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、前記対象画像内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏った対象行動体が存在すると推定する推定部と、を備えたことを特徴とする行動体存在推定システムを提供している。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、上記行動体存在推定システムに対応する行動体存在推定プログラム及び行動体存在推定方法を提供している。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像を取得する学習側取得部と、前記サンプル画像内のシート状体の形状に表れるサンプル行動体の複数の着目部位の位置情報が入力される位置情報入力部と、前記サンプル画像内の複数の特徴量を検出する学習側検出部と、前記検出された検出された特徴量のうち、前記位置情報が入力された部分の特徴量の位置関係を学習する学習部と、を備えたことを特徴とする学習装置を提供している。
【0009】
また、本発明の別の観点によれば、上記学習装置に対応する学習プログラム及び学習方法を提供している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の行動体存在推定システムによれば、シート状体を纏った行動体の存在を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による行動体存在推定システムで用いられる画像の説明図
【
図2】本発明の第1の実施の形態による行動体存在推定システムのブロック図
【
図3】本発明の第1の実施の形態による注目部位の位置情報の説明図
【
図4】本発明の第1の実施の形態による行動体存在推定システムのフローチャート
【
図5】本発明の第2の実施の形態による行動体存在推定システムで用いられる画像の説明図
【
図6】本発明の第3の実施の形態による行動体存在推定システムで用いられる画像の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態による行動体存在推定システム1について、
図1-
図4を参照して説明する。
【0013】
行動体存在推定システム1は、
図1に示すように、対象画像X内にシート状体Sを纏った行動体Yが存在することを推定するためのものである。
図1では、胡坐姿勢の人間がシート状体Sを纏った例を示している。
【0014】
シート状体Sは、行動体Yが纏った際に行動体Yの複数の着目部位がシート状体Sの形状に表れるような柔軟性を有しており、例えば、布(布団、毛布等を含む)、ビニールシート等が考えられる。着目部位としては、例えば、頭部、肩部、腰部、膝部等が考えられる。
【0015】
本実施の形態における“シート状体Sの形状に表れる”は、必ずしも着目部位の形状が明確に表れることを意味しない。例えば、薄い布を纏った場合には、着目部位の形状は明確に表れることは予想されるが、厚い布団を纏った場合には、着目部位の形状は明確には表れないことが予想される。従って、本実施の形態における“シート状体Sの形状に表れる”は、換言すると、“着目部位に起因してシート状体Sの形状が変形している”ことを意味する。
【0016】
更に、シート状体Sは、行動体Yが纏った際に行動体Yが少なくとも部分的に遮蔽されるような遮蔽性を有している。なお、本実施の形態における遮蔽性とは、必ずしも完全に遮蔽されていなくても、後述する学習側検出部23や推定側検出部33によって検出困難な程度に遮蔽されている場合も含む。
【0017】
また、本実施の形態における“纏う”に関しても、必ずしも完全に纏っていなくても、後述する学習側検出部23や推定側検出部33により行動体Yの必要な部位(関節等)を検出困難な程度に纏っている場合も含む。
【0018】
行動体存在推定システム1は、
図2に示すように、学習装置2と、推定装置3と、を備えている。
【0019】
まず、学習装置2について説明する。
【0020】
学習装置2は、
図2に示すように、学習側取得部21と、位置情報入力部22と、学習側検出部23と、学習部24と、を備えている。
【0021】
学習側取得部21は、
図1に示すようなシート状体S1を纏ったサンプル行動体Y1が映ったサンプル画像X1を取得する。
【0022】
本実施の形態では、行動体存在推定システム1のユーザが撮影手段により撮影されたサンプル画像X1を学習側取得部21に入力することで、学習側取得部21がサンプル画像X1を取得するものとする。
【0023】
位置情報入力部22は、サンプル画像X1内のシート状体S1の形状に表れるサンプル行動体Y1の複数の着目部位の位置情報Zが入力される。
【0024】
着目部位としては、例えば、頭部、肩部、腰部、膝部等が考えられ、行動体存在推定システム1のユーザにより、サンプル画像X1の該当箇所に着目部位の位置を示す情報が位置情報Zとして入力される(例えば、
図3に示すように、注目部位に該当する箇所にその部位を示すアノテーションが行われる)。なお、着目部位は、頭部、肩部、腰部、膝部に限定されず、シート状体Sの形状に表れる部位のうち、必要とする部位をユーザが入力すれば良い。
【0025】
学習側検出部23は、サンプル画像X1内の複数の特徴量を検出する。例えば、畳み込み演算(Convolution)を用いて、サンプル画像X1内の所定数のピクセルの集まり(N×Mピクセル数)ごとに特徴量を抽出する方法が考えられる。
【0026】
なお、本実施の形態では、学習側検出部23は、サンプル画像X1全体(または、必要に応じて所定部分)の特徴量を検出するだけで良く、「検出された特徴量が体のどの部位か」まで特定する必要はない。
【0027】
学習部24は、検出された特徴量のうち、位置情報Zが入力された部分の特徴量の位置関係を学習する。
【0028】
ここで、シート状体S1越しであっても、サンプル行動体Y1の着目部位(頭部、肩部、腰部、膝部等)では、それぞれ異なる特徴量が検出されることとなる。従って、学習部24は、サンプル行動体Y1の着目部位(頭部、肩部、腰部、膝部等)のシート状体S1越しの特徴量の位置関係を学習していることとなる。
【0029】
例えば、
図3(a)に示すように、胡坐姿勢のサンプル行動体Y1がシート状体S1を纏ったサンプル画像X1の場合には、主に、頭部、肩部、膝部に相当する部分がシート状体S1の形状に表れることが考えられるため、これらの位置関係を学習していくこととなる。
【0030】
また、
図3(b)に示すように、横臥姿勢のサンプル行動体Y1がシート状体S1を纏ったサンプル画像X1の場合には、主に、頭部、肩部、腰部に相当する部分がシート状体S1の形状に表れることが考えられるため、これらの位置関係を学習していくこととなる。
【0031】
なお、学習側検出部23及び学習部24の動作は、ディープラーニング等の機械学習により行うことが可能である。
【0032】
また、学習に当たっては、姿勢(胡坐姿勢、横臥姿勢等)まで含めて学習しても良いし、位置情報Zが入力された部分の特徴量の位置関係を学習するだけでも良い。姿勢まで含めて学習する場合には、位置情報入力部22等からユーザが姿勢情報を併せて入力すれば良い。
【0033】
このようにして、学習装置2では、多数のサンプル画像X1を用いて、サンプル行動体Y1の着目部位の特徴量及び位置関係を学習していくこととなる。学習に当たっては、シート状体S1に関しても、様々な厚み、サイズ、材質等のものを用いることが好ましい。
【0034】
続いて、推定装置3について説明する。
【0035】
推定装置3は、
図2に示すように、記憶部31と、推定側取得部32と、推定側検出部33と、推定部34と、報知部35と、を備えている。
【0036】
記憶部31は、柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S1を纏ったサンプル行動体Y1が映ったサンプル画像X1におけるシート状体S1の形状に表れるサンプル行動体Y1の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を記憶している。本実施の形態では、記憶部31には、学習部24で学習された特徴量及び位置関係が記憶されているものとする。
【0037】
推定側取得部32は、対象画像X2を取得する。
【0038】
本実施の形態では、時系列の複数の対象画像X2を取得するものとし、設置された撮影手段により撮影された時系列の複数の対象画像X2が自動的に推定側取得部32に入力されるものとする。
【0039】
推定側検出部33は、対象画像X2内の複数の特徴量を検出する。例えば、畳み込み演算(Convolution)を用いて、対象画像X2内の所定数のピクセルの集まり(N×Mピクセル数)ごとに特徴量を抽出する方法が考えられる。
【0040】
本実施の形態では、推定側検出部33は、更に、時系列の複数の対象画像X2に映った対象行動体Y2の所定の部位を連続的又は断続的に検出する。所定の部位として、例えば、対象行動体Y2の頭部を検出することが考えられる。
【0041】
所定の部位の検出に関しては、公知の方法を用いることが考えられる。例えば、頭部を示す特徴量を記憶部31等に予め記憶しておき、頭部を示す特徴量に所定以上近似する特徴量を頭部として検出する等が考えられる。
【0042】
なお、推定側検出部33は、対象行動体Y2がシート状体S2を纏っていない状態では、対象行動体Y2の頭部を検出するが、対象行動体Y2がシート状体S2を頭部まで纏っている状態では、対象行動体Y2の頭部を検出することはできないこととなる。
【0043】
推定部34は、検出された複数の特徴点の中に複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S2を纏った対象行動体Y2が存在すると推定する。
【0044】
例えば、
図3に示す位置情報Zが入力された着目部位の特徴量に所定以上近似する特徴量が所定以上近似する位置関係(略比例の位置関係など)で検出された場合に、対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S2を纏った対象行動体Y2が存在すると推定する。
【0045】
この際、学習装置2において、姿勢情報も併せて学習されていた場合には、併せて姿勢も推定することで、どのような姿勢で対象行動体Y2がシート状体S2を纏っているかまで推定することが可能である。
【0046】
更に、本実施の形態では、検出されていた所定の部位(本実施の形態では、頭部)が検出されず、かつ、検出された複数の特徴量の中に複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S2を纏った対象行動体Y2が存在すると推定する。
【0047】
この場合、それまで検出されていた所定の部位が検出されなくなったことで、布団等のシート状体S2に対象行動体Y2の全身が隠れたことをより確実かつ迅速に推定することが可能となる。
【0048】
報知部35は、推定部34により対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S2を纏った対象行動体Y2が存在すると推定された場合に報知を行う。例えば、施設の管理者等に報知を行うことが考えられる。
【0049】
上記説明した行動体存在推定システム1は、布団等を被った状態での事故死、自死等を早期に発見するために使用することが可能である。
【0050】
続いて、
図4のフローチャートを用いて、行動体存在推定システム1の動作について説明する。行動体存在推定システム1では、学習段階と推定段階の2段階の動作を行う。
【0051】
学習段階では、学習側取得部21によりサンプル画像X1が取得され(S1)、位置情報入力部22に位置情報が入力され(S2)、学習側検出部23によりサンプル画像X1内の特徴量が検出されると(S3)、学習部24により、検出された特徴量のうち位置情報Zが入力された部分の特徴量の位置関係が学習される(S4)。
【0052】
S1-S4のステップは、多数のサンプル画像X1及びサンプル行動体Y1について行われることが好ましい。また、S2とS3のステップは、順序が逆であっても良い。
【0053】
続いて、推定段階では、推定側取得部32により対象画像X2が取得され(S5)、推定側検出部33により対象画像X2内の複数の特徴量が検出されると(S6)、推定部34により、検出された複数の特徴量の中に複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に(S7:YES)、対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S2を纏った対象行動体Y2が存在すると推定される(S8)。この後、必要に応じて報知部35により報知が行われる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態による行動体存在推定システム1では、対象画像X2内で検出された複数の特徴量の中に複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体Sを纏った対象行動体Y2が存在すると推定する。
【0055】
このような構成によれば、対象行動体Y2が遮蔽性を有するシート状体S2を纏っている場合であっても、シート状体S1の形状に表れるサンプル行動体Y1の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を参照することで、対象画像X2内に対象行動体Y2が存在することを推定することか可能となり、これにより、布団等を被った状態での事故死、自死等を発見することが可能となる。また、学習装置2及び推定装置3のいずれにおいても、「行動体が存在しているか」を推定する(サンプル行動体Y1及び対象行動体Y2の部位等を識別する)必要がないため、コンピュータにかかる負荷を大幅に低減させることが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態による行動体存在推定システム1では、検出されていた所定の部位(頭部等)が検出されず、かつ、検出された複数の特徴量の中に複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれる場合に、対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体S2を纏った対象行動体Y2が存在すると推定する。
【0057】
このような構成によれば、それまで検出されていた所定の部位が検出されなくなったことで、布団等のシート状体S2に対象行動体Y2の全身が隠れたことをより確実かつ迅速に推定することが可能となる。
【0058】
続いて、本発明の第2の実施の形態による行動体存在推定システム10について、
図2及び
図5を参照して説明する。
【0059】
本実施の形態では、ベッドから落下する際には腰部又は臀部から落下することに注目して、シート状体Sを纏った対象行動体Y2がベッドから落下の危険性があることを推定する。
【0060】
本実施の形態による行動体存在推定システム10の構成は、
図2に示す第1の実施の形態による行動体存在推定システム1の構成と同一であるため、
図2に関しては、第1の実施の形態と同じものを参照する。
【0061】
一方、本実施の形態では、記憶部31は、横臥した状態でシート状体S1を纏っているサンプル行動体Y1が映ったサンプル画像X1におけるシート状体S1の形状に表れるサンプル行動体Y1の腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量を更に記憶している。
【0062】
シート状体S1の形状に表れるサンプル行動体Y1の腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量は、第1の実施の形態と同様に、位置情報入力部22からサンプル画像X1内のシート状体S1の形状に表れるサンプル行動体Y1の腰部及び臀部の少なくとも一方の位置情報Zを入力しておき、学習側検出部23により検出された特徴量のうち、位置情報Zが入力された部分の特徴量の位置関係を学習しておけば良い。
【0063】
また、本実施の形態では、推定側検出部33は、更に、
図5に示すように、対象画像X2に映ったベッドの端部Eの位置を検出可能である。
【0064】
ベッドの端部Eの位置の検出に関しては、公知の方法を用いれば良い。例えば、ベッド形状を示す特徴量を記憶部31等に予め記憶させておき、ベッド形状を示す特徴量に所定以上近似する特徴量をベッド(ベッドの端部E)として検出する方法等が考えられる。なお、
図5では、ベッドを上方から撮影した例を示しているが、斜め上方等の他の方向から撮影した場合であっても同様にベッドの端部Eの位置を検出すれば良い。
【0065】
そして、推定部34は、検出された複数の特徴量の中に複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するもの、及び、腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものが含まれ、かつ、腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものがベッドの端部Eに対して設定された範囲内Rに位置する場合に、対象行動体Y2がベッドから落下の危険性があると推定する。
【0066】
ここで、
図5に示すように、腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量は、ベッドの外側に位置する可能性もあり、このような場合には、ベッドから落下の危険性が極めて高くなる。従って、例えば、
図5に示すように、ベッドの内側に関しては、ベッドの端部Eから近い所定距離内を範囲Rとし、ベッドの外側に関しては、全ての範囲を範囲Rとして設定する方法等が考えられる。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態による行動体存在推定システム10では、腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものがベッドの端部Eに対して設定された範囲内Rに位置する場合に、対象行動体Y2がベッドから落下の危険性があると推定する。
【0068】
このような構成によれば、横臥した状態で対象行動体Y2が遮蔽性を有するシート状体S2を纏っている場合であっても、ベッドからの落下の要因となる腰部又は臀部の位置を推定することが可能となるため、対象行動体Y2がベッドから落下することを予防することが可能となる。
【0069】
続いて、本発明の第3の実施の形態による行動体存在推定システム20について、
図2及び
図6を参照して説明する。
【0070】
本実施の形態では、うつ伏せ寝による窒息の危険性があることを推定する。
【0071】
本実施の形態による行動体存在推定システム20の構成は、
図2に示す第1の実施の形態による行動体存在推定システム1の構成と同一であるため、
図2に関しては、第1の実施の形態と同じものを参照する。
【0072】
一方、本実施の形態では、記憶部31は、横臥した状態でシート状体S1を纏ったサンプル行動体Y1が映ったサンプル画像X1におけるシート状体の形状に表れるサンプル行動体Y1の複数の着目部位の特徴量及び位置関係を更に記憶している。
【0073】
また、本実施の形態では、推定側検出部33は、更に、対象画像X2に映った対象行動体Y2の顔の向きを検出可能である。
【0074】
なお、本実施の形態では、顔はシート状体S2を纏っていないものとする。また、顔の向きの検出方法は、公知の方法を用いれば良い。例えば、髪の毛の有無等によって顔の向きを検出する方法等が考えられる。なお、
図6では、ベッドを側方から撮影した例を示しているが、上方等の他の方向から撮影した場合であっても同様に顔の向きを検出すれば良い。
【0075】
そして、推定部34は、検出された複数の特徴量の中に複数の着目部位の特徴量及び位置関係に相当するものが含まれ、かつ、検出された顔の向きと、垂直下方と、のなす角度が所定以下の場合に、窒息の危険性があると推定する。
【0076】
例えば、
図6に示すように、顔の向きが略垂直下方である場合に、対象行動体Y2が窒息の危険があると推定し、報知部35により報知を行うことが考えられる。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態による行動体存在推定システム20では、検出された顔の向きと、垂直下方と、のなす角度が所定以下の場合に、窒息の危険性があると推定する。
【0078】
このような構成によれば、横臥した状態で対象行動体Y2が遮蔽性を有するシート状体Sを纏っていることを推定することができるので、顔の向きを更に検出することで、対象行動体Y2が窒息することを迅速に予防することが可能となる。
【0079】
尚、本発明のよる行動体存在推定システムは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0080】
例えば、第1の実施の形態では、所定の部位(頭部)を検出したが、必ずしも所定の部位(頭部)の検出は行わなくても良く、対象画像X2内で検出された複数の特徴量の中に複数の着目部位の特徴量に相当するものが含まれるか否かを判断するだけでも、対象画像X2内に柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体Sを纏った対象行動体Y2が存在すると推定することは可能である。
【0081】
また、第2の実施の形態では、「腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものがベッドの端部Eに対して設定された範囲内Rに位置する」場合に、対象行動体Y2がベッドから落下の危険があると推定したが、「腰部及び臀部の少なくとも一方の特徴量に相当するものがベッドの外側へ向けて徐々に移動している」場合に、対象行動体Y2がベッドから落下の危険があると推定しても良い。“徐々に移動している”は、例えば、所定時間内に所定距離だけベッドの内側から外側へ向かう方向に移動している場合などが考えられる。
【0082】
また、第3の実施の形態では、顔はシート状体S2を纏っていないものとしたが、纏っていても良い。
【0083】
この場合、記憶部31は、横臥した状態でシート状体S1を纏ったサンプル行動体Y1が映ったサンプル画像X1におけるシート状体の形状に表れるサンプル行動体Y1の頭部の特徴量を更に記憶しておき、推定側検出部33は、上記サンプル行動体Y1の頭部の特徴量を参照して、対象画像X2に映った対象行動体Y2の顔の向きを検出可能とすることで、顔がシート状体S2を纏っている場合であっても、窒息の危険性があると推定することが可能となる。対象画像X2に映った対象行動体Y2の顔の向きを検出するに当たっては、顔の向きまで考慮したシート状体の形状に表れるサンプル行動体Y1の頭部の特徴量を記憶しておくことが考えられる。
【0084】
また、上記実施の形態では、記憶部31には、学習装置2で学習された「柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における前記シート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の複数の着目部位の特徴量及び位置関係」が記憶されたが、例えば、ルールベースで設定された「柔軟性及び遮蔽性を有するシート状体を纏ったサンプル行動体が映ったサンプル画像における前記シート状体の形状に表れる前記サンプル行動体の複数の着目部位の特徴量及び位置関係」が記憶されても良い。
【0085】
また、上記実施の形態では、行動体として人間を例に説明したが、動物やロボットについて使用することも可能である。
【0086】
また、行動体存在推定システム1における学習装置2と推定装置3は、別体であり、互いに通信可能であっても良い。
【0087】
また、本発明は、学習装置2及び推定装置3が行う処理に相当するプログラム又は方法や、当該プログラムを記憶した記録媒体にも応用可能である。記録媒体の場合、コンピュータ等に当該プログラムがインストールされることとなる。ここで、当該プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体としては、CD-ROM等が考えられるが、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0088】
1、10、20 行動体存在推定システム
2 学習装置
3 推定装置
21 学習側取得部
22 位置情報入力部
23 学習側検出部
24 学習部
31 記憶部
32 推定側取得部
33 推定側検出部
34 推定部
35 報知部
E ベッドの端部
R 範囲
S、S1、S2 シート状体
X 画像
X1 サンプル画像
X2 対象画像
Y 行動体
Y1 サンプル行動体
Y2 対象行動体
Z 位置情報