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  • 特開-サージタンク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019828
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】サージタンク
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/22 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
F15B1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123667
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】城ヶ崎 正夫
(72)【発明者】
【氏名】佐羽尾 聖
【テーマコード(参考)】
3H086
【Fターム(参考)】
3H086AA03
3H086AA28
3H086AB03
3H086AD01
3H086AD57
3H086AE23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高圧力や高温の油圧回路に良好に適用し得るサージタンクを提供する。
【解決手段】ハウジング12には作動油を流入する流入口18と作動油を流出する流出口19とを形成する。流入口18には有底の筒状の筒状部材20を接続する。筒状部材20には筒状部材20の内部と外部との間を接続し流通する作動油を絞る第1絞り孔21A~21Dを穿設する。ハウジング12内部には筒状部材20を収容する内部空間Kを形成する。内部空間Kを第1内部空間K1と第2内部空間K2とに区画する仕切部材22を設け、仕切部材22には第1内部空間K1と第2内部空間K2との間を接続し流通する作動油を絞る第2絞り孔24A、24Bを穿設する。流入口18と流出口19との間は筒状部材20の内部、第1絞り孔21A~21D、第1内部空間K1、第2絞り孔24A、24B、第2内部空間K2を介して連通する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧回路に配置するサージタンクであって、油圧回路の管路に組付けるハウジングと、ハウジングに形成して油圧回路の作動油をハウジング内部に流入する流入口と、ハウジングに形成してハウジング内部の作動油を油圧回路に流出する流出口と、有底の筒状で流入口に接続する筒状部材と、筒状部材に穿設して筒状部材の内部と外部との間を接続し流通する作動油を絞る第1絞り孔と、ハウジング内部に形成して筒状部材を収容する内部空間と、内部空間を第1内部空間と第2内部空間とに区画する仕切部材と、仕切部材に穿設して第1内部空間と第2内部空間との間を接続し流通する作動油を絞る第2絞り孔とを具備し、流入口と流出口との間を筒状部材の内部、第1絞り孔、第1内部空間、第2絞り孔、第2内部空間を介して連通したことを特徴とするサージタンク。
【請求項2】
前記筒状部材には、前記流入口の接続側から前記第1絞り孔の穿設側に向けて漸次拡径する拡径部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のサージタンク。
【請求項3】
前記仕切部材は、径方向の中心に前記筒状部材を挿通すると共に、前記筒状部材の径方向外方に前記第2絞り孔を穿設したことを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載のサージタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路に配置し、油圧回路の圧力脈動を減衰するサージタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサージタンクは、油圧回路にハウジングを組付け、ハウジングに弾性に富んだゴムチューブを装着し、ハウジングの内部を中央の油室と外周のガス室とに区画形成し、油室には油圧回路の作動油を流入したり油室の作動油を油圧回路に流出したりすると共に、ガス室には不活性ガスを注入するようにしている。そして、油圧回路に圧力変動があると、油圧回路から油室に入った作動油の圧力変動がゴムチューブに伝えられ、ガス室に封入されているガスの圧縮性により圧力変動を吸収し、油圧回路の圧力脈動を減衰している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-58302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来のサージタンクでは、ゴムチューブで油室とガス室とを区画形成しているため、ゴムチューブは高圧力や高温で使用することが難しく、高圧力や高温の油圧回路に適用しづらい問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、高圧力や高温の油圧回路に良好に適用し得るサージタンクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
油圧回路に配置するサージタンクであって、油圧回路の管路に組付けるハウジングと、ハウジングに形成して油圧回路の作動油をハウジング内部に流入する流入口と、ハウジングに形成してハウジング内部の作動油を油圧回路に流出する流出口と、有底の筒状で流入口に接続する筒状部材と、筒状部材に穿設して筒状部材の内部と外部との間を接続し流通する作動油を絞る第1絞り孔と、ハウジング内部に形成して筒状部材を収容する内部空間と、内部空間を第1内部空間と第2内部空間とに区画する仕切部材と、仕切部材に穿設して第1内部空間と第2内部空間との間を接続し流通する作動油を絞る第2絞り孔とを具備し、流入口と流出口との間を筒状部材の内部、第1絞り孔、第1内部空間、第2絞り孔、第2内部空間を介して連通したことを特徴とするサージタンクがそれである。
【0007】
この場合、前記筒状部材には、前記流入口の接続側から前記第1絞り孔の穿設側に向けて漸次拡径する拡径部を形成してもよい。また、前記仕切部材は、径方向の中心に前記筒状部材を挿通すると共に、前記筒状部材の径方向外方に前記第2絞り孔を穿設してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、流入口と流出口との間を筒状部材の内部、第1絞り孔、第1内部空間、第2絞り孔、第2内部空間を介して連通する。このため、流入口から流出口に流れる作動油が接するハウジング、第1絞り孔を穿設した筒状部材、第2絞り孔を穿設した仕切部材は全て剛性の金属材から形成可能であるから、従来のサージタンクの如く、ゴムチューブを用いなくてよく、高圧力や高温の油圧回路に良好に適用することができる。また、ハウジング、筒状部材、仕切部材は全て剛性の金属材から形成可能であるため、ゴムチューブを用いる従来のサージタンクに比し、耐久性を向上することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、筒状部材には、流入口の接続側から第1絞り孔の穿設側に向けて漸次拡径する拡径部を形成した。このため、流入口から筒状部材の内部に流入した作動油は、拡径部で拡張されて第1絞り孔で絞られるから、圧力脈動をより一層減衰することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、仕切部材は、径方向の中心に筒状部材を挿通すると共に、筒状部材の径方向外方に第2絞り孔を穿設した。このため、筒状部材に仕切部材を挿通することで内部空間を第1内部空間と第2内部空間とに区画できると共に、第1内部空間と第2内部空間とを第2絞り孔で接続できるから、サージタンクを容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態のサージタンクを配置した油圧回路図である。
図2】一実施形態のサージタンクの縦断面図である。
図3図2の線A-Aに沿った拡大断面図である。
図4図2の線B-Bに沿った拡大断面図である。
図5図2の線C-Cに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態のサージタンク1を配置した油圧回路を示している。
サージタンク1は油圧ポンプ2と電磁切換弁3とを接続する供給流路4に配設し、油圧ポンプ2から吐出する作動油の圧力脈動を減衰する。油圧ポンプ2は吐出量を変更自在にする可変容量型で、モータ5により回転駆動されてタンクTに貯蔵した作動油を吸入流路6から吸入して供給流路4に吐出する。電磁切換弁3は4ポート3位置方向制御弁で、中立位置Xと第1切換位置Yと第2切換位置Zとを有する。中立位置Xでは供給流路4をタンクTに接続する排出流路7に連通すると共に、図示しないアクチュエータ等に接続する2個の負荷流路A、Bを遮断する。第1切換位置Yでは負荷流路Aを供給流路4に切換連通すると共に、負荷流路Bを排出流路7に切換連通する。第2切換位置Zでは負荷流路Aを排出流路7に切換連通すると共に、負荷流路Bを供給流路4に切換連通する。
【0013】
8は作動油中のコンタミ等を捕捉するバイパス弁付フィルタで、吸入流路6に配設する。9は供給流路4の圧力を設定圧力に制御するリリーフ弁で、供給流路4に分岐接続する。10は供給流路4の圧力を表示する圧力計。11は供給流路4に配設する逆止め弁で、油圧ポンプ2側から電磁切換弁3側への作動油の流れを許容し、電磁切換弁3側から油圧ポンプ2側への作動油の流れを阻止する。
【0014】
図2に示す如く、12はサージタンク1のハウジングで、円筒状の本体部材13の両端開口を第1蓋部材14と第2蓋部材15とで閉塞して構成し、内部に内部空間Kを形成する。本体部材13、第1蓋部材14、第2蓋部材15はそれぞれ溶接で固着し、剛性の金属材から形成している。16はブロック部材で、剛性の金属材から略直方体形状に形成し、第1蓋部材14の上面に自身の下面を当接して複数のボルト部材17で着脱自在に取付け、ハウジング12の一部を構成する。18は油圧回路の作動油をハウジング12内部に流入する流入口、19はハウジング12内部の作動油を油圧回路に流出する流出口で、それぞれブロック部材16に穿設する。図1に示す如く、流入口18は供給流路4の油圧ポンプ2側に接続し、流出口19は供給流路4の電磁切換弁3側に接続し、それぞれの端部をブロック部材16の下面に開口する。
【0015】
20は剛性の金属材から有底の筒状に形成する筒状部材で、ブロック部材16の下面に開口する流入口18の端部に取付け垂下して設け、内部空間Kに収容する。図3および図4に示す如く、21A、21B、21C、21Dは4個の第1絞り孔で、筒状部材20に穿設して筒状部材20の内部と外部との間を接続し、流通する作動油を絞る。2個の第1絞り孔21A、21Bは図2の紙面と平行方向へ筒状部材20に貫通形成する。残り2個の第1絞り孔21C、21Dは、前述2個の第1絞り孔21A、21Bより図2下方位置で、2個の第1絞り孔21A、21Bと直交方向へ筒状部材20に貫通形成する。筒状部材20は軸方向の中間位置より図2上方位置に拡径部20Aを形成し、拡径部20Aは流入口18の接続側から第1絞り孔21A~21Dの穿設側に向けて漸次拡径し、筒状部材20内部の容積を増加する。
【0016】
図5に示す如く、22は剛性の金属材から円板状に形成する仕切部材で、径方向の中心に筒状部材20を間隙を有して挿通する挿通孔23を貫通形成し、ハウジング12を構成する本体部材13の内周面に自身の外周面を溶接で固着し、内部空間Kを図2で下方に位置する第1内部空間K1と上方に位置する第2内部空間K2とに区画する。24A、24B、24C、24Dは4個の第2絞り孔で、仕切部材22に挿通孔23の径方向外方で周方向へ等間隔に穿設して第1内部空間K1と第2内部空間K2との間を接続し、流通する作動油を絞る。
【0017】
25は第1蓋部材14の径方向中心に図2上下方向へ貫通形成した貫通孔で、上部開口をブロック部材16で閉塞すると共に、下部開口を第2内部空間K2に接続し、ブロック部材16に垂下する筒状部材20の根元部を間隙を有して挿通する。26は第1蓋部材14に貫通孔25と径方向へ離間した位置に上下方向へ貫通形成した流通孔で、第2内部空間K2と流出口19との間を接続する。流入口18と流出口19との間は、筒状部材20の内部、第1絞り孔21A~21D、第1内部空間K1、第2絞り孔24A~24Dならびに筒状部材20と挿通孔23との間の間隙、第2内部空間K2、流通孔26を介して連通する。
【0018】
27は第2蓋部材15の径方向中心に図2上下方向へ貫通形成した排出孔で、栓部材28で閉塞し、保守点検時等に栓部材28を取外して内部空間Kの作動油を排出する。29はブロック部材16に穿設した空気抜き孔で、流出口19に接続して一端をブロック部材16上面に開口し、サージタンク1を油圧回路に配置した当初に内部の空気を排出し、その後は栓部材30で閉塞する。
【0019】
次に、かかる構成の作動を説明する。
図1の状態において、モータ5で油圧ポンプ2を回転駆動すると、油圧ポンプ2はタンクTに貯蔵した作動油を吸入流路6より吸入して供給流路4に吐出する。供給流路4に吐出した作動油は、逆止め弁11、サージタンク1を流れて電磁切換弁3に至る。電磁切換弁3は中立位置Xに位置し、供給流路4を流れる作動油は排出流路7を流れてタンクTに還流する。
【0020】
この状態で、電磁切換弁3を第1切換位置Yに切換操作すると、供給流路4の作動油は負荷流路Aを流れて図示しないアクチェータに供給され、アクチュエータからの作動油は負荷流路B、排出流路7を流れてタンクTに排出され、アクチュエータは一方向に作動する。そして、電磁切換弁3を中立位置Xに復帰操作すると、アクチュエータは停止する。
【0021】
この状態で、電磁切換弁3を第2切換位置Zに切換操作すると、供給流路4の作動油は負荷流路Bを流れて図示しないアクチェータに供給され、アクチュエータからの作動油は負荷流路A、排出流路7を流れてタンクTに排出され、アクチュエータは他方向に作動する。そして、電磁切換弁3を中立位置Xに復帰操作すると、アクチュエータは停止する。
【0022】
このとき、供給流路4を流れる作動油は、図2に示す如く、サージタンク1の流入口18より、筒状部材20内部を流れ拡径部20Aで拡張され、第1絞り孔21A~21Dで絞られ、第1内部空間K1で拡張され、第2絞り孔24A~24Dで絞られ(一部の作動油は筒状部材20と挿通孔23との間の間隙で絞られ)、第2内部空間K2で拡張され、流出口19より流出する。そして、作動油はサージタンク1の内部で拡張と絞りを複数回繰り返すことで、圧力脈動を減衰する。
【0023】
かかる作動において、サージタンク1は、流入口18と流出口19との間を筒状部材20の内部、第1絞り孔21A~21D、第1内部空間K1、第2絞り孔24A~24D、第2内部空間K2を介して連通する。このため、流入口18から流出口19に流れる作動油が接するハウジング12、第1絞り孔21A~21Dを穿設した筒状部材20、第2絞り孔24A~24Dを穿設した仕切部材22は全て剛性の金属材から形成可能であるから、従来のサージタンクの如く、ゴムチューブを用いなくてよく、高圧力や高温の油圧回路に良好に適用することができる。また、ハウジング12、筒状部材20、仕切部材22は全て剛性の金属材から形成可能であるため、ゴムチューブを用いる従来のサージタンクに比し、耐久性を向上することができる。
【0024】
また、筒状部材20には、流入口18の接続側から第1絞り孔21A~21Dの穿設側に向けて漸次拡径する拡径部20Aを形成した。このため、流入口18から筒状部材20の内部に流入した作動油は、拡径部20Aで拡張されて第1絞り孔21A~21Dで絞られるから、圧力脈動をより一層減衰することができる。
【0025】
また、仕切部材22は、径方向の中心に筒状部材20を挿通すると共に、筒状部材20の径方向外方に第2絞り孔24A~24Dを穿設した。このため、筒状部材20に仕切部材22を挿通することで内部空間Kを第1内部空間K1と第2内部空間K2とに区画できると共に、第1内部空間K1と第2内部空間K2とを第2絞り孔24A~24Dで接続できるから、サージタンク1を容易に製作することができる。
【0026】
なお、前述の一実施形態では、ハウジング12を円筒状の本体部材13の両端開口を第1蓋部材14と第2蓋部材15とで閉塞して構成したが、ハウジングは、一端に開口を形成する有底の本体部材と本体部材の一端開口を閉塞する蓋部材とで構成してもよい。また、第1蓋部材14とブロック部材16とを別体に設けたが、第1蓋部材にブロック部材を一体形成してもよい。さらにまた、第1絞り孔21A~21Dと第2絞り孔24A~24Dはそれぞれ4個設けたが、これに限定されるものではなく、3個以下であったり、5個以上であってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1:サージタンク
12:ハウジング
18:流入口
19:流出口
20:筒状部材
21A、21B、21C、21D:第1絞り孔
22:仕切部材
24A、24B、24C、24D:第2絞り孔
K:内部空間
K1:第1内部空間
K2:第2内部空間
図1
図2
図3
図4
図5