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特開2025-19864コンタクトレンズの装脱トレーニング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019864
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】コンタクトレンズの装脱トレーニング装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/32 20060101AFI20250131BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20250131BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20250131BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
G09B23/32
G09B19/00 Z
G02C11/00
G02C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123734
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000138082
【氏名又は名称】株式会社メニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】村木 健介
(72)【発明者】
【氏名】武内 一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 いづみ
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 美帆
【テーマコード(参考)】
2C032
2H006
【Fターム(参考)】
2C032CA02
2C032CA06
2H006CA00
(57)【要約】
【課題】より実践的なコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことができる、コンタクトレンズの装脱トレーニング装置を提供する。
【解決手段】人の顔を模した顔面モデル12と、顔面モデル12の前面に開口する眼窩部24に取り付けられる眼瞼モデル16と、顔面モデル12の眼窩部24に挿入されて、眼瞼モデル16の上眼瞼部76と下眼瞼部78との間に配置される眼球モデル14とを、備えるコンタクトレンズの装脱トレーニング装置10であって、眼球モデル14の視軸方向が顔面モデル12に対して相対的に変更設定可能とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の顔を模した顔面モデルと、
該顔面モデルの前面に開口する眼窩部に取り付けられる眼瞼モデルと、
該顔面モデルの該眼窩部に挿入されて、該眼瞼モデルの上眼瞼部と下眼瞼部との間に配置される眼球モデルと
を、備えるコンタクトレンズの装脱トレーニング装置であって、
前記眼球モデルの視軸方向が前記顔面モデルに対して相対的に変更設定可能とされているコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項2】
前記眼球モデルの前記視軸方向が上下方向で変更設定可能とされている請求項1に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項3】
前記眼球モデルには、後方へ延び出す操作レバーが取り付けられており、該眼球モデルの前記視軸方向が該操作レバーの傾動操作によって変更設定可能とされている請求項1又は2に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項4】
前記眼球モデルを前記顔面モデルの前記眼窩部内に保持する保持部材が、該顔面モデルに取り付けられており、
該保持部材には、前記操作レバーが挿通されて、該眼球モデルを中心とする該操作レバーの傾動を許容するスリットが形成されており、
該スリットで許容される該操作レバーの傾動によって該眼球モデルの前記視軸方向が変更設定可能とされている請求項3に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項5】
前記保持部材が弾性材によって形成されている請求項4に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項6】
前記保持部材には、前記スリットから側方へ延びて該保持部材の外周面を周方向に分断する開放部が形成されており、
前記顔面モデルに装着されていない該保持部材の単体状態において、前記操作レバーが該開放部を通じて該保持部材の側方から該スリットへ挿入可能とされている請求項4に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項7】
前記顔面モデルの前記眼窩部には、前記保持部材の前記開放部に挿入されることで該保持部材を該顔面モデルに対して該眼窩部の周方向で位置決めする位置決め突起が設けられている請求項6に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項8】
前記保持部材には、前記顔面モデルの前記眼窩部の内周面と前記眼球モデルとの径方向間に差し入れられる眼球保持部が前方へ突出して設けられており、
該眼球保持部の内周面が突出先端へ向けて拡開するテーパ状の眼球座面とされて、該眼球座面が該眼球モデルの後半部分に重ね合わされている請求項4に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項9】
前記スリットの幅寸法が前記操作レバーにおける該スリットへの挿通部分の直径よりも小さくされており、
該スリットには、幅寸法が部分的に大きくされて該操作レバーを保持可能とされたレバー保持部が設けられている請求項4に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項10】
前記眼瞼モデルが前記顔面モデルとは別部品とされて該顔面モデルの前記眼窩部に挿入されており、
前記眼球モデルが該顔面モデルとは別部品とされて該顔面モデルの該眼窩部に挿入されている請求項1又は2に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項11】
前記眼瞼モデルの前記下眼瞼部と前記眼球モデルとの間に隙間が設けられており、該下眼瞼部の中央部分における該隙間の大きさが0.5mm以上且つ2.5mm以下とされている請求項1又は2に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項12】
人の顔を模した顔面モデルと、
該顔面モデルの前面に開口する眼窩部に取り付けられる眼瞼モデルと、
該顔面モデルの該眼窩部に挿入されて、該眼瞼モデルの上眼瞼部と下眼瞼部との間に配置される眼球モデルと
を、備えるコンタクトレンズの装脱トレーニング装置であって、
前記眼瞼モデルが前記顔面モデルとは別部品とされて該顔面モデルの前記眼窩部に挿入されており、
前記眼球モデルが該顔面モデルとは別部品とされて該顔面モデルの該眼窩部に挿入されているコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項13】
前記眼球モデルが前記眼瞼モデルよりも硬質とされている請求項12に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項14】
前記眼球モデルが前記顔面モデルよりも軟質とされている請求項13に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項15】
前記顔面モデルの前記眼窩部には、前記眼球モデルの上下両側において該眼窩部の内周面から上下方向に突出する受部が一体形成されている請求項14に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項16】
前記眼瞼モデルには、後面に開口して前記顔面モデルの前記受部が差し入れられる溝部が、前記上眼瞼部の上方と前記下眼瞼部の下方とにそれぞれ形成されている請求項15に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項17】
前記受部の上下内面が前記眼球モデルの前半部分に重ね合わされている請求項15又は16に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項18】
前記顔面モデルは、人の鼻を模して前方へ突出する鼻部を備えている請求項12又は13に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項19】
前記顔面モデルには、左右の前記眼窩部が設けられており、
それら左右の眼窩部には、各対応する左右の前記眼瞼モデルが取り付けられている請求項12又は13に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項20】
前記眼球モデルは、左右の前記眼窩部の何れに対しても装着可能とされている請求項19に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項21】
前記顔面モデルを所定高さに支持する支持部材を有する請求項12又は13に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項22】
前記眼瞼モデルは、前記顔面モデルに対して着脱可能とされている請求項12又は13に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項23】
前記眼球モデルは、前記顔面モデルに対して着脱可能とされている請求項12又は13に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項24】
人の顔を模した顔面モデルと、
該顔面モデルの前面に開口する眼窩部に取り付けられる眼瞼モデルと、
該顔面モデルの該眼窩部に挿入されて、該眼瞼モデルの上眼瞼部と下眼瞼部との間に配置される眼球モデルと
を、備えるコンタクトレンズの装脱トレーニング装置であって、
前記眼瞼モデルの前記下眼瞼部と前記眼球モデルとの間に隙間が設けられており、該下眼瞼部の中央部分における該隙間の大きさが0.5mm以上且つ2.5mm以下とされているコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項25】
前記眼瞼モデルの前記上眼瞼部及び前記下眼瞼部は、押圧によって前記眼球モデルに接触可能な硬さとされている請求項24に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【請求項26】
前記眼球モデルが前記眼瞼モデルよりも硬質とされている請求項25に記載のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズを適切に装脱するためのトレーニングを行うために使用されるコンタクトレンズの装脱トレーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズを人眼に対して適切に装脱するためには習熟を要し、特に、他者の眼に対するコンタクトレンズの装脱はより難しいことから、他者の眼に対するコンタクトレンズの装脱を行う者は、予め十分なトレーニングを行う必要がある。
【0003】
また、昨今では、近視進行抑制効果を目的として、低年齢者に対するコンタクトレンズ(オルソケラトロジーレンズ)の適用が増加傾向にあり、この場合には、低年齢の子供の眼に対するコンタクトレンズの装脱を保護者が行うことも少なくない。保護者は、コンタクトレンズを他者の眼に対して装脱した経験がない場合も多く、子供の眼に対してコンタクトレンズを実際に装脱する前に十分な説明と練習が必要になる。
【0004】
このような他者の眼に対するコンタクトレンズの装脱トレーニングは、例えば、特開2012-078603号公報(特許文献1)に開示されているような眼模型を用いて行われる。特許文献1の眼模型は、人眼の眼瞼を模した部分球殻状の基体からなる眼瞼模型に対して、人眼の眼球を模した眼球模型が内嵌された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-078603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の眼模型は、ハードコンタクトレンズ等を装脱する際の機序を使用者が理解し易いように形状等を設定したものであって、本物の人眼とは形状等において乖離している部分もある。それゆえ、当該眼模型を用いたコンタクトレンズの装脱トレーニングは、実際の人眼へのコンタクトレンズの装脱とは異なる部分もあり、より実践的な装脱トレーニングの必要性があった。
【0007】
本発明の解決課題は、より実践的なコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことができる、コンタクトレンズの装脱トレーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第1の態様は、人の顔を模した顔面モデルと、該顔面モデルの前面に開口する眼窩部に取り付けられる眼瞼モデルと、該顔面モデルの該眼窩部に挿入されて、該眼瞼モデルの上眼瞼部と下眼瞼部との間に配置される眼球モデルとを、備えるコンタクトレンズの装脱トレーニング装置であって、前記眼球モデルの視軸方向が前記顔面モデルに対して相対的に変更設定可能とされているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼球が視軸方向を変更可能とされていることによって、コンタクトレンズの実際の装脱状態に近い眼球の向きでコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことができて、より実践的なトレーニングが可能となる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼球モデルの前記視軸方向が上下方向で変更設定可能とされているものである。
【0012】
実際のコンタクトレンズの装脱は、主として眼球の視軸方向を上下に動かした状態で行われることから、本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、コンタクトレンズの実際の装脱時に近い状態でのトレーニングを実現することができる。
【0013】
第3の態様は、第1又は第2の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼球モデルには、後方へ延び出す操作レバーが取り付けられており、該眼球モデルの前記視軸方向が該操作レバーの傾動操作によって変更設定可能とされているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、操作レバーの操作によって、眼球モデルの視軸方向を簡単に変更することができる。
【0015】
第4の態様は、第3の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼球モデルを前記顔面モデルの前記眼窩部内に保持する保持部材が、該顔面モデルに取り付けられており、該保持部材には、前記操作レバーが挿通されて、該眼球モデルを中心とする該操作レバーの傾動を許容するスリットが形成されており、該スリットで許容される該操作レバーの傾動によって該眼球モデルの前記視軸方向が変更設定可能とされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼球モデルが保持部材によって顔面モデルの眼窩部内に保持されることから、眼窩部内における眼球モデルの位置が安定する。
【0017】
また、保持部材に形成されたスリットによって操作レバーの移動方向が案内されることから、眼球モデルの視軸の傾動方向が制限される。それゆえ、眼球モデルの向きを操作レバーによって簡単に操作することができる。特に、操作レバーの傾動方向を案内する案内作用が、眼球モデルを眼窩部内で保持するための保持部材によって発揮されることから、少ない部品点数で操作レバーの案内を実現することができる。
【0018】
第5の態様は、第4の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記保持部材が弾性材によって形成されているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、保持部材が弾性変形可能とされることによって、顔面モデルや眼球モデルに対して容易に着脱することができる。また、弾性を有する保持部材にスリットを設けることにより、操作レバーがスリット内を移動する際に、異音や引っ掛かりが生じ難い。
【0020】
第6の態様は、第4又は第5の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記保持部材には、前記スリットから側方へ延びて該保持部材の外周面を周方向に分断する開放部が形成されており、前記顔面モデルに装着されていない該保持部材の単体状態において、前記操作レバーが該開放部を通じて該保持部材の側方から該スリットへ挿入可能とされているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、保持部材の開放部を通じて操作レバーを保持部材の側方からスリットへ挿入することが可能であり、操作レバーのスリットへの挿通が容易になる。特に、例えば、操作レバーの一方の端部に眼球モデルが取り付けられており、他方の端部に操作レバーを把持するための把持部が設けられている場合など、操作レバーの両端部が中間部分よりも大径である場合にも、操作レバーの中間部分をスリットに挿通し易い。
【0022】
第7の態様は、第6の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記顔面モデルの前記眼窩部には、前記保持部材の前記開放部に挿入されることで該保持部材を該顔面モデルに対して該眼窩部の周方向で位置決めする位置決め突起が設けられているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、顔面モデルの位置決め突起が保持部材の開放部に挿入されることによって、操作レバーをスリットへ挿入するための開放部を利用して、保持部材を顔面モデルに対して眼窩部の周方向で簡単に位置決めすることができる。
【0024】
第8の態様は、第4~第7の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記保持部材には、前記顔面モデルの前記眼窩部の内周面と前記眼球モデルとの径方向間に差し入れられる眼球保持部が前方へ突出して設けられており、該眼球保持部の内周面が突出先端へ向けて拡開するテーパ状の眼球座面とされて、該眼球座面が該眼球モデルの後半部分に重ね合わされているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、保持部材の眼球保持部が眼球モデルと眼窩部の内周面との径方向間に差し入れられることによって、眼球モデルが眼窩部内において径方向で位置決めされる。また、眼球保持部におけるテーパ状の眼球座面が眼球モデルの後半部分に重ね合わされることで、眼球モデルの保持部材に対する後方への移動が制限されており、眼球モデルの眼窩部内での前後方向での位置が後方側において規定されている。
【0026】
また、眼球保持部の眼球座面がテーパ状とされていることにより、眼球モデルの視軸方向を変化させる際に、眼球モデルが眼球座面によって案内されながら摺動することにより、眼球モデルの視軸方向を安定して変更させることができる。
【0027】
第9の態様は、第4~第8の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記スリットの幅寸法が前記操作レバーにおける該スリットへの挿通部分の直径よりも小さくされており、該スリットには、幅寸法が部分的に大きくされて該操作レバーを保持可能とされたレバー保持部が設けられているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、操作レバーがレバー保持部に挿通された状態に保持され易くなることから、眼球モデルの視軸方向を特定の方向に保持し易くなる。具体的には、例えば、眼球モデルの視軸方向がレバー保持部によって上方又は下方に向いた状態で保持され易くなっていれば、実際のコンタクトレンズの装脱状態に近い視軸方向の眼球モデルによって、コンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことができる。
【0029】
第10の態様は、第1~第9の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼瞼モデルが前記顔面モデルとは別部品とされて該顔面モデルの前記眼窩部に挿入されており、前記眼球モデルが該顔面モデルとは別部品とされて該顔面モデルの該眼窩部に挿入されているものである。
【0030】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼瞼モデルと眼球モデルと顔面モデルとに求められる硬さや触感等を、それぞれ個別に設定できることから、高性能なトレーニング装置を提供できる。
【0031】
第11の態様は、第1~第10の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼瞼モデルの前記下眼瞼部と前記眼球モデルとの間に隙間が設けられており、該下眼瞼部の中央部分における該隙間の大きさが0.5mm以上且つ2.5mm以下とされているものである。
【0032】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼瞼モデルの下眼瞼部と眼球モデルとの間に隙間を設けることで当該隙間へのコンタクトレンズの入り込みが発生し易く、また、コンタクトレンズの隙間への入り込みは、下眼瞼部の押圧によって有効に防止される。それゆえ、コンタクトレンズの装脱トレーニング装置の使用者は、コンタクトレンズの取外しにおいて重要となる下眼瞼部の押圧を効果的にトレーニングできる。
【0033】
第12の態様は、人の顔を模した顔面モデルと、該顔面モデルの前面に開口する眼窩部に取り付けられる眼瞼モデルと、該顔面モデルの該眼窩部に挿入されて、該眼瞼モデルの上眼瞼部と下眼瞼部との間に配置される眼球モデルとを、備えるコンタクトレンズの装脱トレーニング装置であって、前記眼瞼モデルが前記顔面モデルとは別部品とされて該顔面モデルの前記眼窩部に挿入されており、前記眼球モデルが該顔面モデルとは別部品とされて該顔面モデルの該眼窩部に挿入されているものである。
【0034】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼瞼モデルと眼球モデルと顔面モデルとに求められる硬さや触感等を、それぞれ個別に設定できることから、高性能なトレーニング装置を提供できる。
【0035】
第13の態様は、第12の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼球モデルが前記眼瞼モデルよりも硬質とされているものである。
【0036】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、実際の人眼の眼瞼と眼球の硬さの関係に近い眼瞼モデルと眼球モデルとを備えた装脱トレーニング装置を提供することができる。これにより、眼瞼モデルの眼球側への押込みによる変形量が眼球モデルによって制限されることから、実際の人眼と同様に、眼瞼モデルを眼球モデル側へ押し込むことで眼瞼モデルと眼球モデルとを密着させて、眼瞼モデルと眼球モデルとの間の隙間にコンタクトレンズが入り込むのを防ぐことができる。それゆえ、コンタクトレンズの装脱トレーニング装置の使用者は、より実践的なコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことが可能になる。
【0037】
第14の態様は、第13の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼球モデルが前記顔面モデルよりも軟質とされているものである。
【0038】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼球モデルに対して人眼の眼球と同程度の柔軟性を設定しながら、コンタクトレンズの装脱の妨げとなる顔表面の凹凸を、より硬質の顔面モデルによって再現することができる。特に、顔面モデルは、コンタクトレンズの装脱トレーニングにおいて、必ずしも実際の顔面のような柔軟性を要求されないことから、十分に硬質とすることによって、耐久性や形状安定性を確保したり、コンタクトレンズの装脱作業の妨げとなる顔表面の凹凸をより強調することができる。
【0039】
第15の態様は、第14の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記顔面モデルの前記眼窩部には、前記眼球モデルの上下両側において該眼窩部の内周面から上下方向に突出する受部が一体形成されているものである。
【0040】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、コンタクトレンズの装脱トレーニングにおいて、例えば、下眼瞼部を指で眼窩へ向けて押し込んだり、上眼瞼部を指で下方へずりおろしたりする場合に、眼球モデルよりも硬質とされた顔面モデルの受部が眼瞼モデルに及ぼされる指からの力を受けることによって、入力に対する適切な反力が発揮されて、人眼の眼瞼を押し込む等した場合に近い触感を実現することができる。
【0041】
第16の態様は、第15の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼瞼モデルには、後面に開口して前記顔面モデルの前記受部が差し入れられる溝部が、前記上眼瞼部の上方と前記下眼瞼部の下方とにそれぞれ形成されているものである。
【0042】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、顔面モデルの受部を利用して、眼瞼モデルを顔面モデルの眼窩部内で位置決めすることができる。
【0043】
第17の態様は、第15又は第16の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記受部の上下内面が前記眼球モデルの前半部分に重ね合わされているものである。
【0044】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、顔面モデルの受部を利用して、眼球モデルを前後方向における前方側で位置決めすることができる。本態様を第8の態様に記載された構成と組み合わせて採用することも可能であり、それによれば、眼球モデルを眼窩部内において前後両側で位置決めすることができる。
【0045】
第18の態様は、第12~第17の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記顔面モデルは、人の鼻を模して前方へ突出する鼻部を備えているものである。
【0046】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、コンタクトレンズの装脱において邪魔になり易い鼻に相当する突部を鼻部として顔面モデルに設けることにより、より実践的なトレーニングが可能になる。また、鼻部を備える顔面モデルは、眼瞼モデル及び眼球モデルとは別部品とされていることから、鼻部の硬さや形状などを大きな自由度で設定することができる。
【0047】
第19の態様は、第12~第18の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記顔面モデルには、左右の前記眼窩部が設けられており、それら左右の眼窩部には、各対応する左右の前記眼瞼モデルが取り付けられているものである。
【0048】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、左右両眼に対するコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことができる。
【0049】
第20の態様は、第19の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼球モデルは、左右の前記眼窩部の何れに対しても装着可能とされているものである。
【0050】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼球モデルを何れの眼窩部に対しても装着可能とすることによって、例えば1つの眼球モデルを左右の眼窩部に付け替えて使用することも可能となる。また、眼球モデルは、眼瞼モデルに比して左右の形状差が小さいことから、眼窩部に対して着脱可能とされていても、左右の誤装着が問題にならない。
【0051】
第21の態様は、第12~第20の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記顔面モデルを所定高さに支持する支持部材を有するものである。
【0052】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、顔面モデルが支持部材によって適切な高さに保持された状態で、コンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことができる。なお、顔面モデルが支持される所定高さは、特に限定されるものではないが、例えば、着座姿勢の大人や子供を想定した高さとされ得る。
【0053】
第22の態様は、第12~第21の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼瞼モデルは、前記顔面モデルに対して着脱可能とされているものである。
【0054】
コンタクトレンズの装脱トレーニング時に指で触って変形させる眼瞼モデルは傷み易いが、本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼瞼モデルが顔面モデルに対して取外し可能であることから、眼瞼モデルだけを交換することも可能となる。
【0055】
第23の態様は、第12~第22の何れか1つの態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼球モデルは、前記顔面モデルに対して着脱可能とされているものである。
【0056】
眼球モデルは、コンタクトレンズの接触や装脱時の入力などによって、比較的に傷み易いが、本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼球モデルだけを交換することも可能となる。
【0057】
第24の態様は、人の顔を模した顔面モデルと、該顔面モデルの前面に開口する眼窩部に取り付けられる眼瞼モデルと、該顔面モデルの該眼窩部に挿入されて、該眼瞼モデルの上眼瞼部と下眼瞼部との間に配置される眼球モデルとを、備えるコンタクトレンズの装脱トレーニング装置であって、前記眼瞼モデルの前記下眼瞼部と前記眼球モデルとの間に隙間が設けられており、該下眼瞼部の中央部分における該隙間の大きさが0.5mm以上且つ2.5mm以下とされているものである。
【0058】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、眼瞼モデルの下眼瞼部と眼球モデルとの間に隙間を設けることで当該隙間へのコンタクトレンズの入り込みが発生し易く、また、コンタクトレンズの隙間への入り込みは、下眼瞼部の押圧によって有効に防止される。それゆえ、コンタクトレンズの装脱トレーニング装置の使用者は、コンタクトレンズの取外しにおいて重要となる下眼瞼部の押圧を効果的にトレーニングできる。
【0059】
第25の態様は、第24の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼瞼モデルの前記上眼瞼部及び前記下眼瞼部は、押圧によって前記眼球モデルに接触可能な硬さとされているものである。
【0060】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、上下の眼瞼部の押圧操作を、眼瞼部と眼球モデルとの間の隙間の大きさだけでなく、上下の眼瞼部の硬さによっても効率的にトレーニング可能とすることができる。
【0061】
第26の態様は、第25の態様に記載されたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置において、前記眼球モデルが前記眼瞼モデルよりも硬質とされているものである。
【0062】
本態様に従う構造とされたコンタクトレンズの装脱トレーニング装置によれば、実際の人眼の眼瞼と眼球の硬さの関係に近い眼瞼モデルと眼球モデルとを備えた装脱トレーニング装置を提供することができる。これにより、眼瞼モデルの眼球側への押込みによる変形量が眼球モデルによって制限されることから、実際の人眼と同様に、眼瞼モデルを眼球モデル側へ押し込むことで眼瞼モデルと眼球モデルとを密着させて、眼瞼モデルと眼球モデルとの間の隙間にコンタクトレンズが入り込むのを防ぐことができる。それゆえ、コンタクトレンズの装脱トレーニング装置の使用者は、より実践的なコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、コンタクトレンズの装脱トレーニング装置を用いたより実践的なコンタクトレンズの装脱トレーニングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の第1実施形態としてのコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を示す斜視図
図2図1のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を別角度で示す斜視図
図3図1に示すコンタクトレンズの装脱トレーニング装置の縦断面図
図4図1に示すコンタクトレンズの装脱トレーニング装置の分解斜視図
図5図1のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を別角度で示す分解斜視図
図6図1に示すコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を構成する顔面モデルの斜視図
図7図6の顔面モデルを別角度で示す斜視図
図8図1に示すコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を構成する眼球モデル及び操作レバーの斜視図
図9図1に示すコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を片方の眼瞼モデルを取り外した状態で示す斜視図
図10図1に示すコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を構成する保持部材の斜視図
図11図10の保持部材を別角度で示す斜視図
図12図1に示すコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を構成する眼瞼モデルの斜視図
図13図12の眼瞼モデルを別角度で示す斜視図
図14図1のコンタクトレンズの装脱トレーニング装置を机に取り付けた状態で示す右側面図
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図1図3には、本発明の第1実施形態としてのコンタクトレンズの装脱トレーニング装置10(以下、装脱トレーニング装置10と称する)が示されている。装脱トレーニング装置10は、図4図5にも示すように、顔面モデル12と、眼球モデル14,14と、眼瞼モデル16,16とを備えている。以下の説明において、原則として、上下方向とは図3中の上下方向を、前後方向とは図3中の左右方向を、左右方向とは図3中の紙面直交方向を、それぞれ言う。
【0067】
顔面モデル12は、図6図7に示すように、人の顔面の一部を模した前面を有している。顔面モデル12は、人の口に相当する部分を備えておらず、人の顔の鼻から上の部分を模している。また、顔面モデル12は、コンタクトレンズの装脱に影響し難い人の頭や耳に相当する部分を備えていない。顔面モデル12の後面は、図7に示すように、前後方向と略直交する平面状とされており、凹所状に開口する複数の肉抜穴18が後述する眼窩部24を外れた位置に形成されている。顔面モデル12は、上面及び下面が上下方向と略直交して広がる平面とされており、下面には埋設状態で配されたナット20のねじ穴が開口している。なお、顔面モデル12は、上面よりも下面の方が左右幅寸法が大きく、また、左右両側面が上下両外側へ向けて左右内側へ傾斜する屈折傾斜面で構成されている。
【0068】
顔面モデル12は、合成樹脂材料によって形成されており、直接的な人力の作用によって変形しない程度に硬質とされている。顔面モデル12を形成する合成樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ウレタン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド等が何れも採用可能である。なお、ナット20は、ステンレス鋼などの金属で形成されていることが望ましく、顔面モデル12の成形時にインサートされている。
【0069】
顔面モデル12には、鼻部22が設けられている。鼻部22は、人の鼻を模しており、顔面モデル12の前面において突出している。鼻部22は、顔面モデル12における左右方向の中央部分に位置しており、上下方向における中央よりも下方に位置している。鼻部22は、鼻尖に相当する部分へ向けて前方への突出高さが大きくなっている。なお、鼻部22は、外鼻の外形を模しており、鼻翼に相当する部分を備えているが、前鼻孔に相当する孔は形成されていない。
【0070】
顔面モデル12には、眼窩部24が設けられている。眼窩部24は、人の眼及びその周辺部分に形成されており、顔面モデル12の前面に開口する凹所状とされている。顔面モデル12には、左右一対の眼窩部24a,24bが設けられており、それら眼窩部24a,24bが左右方向で相互に離れて配置されている。また、顔面モデル12において、鼻部22は、眼窩部24a,24bの間に位置している。なお、眼窩部24a,24bは、後述する眼球モデル14及び眼瞼モデル16が挿入配置される凹所であって、人の眼窩と対応する位置に設けられているが、形状や大きさは人の眼窩とは異なっている。
【0071】
本実施形態の眼窩部24は、前後方向視において、下部が略円形とされていると共に、上部が略四角形とされている。眼窩部24の下部には、内周面に開口して周方向に延びる嵌合凹溝26が設けられている。嵌合凹溝26は、好適には、眼窩部24の深さ方向(前後方向)の中央よりも前側に設けられており、本実施形態では顔面モデル12の前面に近接する位置に設けられている。また、眼窩部24の上部には、前端において内周へ突出する押え片28が設けられている。押え片28は、顔面モデル12と一体形成されている。
【0072】
眼窩部24の底壁部(後壁部)には、取付凹所30が形成されている。取付凹所30は、図7に示すように、顔面モデル12の後面に開口しており、前後方向視で略円形の凹所とされている。取付凹所30の開口端部には、内周へ向けて内フランジ状に突出する係止凸部32が、全周に亘って設けられている。取付凹所30は、肉抜穴18を外れた位置に開口している。
【0073】
眼窩部24及び取付凹所30の底壁部には、円形断面で前後方向に貫通する眼球挿通孔34が形成されている。眼球挿通孔34は、取付凹所30の中央部分を前後方向に貫通している。眼球挿通孔34の内径寸法は、眼球モデル14の強膜部42(後述)の外径寸法よりも大きくされている。眼球挿通孔34の内周面には、周方向の一部において内周へ突出する位置決め突起36が形成されている。位置決め突起36は、眼球挿通孔34の内周面だけでなく、眼球挿通孔34より後方まで連続して設けられており、取付凹所30の底面から後方へ突出している。
【0074】
眼窩部24の内周面には、受部38が突出している。受部38は、略四角形断面で上下方向に直線的に延びており、眼窩部24の内側へ向けて突出している。受部38は、顔面モデル12に一体形成されている。受部38は、眼窩部24の内周面から上下方向の内側へ突出していると共に、眼窩部24の底面から前方へ突出している。本実施形態では、各眼窩部24に上下一対の受部38a,38bがそれぞれ設けられて、それぞれ眼窩部24の人顔左右方向の略中央に位置しており、突出先端面が上下方向で相互に離隔対向して配置されている。
【0075】
受部38a,38bの各前方面(人顔表側の面)は、眼球挿通孔34の中心軸に対して略直交する平坦面を有しており、人顔左右方向で略一定の幅寸法(好適には5~30mmの幅寸法)をもって人顔上下方向へ直線的に延びている。なお、受部38a,38bの各前方面は、後述する眼瞼モデル16において適度な柔軟性や変形ガイド作用などを実現する等の観点から、眼窩部24の人顔表面側開口端から3~15mmの深さ範囲に位置するように設定されることが望ましい。また、受部38a,38bの各突出先端部分は、図3にも示すように、眼球挿通孔34の前方への延長上まで突出しており、前後方向の投影において眼球挿通孔34と重なり合っている。受部38a,38bの突出先端面は、前方に向けて眼窩部24の内周側へ傾斜する当接傾斜面40とされている。当接傾斜面40は、眼球モデル14の前半部分の球状表面に沿うように、前方に向けて上下内側へ傾斜していると共に、周方向に湾曲している。
【0076】
眼球モデル14は、図8にも示すように、人眼の眼球を模したものであって、全体として略球状とされている。眼球モデル14は、顔面モデル12に対して独立した別部品とされており、後述するように顔面モデル12に取り付けられている。眼球モデル14は、エラストマで形成されており、人が指先で押す等して力を加えることによって容易に変形させることが可能なゴム状弾性を有している。眼球モデル14は、顔面モデル12よりも軟質とされている。眼球モデル14の形成材料は、特に限定されないが、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム等の樹脂エラストマや天然ゴム等が、好適に採用される。
【0077】
より詳細には、眼球モデル14は、人眼の強膜及び角膜を模した外形とされており、強膜に相当する球状体である強膜部42の前部において、より曲率の大きな角膜に相当する角膜部44が前方へ突出した形状とされている。眼球モデル14は、強膜部42が白色とされており、角膜部44が人眼において角膜を通じて外部から視認される虹彩に相当する色とされている。強膜部42及び角膜部44は、例えば、成形後の塗装によって着色されていてもよいし、成形時の樹脂材料に顔料(工業色素)を配合することによって予め着色されていてもよい。本実施形態では、眼球モデル14の形成材料に白色の顔料を配合して成形し、成形品の角膜部44に対して黒色等の塗装を施すことで、強膜部42と角膜部44とにそれぞれ適切な色が設定されている。なお、眼球モデル14の表面には、好適には、コーティング層が設けられている。このコーティング層によって、コンタクトレンズの装脱の繰り返しによる劣化や摩耗等に対する耐久性の向上や、塗装の剥がれの防止、人眼の眼球に近い表面質感の実現等が図られる。
【0078】
眼球モデル14は、顔面モデル12の眼窩部24に配されている。眼球モデル14は、眼窩部24の眼球挿通孔34に後方から差し入れられて、図3図9に示すように、強膜部42の前半部分が眼窩部24内に突設された受部38a,38bの上下内面である当接傾斜面40a,40bに重ね合わされている。これにより、眼球モデル14は、眼窩部24内で前後方向の位置が規定されている。受部38a,38bは、眼球モデル14の上下両側に設けられている。眼球モデル14の角膜部44は、受部38a,38bの間に位置している。眼球モデル14は、眼球挿通孔34よりも小径とされており、眼球挿通孔34の内周面から内周側に離隔している。眼球モデル14は、顔面モデル12に対して着脱可能とされており、交換等が容易とされている。
【0079】
眼球モデル14には、操作レバー46が取り付けられている。操作レバー46は、前端において眼球モデル14に固定される軸部48と、軸部48の後端に設けられた球状の把持部50とを、備えている。操作レバー46の軸部48は、前端部が雄ねじ構造とされており、眼球モデル14の内部にインサートされた図示しないナットに対して螺着されることで、前端部において眼球モデル14に固定されており、眼球モデル14から後方へ延び出している。操作レバー46は、眼球モデル14の視軸の後方への延長上に配されており、軸部48の中心軸方向が眼球モデル14の視軸方向とされている。
【0080】
操作レバー46が設けられた眼球モデル14には、保持部材52が取り付けられている。保持部材52は、図10図11に示すように、全体として円板状とされており、本実施形態ではゴムや樹脂エラストマ等の弾性材で形成されている。保持部材52は、眼球装着部54とレバー挿通部56とを、備えている。
【0081】
眼球装着部54は、保持部材52の前部を構成しており、全体として段付き円筒形状とされている。即ち、眼球装着部54は、円環板状の取付板部58と、取付板部58の内周端部から前方へ突出する小径筒状の眼球保持部60と、取付板部58の外周端部から後方へ突出する大径筒状の固着筒部62とを、備えている。
【0082】
眼球装着部54の取付板部58は、顔面モデル12の後面に開口する取付凹所30に対応する外径寸法とされており、前端部分が取付凹所30に挿入可能とされている。取付板部58における取付凹所30への挿入部分には、外周面に開口する係止凹溝64が形成されている。係止凹溝64は、取付板部58の全周に亘って連続して周方向に延びており、取付凹所30の開口端部に設けられた係止凸部32が差し入れられることによって顔面モデル12に対して前後方向で係止されるようになっている。取付板部58の外周面は、係止凹溝64よりも後側が略一定の外径寸法で前後方向に延びる筒状面とされており、係止凹溝64よりも前側が前方へ向けて小径となるテーパ筒状面とされている。
【0083】
眼球装着部54の眼球保持部60は、略円筒形状であって、外周面が眼球挿通孔34の内周面と対応するストレートな円筒面とされていると共に、内周面が眼球モデル14の強膜部42の後半部分と対応する湾曲テーパ状の眼球座面66とされている。眼球座面66で構成された眼球保持部60の内周面は、眼球保持部60の突出先端側へ向けて外周側へ拡開して徐々に大径となっている。本実施形態の眼球保持部60は、保持部材52の顔面モデル12への装着状態において、左右方向の内側(鼻部22側)に向けて取付板部58からの突出高さが徐々に大きくなっている。なお、取付板部58の内周面は、略一定の断面形状で前後方向に延びる円筒面とされており、眼球保持部60の眼球座面66から後方に連続している。取付板部58の内周面は、周方向で部分的に拡径されており、眼球モデル14が眼球座面66に前方から重ね合わされる際に、当該拡径部分において空気の通過が許容されることで、異音の発生が防止されている。
【0084】
レバー挿通部56は、保持部材52の後部を構成しており、略円板形状とされている。レバー挿通部56は、前後厚さ方向に貫通するスリット68を備えている。スリット68は、レバー挿通部56の中央から上下両側及び左右内側へ向けて延びており、横転T字形状とされている。スリット68の中央部及び3つの端部は、何れも他の部分よりも幅寸法が大きくされたレバー保持部70とされており、操作レバー46の外形と対応する円形とされている。なお、3つの端部に設けられたレバー保持部70は、後述する傾動状態の操作レバー46が容易に挿通状態で保持されるように、前後方向に対して傾斜して延びている。また、スリット68におけるレバー保持部70を外れた部分の幅寸法は、操作レバー46における軸部48の直径よりも小さくされている。
【0085】
そして、保持部材52は、眼球装着部54における固着筒部62の後端面と、レバー挿通部56の外周端部の前面とが、前後方向で相互に重ね合わされて固着されることで構成されている。眼球装着部54とレバー挿通部56との固着手段は、特に限定されないが、好適には、接着又は溶着が採用される。
【0086】
保持部材52には、周方向の一部において開放部72が形成されている。開放部72は、筒状の眼球装着部54を周方向の一部において分断すると共に、板状のレバー挿通部56を左右内側へ延びたスリット68の左右内側の側方において周方向に分断するように形成されている。これにより、保持部材52は、外周面の一部が開放部72によって周方向に分断されており、開放部72を周方向に拡開させるように弾性変形可能とされている。なお、保持部材52に外力の作用しない静置状態において、開放部72の幅寸法は、操作レバー46の外径寸法よりも小さくされており、保持部材52に外力を加えて開放部72を拡開させることによって、拡開状態の開放部72の幅寸法を操作レバー46の外径寸法よりも大きくすることができる。
【0087】
保持部材52は、操作レバー46に取り付けられている。即ち、操作レバー46は、保持部材52の開放部72を通じてスリット68と眼球装着部54の中心孔とに挿通されている。操作レバー46の両端部には、それぞれ操作レバー46より大径とされた眼球モデル14と把持部50とが設けられているが、操作レバー46の軸部48が開放部72を通じてスリット68と眼球装着部54の中心孔とに側方から挿入可能とされていることから、操作レバー46に保持部材52を取り付けやすい。なお、操作レバー46は、開放部72を通じて軸部48をスリット68へ側方から挿通可能とするために、顔面モデル12に組み付けられていない単品状態の保持部材52に対して組み付けられることが望ましい。
【0088】
また、保持部材52のスリット68によって、操作レバー46の傾動が許容されている。後述するように、眼球モデル14が取り付けられた操作レバー46の前端部は、保持部材52に対して位置決めされていることから、操作レバー46は眼球モデル14を中心とする傾動が許容されている。操作レバー46の傾動が許容される方向は、スリット68の延伸方向によって規定されており、本実施形態では操作レバー46の後端部である把持部50を中立位置から上下両方向及び左右内方へ移動させることによる傾動が許容される。
【0089】
また、保持部材52は、眼球モデル14に取り付けられている。即ち、操作レバー46の前端部に取り付けられた眼球モデル14は、強膜部42の後半部分が眼球保持部60の内周へ挿入されており、強膜部42の後面の一部が眼球装着部54における眼球保持部60の眼球座面66に重ね合わされている。
【0090】
また、保持部材52は、顔面モデル12に取り付けられている。即ち、保持部材52の眼球装着部54の取付板部58は、顔面モデル12の後面に開口する取付凹所30に挿入されており、顔面モデル12における取付凹所30の開口部に設けられた係止凸部32が、取付板部58の外周面に開口する係止凹溝64に差し入れられて前後方向で係止されている。また、保持部材52の眼球装着部54の眼球保持部60は、図3図9に示すように、眼球挿通孔34に挿入されており、眼球モデル14と眼球挿通孔34の内周面との径方向間に差し入れられている。更に、保持部材52の開放部72には、顔面モデル12の位置決め突起36が差し入れられており、位置決め突起36と開放部72の内面との係止によって、保持部材52が眼球挿通孔34の周方向で位置決めされている。これらにより、保持部材52は、顔面モデル12に対して位置決め状態で取り付けられている。
【0091】
顔面モデル12の眼窩部24内に配された眼球モデル14は、図3に示すように、受部38a,38bの当接傾斜面40a,40bと眼球保持部60の眼球座面66との間で前後方向に挟み込まれており、前後方向で位置決めされている。更に、眼球モデル14は、眼球モデル14と眼球挿通孔34の内周面との間に眼球保持部60が介在することによって、上下方向及び左右方向で位置決めされている。このように、眼球モデル14は、保持部材52によって眼窩部24内に保持されている。
【0092】
眼球モデル14は、眼窩部24内で位置決め保持された状態において、操作レバー46を保持部材52のスリット68に沿って傾動させることにより、視軸方向を変更設定することが可能とされている。操作レバー46は、後方へ突出しており、操作時に把持する把持部50が軸部48の後端部に設けられていることから、傾動操作が容易とされている。本実施形態では、操作レバー46の把持部50が上下両側及び左右内側へ移動可能とされていることから、視軸方向の変化によって角膜部44を正視位置から上下両側及び左右外側へ移動させることができる。
【0093】
眼瞼モデル16は、図12図13に示すように、人の顔における眼の周囲を模しており、眼瞼裂部74の上下に上眼瞼部76と下眼瞼部78とが設けられている。眼瞼モデル16は、顔面モデル12及び眼球モデル14に対して独立した別部品とされており、後述するように顔面モデル12に取り付けられている。眼瞼モデル16は、顔面モデル12の眼窩部24と対応する形状とされて、前後方向視において下部が略円形とされていると共に、上部が略四角形とされている。眼瞼モデル16は、全体として板状とされており、左右方向の内側から外側に向けて前後方向の厚さが次第に薄くなっている。
【0094】
眼瞼モデル16は、軟質のエラストマで形成されており、容易に変形可能な可撓性を有している。眼瞼モデル16の形成材料は、特に限定されないが、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム等の樹脂エラストマや天然ゴム等が、好適に採用される。エラストマで形成された眼球モデル14は、眼瞼モデル16よりも硬質とされており、眼瞼モデル16は、眼球モデル14よりも小さな入力で変形させることができる。眼瞼モデル16は、好適にはアスカーC硬度が0度以上且つ15度以下、より好適には0度以上且つ7度以下とされており、本実施形態では0度とされている。
【0095】
前後方向視で略円形とされた眼瞼モデル16の下部には、外周へ突出する嵌合凸条80が一体形成されている。嵌合凸条80は、顔面モデル12における眼窩部24の内周面に開口する嵌合凹溝26と対応する形状及び大きさとされている。嵌合凸条80は、略半円形断面で眼瞼モデル16の周方向に延びており、突出先端に向けて前後方向で幅狭となっている。
【0096】
眼瞼モデル16の後面には、図13に示すように、球状凹所82が開口している。球状凹所82は、球面状の内面を有する凹所であって、眼瞼裂部74が形成された眼瞼モデル16の中央部分に形成されており、上眼瞼部76と下眼瞼部78をそれぞれ薄肉化している。
【0097】
眼瞼モデル16の後面には、球状凹所82の上下両外側においてそれぞれ開口する溝部84a,84bが形成されている。上側の溝部84aは、上眼瞼部76よりも上側に位置しており、球状凹所82の上壁部を貫通して球状凹所82に連通されている。また、下側の溝部84bは、下眼瞼部78よりも下側に位置しており、球状凹所82の下壁部を貫通して球状凹所82に連通されている。溝部84a,84bは、受部38a,38bと各対応する溝断面形状とされており、本実施形態では略一定の四角断面で上下方向に直線的に延びている。
【0098】
眼瞼モデル16は、顔面モデル12の眼窩部24に前方から挿入されて嵌め付けられている。即ち、眼瞼モデル16は、上部の外周端部が眼窩部24の上部において内周側へ突出する押え片28の後方に差し入れられており、眼窩部24から前方への抜けが押え片28の後面との係止によって抑えられている。また、眼瞼モデル16は、下部の外周面に突出する嵌合凸条80が眼窩部24の内周面に開口する嵌合凹溝26に嵌め入れられており、眼窩部24から前方への抜けが嵌合凸条80と嵌合凹溝26の溝内面との係止によって抑えられている。これらにより、眼瞼モデル16が顔面モデル12に対して前方への分離を防止された状態で嵌め付けられており、眼窩部24の前方へ向けた開口が眼瞼モデル16によって覆われている。眼瞼モデル16は、顔面モデル12に対して着脱可能とされており、交換等が容易とされている。
【0099】
眼瞼モデル16の後面に開口する上下の溝部84a,84bには、顔面モデル12において眼窩部24内へ突出する受部38a,38bが挿入されている。眼瞼モデル16が眼窩部24に嵌め入れられた状態において、眼瞼モデル16の溝部84aの溝幅寸法が受部38aの幅寸法よりも小さくされていると共に、溝部84bの溝幅寸法が受部38bの幅寸法よりも小さくされており、受部38a,38bが溝部84a,84bに嵌め込まれている。このような受部38a,38bの溝部84a,84bへの嵌入れによっても、眼瞼モデル16の眼窩部24に対する位置決め作用が発揮される。
【0100】
上側の受部38aの当接傾斜面40aは、眼瞼モデル16の球状凹所82の上内面に対して下方に突出しており、受部38aと溝部84aとの嵌合部分が上眼瞼部76に対して上方に離れて位置して、受部38aと上眼瞼部76とが隙間をもって離隔している。一方、下側の受部38bの当接傾斜面40bは、眼瞼モデル16の球状凹所82の下内面と連続しており、受部38bと溝部84bとの嵌合部分が下眼瞼部78に近接して位置している。これらにより、上眼瞼部76は、受部38aによって補強されることなく、押圧時の反力が小さくされており、下眼瞼部78は、受部38bの補強作用によって、押圧時の反力が比較的に大きくされている。
【0101】
なお、眼窩部24の底壁前面には適宜に凹凸が設定されており、眼瞼モデル16の裏面が当該凹凸に対応する形状とされている。これにより、眼窩部24にセットされた状態における眼瞼モデル16の硬さが調節されており、眼瞼モデル16を指先で押す等した場合の反力が各部位においてそれぞれ適切に設定されている。
【0102】
眼窩部24に嵌め付けられた眼瞼モデル16の球状凹所82には、保持部材52から突出した眼球モデル14の前半部分が差し入れられている。そして、角膜部44を含む眼球モデル14の一部が、眼瞼モデル16の上眼瞼部76と下眼瞼部78との間に配置されて、眼瞼裂部74を通じて前方へ露出している。
【0103】
眼球モデル14と眼瞼モデル16の下眼瞼部78との間には、隙間86が形成されている。本実施形態では、下眼瞼部78が眼球モデル14に対して全体に亘って離隔しており、隙間86が眼球モデル14と下眼瞼部78との対向面間の全体に亘って形成されている。隙間86は、人眼における眼球と下眼瞼との隙間よりも大きくされている。具体的には、例えば、下眼瞼部78の左右中央部分における隙間86の大きさは、0.5mm以上且つ2.5mm以下とされていることが望ましく、より好適には、0.8mm以上且つ2.0mm以下とされている。また、下眼瞼部78を前方から後方へ向けて指先で押し込むことによって、下眼瞼部78を眼球モデル14に接触させることが可能となるように、下眼瞼部78の硬さと隙間86の大きさとが調節されている。
【0104】
眼球モデル14と眼瞼モデル16の上眼瞼部76との間には、隙間88が形成されている。上眼瞼部76は、眼球モデル14に対して全体に亘って離隔していてもよいし、眼球モデル14に対して部分的に当接していてもよいが、本実施形態では少なくとも左右方向の中央部分に隙間88が設けられている。上眼瞼部76の左右中央部分における隙間88の大きさは、0.5mm以上且つ2.5mm以下とされていることが望ましく、より好適には、0.7mm以上且つ2.0mm以下とされている。また、上眼瞼部76を前方から後方へ向けて指で押し込むことによって、上眼瞼部76を眼球モデル14に接触させることが可能となるように、上眼瞼部76の硬さと隙間88の大きさとが調節されている。なお、上記した隙間86,88の大きさは、操作レバー46が前後方向に非傾斜で延びる眼球モデル14の正視状態での大きさであり、操作レバー46の傾斜を伴う視軸方向の変化によって、隙間86,88の大きさが上記した数値範囲から外れる場合もある。
【0105】
なお、図1図2及び図4図5に示すように、顔面モデル12の左右の眼窩部24a,24bには、操作レバー46を備えた眼球モデル14と、保持部材52と、眼瞼モデル16とが、それぞれ取り付けられている。従って、装脱トレーニング装置10は、例えば、顔面モデル12と、左右一対の操作レバー46,46及び眼球モデル14,14と、左右一対の保持部材52,52と、左右一対の眼瞼モデル16,16とを、含むセットとして提供され得る。左右の眼窩部24a,24bに取り付けられる眼球モデル14と保持部材52と眼瞼モデル16は、相互に左右対称形状とされている。尤も、それぞれ操作レバー46を備えた左右の眼球モデル14,14は、相互に同一形状とされており、左右の保持部材52,52は、相互に180度の回転対称形状とされていることから、それぞれ共通の部品とすることができる。この場合に、眼球モデル14及び保持部材52は、左右何れの眼窩部24に対しても着脱自在に装着可能とされる。従って、例えば、顔面モデル12と、左右の眼瞼モデル16,16と、1つの操作レバー46付きの眼球モデル14と、1つの保持部材52とを、組み合わせたセットとして提供して、操作レバー46付きの眼球モデル14と保持部材52とを、左右の眼窩部24a,24bに対して適宜に付け替えて使用するようにしてもよい。
【0106】
かくの如き構造とされた装脱トレーニング装置10は、使用者が他者の眼に対するコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うために使用される。装脱トレーニングに用いられるコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズでもよいし、ハードコンタクトレンズでもよい。また、コンタクトレンズとしては、角膜上に装用されて屈折異常を矯正する視力補正用のコンタクトレンズだけでなく、例えば、角膜形状を矯正して近視の軽減を図るオルソケラトロジーレンズや、強膜によって支持されるスクレラルレンズ(強膜レンズ)等であってもよい。
【0107】
眼球モデル14にコンタクトレンズを装着する装用トレーニング時には、先ず、使用者は、操作レバー46の把持部50を把持して上方へ移動させることで、眼球モデル14の視軸方向を前方へ向けて下傾する斜め下方向に変化させる。次に、使用者は、指先に載せたコンタクトレンズを眼瞼裂部74を通じて露出する眼球モデル14の表面に装着し、視軸方向を正面に復帰させることで、コンタクトレンズの装用を完了する。
【0108】
このように、本実施形態の装脱トレーニング装置10は、コンタクトレンズの装用前に眼球モデル14の視軸方向を変更することが可能とされており、実際にコンタクトレンズを他者の眼に装用する場合と同様に、眼球モデル14の角膜部44を斜め下方に向けた状態で、コンタクトレンズの装用トレーニングを行うことができる。従って、装脱トレーニング装置10によるコンタクトレンズの装用トレーニングと、実際の人眼へのコンタクトレンズの装用との間の差異が小さくされており、より実践的な装用トレーニングが可能となることから、コンタクトレンズの装用技能を効率的に向上させることができる。
【0109】
また、眼球モデル14の視軸方向は、眼球モデル14から後方へ延び出した操作レバー46を傾動させることによって容易に且つ短時間で変更可能であることから、効率的なトレーニングが可能となる。しかも、眼球モデル14を位置決めする受部38a,38bの当接傾斜面40a,40b及び眼球保持部60の眼球座面66は、眼球モデル14の強膜部42に対応する湾曲面とされていることから、操作レバー46の傾動操作に際して、眼球モデル14の視軸方向の変化が、当接傾斜面40a,40b及び眼球座面66の案内作用によって安定して実現される。加えて、操作レバー46の後端部には、球状の把持部50が設けられており、把持部50を持つことで操作レバー46の傾動操作を小さな入力で簡単に行うことができる。
【0110】
操作レバー46が傾動操作時に移動する保持部材52のスリット68は、部分的に拡幅されたレバー保持部70を複数箇所に備えており、操作レバー46がレバー保持部70に挿通されることで保持されるようになっている。これにより、眼球モデル14は、正面視と上方視と下方視との各視軸方向で保持可能とされている。従って、眼球モデル14を下方視の状態に保持しながら、コンタクトレンズの装用トレーニングを行うことができる。スリット68のレバー保持部70を外れた部分は、操作レバー46の直径よりも小さい幅寸法とされていることから、操作レバー46が自重等で意図せずにレバー保持部70から外れて傾動し難くなっており、眼球モデル14の向きが安定して保持される。スリット68が形成された保持部材52は、弾性材で形成されていることから、スリット68の幅寸法が操作レバー46の直径より小さくされていても、把持部50に力を加えることによって、操作レバー46がスリット68を押し広げながら移動可能とされている。この際に、保持部材52が弾性材で形成されていることから、操作レバー46がスリット68の内面に引っ掛かったり、操作レバー46の摺接によって異音が発生したりする不具合が回避され易い。
【0111】
なお、使用者は、コンタクトレンズの装用前に、眼球モデル14の表面に対して、涙液を模した潤滑液やシリコーングリース等の低摩擦剤を注したり噴霧することが望ましい。これにより、眼球モデル14の表面の摩擦係数を涙液で潤滑された人眼の眼球表面の摩擦係数に近付けることができる。それゆえ、コンタクトレンズの眼球モデル14への過度な貼付き等が防止されて、人眼への装用により近い状態を実現することができる。
【0112】
一方、眼球モデル14に装着されたコンタクトレンズを取り外す脱用トレーニング時には、先ず、使用者は、操作レバー46の把持部50を把持して、把持部50を移動させることで、眼球モデル14の視軸方向を変化させる。これにより、実際にコンタクトレンズを他者の眼から脱用する場合と同様に、眼球モデル14の向きを設定した状態で、コンタクトレンズの脱用トレーニングを行うことができる。なお、操作レバー46によって眼球モデル14の向きの変更が容易に且つ短時間で行えることや、操作レバー46の端部に設けられた把持部50によって操作が小さな力で容易に行えること、眼球モデル14の向きが安定して保持されること等は、装用時と同様である。
【0113】
例えば、コンタクトレンズの装用から時間が経過して乾燥が進行している場合などには、コンタクトレンズの脱用前に、涙液を模した潤滑液や点眼薬等を眼球モデル14の表面に注す等して適切な濡れを付与してもよい。
【0114】
脱用されるコンタクトレンズがソフトコンタクトレンズの場合、使用者は、操作レバー46の把持部50を把持して下方へ移動させることで、眼球モデル14の視軸方向を前方へ向けて上傾する斜め上方向に変化させる。そして、実際にソフトコンタクトレンズを他者の眼から脱用する場合と同様に、眼球モデル14の角膜部44を斜め上方に向けた状態で、使用者は、例えば、コンタクトレンズを人差指で下方へずり下げてから指先で摘まんで眼球モデル14から取り外す。
【0115】
脱用されるコンタクトレンズがハードコンタクトレンズの場合、使用者は、操作レバー46の把持部50を中央に位置させて、眼球モデル14の視軸方向を前方へ向けた正面視状態とする。そして、実際にハードコンタクトレンズを他者の眼から脱用する場合と同様に、眼球モデル14の角膜部44を正面に向けた状態で、使用者は、例えば、下眼瞼部78を眼球モデル14側へ押し込んで眼球モデル14に押し当てながら、上眼瞼部76を下方へずり下げて下眼瞼部78に接近させることにより、コンタクトレンズを上眼瞼部76と下眼瞼部78とで挟み込むようにして眼球モデル14から取り外す。
【0116】
本実施形態の装脱トレーニング装置10は、下眼瞼部78と眼球モデル14との間に人眼に相当する程度の隙間86が設けられている。これにより、下眼瞼部78の眼球モデル14側への押込みが十分でない場合に、コンタクトレンズが隙間86に入り込み易くなっている。それゆえ、使用者は、装脱トレーニング装置10を使用してハードコンタクトレンズの脱用トレーニングを行うことによって、下眼瞼部78を眼球モデル14側へ意識的に押し込むようになることから、ハードコンタクトレンズの脱用において重要な下眼瞼部78の押込みを習得し易い。なお、隙間86は、人眼の下眼瞼と眼球との隙間よりも大きく設定することも可能であり、それによって下眼瞼部78を押込む操作をより積極的に行わせることで、トレーニング効果をより高めることもできる。
【0117】
また、本実施形態の装脱トレーニング装置10は、上眼瞼部76と眼球モデル14の間に隙間88が設けられていることから、上眼瞼部76の眼球モデル14側への押込みが十分でない場合、上眼瞼部76を指先で下方へずり下げる際にコンタクトレンズが隙間88に入り込む。それゆえ、使用者は、装脱トレーニング装置10を使用してハードコンタクトレンズの脱用トレーニングを行うことによって、上眼瞼部76を眼球モデル14側へ意識的に押し込むようになることから、ハードコンタクトレンズの脱用において重要な上眼瞼部76のずり下げ時の押込みも習得し易い。
【0118】
本実施形態に係る装脱トレーニング装置10は、顔面モデル12と眼球モデル14と眼瞼モデル16とが、相互に独立した別部品とされている。それゆえ、顔面モデル12と眼球モデル14と眼瞼モデル16とに求められる硬さ、触感、耐久性等の性能をそれぞれ独立して設定することが可能であり、より高性能な装脱トレーニング装置10を提供することができる。特に、眼球モデル14と眼瞼モデル16が弾性体(エラストマ)とされており、顔面モデル12よりも軟質とされていることから、コンタクトレンズの装脱に際して重要となる眼球モデル14及び眼瞼モデル16の触感等を人体に近付けつつ、比較的に硬質の顔面モデル12によって、コンタクトレンズの装脱を阻害する顔面の凹凸が強調されることで、より効率的なトレーニングが可能となる。
【0119】
さらに、眼瞼モデル16が眼球モデル14よりも軟質とされていることによって、例えば、上眼瞼部76のずり下げや下眼瞼部78の押圧等のトレーニングを有効に行うことができる。また、眼球モデル14が眼瞼モデル16より硬質とされており、実際の人眼により近い硬さの関係とされていることから、例えば上下の眼瞼部76,78を眼球モデル14側へ押し込む際に、眼瞼部76,78の眼球モデル14への当接を触感の変化で把握する等、実践的なトレーニングを行うことが可能である。
【0120】
軟質で且つ繰り返し指先で押圧等される眼球モデル14や眼瞼モデル16は、硬質で且つ訓練中に積極的には触れない顔面モデル12に比して、比較的に短期間で劣化したり損傷したりするが、眼球モデル14と眼瞼モデル16とが顔面モデル12に対して着脱自在の別部品とされていることから、例えば、損傷した眼球モデル14や眼瞼モデル16だけを交換することも可能となる。このことからも分かるように、装脱トレーニング装置10の構成部品である、顔面モデル12、眼球モデル14、操作レバー46、保持部材52、眼瞼モデル16は、全て或いは幾つかを組み合わせたセットとして提供される他、各単品でも提供され得る。
【0121】
本実施形態では、上眼瞼部76及び下眼瞼部78の柔らかさが、顔面モデル12と一体形成された硬質の受部38a,38bが、眼瞼モデル16の溝部84a,84bに嵌め入れられることによっても調節されており、人の上下の眼瞼により近い柔らかさが設定されている。それゆえ、使用者が指先で上眼瞼部76を眼球モデル14側へ押込みながらずり下げたり、下眼瞼部78を眼球モデル14側へ押し込む際に、より適当な反力が指先に及ぼされる。
【0122】
なお、装脱トレーニング装置10は、図14に示すように、顔面モデル12に支持部材としてのスタンド90を取り付けることにより、顔面モデル12を所定の高さに保持することが可能とされている。これにより、眼球モデル14の位置を実際のコンタクトレンズの装脱時と同じ高さに設定することも可能であり、より実践的な装脱トレーニングを行うことができる。
【0123】
本実施形態のスタンド90は、上下方向に延びるロッド状部92を備えており、ロッド状部92の上端部に設けられた雄ねじが、顔面モデル12の下面に露出するナット20に螺着される。また、スタンド90におけるロッド状部92の下側には、ロッド状部92を上下延伸状態に保持する支持部94を備えている。支持部94は、本実施形態において、椅子や机等の支持台Aに取付け可能なクランプ状とされているが、例えば、床面に自立する三脚状であってもよいし、巻付けによって他部材に連結可能な多関節の巻付構造などであってもよい。
【0124】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、顔面モデル12において、額に相当する部分はなくてもよく、この場合に、眼窩部24は、顔面モデル12の前面だけでなく上面にも開口し得る。また、顔面モデル12において鼻部22は必須ではなく省略することもできる。更に、顔面モデル12は、一方の眼窩部24とその周囲だけであってもよく、装脱トレーニング装置は、必ずしも人の両眼に相当する部分を有するものに限定されず、片眼に相当する部分だけを有していてもよい。また、顔面モデルは、人の口や耳、頭、顎に相当する部分の幾つかを備えていてもよい。
【0125】
前記実施形態の顔面モデル12は、指で押す程度の外力では変形しない程度に硬質とされていたが、顔面モデルを指で押して変形させることが可能な程度に軟質とすることもできる。また、例えば、顔面モデルを硬質材の表面に軟質材層を設けた二重構造とすれば、顔面モデルの表面において、人の顔を模した凹凸形状を維持しながら、人の顔により近い手触りを実現し得る。
【0126】
別部品としての保持部材52は必須ではなく、例えば、保持部材52に相当する部分を顔面モデル12に一体形成してもよいし、保持部材52を顔面モデル12に対して固着してもよい。
【0127】
眼瞼モデル16の顔面モデル12に対する取付構造は、前記実施形態の例示によって限定されるものでなく、眼瞼モデル16が顔面モデル12に対して着脱自在に取り付けられるものであれば、他の構造を採用することもできる。具体的には、例えば、嵌合凹溝26が眼窩部24の内周面に全周に亘って設けられると共に、嵌合凸条80が眼瞼モデル16の全周に亘って設けられて、嵌合凸条80が嵌合凹溝26に全周に亘って嵌め入れられることで、眼瞼モデル16が顔面モデル12に取り付けられてもよい。
【0128】
前記実施形態では、左右の眼窩部24a,24bに取り付けられる眼瞼モデル16,16が相互に独立した別部品とされていたが、眼瞼モデルは、左右の眼窩部24a,24bに取り付けられる部分を一体的に備えていてもよい。具体的には、例えば、左右の眼窩部24a,24bに差し入れられる部分を相互に連結した構造の眼瞼モデルを採用し、顔面モデル12における左右の眼窩部24a,24bの間に凹溝を設けて、当該眼瞼モデルの左右中間の連結部分を当該凹溝に嵌め入れるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10 コンタクトレンズの装脱トレーニング装置(第1実施形態)
12 顔面モデル
14 眼球モデル
16 眼瞼モデル
18 肉抜穴
20 ナット
22 鼻部
24(24a,24b) 眼窩部
26 嵌合凹溝
28 押え片
30 取付凹所
32 係止凸部
34 眼球挿通孔
36 位置決め突起
38(38a,38b) 受部
40(40a,40b) 当接傾斜面
42 強膜部
44 角膜部
46 操作レバー
48 軸部
50 把持部
52 保持部材
54 眼球装着部
56 レバー挿通部
58 取付板部
60 眼球保持部
62 固着筒部
64 係止凹溝
66 眼球座面
68 スリット
70 レバー保持部
72 開放部
74 眼瞼裂部
76 上眼瞼部
78 下眼瞼部
80 嵌合凸条
82 球状凹所
84(84a,84b) 溝部
86 隙間
88 隙間
90 スタンド(支持部材)
92 ロッド状部
94 支持部
A 支持台
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11
図12
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図14