(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019906
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】騒音評価方法
(51)【国際特許分類】
G01H 3/00 20060101AFI20250131BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
G01H3/00 A
G10K15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123797
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390011903
【氏名又は名称】株式会社イリア
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 晴基
(72)【発明者】
【氏名】矢入 幹記
(72)【発明者】
【氏名】平田 真佑子
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】小菅 克己
(72)【発明者】
【氏名】坂口 忠明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 太郎
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064AB15
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
(57)【要約】
【課題】工事現場等において発生する騒音を定量的に評価する。
【解決手段】騒音評価方法は、音源データを取得するデータ取得工程と、音圧を減衰させる複数のフィルタによって音源データを補正して複数の補正音源データを取得するフィルタリング工程と、複数の補正音源データのそれぞれに対して当該補正音源データに含まれる音の騒音の程度を評価する官能評価を行う評価工程と、補正音源データに含まれる音がどの程度許容されるかの割合を表す容認度を官能評価の結果に基づいてフィルタごとに取得する容認度取得工程と、を含み、複数のフィルタは、複数の中心周波数における遮音性能によって表される遮音等級であるD値を用いて互いに異なるD値に基づいて設定され、フィルタリング工程におけるフィルタによる補正では、D値から音源データに含まれる各周波数に対応する遮音性能を算出し、当該遮音性能に基づいて音源データの音圧を減衰させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源データを取得するデータ取得工程と、
音圧を減衰させる複数のフィルタによって前記音源データを補正して複数の補正音源データを取得するフィルタリング工程と、
複数の前記補正音源データのそれぞれに対して当該補正音源データに含まれる音の騒音の程度を評価する官能評価を行う評価工程と、
前記補正音源データに含まれる音がどの程度許容されるかの割合を表す容認度を前記官能評価の結果に基づいて前記フィルタごとに取得する容認度取得工程と、を含み、
複数の前記フィルタは、複数の中心周波数における遮音性能によって表される遮音等級であるD値を用いて互いに異なる前記D値に基づいて設定され、
前記フィルタリング工程における前記フィルタによる補正では、前記D値から前記音源データに含まれる各周波数に対応する遮音性能を算出し、当該遮音性能に基づいて前記音源データの音圧を減衰させる、
騒音評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の騒音評価方法であって、
前記容認度取得工程では、前記官能評価の評価結果を正規分布として表し、前記官能評価において設定される騒音として許容するかのカテゴリ境界の前記正規分布の位置から、騒音として許容する割合である前記容認度を算出する、
騒音評価方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の騒音評価方法であって、
前記フィルタリング工程では、複数の前記中心周波数のそれぞれについて当該中心周波数における前記遮音性能に基づいて前記中心周波数を含む所定の周波数帯にわたる帯域通過フィルタを設定し、前記帯域通過フィルタを重ね合わせることで前記フィルタを設定し、
前記帯域通過フィルタは、他の前記帯域通過フィルタにおける通過域に影響しないように設定される、
騒音評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改修工事現場等における騒音を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路交通騒音による騒音の影響と騒音暴露量との相関係数を取得して、騒音を評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】泉清人、矢野隆、山下俊雄 「北海道と九州における道路交通騒音に関する社会調査道路交通騒音に対する社会反応の地域比較研究 1」 日本建築学会計画系譲文報告集第442号1992年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、工事現場等において発生する騒音を低減することが望まれている。騒音を低減する方法としては、例えば、工事現場周辺に所定の遮音性能を有する遮音壁等を設けることが考えられる。適切な騒音対策を行うためには、音の大きさ(音圧)や音の性質がどの程度のものであれば許容されるかといった騒音評価を行い、その騒音評価に基づいて騒音対策を行う必要がある。そのためには、定量的な騒音評価手法が求められる。
【0005】
本発明は、工事現場等において発生する騒音を定量的に評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、騒音評価方法であって、音源データを取得するデータ取得工程と、音圧を減衰させる複数のフィルタによって音源データを補正して複数の補正音源データを取得するフィルタリング工程と、複数の補正音源データのそれぞれに対して当該補正音源データに含まれる音の騒音の程度を評価する官能評価を行う評価工程と、補正音源データに含まれる音がどの程度許容されるかの割合を表す容認度を官能評価の結果に基づいてフィルタごとに取得する容認度取得工程と、を含み、フィルタリング工程では、特定の周波数における遮音性能を表す遮音等級であるD値が互いに異なるように複数のフィルタを設定し、D値から音源データに含まれる各周波数に対応する遮音性能を算出し、当該遮音性能に基づいて音源データの音圧を減衰させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、工事現場等において発生する騒音を定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る騒音評価方法の各工程を示すフロー図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る騒音評価方法の騒音条件を示す表である。
【
図5】本発明の実施形態に係る騒音評価方法においてフィルタを設定する工程を示すグラフ図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る騒音評価方法における評価結果の一例を示すグラフ図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る騒音評価方法における容認度を取得する方法を説明するための図であり、評価結果を標準化して正規分布として表したグラフ図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る騒音評価方法における遮音性能と容認度との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る騒音評価方法について説明する。
【0010】
本実施形態の騒音評価方法は、建築物等の建築又は改修工事現場(以下、単に「現場」と称する。)で発生する作業音などによる騒音を評価するものであり、騒音に対する人の容認度を把握するためのものである。以下の説明では、室内の改修工事において現場周辺(例えば、隣接する別室や、階下の別室)への騒音の影響を評価する場合を例に説明する。
【0011】
騒音評価方法は、
図1に示すように、評価の対象となる音源データを取得するデータ取得工程と、音圧を減衰させる複数のフィルタによって音源データを補正して複数の補正音源データを取得するフィルタリング工程と、複数の補正音源データのそれぞれに対して当該補正音源データに含まれる音の騒音の程度を評価する官能評価を行う評価工程と、補正音源データに含まれる音がどの程度許容されるかの割合を表す容認度を官能評価の結果に基づいてフィルタごとに取得する容認度取得工程と、を含む。
【0012】
[データ取得工程]
データ取得工程では、所定の騒音条件において発生する騒音を録音して音源データを取得する。所定の騒音条件には、
図2に示すように、現場で行われる作業種類と、現場状況と、が含まれる。
【0013】
作業種類は、現場での作業内容ごと、ひいては使用される工具・器具ごとに設定される。本実施形態では、インパクトドライバー、タッカー、Dボード、丸のこ、鋲打ち、ディスクグラインダーといった6水準が作業種類として設定される。
【0014】
現場状況とは、オフィス、ホテル、病院など、改修工事が行われる現場の種類と、それぞれの現場で生じる暗騒音(作業で発生する騒音以外の音)の音圧と、の組み合わせにより設定される。本実施形態では、現場の性質としてオフィス、ホテル、病院の3種類が設定され、それぞれの暗騒音の音圧として35dB又は40dBの2つが設定される。つまり、現場の種類の条件としては、合計6水準が設定される。
【0015】
したがって、データ取得工程では、作業種類の6水準と、現場状況の6水準とで、合計36水準の音源データが取得される。
【0016】
なお、音源データの取得に当たっては、実在する現場において実際に作業を行い音源データを取得してもよいし、現場を再現したモックアップにて作業を行って音源データを取得してもよい。
【0017】
[フィルタリング工程]
フィルタリング工程では、まず、フィルタの設定が行われる。本実施形態では、フィルタは、D値又はDr値(JIS A 1419:2000 建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法。以下では、「D値」とする。)に基づいて設定される。D値は、複数のオクターブバンドの中心周波数における遮音性能によって表される遮音等級であり、オクターブバンドの中心周波数における建築部材によって隔てられた2空間の音圧レベル差によって表される。本実施形態では、
図2に示すように、現場において遮音のための仮設間仕切りの仕様に近い7つのD値(
図3参照)を利用してフィルタを設定する。
【0018】
以下、フィルタの設定について、
図4及び
図5を参照して具体的に説明する。
【0019】
フィルタは、D値において遮音性能が規定される複数の中心周波数のそれぞれについて当該中心周波数における遮音性能に基づいて帯域通過フィルタを設定し、帯域通過フィルタを重ね合わせることで設定される。D値におけるオクターブバンドの中心周波数は、帯域通過フィルタにおける中心周波数である。
【0020】
通常、
図4に示すように、帯域通過フィルタは、音を減衰させずに通過させる(ゲインが0となる)通過域と、音を通過させずに除去する阻止域(減衰域)と、通過域と阻止域との間の遷移域と、を有する。本実施形態では、
図5に示すように、帯域通過フィルタは、通過域及び遷移域を有し、阻止域を有していない形状に設定される。各中心周波数における帯域通過フィルタは、中心周波数における音圧レベル差の値に通過域をフィットさせるようにして設定される。言い換えると、帯域通過フィルタをD値の音圧レベル差の大きさに合わせてスケールアップさせる(音圧レベル差の大きさを倍率として掛け合わせる)ことで、帯域通過フィルタが設定される。帯域通過フィルタの形状は、通過域の幅と、遷移域の傾斜によって定められる。通過域の幅は、カットオフ周波数によって定められ、遷移域の傾斜はフィルタの次数によって定められる。カットオフ周波数及びフィルタの次数は、試験や経験則に基づいて、任意に設定される。なお、本実施形態では、帯域通過フィルタは、阻止域を有していない形状に設定されるが、これに限定されるものではなく、阻止域を含んだ形状に設定されてもよい。
【0021】
帯域通過フィルタの形状は、中心周波数ごとに任意に設定できる。
図5に示すように、複数の中心周波数のそれぞれについて帯域通過フィルタ(図中破線)を設定し、これらを重ね合わせる(合成する)ことで、一つのフィルタ(図中実線)が設定される。このようにすることで、離散的な値であるD値の中心周波数の遮音性能が、評価対象音源の周波数帯にわたって拡張されて、評価対象音源の周波数帯全体に対するフィルタを設定することができる。また、帯域通過フィルタの重ね合わせによってフィルタを設定することで、中心周波数の間の遮音性能を妥当性が高い値として補間することができる。
【0022】
また、中心周波数に対して設定する帯域通過フィルタは、他の中心周波数における帯域通過フィルタの通過域に影響しないように設定されることが望ましい。通過域に影響しないとは、聴感的な変化を生じさせないことを意味する。そのためには、少なくとも、ある帯域通過フィルタにおける遷移域のゲインは、隣接する帯域通過フィルタの通過域のゲインを超えないように小さく設定されることが望ましい。さらに言えば、通常、音圧レベル差が10dB以内であれば聴感に影響があるといわれることに鑑みて、ある帯域通過フィルタの通過域と隣接する帯域通過フィルタの遷移域とのゲインの差は10dB以上であることが望ましい。これによれば、設定されたフィルタにおける中心周波数の遮音性能は、合成の元となるD値の遮音性能と略同一となるため、フィルタの遮音性能とD値として規定される遮音性能との差を少なくすることができる。
【0023】
このようにしてフィルタが設定されると、各フィルタによって音源データを補正して、補正音源データが取得される。音源データの補正は、音源データに含まれる騒音の音圧をフィルタが有する遮音性能によって減衰させることで行われる。
[評価工程]
評価工程では、複数の評価者に対して、補正されていない音源データ及び音源データを補正した補正音源データ(以下、これらをまとめて「評価対象音源」とも称する。)のそれぞれについて、騒音として許容できるか否かを評価させる官能評価が行われる。
【0024】
具体的には、官能評価では、評価者に試験室に入ってもらい、試験室内に各評価対象音源を流し、聞こえてくる音に対して不快に感じる程度を評価してもらう。評価は、騒音に対する不快感の程度が連続する(心理的反応が連続する)5段階の評価項目(カテゴリ)を選択することによって行われる。具体的には、評価項目は、聞こえてくる音の不快度が、「0:非常にある」、「1:やや感じる」、「2:どちらともいえない」、「3:ほとんど感じない」、「4:全くない」の5段階である。
【0025】
また、評価工程によって騒音に対する評価を取得すると、評価結果に対して騒音条件を因子とした分散分析を行ってもよい。これによれば、本実施形態における騒音条件(作業種類、現場状況)が、騒音に対する評価(不快に感じるかどうか)に対して影響を及ぼす因子であるかを確認することができる。言い換えると、官能評価に対する分散分析によって、騒音条件の項目を設定することができる。本実施形態で騒音条件に含まれる作業種類及び現場状況は、分散分析によって官能評価の結果に対して影響を及ぼす因子であることが確認されている。
【0026】
[容認度取得工程]
容認度取得工程では、評価工程で得られた評価結果に対して統計処理を施すことで、騒音として許容される割合を示す容認度を評価音源ごとに取得する。
【0027】
以下、容認度を取得する統計処理について説明する。
【0028】
本実施形態では、統計処理として系列範疇法(例えば、田中良久 心理学的測定法 第2版 東京大学出版会 1977年)を用いて容認度を取得する。系列範疇法は、心理的に連続する複数のカテゴリによる評価結果が正規分布をなしているとみなし、各カテゴリの境界を、平均値からの距離尺度として表すものである。この距離尺度は、標準化された評価結果の正規分布上における、標準偏差を単位とした距離として表される。
【0029】
例えば、
図6に示すように、評価工程で得られた5段階の評価結果において、騒音を許容できる/許容できないのカテゴリ境界(以下、「許容境界」と称する。)が、「1:やや感じる」と「2:どちらともいえない」とのカテゴリ境界であるとする。なお、このような許容境界の設定は、評価項目に応じて任意に設定することができる。
【0030】
図7に示すグラフ図では、評価結果が正規分布で表されており、図中右側が許容できる、左側が許容できないことを示している。
図7に示すグラフ図では、騒音が許容される割合は、許容境界よりも右側に占める割合に相当する。そして、この割合は、系列範疇法により求められる、許容境界と評価結果の平均との標準化距離として表すことができる。よって、本実施形態では、この標準化距離が容認度として各評価対象音源に対する評価結果において取得される。
【0031】
次に、騒音条件ごとに標準化距離(容認度)とフィルタのD値との関係を取得し、両者の関係に対して線形回帰を行う。なお、フィルタによって補正されていない元々の音源データは、遮音性能が0のフィルタによって補正されていると取り扱うことで、補正音源データと共に線形回帰することができる。
図8は、作業種類が「インパクトドライバー」、現場環境が「オフィス_35dB」の場合の遮音性能(D値)と容認度を線形回帰して示したものである。遮音性能の値は、各D値における代表値であり、例えば500Hz(、JIS A 1419)における値が利用される。なお、遮音性能の値は、500Hzにおける値に限定されず、任意の周波数における値とすることができる。標準化距離とD値との関係の線形回帰は、容認度が5%から95%の間で行われる。これにより、各騒音条件において、どの程度の音圧であれば、どの程度の割合によって許容されるか、といった評価結果が取得される。
【0032】
次に、本実施形態の騒音評価方法を利用した工事計画策定方法について説明する。
【0033】
騒音評価方法によって、各騒音条件において標準化距離とD値との関係が取得されると、この関係に基づいて実際の工事において、現場に隣接する別室への騒音を所定の容認度とするために必要な仮設間仕切りを選定することができる。具体的には、工事において必要な容認度を設定し、設定した容認度となるようなD値を、実際に工事を行う現場に対応する騒音条件の関係から読み取る。容認度と標準化距離とは、上述のように、容易に変換が可能である。例えば、
図8に示す例では、作業種類がインパクトドライバー、現場状況がオフィスであって暗騒音が35dBのものである場合、容認度を70%で工事を行うためには、D値が40dB以上の仮設間仕切りを設置すればよいことが、騒音評価方法による評価結果から把握することができる。
【0034】
また、騒音評価方法による評価結果に基づいて、現在現場に設置されている仮設間仕切りでは、設定した容認度で作業するには、どの程度の音圧まで出していいのか(言い換えると、どの作業種類であれば許容されるのか)を把握できる。これによれば、昼間は設定した容認度となる作業を行い、その他の作業は人がいなくなる夜間や休日に行うなど、容認度を満たすような工事計画を立案することができる。これにより、工期の短縮、工事費の削減、夜間や休日での作業減少などを図ることができる。
【0035】
また、本実施形態では、室内の改修工事での騒音を評価できるため、いわゆる居ながら工事において有用である。通常、宿泊施設や商業施設での居ながら工事では、現場の周囲の客室や店舗の利用を停止(売り止め)するエリアが設けられるが、本実施形態の騒音評価方法を利用して工事計画を策定することで、売り止めのエリアを抑制することができる。よって、施主の営業活動を阻害しない改修工事を行うことができる。
【0036】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0037】
本実施形態では、遮音等級を表すD値を音源データの周波数帯にまで拡張することでフィルタが設定される。そして、異なるD値に基づいて設定されるフィルタによって音源データを補正し、騒音として許容できるかの割合を表す容認度がフィルタごとに求められる。これにより、工事現場等で生じる騒音に対して、どの程度の遮音性能(D値)とすることで、騒音としてどの程度許容されるかを定量的に評価することができる。
【0038】
また、本実施形態では、騒音条件(作業種類及び現場環境)と容認度との関係を取得することができる。このため、実際の工事における騒音条件と容認度との関係に基づいて、設定した容認度を満たすために必要な遮音性能を有する仮設間仕切りを容易に選定することができる。
【0039】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内である。また、変形例に示す構成と上記の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0040】
上記実施形態では、容認度は、系列範疇法によって容認境界を距離尺度(標準化距離)によって表される。これに対し、容認度の取得方法は、上記実施形態のものに限定されない。例えば、容認度は、全体の評価者に対して許容すると答えた評価者の割合であってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、D値の各中心周波数に対して帯域通過フィルタを設定し、帯域通過フィルタの重ね合わせによってフィルタが設定される。これに対し、フィルタは、D値に基づくものであれば、上記実施形態のものに限定されない。例えば、フィルタは、D値の各中心周波数における遮音性能を線形又は非線形に近似(回帰)して設定してもよい。一例として、D値において隣接する中心周波数の遮音性能を直線で繋いで線形補間することで、フィルタを設定してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、評価対象音源には、データ取得工程で取得した音源データそのものが含まれる。これに対し、評価対象音源には、音源データそのものは含まれず、補正音源データのみが含まれていてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、室内の改修工事における周辺への騒音を評価するものであったが、用途はこれに限定されない。例えば、室内で人が生じさせる生活音等を評価するものでもよいし、建物の外構工事等の屋外で生じる音を評価するものでもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。