(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019907
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】圧縮機の容量制御方法及び容量制御装置
(51)【国際特許分類】
F04C 28/26 20060101AFI20250131BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
F04C28/26 H
F04C18/16 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123798
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 夏生
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AB02
3H129BB22
3H129BB43
3H129CC14
3H129CC24
3H129CC84
3H129CC87
(57)【要約】
【課題】アンロード運転時に生じる吸入弁二次側の吸入流路内の真空が過剰に緩和されることがないよう該位置で発生する真空を緩和してアンロード運転時の消費動力を減少させる。
【解決手段】吸入弁二次側の吸入流路42とレシーバタンク32間を連通する真空緩和回路13を設け,この真空緩和回路13にバキュームレリーフバルブ14を設ける。圧縮機本体20の吸気を閉塞したアンロード運転時,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を所定の閾値(適正圧力)に近付ける及び/又は一致させるように前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に応じて前記バキュームレリーフバルブ14を開閉動作,好ましくは,開度調整することにより,吸入弁二次側の吸入流路内の圧力を閾値(適正圧力)に近付ける及び/又は一致させるために必要な量の圧縮空気のみをレシーバタンク32から導入する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体に被圧縮気体である空気を導入する吸入流路を,前記圧縮機本体の吐出側に設けた供給流路内の圧力変化に応じて吸入弁により開閉して,前記吸入弁が開いた状態で前記圧縮機本体を運転するロード運転と,前記吸入弁が閉じた状態で前記圧縮機本体を運転するアンロード運転間で運転状態を切り換えることにより,消費側に供給する圧縮空気の圧力が所定の設定吐出圧力に近づくように制御する圧縮機の容量制御方法において,
吸入弁二次側の吸入流路と前記供給流路とを連通する真空緩和回路を設けると共に,該真空緩和回路に,該真空緩和回路を開閉するバキュームレリーフバルブを設け,
前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力を,前記アンロード運転の状態における適正圧力として予め設定した所定の閾値に近付ける及び/又は一致させるように,前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力変化に対応して前記バキュームレリーフバルブを開閉動作させることを特徴とする圧縮機の容量制御方法。
【請求項2】
前記バキュームレリーフバルブの前記開閉動作が開度調整を含み,該開度調整によって前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力を前記閾値に近付ける及び/又は一致させることを特徴とする請求項1記載の圧縮機の容量制御方法。
【請求項3】
前記アンロード運転の状態にある時,前記供給流路内の圧縮空気を放気すると共に,
前記閾値を,前記放気の完了により圧力が下げ止まった状態の前記供給流路を連通させた状態で前記アンロード運転を行った際の前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力に対応する値に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮機の容量制御方法。
【請求項4】
前記真空緩和回路を,前記供給流路に設けたレシーバタンクを介して前記供給流路に連通したことを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮機の容量制御方法。
【請求項5】
前記ロード運転時に前記吸入弁の閉弁受圧室に前記供給流路内の圧縮空気を導入する調圧回路を設け,
該調圧回路に設けたレギュレータによって前記吸入弁の前記閉弁受圧室に導入する圧縮空気の圧力を変化させて,前記供給流路内の圧力上昇に応じて前記吸入弁の開度を減少させ,前記供給流路内の圧力低下に応じて前記吸入弁の開度を増大させることを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮機の容量制御方法。
【請求項6】
圧縮機本体に被圧縮気体である空気を導入する吸入流路を開閉する吸入弁と,前記圧縮機本体の吐出側に設けた供給流路内の圧力変化に応じて前記吸入弁を開閉動作させる制御回路を備え,前記吸入弁を開いた状態で前記圧縮機本体を運転するロード運転と,前記吸入弁を閉じた状態で前記圧縮機本体を運転するアンロード運転間で運転状態を切り換えることにより消費側に供給する圧縮空気の圧力が所定の設定吐出圧力に近づくように制御する,圧縮機の容量制御装置10において,
吸入弁二次側の吸入流路と前記供給流路とを連通する真空緩和回路を設けると共に,該真空緩和回路に,該真空緩和回路を開閉するバキュームレリーフバルブを設け,
前記バキュームレリーフバルブを,前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力が,前記アンロード運転の状態における適正圧力として予め設定した所定の閾値に近付く及び/又は一致するように,前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力に対応して開閉動作するよう設定したことを特徴とする圧縮機の容量制御装置。
【請求項7】
前記バキュームレリーフバルブの前記開閉動作が,
前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力を前記閾値に近付ける及び/又は一致させるように行う開度調整を含むことを特徴とする請求項6記載の圧縮機の容量制御装置。
【請求項8】
前記アンロード運転の状態にある時,前記供給流路の圧縮空気を放気する放気回路を更に設けると共に,
前記閾値を,前記放気の完了により圧力が下げ止まった状態の前記供給流路を連通させた状態で前記アンロード運転を行った際の前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力に対応した値に設定したことを特徴とする請求項6又は7記載の圧縮機の容量制御装置。
【請求項9】
前記真空緩和回路を,前記供給流路に設けたレシーバタンクを介して前記供給流路に連通させたことを特徴とする請求項6又は7記載の圧縮機の容量制御装置。
【請求項10】
前記バキュームレリーフバルブが,作動圧室を前記吸入弁二次側の前記吸入流路に連通されて前記吸入弁二次側の吸入流路内の圧力を作動圧力として開閉動作する自動開閉弁である請求項6又は7記載の圧縮機の容量制御装置。
【請求項11】
前記吸入弁の弁箱に,前記バキュームレリーフバルブの弁箱を直接取り付けると共に,
前記バキュームレリーフバルブの前記作動圧室と出口を,前記吸入弁の弁箱の肉厚内に設けた流路を介して前記吸入弁二次側の吸入流路に連通させたことを特徴とする請求項10記載の圧縮機の容量制御装置。
【請求項12】
前記ロード運転時に前記吸入弁の閉弁受圧室に前記供給流路内の圧縮空気を導入する調圧回路を設けると共に,
該調圧回路に,前記供給流路内の圧力上昇に応じて開度を増大すると共に,前記供給流路内の圧力低下に応じて開度を減少させるレギュレータを設けたことを特徴とする請求項6又は7記載の圧縮機の容量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮機の容量制御方法及び容量制御装置に関し,より詳細には圧縮機本体に被圧縮気体である空気を導入する吸入流路を開閉する吸入弁と,該吸入弁の開閉動作を制御する制御回路を備えた容量制御装置において,前記吸入弁を閉じた状態で圧縮機本体を運転するアンロード運転時に前記吸入弁二次側の吸入流路内で生じる真空の緩和を可能とした容量制御方法及び容量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機には通常,圧縮機本体520の吸入流路540を開閉する吸入弁511と,該吸入弁511の開閉動作を制御するための制御回路512を備えた容量制御装置510が設けられている。
【0003】
図8に示す圧縮機500に設けられている容量制御装置510では,前述の制御回路512を圧力レギュレータ512aと,該圧力レギュレータ512aの入口とレシーバタンク532間を連通する流路512b,及び,圧力レギュレータ512aの出口と吸入弁511の閉弁受圧室間を連通する流路512cによって構成し,レシーバタンク532内の圧力が圧力レギュレータ512aの作動開始圧力以上に上昇すると,圧力レギュレータ512aが開弁し始めて吸入弁511の閉弁受圧室にレシーバタンク532内の圧縮空気の導入が開始されて吸入弁511を絞り又は閉じると共に,レシーバタンク532内の圧力が圧力レギュレータ512aの作動開始圧力未満に低下すると圧力レギュレータ512aが閉弁して吸入弁511の閉弁受圧室に対する圧縮空気の導入が停止して吸入弁511が全開となるように構成されている。
【0004】
これにより,消費側における圧縮空気の消費が停止する等してレシーバタンク532内の圧力が圧力レギュレータ512aを全開とする圧力(アンロード運転開始圧力)以上に上昇すると,吸入弁511を閉じて圧縮機本体による空気の吸入と圧縮空気の生成を停止するアンロード運転に移行すると共に,消費側における圧縮空気の消費が再開される等してレシーバタンク532内の圧力が圧力レギュレータ512aを全開とする圧力(アンロード運転開始圧力)未満に低下すると,吸入弁511を開き始めて圧縮機本体520による空気の吸入と圧縮空気の生成を開始するロード運転に移行する容量制御が行われ,消費側における圧縮空気の消費状況に応じた量の圧縮空気の生成を行うことで,消費側に安定した圧力の圧縮空気を供給することができるように構成されている。
【0005】
このような容量制御装置510を備えた圧縮機500において,アンロード運転時には吸入弁511によって吸入流路540を閉じた状態で圧縮機本体520の運転が行われることから,吸入弁二次側の吸入流路542内の真空の程度(真空度)が高くなる。
【0006】
このように吸入弁二次側の吸入流路542内の真空度が高まると,圧縮機本体520はロード運転時には発生しない振動や騒音を発生するようになることから,アンロード運転時に発生するこれらの振動や騒音を抑制すべく,吸入弁二次側の吸入流路542内の真空を緩和するための真空緩和回路を容量制御装置510に追加することも提案されている。
【0007】
このような真空緩和回路として,後掲の特許文献1は,
図8中に符号513で示す真空緩和回路を提案する。
【0008】
この真空緩和回路513は,圧力レギュレータ512aの二次側圧力を作動圧力として開閉するバルブ514と,該バルブ514の入口とレシーバタンク532間を連通する流路515,及び,前記バルブ514の出口と吸入弁二次側の吸入流路542間を連通する流路516を備えており,圧力レギュレータ512aが開弁すると,吸入弁511の閉弁受圧室に圧縮空気が導入されて吸入弁511が閉じたアンロード運転に移行すると共に,圧力レギュレータ512aの二次側の圧力によってバルブ514が流路515,516間を連通させて吸入弁二次側の吸入流路542をレシーバタンク532と連通させることで吸入弁二次側の吸入流路542の真空を緩和することができるように構成されている。
【0009】
また,後掲の特許文献2に記載の容量制御装置510は,
図9に示すように三方電磁弁514’,該三方電磁弁514’とレシーバタンク532間を連通する流路515,前記三方電磁弁514’と吸気弁二次側の吸入流路542間を連通する流路516によって構成された真空緩和回路513を備えており,吸入弁511を閉じてアンロード運転に移行することにより圧力スイッチVSが吸入弁二次側の吸入流路542内の圧力低下を検知した検知信号を出力すると,三方電磁弁514’が流路515と516を連通させて吸入弁二次側の吸入流路542をレシーバタンク532に連通させることで,吸入弁二次側の吸入流路542内の真空を緩和することができるように構成されている。
【0010】
なお,特許文献2の容量制御装置510には,前述の真空緩和回路513の他に,符号518で示すオートレリーフバルブが設けられており,アンロード運転中,オートレリーフバルブ518を開弁状態に保持してレシーバタンク532内の圧縮空気を大気放出することで,圧縮機本体520の背圧を低下させてアンロード運転中の動力の軽減を図ることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-101192号公報
【特許文献2】実公平5-17435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上で説明したように真空緩和回路513を備えた容量制御装置510では,アンロード運転時,吸入弁二次側の吸入流路542をレシーバタンク532と連通させることで,吸入弁二次側の吸入流路542内の真空を緩和してアンロード運転時に圧縮機本体520で生じる振動や騒音を抑制できるようになっている。
【0013】
しかしながら,吸入弁511で吸入流路540を閉塞した状態で圧縮機本体520を運転するアンロード運転は,圧縮機本体520が空気の吸入も圧縮も行わない無負荷の運転状態となることで,消費動力の極めて低い運転状態となるが,前述したようにアンロード運転時に吸入弁二次側の吸入流路542に対しレシーバタンク532からの圧縮空気を導入すると,圧縮機本体520はレシーバタンク532から導入された空気を圧縮することとなる。
【0014】
その結果,圧縮機本体520にはアンロード運転中も負荷がかかることとなり消費動力が増大することから,アンロード運転時に行う吸入弁二次側の吸入流路542内の真空の緩和は,振動や騒音の抑制と消費動力の増大抑制を同時に達成することができる圧力(適正圧力)となるように行うことが望ましく,適正圧力を超えて更に高い圧力(低真空)となるまで過剰に真空の緩和を行う必要がないだけでなく,このような過度の真空の緩和は圧縮機の消費動力を増大させるものである点でむしろ好ましくない。
【0015】
なお,吸入弁二次側の吸入流路542に対する過剰な真空緩和は,内部圧力が高い状態のレシーバタンク532を吸入弁二次側の吸入流路542に連通させることにより生じるところ,前掲の特許文献2として紹介した容量制御装置510(
図9参照)には真空緩和回路513の他に,アンロード運転時にレシーバタンク532内の圧縮空気を放気(パージ)するオートレリーフバルブ518が設けられている。
【0016】
そのため,アンロード運転時,レシーバタンク532内の圧力は圧縮空気の放気(パージ)によって低下するため,放気(パージ)が完了してレシーバタンク532内の圧力が下げ止まった状態では,レシーバタンク532を吸入弁二次側の吸入流路542に連通させたとしても吸入弁二次側の吸入流路542の真空緩和が過剰に行われることはない。
【0017】
しかしながら,オートレリーフバルブ518による放気の完了迄にはある程度の時間を要することから,アンロード運転に移行してから放気が完了するまでの間,レシーバタンク532内は高い圧力状態にあるため吸入弁二次側の吸入流路542に対する過剰な真空緩和が行われることで余分な動力の消費が行われることから依然として改善の余地がある。
【0018】
なお,圧力が高い状態のレシーバタンク532に連通した場合に吸入弁二次側の吸入流路542の真空が過剰に緩和されることがないようにする方法としては,真空緩和回路513中に絞りを設けて吸入弁二次側の吸入流路542に流入する空気量を制限することも考えられる。
【0019】
しかしながら,アンロード運転を開始するときのレシーバタンク532内の圧力は圧縮機500の仕様毎に異なると共に,圧縮機本体520が吸入する空気量も,圧縮機本体520の仕様や,アンロード運転時の回転速度が変化すれば変化することから,真空緩和回路513に絞りを設けて吸入弁二次側の吸入流路542内の圧力を適正圧力に近付けようとすると,真空緩和回路513で使用する絞りの設計を,圧縮機の仕様毎の専用設計とする必要があり,コスト高となる。
【0020】
そのため,仕様の異なる圧縮機に対し共通して適用可能な,汎用性を持った真空緩和回路を備えた容量制御装置の要望は高い。
【0021】
そこで,本発明は上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,比較的簡単な構造でありながら,吸入弁二次側の吸入流路の真空が必要以上に緩和されないようにすることで,アンロード運転時の振動や騒音の抑制と,消費動力の増加の抑制を両立させることができると共に,仕様の異なる圧縮機に適用可能な汎用性を備えた真空緩和を実行する容量制御方法及び容量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0023】
上記目的を達成するために,本発明の圧縮機の容量制御方法は,
圧縮機本体20に被圧縮気体である空気を導入する吸入流路40を,前記圧縮機本体20の吐出側に設けた供給流路30内の圧力変化に応じて吸入弁11により開閉して,前記吸入弁11が開いた状態で前記圧縮機本体20を運転するロード運転と,前記吸入弁11が閉じた状態で前記圧縮機本体20を運転するアンロード運転間で運転状態を切り換えることにより,消費側に供給する圧縮空気の圧力が所定の設定吐出圧力に近づくように制御する圧縮機の容量制御方法において,
吸入弁二次側の吸入流路42と前記供給流路30とを連通する真空緩和回路13を設けると共に,該真空緩和回路13に,該真空緩和回路13を開閉するバキュームレリーフバルブ14を設け,
前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を,前記アンロード運転の状態における適正圧力として予め設定した所定の閾値に近付ける及び/又は一致させるように,前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力変化に対応して前記バキュームレリーフバルブ14を開閉動作させることを特徴とする(請求項1)。
【0024】
前記バキュームレリーフバルブ14の前記開閉動作が開度調整を含み,該開度調整によって前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を前記閾値に近付ける及び/又は一致させることが好ましい(請求項2)。
【0025】
前記アンロード運転の状態にある時,前記供給流路30内の圧縮空気を放気すると共に,
前記閾値を,前記放気の完了により圧力が下げ止まった状態の前記供給流路30を連通させた状態で前記アンロード運転を行った際の前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に対応する値に設定するものとしても良い(請求項3)。
【0026】
前記真空緩和回路13は,前記供給流路30に設けたレシーバタンク32を介して前記供給流路30に連通することができる(請求項4)。
【0027】
前記ロード運転時に前記吸入弁11の閉弁受圧室に前記供給流路30内の圧縮空気を導入する調圧回路17を設け,
該調圧回路17に設けたレギュレータ171によって前記吸入弁11の前記閉弁受圧室116に導入する圧縮空気の圧力を変化させて,前記供給流路30内の圧力上昇に応じて前記吸入弁11の開度を減少させ,前記供給流路30内の圧力低下に応じて前記吸入弁の開度を増大させるものとしても良い(請求項5)。
【0028】
また,本発明の容量制御装置10は,
圧縮機本体20に被圧縮気体である空気を導入する吸入流路40を開閉する吸入弁11と,前記圧縮機本体20の吐出側に設けた供給流路30内の圧力変化に応じて前記吸入弁11を開閉動作させる制御回路12を備え,前記吸入弁11を開いた状態で前記圧縮機本体20を運転するロード運転と,前記吸入弁11を閉じた状態で前記圧縮機本体20を運転するアンロード運転間で運転状態を切り換えることにより消費側に供給する圧縮空気の圧力が所定の設定吐出圧力に近づくように制御する,圧縮機の容量制御装置10において,
吸入弁二次側の吸入流路42と前記供給流路30とを連通する真空緩和回路13を設けると共に,該真空緩和回路13に,該真空緩和回路13を開閉するバキュームレリーフバルブ14を設け,
前記バキュームレリーフバルブ14を,前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力が,前記アンロード運転の状態における適正圧力として予め設定した所定の閾値に近付く及び/又は一致するように,前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に対応して開閉動作するよう設定したことを特徴とする(請求項6)。
【0029】
上記構成の容量制御装置10において,前記バキュームレリーフバルブ14の前記開閉動作が,
前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を前記閾値に近付ける及び/又は一致させるように行う開度調整を含むものとすることができる(請求項7)。
【0030】
上記容量制御装置10には,前記アンロード運転の状態にある時,前記供給流路30の圧縮空気を放気する放気回路18を更に設けるものとしても良く,この場合,前記閾値を,前記放気の完了により圧力が下げ止まった状態の前記供給流路30を連通させた状態で前記アンロード運転を行った際の前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に対応した値に設定するものとしても良い(請求項8)。
【0031】
前記真空緩和回路13は,前記供給流路30に設けたレシーバタンク32を介して前記供給流路30に連通させるものとしても良い(請求項9)。
【0032】
前記バキュームレリーフバルブ14は,作動圧室146aを前記吸入弁二次側の前記吸入流路42に連通されて前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を作動圧力として開閉動作する自動開閉弁とするものとしても良い(請求項10)。
【0033】
前記バキュームレリーフバルブ14の弁箱を,前記吸入弁11の弁箱に直接取り付けるものとすることができ,この構成において,前記バキュームレリーフバルブ14の前記作動圧室146aと出口142を,前記吸入弁11の弁箱の肉厚内に設けた流路147,148を介して前記吸入弁二次側の吸入流路42に連通させるものとしても良い(請求項11)。
【0034】
本発明の容量制御装置には,更に,前記ロード運転時に前記吸入弁11の閉弁受圧室に前記供給流路内の圧縮空気を導入する調圧回路17を設け,該調圧回路17に,前記供給流路30内の圧力上昇に応じて開度を増大すると共に,前記供給流路30内の圧力低下に応じて開度を減少させるレギュレータ171を設けるものとしても良い(請求項12)。
【発明の効果】
【0035】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の容量制御方法及び容量制御装置10では以下の顕著な効果を得ることができた。
【0036】
本発明の容量制御方法では,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を閾値(適正圧力)に近付ける及び/又は一致させるように吸入弁二次側の吸入流路42に対する圧縮空気の導入量をバキュームレリーフバルブ14が制限することから,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力が閾値(適正圧力)を大幅に超えて過剰に緩和されることを防止することができた。
【0037】
その結果,アンロード運転中に圧縮機本体20に不必要な負荷がかかることを防止でき,アンロード運転中の消費動力を減少させることができた。
【0038】
しかも,本発明の容量制御装置10は,如何なる仕様の圧縮機に適用した場合であっても,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を前述した閾値の圧力(適正圧力)近付ける及び/又は一致させるように動作することで,異なる機種の圧縮機に対して適用可能な汎用性を有することから,絞りによって吸入弁二次側の吸入流路に導入される圧縮空気の量を制限する場合のように機種毎の専用設計とする必要がない。
【0039】
吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を閾値に近付ける及び/又は一致させるバキュームレリーフバルブ14の動作は,開位置,閉位置の二位置間の動作によるものの他,開度調整を含むものとすることができ,これにより吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力変化に応じてバキュームレリーフバルブ14を適切な開度とすることで,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力をより閾値(適正圧力)に近い圧力に近付けることができ,又は,一致せることができた。
【0040】
アンロード運転時,前記供給流路30の圧縮空気を放気すると共に,前記閾値を,前記放気の完了により圧力が下げ止まった状態の前記供給流路30を連通させた状態で前記アンロード運転を行った際の前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に対応する値に設定した場合には,アンロード運転時に圧縮機本体20の背圧を低下させてより一層の消費動力の低減を図ることができただけでなく,アンロード運転の開始直後の供給流路30(実施形態においてレシーバタンク32)内の圧力が高い状態から,放気が完了して供給流路30(レシーバタンク32)内の圧力が下げ止まって安定した状態となった後まで,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を略一定の圧力に維持することができた。
【0041】
なお,前記バキュームレリーフバルブ14を,該バキュームレリーフバルブ14の作動圧室146aを前記吸入弁二次側の前記吸入流路42と連通させることにより前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を作動圧力として開閉動作する機械式の自動開閉弁とした構成では,前述したバキュームレリーフバルブ14を設けるだけで電気的な制御等を行うことなく吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を閾値の圧力(適正圧力)に近付ける制御を行うことができた。
【0042】
また,前記吸入弁11の弁箱に,前記バキュームレリーフバルブ14の弁箱を直接取り付けると共に,前記バキュームレリーフバルブ14の前記作動圧室146aと出口142を,前記吸入弁11の弁箱の肉厚内に形成した流路147,148を介して前記吸入弁二次側の吸入流路42に連通させた構成では,バキュームレリーフバルブ14の配置スペースを省略できると共に,吸入弁11とバキュームレリーフバルブ14間の配管スペースが不要となり,レイアウトの自由度を増すことができた。
【0043】
更に,ロード運転時に前記吸入弁11の閉弁受圧室116に前記供給流路30内の圧縮空気を導入する調圧回路17を設けると共に,該調圧回路17に,前記調圧回路17を開閉すると共に前記供給流路30内の圧力上昇に応じて開度を増大し,前記供給流路30内の圧力低下に応じて開度を減少させるレギュレータ171を設けた構成では,アンロード運転時における吸入弁11の開度を供給流路30内の圧力に応じてリニアに変化させることができ,変化の少ない安定した圧力の圧縮空気を消費側に供給することができると共に,本発明の構成ではバキュームレリーフバルブ14を吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に基づいて開閉制御することから,このような調圧回路17を設けた場合であっても,機種毎にバキュームレリーフバルブ14の設計を行う必要がなく汎用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の容量制御装置を備えた圧縮機の回路図(実施例1)。
【
図2】吸入弁及びバキュームレリーフバルブの断面図。
【
図3】
図2のバキュームレリーフバルブ部分(破線で囲った部分)の拡大図(閉弁状態)。
【
図4】
図2のバキュームレリーフバルブ部分(破線で囲った部分)の拡大図(開弁状態)。
【
図5】放気(パージ)を行わない場合のアンロード運転時における各部の変化を示したタイムチャートであり,(A)は本発明,(B)は従来技術(特許文献1に対応)。
【
図6】放気(パージ)を行う場合のアンロード運転時における各部の変化を示したタイムチャートであり,(A)は本発明,(B)は従来技術(特許文献2に対応)。
【
図7】本発明の別の容量制御装置を備えた圧縮機の回路図(実施例2)。
【
図8】従来の容量制御装置を備えた圧縮機の回路図(特許文献1に対応)。
【
図9】従来の容量制御装置を備えた圧縮機の回路図(特許文献2に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に,本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0046】
〔圧縮機の全体構成〕
図1に,本発明の容量制御装置10を備えた圧縮機1の全体構成を示す。
【0047】
図1において,符号20は圧縮機本体であり,本実施形態では,圧縮機本体20として油冷式のスクリュ圧縮機本体を採用する。
【0048】
この油冷式のスクリュ圧縮機本体20は,吸入した空気を図示せざる給油口を介して給油された潤滑油と共に圧縮することで,該潤滑油によって圧縮作用空間の潤滑,密封,及び冷却を行うもので,この構成により圧縮機本体20は潤滑油との気液混合流体として圧縮空気を吐出する。
【0049】
このように,本実施形態では圧縮機本体20として油冷式のスクリュ圧縮機本体を採用したことで,潤滑油との気液混合流体として吐出された圧縮空気を気液分離して潤滑油が除去された後の圧縮空気を消費側に対し供給することができるようにすべく,圧縮機本体20から消費側に至る供給流路30には,圧縮機本体20が吐出流路31を介して吐出した圧縮空気を導入して気液分離するためのレシーバタンク32が設けられている。
【0050】
そして,レシーバタンク32内で気液分離によって潤滑油が分離された圧縮空気は,レシーバタンク32に連通する消費流路33を介して消費側に供給することができるように構成されている。
【0051】
なお,
図1に示す実施形態では圧縮機本体20として油冷式スクリュ圧縮機本体を採用したことに伴い供給流路30にレシーバタンク32を設ける構成を採用しているが,圧縮機本体20が例えば圧縮作用空間に対する注油を必要としないオイルフリースクリュ圧縮機のように油分を含まない圧縮空気を吐出するものである場合,気液分離のためのレシーバタンク32を供給流路30に設ける必要はなく,このようなレシーバタンク32を備えていない圧縮機1に対しても本発明の容量制御装置10を採用可能である。
【0052】
圧縮機本体20には,圧縮機本体20に被圧縮気体である空気を導入するための吸入流路40が連通されていると共に,圧縮機本体20とは反対側の吸入流路40の端部には,エアフィルタ43が取り付けられており,空気中に存在する粉塵等の異物をエアフィルタ43によって除去した後の空気を圧縮機本体20に導入することができるように構成されている。
【0053】
〔容量制御装置の基本構成〕
以上のように構成された圧縮機1には,吸入弁11と,該吸入弁11の開閉動作を制御する制御回路12を備えた容量制御装置10が設けられている。
【0054】
このうちの吸入弁11は,吸入流路40を開閉することで,圧縮機本体20の吸気を制御する。
【0055】
【0056】
図2に示す例では,前述の吸入弁11と,後述の真空緩和回路13に設けるバキュームレリーフバルブ14を一体的に構成したものであり,
図2中,破線で囲った部分がバキュームレリーフバルブ14の部分であり,その他の部分が前述した吸入弁11の部分である。
【0057】
図2に示す吸入弁11は,逆止弁としての機能を備えたもので,圧縮機本体20の停止等によって圧縮機本体20で圧縮中であった圧縮空気が潤滑油と共にエアフィルタ43側に向かって吸入流路40内を逆流しようとした場合,これを防止してエアフィルタ43が潤滑油により汚染されることを防止できるようにしている。
【0058】
この吸入弁11の上側部分は,シリンダ室111と,該シリンダ室111内を紙面上下方向に進退移動するピストン112が設けられていると共に,前記ピストン112の中央に上端側が取り付けられて前記ピストン112と共に上下方向に移動する弁軸113を備えている。
【0059】
この弁軸113は,シリンダ室111の下端壁を貫通してシリンダ室111の下方に設けた弁座114の中心を通り更に下方に突設されていると共に,この弁軸113の下端側に取り付けた弁体115を下方より弁座114に着座させることにより,弁座114によって囲まれた内側に形成されている連通路を閉じることができるように構成されている。
【0060】
前述のピストン112とシリンダ室111の下端壁間には,吸入弁11の閉弁受圧室116が形成されており,閉弁受圧室116に対し圧縮空気の導入がされていない状態では,
図2に示すようにピストン112はピストン用スプリング117の付勢力によってシリンダ室111内の下端位置に押し下げられている。
【0061】
このとき,弁軸113の下端側に取り付けられた弁体115は,弁体用スプリング118により上方に押し上げられていて下側より弁座114に着座した状態となっていることで流体の逆流が防止されているが,弁体用スプリング118は比較的弱い力で弁体115を弁座114に着座させているため,圧縮機本体20が運転を開始して圧縮機本体20が空気の吸入を開始して吸入弁二次側の吸入流路42内が真空になると,弁体115は弁体用スプリング118の付勢力に抗して弁座114より離間することで圧縮機本体20に対して空気を導入することができるようになっており,この状態において吸入弁11は開弁状態となっている。
【0062】
一方,ピストン112とシリンダ室111の下端壁111a間に形成された閉弁受圧室116内にレシーバタンク32からの圧縮空気を導入すると,ピストン用スプリング117の付勢力に抗してピストン112がシリンダ室111内を上方に移動する。
【0063】
このピストン112の移動により,弁軸113も上昇して,弁軸113の下端に取り付けたストッパ119が弁体115の下端部に当接して弁体115を弁座114に強く押し付ける。
【0064】
これにより,圧縮機本体20の運転により吸入弁11二次側の吸入流路42内が真空となっても,弁体115は弁座114から離れることができず,吸入弁11は閉弁状態となる。
【0065】
図1に戻り,前述の制御回路12は,制御弁121と,該制御弁121と吸入弁11の閉弁受圧室116間を連通する流路122,及び,前記制御弁121と供給流路30(図示の例では供給流路30に設けたレシーバタンク32)間を連通する流路123を備え,制御弁121によって流路122と123間を連通又は遮断することで,吸入弁11の閉弁受圧室116に対し作動圧力としての供給流路30内の圧縮空気の導入の開始及び停止を制御することができるように構成されている。
【0066】
なお,供給流路30に対する制御回路12の連通は,圧縮機本体20から消費側に至る供給流路30のいずれの位置において行うものとしても良いが,供給流路30が逆止弁33aを備えている場合,逆止弁33aの一次側において連通し,本実施形態では供給流路30に設けたレシーバタンク32に対し連通させている。
【0067】
また,図示の実施形態では前述の制御弁121を電磁弁によって構成し,この電磁制御弁121の動作を,例えばマイクロコントローラ等の電子制御装置(図示せず)によって制御している。
【0068】
この電子制御装置(図示せず)による電磁制御弁121の制御は,例えばレシーバタンク32内の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)の検出信号と,逆止弁33aの二次側における消費流路33内の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)の検出信号に基づいて,電子制御装置(図示せず)にレシーバタンク32内の圧力と消費流路33内の圧力を監視させ,レシーバタンク32内の圧力が所定のアンロード運転開始圧力以上となったときに電子制御装置(図示せず)が電磁制御弁121を開位置として流路122と123を連通させて吸入弁11を閉じると共に,消費流路33内の圧力が所定のロード運転復帰圧力以下の圧力に低下したときに電子制御装置(図示せず)が電子制御弁121を閉位置として流路122と123間を遮断することで吸入弁11を開くようにすることができる。
【0069】
なお,図示の実施形態では制御回路12に設ける制御弁121を電磁制御弁(電磁弁)とした構成例を示したが,この電磁制御弁121に代えて
図8及び
図9を参照して説明した従来の容量制御装置510の制御回路512の構成と同様,機械式の圧力レギュレータ512aによって吸入弁11の閉弁受圧室116に対する圧縮空気(作動圧力)の導入の開始と停止を制御するようにしても良い。
【0070】
また,
図1中の符号18は放気回路であり,電磁制御弁121が開弁したアンロード運転時,レシーバタンク32内の圧縮空気を,絞り18aを介して大気放出する。
【0071】
これにより圧縮機本体20の背圧を低下させてアンロード運転時に圧縮機本体20の運転で消費される動力を低く抑えることができるようにしている。
【0072】
なお,この放気回路18は,本発明の容量制御装置10において必須の構成ではなく,必要に応じて設けるものとすれば良い。
【0073】
また,
図1に示す実施形態では放気回路18中に絞り18aを設ける構成を示したが,この絞り18aは,放気回路の管径自体を細径とすることによって実現するものとしても良く,図示の構成に限定されない。
【0074】
更に図示の実施形態では,放気回路18を吸入弁一次側の吸入流路41に連通させることにより,エアフィルタ43を介してレシーバタンク32内の圧縮空気を大気放出することでエアフィルタ43に放気音を低減させるためのサイレンサの役割を持たせているが,この構成に代えて放気回路18を吸入流路41に連通させることなく,図示せざるサイレンサ等を介して直接大気開放するものとしても良い。
【0075】
以上で説明した基本構造を備えた容量制御装置10により,消費側における圧縮空気の消費が停止する等してレシーバタンク32内の圧力が所定のアンロード運転開始圧力以上に上昇すると,図示せざる電子制御装置が電磁制御弁121を開位置として吸入弁11の閉弁受圧室116にレシーバタンク32内の圧縮空気を作動圧として導入して吸入弁11を閉じてアンロード運転に移行すると共に,レシーバタンク32内の圧縮空気を,放気回路18を介して徐々に大気放出(パージ)して圧縮機本体20の背圧を下げることでアンロード運転時における圧縮機本体20の運転に必要な動力の低減が図られる。
【0076】
一方,逆止弁33a二次側の消費流路33内の圧力は,レシーバタンク32内の圧縮空気の放出(パージ)によってもアンロード運転開始圧力以上の圧力に保持されているが,消費側における圧縮空気の消費が再開される等して逆止弁33a二次側の消費流路33内の圧力が所定のロード運転復帰圧力以下に低下すると,図示せざる電子制御装置が電磁制御弁121を閉位置とすることによりレシーバタンク32内の圧縮空気の大気放出(パージ)が停止されると共に,吸入弁11の閉弁受圧室116に対する作動圧力の導入が停止して吸入弁11が開いてロード運転に復帰するように構成されている。
【0077】
〔真空緩和回路〕
本発明の容量制御装置10は,上記で説明した容量制御装置10の基本構造に加え,更に,アンロード運転時に吸入弁二次側の吸入流路42内に生じる真空を緩和するための真空緩和回路13を備えている。
【0078】
この真空緩和回路13には,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力が所定の閾値に近付く及び/又は一致するように,前記吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力変化に対応して開閉動作するバキュームレリーフバルブ14が設けられており,該バキュームレリーフバルブ14の入口141を,逆止弁33aの一次側における供給流路30,図示の実施形態ではレシーバタンク32に連通すると共に,バキュームレリーフバルブ14の出口142を吸入弁二次側の吸入流路42に連通することにより構成されている。
【0079】
このバキュームレリーフバルブ14の開閉動作は,バキュームレリーフバルブ14を例えば開位置と閉位置の二位置間で択一的に切り替わる構成として,アンロード運転の状態にあるときに吸入弁11二次側の吸入流路42内の圧力が前述の閾値以下の所定の圧力に低下すると,バキュームレリーフバルブ14が開いてレシーバタンク32内の圧縮空気が吸入弁二次側の吸入流路42内に導入され,この圧縮空気の導入によって吸入弁11二次側の吸入流路42内の圧力が前述した閾値を超える所定の圧力に上昇すると,バキュームレリーフバルブ14が閉じて吸入弁11二次側の吸入流路42に対する圧縮空気の導入を停止するようにしても良く,この構成では,吸入弁11二次側の吸入流路42内の圧力は閾値を中心に若干上下する変化を示すものの,この閾値付近の圧力に近付けることができる。
【0080】
バキュームレリーフバルブ14を前述したように開位置と閉位置間の二位置間で切り換え可能とする構成に代えて,開度調整可能に構成し,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力低下に応じての開度を増大とせると共に,吸入弁二次側の吸入流路内の圧力上昇に応じての開度を減少させるように構成するものとしても良く,この場合には,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力の振れをより小さくして閾値(適正圧力)により近い値に近付けることができ,又は一致させることが可能である。
【0081】
このように,本発明の構成ではバキュームレリーフバルブ14の開閉動作や開度変化によって吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を前述した閾値に近付けるために必要な量の圧縮空気のみの導入が行われることから,前述の「閾値」を,アンロード運転時における振動や騒音の発生抑止と消費動力の増大抑止を両立し得る圧力(適正圧力)に設定することで,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力が高真空となることにより生じる異常振動や騒音の発生を防止しつつ,アンロード運転時に圧縮機本体20の消費動力の増大を抑制することが可能である。
【0082】
なお,容量制御装置10がアンロード運転時にレシーバタンク32内の圧縮空気を放気(パージ)する放気回路18を備えている場合,前述の閾値を,放気(パージ)の完了により圧力が下げ止まった状態のレシーバタンク32を連通させた状態でアンロード運転を行った際の吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に対応した値に設定することで,アンロード運転の開始直後からレシーバタンク32内の放気が完了した後まで,アンロード運転中,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を前述した閾値の圧力で略一定に維持することができる。
【0083】
なお,真空緩和回路13に設ける前述のバキュームレリーフバルブ14の構成は特に限定されず,例えばこれを電磁弁や電空弁によって形成すると共に,吸入弁11二次側の吸入流路42内の圧力を検出する圧力センサからの検出信号に基づいてバキュームレリーフバルブ14の開閉や開度の制御を行うものとしても良い。
【0084】
本実施形態にあっては,前述のバキュームレリーフバルブ14を,該バキュームレリーフバルブ14に設けた作動圧室146aに作動圧力を導入することにより開閉動作する機械式の自動開閉弁として構成し,この自動開閉弁の作動圧室146aを吸入弁11二次側の吸入流路42に連通することで,吸入弁11二次側の吸入流路42内の圧力変化によって自動で開閉及び開度調整が行われるように構成した。
【0085】
このようなバキュームレリーフバルブ14の構成例を
図2~4に示す。
【0086】
なお,
図1には真空緩和回路13に設けたバキュームレリーフバルブ14と,吸入流路40を開閉する吸入弁11を,それぞれ独立した構成として示しているが,真空緩和回路13に設けるバキュームレリーフバルブ14は,
図2に示すように,吸入弁11と弁箱の一部分を共用して,吸入弁11と一体的に構成された構造とするものとしても良い。
【0087】
なお,
図2に示した構成において,図中,破線で囲った部分が真空緩和回路13に設けるバキュームレリーフバルブ14の構成部分であり,その他の部分は吸入弁11の構成部分である。
【0088】
図2に記載のバキュームレリーフバルブ14の構成において,レシーバタンク32に連通される入口141と,吸入弁二次側の吸入流路42に連通される出口142間には弁座143が設けられており,この弁座143に,紙面左側から弁体144が着座するように構成されている。
【0089】
この弁体144は,弁体用スプリング144aによって弁座143に着座する方向に常時付勢されている。
【0090】
この弁体144には,弁座143の中央に形成された流路を貫通して紙面右側に突出する弁軸144bが設けられており,この弁軸144bに先端が突合されたピストン145と,このピストン145を進退移動可能に収容したシリンダ室146が前述した弁軸144bに対し紙面右側に設けられており,シリンダ室146のうちピストン145によって仕切られた部分よりも紙面左側の部分がバキュームレリーフバルブ14を開閉動作させるための作動圧力を導入する作動圧室146aとなっており,この作動圧室146aを吸入弁11の弁箱の肉厚内に形成された流路147を介して吸入弁11二次側の吸入流路42に連通させている。
【0091】
前述のピストン145は,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力が高く(真空度が低く),作動圧室146a内の圧力が比較的高い(真空度が低い)状態では,
図2及び
図3に示すようにピストン用スプリング145aによって付勢されて紙面右側に移動した状態となっており,弁体144が弁体用スプリング144aの付勢力によって弁座143に着座した状態を維持しているが,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力が所定の閾値(適正圧力)以下に低下して作動圧室146a内の圧力が低下する(真空度が高まる)と,ピストン145がピストン用スプリング145aの付勢力に抗して紙面左側に移動するように構成されており,このピストン145の紙面左方向への移動によって
図4に示すようにピストン145の先端が弁体144の弁軸144bを紙面左側に押し込むことで,弁体144が弁座143より離間を開始し,入口141より導入されたレシーバタンク32からの圧縮空気が弁体144と弁座143間に生じた隙間δを介して出口142側の流路148に入り,出口142を介して吸入弁11二次側の吸入流路42に導入される。
【0092】
一方,このようにして吸入弁11二次側の吸入流路42に圧縮空気が導入されることにより吸入弁11二次側の吸入流路42内の圧力が閾値(適正圧力)を超えて上昇すると,作動圧室146a内の圧力が高まることで弁軸144bを紙面左側に押し込んでいたピストン145がピストン用スプリング145aの付勢力によって紙面右側に移動することで弁体144が弁座143に着座して,吸入弁11二次側の吸入流路42に対する圧縮空気の導入が停止する。
【0093】
なお,
図2~
図4に示したバキュームレリーフバルブ14では,前述した構成より,作動圧室146aに連通された吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力が閾値以下の所定の圧力に低下すると開弁し始めて更なる圧力低下に伴い開度が増大すると共に,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力上昇に伴い開度が減少して前述した閾値を超える所定の圧力で閉弁するように構成されている。
【0094】
〔作用等〕
(1)アンロード運転中に放気(パージ)を行う場合
図1を参照して説明した圧縮機1の容量制御装置10には放気回路18が設けられているが,前述したように本発明の容量制御装置10において放気回路18は必須の構成ではないことから,以下に
図5を参照して説明する動作説明ではアンロード運転中の放気(パージ)を行わない場合の動作を説明し,アンロード運転中の放気(パージ)を行う構成については後に
図6を参照して説明する。
【0095】
図5(A)のタイムチャートに示すように,消費側における圧縮空気の消費が停止する等してレシーバタンク32内の圧力がアンロード運転開始圧力以上に上昇すると,電磁制御弁121が開弁して吸入弁11の閉弁受圧室116にレシーバタンク32内の圧縮空気が導入されて吸入弁11が閉じてアンロード運転に移行する。
【0096】
吸入弁11が閉じてアンロード運転に移行することで,吸入弁二次側の吸入流路42内の真空度が高まり閾値以下の所定の圧力になると,真空緩和回路13に設けたバキュームレリーフバルブ14が吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に応じた開度で開いてレシーバタンク32内の圧縮空気が吸入弁二次側の吸入流路42内に導入される。
【0097】
アンロード運転中,バキュームレリーフバルブ14は吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に応じた開度となるように開度調整され,これにより,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力は,閾値の圧力に近づくように及び/又は一致するように制御される。
【0098】
なお,
図5(A)では,バキュームレリーフバルブ14として
図2~
図4を参照して説明したように吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力変化に応じて開度調整を伴う開閉動作を行う構成のものを採用し,これにより吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を閾値の圧力に近付け及び/又は一致させることができるようにした構成例を示したが,バキュームレリーフバルブ14の構成は,このような構成のものに限定されず,例えば電磁開閉弁のように開位置又は閉位置の二位置間を選択的に切り換え動作するものとしても良い。
【0099】
なお,
図5(A)を参照して説明したようにバキュームレリーフバルブ14として吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力変化に応じて開度調整を行う構成のものを採用した場合,バキュームレリーフバルブ14が一旦開弁すると,アンロード運転中,バキュームレリーフバルフ14は全開及び全閉となることなく開度調整のみが行われることとなる場合があるが,本発明の容量制御方法におけるバキュームレリーフバルブ14の「開閉動作」には,このようにアンロード運転中に全開及び全閉とはならない「開度調整」も含み得る。
【0100】
このように本発明の容量制御装置10では,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に応じてバキュームレリーフバルブ14が吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を前述した閾値に近付ける及び/又は一致させるように開度を制御するため,容量制御装置10が放気回路18を備えておらず,
図5(A)に示したようにアンロード運転中もレシーバタンク32が高い圧力に維持されている場合であっても吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を適正圧力である閾値に近付ける及び/又は一致させることができる。
【0101】
一方,先に特許文献1として紹介した従来の容量制御装置510の構成(
図8参照)では,アンロード運転中,吸入弁511二次側の吸入流路542はレシーバタンク532と連通された状態に保持されているため,吸入弁二次側の吸入流路542に対しレシーバタンク532からの圧縮空気が継続して導入される。
【0102】
特許文献1の回路構成中に設けられていてオートレリーフバルブ519は圧縮機500の停止時にレシーバタンク532内の圧縮空気を放気するものであり(特許文献1[0025]),アンロード運転時にレシーバタンク532内の圧縮空気の放気は行わないことから,レシーバタンク532内の圧力はアンロード運転への移行後も高い圧力に維持される。
【0103】
その結果,特許文献1の回路構成では,真空緩和回路513中に専用に設計された絞りを設ける等して吸入弁511の二次側の吸入流路542に導入される圧縮空気量を適切に制限した場合を除き,
図5(B)のタイムチャートに示すように,アンロード運転中,吸入弁二次側の吸入流路542内はレシーバタンク532からの圧縮空気の導入によって適正圧力に対し大幅に高い圧力に維持され続けることとなる。
【0104】
その結果,圧縮機本体520はアンロード運転中,適正圧力との差分の圧力に対応する多量の空気を圧縮していることとなり,その分,アンロード運転中の圧縮機本体520の運転で消費される動力が増大する。
【0105】
具体的には,
図5(B)中にハッチングで示した部分の動力が,本発明の容量制御を行う場合に比較して余分に消費されていることとなる。
【0106】
(2)アンロード運転中に放気(パージ)を行う場合
図5(A),(B)を参照した説明は,アンロード運転中にレシーバタンク内の圧縮空気の放気(パージ)を行わない場合,従って,アンロード運転への移行後もレシーバタンク32内が高い圧力を維持している場合を想定して説明したものであった。
【0107】
これに対し,容量制御装置10にアンロード運転中にレシーバタンク内の圧縮空気を放気する構成を備える場合の動作説明を
図6(A),(B)を参照して説明する。
【0108】
本発明の容量制御装置10では,アンロード運転中にレシーバタンク32内の圧縮空気を放気する構成を採用した場合においても,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力が閾値(適正圧力)に近付ける及び/又は一致させるものである点は
図5(A)を参照して説明した放気回路18を設けていない容量制御装置10と同様である。
【0109】
なお,
図6(A)を参照して説明する以下の実施形態においても,バキュームレリーフバルブ14が
図5(A)を参照して説明したと同様,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力変化に応じて開度が変化する構成のものを採用する場合を例に挙げて説明するが,この構成に換えて,電磁開閉弁のように,開位置又は閉位置の二位置間で切り換え可能な構成のバキュームレリーフバルブ14を採用し,バキュームレリーフバルブ14の開閉動作によって吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を閾値付近の圧力に近付けるように制御するものとしても良い。
【0110】
吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力変化に応じて開度を変化させる構成のバキュームレリーフバルブ14を採用した本実施形態において,吸入弁11が閉じてアンロード運転に移行することで,吸入弁二次側の吸入流路42内の真空度が高まり閾値以下の所定の圧力になると,真空緩和回路13に設けたバキュームレリーフバルブ14が吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に対応した開度で開弁して,レシーバタンク32内の圧縮空気が吸入弁二次側の吸入流路42内に導入される。
【0111】
図6(A)に示すように,バキュームレリーフバルブ14は吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力に対応した開度で開弁することにより,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を閾値の圧力に近付ける及び/又は一致させることができる。
【0112】
なお,放気回路18を備えた容量制御装置10では,アンロード運転時,放気回路18による放気(パージ)によりレシーバタンク32内の圧力が経時と共に低下することから,
図6(A)に示すようバキュームレリーフバルブ14は吸入弁二次側の吸入流路内42の圧力を閾値の圧力に近付ける及び/又は一致させるべく,経時と共に開度を増大して放気が完了してレシーバタンク32の圧力が下げ止まると全開となり,バキュームレリーフバルブ14はロード運転に復帰するまで全開の状態に維持される。
【0113】
一方,前掲の特許文献2として紹介した従来技術(
図9参照)のように,アンロード運転中,吸入弁二次側の吸入流路542をレシーバタンク532に連通させた状態に維持する構成であっても,アンロード運転時にレシーバタンク532内の圧縮空気の放気を行う構成では,
図6(B)に示すようにレシーバタンク532内の圧力が下げ止まった後には,吸入弁二次側の吸入流路542内に導入される空気量も最小となって適正圧力での真空緩和が行われることとなる。
【0114】
しかしながら,レシーバタンク532内の圧縮空気の放気を開始してからレシーバタンク532内の圧力が下げ止まった状態で安定するまでにはある程度の時間がかかることから,この間は,依然として吸入弁二次側の吸入流路542は高圧状態のレシーバタンク532と連通されることとなるため適正圧力に対し高い圧力となる。
【0115】
その結果,アンロード運転へ移行してからレシーバタンク532内の圧縮空気の放気が完了するまでの間,圧縮機本体520には依然として必要以上の負荷がかかった状態で運転されており,アンロード運転の開始初期より吸入弁二次側の吸入流路542内の圧力を閾値(適正圧力)に近い圧力に維持できる本願の容量制御を行う場合に比較して,
図6(B)中の斜線部分の動力が余分に消費される。
【0116】
〔変更例〕
図7に,変形例に係る本発明の容量制御装置10の構成例を示す。
【0117】
図7に示す実施形態では,電磁制御弁121の二次側における制御流路122に対し,レシーバタンク32からの圧縮空気をレギュレータ171で圧力調整して導入する調圧回路17を設けたものである点で,
図1を参照して説明した容量制御装置10の構成と相違する。
【0118】
なお,
図7に示す容量制御装置10において,調圧回路17を介して電磁制御弁121の二次側に導入された圧縮空気は放気回路18を介して放気されないように構成する。
【0119】
調圧回路17に設けるレギュレータ171としては,一例として電空レギュレータを採用することができ,圧力センサ(図示せず)によって検出したレシーバタンク32内の圧力変化に基づいて,レシーバタンク32内の圧力が上昇するに従い電空レギュレータ171の開度を増大させる一方,レシーバタンク32内の圧力が低下するに従い電空レギュレータ171の開度を減少させるように制御することにより,吸入弁11の閉弁受圧室116に導入する圧縮空気の圧力を,吸入弁11を全閉とする圧力以下の範囲で変化させる。
【0120】
これにより,レシーバタンク32内の圧力がアンロード運転開始圧力未満で電磁制御弁121が制御流路12を閉じた状態にあるとき,すなわちロード運転時においても調圧回路17を介してレギュレータ171によって圧力調整された圧縮空気が吸入弁11の閉弁受圧室116に導入される。
【0121】
これにより,レシーバタンク32内の圧力変化,従って,消費側における圧縮空気の消費量の変化に対応して,レシーバタンク32内の圧力上昇(圧縮空気の消費量の減少)に伴い吸入弁11をリニアに絞って圧縮空気の生成量を減少させ,レシーバタンク32内の圧力低下(圧縮空気の消費量の増大)に伴い吸入弁11の開度をリニアに増大させて圧縮空気の生成量を増大させる制御を行うことができるように構成した。
【0122】
そして,レシーバタンク32内の圧力が所定のアンロード運転開始圧力以上に上昇すると,電磁制御弁121が開いて制御流路12を介してレシーバタンク32より吸入弁11を全閉とする圧力以上の圧力の圧縮空気が導入されることで吸入弁11が全閉となり,アンロード運転に移行するように構成されている。
【0123】
上記構成の容量制御装置10においても真空緩和回路13を開閉するバキュームレリーフバルブ14を吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力(真空)に基づいて動作させていることから,吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力を閾値(適正圧力)に近付けるように真空緩和が行われ,過剰な真空緩和が行われないようになっている。
【0124】
また,本発明の構成ではバキュームレリーフバルブ14の開閉動作の基準となる前述の閾値(適正圧力)は,アンロード運転時に吸入弁二次側の吸入流路42内で発生する真空に対応した圧力となっているため,ロード運転時に吸入弁が絞られて吸入弁二次側の吸入流路内の圧力が低下した場合であっても吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力は閾値以下には低下せず,その結果,バキュームレリーフバルブ14の設定の調整などを行うことなく容量制御装置10に調圧回路17を追加した場合であってもロード運転時にバキュームレリーフバルブ14が開弁してレシーバタンク32内の圧縮空気が吸入弁二次側の吸入流路42に導入されることがない。
【0125】
更に,圧縮機の機種毎にアンロード運転開始圧力や調圧回路17を介して導入される圧縮空気の圧力範囲は異なるものとなるが,
図7に示した容量制御装置10においてもバキュームレリーフバルブ14を吸入弁二次側の吸入流路42内の圧力(真空)に基づいて動作させているため,機種が異なる圧縮機1,従って,圧力調整範囲が異なるレギュレータ171を備えた容量制御装置10においてもバキュームレリーフバルブ14の設定変更等を行う必要がない。
【0126】
これに対し,
図8を参照して説明したように真空緩和回路513に設けたバルブ514が圧力レギュレータ512aの二次側圧力によって作動する構成の容量制御装置510である場合,この容量制御装置510に
図7に示した調圧回路17を追加すると,圧力レギュレータ512aが閉弁状態となっているロード運転時においても真空緩和回路513に設けたバルブ514がレギュレータ171からの圧縮空気によって開弁して,吸入弁二次側の吸入流路542に対してレシーバタンク532からの圧縮空気を導入してしまうおそれがある。
【0127】
図8の容量制御装置510の構成に
図7に示した調圧回路17を設けた場合にもロード運転中に真空緩和回路513のバルブ514が作動しないようにするためには,バルブ514の作動圧力を,レギュレータ171の二次側圧力の最大値以上で,かつ,開弁時における圧力レギュレータ512aの二次側圧力以下に設定する必要がある。
【0128】
この場合,レギュレータ171の二次側圧力や,開弁時における圧力レギュレータ512aの二次側圧力は,圧縮機1の仕様毎に相違するため,
図8に示した従来の容量制御装置510の構成に,
図7に示した調圧回路17を設ける場合,圧縮機の機種毎にバルブ514を専用設計とする必要があり,本発明のように異なる機種の圧縮機に対しても適用可能な汎用性を備えた容量制御装置を提供できるものとはなっていない。
【符号の説明】
【0129】
1 圧縮機
10 容量制御装置
11 吸入弁
111 シリンダ室
112 ピストン
113 弁軸
114 弁座
115 弁体
116 閉弁受圧室
117 ピストン用スプリング
118 弁体用スプリング
119 ストッパ
12 制御回路
121 電磁制御弁
122 流路(電磁制御弁-吸入弁間)
123 流路(電磁制御弁-レシーバタンク間)
13 真空緩和回路
14 (自動)バキュームレリーフバルブ
141 入口
142 出口
143 弁座
144 弁体
144a 弁体用スプリング
144b 弁軸
145 ピストン
145a ピストン用スプリング
146 シリンダ室
146a 作動圧室
146b 空間
147,148 流路
17 調圧回路
171 レギュレータ(電空レギュレータ)
18 放気回路
18a 絞り
20 圧縮機本体
30 供給流路
31 吐出流路
32 レシーバタンク
33 消費流路
33a 逆止弁
40 吸入流路
41 吸入弁一次側の吸入流路
42 吸入弁二次側の吸入流路
43 エアフィルタ
500 圧縮機
510 容量制御装置
511 吸入弁
512 制御回路
512a 圧力レギュレータ
512b,512c 流路
513 真空緩和回路
514 バルブ
514’ 三方電磁弁
515,516 流路
518,519 オートレリーフバルブ
520 圧縮機本体
521 吸入口
530 供給流路
532 レシーバタンク
533 消費流路
540 吸入流路
541 吸入弁一次側の吸入流路
542 吸入弁二次側の吸入流路
VS 圧力スイッチ