(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019922
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】安全キャビネット
(51)【国際特許分類】
B01L 1/00 20060101AFI20250131BHJP
F24F 8/22 20210101ALI20250131BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B01L1/00 E
B01L1/00 A
F24F8/22
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123828
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 健
【テーマコード(参考)】
4C058
4G057
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB06
4C058EE29
4C058KK02
4G057AA02
4G057AA03
(57)【要約】
【課題】安全キャビネットにおいて、作業台の汚染度に応じた有効的な殺菌を行う。
【解決手段】一対の殺菌灯ユニットは、作業室の背面部に殺菌灯の両端部がソケット部材に差し込まれた状態で作業室の正面においてV字状に配置されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業空間を構成する作業室の作業台の表面を殺菌するための殺菌灯を備える安全キャビネットにおいて、
前記作業室の背面部に設けられ、前記殺菌灯とソケット部材を内蔵する一対の殺菌灯ユニットを備え、
前記ソケット部材は、
前記殺菌灯の両端部が差し込まれることにより前記殺菌灯を支持し、
前記一対の殺菌灯ユニットは、
前記作業室の前記背面部に、前記殺菌灯の両端部が前記ソケット部材に差し込まれた状態で前記作業室の正面においてV字状に配置されていることを特徴とする安全キャビネット。
【請求項2】
前記一対の殺菌灯ユニットは、
前記作業台の表面に対して下方かつ中央部に向けて傾斜した状態で前記作業室の前記背面部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の安全キャビネット。
【請求項3】
前記一対の殺菌灯ユニットを前記V字状に配置することにより、汚染度の高い前記作業台の前記中央部に前記殺菌灯から殺菌線量の高い紫外線を照射することを特徴とする請求項2に記載の安全キャビネット。
【請求項4】
前記一対の殺菌灯ユニットを前記V字状に配置することにより、前記殺菌灯の点灯中を目視可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の安全キャビネット。
【請求項5】
前記殺菌灯ユニットは、
前記作業室の前記背面部に、前記殺菌灯の両端部が前記ソケット部材に差し込まれた状態で前記殺菌灯と前記ソケット部材の全体が埋設されるように設けられ、
前記殺菌灯ユニットは、
前面が前記殺菌灯と前記ソケット部材の全体が前記背面部から前記作業室の内部に突出しないようなフラット面を構成し、
前記作業室の外部において前記殺菌灯に対向する奥面が垂直壁面を構成し前記殺菌灯より下方が傾斜壁面を構成する構造を有することを特徴とする請求項1に記載の安全キャビネット。
【請求項6】
前記殺菌灯ユニットは、
前記フラット面に沿って上から下に向けて前記作業室の内部を流れる清浄気流を生成し、
前記垂直壁面及び前記傾斜壁面に沿って下から上に向けて前記作業室の外部を流れる背面気流を生成することを特徴とする請求項5に記載の安全キャビネット。
【請求項7】
前記ソケット部材は、前記殺菌灯ユニットの長手方向に対向しかつ離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の安全キャビネット。
【請求項8】
前記殺菌灯は、水銀ランプで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の安全キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、再生医療、製薬などの産業分野において使用される安全キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
安全キャビネットは、その内部に作業用の開口部を除き準密閉状態の作業室を形成するとともに、当該作業室内で発生する汚染エアロゾルを吸引し、作業者側に流出させないようにする。吸引回収した汚染空気はHEPAフィルタで無菌・清浄化して排気する機能を備えている。
【0003】
安全キャビネットは、作業を行う作業台と、前面シャッターと、前面シャッターとともに作業室を囲む内部作業面と、作業室に空気を供給する送風装置とを有し、前面シャッターを移動させることで、前記作業室と外部空間との間で作業開口部が形成されるようになっている。
【0004】
また、前記安全キャビネットでは、実験終了後に病原体等の汚染物質を消毒・除染するために作業室に殺菌灯が配置されている。この殺菌灯は作業室を形成する壁の壁面に取り付けられている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、「殺菌灯4の両端部が差し込まれることで殺菌灯4を支持するソケット部材11と、殺菌灯4およびソケット部材11の上側を覆うカバー部材15とを備え、ソケット部材11およびカバー部材15は、壁面1aに対して下方に向けて傾斜した状態で前記壁1に取り付けられているので、壁1の壁面1aに沿って上から下に向けて流れる垂直気流の乱れを抑制できる。」と記載されている(「要約」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、壁の壁面に沿って上から下に向けて流れる垂直気流の乱れを抑制するために、垂直気流が壁の壁面に沿って上から下に向けて流れる前記壁に取り付けられる殺菌灯の取付け構造であって、前記殺菌灯の両端部が差し込まれることで当該殺菌灯を支持するソケット部材を備え、前記ソケット部材は、前記壁面に対して下方に向けて傾斜した状態で前記壁に取り付けられている。
【0008】
しかし、特許文献1では、作業台の汚染度に応じた有効的な殺菌は困難である。
【0009】
本発明の目的は、安全キャビネットにおいて、作業台の汚染度に応じた有効的な殺菌を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の安全キャビネットは、作業空間を構成する作業室の作業台の表面を殺菌するための殺菌灯を備える安全キャビネットにおいて、前記作業室の背面部に設けられ、前記殺菌灯とソケット部材を内蔵する一対の殺菌灯ユニットを備え、前記ソケット部材は、前記殺菌灯の両端部が差し込まれることにより前記殺菌灯を支持し、前記一対の殺菌灯ユニットは、前記作業室の前記背面部に、前記殺菌灯の両端部が前記ソケット部材に差し込まれた状態で前記作業室の正面においてV字状に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、安全キャビネットにおいて、作業台の汚染度に応じた有効的な殺菌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例における安全キャビネットを側面方向から見た内部構成図である。
【
図2】実施例における安全キャビネットの外観正面図である。
【
図3】実施例における作業中の安全キャビネットを側面方向から見た内部構成図である。
【
図4】実施例における安全キャビネットを正面方向から見た内部構成図である。
【
図5】実施例に係る殺菌灯の取付け構造を示す平面図である。
【
図7】実施例における安全キャビネットを正面方向から見た内部構成図である。
【
図8】実施例における安全キャビネットを側面方向から見た内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施例について説明する。
【実施例0014】
図1は、実施例に係る安全キャビネットを側面方向から見た内部構成図のである。
図2は、安全キャビネットの外観正面図である。
図3は、作業中の安全キャビネットを側面方向から見た内部構成図である。
図4は、安全キャビネットを正面から見た内部構成図である。
【0015】
安全キャビネット100は、作業空間を構成する作業室106を有する。作業室106の一面には、作業開口部104を形成できる。前面シャッター105を閉じた状態から上方に移動することで、作業室106と外部空間との間で作業開口部104が形成される。作業開口部104と同じ面に、前面シャッター105が配置される。
【0016】
作業室106の底面には、その上で作業を行う作業台107を配置している。作業空間106において前面シャッター105に対向する面は背面部106aである。作業室106の上部には、整流板110、その上部に吹き出し用HEPAフィルタ101bを配置している。
【0017】
吹き出し用HEPAフィルタ101bは、圧力チャンバ112に連接し、圧力チャンバ112には送風装置103が連接している。送風装置103が運転し、圧力チャンバ112が加圧されることで、吹き出し用HEPAフィルタ101bから清浄化された空気が吹き出し、整流板110により整流化された清浄空気102が作業室106に供給される。
【0018】
圧力チャンバ112は、排気用HEPAフィルタ101aにも連接している。送風装置103を運転することで、圧力チャンバ112内の空気の一部は、排気用HEPAフィルタ101aで清浄化され、排気口113から安全キャビネット100の外に排気される。
【0019】
安全キャビネット100は、この排気量と同じ量の空気を吸込む必要がある。その空気が、作業開口部104の流入気流115である。作業開口部104に発生する流入気流115は、作業台前部吸気口108から吸込まれ、作業台107の下、背面流路111を通り送風装置103に吸込まれる。この流入気流115がエアバリアとなり作業室106内部と、安全キャビネット100の外部を物理的に隔離する。
【0020】
作業室106に吹き出す清浄空気102は、一部は流入気流115とともに作業台前部吸気口108から吸込まれ、他の一部は後部吸気口109に吸込まれ、背面流路111を通り、送風装置103に吸込まれる。
【0021】
クリーンベンチの場合、排気用HEPAフィルタ101aを持たないため、流入気流115が発生せず、清浄空気102が作業開口部104から吹き出してくる。
【0022】
作業室106内で実験する場合、作業開口部104から、作業者が、自らの手117を挿入し、前面シャッター105の光透過部を通して、作業室106の内部を見ることができる。安全キャビネット100の場合、作業室106の内部で汚染エアロゾル114を取り扱っても流入気流115がエアバリアとなり汚染エアロゾル114が、安全キャビネット100の外の漏れ出ることは無い。
【0023】
作業室106の内部では、汚染エアロゾル114を取り扱うため、実験終了後は、病原体等の汚染物質を消毒・除染する必要がある。病原体等を使用しない再生医療の細胞培養でも、雑菌が混ざらないよう実験終了後は、作業室106の底面の作業台107の表面を消毒・除染する必要がある。このため、殺菌灯ユニット10が作業室106の作業台107の表面を殺菌するために設けられている。殺菌灯ユニット10は、作業室106の壁の背面部に設けられている。
【0024】
安全キャビネット100を使用する場合、安全キャビネット100外部に配置した安全キャビネットの運転をONもしくはOFFするスイッチなどを設置した運転操作部116により操作する。
【0025】
図1に示すように、安全キャビネット100の作業室106の背面部106aと背面流路111との間にこれらを仕切る壁が設けられている。そして、作業室106に吹き出す清浄空気102は、壁の壁面に沿って上から下に向けて流れる。このような壁の背面部106aに殺菌灯ユニット10が設けられている。
【0026】
図5に示すように、殺菌灯ユニット10は左右方向に延在している。殺菌灯ユニット10には、ソケット部材11が設けられている。また、殺菌灯ユニット10には、電源ケーブル16、17が接続されている。
【0027】
ソケット部材11は、殺菌灯ユニット10の長手方向(
図5において左右方向)に、対向離間して配置されている。また、2つのソケット部材11、11の先端部には、殺菌灯15の両端部がそれぞれ差し込まれて電気的に接続されている。
【0028】
図6に示すように、安全キャビネット100は、作業室106の作業台107の表面を殺菌するための殺菌灯ユニット10を備える。殺菌灯ユニット10は、作業室内106の壁の背面部106aに設けれ、殺菌灯15とソケット部材11を内蔵する。ソケット部材11は、殺菌灯15の両端部が差し込まれることにより殺菌灯15を支持する。
【0029】
殺菌灯ユニット10は、作業室内106の背面部106aに、殺菌灯15の両端部がソケット部材11に差し込まれた状態で殺菌灯15とソケット部材11の全体が埋設されるように設けられている。
【0030】
また、
図6に示すように、殺菌灯ユニット10は、殺菌灯15に対向する奥面が垂直壁面を構成し、殺菌灯119より下方が傾斜壁面を構成する構造を有する。殺菌灯ユニット10の前面は、殺菌灯15とソケット部材11の全体が背面部106aから作業室内106に突出しないようなフラット面を構成する。
【0031】
殺菌灯ユニット10は、前記フラット面に沿って上から下に向けて作業室106を流れる清浄気流102を生成し、前記垂直壁面及び前記傾斜壁面に沿って下から上に向けて背面流路111を流れる背面気流を生成する。
【0032】
これにより、壁面に沿って上から下に向けて作業室106を流れる清浄気流(垂直気流)の気流変動を効果的に防止することができる。さらに、作業室106の外側の背面流路111に沿って下から上に向けて流れる背面気流の気流変動も効果的に防止できる。
【0033】
図1に示すように、作業室106の前面部の下部には作業台前部吸込口108が設けられている。殺菌灯ユニット10の前記フラット面に沿って作業室106を流れる清浄気流102は、作業台前部吸込口108を通過して殺菌灯ユニット10の前記垂直壁面及び前記傾斜壁面に沿って流れる前記背面気流となる。
【0034】
図7、
図8に示すように、本実施例のV字殺菌灯取付構造では、一対の殺菌灯ユニット10が作業室106の背面部106aに、殺菌灯15の両端部がソケット部材11に差し込まれた状態で作業室106の正面においてV字状に配置されている。
【0035】
一対の殺菌灯ユニット10は、作業台107の表面に対して下方かつ中央部に向けて傾斜した状態で作業室106の背面部106aに設けられている。
【0036】
このように、本発明の実施例では、作業台の表面殺菌をするための殺菌灯を備える安全キャビネットにおいて、作業室106の背面部106aに一対の殺菌灯ユニット10をV字に配置したことを特徴とする。
【0037】
一対の殺菌灯ユニット10をV字状に配置することにより、汚染度の高い作業台107の中央部に殺菌灯15から殺菌線量の高い紫外線を照射する。
【0038】
通常は、作業台107の中央部が最も汚染度が高く、作業台107の周辺部に向かうほど汚染度は低い。従って、一対の殺菌灯ユニット10をV字状に配置することにより、作業台107の汚染度に応じた有効的な殺菌を行うことができる。
【0039】
また、一対の殺菌灯ユニット10をV字状に配置することにより、殺菌灯15の点灯中を目視で確認しやすくなる。具体的には、殺菌灯点灯中にV字で光るため目視で分かりやすくなる。
【0040】
さらに、一対の殺菌灯ユニット10をV字状に配置することにより、流路の気流抵抗を抑制でき、乱流軽減によるコンタミネーション抑制を期待できる。具体的には、一対の殺菌灯ユニット10をV字状に配置することにより、壁面に沿って上から下に向けて作業室106を流れる清浄気流(垂直気流)の気流変動を効果的に防止することができる。
【0041】
なお、本実施例では、本発明に係る殺菌灯の取付け構造を安全キャビネットに適用した場合を例にとって説明したが、本発明に係る殺菌灯の取付け構造は、垂直気流が壁の壁面に沿って上から下に向けて流れるもので、前記壁に取り付けられる殺菌灯の取付け構造であれば、クリーンベンチやその他のものに適用してもよい。