(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019947
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】衣類処理機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/14 20060101AFI20250131BHJP
D06F 37/28 20060101ALI20250131BHJP
E05C 3/24 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
D06F39/14 Z
D06F37/28
E05C3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123876
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100163315
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】志知 和幸
(72)【発明者】
【氏名】片岡 邦夫
【テーマコード(参考)】
3B165
【Fターム(参考)】
3B165AA01
3B165AA24
3B165AE02
3B165AE11
3B165BA48
3B165CA04
3B165CA15
3B165CA17
3B165CB31
(57)【要約】
【課題】衣類処理機における扉の閉状態を確実に保持しつつ、使用者が扉を閉める操作を簡略化する。
【解決手段】キャッチ機構として、扉側に突出爪10を設け、本体側のキャッチケース内に、突出爪の進入方向に直交する固定軸24で回動可能に回動部材23を軸支する。回動部材の一方の端部には、突出爪の先端が当接する当接部23bと、突出爪に押されて回動部材が回転するのに伴い、突出爪の被係合部10bに係合する係合部23cとを備える。また、圧縮状態で設置されるバネ部材25の一端がキャッチケース22bに支持され、他端が回動部材の他方の端部23dに支持される。そして、回動部材の回転位置が、バネ部材の伸張による付勢力が回動部材に作用する作用線上に固定軸が位置する特定回転位置となるのを境に、バネ部材の付勢力の作用による回動部材の回転方向は、突出爪を当接部が押し返す排斥方向と、係合部が突出爪を引き込む受容方向とに反転する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を収容するドラムを本体に内蔵し、該本体の前面に開口したドラム入口を扉で開閉可能であり、該扉の左右何れかの端部がヒンジ機構によって前記本体に対して回動可能に軸支されると共に、該ヒンジ機構とは反対側の左右何れかの端部に、前記本体に対して前記扉を閉状態に保持するためのキャッチ機構を備えた衣類処理機において、
前記キャッチ機構は、
前記扉側に設けられ、該扉の閉状態で前記本体と対向する面から突出した突出爪と、
前記本体側に設けられ、前記扉が閉じるのに伴って前記突出爪が挿入されるキャッチケースと、
前記キャッチケースに内蔵され、前記突出爪の進入方向に直交する固定軸で回動可能に軸支された回動部材と、
前記回動部材の一方の端部に形成されて、前記キャッチケースに進入する前記突出爪の先端が当接する当接部と、
前記回動部材の前記当接部と同じ側の端部に形成されて、該当接部に当接した前記突出爪に押されて該回動部材が回転するのに伴い、該突出爪に形成された被係合部と係合する係合部と、
圧縮状態で設置されて、一端が前記キャッチケースに支持されると共に、他端が前記回動部材の前記固定軸を挟んで前記当接部とは反対側の他方の端部に支持されたバネ部材と
を備え、
前記回動部材の回転位置が、前記バネ部材の伸張による付勢力が該回動部材に作用する作用線上に前記固定軸が位置する特定回転位置となるのを境にして、前記バネ部材の付勢力の作用による前記回動部材の回転方向は、前記キャッチケースに進入する前記突出爪を前記当接部が押し返す排斥方向と、前記係合部が前記被係合部に係合して前記突出爪を前記キャッチケースに引き込む受容方向とに反転する
ことを特徴とする衣類処理機。
【請求項2】
請求項1に記載の衣類処理機において、
前記回動部材の回転位置は、前記当接部に当接した前記突出爪の前記キャッチケースへの進入量と対応していると共に、前記扉が閉まり切ると、該突出爪は最大進入量に達し、
前記特定回転位置は、前記突出爪が前記当接部に当接してから前記最大進入量の半分に達するまでの間の特定進入量と対応している
ことを特徴とする衣類処理機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の衣類処理機において、
前記突出爪に押されて前記回動部材が回転する前の初期回転位置における前記当接部は、該突出爪の進入方向に対して直行する平面になっている
ことを特徴とする衣類処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類を収容するドラムを本体に内蔵し、該本体の前面に開口したドラム入口を扉で開閉可能な衣類処理機に関し、詳しくは、扉の閉状態を保持する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機や衣類乾燥機などの衣類処理機では、衣類を収容するドラムを本体に内蔵しており、本体の前面に開口したドラム入口を扉で開閉するものが多く存在する。例えば、特許文献1に記載の衣類乾燥機における扉は、左右何れかの端部がヒンジ機構によって本体に対して回動可能に軸支されており、本体の前方側に回転させて開くようになっている。また、閉じた扉がひとりでに開かないようにするため、ヒンジ機構とは反対側の左右何れかの端部に、本体に対して扉を閉状態に保持する機構(ラッチ機構)を備えている。
【0003】
このように扉を閉状態に保持する機構としては、様々なタイプがあり、扉側に閉状態で本体と対向する面から突出した突出爪を備えると共に、本体側に突出爪が挿入されるキャッチケースを備えたキャッチ機構が知られている。こうしたキャッチ機構では、キャッチケースの内部に、突出爪を挟持するための一対の挟持部が搭載されたものがあり、バネによって一対の挟持部が互い近づく方向に付勢されている(例えば、特許文献2)。また、突出爪には、一対の挟持部が嵌り込む両面一対の凹部が形成されている。扉を閉じるのに伴い、突出爪がバネの付勢力に抗して一対の挟持部の間を押し広げながら間へと進入していき、突出爪の一対の凹部に一対の挟持部が嵌り込むことにより、扉を閉状態に保持することが可能である。一方、扉を開ける際は、突出爪がバネの付勢力に抗して一対の挟持部の間を押し広げながら間から引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-7827号公報
【特許文献2】特開2000-192713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような構成のキャッチ機構を採用した衣類処理機では、使用者が扉を閉める際に突出爪が一対の挟持部の間に進入するのに伴い、必要な操作力(押す力)が徐々に増して扉が閉まり切る直前に操作力のピークがあると共に、突出爪の一対の凹部に一対の挟持部が嵌り込むまで扉を押し切らなければならず、使用者にとって扉を閉める操作が煩わしく感じられることがあるという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、衣類処理機における扉の閉状態を確実に保持しつつ、使用者が扉を閉める操作を簡略化することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の衣類処理機は次の構成を採用した。すなわち、
衣類を収容するドラムを本体に内蔵し、該本体の前面に開口したドラム入口を扉で開閉可能であり、該扉の左右何れかの端部がヒンジ機構によって前記本体に対して回動可能に軸支されると共に、該ヒンジ機構とは反対側の左右何れかの端部に、前記本体に対して前記扉を閉状態に保持するためのキャッチ機構を備えた衣類処理機において、
前記キャッチ機構は、
前記扉側に設けられ、該扉の閉状態で前記本体と対向する面から突出した突出爪と、
前記本体側に設けられ、前記扉が閉じるのに伴って前記突出爪が挿入されるキャッチケースと、
前記キャッチケースに内蔵され、前記突出爪の進入方向に直交する固定軸で回動可能に軸支された回動部材と、
前記回動部材の一方の端部に形成されて、前記キャッチケースに進入する前記突出爪の先端が当接する当接部と、
前記回動部材の前記当接部と同じ側の端部に形成されて、該当接部に当接した前記突出爪に押されて該回動部材が回転するのに伴い、該突出爪に形成された被係合部と係合する係合部と、
圧縮状態で設置されて、一端が前記キャッチケースに支持されると共に、他端が前記回動部材の前記固定軸を挟んで前記当接部とは反対側の他方の端部に支持されたバネ部材と
を備え、
前記回動部材の回転位置が、前記バネ部材の伸張による付勢力が該回動部材に作用する作用線上に前記固定軸が位置する特定回転位置となるのを境にして、前記バネ部材の付勢力の作用による前記回動部材の回転方向は、前記キャッチケースに進入する前記突出爪を前記当接部が押し返す排斥方向と、前記係合部が前記被係合部に係合して前記突出爪を前記キャッチケースに引き込む受容方向とに反転する
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明の衣類処理機では、使用者が扉を閉める際は、回動部材の排斥方向の回転トルクに抗して突出爪を進入させるために、回動部材の回転位置が特定回転位置を超えるまで扉に押す力を加えれば、バネ部材の付勢力の作用による回動部材の回転方向が排斥方向から受容方向に反転し、その後は回動部材の受容方向の回転トルクで突出爪と共に扉が自動的に引き込まれるので、使用者が扉を押し切らなくても、扉を確実に閉めることができる。そして、扉が閉まり切った状態でも、回動部材の受容方向の回転トルクで扉を引き込み続けることから、扉の閉状態を確実に保持することが可能となる。一方、使用者が扉を開ける際は、回動部材の受容方向の回転トルクに抗して突出爪を引き戻すために、回動部材の回転位置が特定回転位置を超えて戻るまで扉に引く力を加えれば、バネ部材の付勢力の作用による回動部材の回転方向が受容方向から排斥方向へと再び反転し、その後は回動部材の排斥方向の回転トルクで突出爪と共に扉が自動的に押し返される。このように使用者が扉を閉める操作だけでなく、開ける操作についても簡略化することができる。
【0009】
上述した本発明の衣類処理機では、次のようにしてもよい。まず、回動部材の回転位置が、当接部に当接した突出爪のキャッチケースへの進入量と対応していると共に、扉が閉まり切ると、突出爪は最大進入量に達する。そして、回動部材の特定回転位置は、突出爪が当接部に当接してから最大進入量の半分に達するまでの間の特定進入量と対応している。
【0010】
このような構成の衣類処理機では、使用者が扉を閉める際に、突出爪が回動部材の当接部に当接してから扉が閉まり切るまでのストローク(最大進入量)のうち、扉に押す力を加えるのは前半の特定進入量まででよいため、後半まで扉に押す力を加え続ける必要がある場合に比べて、扉を閉める操作感を向上させることが可能となる。
【0011】
また、こうした本発明の衣類処理機では、突出爪に押されて回動部材が回転する前の初期回転位置における当接部が、突出爪の進入方向に対して直交する平面になっていてもよい。
【0012】
このような構成の衣類処理機では、突出爪が当接部に当接して回動部材を押すと、突出爪は反作用として当接部から突出爪の進行方向とは正反対の方向の抗力を受ける。このような正反対の方向の抗力であれば、突出爪が進入方向と交差する方向にずらされることはなく、扉の回動における振れを抑制することができる。また、突出爪の当接点と固定軸との距離が小さくならないので、使用者が扉に加える押す力が増大することはなく、扉を閉じる操作力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】衣類処理機の例として本実施例の衣類乾燥機1の大まかな構成を示した斜視図である。
【
図2】本実施例のキャッチ機構5を分解した状態を示した斜視図である。
【
図3】衣類乾燥機1に設置された状態のキャッチ機構5の内部構造を示した断面図である。
【
図4】回動部材23の回転位置に応じてトーションバネ25の付勢力が回動部材23に作用する様子を示した説明図である。
【
図5】変形例の回動部材23の形状を実施例の回動部材23の形状と比較して示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、衣類処理機の例として本実施例の衣類乾燥機1の大まかな構成を示した斜視図である。図示した衣類乾燥機1は、乾燥させる衣類を収容するドラム2aが箱形の本体2に内蔵されており、本体2の前面にドラム2aへと通ずるドラム入口2bが開口している。また、ドラム入口2bを開閉する扉3を備えており、扉3の左右何れかの端部(
図1の例では左端)がヒンジ機構4によって本体2に対して回動可能に軸支されている。そして、扉3のヒンジ機構4とは反対側の左右何れかの端部(
図1の例では右端)には取っ手3aが形成されており、使用者が取っ手3aを引くと扉3が本体2の前方側に回動して開き、乾燥させる衣類をドラム2aに投入したり、乾燥後の衣類をドラム2aから取り出したりすることができる。
【0015】
さらに、閉じた扉3がひとりでに開かないようにするため、扉3のヒンジ機構4とは反対側の左右何れかの端部(
図1の例では右端)に、本体2に対して扉3を閉状態に保持するためのキャッチ機構5を備えている。本実施例のキャッチ機構5の詳細については別図を用いて後述するが、扉3側に、扉3の閉状態で本体2と対向する面から突出した突出爪10が設置されると共に、本体2側に、扉3が閉じるのに伴って突出爪10を受け入れるキャッチユニット20が設置され、これら突出爪10とキャッチユニット20とでキャッチ機構5が構成されている。
【0016】
図2は、本実施例のキャッチ機構5を分解した状態を示した斜視図である。まず、突出爪10は、基端にベースプレート10aを有しており、ベースプレート10aに対して略垂直に突出している。このベースプレート10aは、扉3の閉状態で本体2と対向する面にビスなどの固定具(図示省略)を用いて固定される。また、突出爪10の先端側には、上下方向に貫通した貫通孔10bが形成されている。
【0017】
次に、キャッチユニット20は、図示されるように、扉3の閉状態で突出爪10のベースプレート10aと対向する面を構成し、突出爪10が挿通される挿通孔21aを有するキャッチカバー21や、前面に開口部を有する箱形のキャッチケース22などを備えている。キャッチカバー21は、キャッチケース22の前面の開口部を覆った状態で、キャッチケース22と図示しないビスなどで固定(本体2に共締め)される。このため、突出爪10は、挿通孔21aを通ってキャッチケース22に挿入されることになる。
【0018】
また、キャッチケース22の内部には、特殊な形状の回動部材23が収蔵され、固定軸24によって回動可能に軸支される。この固定軸24は、回動部材23に形成された軸孔23aと、キャッチケース22の両側面に形成された支持孔22aとに挿通され、突出爪10の進入方向に対して直交する配置に固定される。回動部材23の一方の端部(
図2の例では上端部)には、挿通孔21aを通ってキャッチケース22に進入した突出爪10の先端が当接する当接部23bと、当接部23bに当接した突出爪10に押されて回動部材23が回転するのに伴い、後述のように突出爪10の貫通孔10bに入り込んで係合する係合部23cとが形成されている。尚、本実施例の貫通孔10bは、本発明の「被係合部」に相当している。
【0019】
さらに、キャッチケース22の内部には、バネ部材25が圧縮状態で設置される。本実施例のバネ部材25は、トーションバネを用いており、円筒状のコイルの両端から接線方向に延設された一対の腕部のそれぞれが、コイルの軸方向と平行に内向きに折り曲げられてL字状になっている。そして、一方の腕部が、後述のようにキャッチケース22の内側の底面に支持されると共に、他方の腕部が、回動部材23の固定軸24(軸孔23a)を挟んで当接部23bとは反対側の他方の端部(
図2の例では下端部)に形成された溝部23dに嵌まって支持される。以下では、キャッチケース22に支持される一方の腕部を「固定腕部25a」と呼び、回動部材23に支持される他方の腕部を「可動腕部25b」と呼ぶことがある。
【0020】
図3は、衣類乾燥機1に設置された状態のキャッチ機構5(主にキャッチユニット20)の内部構造を示した断面図である。図では、垂直な平面でキャッチ機構5を手前側から奥側に切断した断面を表しており、突出爪10がキャッチカバー21の挿通孔21aからキャッチケース22に挿入される前の状態を示すと共に、本体2や扉3については図示を省略している。前述したようにキャッチケース22には、回動部材23が内蔵されており、この回動部材23は、突出爪10の進入方向に直交する固定軸24で回動可能に軸支されている。
【0021】
また、バネ部材(トーションバネ)25が圧縮状態で設置されており、固定腕部25aが、キャッチケース22の底面の内側に形成された溝22bに嵌まって支持され、可動腕部25bが、回動部材23の溝部23dに嵌まって支持されている。図示されるようにトーションバネ25は、コイルの軸方向が固定軸24と平行となるように配置されている。そして、トーションバネ25の伸張による付勢力が回動部材23の溝部23dに作用し、
図3に示した例では、回動部材23を反時計回りに回転させるようにトーションバネ25の付勢力が作用する。
【0022】
さらに、キャッチケース22の内部には、回動部材23の背面側(図中の右側)にゴムなどの弾性材料で形成されたクッション部材26が設置されている。トーションバネ25の付勢力の作用によって反時計回りに回転する回動部材23は、クッション部材26に接触することで回り止めされる。
【0023】
こうしてクッション部材26に接触して回動部材23が回り止めされた状態では、回動部材23の係合部23cが、キャッチカバー21の挿通孔21aの下端よりも下方に位置している。このため、扉3を閉じるのに伴い、挿通孔21aを通ってキャッチケース22に進入する突出爪10が係合部23cに衝突することはなく、突出爪10の先端が当接部23bに当接する。そして、当接部23bに当接した突出爪10が、トーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の反時計回りのトルクに抗し、回動部材23を押して時計回りに回転させながら更に進入していく。このとき、進入する突出爪10に押されて回動部材23が特定回転位置まで回転すると、トーションバネ25の付勢力の作用によって回動部材23が回転しようとする方向が反転することになる。以下では、この点について詳しく説明する。
【0024】
図4は、回動部材23の回転位置に応じてトーションバネ25の付勢力が回動部材23に作用する様子を示した説明図である。上段の
図4(a)~
図4(c)では、固定軸24に垂直な平面でキャッチ機構5を切断した断面を表しており、キャッチカバー21やキャッチケース22の図示を省略している。まず、
図4(a)は、挿通孔21aから進入した突出爪10の先端がちょうど回動部材23の当接部23bに当接した状態であり、突出爪10によって押される前の回動部材23の初期回転位置を示している。
【0025】
前述したように圧縮状態で設置されたトーションバネ25が伸張する(固定腕部25aと可動腕部25bとの間が開く)ことによって回動部材23の端部(溝部23d)に作用する付勢力Fは、コイルの軸回りで、且つコイルから延設された可動腕部25bに直交する方向に作用する。こうしたトーションバネ25の付勢力Fは、
図4(a)中に示されるように、回動部材23の溝部23dと固定軸24とを結ぶ直線方向の分力Faと、その分力Faに直交する方向の分力Fbとに分解することができる。そして、分力Faによって回動部材23が回転することはないものの、分力Fbによって回動部材23が図中の反時計回りに回転するため、当接部23bに当接する突出爪10を押し返すことになる。尚、
図4(a)の初期回転位置では、前述したように回動部材23がクッション部材26に接触することにより(
図3参照)、回り止めされている。
【0026】
このようなトーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の反時計回りのトルクに抗して、当接部23bに当接した突出爪10が回動部材23を押して時計回りに回転させながら進入(図中の右方向に移動)していくと、回動部材23の回転位置が、
図4(b)に示されるように特定回転位置に達する。尚、前述したようにキャッチケース22の底面(溝22b)に支持された固定腕部25aは固定されているのに対して、回動部材23の端部(溝部23d)に支持された可動腕部25bは、回動部材23の回転に伴って変位する。
【0027】
図4(b)の特定回転位置では、トーションバネ25の伸張による付勢力Fが回動部材23の溝部23dに作用する作用線上に固定軸24が位置している。すなわち、トーションバネ25の付勢力Fは、回動部材23の溝部23dと固定軸24とを結ぶ直線方向に加わる力(Fa)だけとなり、回動部材23を回転させる力(Fb)が存在しなくなる。従って、当接部23bに当接した突出爪10の進入に対する回動部材23の回転トルクの抵抗がなくなり、突出爪10の更なる進入のために回動部材23を押す力は不要となる。また、回動部材23の特定回転位置では、係合部23cが突出爪10の貫通孔10bに入り込んで係合する。
【0028】
そして、更なる突出爪10の進入に伴って回動部材23が特定回転位置を超えて図中の時計回りに回転すると、回動部材23の溝部23dに作用するトーションバネ25の付勢力Fは、
図4(c)中に示されるように、回動部材23の溝部23dと固定軸24とを結ぶ直線方向の分力Faと、分力Faに直交する方向の分力Fcとに分解可能となる。そして、この分力Fcによって回動部材23が図中の時計回りに回転するため、前述した
図4(a)とは回動部材23の回転方向が反転し、突出爪10の貫通孔10bに係合した係合部23cが突出爪10をキャッチケース22に引き込むことになる。尚、
図4(c)は、衣類乾燥機1の本体2に対して扉3が閉まり切った状態であり、突出爪10の進入が停止した回動部材23の閉鎖回転位置を示している。
【0029】
図4の下段に示した
図4(d)のグラフは、扉3の開閉に要する荷重と、キャッチケース22に進入した突出爪10の進入量との関係を例示したものである。
図4(d)の縦軸は、使用者が扉3に加える荷重を表し、正の方向が扉3を押す力の強さであり、負の方向が扉3を引く力の強さである。一方、横軸は、回動部材23の当接部23bに当接した突出爪10の進入量Lを表し、前述したように回動部材23の回転位置は突出爪10の進入量Lと対応していることから、
図4では、上段の
図4(a)~
図4(c)の回転位置を、
図4(d)の横軸の進入量Lと対応させて示している。すなわち、
図4(a)の初期回転位置は、当接部23bに当接した突出爪10が回動部材23を押す前の進入量L=0に対応しており、
図4(c)の閉鎖回転位置は、扉3が閉まり切って突出爪10の進入が停止した最大進入量Lmaxに対応している。
【0030】
前述したように扉3を閉じる際には、トーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の反時計回りのトルクに抗して、突出爪10を進入させて回動部材23を時計回りに回転させるために、扉3に押す力を加える必要がある。この押す力は、
図4(d)中に一点鎖線で示されるように、突出爪10が回動部材23の当接部23bに当接した時点(進入量L=0)で最大であり、突出爪10の進入に伴って回動部材23が時計回りに回転するのに従い、徐々に小さくなる。そして、突出爪10の進入量Lが特定進入量Lxとなるのに対応して、回動部材23の回転位置が
図4(b)の特定回転位置に達すると、トーションバネ25による回動部材23の回転トルクの抵抗がなくなり、扉3を押す力は不要となる。
【0031】
こうして回動部材23が特定回転位置を超えた後は、トーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の回転方向が反転し、回動部材23の時計回りのトルクによって、突出爪10の貫通孔10bに係合した係合部23cが突出爪10と共に扉3を引き込むので、使用者が扉3を押し切らなくても、扉3が自動的に閉まることになる。
【0032】
そして、本実施例のキャッチ機構5では、回動部材23の特定回転位置に対応する突出爪10の特定進入量Lxが、突出爪10が回動部材23の当接部23bに当接した時点(進入量L=0)から最大進入量Lmaxの半分に達するまでの間に設定されている。このため、使用者が扉3を閉める際に突出爪10が回動部材23の当接部23bに当接してから扉3が閉まり切るまでのストローク(最大進入量Lmax)のうち、扉3に押す力を加えるのは前半の特定進入量Lxまででよく、後半は押す力を省略することができる。
【0033】
また、衣類乾燥機1では、本体2と扉3との間に密閉するためのパッキン(図示省略)を介在させることがあり、こうしたパッキンが劣化すると、従来は本体2と扉3との間に隙間が生じることによって、密閉性が低下することになる。本実施例の衣類乾燥機1では、扉3が閉まり切った状態でも、
図4(c)のように回動部材23の時計回りのトルクによって扉3を引き込み続けることから、パッキンが劣化しても、扉3が閉まり切った状態を維持し、密閉性を確保することができる。
【0034】
一方、扉3を開ける際には、トーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の時計回りのトルクに抗して、突出爪10を引き戻して回動部材23を反時計回りに回転させるために、扉3に引く力を加える必要がある。この引く力は、
図4(d)中に二点鎖線で示されるように、扉3が閉まり切って突出爪10の進入が停止した最大進入量Lmaxで最大であり、突出爪10の退出に伴って回動部材23が反時計回りに回転するのに従い、徐々に小さくなる。そして、突出爪10が特定進入量Lxまで戻るのに対応して、回動部材23が
図4(b)の特定回転位置になると、トーションバネ25による回動部材23の回転トルクの抵抗がなくなり、扉3を引く力は不要となる。
【0035】
こうして回動部材23が特定回転位置を超えた後は、トーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の回転方向が再び反転し、回動部材23の反時計回りのトルクによって、当接部23bに当接した突出爪10と共に扉3が自動的に押し返されることになる。尚、回動部材23の当接部23bと係合部23cとの間には、突出爪10の先端が嵌り込むのを防ぐために若干の遊びが設けられている。このため、
図4(d)では、一点鎖線で示した扉3を押す力の曲線と、二点鎖線で示した扉3を引く力の曲線との間に、僅かにずれが生じる。
【0036】
以上に説明したように本実施例の衣類乾燥機1におけるキャッチ機構5は、扉3側の突出爪10と、本体2側のキャッチユニット20とで構成されており、キャッチユニット20の外装をなすキャッチケース22の内部には、突出爪10の進入方向に対して直交する固定軸24で回動可能に回動部材23が軸支されている。この回動部材23における一方の端部には、キャッチケース22に進入する突出爪10の先端が当接する当接部23bと、当接部23bに当接した突出爪10に押されて回動部材23が回転するのに伴い、突出爪10の貫通孔10bに入り込んで係合する係合部23cとが形成されている。また、トーションバネ25が圧縮状態で設置されており、一方の固定腕部25aが、キャッチケース22の内側の底面に支持されると共に、他方の可動腕部25bが、回動部材23の固定軸24を挟んで当接部23bとは反対側の端部(溝部23d)に支持される。そして、回動部材23の回転位置が、トーションバネ25の伸張による付勢力が回動部材23に作用する作用線上に固定軸24が位置する特定回転位置となるのを境にして、トーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の回転方向は、キャッチケース22に進入する突出爪10を当接部23bが押し返す方向(排斥方向)と、係合部23cが貫通孔10bに係合して突出爪10をキャッチケース22に引き込む方向(受容方向)とに反転するようになっている。
【0037】
このような本実施例の衣類乾燥機1によれば、使用者が扉3を閉める際は、回動部材23の排斥方向の回転トルクに抗して突出爪10を進入させるために、回動部材23の回転位置が特定回転位置を超えるまで扉3に押す力を加えることにより、トーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の回転方向が排斥方向から受容方向に反転し、その後は回動部材23の受容方向の回転トルクで突出爪10と共に扉3が自動的に引き込まれるので、使用者が扉3を押し切らなくても、扉3を確実に閉めることができる。そして、扉3が閉まり切った状態でも、回動部材23の受容方向の回転トルクで扉3を引き込み続けることから、扉3の閉状態を確実に保持することが可能となる。一方、使用者が扉3を開ける際は、回動部材23の受容方向の回転トルクに抗して突出爪10を引き戻すために、回動部材23の回転位置が特定回転位置を超えて戻るまで扉3に引く力を加えれば、トーションバネ25の付勢力の作用による回動部材23の回転方向が受容方向から排斥方向へと再び反転し、その後は回動部材23の排斥方向の回転トルクで突出爪10と共に扉3が自動的に押し返される。このように使用者が扉3を閉める操作だけでなく、開ける操作についても簡略化することができる。
【0038】
特に、本実施例の衣類乾燥機1におけるキャッチ機構5では、回動部材23の特定回転位置が、突出爪10が回動部材23の当接部23bに当接してから最大進入量Lmaxの半分に達するまでの間の特定進入量Lxと対応している。このようにすれば、使用者が扉3を閉める際に、突出爪10が回動部材23の当接部23bに当接してから扉3が閉まり切るまでのストローク(最大進入量Lmax)のうち、扉3に押す力を加えるのは前半の特定進入量Lxまででよいため、後半まで扉3に押す力を加え続ける必要がある場合に比べて、扉3を閉める操作感を向上させることが可能となる。
【0039】
上述した本実施例の衣類乾燥機1には、次のような変形例も存在する。以下では、上述の実施例とは異なる点を中心に変形例について説明する。尚、変形例の説明では、上述の実施例と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0040】
変形例のキャッチ機構5では、上述した実施例のキャッチ機構5とは回動部材23の形状が異なっており、以下では、回動部材23の形状の違いを比較しながら説明する。
図5は、変形例の回動部材23の形状を実施例の回動部材23の形状と比較して示した説明図である。図では、固定軸24に直交する平面で回動部材23および突出爪10を切断した断面を表しており、回動部材23は初期回転位置にあるものとする。尚、トーションバネ25の付勢力の作用によって図中の反時計回りに回転する回動部材23は、前述したようにクッション部材26に接触することで回り止めされ、当接部23bに当接した突出爪10に押されて時計回りに回転するまでは初期回転位置になっている。
【0041】
まず、
図5(a)に示されるように実施例の回動部材23では、突出爪10が図中の右方向に進入するのに対して、当接部23bが図中の右側に下がる傾斜面になっている。このため、突出爪10が当接部23bに当接して回動部材23を押すと、図中に太線の矢印で示されるように、突出爪10は反作用として当接部23bから傾斜面に垂直な抗力を受ける。こうした抗力によって突出爪10が下方に押し下げられ、突出爪10から扉3に伝わることで、扉3の回動に上下の振れが生じる。特に、扉3が1つのヒンジ機構4で軸支されている場合には、上下に配置された2つ以上のヒンジ機構4で軸支されている場合に比べて、扉3に振れが生じ易い。
【0042】
また、突出爪10が押すことによる回動部材23の図中の時計回りのトルクは、押す力が同じであれば、突出爪10の当接点と固定軸24との距離に比例するため、突出爪10が下方に押し下げられて当接点と固定軸24との距離が小さくなると、回動部材23の時計回りのトルクが減少することになる。結果として、トーションバネ25による回動部材23の図中の反時計回りのトルクに抗して突出爪10を押し込むのに要する使用者が扉3を押す力が増大してしまう。尚、前述したように扉3を押す力は、回動部材23の初期回転位置(突出爪10の進入量L=0)で最大である。
【0043】
これに対して、
図5(b)に示されるように変形例の回動部材23では、初期回転位置における当接部23bが、突出爪10の進入方向に対して直交する平面になっている。このような変形例のキャッチ機構5によれば、突出爪10が当接部23bに当接して回動部材23を押すと、図中に太線の矢印で示されるように、突出爪10は反作用として当接部23bから突出爪10の進行方向とは正反対の方向の抗力を受ける。このような正反対の方向の抗力であれば、突出爪10が下方に押し下げられることはなく、扉3の回動における上下の振れを抑制することができる。また、突出爪10の当接点と固定軸24との距離が小さくならないので、使用者が扉3に加える押す力が増大することはなく、扉3を閉じる操作力を安定させることができる。
【0044】
以上、衣類処理機として本実施例および変形例の衣類乾燥機1について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0045】
例えば、前述した実施例では、衣類処理機の例として、衣類乾燥機1について説明した。しかし、衣類処理機は、衣類乾燥機1に限られず、本体にドラムを内蔵し、本体の前面に開口したドラム入口を開閉する扉の左右何れかの端部がヒンジ機構で軸支され、反対側の端部にキャッチ機構を備える構成(いわゆるドラム式)であれば、洗濯機であってもよい。
【0046】
また、前述した実施例では、回動部材23を回動可能に軸支する固定軸24が水平方向に配置されていた。しかし、固定軸24は、突出爪10の進入方向に直交していれば、水平方向に限られず、鉛直方向に配置(キャッチケース22の上面および下面に形成された支持孔22aに挿通)してもよい。この場合は、突出爪10の貫通孔10bを左右方向に貫通させると共に、トーションバネ25の固定腕部25aがキャッチケース22の左右側面の何れかの内側に支持されるようにすればよい。
【0047】
また、前述した実施例では、バネ部材25としてトーションバネを用いていた。しかし、バネ部材25は、圧縮状態で設置され、一端がキャッチケース22で支持されると共に、他端が回動部材23の端部に支持されていれば、トーションバネに限られず、板バネなどであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…衣類乾燥機、 2…本体、 2a…ドラム、
2b…ドラム入口、 3…扉、 3a…取っ手、
4…ヒンジ機構、 5…キャッチ機構、 10…突出爪、
10a…ベースプレート、 10b…貫通孔、 20…キャッチユニット、
21…キャッチカバー、 21a…挿通孔、 22…キャッチケース、
22a…支持孔、 22b…溝、 23…回動部材、
23a…軸孔、 23b…当接部、 23c…係合部、
23d…溝部、 24…固定軸、 25…トーションバネ、
25a…固定腕部、 25b…可動腕部、 26…クッション部材。