(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019948
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】廃プラスチックを含む固形燃料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/00 20060101AFI20250131BHJP
C10L 5/48 20060101ALI20250131BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
C10L5/00
C10L5/48
B29B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123878
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】515092068
【氏名又は名称】原口 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】原口 司郎
【テーマコード(参考)】
4F401
4H015
【Fターム(参考)】
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401AA27
4F401BA04
4F401CA03
4F401CA58
4F401CA87
4F401CB01
4F401CB18
4F401FA04Z
4F401FA07Z
4H015AA17
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4H015AB01
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4H015BA09
4H015BA13
4H015BB03
4H015BB06
4H015BB08
4H015BB10
4H015CA06
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】塩素系ガスの発生が少なく、塩素系廃プラスチックも使用することができる、廃プラスチックを含む固形燃料及びその製造方法を提供する。
【解決課題】産業廃棄物プラスチックを含む固形燃料であって、産業廃棄物プラスチックを還元性雰囲気下で加熱、溶融して得られる加熱溶融処理物からなる第1層と、無機繊維物と結合剤からなる第2層とからなる。産業廃棄物プラスチックは、5~95質量%、無機繊維物は、5~50質量%、結合剤は、0.5~50質量%含む。産業廃棄物プラスチックは、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂を含む。固形燃料は、灰分20質量%以下、固定炭素20~30質量%、揮発分50~70質量%である。記灰分は、酸化カルシウム(CaO)5質量%以下、二酸化珪素(SiO
2)10質量%以下、酸化アルミニウム(Al
2O
3)5質量%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業廃棄物プラスチックを含む固形燃料であって、
産業廃棄物プラスチックを還元性雰囲気下で加熱、溶融して得られる加熱溶融処理物からなる第1層と、
無機繊維物と結合剤からなる第2層と
からなる固形燃料。
【請求項2】
前記産業廃棄物プラスチックは、5~95質量%、
前記無機繊維物は、5~50質量%、
前記結合剤は、0.5~50質量%含む請求項1に記載の固形燃料。
【請求項3】
前記産業廃棄物プラスチックは、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂を含む請求項1に記載の固形燃料。
【請求項4】
前記固形燃料は、
灰分20質量%以下、
固定炭素20~30質量%、
揮発分50~70質量%、
を含む請求項1に記載の固形燃料。
【請求項5】
前記灰分は、
酸化カルシウム(CaO)5質量%以下、
二酸化珪素(SiO2)10質量%以下、
酸化アルミニウム(Al2O3)5質量%以下
を含む請求項8に記載の固形燃料。
【請求項6】
塩素分が0.2質量%以下である請求項1に記載の固形燃料。
【請求項7】
比重が0.3~0.8である請求項1に記載の固形燃料。
【請求項8】
前記第1層又は前記第2層のいずれか一方の層は、円柱状で、他方の層は、中空円筒状で、軸方向に延びる内部を有し、
前記他方の層の内部に円柱状の前記一方の層が挿入される、
請求項1に記載の固形燃料。
【請求項9】
前記第1層又は前記第2層のいずれか一方の層は、半割円柱状で、他方の層は、半割円筒状で、軸方向に延びる溝部を有し、
前記他方の層の溝部に半割円柱状の前記一方の層が挿入される、
請求項1に記載の固形燃料。
【請求項10】
産業廃棄物プラスチックからなる主原料から第1層を形成する第1層形成工程と、
無機繊維物からなる副原料から第2層を形成する第2層形成工程と、
前記第1層と前記第2層を接合して積層体を形成する接合工程と、
を備える固形燃料の製造方法。
【請求項11】
前記積層体を乾燥する乾燥工程をさらに備える請求項10に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項12】
前記第1層形成工程は、
産業廃棄物プラスチックからなる主原料を定量供給する定量供給工程と、
主原料を還元性雰囲気下で加熱、溶融しつつ混合し、混錬する混合・混錬工程と、
混錬した主原料を所定形状に押し出して成型する成型工程と、
を備える請求項10に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項13】
前記第2層形成工程は、
無機繊維物からなる副原料を定量供給する定量供給工程と、
副原料と結合剤を混合し、混錬する混合・混錬工程と、
混錬した副原料を所定形状に押し出して成型する成型工程と、
を備える請求項10に記載の固形燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃プラスチックを含む固形燃料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物であるプラスチック(廃プラスチック)は、石油化学燃料の高騰の影響もあって燃料の原料として需要が高まっているが、それでも特に塩ビ系プラスチックは埋め立て処理されているのが現状である。近年、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)と称する廃棄物固形燃料が市場に出されている。RPFは、古紙類、プリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の廃プラスチック類、おがくず、解体材等の木くず類を原料とし、発熱量が大きい利点がある。
【0003】
しかし、RPFは、ポリ塩化ビニル(PVC)や繊維強化プラスチック(FRP)等を原料とするとダイオキシンや塩素系ガスが発生するため、これらの塩素系プラスチックは原料にできないうえ、RPF-cokeでは全塩素分は0.6質量分率(%)以下に制限されているものの(JISZ7311:2010)、実際には0.5質量分率(%)程度の塩素が含まれ、ボイラーの壁面を腐食させる原因となっていた。
さらに、RPFは、塩素を含む廃プラスチック、金属類、非鉄金属類、ガラス、食品、飲料水等を付着する物は原料にできないため、利用できる原料に制約があった。多量に塩素を含む廃プラスチックについては、燃焼時に炉壁の溶損が著しく大きく、耐火レンガの寿命を短くし、ランニングコストの上昇を招く要因となっている。
このように、塩素リッチなRPFは普及していないのが現状であり、塩素を含む廃プラスチックの有効利用が望まれていた。
【0004】
特許文献1-3には、石炭から得られる微粉炭と、塩素を含む熱可塑性プラスチックを加熱して得られる加熱処理物とを含む固体燃料が記載されている。この固形燃料は、熱可塑性プラスチック100質量部に対して微粉炭50~500質量部の割合で混合して、プラスチックの熱量の高さを微粉炭で調整しているが、コストが高く、燃焼中に黒煙が発生し、粉塵が出るという問題があった。
【0005】
塩素を多量に含有する産業廃棄物プラスチックは、成型時に半溶融又は半軟化状にして、スクリーン状の孔開き鉄板を通してペレット状に成型するときに金型に融着するという問題があり、作業効率が低下し、生産性が悪いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5549169号明細書
【特許文献2】特許第5549168号明細書
【特許文献3】特許第5759099号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる従来の問題点に鑑みてなされたもので、塩素系ガスの発生が少なく、塩素系廃プラスチックも使用することができる、廃プラスチックを含む固形燃料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)産業廃棄物プラスチックを含む固形燃料であって、
産業廃棄物プラスチックを還元性雰囲気下で加熱、溶融して得られる加熱溶融処理物からなる第1層と、
無機繊維物と結合剤からなる第2層と
からなる。
この固形燃料は、無機繊維物の第2層の量を調整することで、比重を調整することができるとともに、第1層の産業廃棄物プラスチックに含まれる塩素を減少することができる。また、第1層の産業廃棄物プラスチックが還元性雰囲気下で加熱、溶融して得られる加熱溶融処理物からなるので、成型時の金型への融着がなく、作業効率が向上するとともに、製造時の発火、燃焼を回避し、火災を防止することができる。さらに、塩素を含有する塩化ビニル系の産業廃棄物プラスチックの積極的な有効利用を図り、塩素化合物による地球環境の悪影響を削減することができるとともに、海洋におけるマイクロプラスチックの大幅な削減により、生態系の破壊防止に役立つものである。
(2)前記手段1において、
前記産業廃棄物プラスチックは、5~95質量%、
前記無機繊維物は、5~50質量%、
前記結合剤は、0.5~50質量%含む。
(3)前記手段1又は2において、
前記産業廃棄物プラスチックは、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂を含む。
(4)前記手段1から3のいずれかにおいて、
前記固形燃料は、灰分20質量%以下、固定炭素20~30質量%、揮発分50~70質量%を含む。
(5)前記手段4において、
前記灰分は、酸化カルシウム(CaO)5質量%以下、二酸化珪素(SiO2)10質量%以下、酸化アルミニウム(Al2O3)5質量%以下を含む。
(6)前記手段1から5のいずれかにおいて、
塩素分が0.2質量%以下である。
(7)前記手段1から6のいずれかにおいて、
比重が0.3~0.8である。
(8)前記手段1から7のいずれかにおいて、
前記第1層又は前記第2層のいずれか一方の層は、円柱状で、他方の層は、中空円筒状で、軸方向に延びる内部を有し、
前記他方の層の内部に円柱状の前記一方の層が挿入される。
(9)前記手段1から7のいずれかにおいて、
前記第1層又は前記第2層のいずれか一方の層は、半割円柱状で、他方の層は、半割円筒状で、軸方向に延びる溝部を有し、
前記他方の層の溝部に半割円柱状の前記一方の層が挿入される。
【0009】
(10)産業廃棄物プラスチックを含む固形燃料の製造方法は、
産業廃棄物プラスチックからなる主原料から第1層を形成する第1層形成工程と、
無機繊維物からなる副原料から第2層を形成する第2層形成工程と、
前記第1層と前記第2層を接合して積層体を形成する接合工程と、
を備える。
(11)前記手段10において、
前記積層体を乾燥する乾燥工程をさらに備える。
(12)前記手段10又は11において、
前記第1層形成工程は、
産業廃棄物プラスチックからなる主原料を定量供給する定量供給工程と、
主原料を還元性雰囲気下で加熱、溶融しつつ混合し、混錬する混合・混錬工程と、
混錬した主原料を所定形状に押し出して成型する成型工程と、
を備える。
(13)前記手段10から12のいずれかにおいて、
前記第2層形成工程は、
無機繊維物からなる副原料を定量供給する定量供給工程と、
副原料と結合剤を混合し、混錬する混合・混錬工程と、
混錬した副原料を所定形状に押し出して成型する成型工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塩素系ガスの発生が少なく、塩素系廃プラスチックも使用することができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る固形燃料であって、中空円筒状の外層の内部に内層を挿入した固形燃料の斜視図。
【
図2】本発明に係る固形燃料の変形例であって、中空半割円筒状の外層の溝部に内層を挿入して接合した固形燃料の斜視図。
【
図4】
図1に示す固形燃料の製造装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る固形燃料1を示す。固形燃料1は、第1層としての内層2と、第2層としての外層3とからなる。
【0014】
内層2は、産業廃棄物プラスチックを還元性雰囲気下で加熱、溶融して得られる加熱溶融処理物からなる。内層2は、円柱状で、外層3の内部に挿入されている。
【0015】
外層3は、無機繊維物と結合剤からなり、柔軟性を有する。外層3は、内径が5~90mm、長さ50~150mmの中空円筒状で、軸方向に延びる内部を有する。
【0016】
図1の固形燃料1では、第1層の内層2は円柱状で、第2層の外層3は中空円筒状であるが、
図2に示す固形燃料1aのように、第1層の内層2は半割円柱状で、第2層の外層3は半割円筒状で軸方向に延びる溝部を有し、外層3の溝部に内層2が挿入されるようにしてもよい。
【0017】
内層2の産業廃棄物プラスチック、外層3の無機繊維物及び結合剤の固形燃料全体に対する配合割合は以下の通りである。
産業廃棄物プラスチック: 5~95質量%、
無機繊維物: 5~50質量%、
結合剤: 0.5~50質量%
【0018】
産業廃棄物プラスチックとしては、各家庭や商店、事業所等から分別され回収されたペットボトル等のポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル樹脂、食品用トレイ等のポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂を含む。産業廃棄物プラスチックは、多すぎると燃焼時に塩素の発生が多くなり、少なすぎると発生熱量が少なくなるので、5~95質量%、好ましくは10~90質量%とした。
【0019】
無機繊維物としては、ロックウール、古紙、おがくず、解体屑、生ゴム、生スラッジ、焼成灰、フライアッシュ等を使用することができる。無機繊維物は、多すぎると低発熱量となり、少なすぎると低強度になるので、5~50質量%、好ましくは5~20質量%とした。
【0020】
結合剤としては、酢酸ビニル、リグニン、糖蜜、珪酸ナトリウム、アルファスターチ、カルボキシメチルセルロース、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を使用することができる。結合剤は、多すぎると増粘性になり、成型性及び生産性が悪くなり、少なすぎると低粘性になり、成型時の強度が低下し、生産性が著しく悪くなるので、0.5~50質量%、好ましくは0.5~20質量%とした。
【0021】
<内層の主原料>
内層2となる産業廃棄物プラスチックの原料は、工業分析により、
灰分: 5質量%以下、
固定炭素: 10~30質量%、
揮発分: 50~95質量%、
水分: 3質量%以下
である。
【0022】
灰分は、所定条件で燃焼したときの残留物の重量を原試料の重量に対する%で示した値であり、JISZ7302-4によって試験される。灰分は、少ないほど発熱量が高く、廃棄物が残りにくいため、
酸化カルシウム(CaO): 0.3質量%以下、
二酸化珪素(SiO2): 4.5質量%以下、
酸化アルミニウム(Al2O3): 0.5質量%以下
であることが好ましい。
【0023】
固定炭素は、水分、灰分、揮発分の合計を100から引いた残りとして算出される。固定炭素は、少ないほど燃焼性がよく、廃棄物が残りにくいため、10~30質量%とした。
【0024】
揮発分は、強熱減量(Ignition Loss)のことで、所定条件で加熱したときの減量の原試料の重量に対する%で示した値である。揮発分は、多いほど燃焼しやすいため、50~95質量%とした。
【0025】
水分は、所定条件で加熱乾燥したとき、その乾燥前後の質量差を資料に対する質量%で示した値であり、JISZ7302-3によって試験される。水分は、少ないほど発熱量が高く、着火しやすいため、3質量%以下とした。
【0026】
内層2となる産業廃棄物プラスチックは、熱処理炉内にアルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、窒素、一酸化炭素、炭酸ガス等の還元性ガスを充満させた還元性雰囲気下で加熱、溶融して得られる加熱溶融処理物である。還元性雰囲気下で加熱することで、成型時の金型への融着がなく、作業効率が向上するとともに、製造時の発火、燃焼を回避し、火災を防止することができる。
【0027】
<外層の副原料>
外層3となる無機繊維物と結合剤からなる原料は、工業分析により、
灰分: 40質量%以下、
固定炭素: 40~60質量%、
揮発分: 8~10質量%、
水分: 3質量%以下
である。
【0028】
灰分は、所定条件で燃焼したときの残留物の重量を原試料の重量に対する%で示した値であり、JISZ7302-4によって試験される。灰分は、少ないほど発熱量が高く、廃棄物が残りにくいため、
酸化カルシウム(CaO): 10質量%以下、
二酸化珪素(SiO2): 20質量%以下、
酸化アルミニウム(Al2O3): 10質量%以下
であることが好ましい。
【0029】
固定炭素は、水分、灰分、揮発分の合計を100から引いた残りとして算出される。固定炭素は、多くなるほど燃焼性がよく、廃棄物が残りにくいため、40~60質量%とした。
【0030】
揮発分は、強熱減量(Ignition Loss)のことで、所定条件で加熱したときの減量の原試料の重量に対する%で示した値である。揮発分は、多いほど燃焼しやすいため、8~10質量%とした。
【0031】
水分は、所定条件で加熱乾燥したとき、その乾燥前後の質量差を資料に対する質量%で示した値であり、JISZ7302-3によって試験される。水分は、少ないほど発熱量が高く、着火しやすいため、3質量%以下とした。
【0032】
<固形燃料全体の成分及び特性>
内層2と外層3からなる固形燃料1、1aの成分は、工業分析により、
灰分: 20質量%以下、
固定炭素: 20~30質量%、
揮発分: 50~70質量%、
水分: 1~10質量%以下
である。
【0033】
灰分は、所定条件で燃焼したときの残留物の重量を原試料の重量に対する%で示した値であり、JISZ7302-4によって試験される。灰分は、少ないほど発熱量が高く、廃棄物が残りにくいため、
酸化カルシウム(CaO): 5質量%以下、
二酸化珪素(SiO2): 10質量%以下、
酸化アルミニウム(Al2O3): 5質量%以下
であることが好ましい。
【0034】
全塩素分は、燃料中の塩素分の量を示す。全塩素分は、JISZ7302-6によって試験される。塩素は、燃焼時に有毒ガスが発生するため、0.2質量%以下とした、
【0035】
比重は、0.3~0.8であることが好ましい。本発明の固形燃料1、1aは、従来品(RPF)に比べて比重が比較的に小さいことにより、輸送や、運搬、投入等におけるハンドリングが容易で、使用量が減少する。
【0036】
本実施形態の固形燃料は、無機繊維物の外層3の量を調整することで、内層2と内層3の割合を変更し、比重を調整することができるとともに、内層2の産業廃棄物プラスチックに含まれる塩素を減少することができる。このため、本実施形態の固形燃料は、燃焼時に塩素系ガスの発生が少なくなり、主原料として塩素系廃プラスチックを使用し、その有効利用を図ることができる。
【0037】
固形燃料1、1aは、産業廃棄物プラスチックからなる第1層を円筒状又は半割円筒状の内層2、無機繊維物からなる第2層を円柱状又は半円柱状の外層3としたが、これと逆に、産業廃棄物プラスチックからなる第1層を円柱状又は半円柱状の外層3、無機繊維物からなる第2層を円筒状又は半割円筒状の内層2としてもよい。
【0038】
<固形燃料の製造方法>
次に、前記実施形態の固形燃料1の製造方法について説明する。
【0039】
図3、
図4に示すように、前記実施形態の固形燃料1の製造方法は、内層2を製造する工程と、外層3を製造する工程と、外層3に内層2を挿入して接合する接合工程と、切断工程と、乾燥工程とを有する。
【0040】
内層2の製造工程は、定量供給工程と、混合・混錬工程と、成型工程とを有する。
【0041】
定量供給工程では、原料貯蔵装置11に貯蔵された原料を定量供給装置12により一定量連続的に供給する。原料としては、産業廃棄物プラスチックで、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等を使用する。
【0042】
混合・混錬工程では、供給された原料を混合装置13により混合し、混錬する。混合装置13としては、二重のリボン形羽根を水平方向に設けたリボン式混合装置、モルタルを作るための縦形の攪拌はねを有するモルタル混合装置を利用することができる。
【0043】
成型工程では、混合・混錬された原料を前後に加熱溶融装置15a、冷却装置15bを備えた押出装置14により成型して円柱状すなわち棒状に連続して押し出す。押出装置14aのダイスを変更することで、成型品の径を変更することができる。押出装置14は、原料の投入口側に、還元雰囲気で原料を加熱する加熱溶融装置15aと、排出口側に還元雰囲気で成形品を水冷シャワーで冷却する冷却装置15bとが設けられている。投入口側にだけ加熱溶融装置15aを設けてもよい。加熱溶融装置15aは、混合装置13からの原料を受け入れる入口側と加熱された原料を排出する出口側に内部を密封空間とする開閉可能なドア15c、15dが設けられている。冷却装置15bにも入口側と出口側にドア15e、15fが設けられている。還元雰囲気は、加熱溶融装置15aと冷却装置15b内に、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、水素、一酸化炭素、炭酸ガス等の還元性ガスを吹き込み、200~300℃の温度に加熱し、大気圧に維持する。還元雰囲気で原料を加熱することで、成型時の金型への融着がなく、作業効率が向上するとともに、原料の発火・燃焼を回避し、火災を防止することができる。押出装置14は、混合・混錬工程を行う装置と一体に設けたものでもよい。
【0044】
外層3の製造工程は、定量供給工程と、混合・混錬工程と、成型工程とを有する。
【0045】
定量供給工程では、原料貯蔵装置11aに貯蔵された繊維状物質を定量供給装置12aにより一定量連続的に供給する。繊維状物質としては、古紙、おがくず、解体屑、生ゴム、生スラッジ、焼成灰、フライアッシュ等を適宜組み合わせて使用する。
【0046】
混合・混錬工程では、供給された繊維状物質と結合剤タンク11bに収容された結合剤を混合装置13aにより混合し、混錬する。結合剤としては、酢酸ビニル、リグニン、糖蜜、珪酸ナトリウム、アルファスターチ、カルボキシメチルセルロース、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれか又はこれらを組み合わせて使用する。混合装置13aとしては、二重のリボン形羽根を水平方向に設けたリボン式混合装置、モルタルを作るための縦形の攪拌はねを有するモルタル混合装置を利用することができる。
【0047】
成型工程では、混合・混錬された原料を押出装置14aにより成型して中空円筒状に連続して押し出す。押出装置14のダイスを変更することで、中空半割円筒状に成型することができる。また、中空円筒状、中空半割円筒状に限らず、三角、四角、五角、六角等の角筒状にも成型することができる。押出装置14aは、混合・混錬工程を行う装置を一体に設けたものでもよい。
【0048】
接合工程では、外層3の成型工程で成型される円筒状の成型物の内部に、内層2の成型工程で成型される円筒状の成型物を挿入して接合する。
【0049】
切断工程では、成型工程で押し出された成型品をカッター16により50mm~150mmの所定長さに切断する。
【0050】
乾燥工程では、切断された成型品を乾燥装置17又は大気雰囲気で乾燥又は冷却し、固形燃料の完成品とする。
【実施例0051】
内層を60質量%、外層を40質量%とし、内層としては、ポリエステル樹脂からなる主原料の廃プラスチックを準備し、外層としては、副原料のロックウール10%、生スラッジ20%、コークス紛67%、及び結合剤3%を準備し、前述の製造方法により製造した固形燃料の成分は、下記の通りであった。
灰分: 16.72質量%
固定炭素: 22.78質量%
揮発分: 57.60質量%
水分: 3.00質量%
灰分の内訳:
二酸化珪素(SiO2): 9.83質量%
酸化アルミニウム(Al2O3): 3.24質量%
酸化カルシウム(CaO): 3.55質量%
【0052】
表1は、従来の固形燃料(RPF)と本発明の固形燃料の比較を示す。
【表1】
【0053】
本発明の実施形態による固形燃料は、種々の分野で有効利用することができる。工業用ボイラーによる操業を行うメーカー向けのボイラー用燃料、製鉄鉄鋼業界の高炉、電炉用燃料、家庭、キャンプ、銭湯向け燃料、災害非常用燃料として使用できる。用途に応じて、径やサイズを調整し、バラで供給したり、小分けして梱包状態で販売することができる。
【0054】
また、本発明の固形燃料は、主原料として産業廃棄物であるプラスチック類を使用するため、この産業廃棄物プラスチックの再利用に貢献できる。廃棄物の発生元においては安定した廃棄物処理が可能となる。
産業廃棄物プラスチックは、逆有償廃棄物であるため、原料費を押さえて、安価に製造することができる。
従来使用されていた石炭等の化石燃料を減少し、二酸化炭素を削減する効果が期待でき、脱炭素に貢献できる。
産業廃棄物プラスチックは、産業廃棄物の中でも6,000~7,000Kcalという高熱量が得られるため、高い発電効率が期待できる。
本発明の産業廃棄物プラスチックを含む固形燃料の需要拡大により、産業廃棄物プラスチックの回収と再利用が促進し、海洋マイクロプラスチックの減少、生態系の破壊を防止することに大いに貢献できる。