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  • 特開-製鋼用副資材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019949
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】製鋼用副資材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/28 20060101AFI20250131BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
C21C5/28 B
C21C7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123879
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】515092068
【氏名又は名称】原口 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】原口 司郎
【テーマコード(参考)】
4K013
4K070
【Fターム(参考)】
4K013BA00
4K070AB18
4K070AC40
4K070BC04
(57)【要約】
【課題】カサ比重の調整が容易で、使用時のCOの発生が少なく、ロックウール廃材の有効利用に寄与する製鋼用副資材を提供する。
【解決手段】製鋼用副資材は、主原料としてロックウール1~95質量%、副原料として紛粒物1~95%、結合剤1~50%を含む。副原料の第1形態は、焼成灰、フライアッシュ、硅砂、レンガ屑の少なくともいずれかの紛粒物と、製紙スラッジとを含む。副原料の第2形態は、焼成灰、硅石紛の少なくともいずれかの紛粒物を含む。副原料の第3形態は、硅石紛、フライアッシュ、硅砂、レンガ屑、コークス、ベントナイト、ガラス粉、クレー、マグネシア、マグネシアクリンカー、マグカーボンの少なくともいずれかの紛粒物と、製紙スラッジとを含む。結合剤は、酢酸ビニル、リグニン、糖蜜、珪酸ナトリウム、アルファスターチ、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の少なくともいずれかを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料としてロックウール1~95質量%、副原料として紛粒物1~95%、結合剤1~50%を含む製鋼用副資材。
【請求項2】
前記副原料として、焼成灰、フライアッシュ、硅砂、レンガ屑の少なくともいずれかの紛粒物と、製紙スラッジとを含む請求項1に記載の製鋼用副資材。
【請求項3】
前記副原料として、焼成灰、硅石紛の少なくともいずれかの紛粒物を含む請求項1に記載の製鋼用副資材。
【請求項4】
前記副原料として、硅石紛、フライアッシュ、硅砂、レンガ屑、コークス、ベントナイト、ガラス粉、クレー、マグネシア、マグネシアクリンカー、マグカーボンの少なくともいずれかの紛粒物と、製紙スラッジとを含む請求項1に記載の製鋼用副資材。
【請求項5】
前記結合剤として、酢酸ビニル、リグニン、糖蜜、珪酸ナトリウム、アルファスターチ、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の少なくともいずれかを含む請求項1に記載の製鋼用副資材。
【請求項6】
主原料としてロックウール1~95質量%を水で湿潤させる湿潤工程と、
前記湿潤させたロックウールに増粘剤と水の混合物を加えて糊化する糊化工程と、
前記糊化したロックウールに、副原料として紛粒物1~95%、結合剤1~50%を混合して混錬する混錬工程と、
混錬した原料を所定形状に押し出して切断する押出工程と、
を含む製鋼用副資材の製造方法。
【請求項7】
押し出した成型品を乾燥させる乾燥工程をさらに含む請求項6に記載の製鋼用副資材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温材、抑制剤等の製鋼用副資材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄業や製鋼業では、溶銑鍋や取鍋に収容される溶融金属の湯面上に添加され、溶融金属の表面を覆うことにより溶融金属の温度低下を防止する保温材や、転炉の溶鋼表面に発生するスラグに投入してガスの抜け道を作り、スラグの発泡膨張(フォーミング)を抑制して吹きこぼれるのを防止するための抑制材等の製鋼用副資材が使用されている。
【0003】
保温材としては、現在、米を脱穀した後のモミガラと、製紙工場で発生するヘドロ状のスラッジをロータリーキルンで焼成したスラッジ焼成品とが主流である。モミガラは、近年安くはないが、発生する炭酸ガス(CO)が多いうえ、納入が不安定で在庫量の確保が不安定であるという問題がある。スラッジ焼成品は、化学成分の硫黄、リンの分析値が高めで、納入量が限定され、モミガラと比べてカサ比重が大きく、価格も割高であるという問題がある。
【0004】
抑制材としては、現在、製紙工場で発生する生スラッジと、転炉及び電炉で発生する産業廃棄物との混合物を押し出してブリケット状又は円柱状に成型し合成品が主流である。合成品は、生スラッジを主原料とするため、製造時にアンモニア臭が発生する。また、合成品は、炭素質を含有し、この炭素が溶鋼のスラグ中に含有されるFeOと反応してCOガスを発生する。このCOガスがスラグ中のガス圧を高める要因となって、スラグの膨張をもたらす。スラグのフォーミング抑制の点からすると、逆の効果になるので、抑制材の化学成分中に炭素質は低く保持したほうが好ましい。これはスラグ中のT-Feが高いときに激しく反応が見られるが、逆にスラグ中のT-Feが少ないときには炭素成分は発熱作用があり、スラグの流動性に寄与し、改善作用によりガスが抜けやすくなり、沈静化に役立つ一面がある。しかし、合成品は、カサ比重が小さいため、スラグの破泡作用が十分ではないし、多量のCOを排出する。
【0005】
このように、従来の製鋼用副資材は、使用時の発生するCOによる地球の温暖化が問題となっている。
【0006】
近年、製鋼用副資材として産業廃棄物を活用することが行われている。例えは、特許文献1には、建築系廃棄物、自動車系廃棄物を利用したフォーミング抑制材、特許文献2には、シュレッダーダストを利用した製鋼用副資材、特許文献3には、バイオマス焼成灰を利用した本願出願人によるスラグフォーミング抑制剤、特許文献4には、シュレッダーダスト、微粉シリコン又は/及び微紛炭化珪素、燃焼灰を利用する製鋼用フォーミング抑制材、特許文献5には転炉の使用済みMgO-C煉瓦を利用した保温材が記載されている。また、特許文献6には、アスベスト、ガラス繊維、ロックウール、スラグウール、FRP樹脂等の繊維状廃棄物を利用した製鉄用副資材が記載されている。
【0007】
ロックウール、スラグウールは、岩石や高炉スラグ、硅石を高温で溶解し、遠心力で吹き飛ばして繊維状に加工して製造され、断熱材や吸音材、耐火材として使用されるものであるが、製造時に多量の廃材が生じる。ロックウール廃材は、埋め立て処分され、あるいはセメントの増量材として使用されるが、その有効利用や再生処理が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5749386号明細書
【特許文献2】特開2018-178171号公報
【特許文献3】特開2016-196686号公報
【特許文献4】特開2015-57506号公報
【特許文献5】特開2009-132951号公報
【特許文献6】特開2007-253031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、カサ比重の調整が容易で、使用時のCOの発生が皆無となり、く、ロックウール廃材の有効利用に寄与する製鋼用副資材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)製鋼用副資材は、
主原料としてロックウール1~95質量%、副原料として紛粒物1~95%、結合剤1~50%を含む。
(2)前記手段1において、
前記副原料として、焼成灰、フライアッシュ、硅砂、レンガ屑の少なくともいずれかの紛粒物と、製紙スラッジとを含む。製紙スラッジは、強度上問題がなければ少量でもよく、使用しなくてもよい。
(3)前記手段1において、
前記副原料として、焼成灰、硅石紛の少なくともいずれかの紛粒物を含む。
(4)前記手段1において、
前記副原料として、硅石紛、フライアッシュ、硅砂、レンガ屑、コークス、ベントナイト、ガラス粉、クレー、マグネシア、マグネシアクリンカー、マグカーボンの少なくともいずれかの紛粒物と、製紙スラッジとを含む。
(5)前記手段1から4のいずれかにおいて、
前記結合剤として、酢酸ビニル、リグニン、糖蜜、珪酸ナトリウム、アルファスターチ、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の少なくともいずれかを含む。
【0011】
製鋼用副資材の製造方法は、
主原料としてロックウール1~95質量%を水で湿潤させる湿潤工程と、
前記湿潤させたロックウールに増粘剤と水の混合物を加えて糊化する糊化工程と、
前記糊化したロックウールに、副原料として紛粒物1~95%、結合剤1~50%を混合して混錬する混錬工程と、
混錬した原料を所定形状に押し出して切断する押出工程と、
を含む。
押し出した成型品を乾燥させる乾燥工程をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、副原料の配合率を変更することでカサ比重の調整を容易に行える。また、ロックウールを主原料とするので、使用時のCOの発生が皆無となり、脱炭素社会の実現に大きく寄与することができる一方、ロックウール廃材の有効利用に寄与し、大量に廃棄されるロックウールをもう一度原料として再利用することにより、ロックウール製造業者にとっては、廃棄に要する費用がゼロとなり、相当なコスト低減が可能となるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る製鋼用副資材の製造工程を示すフローチャート。
図2】本発明の実施形態に係る製鋼用副資材の製造装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
保温材や抑制剤として利用可能な製鋼用副資材は、主原料としてロックウール1~95質量%、好ましくは5~20%、副原料として紛粒物1~95%、好ましくは20~80%、結合剤1~50%、好ましくは0.5~20%を含む。
【0016】
主原料のロックウールは、ロックウールの製造過程で生じるロックウール廃材を回収して使用する。
【0017】
副原料の粉粒物の第1形態は、カサ比重が小さい保温材に適した配合にするために、製紙工場の廃材である焼成灰、フライアッシュ、硅砂、レンガ屑の少なくともいずれかの紛粒物と、製紙スラッジとを含む。製紙スラッジは、強度上問題がなければ少量でもよく、使用しなくてもよい。
【0018】
副原料の粉粒物の第2形態は、カサ比重が前記第1形態より大きい保温材に適した配合にするために、焼成灰、硅石紛の少なくともいずれかの紛粒物を含む。
【0019】
副原料の粉粒物の第3形態は、カサ比重が前記第2形態より大きく抑制剤に適した配合にするために、硅石紛、フライアッシュ、硅砂、レンガ屑、コークス、ベントナイト、ガラス粉、クレー、マグネシア、マグネシアクリンカー、マグカーボンの少なくともいずれかの紛粒物と、生強度を維持するための製紙スラッジとを含む。
【0020】
結合剤は、酢酸ビニル、リグニン、糖蜜、珪酸ナトリウム、アルファスターチ、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の少なくともいずれかを含む。
【0021】
次に、前記実施形態の製鋼用副資材の製造方法について説明する。
【0022】
図1図2に示すように、製鋼用副資材の製造方法は、ロックウール湿潤工程と、ロックウール糊化工程と、ロックウール混錬工程と、押出工程と、乾燥工程とを含む。
【0023】
ロックウール湿潤工程では、主原料として所定量に計量したロックウールを水で湿潤させる。ロックウールは、原料ヤードにバラの状態で貯留しておいたロックウール廃材を主原料貯蔵装置11に投入して、定量供給装置12により一定量連続的に混合装置13に供給し、水を加えて湿潤させる。
【0024】
ロックウール糊化工程では、混合装置13内において、ロックウール湿潤工程で湿潤させたロックウールに、増粘剤と水の混合物を加えて混錬し、糊化する。混合装置13としては、二重のリボン形羽根を水平方向に設けたリボン式混合装置、モルタルを作るための縦形の攪拌はねを有するモルタル混合装置を利用することができる。増粘剤としては、アルファスターチ、コーンスターチ、リグニン、カルボキシメチルセルロース、ポバール、ベントナイト、クレー等が使用できる。
【0025】
ロックウール混錬工程では、混合装置13で糊化したロックウールを混錬装置14に導入する一方、副原料貯蔵装置11aに貯蔵された紛粒物を定量供給装置12aにより一定量連続的に供給し、結合剤タンク11bに収容された結合剤とともに、混錬装置14に投入して、混錬する。混錬装置14としては、ミックスマーラー、タイヤ式、ローラー式の混錬装置を使用することができる。
【0026】
ロックウール混錬工程で混合する結合剤の種類及び配合を変更することで、比重を調整することができる。
【0027】
押出工程では、ロックウール混錬工程で混錬した原料を押出成型機15を使用して所定形状に押し出して切断する。押出成型機15としては、ペレタイザーを使用できる。押し出し、切断後の形状は、保温材用には、径5~10mm、長さ10~15mm、抑制材用には、径50~60mm、長さ50~60mmが好ましい。
【0028】
乾燥工程では、押し出した成型品を軽乾燥炉16で乾燥させる。軽乾燥炉16としては、プロパンバーナ、ネット型乾燥機、台車挿入型乾燥炉、ロータリーキルン等を使用できる。
【0029】
<実施例1(保温材)>
票1は、主原料としてロックウール30質量%、副原料の紛粒物として焼成灰60質量%、結合剤として2%の配合で、前述の方法により製造した本発明の保温材を、従来の保温材(スラッジ焼成品、モミガラ)と比較して示す。
【表1】
【0030】
表2は、従来の保温材(スラッジ炭化物)と本発明の保温材の比較を示す。
【表2】
表2に示すように、本発明の保温材は、CO2の発生が皆無であり、煙や粉塵も無く、作業環境が大幅に改善され、比重も従来品より小さくため、原単位は少なくなり、価格も安価になる。
【0031】
<実施例2(抑制剤)>
表3は、主原料としてロックウール10質量%、副原料の紛粒物として焼成灰70質量%、結合剤として2質量%の配合で、前述の方法により製造した本発明の抑制材を、従来の抑制材(50から60年前、30から40年前に使用されていたもの、及び現在使用されているもの)と比較して示す。
【表3】
【0032】
表4は、従来の抑制剤(スラッジ炭化物)と本発明の抑制材の比較を示す。
【表4】
表4に示すように、本発明の抑制材は、COの発生が皆無であり、煙や粉塵も無く、作業環境が大幅に改善され、価格も安価になる。
【0033】
本発明の実施形態による製鋼用副資材は、副原料の配合率を変更することでカサ比重の調整を容易に行える。また、ロックウールを主原料とするので、使用時のCOの発生が少なくなり、脱炭素社会の実現に大きく寄与することができる一方、ロックウール廃材の有効利用に寄与することができる。すなわち、大量に廃棄されるロックウールをもう一度原料として再利用することにより、ロックウール製造業者にとっては、廃棄に要する費用がゼロとなり、相当なコスト低減が可能となる。
【符号の説明】
【0034】
11…原料貯蔵装置
11a…副原料貯蔵装置
11b…結合剤タンク
12,12a…定量供給装置
13,13a…混合装置
14…混錬装置
15…押出装置
16…乾燥装置
図1
図2