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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001996
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】浮標
(51)【国際特許分類】
   B63B 22/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B63B22/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101851
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】519298514
【氏名又は名称】炎重工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】古澤 洋将
(57)【要約】
【課題】本開示は、姿勢の変動を抑制する浮標を提供する。
【解決手段】貫通孔を有する浮体と、前記貫通孔を貫通し、水中に位置する第1端部と、空中に位置する第2端部と、を有する支柱と、前記浮体と前記支柱との間に設けられ、前記支柱を前記第2端部の側に押す弾性部材と、を備える浮標。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する浮体と、
前記貫通孔を貫通し、水中に位置する第1端部と、空中に位置する第2端部と、を有する支柱と、
前記浮体と前記支柱との間に設けられ、前記支柱を前記第2端部の側に押す弾性部と、
を備える、
浮標。
【請求項2】
前記第2端部に接続される上部と、
前記第1端部に接続される下部と、
を備える、
請求項1に記載の浮標。
【請求項3】
前記浮体の位置を検出する位置検出部と、
前記浮体を移動させる推進力を発生する推進部と、
前記位置検出部が検出した前記位置が、予め定められた範囲内になるように前記推進部を制御する制御部と、
を更に備える、
請求項2に記載の浮標。
【請求項4】
前記位置検出部は、全球測位衛星システムにより測位し、
前記位置検出部は、前記上部に設けられるアンテナに接続する、
請求項3に記載の浮標。
【請求項5】
前記下部にカメラを備える、
請求項3に記載の浮標。
【請求項6】
複数の前記推進部を備える、
請求項3に記載の浮標。
【請求項7】
前記下部に、バッテリを収納するバッテリ収納ボックスを備える、
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の浮標。
【請求項8】
前記上部に、発光部を備える、
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の浮標。
【請求項9】
ロープが結びつけられる結合部を備える、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の浮標。
【請求項10】
外部と通信する通信部を備える、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の浮標。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮標に関する。
【背景技術】
【0002】
海上での工事を行う際に、工事区域を明示するために浮標を海上に設置する場合がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-117980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浮標は、波の影響により姿勢が大きく変動する場合があった。
【0005】
本開示は、姿勢の変動を抑制する浮標を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、貫通孔を有する浮体と、前記貫通孔を貫通し、水中に位置する第1端部と、空中に位置する第2端部と、を有する支柱と、前記浮体と前記支柱との間に設けられ、前記支柱を前記第2端部の側に押す弾性部材と、を備える浮標である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の浮標によれば、姿勢の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る浮標の斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る浮標の正面図である。
図3図3は、本実施形態に係る浮標における浮体及び接続部について説明するための分解斜視図である。
図4図4は、本実施形態に係る浮標における浮体及び接続部について説明するための断面図である。
図5図5は、本実施形態に係る浮標における機能構成を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る浮標における使用状態を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る浮標の使用例について説明する図である。
図8図8は、本実施形態の変形例に係る浮標の斜視図である。
図9図9は、本実施形態の変形例に係る浮標の正面図である。
図10図10は、本実施形態の変形例に係る浮標における制御部の機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施例に係る浮標の具体例を、以下に図面を参照しながら説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0010】
なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の又は対応する機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する場合がある。また、理解を容易にするために、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0011】
平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、それぞれ略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0012】
例えば、略平行は、2つの線又は2つの面が互いに完全に平行でなくても、製造上許容される範囲内で互いに平行として扱うことができることを意味する。他の略直角、略直交、略水平及び略垂直についても、略平行と同様に、2つの線又は2つの面の相互の位置関係が製造上許容される範囲内であればそれぞれに該当することが意図される。
【0013】
≪実施形態≫
本実施形態に係る浮標について説明する。本実施形態に係る浮標は、浮体と、浮体の位置を検出する位置検出部と、浮体を移動させる推進力を発生する推進部と、位置検出部が検出した位置が、予め定められた範囲内になるように推進部を制御する制御部と、を備える。本実施形態に係る浮標は、予め定められた範囲内に留まることができる。
【0014】
また、別の観点から本実施形態に係る浮標を説明する。本実施形態に係る浮標は、貫通孔を有する浮体と、貫通孔を貫通し、水中に位置する第1端部と、空中に位置する第2端部と、を有する支柱と、浮体と支柱との間に設けられ、支柱を第2端部の側に押す弾性部材と、を備える。本実施形態に係る浮標は、姿勢の変動を抑制できる。
【0015】
本実施形態に係る浮標について詳細を説明する。図1は、本実施形態に係る浮標の一例である浮標1の斜視図である。図2は、本実施形態に係る浮標の一例である浮標1の正面図である。図3は、本実施形態に係る浮標の一例である浮標1における浮体20及び接続部40について説明するための分解斜視図である。図4は、本実施形態に係る浮標の一例である浮標1における浮体20及び接続部40について説明するための断面図である。
【0016】
なお、図面には、説明の便宜のために、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸(XYZ軸)からなる仮想三次元座標系(XYZ直交座標系)が設定される場合がある。図面の紙面に対して垂直な座標軸について、座標軸の丸の中に黒丸印を示す場合、当該座標軸が紙面に対して手前側に向いていることを表している。また、座標軸の丸の中にバツ印を示す場合、当該座標軸が紙面に対して奥側に向いていることを表している。
【0017】
ただし、当該座標系は、説明のために定めるものであって、本実施形態に係る浮標の姿勢について限定するものではない。
【0018】
なお、以下の図面では、X軸方向及びY軸方向のそれぞれは、水平方向とする。Z軸は、垂直方向とする。また、X軸方向に沿って、対象を+X側からX軸の反対向きに見る図を正面図という。対象に対してZ軸方向に沿って+Z側を上側、-Z側を下側、という場合がある。
【0019】
浮標1は、上部10と、浮体20と、下部30と、接続部40と、弾性部50と、結合部60と、を備える。
【0020】
[上部10]
上部10は、使用時において、水面から空中に露出して設けられる。上部10は、使用時において、水面より上に設けられる。上部10は、制御部11を備える。制御部11は、例えば、回路基板として構成される。制御部11は、風雨、波浪等の使用環境における影響を低減するために、半球殻状の筐体10aの中に設けられる。
【0021】
制御部11は、浮標1における位置を計測する。言い換えると、制御部11は、浮標1の測位を行う。具体的には、制御部11は、衛星測位システムを用いて、浮標1の測位を行う。GPS(Global Positioning System)衛星に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から送信される信号を受信するアンテナ14aが、制御部11に接続される。制御部11は、アンテナ14aから受信したGNSS衛星の信号を処理して、浮標1の測位を行う。
【0022】
また、制御部11は、浮標1の位置を予め定められた位置に保持するように制御する。具体的には、制御部11は、後述する下部30が備える推進部31a及び推進部31bを制御して、浮標1が所望の位置に移動し、所望の位置において留まるように制御する。
【0023】
さらに、制御部11は、例えば、地上に設けられるコンピュータ、リモートコントローラ等の通信対象と通信する。通信対象と通信するためのアンテナ15aが、制御部11に接続される。制御部11は、アンテナ15aを介して、例えば、無線通信を行う。通信は、移動体通信網又はネットワーク等を介して通信してもよいし、1対1で通信してもよい。無線通信は、例えば、移動体通信網を介した通信でもよいし、無線LAN(Local Area Network)に関する通信規格に用いられる無線通信でもよい。なお、無線LANに用いられる通信規格は、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.11規格である。また、無線通信は、IEEE 802.15等の近距離無線通信でもよい。さらに、無線通信は、無線操縦用通信、いわゆる、ラジオコントロール用通信、を用いてもよい。
【0024】
制御部11と通信する通信対象は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の無線端末でもよいし、パーソナルコンピュータでもよいし、ラジオコントロール用のコントローラでもよい。
【0025】
さらに、発光部18aが、制御部11に接続される。発光部18aは、制御部11による制御に基づいて発光する。発光部18aは、例えば、LED(Light Emitting Diode)ランプである。制御部11は、発光部18aの点灯を制御する。また、カメラ19aが、制御部11に接続される。制御部11は、カメラ19aを制御するとともに、カメラ19aが撮影した画像を取得する。
【0026】
[浮体20]
浮体20は、浮標1を水面に浮かべるための浮力を発生させる。浮体20は、例えば、樹脂により形成される。浮体20は、両端が半球状である円筒型を有する。浮体20は、中央を貫通する貫通孔20hを有する。貫通孔20hには、後述する支柱41が貫通する。
【0027】
なお、図4において、浮体20は中実である例を示しているが、浮体20は中空であってもよい。また、浮体20の素材について、必要な浮力が発生可能であれば、浮体20は金属等で形成されてもよい。なお、浮標1を海において使用する場合、海水に含まれる塩分により腐食しないように、浮体20は樹脂により形成されるとよい。
【0028】
[下部30]
下部30は、使用時において、水中に設けられる。下部30は、上面視で矩形状の天板30p1及び底板30p2と、天板30p1と底板30p2を繋ぐ4本の棒状部材30rと、を備える。下部30は、推進部31a及び推進部31bと、バッテリ収納ボックス32a及びバッテリ収納ボックス32bと、を備える。推進部31a及び推進部31bのそれぞれは、いわゆる、スラスタである。また、下部30は、カメラ19aが取り付けられる。カメラ19aは、水中カメラである。
【0029】
推進部31a及び推進部31bのそれぞれは、天板30p1の下側の面に取り付けられる。カメラ19aは、天板30p1の上側の面に取り付けられる。バッテリ収納ボックス32aは、-Y側における2本の棒状部材30rの間にわたって取り付けられる側板30paに取り付けられる。バッテリ収納ボックス32bは、+Y側における2本の棒状部材30rの間にわたって取り付けられる側板30pbに取り付けられる。
【0030】
推進部31a及び推進部31bのそれぞれは、浮標1を移動させるための推進力を発生させる。推進部31a及び推進部31bのそれぞれは、図1及び図2のそれぞれにおけるX軸方向に推進力を発生させる。
【0031】
制御部11は、推進部31a及び推進部31bのそれぞれの出力を制御する。制御部11は、推進部31a及び推進部31bのそれぞれを同じ出力になるように制御することにより、浮標1を図1及び図2のそれぞれにおけるX軸方向に移動させる。また、制御部11は、推進部31a及び推進部31bの一方を他方より高出力になるように制御することにより、進行方向をX軸方向から推進部31a及び推進部31bの他方の向きに曲がりながら移動させる。さらに、制御部11は、推進部31a及び推進部31bの一方を他方と反対に出力するように制御することにより、浮標1を回転させる。
【0032】
バッテリ収納ボックス32aは、バッテリ33aを収納する。また、バッテリ収納ボックス32bは、バッテリ33bを収納する。バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれは、電力を貯蔵できれば種類は限定されない。バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれは、例えば、充放電可能な二次電池である。バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれは、例えば、リチウムイオンバッテリである。
【0033】
なお、バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれは、リチウムイオンバッテリに限らない。バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれは、二次電池として、例えば、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、でもよい。また、バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれは、例えば、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層コンデンサ等の大容量コンデンサでもよい。さらに、バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれは、例えば、一次電池でもよい。また、バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれは、燃料電池でもよい。
【0034】
バッテリ33a及びバッテリ33bから、動作に必要な電力が制御部11に供給される。制御部11は、バッテリ33a及びバッテリ33bから推進部31a及び推進部31bのそれぞれへの電力の供給を制御する。制御部11が、バッテリ33a及びバッテリ33bから推進部31a及び推進部31bのそれぞれへの電力の供給を制御することにより、推進部31a及び推進部31bのそれぞれの出力を制御する。
【0035】
バッテリ収納ボックス32a及びバッテリ収納ボックス32bのそれぞれに収納されるバッテリの数についても適宜定めてもよい。
【0036】
天板30p1、底板30p2及び棒状部材30rのそれぞれは、例えば、金属、樹脂により形成される。なお、浮標1を海において使用する場合、海水に含まれる塩分により腐食しないように、天板30p1、底板30p2及び棒状部材30rのそれぞれは樹脂により形成されてもよい。または、浮標1を海において使用する場合、海水に含まれる塩分により腐食しないように、天板30p1、底板30p2及び棒状部材30rのそれぞれは塩水に対して耐食性のある金属により形成されてもよい。また、浮標1を海において使用する場合、天板30p1、底板30p2及び棒状部材30rのそれぞれは塩分に対して耐食性のある塗装が施されてもよい。
【0037】
推進部31a、推進部31b、バッテリ収納ボックス32a及びバッテリ収納ボックス32bのそれぞれの素材についても同様である。
【0038】
バッテリ収納ボックス32a及びバッテリ収納ボックス32bのそれぞれは、水中において内部に水が入らないように、防水の耐圧容器であることが望ましい。
【0039】
[接続部40]
接続部40は、上部10と下部30とを接続する。また、接続部40は、浮体20を保持する。
【0040】
接続部40は、支柱41と、フランジ42及びフランジ43と、を備える。浮標1を使用する際に、支柱41の下側の端部に接続されるフランジ42は、水中に位置する。また、浮標1を使用する際に、支柱41の上側の端部に接続されるフランジ43は、空中に位置する。フランジ42は、下部30に接続される。フランジ43は、上部10に接続される。
【0041】
支柱41は、浮標1が備える上部10と下部30との間を接続する。支柱41は、フランジ42とフランジ43との間に浮体20を保持する。具体的には、支柱41は、浮体20に設けられる貫通孔20hを貫通する。また、支柱41は、浮体20とフランジ43と間に弾性部50を保持する。
【0042】
支柱41は、内部に上側の端部から下側の端部まで貫通する貫通路41hを有する。貫通路41hを通って、制御部11から推進部31a、推進部31b、バッテリ33a、バッテリ33b及びカメラ19aのそれぞれに接続されるケーブルが配線される。
【0043】
なお、上記の例では、接続部40は、支柱41の端部にフランジ42及びフランジ43を備えるが、上部10及び下部30と接続できれば、フランジ42及びフランジ43に換えて他の構成を採用してもよい。
【0044】
支柱41、フランジ42及びフランジ43は、例えば、樹脂により形成される。
【0045】
[弾性部50]
弾性部50は、浮標1を使用する際に、浮体20に対して、支柱41を上向きに押す。弾性部50は、浮体20と接続部40におけるフランジ43との間に設けられる。弾性部50は、例えば、圧縮コイルばねである。
【0046】
浮標1において、特に、下部30の重量により、浮力を考慮しても、接続部40は、下向きに力がかかる。そして、浮体20の浮力により、浮標1は水上に浮かぶ。浮標1が水上に浮かんでいる場合、弾性部50は、圧縮された状態になっている。
【0047】
弾性部50は、例えば、樹脂により形成される。
【0048】
[結合部60]
結合部60は、例えば、浮標1に接続されるロープが結びつけられる。結合部60に、例えば、地上又は水中に一端が固定されたロープの他端が結びつけられることにより、浮標1が遠くに流されて、回収不能となることを防止できる。また、結合部60に、例えば、ボート、船、いかだ等の浮遊体に一端が結びつけられたロープの他端が結びつけられることにより、浮遊体を係留できる。
【0049】
<機能構成>
本実施形態に係る浮標の機能について説明する。図5は、本実施形態に係る浮標の一例である浮標1における機能構成を示す図である。浮標1は、自動的に所望の位置に留まるように自律航行を行うために、制御部11を備える。制御部11が備える機能の概要について説明する。なお、図5は、浮標1が備える制御部11に接続する要素の一部も示す。
【0050】
制御部11は、演算部12と、慣性計測部13と、衛星測位部14と、無線通信部15と、モータ駆動部16a及びモータ駆動部16bと、電源制御部17と、発光駆動部18と、カメラ入出力部19と、を備える。各構成について詳細を以下に説明する。
【0051】
[演算部12]
演算部12は、浮標1の動作を制御する。演算部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を備えるマイクロプロセッシングユニットにより構成される。演算部12は、CPUがROMに記録されているプログラムをRAMに展開して実行することにより処理を行う。
【0052】
演算部12は、慣性計測部13と、衛星測位部14と、に接続する。そして、演算部12は、慣性計測部13及び衛星測位部14から入力される計測結果に基づいて、浮標1の動作状態を監視する。例えば、演算部12は、慣性計測部13から入力される計測結果に基づいて、浮標1の速度、浮標1の進行方向、浮標1の向きを監視する。また、演算部12は、衛星測位部14から入力される計測結果に基づいて、浮標1の位置、速度等を監視する。
【0053】
演算部12は、慣性計測部13及び衛星測位部14から入力される計測結果に基づいて、浮標1を所望の位置に留まるように自律航行させる。なお、浮標1は、指示された指令に基づいて、所望の位置に移動するように自律航行してもよい。また、浮標1は、例えば、無線コントローラ等を用いて、遠隔操作による手動航行を行ってもよい。
【0054】
[慣性計測部13]
慣性計測部13は、浮標1について運動状態を計測する。慣性計測部13は、例えば、三軸方向の加速度、三軸方向周りの角加速度及び三軸方向の方位の測定等を行う。
【0055】
慣性計測部13は、測定した結果を演算部12に出力する。演算部12は、慣性計測部13で測定した結果を用いて、自律航行のための制御を行う。
【0056】
[衛星測位部14]
衛星測位部14は、浮標1の位置を測定する。すなわち、衛星測位部14は、衛星測位システムを用いて測位を行う。衛星測位部14は、浮標1の位置、言い換えると、浮体20の位置、を検出する位置検出部の一例である。衛星測位部14は、例えば、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)における受信機である。衛星測位部14は、衛星から送信された測位信号をアンテナ14aにより受信して測位を行う。
【0057】
衛星測位部14は、測位した結果を演算部12に出力する。演算部12は、衛星測位部14で測定した結果を用いて、自律航行のための制御を行う。制御部11は、衛星測位部14で測定した浮標1の位置、言い換えると、浮体20の位置、が予め定められた範囲内になるように、推進部31a及び推進部31bのそれぞれを制御する。
【0058】
[無線通信部15]
無線通信部15は、外部の通信対象と通信を行う。無線通信部15は、アンテナ15aにより外部の通信対象とデータ等の送受信を行う。無線通信部15は、通信部の一例である。
【0059】
無線通信部15は、外部の通信対象から、例えば、浮標1を移動させるための制御指令を受信する。そして、無線通信部15は、受信した制御指令を演算部12に出力する。演算部12は、取得した制御指令に基づいて、自律航行のための制御を行う。
【0060】
また、無線通信部15は、例えば、浮標1において取得したデータや状態情報を、外部の通信対象に送信する。例えば、無線通信部15は演算部12からカメラ19aで取得した映像データが入力されると、アンテナ15aを介して、外部の通信対象に送信する。外部の通信対象は、例えば、ディスプレイ等に受信した映像データを表示する。
【0061】
[モータ駆動部16a及びモータ駆動部16b]
モータ駆動部16a、モータ駆動部16bは、それぞれ、推進部31aが備えるモータ31m、推進部31bが備えるモータ31nを駆動する。モータ駆動部16a及びモータ駆動部16bのそれぞれは、いわゆる、モータドライバである。
【0062】
モータ駆動部16a及びモータ駆動部16bのそれぞれは、演算部12に接続される。モータ駆動部16aは、演算部12からの指令に基づいて、推進部31aにおけるモータ31mを駆動する。モータ駆動部16bは、演算部12からの指令に基づいて、推進部31bにおけるモータ31nを駆動する。
【0063】
モータ駆動部16a及びモータ駆動部16bのそれぞれは、例えば、パルス幅変調により、モータに供給する電力を調整する。モータ駆動部16a及びモータ駆動部16bのそれぞれは、モータに供給する電力を調整することにより、モータに接続されるスクリュープロペラの回転速度を制御する。モータ駆動部16a及びモータ駆動部16bのそれぞれは、スクリュープロペラの回転速度を制御することにより、浮標1における航行する速度と進行方向を制御する。
【0064】
なお、推進部31a及び推進部31bのそれぞれは、モータ駆動部を介して、バッテリ33a及びバッテリ33bの少なくともいずれかから電力が供給される。
【0065】
[電源制御部17]
電源制御部17は、バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれを制御する。電源制御部17は、バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれについて、充電と放電を制御する。
【0066】
[発光駆動部18]
発光駆動部18は、発光部18aにおける点灯及び消灯を制御する。演算部12は、発光駆動部18を制御して、発光部18aを点灯又は消灯させる。
【0067】
制御部11は、例えば、衛星測位部14において、測位ができている場合、発光部18aにおいて緑色を点灯させるようにしてもよい。また、制御部11は、例えば、衛星測位部14において、測位ができていない場合、発光部18aにおいて赤色を点灯させるようにしてもよい。
【0068】
発光駆動部18は、発光部18aを、例えば、点灯と消灯を繰り返して点滅させるようにしてもよい。また、発光駆動部18は、発光部18aを、例えば、データに基づいて強度変調して通信可能に点灯させてもよい。
【0069】
なお、発光部18aについて、点灯させる色は、上記の例に限らず、例えば、青色、黄色、白色等を点灯するようにしてもよい。また、発光部18aはLEDランプに限らない。発光部18aは、LEDランプに換えて、例えば、白熱灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を用いてもよい。また、発光部18aは、回転灯でもよい。
【0070】
[カメラ入出力部19]
カメラ入出力部19は、カメラ19aの動作を制御するとともに、カメラ19aで撮影した画像を取得する。カメラ入出力部19は、取得したカメラ19aで撮影した画像を演算部12に出力する。
【0071】
カメラ19aにおいて取得する画像は、静止画でもよいし、動画でもよい。また、カメラ19aにおいて取得する画像は、カラーでもよいし白黒でもよい。さらに、カメラ19aにおいて取得する画像の帯域は、可視光に限らず、赤外光でもよい。また、カメラ19aは、水中カメラに限らず、例えば、上部10にカメラを設けて水上における画像を取得してもよい。
【0072】
なお、浮標1は、例えば、空中における温度を測定する温度計及び湿度計、水温を測定する温度計、照度計、気体又は液体の成分を分析する分析計等を搭載してもよい。そして、浮標1は、測定した結果を、無線通信部15を介して、外部に出力してもよい。
【0073】
<浮標の挙動>
本実施形態に係る浮標の挙動について説明する。図6は、本実施形態に係る浮標の一例である浮標1の使用状態を示す図である。
【0074】
水面SLにおいて、浮体20が浮くことにより、上部10は水面SLから上に露出する。水面SLが波により変動したときの影響について説明する。水面SLが両矢印付き線Faのように変動したとき、弾性部50は、緩衝装置として作用する。したがって、浮標1における上部10及び下部30の変動は、両矢印付き線Fbで示すように小さくなる。
【0075】
上部10の変動が小さくなることにより、例えば、発光部18aの位置変動が小さくなる。発光部18aの位置変動が小さくなることにより、離れた位置から浮標1を見る場合に、発光部18aから放たれる光の位置の揺らぎが小さくなり、視認性が向上する。また、上部10の変動が小さくなることにより、例えば、アンテナ14a及びアンテナ15aのそれぞれの位置変動が小さくなる。アンテナ14aの位置変動が小さくなることにより、安定して浮標1の測位ができる。また、例えば、アンテナ15aの位置変動が小さくなることにより、安定して通信できる。
【0076】
下部30の変動が小さくなることにより、例えば、カメラ19aの位置変動が小さくなる。カメラ19aの位置変動が小さくなることにより、水中で安定してカメラ19aの撮影ができる。
【0077】
<浮標の使用例>
本実施形態に係る浮標の使用例について説明する。図7は、本実施形態に係る浮標の一例である浮標1の使用例について説明する図である。
【0078】
図7(a)に示すように、浮標1を予め定められた位置に留まるようにすることにより、水面SL上に目印として配置できる。
【0079】
また、図7(b)に示すように、予め定められた位置に留まっている浮標1に浮遊体FLOを予め定められた位置に係留できる。
【0080】
≪変形例≫
本実施形態の変形例に係る浮標について説明する。本実施形態の変形例に係る浮標は、推進部の個数が本実施形態に係る浮標と異なる。
【0081】
本実施形態の変形例に係る浮標について詳細を説明する。図8は、本実施形態の変形例に係る浮標の一例である浮標2の斜視図である。図9は、本実施形態の変形例に係る浮標の一例である浮標の正面図である。
【0082】
浮標2は、上部110と、浮体20と、下部130と、接続部40と、弾性部50と、結合部161、結合部162及び結合部163と、を備える。なお、浮体20、接続部40、弾性部50については、本実施形態に係る浮標の一例である浮標1の説明を参照することとして、ここでは詳細な説明は省略する。
【0083】
[上部110]
上部110は、使用時において、水面から空中に露出して設けられる。上部110は、使用時において、水面より上に設けられる。上部110は、制御部111を備える。制御部111は、例えば、回路基板として構成される。制御部111は、風雨、波浪等の使用環境における影響を低減するために、円筒状の筐体110aの中に設けられる。浮標2は、筐体110aの上部に発光部18aを備える。
【0084】
制御部111の詳細について、浮標1における制御部11を参照することとする。
【0085】
[下部130]
下部130は、使用時において、水中に設けられる。下部130は、推進部131a、推進部131b及び推進部131cと、バッテリ収納ボックス132と、を備える。なお、推進部131a、推進部131b及び推進部131cとバッテリ収納ボックス132とは、接続部134によって接続される。
【0086】
推進部131a、推進部131b及び推進部131cのそれぞれは、浮標2を移動させるための推進力を発生させる。推進部131aは、図8及び図9のそれぞれにおけるX軸方向に推力を発生させる。推進部131bは、図8及び図9のそれぞれにおいて、Z軸方向に沿って+Z側からZ軸と反対方向に見て、X軸方向からZ軸を中心に-Y側に120°回転した方向に推進力を発生させる。推進部131cは、図8及び図9のそれぞれにおいて、Z軸方向に沿って+Z側からZ軸と反対方向に見て、X軸方向からZ軸を中心に+Y側に120°回転した方向に推進力を発生させる。
【0087】
制御部111は、推進部131a、推進部131b及び推進部131cのそれぞれの出力を制御する。制御部11が推進部131a、推進部131b及び推進部131cのそれぞれを制御することにより、浮標2は、XY平面において、向きを変えずに移動できる。
【0088】
バッテリ収納ボックス132は、バッテリ133を収納する。バッテリ133については、バッテリ33a及びバッテリ33bのそれぞれの説明を参照することとして、ここでは詳細な説明は省略する。
【0089】
[結合部161、結合部162及び結合部163]
上述のように、浮標2は、向きを変えずに移動可能になっている。そこで、浮標2は、結合部161、結合部162及び結合部163をXY平面に平行な面において、Z軸に沿う方向に120°回転した位置に備える。
【0090】
<機能構成>
本実施形態の変形例に係る浮標の機能について説明する。図10は、本実施形態の変形例に係る浮標の一例である浮標2における機能構成を示す図である。浮標2は、自動的に所望の位置に留まるように自律航行を行うために、制御部111を備える。制御部111が備える機能の概要について説明する。なお、図10は、浮標2が備える制御部111に接続する要素の一部も示す。
【0091】
制御部111は、演算部112と、慣性計測部13と、衛星測位部14と、モータ駆動部116a、モータ駆動部116b及びモータ駆動部116cと、電源制御部17と、発光駆動部18と、カメラ入出力部19と、を備える。本実施形態に係る浮標の一例である浮標1と共通の構成については、浮標1の説明を参照することとして、ここでは説明を省略する。
【0092】
[演算部112]
演算部112は、浮標2の動作を制御する。演算部112は、演算部12と同様の構成を有し、処理も同様の処理を行うことから、演算部12の説明を参照することとして、ここでは詳細な説明は省略する。
【0093】
[モータ駆動部116a、モータ駆動部116b及びモータ駆動部116c]
モータ駆動部116a、モータ駆動部116b、モータ駆動部116cは、それぞれ、推進部131aが備えるモータ131m、推進部131bが備えるモータ131n、推進部131cが備えるモータ131oを駆動する。モータ駆動部116a、モータ駆動部116b及びモータ駆動部116cのそれぞれは、いわゆる、モータドライバである。
【0094】
なお、上記の例では、2つ又は3つの推進部を用いているが、推進部の個数は2つ又は3つに限らず、4つ以上備えてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1、2 浮標
10、110 上部
10a 筐体
11 制御部
18a 発光部
19a カメラ
20 浮体
20h 貫通孔
30、130 下部
31a、31b、131a、131b、131c 推進部
32a、32b、132 バッテリ収納ボックス
33a、33b、133 バッテリ
40 接続部
41 支柱
42、43 フランジ
50 弾性部
60、161、162、163 結合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10