(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019979
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】内視鏡的縫合装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20250131BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
A61B17/04
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201141
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2023123437
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】浅野 励音
(72)【発明者】
【氏名】大塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 偉師
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB01
4C160BB11
4C160NN15
(57)【要約】
【課題】操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供する。
【解決手段】内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置1であって、アーム一端側にて縫合針17の保持部18をそれぞれ有する一対のアーム部12、13を有し、前記アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に前記縫合針を保持するアーム部12、13を交互に切り替え可能に構成され、前記保持部18が、前記縫合針17の一端を前記アーム部12、13に固定可能なロック状態になるよう付勢する付勢部32c、68bと、前記付勢部32c、68bの付勢に抗って、前記縫合針17の一端を前記アーム部12、13から着脱可能なアンロック状態に変更する操作が可能な操作部16a,16bと、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置であって、
アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する一対のアーム部を有し、前記アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に前記縫合針を保持するアーム部を交互に切り替え可能に構成され、
前記保持部が、前記縫合針の一端を前記アーム部に固定可能なロック状態になるよう付勢する付勢部と、
前記付勢部の付勢に抗って、前記縫合針の一端を前記アーム部から着脱可能なアンロック状態に変更する操作が可能な操作部と、
を有する
内視鏡的縫合装置。
【請求項2】
前記付勢部は、弾性部材の弾性力により、前記縫合針の端部を前記アーム部に固定可能なロック状態になるよう付勢する
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項3】
前記アーム一端側が閉じることで、前記保持部は、前記縫合針の端部を前記アーム部に固定可能なロック状態になる
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記管状挿入部に沿って配置される操作線を有し、
前記操作部は、装置本体部に対する前記操作線の近位側への牽引で、前記保持部を前記ロック状態から前記アンロック状態に変更する
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項5】
前記操作線は、前記一対のアーム部のそれぞれに独立して設けられた一対の操作線で構成され、
前記保持部は、独立して設けられた前記一対の操作線のそれぞれを操作することで、前記一対のアーム部のそれぞれで独立して、前記ロック状態と前記アンロック状態の切換えが可能である
請求項4に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項6】
前記縫合針は、両端に係合部を有し、
前記保持部は、前記係合部に係合可能な被係合部を有し、
前記ロック状態は、前記係合部に前記被係合部が係合した状態であり、
前記アンロック状態は、前記係合部と前記被係合部との係合が解除された状態である
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項7】
前記係合部は溝であり、
前記被係合部は爪である、
請求項6に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項8】
前記保持部は、前記縫合針を隔てて前記爪と対向する位置に位置決め部を有する
請求項7に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項9】
前記縫合針は、両端に係合部を有し、
前記保持部は、屈曲可能な板状部材を有し、
前記板状部材は、屈曲したときに前記縫合針の保持側に位置する前記係合部に係合可能な被係合部を有し、
前記ロック状態は、前記板状部材が屈曲して前記係合部に前記被係合部が係合した状態であり、
前記アンロック状態は、前記係合部と前記被係合部との係合が解除された状態である
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項10】
前記係合部は溝であり、
前記被係合部は凸部である、
請求項9に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項11】
前記縫合針は、両端に係合部を有し、
前記保持部は、
前記縫合針の端部を覆うカバー部と、前記カバー部の開放端に設けられて前記係合部に係合可能な被係合部と、を有し、
前記ロック状態は、前記カバー部が前記縫合針の端部を覆って前記係合部に前記被係合部が係合した状態であり、
前記アンロック状態は、前記係合部と前記被係合部との係合が解除された状態である
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項12】
前記係合部は溝であり、
前記被係合部は凸部である、
請求項11に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項13】
内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置であって、
アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する一対のアーム部を有し、前記アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に前記縫合針を保持するアーム部を交互に切り替え可能に構成され、
前記縫合針は、係合部と前記縫合針の一端を前記アーム部に固定可能なロック状態になるよう付勢する付勢部を有する係合部材を両端に有し、
前記保持部は、前記係合部に係合する被係合部と、前記付勢部の付勢に抗って、前記縫合針の一端を前記アーム部から着脱可能なアンロック状態に変更する操作が可能な操作部と、を有し、
前記付勢部は、一方が前記縫合針に固定され、他方が前記係合部と接続され、前記係合部が前記縫合針よりも径方向外側に突出する方向に前記係合部を付勢し、
前記ロック状態は、前記係合部が前記縫合針の径方向外側に突出して前記係合部と前記被係合部とが当接することで、前記縫合針が前記アーム部から抜ける方向への移動を規制する状態であり、
前記アンロック状態は、前記縫合針から径方向外側に突出する前記係合部が、近位側に移動可能な可動部に押されることで、前記係合部と前記被係合部との当接が解除された状態である
内視鏡的縫合装置。
【請求項14】
前記縫合針を近位側から支持する支持部をさらに有し、
前記可動部は、前記支持部の遠位側に配置され、前記ロック状態の前記縫合針の前記係合部の遠位側から前記係合部を近位側に移動させるように押下可能である
請求項13に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項15】
前記縫合針は、中空の筒部を有し、
前記係合部材は、前記筒部に収容される
請求項13に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項16】
前記一対の操作線は、前記アーム部を開閉動作させる開閉ワイヤと独立して操作可能である
請求項5に記載の内視鏡的縫合装置。
【請求項17】
前記内視鏡的縫合装置は、前記内視鏡の管状挿入部に着脱可能である
請求項1に記載の内視鏡的縫合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡的縫合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切開後の偶発症の発生リスクを抑制するために切開部の縫合を内視鏡下で行う手技が知られており、内視鏡下で切開部の縫合を行うための内視鏡的縫合装置も提案されている。例えば、特許文献1には、先端部で縫合針を保持する一対のアーム部を有し、開閉時に縫合針を保持するアーム部を切り替えて縫合を行う縫合装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の内視鏡的縫合装置では、内視鏡の近位側に設けられた操作部から長尺のワイヤを介して遠位側の縫合装置が操作される。ワイヤでの力の伝達は近位側に牽引する場合は比較的良好であるが、ワイヤに遠位側に押す力をかける場合にはワイヤの撓みなどで遠位側への力の伝達性が低下する。そのため、アーム部に縫合針を固定する操作が比較的に困難であった。
【0005】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置である。内視鏡的縫合装置は、アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する一対のアーム部を有し、前記アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に前記縫合針を保持するアーム部を交互に切り替え可能に構成され、前記保持部が、前記縫合針の一端を前記アーム部に固定可能なロック状態になるよう付勢する付勢部と、前記付勢部の付勢に抗って、前記縫合針の一端を前記アーム部から着脱可能なアンロック状態に変更する操作が可能な操作部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る縫合装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態の開閉機構部の構成例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る縫合装置の第1アーム部および第2アーム部の軸方向の断面を模式的に示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る保持部を模式的に示す斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係る縫合装置1の第1アーム部12および第2アーム部13の軸方向の断面を模式的に示す断面図である。
【
図8】第3実施形態に係る保持部を模式的に示す斜視図である。
【
図9】第3実施形態に係る縫合装置1の第1アーム部12および第2アーム部13の軸方向の断面を模式的に示す断面図である。
【
図10】第4実施形態に係る縫合装置1の第1アーム部12および第2アーム部13の軸方向の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係る内視鏡的縫合装置(以下、縫合装置とも称する)の構成例について説明する。なお、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。
【0010】
また、以下の説明では、内視鏡のオペレータからみて遠い方を遠位側と称し、オペレータからみて近い方を近位側と称する。図面では、内視鏡の長手方向(軸方向)を適宜矢印Axで示す。また、長手方向に略直交する方向を径方向と定義し、長手方向を中心とする回転方向を周方向と定義する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る縫合装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1の縫合装置の平面図である。
図3は、
図1の縫合装置の側面図である。
【0012】
縫合装置1は、内視鏡において生体管腔に挿入される管状挿入部2の遠位端に着脱可能に設けられる。縫合装置1は、内視鏡の管状挿入部2に対して着脱可能であるため、交換や殺菌消毒などのメンテナンスが容易である。なお、縫合装置1は、ディスポーザブルの製品として供給されてもよい。
【0013】
例えば、内視鏡は管状挿入部2が屈曲可能な軟性鏡であり、近位側からオペレータによって操作される。また、内視鏡の管状挿入部2の遠位端には、撮像部の対物レンズ3と、照明部4と、鉗子口5が設けられている。
【0014】
内視鏡は、広角の対物レンズ3を介して撮像部で生体管腔内を撮像し、生体管腔内の映像を不図示の表示装置にリアルタイムで表示出力できる。また、照明部4は、光ファイバーにより光源から導かれた光で生体管腔内を照らす。また、鉗子口5は、鉗子6などの処置具の出し入れや処置具による生体組織の採取のために設けられている。内視鏡は、
図3に示すように、管状挿入部2の鉗子口5から長手方向に鉗子6を進退させて、生体組織を鉗子6で把持することが可能である。
【0015】
縫合装置1は、取付部11と、第1アーム部12および第2アーム部13からなる一対のアーム部と、開閉機構部14と、開閉ワイヤ15と、操作線16a,16bとを備えている。操作線16a,16bは、操作部の一例である。取付部11、第1アーム部12、第2アーム部13および開閉機構部14は、管状挿入部2の遠位端に配置される。
【0016】
第1アーム部12および第2アーム部13は、遠位側の端部に縫合針17の一端を保持する保持部18をそれぞれ有している。また、第1アーム部12および第2アーム部13は、縫合針17が保持部18に固定されているロック状態と、縫合針17が保持部18に固定されていないロック解除状態(アンロック状態)とを切替可能である。保持部18の詳細については後述する。
【0017】
取付部11は、管状挿入部2の外径に対応する環状の部材である。取付部11の内側には、管状挿入部2の遠位端が着脱可能に挿入されて取付部11に保持される。また、取付部11の外周には、開閉機構部14を介して第1アーム部12および第2アーム部13が取り付けられる。
【0018】
第1アーム部12および第2アーム部13は、取付部11の遠位側に突出するようにV字状に開閉機構部14に支持され、内視鏡外周の接線方向と略平行な方向に開閉可能である。
図3に示すように、縫合装置1を管状挿入部2に取り付けたときには、第1アーム部12および第2アーム部13の先端は管状挿入部2よりも遠位側に位置する。また、
図3に示すように、各アーム部の先端は、各アーム部が閉じた状態で鉗子6の動線上に配置されている。
【0019】
第1アーム部12および第2アーム部13は、近位側よりも遠位側が径方向内側に向けて傾いて取り付けられている。例えば、各アーム部は、長手方向と略平行な位置から径方向内側に0.5°から50°、より好ましくは3°から35°傾けて取り付けられる。各アーム部を内向きに傾けて取り付けることで、縫合装置1が径方向外側のものと干渉しにくくなり、内視鏡をオーバーチューブや体内に挿入するときの通過性を向上させることができる。また、各アーム部を内向きに傾けて取り付けることで、内視鏡の撮像部の視野角中心に各アーム部の先端が近づき、縫合時の視認性を向上させることができる。また、内視鏡が動いたり屈曲部に位置したり、アーム位置が挿入後に少しズレたりしてもアーム部が視野の中心に映りやすくなり、内視鏡下でアーム部全体の確認が容易となる。
【0020】
また、各アーム部の先端に設けられ縫合針17の一端が固定される箇所は、内視鏡の撮像部の視野角中心から100%の範囲内に配置される。具体的には、管状挿入部2の遠位端を基準として、撮像部の視野角をθ1とし、視野角中心から各アーム部の先端が配置される範囲をθ2としたときに、θ2はθ1の90%以内にあることが好ましく、またθ2はθ1の80%以内にあることがより好ましく、さらにθ2はθ1の70%以内であることが特に好ましい。上記の条件で各アーム部の先端を配置することで、縫合箇所が撮像部の視野角から外れることや、撮像部の収差の影響で縫合時の視認性が低下することを抑制できる。
【0021】
また、例えば全層縫合のように生体組織を大きく巻き込んで縫合を行う場合、内視鏡の鉗子6で縫合する生体組織を内視鏡側に十分に引き込む必要が生じる。そのため、管状挿入部2の遠位端から各アーム部の先端までの長手方向寸法にある程度のマージンが必要となる。
【0022】
かかる観点から、例えば、管状挿入部2の遠位端から各アーム部の先端までの長手方向寸法は、例えば1mm以上80mm以下とすることが好ましく、3mm以上60mm以下とすることがより好ましい。例えば、管状挿入部2の遠位端から各アーム部の先端までを3mm以上とすることで、アーム部の先端が内視鏡の視野に入るため内視鏡下での縫合がより容易となる。また、管状挿入部2の遠位端から各アーム部の先端までを60mm以下とすることで、アームの先端をオーバーチューブに引っ掛けずに挿入することが容易となる。
【0023】
開閉ワイヤ15は、管状挿入部2に沿って長手方向に配置され、遠位側が開閉機構部14に接続されている。縫合装置1では、開閉ワイヤ15を近位側に牽引操作することで、開閉機構部14を介して縫合針17を保持する第1アーム部12および第2アーム部13を開閉させることができる。
【0024】
操作線16aは、管状挿入部2に沿って長手方向に配置され、遠位側が第1アーム部12の保持部18に接続されている。操作線16aを近位側に牽引操作することで第1アーム部12の保持部18が動作し、第1アーム部12の保持部18により縫合針17が固定されたロック状態と当該ロックが解除されたアンロック状態とを切り替えることができる。
【0025】
操作線16bは、管状挿入部2に沿って長手方向に配置され、遠位側が第2アーム部13の保持部18に接続されている。操作線16bを近位側に牽引操作することで第2アーム部13の保持部18が動作し、第2アーム部13の保持部18により縫合針17が固定されたロック状態と当該ロックが解除された状態を切り替えることができる。
【0026】
上記の開閉ワイヤ15,操作線16a,16bはそれぞれ独立に操作できる。開閉機構部14の操作と、保持部18の操作をそれぞれ別々のワイヤで行うことで、縫合装置1の精密な操作が可能となる。また、第1アーム部12と第2アーム部13の保持部18はそれぞれ異なる操作線16a,16bで別々に操作できる。そのため、本実施形態の縫合装置1は、両方のアーム部の保持部18を連動させる構成と比べると、一方のアーム部で針のロックに失敗した場合でも同じ側の保持部18を再操作してリカバリーすることが可能である。
【0027】
取付部11、第1アーム部12、第2アーム部13および開閉機構部14の材料としては、それぞれ生体適合性を有する金属などを適用することができ、例えばステンレスやチタン、ニチノールなどが挙げられる。また、開閉ワイヤ15および操作線16a,16bは、例えば、ステンレスやチタン、銅、ニチノールなどの金属細線のほか、高分子ファイバーの細線、フッ素チューブ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどを用いることができる。なお、開閉ワイヤ15と操作線16a,16bは同じ材料で形成されていてもよく、異なる部材で形成されていてもよい。
【0028】
図4は、第1実施形態の開閉機構部14の構成例を模式的に示す図である。なお、開閉機構部14は、
図4の構成に限定されず、開閉ワイヤ15の牽引で開閉可能な他の機構によるものでもよい。
【0029】
第1実施形態の開閉機構部14は、第1アーム部12および第2アーム部13を駆動させるリンク機構であり、本体部21と、原動節22と、第1中間節23と、第2中間節24とを有する。開閉機構部14のリンク機構は、中心軸線Cを基準とする平面上で線対称である。なお、中心軸線Cは、管状挿入部2の長手方向に対し径方向に傾く成分を含む。
【0030】
本体部21は、第1アーム部12および第2アーム部13を回動可能に支持するとともに、リンク機構の要素を収容する薄箱状の筐体である。本体部21は、リンク機構の要素を覆うカバーとしても機能する。本体部21でリンク機構が覆われることで、縫合糸の絡まりや、体液などの付着によってリンク機構に動作不良が生じる可能性を抑制できる。なお、
図4では、開閉機構部14の構造を理解しやすくするため、本体部21を平板状に描画している。
【0031】
本体部21の全体形状は、遠位側の辺が近位側の辺よりも長い台形状に形成され、本体部21の近位側が取付部11に固定される。上記のように、本体部21は、近位側よりも遠位側が径方向内側(
図4の紙面奥行側)に向けて傾くように取付部11に固定されている。
【0032】
また、本体部21の遠位側には、第1アーム部12が一方の端部(
図4の左側)に取り付けられ、第1アーム部12に対して間隔をあけて他方の端部(
図4の右側)に第2アーム部13が取り付けられている。第1アーム部12は、アームの基端側が第1支軸25で本体部21に回動自在に支持される。また、第2アーム部13は、アームの基端側が第2支軸26で本体部21に回動自在に支持される。なお、第1アーム部12および第2アーム部13は、不図示のばねにより開方向に付勢されている。
【0033】
原動節22は、細長の矩形状部材であり、中心軸線Cに沿って本体部21内に配置されている。原動節22の近位側端部には開閉ワイヤ15が接続されている。また、原動節22の遠位側端部には、第1中間節23の近位側端部および第2中間節24の近位側端部がそれぞれ連結されている。原動節22は、開閉ワイヤ15の牽引により中心軸線Cに沿って本体部22内を摺動し、これにより管状挿入部2の長手方向に相対的に変位する。
【0034】
第1中間節23および第2中間節24は、それぞれ細長の矩形状部材である。第1中間節23の近位側端部および第2中間節24の近位側端部は、いずれも原動節22の遠位側端部にピン22aにより回動自在に支持されている。
【0035】
また、第1中間節23の遠位側端部は、第1アーム部12にピン27を介して回動自在に連結されている。第1アーム部12のピン27の位置は、アームの先端側と第1支軸25の間に配置され、アームの先端側よりも第1支軸25に近い位置にある。
【0036】
同様に、第2中間節24の遠位側端部は、第2アーム部13にピン28を介して回動自在に連結されている。第2アーム部13のピン28の位置は、アームの先端側と第2支軸26の間に配置され、アームの先端側よりも第2支軸26に近い位置にある。
【0037】
ここで、上記のように第1アーム部12と第2アーム部13は不図示のばねの力で開方向に付勢されている。開閉ワイヤ15が牽引されていない状態では、第1アーム部12および第2アーム部13には閉方向の力が作用しないため、縫合装置1はアーム部が開いた状態を保つ(
図4(a))。
【0038】
上記の状態から開閉ワイヤ15が牽引されると、開閉機構部14の原動節22は長手方向の近位側に変位する。すると、原動節22の変位に伴って第1中間節23の近位側端部および第2中間節24の近位側端部の位置が近位側に移動し、第1中間節23および第2中間節24がそれぞれ近位側に引き込まれる。
【0039】
本体部21に第1支軸25で回動自在に支持された第1アーム部12は、第1中間節23の変位により、第1支軸25を中心として閉方向に回動する。同様に、本体部21に第2支軸26で回動可能に支持された第2アーム部13は、第2中間節24の変位により、第2支軸26を中心として閉方向に回動する。
以上のようにして、縫合装置1のアーム部は、開閉ワイヤ15の牽引によって開いた状態から閉じた状態に変化する(
図4(b))。
【0040】
図4に示す開閉機構部14は、リンク機構を介して開閉ワイヤ15の運動をアーム部に直接的に伝達し、開閉ワイヤ15の牽引による原動節22の変位をアーム部の先端側の開閉動作に変換できる。そのため、開閉機構部14は力の損失を抑制しつつアーム部を強い力で開閉でき、例えば全層縫合に適した縫合装置1を実現できる。また、開閉機構部14は、開閉ワイヤ15の牽引による簡易な操作でアーム部の開閉を切り替えることができる。
【0041】
次に、
図5を参照し、本発明の第1実施形態に係る保持部の構成例を説明する。
図5は、第1実施形態に係る縫合装置1の第1アーム部12および第2アーム部13の軸方向の断面を模式的に示す断面図である。なお、アーム部および保持部の構成は、第1アーム部12および第2アーム部13で共通のため、以下の説明では、第1アーム部12の構成について説明し、第2アーム部13の構成に関する重複説明は省略する。
【0042】
第1アーム部12は、中空の外殻部30を有し、外殻部30内に保持部18を備えて構成される。第1アーム部12の外殻部30の先端(遠位側の端部)であって、第2アーム部13と対向する位置には、外殻部30を貫通する貫通孔30aが設けられている。縫合針17の一端は、貫通孔30aを貫通して外殻部30内に収容され、保持部18によって固定される。
【0043】
ここで、縫合針17は、両端に針先17aが形成され、中央部には縫合糸を通す穴(不図示)を有している。また、縫合針17の両側には、針先17aよりも内側の位置に、縫合針17の延長方向と交差方向に延び、周方向に環状にくぼんだくびれ状の溝17bが形成されている。
【0044】
第1実施形態では、保持部18は、外殻部30内に第1部材31および第2部材32を有して構成される。
【0045】
第1部材31は、外殻部30内の遠位側の端部に例えば接着剤で固定される。第1部材31は、外殻部30と同一部品であってもよい。第1部材31は、縫合針17の挿入方向とほぼ平行な平行部31aと、平行部31aから近位側へと傾斜する傾斜部31bと、を有する。傾斜部31bの少なくとも一部の傾斜角度は、縫合針17の針先17aが挿入可能となるように、針先17aの傾斜角度とほぼ等しい。第1部材31は、縫合針17の位置を決める位置決め部として機能する。すなわち、保持部18は、縫合針17を隔てて爪32bと対向する位置に位置決め部として機能する第1部材31を有する。
【0046】
第2部材32は、軸方向と直交する方向に拡がる板状部材である。第2部材32における、第2アーム部13と対向する側と逆側の第1端32aは、外殻部30の内壁に例えば接着剤で固定される。第2部材32は、外殻部30と同一部品であってもよい。第2部材32は、第2アーム部13と対向する側に爪32bを有する。爪32bは、遠位側へと突出する。第2部材32は、少なくとも第1端32aと爪32bとの間に付勢部32cを有する。付勢部32cは、弾性部材であり、弾性により、爪32bを遠位側に付勢する。
【0047】
第1アーム部12と第2アーム部13とを近づける(アーム一端側を閉じる)と、縫合針17の針先17aは、付勢部32cの付勢力に抗って第1部材31と爪32bとの間隔を広げながら、貫通孔30aから外殻部30内に挿入される。縫合針17の溝17bが、軸方向で爪32bと対向する位置に達すると、付勢部32cの付勢力により、爪32bは溝17bに嵌まる。溝17bは、爪32bが係合する係合部として機能し、爪32bは、溝17bに係合する被係合部として機能する。このとき、第1部材31は、縫合針17の遠位側への移動を規制することで位置決めし、縫合針17が貫通孔30aから抜けないようにする。このように本実施形態では、操作線16aの操作を必要とせず、付勢部32cの付勢力により、保持部18のロック状態を維持することができる。本実施形態において、ロック状態は、溝17b(係合部)に爪32b(被係合部)が係合した状態である。なお、第1アーム部12および第2アーム部13の両方がロック状態になってもよいし、片方だけがロック状態になってもよい。
【0048】
なお、本実施形態では、縫合針17の溝17bおよび第2部材32の爪32bが係合部および被係合部として機能する構成としたが、本発明はこれに限られない。例えば、縫合針17に凸部を設け、第2部材32に溝を設け、第2部材32の溝に縫合針17の凸部が係合することで、係合部および被係合部として機能する構成としてもよい。
【0049】
第2部材32の爪32bは、操作線16aの遠位側に例えば接着剤で固定されている。操作線16aを近位側に牽引すると、第2部材32の爪32b側が第1端32aに対して下向きに反り(変形し)、溝17bと爪32bとの係合が解除され、保持部18をロック状態からアンロック状態に変更することができる。
【0050】
操作線16aと操作線16bとは、独立して操作可能であり、第1アーム部12と第2アーム部13とは、独立して、それぞれの保持部18のロック状態とアンロック状態の切換えが可能である。
【0051】
なお、本発明は、爪32bを遠位側に付勢するバネを、付勢部32cとは別に設けて、爪32bを遠位側に付勢する付勢力を増強してもよい。
【0052】
また、爪32bや溝17bの形状は、図示したものに限定されるものではなく、縫合針17が保持部18にロックされるものであれば、如何なる形状であってもよい。例えば、爪32bが遠位側に垂直に延びる形状、斜めに延びる形状、屈曲して延びる形状などでもよい。
【0053】
以下、第1実施形態の縫合装置1の効果を述べる。
【0054】
本実施形態によれば、操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供できる。
【0055】
また、縫合装置1の保持部18は、ロック状態を維持することに対し、特に操作が必要なく、アンロックするためにだけ操作線16aを操作すればよい。このため、本実施形態によれば、簡単な操作で、縫合針を保持するアーム部を切り替え可能である。
【0056】
また、付勢部32cの付勢力で爪32bをロック位置に押圧して縫合針17を固定することで、操作線16aがワイヤであったとしても撓みが生じて力を伝達させにくい押す方向への力を爪32bによって確実に作用させることができる。これにより、保持部18での縫合針17の固定操作の確実性が向上する。
【0057】
また、弾性部材である付勢部32cの弾性力で付勢するという簡単な構成で、ロック状態への付勢をすることができる。このため、部品数の削減、アーム部内のスペース削減、アーム部内のスペース削減に伴うアーム部の外殻サイズの小型化ができる。さらにアーム部の小型化により、低侵襲化にも寄与することができる。
【0058】
また、操作線の牽引という簡単な構成および操作で、保持部18のロック状態からアンロック状態への変更をすることができる。このため、部品数の削減、アーム部内のスペース削減、アーム部内のスペース削減に伴うアーム部の外殻サイズの小型化ができる。さらにアーム部の小型化により、低侵襲化にも寄与することができる。
【0059】
また、溝17bに爪32bが係合するという簡単な構成で、保持部18をロック状態にすることができる。
【0060】
また、位置決め部としての第1部材31と爪32bとで縫合針17の位置決めを行い、縫合針17のガタつきを軽減することができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、
図6および
図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る保持部の構成例を説明する。第2実施形態において、
図1乃至
図4に示した構造は第1実施形態と同様であるので、
図1乃至
図4を参照して説明する。
【0062】
図6は、第2実施形態に係る保持部を模式的に示す斜視図である。
図7は、第2実施形態に係る縫合装置1の第1アーム部12および第2アーム部13の軸方向の断面を模式的に示す断面図である。なお、アーム部および保持部の構成は、第1アーム部12および第2アーム部13で共通のため、以下の説明では、第1アーム部12の構成について説明し、第2アーム部13の構成に関する重複説明は省略する。また、第1実施形態と共通の要素には同じ符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0063】
第2実施形態では、保持部18は、外殻部30内に針ホルダ41を有して構成される。
【0064】
針ホルダ41は、板状部材を屈曲させて構成される。針ホルダ41は、遠位側の端部が外殻部30に固定され近位側に延びる第1板部41aを有する。針ホルダ41は、第1板部41aの近位側の端部で遠位側に屈曲して形成される第1凸部41bを有する。第1凸部41bは、近位側へと突出する。針ホルダ41は、第1凸部41bの遠位側の端部で近位側に屈曲し針先17aの形状に沿って延びる第2板部41cを有する。針ホルダ41は、第2板部41cの近位側の端部で針先17aの先端に応じた位置で屈曲する先端部41dを有する。針ホルダ41は、先端部41dから針先17aの形状に沿って延びる第3板部41eを有する。針ホルダ41は、第3板部41eの近位側の端部で遠位側に屈曲して形成される第2凸部41fを有する。第2凸部41fは、遠位側へと突出する。針ホルダ41は、第2凸部41fの遠位側の端部で近位側に屈曲し近位側に延びる第4板部41gを有する。第4板部41gの近位側の端部は、操作線16aの遠位側に例えば接着剤で固定されている。
【0065】
第1凸部41bおよび第2板部41cは、縫合針17の位置を決める位置決め部として機能する。保持部18は、縫合針17を隔てて第2凸部41fと対向する位置に位置決め部として機能する第1凸部41bを有する。
【0066】
先端部41dは、その先端が外殻部30の内壁の溝(凹部)に嵌まった状態となって、外殻部30に固定されていてもよい。また、先端部41dは、外殻部30の内壁に例えば接着剤で固定されてもよい。
【0067】
針ホルダ41のうち、少なくとも第3板部41eは、弾性部材であり、弾性により、第2凸部41fを遠位側に付勢する。
【0068】
板状部材である針ホルダ41は、屈曲したときに縫合針17の保持側(縫合針17を保持する側、すなわち第2アーム部13に対向する側)に位置する溝17bに係合可能な第2凸部41fを有する。
【0069】
第1アーム部12と第2アーム部13とを近づける(アーム一端側を閉じる)と、縫合針17の針先17aは、第3板部41eの付勢力に抗って第1凸部41bと第2凸部41fとの間隔を広げながら、貫通孔30aから外殻部30内に挿入される。縫合針17の溝17bが、軸方向で第2凸部41fと対向する位置に達すると、第3板部41eの付勢力により、第2凸部41fは溝17bに嵌まる。溝17bは、第2凸部41fが係合する係合部として機能し、第2凸部41fは、溝17bに係合する被係合部として機能する。このとき、第1凸部41bおよび第2板部41cは、縫合針17の遠位側への移動を規制することで位置決めし、縫合針17が貫通孔30aから抜けないようにする。このように本実施形態では、操作線16aの操作を必要とせず、第3板部41eの付勢力により、保持部18のロック状態を維持することができる。本実施形態において、ロック状態は、針ホルダ41が屈曲して溝17b(係合部)に第2凸部41f(被係合部)が係合した状態である。なお、第1アーム部12および第2アーム部13の両方がロック状態になってもよいし、片方だけがロック状態になってもよい。
【0070】
操作線16aを近位側に牽引すると、針ホルダ41の第2凸部41f側が先端部41dに対して下向きに反り(変形し)、溝17bと第2凸部41fとの係合が解除され、保持部18をロック状態からアンロック状態に変更することができる。
【0071】
また、第2凸部41fや溝17bの形状は、図示したものに限定されるものではなく、縫合針17が保持部18にロックされるものであれば、如何なる形状であってもよい。例えば、第2凸部41fが遠位側に垂直に延びる形状、斜めに延びる形状、屈曲して延びる形状などでもよい。
【0072】
また、先端部41dの先端が外殻部30に固定されず、針ホルダ41は、外殻部30に固定された第1板部41aの遠位側の端部と、操作線16aに固定された第4板部41gの近位側の端部との間で、第2凸部41fを遠位側へ付勢する付勢力を生じさせる構成であってもよい。
【0073】
以下、第2実施形態の縫合装置1の効果を述べる。
【0074】
本実施形態によれば、操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供できる。
【0075】
また、針ホルダ41を板状部材で形成したので、製作工程を簡略化することができ、コストを低減することができる。
【0076】
また、溝17bに第2凸部41fが係合するという簡単な構成で、保持部18をロック状態にすることができる。
【0077】
(第3実施形態)
次に、
図8および
図9を参照して、本発明の第3実施形態に係る保持部の構成例を説明する。第3実施形態において、
図1乃至
図4に示した構造は第1実施形態と同様であるので、
図1乃至
図4を参照して説明する。
【0078】
図8は、第3実施形態に係る保持部を模式的に示す斜視図である。
図9は、第3実施形態に係る縫合装置1の第1アーム部12および第2アーム部13の軸方向の断面を模式的に示す断面図である。なお、アーム部および保持部の構成は、第1アーム部12および第2アーム部13で共通のため、以下の説明では、第1アーム部12の構成について説明し、第2アーム部13の構成に関する重複説明は省略する。また、第1実施形態と共通の要素には同じ符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0079】
第3実施形態では、保持部18は、外殻部30内に針ホルダ51を有して構成される。
【0080】
針ホルダ51は、縫合針17の針先17a(端部)の全周を覆う形状を有する。針ホルダ51は、遠位側の端部が外殻部30に固定され近位側に延びる第1板部51aを有する。針ホルダ51は、カバー部51cの開放端に設けられ、第1板部51aから近位側に突出するよう形成された第1凸部51bを有する。針ホルダ51は、縫合針17の針先17aを覆うカバー部51cを有する。針ホルダ51は、カバー部51cの開放端に設けられ、第2板部51eから遠位側に突出するよう形成された第2凸部51dを有する。針ホルダ51は、第2凸部51dから近位側に延びる第2板部51eを有する。第2板部51eの近位側の端部は、操作線16aの遠位側に例えば接着剤で固定されている。
【0081】
カバー部51cは、開放端から軸方向と直交する方向に入った切り込みであるスリット51caを有する。カバー部51cは、スリット51caよりも遠位側に位置する遠位側カバー部51cbと、スリット51caよりも近位側に位置する近位側カバー部51ccと、を有する。カバー部51cは、開放端と逆側の端部に先端部51cdを有する。
【0082】
遠位側カバー部51cbおよび第1凸部51bは、縫合針17の位置を決める位置決め部として機能する。保持部18は、縫合針17を隔てて第2凸部51dと対向する位置に位置決め部として機能する第1凸部51bを有する。
【0083】
先端部51cdは、例えば、その先端が外殻部30の内壁の被係合部に係合されてもよいし、その先端が外殻部30の内壁に接着剤で固定されてもよい。
【0084】
針ホルダ51のうち、少なくとも近位側カバー部51ccは、弾性部材であり、弾性により、第2凸部51dを遠位側に付勢する。
【0085】
第1アーム部12と第2アーム部13とを近づける(アーム一端側を閉じる)と、縫合針17の針先17aは、近位側カバー部51ccの付勢力に抗って第1凸部51bと第2凸部51dとの間隔を広げながら、貫通孔30aから外殻部30内に挿入される。縫合針17の溝17bが、軸方向で第2凸部51dと対向する位置に達すると、近位側カバー部51ccの付勢力により、第2凸部51dは溝17bに嵌まる。溝17bは、第2凸部51dが係合する係合部として機能し、第2凸部51dは、溝17bに係合する被係合部として機能する。このとき、第1凸部51bおよび遠位側カバー部51cbは、縫合針17の遠位側への移動を規制することで位置決めし、縫合針17が貫通孔30aから抜けないようにする。このように本実施形態では、操作線16aの操作を必要とせず、近位側カバー部51ccの付勢力により、保持部18のロック状態を維持することができる。本実施形態において、ロック状態は、カバー部51cが縫合針17の針先17a(端部)を覆って溝17b(係合部)に第2凸部51d(被係合部)が係合した状態である。なお、第1アーム部12および第2アーム部13の両方がロック状態になってもよいし、片方だけがロック状態になってもよい。
【0086】
操作線16aを近位側に牽引すると、針ホルダ51の第2凸部51d側が先端部51cdに対して下向きに反り(変形し)、溝17bと第2凸部51dとの係合が解除され、保持部18をロック状態からアンロック状態に変更することができる。
【0087】
また、第2凸部51dや溝17bの形状は、図示したものに限定されるものではなく、縫合針17が保持部18にロックされるものであれば、如何なる形状であってもよい。例えば、第2凸部51dが遠位側に垂直に延びる形状、斜めに延びる形状、屈曲して延びる形状などでもよい。
【0088】
また、先端部51cdの先端が外殻部30に固定されず、針ホルダ51は、外殻部30に固定された第1板部51aの遠位側の端部と、操作線16aに固定された第2板部51eの近位側の端部との間で、第2凸部51dを遠位側へ付勢する付勢力を生じさせる構成であってもよい。
【0089】
以下、第3実施形態の縫合装置1の効果を述べる。
【0090】
本実施形態によれば、操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供できる。
【0091】
また、カバー部51cが縫合針17の端部を覆うことで、縫合針17の針先17aを保護することができる。
【0092】
また、溝17bに第2凸部51dが係合するという簡単な構成で、保持部18をロック状態にすることができる。
【0093】
(第4実施形態)
次に、
図10を参照し、本発明の第4実施形態に係る保持部の構成例を説明する。第4実施形態において、
図1乃至
図4に示した構造は第1実施形態と同様であるので、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図10は、第4実施形態に係る縫合装置1の第1アーム部12および第2アーム部13の軸方向の断面を模式的に示す断面図である。なお、アーム部および保持部の構成は、第1アーム部12および第2アーム部13で共通のため、以下の説明では、第1アーム部12の構成について説明し、第2アーム部13の構成に関する重複説明は省略する。また、第1実施形態と共通の要素には同じ符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0094】
第1アーム部12は、中空の外殻部30を有し、外殻部30内に保持部60を備えて構成される。第1アーム部12の外殻部30の先端(遠位側の端部)であって、第2アーム部13と対向する位置には、外殻部30を貫通する貫通孔30aが設けられている。縫合針67の一端は、貫通孔30aを貫通して外殻部30内に収容され、保持部60によって固定される。また、外殻部30の内側には、被係合部の一例として、後述する係合部68aと係合する被係合面30bが貫通孔30aの遠位側に設けられている。
【0095】
ここで、縫合針67は、両端に針先67aが形成され、中央部には縫合糸を通す穴(不図示)を有している。縫合針67の両側には、針先67aよりも内側の位置に、中空の筒部67bを有する。筒部67bの軸方向の両側には、後述する係合部68cを径方向外側に突出可能とするための開口がそれぞれ形成されている。また、縫合針67は、筒部67bに収容される係合部材68を有する。
【0096】
係合部材68は、支柱部68aと付勢部68bと係合部68cとを有する。係合部材68の支柱部68a、付勢部68b、係合部68cは、弾性変形可能な材料で一体に形成されている。付勢部68bは、一方が支柱部68aに接続され、他方が係合部68cに接続される。支柱部68aは、筒部67b内で縫合針67に固定される。付勢部68bは、一方が支柱部68aを介して縫合針67に固定され、弾性により係合部68cを径方向外側に付勢する。
【0097】
係合部68cは、付勢部68bの他方側の端部に形成された突起であり、付勢部68bに付勢されることによって、縫合針67の筒部67bに形成された開口から縫合針67の径方向外側に突出する。また、係合部68cは、付勢部68bの付勢に抗って、縫合針67の径方向外側に突出しないように、縫合針67内に収容可能である。また、係合部68cは、縫合針67の径方向外側に突出した状態のときに、針先67aと反対側に向いた係合面68dを有している。
【0098】
なお、貫通孔30aの孔径は、係合部68cが径方向外側に突出しない状態の縫合針67の太さよりも大きく、係合部68cが径方向外側に突出した状態の縫合針67の太さよりも小さい寸法である。
【0099】
第4実施形態では、保持部60は、外殻部30内に第1部材61および第2部材62を有して構成される。第1部材61は、可動部の一例である。第2部材62は、支持部の一例である。
【0100】
第1部材61は、外殻部30内で貫通孔30aよりも遠位側に設けられ、操作線16aに接続されている。操作線16aを近位側に牽引すると、第1部材61は近位側(
図10の下側)に移動可能である。第1部材61は、外殻部30内に収容された縫合針67の係合部68cに対して間隔を空けて配置され、操作線16aを近位側に牽引したときに縫合針67の係合部68cと当接する。なお、操作線16aは、縫合針67の一端をアーム部12から着脱可能なアンロック状態に変更する操作が可能な操作部の一例である。
【0101】
第2部材62は、外殻部30内で貫通孔30aよりも近位側に設けられる。第2部材62は、外殻部30内に収容された縫合針67を近位側で受け、保持部60において縫合針67を位置決めする機能を担う。第2部材62は、例えば接着剤で外殻部30に固定される。第2部材62は、外殻部30と同一部品であってもよい。
【0102】
第1アーム部12と第2アーム部13とを近づける(アーム一端側を閉じる)と、縫合針67の係合部68cは貫通孔30aの側壁に押され、付勢部68bの付勢力に抗って、縫合針67の径方向外側に突出しないように縫合針67内に収容される。貫通孔30aの孔径は、係合部68cが径方向外側に突出しない状態の縫合針67の太さよりも大きい。このため、係合部68cが貫通孔30aの側壁に押されることで、縫合針67の針先67aは、貫通孔30aから外殻部30内に挿入される。
【0103】
針先67aが外殻部30内に挿入されて係合部68cが貫通孔30aの側壁を越えると、係合部68cは付勢部68bの付勢によって縫合針67の径方向外側に突出する。貫通孔30aの孔径は、係合部68cが径方向外側に突出した状態の縫合針67の太さよりも小さい。このため、針先67aが貫通孔30aから外殻部30内に挿入された状態で係合部68cが縫合針67の径方向外側に突出すると、係合部68cの係合面68dが外殻部30の被係合面30bに当接する。
【0104】
本実施形態では、係合面68dが被係合面30bに当接することで、縫合針67が貫通孔30aから抜け止めされる。このように本実施形態では、操作線16aの操作を必要とせず、付勢部68bの付勢力により、保持部60のロック状態を維持することができる。本実施形態において、ロック状態は、係合面68dが被係合面30bに当接した状態である。なお、第1アーム部12および第2アーム部13の両方がロック状態になってもよいし、片方だけがロック状態になってもよい。
【0105】
操作線16aが近位側に牽引されると、第1部材61は近位側に移動する。この操作により、第1部材61は縫合針67の係合部68cを近位側に押す。係合部68cは、第1部材61に押されることで、付勢部68cの付勢力に抗って縫合針67の径方向外側に突出しないように縫合針67内に収容される。これにより、係合面68dと被係合面30bとの当接がが解除され、保持部60をロック状態からアンロック状態に変更することができる。
【0106】
保持部60が有する操作線16aと操作線16bとは、独立して操作可能であり、第1アーム部12と第2アーム部13とは、独立して、それぞれの保持部60のロック状態とアンロック状態の切換えが可能である。
【0107】
以下、第4実施形態の縫合装置1の効果を述べる。
【0108】
本実施形態によれば、操作にワイヤを用いつつ、アーム部への縫合針の固定操作をより確実に行うことのできる内視鏡的縫合装置を提供できる。
【0109】
また、縫合装置1の保持部60は、ロック状態を維持することに対し、特に操作が必要なく、オペレータはアンロックするためにだけ操作線16aを操作すればよい。このため、本実施形態によれば、簡単な操作で、縫合針を保持するアーム部を切り替え可能である。
【0110】
また、付勢部68bの付勢力で係合部68cをロック位置に押圧して縫合針67が固定されることで、操作線16aに撓みが生じて力を伝達させにくい押す方向への操作を用いずに縫合針67を保持部60に固定できる。これにより、保持部60での縫合針67の固定操作の確実性が向上する。
【0111】
また、弾性部材である付勢部68bの弾性力で付勢するという簡単な構成で、ロック状態への付勢をすることができる。このため、部品数の削減、アーム部内のスペース削減、アーム部内のスペース削減に伴うアーム部の外殻サイズの小型化ができる。さらにアーム部の小型化により、低侵襲化にも寄与することができる。
【0112】
また、操作線の牽引という簡単な構成および操作で、保持部68のロック状態からアンロック状態への変更をすることができる。このため、部品数の削減、アーム部内のスペース削減、アーム部内のスペース削減に伴うアーム部の外殻サイズの小型化ができる。さらにアーム部の小型化により、低侵襲化にも寄与することができる。
【0113】
また、係合面68dが被係合面30bに当接するという簡単な構成で、保持部60をロック状態にすることができる。
【0114】
なお、本発明は、上述の各実施形態の各構成の組み合わせを含むものである。
【0115】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0116】
なお、上記の実施形態の開示は以下の技術的思想を包含する。
(1) 内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置であって、
アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する一対のアーム部を有し、前記アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に前記縫合針を保持するアーム部を交互に切り替え可能に構成され、
前記保持部が、前記縫合針の一端を前記アーム部に固定可能なロック状態になるよう付勢する付勢部と、
前記付勢部の付勢に抗って、前記縫合針の一端を前記アーム部から着脱可能なアンロック状態に変更する操作が可能な操作部と、
を有する
内視鏡的縫合装置。
(2) 前記付勢部は、弾性部材の弾性力により、前記縫合針の端部を前記アーム部に固定可能なロック状態になるよう付勢する
上記(1)に記載の内視鏡的縫合装置。
(3) 前記アーム一端側が閉じることで、前記保持部は、前記縫合針の端部を前記アーム部に固定可能なロック状態になる
上記(1)又は上記(2)に記載の内視鏡的縫合装置。
(4) 前記操作部は、前記管状挿入部に沿って配置される操作線を有し、
前記操作部は、装置本体部に対する前記操作線の近位側への牽引で、前記保持部を前記ロック状態から前記アンロック状態に変更する
上記(1)から上記(3)のいずれか1項に記載の内視鏡的縫合装置。
(5) 前記操作線は、前記一対のアーム部のそれぞれに独立して設けられた一対の操作線で構成され、
前記保持部は、独立して設けられた前記一対の操作線のそれぞれを操作することで、前記一対のアーム部のそれぞれで独立して、前記ロック状態と前記アンロック状態の切換えが可能である
上記(4)に記載の内視鏡的縫合装置。
(6) 前記縫合針は、両端に係合部を有し、
前記保持部は、前記係合部に係合可能な被係合部を有し、
前記ロック状態は、前記係合部に前記被係合部が係合した状態であり、
前記アンロック状態は、前記係合部と前記被係合部との係合が解除された状態である
上記(1)から上記(5)のいずれか1項に記載の内視鏡的縫合装置。
(7) 前記係合部は溝であり、
前記被係合部は爪である、
上記(6)に記載の内視鏡的縫合装置。
(8) 前記保持部は、前記縫合針を隔てて前記爪と対向する位置に位置決め部を有する
上記(7)に記載の内視鏡的縫合装置。
(9) 前記縫合針は、両端に係合部を有し、
前記保持部は、屈曲可能な板状部材を有し、
前記板状部材は、屈曲したときに前記縫合針の保持側に位置する前記係合部に係合可能な被係合部を有し、
前記ロック状態は、前記板状部材が屈曲して前記係合部に前記被係合部が係合した状態であり、
前記アンロック状態は、前記係合部と前記被係合部との係合が解除された状態である
上記(1)から上記(5)のいずれか1項に記載の内視鏡的縫合装置。
(10) 前記係合部は溝であり、
前記被係合部は凸部である、
上記(9)に記載の内視鏡的縫合装置。
(11) 前記縫合針は、両端に係合部を有し、
前記保持部は、
前記縫合針の端部を覆うカバー部と、前記カバー部の開放端に設けられて前記係合部に係合可能な被係合部と、を有し、
前記ロック状態は、前記カバー部が前記縫合針の端部を覆って前記係合部に前記被係合部が係合した状態であり、
前記アンロック状態は、前記係合部と前記被係合部との係合が解除された状態である
上記(1)から上記(5)のいずれか1項に記載の内視鏡的縫合装置。
(12) 前記係合部は溝であり、
前記被係合部は凸部である、
上記(11)に記載の内視鏡的縫合装置。
(13) 内視鏡の管状挿入部の遠位端に設けられる内視鏡的縫合装置であって、
アーム一端側にて縫合針の保持部をそれぞれ有する一対のアーム部を有し、前記アーム一端側を開閉させて組織を縫合する際に前記縫合針を保持するアーム部を交互に切り替え可能に構成され、
前記縫合針は、係合部と前記縫合針の一端を前記アーム部に固定可能なロック状態になるよう付勢する付勢部を有する係合部材を両端に有し、
前記保持部は、前記係合部に係合する被係合部と、前記付勢部の付勢に抗って、前記縫合針の一端を前記アーム部から着脱可能なアンロック状態に変更する操作が可能な操作部と、を有し、
前記付勢部は、一方が前記縫合針に固定され、他方が前記係合部と接続され、前記係合部が前記縫合針よりも径方向外側に突出する方向に前記係合部を付勢し、
前記ロック状態は、前記係合部が前記縫合針の径方向外側に突出して前記係合部と前記被係合部とが当接することで、前記縫合針が前記アーム部から抜ける方向への移動を規制する状態であり、
前記アンロック状態は、前記縫合針から径方向外側に突出する前記係合部が、近位側に移動可能な可動部に押されることで、前記係合部と前記被係合部との当接が解除された状態である
内視鏡的縫合装置。
(14) 前記縫合針を近位側から支持する支持部をさらに有し、
前記可動部は、前記支持部の遠位側に配置され、前記ロック状態の前記縫合針の前記係合部の遠位側から前記係合部を近位側に移動させるように押下可能である
上記(13)に記載の内視鏡的縫合装置。
(15) 前記縫合針は、中空の筒部を有し、
前記係合部材は、前記筒部に収容される
上記(13)又は上記(14)に記載の内視鏡的縫合装置。
(16) 前記一対の操作線は、前記アーム部を開閉動作させる開閉ワイヤと独立して操作可能である
上記(5)に記載の内視鏡的縫合装置。
(17) 前記内視鏡的縫合装置は、前記内視鏡の管状挿入部に着脱可能である
上記(1)から上記(16)のいずれか1項に記載の内視鏡的縫合装置。
【符号の説明】
【0117】
1…縫合装置、2…管状挿入部、3…対物レンズ、4…照明部、5…鉗子口、6…鉗子、11…取付部、12…第1アーム部、13…第2アーム部、14…開閉機構部、15…開閉ワイヤ、16a,16b…操作線、17…縫合針、17a…針先、17b…溝、18…保持部、32b…爪