(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019991
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】マクロファージの貪食促進剤、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化剤及びミエロイド系樹状細胞の活性化剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20250131BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250131BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250131BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20250131BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
A23L33/135
A61P43/00 111
A61P37/04
A61P43/00 107
A61K35/747
C12N1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076335
(22)【出願日】2024-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2023123519
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】野々部 修平
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】板谷 颯
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF04
4B018MF05
4B018MF06
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4B018MF14
4B065AA30X
4B065AC14
4B065BA22
4B065CA41
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA28
4C087MA34
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB22
4C087ZC02
(57)【要約】
【課題】乳酸菌によるマクロファージの貪食促進剤を提供する。また、乳酸菌によるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化剤も提供する。さらには、乳酸菌によるミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化剤も提供する。
【解決手段】ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を有効成分として含むことにより、マクロファージの貪食促進剤、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化剤、ミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化剤を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を有効成分として含む、マクロファージの貪食促進剤。
【請求項2】
ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を有効成分として含む、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化剤。
【請求項3】
ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を有効成分として含む、ミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の剤を含む、免疫賦活剤。
【請求項5】
食品組成物、医薬品又は医薬部外品である、請求項4に記載の免疫賦活剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロファージの貪食促進剤、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化剤及びミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化剤に関する。具体的には、女王蜂由来乳酸菌(ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106))によるマクロファージの貪食促進剤、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化剤及びミエロイド系樹状細胞活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は、免疫を活性化(免疫賦活化)するものとして注目されている。また、免疫賦活は免疫細胞が活性化することで起こることも知られている。免疫はマクロファージや樹状細胞、NK細胞が中心となり抗原非特異的に初期応答を示す自然免疫と、リンパ球が中心となり抗原特異的に応答を示す獲得免疫に大別される。
【0003】
乳酸菌によってマクロファージを活性化する方法が検討されている。例えば特許文献1には、ラクトバチルス・クンキーBPS402と呼ばれる花粉荷から単離された乳酸菌がマクロファージの活性化を有することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、乳酸菌によってプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化する方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、女王蜂成虫の腸内から単離されたラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)と呼ばれる乳酸菌を用いて、ローヤルゼリーに含む10-ヒドロキシ-2-デセン酸を10-ヒドロキシデカン酸に変換する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-108860号公報
【特許文献2】特開2017-201984号公報
【特許文献3】国際公開第2021/033726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規なマクロファージの貪食促進剤、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化剤及びミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)がマクロファージの貪食促進作用、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化作用及びミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明には、例えば以下の発明に関する。
[1] ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を有効成分として含む、マクロファージの貪食促進剤。
[2] ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を有効成分として含む、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化剤。
[3] ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を有効成分として含む、ミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化剤。
[4] [1]~[3]のいずれか一項に記載の剤を含む、免疫賦活剤。
[5] 食品組成物、医薬品又は医薬部外品である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、新規なマクロファージの貪食促進剤、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化剤及びミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ラクトバチルス・パニサピウムM1株の添加によるマクロファージの貪食率及び平均蛍光強度を示すグラフである。
【
図2】ラクトバチルス・パニサピウムM1株の添加によるpDC及びmDCにおける樹状細胞活性化マーカーの平均蛍光強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明において、プラズマサイトイド樹状細胞は「pDC」とも表記され、ミエロイド系樹状細胞は「mDC」とも表記される。また、本発明においてラクトバチルス・パニサピウムM1株は、「M1株」とも表記される。
【0013】
本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株を有効成分として含む。つまり本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株を有効成分として含むため、マクロファージの貪食を促進させることができる。
【0014】
本実施形態に係るpDCの活性化剤は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株を有効成分として含む。つまり本実施形態に係るpDCの活性化剤は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株を有効成分として含むため、pDCを活性化させることができる。
【0015】
本実施形態に係るmDCの活性化剤は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株を有効成分として含む。つまり本実施形態に係るmDCの活性化剤は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株を有効成分として含むため、mDCを活性化させることができる。
【0016】
pDC又はmDCの活性化とは、具体的には例えば、pDC又はmDCのT細胞への抗原提示能の向上であってよい。
【0017】
[ラクトバチルス・パニサピウムM1株]
ラクトバチルス・パニサピウムM1株は、受託番号NITE BP-03106として独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に2020年1月16日付で寄託されており、入手可能である。
【0018】
有効成分としてのM1株は、菌体そのものであってよく、菌体処理物であってもよい。菌体は、生菌体又は死菌体であってよい。菌体処理物は、菌に、例えば、加熱、ペースト化、乾燥(凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥等)、凍結、溶菌、破砕、抽出等の処理がなされたものであってよい。破砕は、例えば超音波により行うことができる。処理は複数種を組み合わせて行ってもよい。菌体処理物は、菌体処理物に除タンパク処理を行った後の上清、又は菌体培養物及び発酵物の固形分を除去した上清であってもよいM1株としては、単離した菌体であってもよく、菌体の発酵物又は培養物であってもよい。
【0019】
M1株の培養は、常法に従って行うことができる。培地は、当該菌が培養できるものであれば特に制限はなく、天然培地、合成培地、半合成培地等を用いることができる。培地としては、窒素源及び炭素源を含有するものを使用することができ、窒素源としては、肉エキス、ペプトン、カゼイン、酵母エキス、グルテン、大豆粉、大豆加水分解物、アミノ酸等が挙げられ、炭素源としては、グルコース、ラクトース、フラクトース、イノシトール、ソルビトール、水飴、澱粉、麹汁、フスマ、バカス、糖蜜等が挙げられる。その他、無機質(例えば、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、炭酸カルシウム、鉄、マンガン、モリブデン)、各種ビタミン類などを添加することができる。
【0020】
培養温度は、例えば4~45℃であってよく、25~40℃、28~37℃、30~33℃であってもよい。培養は、通気振とう又は通気撹拌して行ってもよい。培地のpHは、例えば4.0~9.0であってよく、6.0~8.0であることが好ましい。培養方法としては、例えば、MRS培地に菌体を植菌し、30℃で48時間培養することが挙げられる。
【0021】
マクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤がM1株を有効成分として含む場合、マクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤は、例えば、M1株を含む発酵製品、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料等であってもよい。
【0022】
本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤は、M1株の固形分量として、例えば体重60kgの成人に一日当たり1mg以上50mg以下の用量で用いることができ、3mg以上30mg以下の用量で用いることが好ましく、5mg以上15mg以下の用量で用いることがより好ましい。当該用量は、摂取する人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0023】
マクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤中のM1株の含有量は、剤全量に対して固形分で0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、又は10質量%以上であってよい。また、マクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤中のM1株の含有量は、剤全量に対して固形分で10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.03質量%以下、又は0.01質量%以下であってよい。
【0024】
本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤は、上記の有効成分に加えて、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、薬学的に許容される成分(例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤、抗酸化剤)、食品として許容される成分(例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤)を挙げることができる。
【0025】
本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤は、食品組成物、医薬品、又は医薬部外品であってよい。本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤は、食品組成物、医薬品、又は医薬部外品そのものとして使用することができ、食品組成物、医薬品、又は医薬部外品中の成分として使用することもできる。マクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤を一成分として含む食品組成物、医薬品、又は医薬部外品は、例えば、これら製品の製造工程における中間製品に、上記マクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤を添加することにより製造することができる。
【0026】
本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液若しくは電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)等の剤形であってもよい。これらの各種製剤は、例えば、有効成分と、必要に応じて他の成分とを混合して上記剤形に成形することによって調製することができる。
【0027】
食品組成物として又は食品組成物の一成分として用いる場合、該食品組成物は、食品の3次機能、すなわち体調調節機能が強調されたものであることが好ましい。食品の3次機能が強調された製品としては、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品を挙げることができる。
【0028】
食品組成物としては例えば、コーヒー、ジュース及び茶飲料等の清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、並びに、日本酒、洋酒、果実酒及びハチミツ酒等の酒などの飲料;カスタードクリーム等のスプレッド;フルーツペースト等のペースト;チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ及びプリン等の洋菓子;大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ及び羊羹等の和菓子;アイスクリーム、アイスキャンデー及びシャーベット等の氷菓;カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等の調理済みの食品;ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料及びスープの素等の調味料などが挙げられる。
【0029】
本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤は、体内に摂取されることが好ましい。投与態様は、経口投与であってもよく、非経口投与であってもよい。本実施形態に係るマクロファージの貪食促進剤、pDCの活性化剤又はmDCの活性化剤は、一日一回投与されてもよく、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
以下の方法に従って女王蜂成虫の腸内から単離されたラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)によるマクロファージの貪食能、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化及びミエロイド系樹状細胞(mDC)の活性化に与える影響を検討した。
【0032】
<実施例1:マクロファージ貪食能評価>
被験物質のマクロファージ活性化能について、貪食能を指標として評価した。概要としては、被験物質を含む培養液でマクロファージを24時間培養後、蛍光標識されたCalboxylate latex beadsを加え、1時間インキュベートした。細胞を回収し、フローサイトメーターによる解析に供試した。具体的には以下のとおりである。
【0033】
JCRB細胞バンクより購入したマウスマクロファージJ774.1細胞株を試験に用いた。J774.1細胞株はマクロファージ貪食試験に一般的に使用されている細胞株の一つである。
【0034】
陰性対照物質としては、被験物質の溶解に用いた培養液を用いた。培養液としては、RPMI培地(ナカライ、#30264-85)500mL、非働化FBS55.5mL、及びペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×)5.5mLを混合したものを用いた。非働化FBSは、FBSを56℃で30分間加熱処理し、分注して-20℃で保存したものである。
【0035】
[被験物質]
被験物質としては、ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を用いた。詳細は以下のとおりである。ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)は、生菌を80℃以上、20分熱処理したものを凍結乾燥させ粉末乾燥させたものを用いた。粉末を10mg/mLとなるように培養液に溶解し、1、5、10μg/mLの濃度に希釈した後、30分間超音波処理したものを使用した。
【0036】
[前培養]
J774.1細胞は、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを含有するRPMI培地にて継代培養した。培養は10cm dishを用いて行い、3日に1度、6.08×105cells/mLで継代した。培養は37℃に設定した5%CO2インキュベーター内で行った。
【0037】
[Calboxylate latex beads懸濁液]
Calboxylate latex beads(Sigma、#L3030)5μLをRPMI培地995μLに溶解し、試験に使用した。
【0038】
[Hoechest染色液の調製]
Hoechest 33342(Invitrogen、#H3570)1μLをPBS 2000μLで希釈し、染色液とした。
【0039】
[貪食試験]
1)10cm dishにて前培養したJ774.1細胞をAccutaseで37℃、5分間処理して壁から剥がし、得られた細胞の懸濁液を50mLコニカルチューブに移した。チューブを室温で200×g、5分間遠心を行った。上清をデカンテーションで捨て、細胞をペレットとして回収した。タッピングにより細胞をほぐした後、培養液を5mL加え、細胞懸濁液20μLを1.5mLマイクロチューブに移し、細胞数及び生存率を測定した。
【0040】
2)測定した細胞数に基づいて、5×105cells/mLの細胞懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液を1000μLずつ12ウェルプレートの各ウェルに加えた。37℃、5%CO2インキュベーターで一晩培養した。
【0041】
3)前培養後、インキュベーターからプレートを取り出した。細胞を播種しているウェルからピペットマンで培養液を取り除いた。培地又は1μg/mLのM1株懸濁液1000μLを加えた。続いて、プレートを37℃、5%CO2インキュベーターで24時間培養を行った。
【0042】
4)培養後、培養液を取り除き、Calboxylate latex beadsを含む培養液1000μLを加えた後、37℃、5%CO2インキュベーター内で1時間培養した。
【0043】
5)ピペットでゆっくり上清を取り除いた後、加温したPBSを1000μLを加え、洗浄した。ピペットでPBSを取り除き、加温したPBSを1000μL加えた。この操作を3度繰り返した。
【0044】
6) 洗浄後、PBSを取り除き、各wellにHoechest 33342染色液 500μLを加え、暗所で5分間静置した。
【0045】
7)染色液を取り除き、ピペットでPBSを取り除き、1000μLのフローサイトバッファー(2%BSA、10mM HEPES含有HBSS)を加えた。
【0046】
8)ピペッティングにより細胞を回収し、600×g、5分間、遠心した。
【0047】
9)遠心後の上清を取り除き、フローサイトバッファー(2%BSA、10mM HEPES含有HBSS)100μLを加えた。細胞懸濁液をフローサイトメーター(MACSQuant 10、Miltenyi Biotec)による解析に供した。50、000細胞を解析し、貪食率及び平均蛍光強度(MFI)を求めた。貪食率はHoechest陽性細胞に対するCalboxylate latex beadsが検出されるPE波長領域における陽性細胞の割合を示す。MFIはCalboxylate latex beadsが検出されるPE波長領域における陽性細胞のPEの蛍光強度を示す。
【0048】
マクロファージ貪食試験の結果を
図1に示す。
図1の(a)は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株の添加によるマクロファージ貪食率を示すグラフである。
図1の(b)は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株の添加による平均蛍光強度を示すグラフである。ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)において、陰性対照区(control)と比較して貪食率及び平均蛍光強度が上昇したことが確認された。したがって、本試験で用いたラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)について、マクロファージ貪食亢進作用があることが確認された。
【0049】
<実施例2:樹状細胞活性化能の評価>
ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)のpDC及びmDCの活性化能についても検討を行った。概要としては、ICRマウスから採取した骨髄細胞を分化させたのち、被験物質を含む培養液で分化させた細胞全体を48時間培養後、樹状細胞における樹状細胞のT細胞への抗原提示に関わる各種マーカーで標識した。細胞を回収し、フローサイトメーターによる解析に供試した。具体的には以下のとおりである。
【0050】
[被験物質]
被験物質としては、ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を用いた。詳細は以下のとおりである。ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)は、生菌を80℃以上、20分熱処理したものにカラギナンとデキストリンを加え、凍結乾燥させ粉末乾燥させたものを用いた。粉末を10mg/mLとなるように溶解し、1、5、10μg/mLの濃度に希釈した後、30分間超音波処理したものを使用した。
【0051】
[前培養]
ICRマウス骨髄細胞(コスモバイオ、#BMC12C)は、10%FBS、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、10mM HEPES、2μM 2-メルカプトエタノール及び100ng/mL Flt-3Lを含有するRPMI培地にて培養することで分化誘導した。培養は12wellプレートを用いて行い、7日間培養した。培養は37℃に設定した5%CO2インキュベーター内で行った。
【0052】
[樹状細胞評価試験]
1)前培養にて分化誘導後、インキュベーターからプレートを取り出した。細胞を播種しているウェルからピペットマンでゆっくり培養液を取り除いた。続いて、10μg/mLのラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)を含む被験液を1000μL加えた。プレートを37℃、5%CO2インキュベーターで48時間培養を行った。
【0053】
2)培養後、ピペットマンで上清を取り除き、1000μLの氷冷した2%BSA、10mM HEPES含有HBSSで懸濁した。
【0054】
3)600×g、5分間、遠心し、100μLの氷冷した2%BSA、10mM HEPES含有HBSSで懸濁した。
【0055】
4)pDC及びmDCゲート用に抗VioBlue-CD45R(B220)(Miltenyi biotec、Cat:130-110-851)2μL、抗PEVio 770-CD11c(Miltenyi biotec、Cat:130-110-840)2μL、APC-Vio 770-CD11b(Miltenyi biotec、Cat:130-113-803)2μL、抗7-AAD Staining Solution(Miltenyi biotec、Cat:130-111-568)10μL、樹状細胞における樹状細胞のT細胞への抗原提示能の活性化指標として抗VioGreen-MHC Class II(Miltenyi biotec、Cat:130-112-395)2μL、抗Vio(登録商標)Bright B515-CD40(Miltenyi biotec、Cat:130-116-115) 2μL、抗PE-CD80(Miltenyi biotec、Cat:130-116-460)2μL、抗APC-CD86(Miltenyi biotec、Cat:130-122-130)2μLを加え、暗所、4℃で15分間染色後、600×g、5分間、遠心した。
【0056】
5)上清を除去し、2%BSA、10mM HEPES含有HBSSを加え、フローサイトメーター(MACSQuant 10、Miltenyi Biotec)による解析に供した。B220陽性CD11b陰性CD11c陽性細胞をpDC、B220陰性CD11b陽性CD11c陽性細胞をmDCとした。それぞれの樹状細胞について、T細胞へ抗原提示する役割を持つMHC-II、そのシグナルを増強する役割を持つCD86、CD80、CD40の平均蛍光強度(MFI)を求めた。試験は6回実施し、平均蛍光強度は平均値±標準偏差で示した。平均蛍光強度の平均値について、t検定により陰性対照区との有意差を求めた(*:p<0.05)。
【0057】
樹状細胞評価試験の結果を
図2に示す。
図2の(a)は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株の添加によるpDC(B220陽性CD11b陰性CD11c陽性細胞)の各種樹状細胞活性化マーカーの平均蛍光強度を示すグラフである。
図2の(b)は、ラクトバチルス・パニサピウムM1株の添加によるmDC(B220陰性CD11b陽性CD11c陽性細胞)の各種樹状細胞活性化マーカーの平均蛍光強度を示すグラフである。ラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)の添加により、pDCではMHC-II、CD40、及びCD86について、mDCではMHC-II、CD40、CD80、及びCD86について、陰性対照区と比較して平均蛍光強度が有意に上昇したことが確認された。したがって、本試験で用いたラクトバチルス・パニサピウムM1株(NITE BP-03106)について、樹状細胞活性化作用があることが確認された。