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  • 特開-電圧変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002000
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電圧変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
H02M3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101857
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 考生
(72)【発明者】
【氏名】山中 あかり
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730AS05
5H730EE59
5H730FD01
5H730XX03
5H730XX12
5H730XX23
5H730XX32
5H730XX42
5H730XX50
(57)【要約】
【課題】本明細書は、コンバータの出力過多状態を確実に検知することのできる技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する電圧変換装置は、電圧コンバータ、接続端子、リレー、コントローラを備える。電圧コンバータの入力端には電源が接続されている。接続端子には、電圧コンバータから電力供給を受ける負荷が接続される。リレーは、電圧コンバータの出力端と接続端子との間に接続されている。電圧コンバータとリレーはコントローラが制御する。コントローラは、リレーを開き、電圧コンバータの出力端電圧を目標電圧にするように電圧コンバータへ指令を出す。コントローラは、その状態で、出力端電圧が目標電圧よりも高い所定の過電圧判定閾値を超えた場合、電圧コンバータの異常を示す信号を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端に電源が接続されている電圧コンバータと、
前記電圧コンバータから電力供給を受ける負荷が接続される接続端子と、
前記電圧コンバータの出力端と前記接続端子との間に接続されているリレーと、
前記電圧コンバータと前記リレーを制御するコントローラと、
を備えており、
前記コントローラは、前記リレーを開き、前記電圧コンバータの出力端電圧を目標電圧にするように前記電圧コンバータへ指令を出した状態で前記出力端電圧が前記目標電圧よりも高い所定の過電圧判定閾値を超えた場合に前記電圧コンバータの異常を示す信号を出力する、
電圧変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電圧変換装置が開示されている。電圧変換装置は、電圧を変換するコンバータと、コンバータを制御するコントローラを備える。コントローラは、コンバータの出力端電圧をモニタしている。コントローラは、出力端電圧が所定の過電圧判定閾値を超えると、コンバータの状態を示す状態情報を上位ECUに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-188516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電圧変換装置のコントローラは、コンバータに負荷(コンバータから電力供給を受けるデバイス)が接続された状態でコンバータの出力電圧をモニタしている。接続されている負荷の消費電流が大きいと、コンバータが出力過多状態であっても出力電流が負荷に流れてしまい、コンバータの出力電圧が過電圧判定閾値を超えないおそれがある。すなわち、コントローラがコンバータの出力過多状態を検知できないおそれがある。本明細書は、コンバータの出力過多状態を確実に検知することのできる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電圧変換装置は、電圧コンバータ、接続端子、リレー、コントローラを備える。電圧コンバータの入力端には電源が接続されている。接続端子には、電圧コンバータから電力供給を受ける負荷が接続される。リレーは、電圧コンバータの出力端と接続端子との間に接続されている。電圧コンバータとリレーはコントローラが制御する。コントローラは、リレーを開き、電圧コンバータの出力端電圧を目標電圧にするように電圧コンバータへ指令を出す。コントローラは、その状態で、出力端電圧が目標電圧よりも高い所定の過電圧判定閾値を超えた場合、電圧コンバータの異常を示す信号を出力する。異常を通知する信号の送信先は、例えば上位のコントローラである。本明細書が開示する電圧変換装置は、負荷を電圧コンバータから切り離した状態で電圧コンバータの出力電圧が過電圧判定閾値を超えているか否かをモニタする。別言すれば、本明細書が開示する電圧変換装置は、負荷の影響を受けずに電圧コンバータが過負荷であるか否かをチェックすることができる。
【0006】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例の電圧変換装置を含む電気自動車の電力系のブロック図である。
図2】コントローラが実行する出力過多状態チェック処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して実施例の電圧変換装置10を説明する。電圧変換装置10は、電気自動車100に搭載されている。図1に、電気自動車100の電力系のブロック図を示す。図1の破線矢印線は信号線を表す。
【0009】
電気自動車100は、高電圧バッテリ101、双方向コンバータ102、インバータ103、走行用のモータ104、上位コントローラ106を備えている。高電圧バッテリ101の出力電圧は100ボルト以上であり、例えば400ボルトである。高電圧バッテリ101の出力端は、双方向コンバータ102を介してインバータ103の直流端に接続されている。インバータ103の交流端にモータ104が接続されている。モータ104の出力軸は不図示の車軸に連結されている。
【0010】
双方向コンバータ102は、高電圧バッテリ101の出力電圧をモータ104の駆動に適した電圧に変換し、電圧変換された電力をインバータ103に供給する。インバータ103は、供給された直流電力をモータ104の駆動に適した交流電力に変換する。モータ104は、車両の慣性エネルギを使って発電することもある。モータ104の発電により得られる電力(回生電力)は、インバータ103で直流電力に変換され、さらに双方向コンバータ102で高電圧バッテリ101の充電に適した電圧に変換される。高電圧バッテリ101は回生電力で充電される。
【0011】
上位コントローラ106は、車両のメインスイッチ107(イグニッションスイッチ)やアクセル開度センサ108、車速(モータ104の回転数)を計測するスピードセンサ105などから情報を得て、双方向コンバータ102とインバータ103を制御する。
【0012】
電気自動車100は、電圧変換装置10も備えている。電圧変換装置10は、高電圧バッテリ101と低電圧バッテリ111の間に接続されている。電圧変換装置10は、電圧コンバータ12、過電圧検知器18、負荷遮断リレー15を備えている。低電圧バッテリ111の出力電圧は100ボルト未満であり、例えば12ボルトである。電圧コンバータ12の入力端12aが高電圧バッテリ101に接続されており、電圧コンバータ12の出力端12bが低電圧バッテリ111に接続されている。電圧コンバータ12の負極側の出力端はグランドGに接続されている。電気自動車100のボデー全体が低電圧系のグランドGになっている。
【0013】
電圧コンバータ12の出力端12bは負荷遮断リレー15を介して接続端子13に接続されており、接続端子13にはアクセサリ電力線110が接続されている。アクセサリ電力線110は、車内に張り巡らされており、低電圧バッテリ111のほか、オーディオ112aやルームランプ112bなどが接続されている。オーディオ112aやルームランプ112bなど、低電圧バッテリ111の電圧で動作する装置を補機112と総称する。アクセサリ電力線110には、オーディオ112aやルームランプ112bのほかにも様々な補機が接続される。
【0014】
電圧コンバータ12は、高電圧バッテリ101の出力電圧を低電圧バッテリ111の電圧まで下げる。電圧コンバータ12は、コントローラ14によって制御される。コントローラ14は、低電圧バッテリ111の残電力量が少なくなると(低電圧バッテリ111の出力電圧が低くなると)、電圧コンバータ12を駆動し、高電圧バッテリ101の電力で低電圧バッテリ111を充電する。あるいは、コントローラ14は、走行中は電圧コンバータ12から所定の電力が低電圧バッテリ111や補機112に供給されるように、電圧コンバータ12を制御する。
【0015】
コントローラ14が目標電圧を電圧コンバータ12へ指令すると、電圧コンバータ12は出力端12bの電圧が目標電圧に一致するように動作する。電圧コンバータ12は、出力端12bの電圧を知るためのフィードバックループを備えている。出力端12bとグランドGの間には、2個の分圧抵抗16a、16bが直列に接続されている。2個の分圧抵抗16a、16bの直列接続体の中点17が電圧コンバータ12のフィードバック端子12cに接続されている。フィードバック端子12cには、2個の分圧抵抗16a、16bで分圧された出力端12bの電圧が印加される。電圧コンバータ12は、フィードバック端子12cの電圧から出力端12bの電圧を検知し、出力端12bの電圧が目標電圧に一致するように自己を制御する。
【0016】
出力端12bには、出力端12bの電圧が所定の過電圧判定閾値を超えたか否かを判定する過電圧検知器18が接続されている。過電圧検知器18は、典型的には電圧センサを含む。過電圧検知器18は、出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えると、そのことをコントローラ14へ通知する。
【0017】
電圧変換装置10は、電圧コンバータ12が出力過多状態であるか否かをモニタする機能(出力過多状態チェック機能)を備えている。図2に、出力過多状態チェック処理のフローチャートを示す。出力過多状態チェック処理は、例えば、メインスイッチ107が入れられたとき(あるいはメインスイッチ107が切られたとき)に起動される。メインスイッチ107が入れられたこと(あるいはメインスイッチ107が切られたこと)は、上位コントローラ106から、コントローラ14へ通知される。なお、これらは一例であり、出力過多状態チェック処理は他のイベントによって起動されてもよい。
【0018】
出力過多状態チェック処理を開始すると、コントローラ14はまず、電圧コンバータ12を停止する(S12)。ステップS12を処理する際に電圧コンバータ12が停止している場合には、コントローラ14はステップS12では何もしない。次いでコントローラ14は、負荷遮断リレー15を開く(S13)。負荷遮断リレー15を開くと、電圧コンバータ12の出力端12bが、低電圧バッテリ111や補機112などの負荷から遮断される。電圧コンバータ12の出力端12bは、何も接続されていないオープン状態となる。負荷遮断リレー15は、通常は閉じており、出力過多状態チェック処理の中で開かれる。電圧コンバータ12が出力過多状態でない場合には、ステップS19で負荷遮断リレー15は閉じられる。この点については後述する。
【0019】
続いてコントローラ14は、タイマをスタートさせる(ステップS14)。次にコントローラ14は、電圧コンバータ12に目標電圧を指令し、電圧コンバータ12を駆動する。目標電圧は、後述する過電圧判定閾値よりも低い値に設定されている。典型的には、目標電圧は、低電圧バッテリ111を充電するのに十分な電圧に設定される。過電圧判定閾値は、目標電圧よりも高い値、例えば、「目標電圧+10ボルト」に設定される。
【0020】
タイマとは、出力過多状態チェック処理のプログラム内で定義されている変数であり、目標電圧を指令して電圧コンバータ12を駆動し始めてからの経過時間を測るための変数である。
【0021】
目標電圧を指令して電圧コンバータ12を駆動してから所定の待ち時間の間、コントローラ14は、出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えるか否かをモニタする(ステップS16、S17:NO)。先に述べたように、出力端12bには過電圧検知器18が接続されており、出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えたことを過電圧検知器18が検知すると、過電圧検知器18からコントローラ14へ信号が通知される。
【0022】
待ち時間が経過するまでの間に出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えなければ、コントローラ14は、電圧コンバータ12を停止し、負荷遮断リレー15を閉じ、処理を終了する(ステップS17:YES、S18、S19)。待ち時間が経過するまでの間に出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えなければ、電圧コンバータ12は出力過多状態ではないことが判明する。この場合、図2において図示を省略しているが、コントローラ14は、異常なしを示す信号を上位コントローラ106へ送る。異常なしを示す信号を受けた上位コントローラ106は、次の処理(例えば、車両を走行可能状態にする処理)に移る。
【0023】
待ち時間が経過するまでの間に出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えたら(ステップS16:YES)、コントローラ14は、電圧コンバータ12で異常が発生していることを示す信号(異常通知信号)を出力する(ステップS21)。最後にコントローラ14は、電圧コンバータ12を停止して処理を終了する。
【0024】
異常通知信号は、上位コントローラ106へ送られる。異常通知信号を受信した上位コントローラ106は、インストルメントパネルの警告灯を点灯させるなど、電圧コンバータ12(電圧変換装置10)で異常が生じていることをユーザに提示する。
【0025】
例えば分圧抵抗16aが断線すると、電圧コンバータ12のフィードバック端子12cの電圧はグランドGの電圧に等しくなる。電圧コンバータ12は出力端12bの電圧のフィードバックができなくなり、オープン状態の出力端12bの電圧を可能な限り高めるように動作し、出力過多状態となる。出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えると過電圧検知器18がコントローラ14へ信号を送る。信号を受信したコントローラ14は、電圧コンバータ12が出力過多状態であることを知り、電圧コンバータ12を停止し、上位コントローラ106へ異常通知信号を送る。
【0026】
このように、電圧変換装置10は、過負荷チェック処理を開始する条件が成立すると、コントローラ14は負荷遮断リレー15を開き、電圧コンバータ12の出力端12bを負荷(低電圧バッテリ111や補機112)から遮断する。この処理により、出力端12bはオープン状態となる。電圧変換装置10は、出力端12bをオープン状態にしてから電圧コンバータ12を動作させ、出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えるか否かをモニタする。出力端12bをオープン状態にしておくことで、過負荷チェックの際に出力端12bが負荷から影響を受けることを防止する。
【0027】
仮に出力端12bが負荷と接続されており、接続されている負荷の消費電流が大きい場合、電圧コンバータ12が出力過多状態であっても出力端12bから負荷へ電力が流れ、出力端12bの電圧が過電圧判定閾値を超えないことが起こり得る。その場合、コントローラ14は電圧コンバータ12の出力過多状態を検知できないおそれがある。電圧変換装置10は、電圧コンバータ12の出力端12bをオープン状態にしてから出力端12bの電圧をモニタする。そのような処理により、電圧変換装置10は、電圧コンバータ12の出力過多状態を確実に検知することができる。
【0028】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例の電圧変換装置10は、電気自動車100に搭載されている。電圧変換装置10は、電気自動車以外の装置に利用されてもよい。電圧コンバータ12は、入力端12aに印加された電圧を昇圧あるいは降圧して出力端12bから出力できる回路であればよい。電圧コンバータ12は、トランスを用いた絶縁型のコンバータであってもよいし、スイッチング素子を用いた非絶縁型のコンバータであってもよい。
【0029】
電圧コンバータ12が出力過多状態であるとき、コントローラ14は、電圧コントローラ12の異常を示す信号として、警告灯を点灯させる指令信号をインストルメントパネルへ出力するようにしてもよい。
【0030】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
10:電圧変換装置 12:電圧コンバータ 12a:入力端 12b:出力端 12c:フィードバック端子 13:接続端 14:コントローラ 15:負荷遮断リレー 16a、16b:分圧抵抗 17:中点 18:過電圧検知器 100:電気自動車 101:高電圧バッテリ 102:双方向コンバータ 103:インバータ 104:モータ 105:スピードセンサ 106:上位コントローラ 107:メインスイッチ 108:アクセル開度センサ 110:アクセサリ電力線 111:低電圧バッテリ 112a:オーディオ(補機) 112b:ルームランプ(補機)
図1
図2