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▶ 保線機器整備株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020003
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】保線用カート
(51)【国際特許分類】
   B61D 15/12 20060101AFI20250131BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B61D15/12
B61D15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101945
(22)【出願日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2023123560
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 清
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単純な構造で鉄道のレール上を走行する保線用カートを提供する。
【解決手段】前輪11b2および後輪11c2やシート11c3,11c3が設けられ、乗員を乗せてレール上を走行すると共に、ハンドルポスト装着部が2箇所設けられたカート本体と、一方のハンドルポスト装着部に着脱可能に装着され、電動モーター13によって中空ポスト部内のポスト回転伝達軸を介して駆動輪である前輪11b2を回転させるハンドルポスト部12と、他方のハンドルポスト装着部に着脱可能に装着され、エンジン13’によって中空ポスト部内のポスト回転伝達軸を介して駆動輪である前輪11b2を回転させるハンドルポスト部12’と、逸走防止ブレーキ機能および通常のブレーキ機能を有するブレーキ部17等を備え、電動モーター13とエンジン13’とを搭載して交互に使用して走行したり、電動モーター13とエンジン13’のいずれか一方のみを搭載して走行する。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転伝達機構部を介し駆動輪を回転させてレール上を走行するカート本体と、
前記カート本体に設けられ、乗員が掴むハンドル部が設けられたハンドルポスト部とを有する保線用カートであって、
前記ハンドルポスト部には、さらに、
ポスト回転伝達軸を回転させる電動モーターまたはエンジンである駆動源と、
前記駆動源のオン/オフを制御することにより前記ポスト回転軸および回転伝達機構部を介し前記駆動輪の回転を制御して当該保線用カートの走行を制御する走行制御部とが設けられていることを特徴とする保線用カート。
【請求項2】
請求項1記載の保線用カートにおいて、
さらに、ブレーキペダルを操作しないブレーキペダル操作無し状態においても弾性体によってブレーキをかける逸走防止ブレーキ状態を維持するブレーキ部を備え、
前記走行制御部は、
前記駆動源をオフ状態からオン状態に切り替える際には、前記ブレーキ部を制御して前記逸走防止ブレーキ状態を先に解除し、その逸走防止ブレーキ状態解除後に前記駆動源をオン状態にするように構成されていることを特徴とする保線用カート。
【請求項3】
請求項2記載の保線用カートにおいて、
前記駆動源には、
当該駆動源をオンまたはオフさせる駆動源用スイッチと、
前記駆動源用スイッチを操作する駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部とが設けられ、
前記走行制御部には、
前記ハンドルポスト部に設けられた走行制御ベース部と、
前記走行制御ベース部に回動可能に取り付けられ、乗員が操作する前記操作レバーが取り付けられたブレーキ・駆動源制御用カム板と、
前記走行制御ベース部に回動可能に設けられ、作用点側に連結された駆動源用スイッチオン/オフワイヤを介し前記駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部を操作して前記駆動源の前記駆動源用スイッチをオンまたはオフさせる駆動源用スイッチオン/オフ用リンクと、
前記走行制御ベース部に回動可能に設けられ、作用点側に連結された逸走防止ブレーキワイヤを介して前記ブレーキ部による前記逸走防止ブレーキ状態を解除する逸走防止ブレーキ解除レバーに連結された逸走防止ブレーキ解除用リンクとを備え、
前記ブレーキ・駆動源制御用カム板は、
乗員が前記操作レバーを操作して前記走行制御ベース部に対し回動した場合、前記逸走防止ブレーキ解除用リンクおよび前記逸走防止ブレーキワイヤを介し前記ブレーキ部による逸走防止ブレーキ状態を先に解除した後、前記駆動源用スイッチオン/オフ用リンクおよび前記駆動源用スイッチオン/オフワイヤを介し前記駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部を操作して前記駆動源用スイッチをオンするように構成されていることを特徴とする保線用カート。
【請求項4】
請求項3記載の保線用カートにおいて、
前記ブレーキ・駆動源制御用カム板には、乗員が前記操作レバーを操作して前記走行制御ベース部に対し回動して、前記駆動源用スイッチをオンさせた後、前記走行制御ベース部に当接して当該ブレーキ・駆動源制御用カム板の回動をストップさせる回動防止ストッパが設けられていることを特徴とする保線用カート。
【請求項5】
請求項1記載の保線用カートにおいて、
前記ハンドルポスト部の上端部には、前記駆動源のシャフトが下向きとなるように取り付けられていると共に、前記ハンドルポスト部は、中空で、かつ、前記シャフトに連結されるポスト回転伝達軸が設けられ、前記ポスト回転伝達軸および前記回転伝達機構部を介して前記駆動輪を回転させることを特徴とする保線用カート。
【請求項6】
請求項1記載の電動カートにおいて、
前記カート本体には、前記回転伝達機構部を介して回転する駆動輪軸に前記駆動輪が設けられ、前記駆動輪軸にはハンドルポスト装着部が設けられており、
前記ハンドルポスト部の下端部にはハンドルポスト連結部が設けられ、当該ハンドルポスト連結部が前記ハンドルポスト装着部に対し着脱可能に取り付けられ、前記ハンドルポスト部の前記ポスト回転伝達軸が前記回転伝達機構部および前記駆動輪軸を介して前記駆動輪を回転させることを特徴とする電動カート。
【請求項7】
請求項6記載の電動カートにおいて、
前記駆動輪には、前記ハンドルポスト装着部が2箇所設けられており、その2箇所の前記ハンドルポスト装着部にそれぞれ前記ハンドルポスト部のハンドルポスト連結部が着脱可能に連結されることを特徴とする保線用カート。
【請求項8】
請求項1記載の保線用カートにおいて、
前記駆動源は、電動モーター本体に装着した充電式バッテリからの電流供給によってシャフトを回転させるバッテリ式電動モーターであることを特徴とする保線用カート。
【請求項9】
請求項8に記載の保線用カートにおいて、
前記バッテリ式電動モーターは、撹拌機用のバッテリ式電動モーターであり、電源をオフにした場合でも慣性によって前記シャフトが回転するように構成されていることを特徴とする保線用カート。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか一の請求項に記載の電動カートにおいて、
前記駆動源によって回転する前記駆動輪には、前進方向への回転のみ許可するワンウエイクラッチ式のフリーホイールが設けられていることを特徴とする保線用カート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレール上を走行する保線用カートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より鉄道のレールの保線作業を行うため、自転車のようにペダルを漕いで鉄道のレール上を走行する人力式の保線作業用カート(例えば、特許文献1参照。)が採用されており、近年は、保線作業員の負担を軽減するためにバッテリを搭載し、そのバッテリからの電流によってモーターを駆動して鉄道のレール上を走行する電動式の保線作業用カート(例えば、特許文献2,3参照。)の採用が増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006ー224797号公報
【特許文献2】実用新案登録第3235539号公報
【特許文献3】特開2012―062001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1の保線作業用カートでは、自転車のようにペダルを漕いで鉄道のレール上を走行するため、作業者の負担が大きいという問題点があった。
【0005】
また、上述の特許文献2,3の保線作業用カートでは、バッテリと、モーターとを別々に設けているため、バッテリからの電流をモーターへ供給する配線等が必要であり、構造が複雑で故障し易い等の問題があった。
【0006】
また、バッテリからの給電でモーターによって走行する保線用カートの場合、バッテリの充電に時間がかかると共に、バッテリの容量によってはガソリン等を燃料とするエンジンで走行する保線用カートに比較して走行距離が短い傾向にあり、円滑な保線作業に支障を与えるおそれもある。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、第1には単純な構造で鉄道のレール上を走行することができ、第2には走行距離も制限されず、円滑な保線作業に支障を与えることがなく、作業性を向上させることができる保線用カートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る保線用カートは、回転伝達機構部を介し駆動輪を回転させてレール上を走行するカート本体と、前記カート本体に設けられ、乗員が掴むハンドル部が設けられたハンドルポスト部とを有する保線用カートであって、前記ハンドルポスト部には、さらに、ポスト回転伝達軸を回転させる電動モーターまたはエンジンである駆動源と、前記駆動源のオン/オフを制御することにより前記ポスト回転軸および回転伝達機構部を介し前記駆動輪の回転を制御して当該保線用カートの走行を制御する走行制御部とが設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、さらに、ブレーキペダルを操作しないブレーキペダル操作無し状態においても弾性体によってブレーキをかける逸走防止ブレーキ状態を維持するブレーキ部を備え、前記走行制御部は、前記駆動源をオフ状態からオン状態に切り替える際には、前記ブレーキ部を制御して前記逸走防止ブレーキ状態を先に解除し、その逸走防止ブレーキ状態解除後に前記駆動源をオン状態にするように構成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、前記駆動源には、当該駆動源をオンまたはオフさせる駆動源用スイッチと、前記駆動源用スイッチを操作する駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部とが設けられ、前記走行制御部には、前記ハンドルポスト部に設けられた走行制御ベース部と、前記走行制御ベース部に回動可能に取り付けられ、乗員が操作する前記操作レバーが取り付けられたブレーキ・駆動源制御用カム板と、前記走行制御ベース部に回動可能に設けられ、作用点側に連結された駆動源用スイッチオン/オフワイヤを介し前記駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部を操作して前記駆動源の前記駆動源用スイッチをオンまたはオフさせる駆動源用スイッチオン/オフ用リンクと、前記走行制御ベース部に回動可能に設けられ、作用点側に連結された逸走防止ブレーキワイヤを介して前記ブレーキ部による前記逸走防止ブレーキ状態を解除する逸走防止ブレーキ解除レバーに連結された逸走防止ブレーキ解除用リンクとを備え、前記ブレーキ・駆動源制御用カム板は、乗員が前記操作レバーを操作して前記走行制御ベース部に対し回動した場合、前記逸走防止ブレーキ解除用リンクおよび前記逸走防止ブレーキワイヤを介し前記ブレーキ部による逸走防止ブレーキ状態を先に解除した後、前記駆動源用スイッチオン/オフ用リンクおよび前記駆動源用スイッチオン/オフワイヤを介し前記駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部を操作して前記駆動源用スイッチをオンするように構成されていることも特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、前記ブレーキ・駆動源制御用カム板には、乗員が前記操作レバーを操作して前記走行制御ベース部に対し回動して、前記駆動源用スイッチをオンさせた後、前記走行制御ベース部に当接して当該ブレーキ・駆動源制御用カム板の回動をストップさせる回動防止ストッパが設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、前記ハンドルポスト部の上端部には、前記駆動源のシャフトが下向きとなるように取り付けられていると共に、前記ハンドルポスト部は、中空で、かつ、前記シャフトに連結されるポスト回転伝達軸が設けられ、前記ポスト回転伝達軸および前記回転伝達機構部を介して前記駆動輪を回転させることも特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、前記カート本体には、前記回転伝達機構部を介して回転する駆動輪軸に前記駆動輪が設けられ、前記駆動輪軸にはハンドルポスト装着部が設けられており、前記ハンドルポスト部の下端部にはハンドルポスト連結部が設けられ、当該ハンドルポスト連結部が前記ハンドルポスト装着部に対し着脱可能に取り付けられ、前記ハンドルポスト部の前記ポスト回転伝達軸が前記回転伝達機構部および前記駆動輪軸を介して前記駆動輪を回転させることも特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、前記駆動輪には、前記ハンドルポスト装着部が2箇所設けられており、その2箇所の前記ハンドルポスト装着部にそれぞれ前記ハンドルポスト部のハンドルポスト連結部が着脱可能に連結されることも特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、前記駆動源は、電動モーター本体に装着した充電式バッテリからの電流供給によってシャフトを回転させるバッテリ式電動モーターであることも特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、前記バッテリ式電動モーターは、撹拌機用のバッテリ式電動モーターであり、電源をオフにした場合でも慣性によって前記シャフトが回転するように構成されていることも特徴とする。
また、本発明に係る保線用カートでは、前記駆動源によって回転する前記駆動輪には、前進方向への回転のみ許可するワンウエイクラッチ式のフリーホイールが設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る保線用カートでは、乗員が乗るカート本体に乗員が掴むハンドル部を有するハンドルポスト部が設けられており、そのハンドルポスト部には、さらに、ポスト回転伝達軸を回転させる電動モーターまたはエンジンである駆動源と、駆動源のオン/オフを制御することによりポスト回転軸および回転伝達機構部を介し駆動輪の回転を制御して当該保線用カートの走行を制御する走行制御部とを設けている。
そのため、単純な構造で鉄道のレール上を走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態1の保線用カートに運転手が乗っている状態を示す側面図である。
図2】本発明に係る実施形態1の保線用カートの平面図である。
図3】本発明に係る実施形態1の保線用カートの正面図である。
図4図3におけるA部分の拡大図である。
図5】本発明に係る実施形態1の保線用カートのカート本体から電動モーターとエンジンをそれぞれ装着した2つのハンドルポスト部を取り外した状態を示す側面図である。
図6】本発明に係る実施形態1の保線用カートのカート本体から電動モーターとエンジンをそれぞれ装着した2つのハンドルポスト部を取り外した状態を示す平面図である。
図7】本発明に係る実施形態1の保線用カートのカート本体から電動モーターとエンジンをそれぞれ装着した2つのハンドルポスト部を取り外した状態を示す正面図である。
図8】本発明に係る実施形態1の保線用カートを構成するハンドルポスト部の側面図であって走行制御部や逸走防止ブレーキワイヤ等を省略した状態を示す側面図である。
図9図8に示す状態のハンドルポスト部の正面図である。
図10図8に示す状態のハンドルポスト部の平面図である。
図11】本発明に係る実施形態1の保線用カートを構成するハンドルポスト部の側面図であって走行制御部や逸走防止ブレーキワイヤ等を図示した状態を示す側面図である。
図12】本発明に係る実施形態1の保線用カートにおいて操作レバーが操作されず、停止状態にある場合の走行制御部および駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部等の状態を示す要部拡大側面図である。
図13】本発明に係る実施形態1の保線用カートにおいて操作レバーが操作されず、停止状態にある場合のブレーキ部の状態を示す要部拡大平面図である。
図14】本発明に係る実施形態1の保線用カートにおいて操作レバーが操作され、ブレーキ部が解除された場合の走行制御部および駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部の状態を示す要部拡大側面図である。
図15】本発明に係る実施形態1の保線用カートにおいて操作レバーが操作され、ブレーキ部が解除された逸走防止ブレーキ解除状態にある場合のブレーキ部の状態を示す要部拡大平面図である。
図16】本発明に係る実施形態1の保線用カートにおいて操作レバーがさらに操作され、ブレーキ部が解除された後、バッテリ式電動モーターの駆動源用スイッチがオフからオンに切り替わって保線用カートが走行している場合の走行制御部および駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部の状態を示す要部拡大側面図である。
図17】本発明に係る実施形態1の保線用カートにおいて操作レバーがさらに操作され、ブレーキ部が解除された後、バッテリ式電動モーターの駆動源用スイッチがオフからオンに切り替わって保線用カートが走行している場合のブレーキ部の状態を示す要部拡大平面図である。
図18】本発明に係る実施形態1の保線用カートの逸走防止ブレーキが解除されて走行している際にフットブレーキ部が踏まれて通常ブレーキが作動した場合のブレーキ部の状態を示す要部拡大平面図である。
図19】本発明に係る実施形態2の保線用カートの正面図である。
図20】本発明に係る実施形態2の保線用カートの平面図である。
図21】本発明に係る実施形態2の保線用カートの右側図である。
図22】本発明に係る実施形態2の保線用カートにおいて使用する駆動源としてエンジンを搭載したハンドルポスト側面図である。
図23】本発明に係る実施形態2の保線用カートにおいて使用する駆動源としてエンジンを搭載したハンドルポスト部の正面図である。
図24】本発明に係る実施形態2の保線用カートのカート本体から電動モーターとエンジンをそれぞれ装着した2つのハンドルポスト部を取り外した状態を示す正面図である。
図25】本発明に係る実施形態2の保線用カートのカート本体から電動モーターとエンジンをそれぞれ装着した2つのハンドルポスト部を取り外した状態を示す平面図である。
図26】本発明に係る実施形態2の保線用カートにおいて駆動源としてエンジンを搭載したハンドルポスト部側の逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンクを乗員が踏んで逸走防止ブレーキ状態を解除した状態を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態1,2の保線用カート1,1’を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、下記に説明する実施形態1,2は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態1,2に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
実施形態1.
<実施形態1の保線用カート1の構成>
実施形態1の保線用カート1は、駆動源として着脱式バッテリを備えた電動モーター13を使用した電動カートで、図1図7等に示すように、カート本体11と、ハンドルポスト部12と、着脱式バッテリ式電動モーター13と、走行制御部14と、駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15と、回転伝達機構部16と、ブレーキ部17等を備えて構成される。
【0013】
(カート本体11)
カート本体11は、角材や角パイプ等の鋼材を溶接やボルトなどによって接合したカート本体フレーム11aの前後にそれぞれ前輪車軸11b1により連結された前輪11b2,11b2と、後輪車軸11c1により連結された後輪11c2,11c2と、運転手を含む2名の乗員がそれぞれ座る左右のシート11c3,11c3等を備えて構成されている。
【0014】
前輪11b2,11b2は、回転伝達機構部16を介し着脱式バッテリ式電動モーター13によって回転する駆動輪であり、前進方向への回転のみ許可するワンウエイクラッチ機構のフリーホイール11b21,11b21を設けている。
【0015】
また、実施形態1の保線用カート1は、ハンドルポスト部12上部に着脱式バッテリ式電動モーター13が設けられたハンドルポスト部12がカート本体11に着脱可能に取り付けるため、カート本体11に、ハンドルポスト装着部11c4を設けている。
【0016】
ハンドルポスト装着部11c4は、図3図4等に示すようにカート本体11のカート本体フレーム11aにハンドルポスト装着板11c41,11c41が溶接等して設けられており、ハンドルポスト装着板11c41,11c41に設けられた連結孔とハンドルポスト12下端のハンドルポスト連結板12c,12cに設けられた連結孔12c1,12c1(図8参照。)に通す連結ピン11c32とで構成されている。
【0017】
そのため、ハンドルポスト部12およびハンドルポスト部12上部に取付けた着脱式バッテリ式電動モーター13等はカート本体11に対し着脱可能であるため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0018】
尚、カート本体11には、図示しないが前照灯やホーン、後尾灯等が設けられており、前照灯やホーンはハンドルポスト部12に設けても勿論良い。
【0019】
(ハンドルポスト部12)
ハンドルポスト部12は、図1図8図11図12等に示すようにカート本体11から起立し、上部には着脱式バッテリ13bから供給された電流でシャフト13a2が回転する着脱式バッテリ式電動モーター13や走行制御部14が設けられた中空ポスト部12aと、その中空ポスト部12aの中に設けられ着脱式バッテリ式電動モーター13のシャフト13aと連結され、シャフト13a2の回転を回転伝達機構部16へ伝達するポスト回転伝達軸12bと、中空ポスト部12a下端部に設けられ、ハンドルポスト装着部11c4のハンドルポスト装着板11c41,11c41に連結ピン11c42(図4参照。)で連結されるハンドルポスト連結板12cと、運転手が掴むハンドル部12d等を備えている。
【0020】
ポスト回転伝達軸12bの上端部には、図8図9等に示すようにチャック部12b1が設けられ、着脱式バッテリ式電動モーター13のシャフト13a先端部に連結される一方、ポスト回転伝達軸12bの下端部には回転伝達機構部16の駆動用傘歯車16cに設けられた6角形の凹部に嵌合して連結する駆動用傘歯車連結部12b2が設けられ、着脱式バッテリ式電動モーター13のシャフト13a2の回転をポスト回転伝達軸12bを介して回転伝達機構部16の駆動用傘歯車16cに伝達するように構成されている。
【0021】
(着脱式バッテリ式電動モーター13)
着脱式バッテリ式電動モーター13は、駆動源用スイッチ13a1のオン/オフによりシャフト13a2を回転させる電動モーター本体13aと、電動モーター本体13aに対し着脱可能に装着され、電動モーター本体13aに対し駆動電流を供給する着脱式バッテリ13bとで構成されており、本実施形態1では、攪拌用の電動モーター、すなわち電源をオフにした後でもシャフト13a2の回転が止まらずに継続する市販の電動モーターを利用している。
【0022】
尚、本実施形態1の保線用カート1では、運転手は、カート本体11を走行させるために着脱式バッテリ式電動モーター13の駆動源用スイッチ13a1を直接操作することなく、後述するように走行制御部14の操作レバー14b1を操作して駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15を介して駆動源用スイッチ13a1をオン/オフするように構成している。
【0023】
(走行制御部14)
走行制御部14は、図1図11図12等に示すようにハンドルポスト部12上部に設けられ、着脱式バッテリ式電動モーター13のオン/オフおよびブレーキ部17のブレーキの解除を制御する部分で、ハンドルポスト部12の中空ポスト部12aの上部に溶接等によって取り付けられた走行制御ベース部14aと、ブレーキ・駆動源制御用カム板14bと、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cと、駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dと、駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14e等を備えている。
【0024】
走行制御ベース部14aは、ハンドルポスト部12の中空ポスト部12a上部に溶接等によって取り付けられた台座板である。
【0025】
ブレーキ・駆動源制御用カム板14bは、図12等に示すように走行制御ベース部14aに回動軸部14b1を介し回動可能に取り付けられ、運転手が握る操作レバー14b2が設けられていると共に、回動軸部14b1を中心に時計回りに回動した際、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの力点端14c2に当接して逸走防止ブレーキ解除用リンク14cを回動させて逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの作用端14c3に連結された逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1を引張りブレーキ部17による逸走防止ブレーキ状態を先に解除させる逸走防止ブレーキ解除用リンク当接部14b3が設けられている。
【0026】
また、ブレーキ・駆動源制御用カム板14bには、ブレーキ・駆動源制御用カム板14bが回動軸部14b1を介し時計回りに回動して、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの力点端14c2に逸走防止ブレーキ解除用リンク当接部14b3が当接して逸走防止ブレーキ解除用リンク14cを反時計回りに回動させて逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1を図11上、下方へ送り出し、カート本体フレーム11aに回動可能に取り付けた逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j(図1図11等参照。)を時計回りに回転させて、逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1を図11上、左方向へ引張り、ブレーキ部17による逸走防止ブレーキ状態を先に解除させた後、駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dの力点端14d2に当接して駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dをその回動軸14d1を中心に時計回りに回動させて駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dの作用端14d3に連結された駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eを引張り、駆動源用スイッチオン/オフ機構部15を操作して着脱式バッテリ式電動モーター13の電動モーター本体13aの駆動源用スイッチ13a1をオンさせる駆動源用スイッチオン/オフ用リンク当接部14b4と、ブレーキ部17によるブレーキの解除および着脱式バッテリ式電動モーター13の駆動源用スイッチ13a1のオン後に、走行制御ベース部14aに当接してブレーキ・駆動源制御用カム板14bの回動をストップ(停止)させる回動防止ストッパ14b5を設けている。
【0027】
逸走防止ブレーキ解除用リンク14cは、図12等に示すように走行制御ベース部14aに対し回動軸部14c1によりブレーキ・駆動源制御用カム板14bおよび駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dと同一平面内で回動可能に取り付けられ、力点端14c2はブレーキ・駆動源制御用カム板14bの逸走防止ブレーキ解除用リンク当接部14b3に当接するように構成されている一方、作用端14c3は逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1に連結されている。
【0028】
駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dは、走行制御ベース部14aに対し回動軸部14d1によりブレーキ・駆動源制御用カム板14bおよび逸走防止ブレーキ解除用リンク14cと同一平面内で回動可能に取り付けられ、力点端14d2は後述するように最初はブレーキ・駆動源制御用カム板14bの駆動源用スイッチオン/オフ用リンク当接部14b4が下方から当接して回動し、その後、連動する逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの力点端14c2上部が下方から当接して回動するように構成されている一方、作用端14d3は駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dの反時計回りの回動によって駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eを引張り、駆動源用スイッチオン/オフ機構部15を操作して着脱式バッテリ式電動モーター13の駆動源用スイッチ13a1のオン/オフを制御するように構成している。
【0029】
(駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15)
駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15は、着脱式バッテリ式電動モーター13の駆動源用スイッチオン/オフさせる機構で、図11図12等に示すように着脱式バッテリ式電動モーター13のモーター本体13aの左右両側に駆動源用スイッチ13a1を左右両側から囲むように取付けられた操作板15a,15aと、その操作板15a,15aの間に偏心した偏心回動軸15b1により回動可能に設けられた偏心ロータ15bとを備え、偏心ロータ15bには駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eを介し駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dの作用端14d3に連結される偏心ロータレバー15b2が設けられ、偏心ロータ15bが偏心回動軸15b1を中心とした回動することにより駆動源用スイッチ13a1を押し引きしてオン/オフさせるように構成されている。
【0030】
(回転伝達機構部16)
回転伝達機構部16は、図4等に示すように、ポスト回転伝達軸12b下端部に設けられたポスト回転伝達軸12bに嵌合する凹部が設けられ、カート本体フレーム11aにベアリング部16aを介し回転可能に支持された連結部16bと、連結部16b下端部に固定された回転する駆動用傘歯車16cと、前輪車軸11b1に設けられ駆動用傘歯車16cに噛み合う従動用傘歯車16d等を備えて構成されており、走行制御部14の操作によって着脱式バッテリ式電動モーター13のシャフト13a2の回転をハンドルシャフト12内のポスト回転伝達軸12bおよび回転伝達機構部16を介して前輪車軸11b1を回転させ駆動輪である前輪11b2,11b2を回転させるように構成されている。
【0031】
(ブレーキ部17)
ブレーキ部17は、ブレーキペダル17g(図1図2等参照。)を踏んでいない状態でも、弾性体である第1引張スプリング14gの引張力によって逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1を引張り、カート本体フレーム11aに回動可能に取り付けた逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j(図1図11等参照。)を反時計回りに回転させて、逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1を送り出して後述する図13に示す逸走防止ブレーキ状態にして、後輪車軸11c1に設けられたブレーキディスク17eをブレーキシュー17f,17fが挟むことにより後輪車軸11c1の両端部に設けられた後輪11c2,11c2に対しブレーキをかける機構で、図13図15等に示すようにカート本体11のカート本体フレーム11aに溶接等で固定されたブレーキベース部17aと、ブレーキベース部17aに回動軸17b1を介し回動可能に設けられた逸走防止ブレーキレバー17bと、逸走防止ブレーキレバー17bの力点端17b2側とベース部17aのスプリング掛止部17a1との間に設けられ、逸走防止ブレーキレバー17bの力点端17b2側を時計回りに常時引っ張る第2引張スプリング17cと、ブレーキベース部17aに回動軸17d1を介し回動可能に設けられ、力点端17d2は通常ブレーキワイヤ17hの芯ワイヤ17h1が連結され、作用端17d3によってブレーキシュー17f,17fを開閉する通常ブレーキレバー17d等を備えており、逸走防止ブレーキ状態では、図13に示すように逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3が通常ブレーキレバー17dの作用端17d3を押圧してブレーキシュー17f,17fを閉じてブレーキを掛けさせる。そのため、逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3は、円盤の一部を欠落させて直線状のブレーキレバー当接部17b31を設けており、図13に示す状態はブレーキレバー当接部17b31の角で逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3を押圧して逸走防止ブレーキ状態、図15はブレーキレバー当接部17b31の面が逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3に当接して逸走防止ブレーキ状態を解除するように構成している。
【0032】
つまり、図13に示す状態は、後述するようにブレーキ・駆動源制御用カム板14bの操作レバー14b2が操作されず、逸走防止ブレーキレバー17bの力点端17b2が第2引張スプリング17cの引張力によって引っ張られ、逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3のブレーキレバー当接部17b31の角で逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3を押圧しブレーキシュー17f,17fを閉じてブレーキディスク17eを挟みブレーキを掛けている状態である。
【0033】
これに対し、後述するようにブレーキ・駆動源制御用カム板14bの操作レバー14b2が引かれて、逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1が送り出され、逸走防止ブレーキレバー17bが図13に示す状態から図15に示すように反時計回りのβ方向に回動した場合、逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3のブレーキレバー当接部17b31の面が通常ブレーキレバー17dの作用端17d3に当接し、通常ブレーキレバー17dの作用端17d3を図15上、左方向に引くことにより、通常ブレーキレバー17dが反時計回りに回動してブレーキシュー17f,17fが開きブレーキディスク17eを開放し、ブレーキ部17による逸走防止ブレーキ状態を解除する。
【0034】
尚、ブレーキ部17は、逸走防止ブレーキ状態が解除された場合でも、カート本体11に回動可能に設けられたブレーキペダル17gを踏むことにより、後述する図18に示すようにブレーキペダル17gに連結された通常ブレーキワイヤ17hを介してブレーキ部17のブレーキシュー17f,17fを閉じて後輪車軸11c1に設けられたブレーキディスク17eを挟むことによりブレーキをかけることができる。
【0035】
<実施形態1の保線用カート1の動作>
次に、以上のように構成された実施形態1の保線用カート1の動作について説明する。
【0036】
(乗員が乗車していない状態(逸走防止ブレーキ状態))
乗員が乗車していない場合、走行制御部14では、図12に示すようにブレーキ・駆動源制御用カム板14bの操作レバー14b2は操作されずに起立状態にあり、ブレーキ・駆動源制御用カム板14bによって逸走防止ブレーキ解除用リンク14cおよび駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dが回動していない。
【0037】
そのため、図12に示すように第1引張スプリング14gの引張力によって逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1が図12上、上方向に引張られ、カート本体フレーム11aに回動可能に取り付けた逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j(図1図11等参照。)が反時計回りに回転し、逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1は図1上、右方向に送り出されている。
【0038】
これにより、ブレーキ部17では、図13に示すように逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1が連結されている逸走防止ブレーキレバー17bが第2引張スプリング17cの引張力によって力点端17b2側がα方向に回転して閉じた状態を維持し、逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3におけるブレーキレバー当接部17b31の角で通常ブレーキレバー17dの作用端17d3を押圧してピストンロッド17mを図13上、右方向に押出するので、ブレーキシュー17f,17fを閉じてブレーキディスク17eを挟みブレーキを掛ける。
【0039】
その結果、本実施形態1の保線用カート1は、図12および図13に示す状態では、ブレーキ部17が機能していて逸走防止ブレーキがかけられ、勝手に走行しない逸走防止ブレーキ状態にある。
【0040】
また、この状態では、図12に示すようにブレーキ・駆動源制御用カム板14bにより駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dも回動していないため、駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dの作用端14d3に連結された駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eを介して偏心ロータレバー15b2を引っ張ることもなく、偏心ロータ15bが偏心回動軸15b1を中心とした回動せずに駆動源用スイッチ13a1をオフ状態に維持する。
【0041】
そのため、図12および図13に示す状態では、ブレーキ部17が機能しているだけでなく、着脱式バッテリ式電動モーター13がオフ状態にあるので、保線用カート1が走行することもない。
【0042】
(乗員が乗車して操作レバー14b2を途中まで引いた状態(逸走防止解除状態))
本実施形態1の保線用カート1に乗員が乗車して、ブレーキ・駆動源制御用カム板14bの操作レバー14b2を途中まで引いた場合、走行制御部14では、図14に示すようにブレーキ・駆動源制御用カム板14bが回動軸14b1を回動中心として時計回りに途中まで回動し、逸走防止ブレーキ解除用リンク当接部14b3が上昇して逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの力点端14c2を持ち上げて逸走防止ブレーキ解除用リンク14cを反時計回りに回動させ、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの作用端14c3を第1引張スプリング14gに対抗して逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1を下方に送り出す。
【0043】
すると、図1に示すようにカート本体11aに回動可能に支持された逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17jが時計回りに回転して逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1を図1上、左方向に引っ張る。
【0044】
そのため、ブレーキ部17では、図15に示すように逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1が図15上、下方向に引っ張られ、第2引張スプリング17cの引張力に対抗しながら逸走防止ブレーキレバー17bが反時計回りのβ方向に回動して、逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3の直線状のブレーキレバー当接部17b31が通常ブレーキレバー17dの作用端17d3に当接するようになり、通常ブレーキレバー17dを図15上、左方向に引き始める。
【0045】
図15に示すように逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3が通常ブレーキレバー17dの作用端17d3を押圧せずに引き始めると、通常ブレーキレバー17dが反時計回りに回動することによりピストンロッド17mを図15上、左方向に引いてブレーキシュー17f,17fが開くため、図15に示すようにブレーキディスク17eを開放し、ブレーキ部17による逸走防止ブレーキ状態を解除する。
【0046】
そのため、この状態は、逸走防止ブレーキ状態が解除された状態であるので、走行するレールRが急な勾配区間に敷設されていた場合、そのレールRの勾配(傾斜)によって保線用カート1が勝手に走行し、かつ、着脱式バッテリ式電動モーター13の駆動源用スイッチ13a1がオン状態にあれば、保線用カート1が逸走する可能性がある。
【0047】
しかし、図14に示す操作レバー14b2を途中まで引いた状態では、ブレーキ・駆動源制御用カム板14bにより駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dも多少は反時計回りに回動して駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dの作用端14d3に連結された駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eを引張って偏心ロータレバー15b2を上昇させ、偏心ロータ15bが偏心回動軸15b1を中心として多少回動しているものの、駆動源用スイッチ13a1は押されておらずオフ状態のままである。
【0048】
そのため、図14に示す状態では、ブレーキ部17のブレーキが解除されたものの、着脱式バッテリ式電動モーター13がオフ状態にあるため、保線用カート1は電動で走行しない。
【0049】
(乗員が乗車して操作レバー14b2が止まるまで引いた状態(走行状態))
運転手が図14に示す状態からさらにブレーキ・駆動源制御用カム板14bの操作レバー14b2を倒し水平に近付けると、図16に示すようにブレーキ・駆動源制御用カム板14bの反対側に設けられた回動防止ストッパ14b5が走行制御ベース部14a下端面に当接して、走行制御ベース部14aに対するブレーキ・駆動源制御用カム板14bの回動がストップ(停止)する。
【0050】
すると、図16に示すようにブレーキ・駆動源制御用カム板14bは、図14に示す場合よりもさらに時計回りに回動して逸走防止ブレーキ解除用リンク当接部14b3が上昇し、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの力点端14c2側をさらに持ち上げて、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cを反時計回りに回動させ、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの作用端14c3を第1引張スプリング14gに対抗して逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1をさらに送り出す。
【0051】
すると、図1に示すようにカート本体11aに回動可能に支持された逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17jがさらに時計回りに回転して逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1を図1上、さらに左方向に引っ張る。
【0052】
これによりブレーキ部17では、図17に示すように逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1が図17上、さらに下方向に引っ張られ、第2引張スプリング17cの引張力に対抗しながら逸走防止ブレーキレバー17bが反時計回りのβ方向にさらに回動して、逸走防止ブレーキレバー17bの作用端17b3が通常ブレーキレバー17dの作用端17d3を押圧し始め、通常ブレーキレバー17dを時計回りに回転させ、ピストンロット17mを図17上、右方向に押出し、ブレーキシュー17f,17fが閉じ始める。
【0053】
しかし、この状態では、上述したようにブレーキ・駆動源制御用カム板14bの反対側に設けられた回動防止ストッパ14b5が走行制御ベース部14a下端面に当接して、走行制御ベース部14aに対するブレーキ・駆動源制御用カム板14bの回動がストップ(停止)するため、逸走防止ブレーキレバー17bや通常ブレーキレバー17dの回転も止まるため、ブレーキシュー17f,17fは図15に示す状態よりも閉じるものの、ブレーキディスク17eを挟んでブレーキをかける状態までには至らず、逸走防止ブレーキの解除状態を維持する。
【0054】
ところで、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの反時計回りのさらなる回動によって、図16に示すように逸走防止ブレーキ解除用リンク14cの力点端14c2が駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dの力点端14d2側を持ち上げ、駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dを反時計回りにさらに回動させる。
【0055】
すると、駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dの作用端14d3に連結された駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eがさらに引っ張られ、駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eを介して偏心ロータレバー15b2もさらに引っ張られ、偏心ロータ15bが偏心回動軸15b1を中心としたさらに回動して、駆動源用スイッチ13a1をオフ状態からオン状態に切り替える。
【0056】
そのため、図16に示す状態では、ブレーキ部17のブレーキが図17に示すように解除状態にあり、着脱式バッテリ式電動モーター13がオン状態に切り替わったので、着脱式バッテリ式電動モーター13は着脱式バッテリ13bからの電流の供給によりシャフト13a2を回転させる。
【0057】
すると、着脱式バッテリ式電動モーター13のシャフト13a2にチャック部12b1により連結されたハンドルポスト部12のポスト回転伝達軸12bも回転し、ポスト回転伝達軸12bの下端部の駆動用傘歯車16cも回転し、回転伝達機構部16の従動用傘歯車16dを介して前輪車軸11b1を回転させて前輪11b2,11b2を回転させ、本実施形態1の保線用カート1を走行させることができる。
【0058】
そのため、本実施形態1の保線用カート1によれば、乗員が乗車していない場合は、ブレーキ部17が機能していて勝手に走行しない逸走防止ブレーキ状態にある一方、乗員が乗車して、ブレーキ・駆動源制御用カム板14bの操作レバー14b2を引いた場合、まずは、先にブレーキ部17でブレーキを解除した後、着脱式バッテリ式電動モーター13がオン状態に切り替わって保線用カート1が走行するので、運転手が複雑な操作をすること無く、操作レバー14b2を操作するだけで着脱式バッテリ式電動モーター13に余分な負荷をかけることも無く、容易かつ確実に逸走防止ブレーキ状態を解除した後に走行することができる。
【0059】
尚、着脱式バッテリ式電動モーター13のオン状態によって保線用カート1の走行中に急停止等する場合は、運転手はブレーキ部17のブレーキペダル17gを足で踏み、ブレーキペダル17gに連結された通常ブレーキワイヤ17hの通常ブレーキカバー17h2の中を通る芯ワイヤ17h1を引張る。
【0060】
すると、図17に示す逸走防止ブレーキおよび通常ブレーキの解除状態から通常ブレーキワイヤ17hの通常ブレーキカバー17h2の中を通る芯ワイヤ17h1によって通常ブレーキレバー17dの力点端17d2側が引っ張られると、図18に示すように通常ブレーキレバー17dは回動軸17d1を中心に時計回りに回動してブレーキシュー17f,17fを閉じることによりブレーキディスク17eを挟み、後輪11c2,11c2に対しブレーキをかけることができる。
【0061】
また、ブレーキ部17のブレーキペダル17gを足で踏むこと無く、操作レバー14b2を上げる、つまり操作レバー14b2を反時計回りに戻すと、図14に示すように着脱式バッテリ式電動モーター13がオン状態からオフ状態に切り替わる。
【0062】
ただし、着脱式バッテリ式電動モーター13では、撹拌機用の電動モーターを使用しているので、着脱式バッテリ式電動モーター13がオン状態からオフ状態に切り替わっても慣性により保線用カート1が走行可能であるので、さらに操作レバー14b2を上げて図12に示す状態に戻ることにより図13に示すように逸走防止ブレーキ状態に戻ることによりブレーキ部17を機能させてブレーキをかけることもできる。
【0063】
<本発明に係る実施形態1の保線用カート1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態1の保線用カート1は、前輪11b2,11b2および後輪11c2,11c2が設けられ、乗員を乗せてレールR上を走行するカート本体11と、カート本体11に搭載され、電動モーター本体13aに装着された着脱式バッテリ13bから供給された電流でシャフト13a2を回転させ着脱式バッテリ式電動モーター13と、着脱式バッテリ式電動モーター13のオン/オフを制御する走行制御部14と、走行制御部14の制御によって着脱式バッテリ式電動モーター13のシャフト13a2が回転した際に、その回転を前輪11b2,11b2に伝達してカート本体11をレール上で走行させる回転伝達機構部16等を備える。
【0064】
そのため、電動モーター本体13aに装着した充電式バッテリ13bからの電流供給によってバッテリ式電動モーター13がシャフト13a2を回転させて前輪11b2,11b2を回転させて保線用カート1を走行させるため、充電式バッテリ13bからの電流をモーターへ供給する配線が不要で、単純な構造の電動式で鉄道のレール上を走行することができる。
【0065】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、通常のブレーキをかける際に操作するブレーキペダル17gを操作しないブレーキペダル操作無し状態においても第1引張スプリング14gによって後輪11c2,11c2に対しブレーキをかけた逸走防止ブレーキ状態を維持するブレーキ部14を備えており、走行制御部14は着脱式バッテリ式電動モーター13のオフ状態からオン状態に切り替える際には、ブレーキ部17を制御して逸走防止ブレーキ状態を先に解除し、その逸走防止ブレーキ状態解除後に着脱式バッテリ式電動モーター13をオン状態に切り替えるように構成している。
【0066】
そのため、着脱式バッテリ式電動モーター13のオフ状態からオン状態に切り替える際には、ブレーキ部17による逸走防止ブレーキ状態が先に解除され、その逸走防止ブレーキ状態解除後に着脱式バッテリ式電動モーター13をオン状態に切り替わるため、運転手は複雑な操作をすること無く、また着脱式バッテリ式電動モーター13に余分な負荷をかけることも無く、容易かつ確実に逸走防止ブレーキ状態を解除した後に走行することができる。
【0067】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、カート本体11aには、乗員が座るシート11c3,11c3と、そのシート11c3,11c3よりも前方に設けられ、バッテリ式電動モーター13と走行制御部14とが設けられたハンドルポスト部12とを設けている。
【0068】
そのため、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、シート11c3,11c3よりも前方に設けたハンドルポスト部12に重要なバッテリ式電動モーター13と走行制御部14とが集中して設けられているので、操作性やメンテナンス性等を向上させることができる。
【0069】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、バッテリ式電動モーター12には、当該バッテリ式電動モーター13をオンまたはオフさせる駆動源用スイッチ13a1と、その駆動源用スイッチ13a1を操作する駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15とを設け、走行制御部14には、ハンドルポスト部12に設けられた走行制御ベース部14aと、走行制御ベース部14aに回動可能に取り付けられ、乗員が操作する操作レバー14b2が取り付けられたブレーキ・駆動源制御用カム板14bと、走行制御ベース部14aに回動可能に設けられ、作用点側に連結された駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eを介し駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15を操作して着脱式バッテリ式電動モーター13の駆動源用スイッチ13a1をオンまたはオフさせる駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dと、走行制御ベース部14aに回動可能に設けられ、作用点側に連結された逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iを介してブレーキ部17の逸走防止ブレーキ状態を解除する逸走防止ブレーキ解除レバーに連結された逸走防止ブレーキ解除用リンク14cとを備え、乗員が操作レバー14b2を操作してブレーキ・駆動源制御用カム板14bが走行制御ベース部14aに対し回動した場合、逸走防止ブレーキ解除用リンク14cおよび逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iを介しブレーキ部17による逸走防止ブレーキ状態を先に解除した後、駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14dおよび駆動源用スイッチオン/オフワイヤ14eを介し駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15を操作して駆動源用スイッチ13a1をオンさせるように構成している。
【0070】
そのため、走行制御部14は、走行制御ベース部14aやブレーキ・駆動源制御用カム板14b、逸走防止ブレーキ解除用リンク14c、駆動源用スイッチオン/オフ用リンク14d等の物理的な構造によって逸走防止ブレーキ状態を先に解除した後、着脱式バッテリ式電動モーター13のオン状態に切り替えて走行することができるので、簡単な構造で逸走防止ブレーキ機能および通常のブレーキ機能を備えた保線用の保線用カート1を提供することができ、コストを低減することができる。
【0071】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、ブレーキ・駆動源制御用カム板14bには、乗員が操作レバー14b1を操作して走行制御ベース部14aに対し回動して、駆動源用スイッチ13a1をオンさせた後、走行制御ベース部14aに当接して当該ブレーキ・駆動源制御用カム板14bの回動をストップさせる回動防止ストッパ14b5を設けている。
【0072】
そのため、回動防止ストッパ14b5によってブレーキ・駆動源制御用カム板14bの回動し過ぎを防止することによりブレーキ部17におけるブレーキシュー17f,17fの開き過ぎや、駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15における偏心ロータ15bの回動し過ぎを防止できるので、保線用カート1の走行時におけるブレーキペダル17gによるブレーキを確実に担保することができると共に、着脱式バッテリ式電動モーター13のオン状態を確実に担保することができ、保線用カート1の円滑かつ安定した走行を担保することができる。特に、この保線用カート1では、駆動源用スイッチ13a1のオン/オフの切替に偏心回動軸15b1を中心に回動する偏心ロータ15bを利用していため、偏心ロータ15bの回動し過すぎによるオフ状態からオン状態に誤操作も確実に防止することが可能となる。
【0073】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、ハンドルポスト部12の上端部には、着脱式バッテリ式電動モーター13を下向きで取り付けられていると共に、ハンドルポスト部12は、中空で、かつ、着脱式バッテリ式電動モーター13のシャフト13a2に連結されるポスト回転伝達軸12bを設け、ポスト回転伝達軸12bを介して着脱式バッテリ式電動モーター13のシャフト13a2の回転を前輪11b2,11b2に伝達して回転させるように構成している。
【0074】
そのため、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、着脱式バッテリ式電動モーター13の取付位置がハンドルポスト部12の上端部となり、高い位置となるので、着脱式バッテリ13bの交換や着脱式バッテリ式電動モーター13のメンテナンスが容易となり、作業効率やメンテナンス効率等を向上させることができる。
【0075】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、市販の着脱式バッテリ式電動モーター13の両側に設けられている雌ネジ孔に運転手が掴むハンドル部12dを取付けている。
【0076】
そのため、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、市販の着脱式バッテリ式電動モーター13のハンドル部を交換して新たに保線用カート1運転用の長めのハンドル部12dも取付けることが可能となり、製造コスト等を低減させることができる。
【0077】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、ハンドルポスト部12の下端部にはハンドルポスト連結部であるハンドルポスト連結板12c,12cを設け、当該ハンドルポスト連結板12c,12cがカート本体11aに設けたハンドルポスト装着板11c41,11c41に対し連結ピン11c42で着脱可能に取り付けるように構成している。
【0078】
そのため、着脱式バッテリ式電動モーター13や走行制御部14等の重要な機構部が設けられたハンドル部12がカート本体11aに対し連結ピン11c42で取り付けたり、取り外すことが可能となるので、この点でも着脱式バッテリ13bの交換や着脱式バッテリ式電動モーター13のメンテナンスが容易となり、作業効率やメンテナンス効率等を向上させることができる。
【0079】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、着脱式バッテリ式電動モーター13には、充電式バッテリ13bが着脱可能に設けている。そのため、充電式バッテリ13bの充電や交換が容易となるので、保線用カート1の使用勝手を向上させることができる。
【0080】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、着脱式バッテリ式電動モーター13は、撹拌機用のバッテリ式電動モーターを使用している。
【0081】
そのため、駆動源用スイッチ13a1をオフにした場合でも、シャフト3a2が慣性で回転しながらブレーキ部17が機能することにより停止するので、保線用カート1をスムーズに停止させることができる。
【0082】
また、本発明に係る実施形態1の保線用カート1では、着脱式バッテリ式電動モーター13によって回転する前輪11b2,11b2には、前進方向への回転のみ許可するワンウエイクラッチ機構のフリーホイール11b21,11b21を設けている。
【0083】
そのため、運転手の操作が不慣れ等で着脱式バッテリ式電動モーター13の回転を上手くコントール出来ない場合でも、保線用カート1を円滑に走行させることができる。また、着脱式バッテリ式電動モーター13は、電源をオフにした場合でも、慣性によって保線用カート1が走行し、輪軸である前輪車軸11b1が回転し続けることにより回生電流が発生するため、電源をオフにした際に、回生電流の行き場が無くなり着脱式バッテリ式電動モーター13の負荷が大きくなって故障し易くなるが、ワンウエイクラッチ機構のフリーホイール11b21,11b21を設けているので、着脱式バッテリ式電動モーター13の電源をオフにした場合でも保線用カート1が慣性で走行して、着脱式バッテリ式電動モーター13の焼き付け等の故障を防止することもできる。さらに、保線用カート1で上り勾配区間等のレールR上を走行してバックしそうになった場合でも、ワンウエイクラッチ機構のフリーホイール11b21,11b21により着脱式バッテリ式電動モーター13が逆回転することを防止することができるため、この点でも着脱式バッテリ式電動モーター13の故障を防止することができる。
【0084】
尚、上記実施形態1の説明では、カート本体11に2つのシート11c3,11c3を設けた二人乗りの保線用カート1により説明したが、本発明ではこれに限らず、シート11c3は1つの一人乗りの保線用カート1でも良いし、シート11c3が3つ以上の保線用カート1を構成しても勿論良い。
【0085】
また、上記実施形態1の説明では、市販の着脱式バッテリ式電動モーター13をハンドルポスト部12の上端部に装着して構成したが、本発明ではこれに限らず、市販の着脱式バッテリ式電動モーター13を使用せずに専用の着脱式バッテリ式電動モーターをハンドルポスト部12に設けても良いし、着脱式バッテリ式電動モーター13の代わりに、次の実施形態2で説明するガソリンや軽油等の燃料によって駆動するエンジンを上端部に設けるようにしても勿論良い。
【0086】
また、市販の着脱式バッテリ式電動モーター13を使用したため着脱式バッテリ式電動モーター13に外付けで駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15を取付けて走行制御部14の操作レバー14b2の操作によって駆動源用スイッチ13a1をオン/オフ操作するように説明したが、本発明ではこれに限らず、駆動源用スイッチ13a1のオン/オフ操作機能付きの専用の着脱式バッテリ式電動モーターを用意すれば、駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15を省略しても良い。
【0087】
また、上記実施形態1の説明では、着脱式バッテリ13bを装着した着脱式バッテリ式電動モーター13を一例に説明したが、本発明では、これに限らず、充電式バッテリを使用するバッテリ式電動モーターであれば、バッテリが着脱式でなくても勿論良い。
【0088】
実施形態2.
上述した実施形態1の保線用カート1では、着脱式バッテリ13bを備えた電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12を使用して説明したが、実施形態2の保線用カート1’は、上述した電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12を使用した実施形態1の保線用カート1に、さらに、駆動源としてガソリンや軽油等を燃料とするエンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’を使用可能に構成し、電動モーター13およびエンジン13’の双方を使用可能に構成した保線用カートである。
【0089】
図19図21は、それぞれ、本発明に係る実施形態2の保線用カート1’の正面図、平面図、右側面図である。また、図22および図23は、実施形態2の保線用カート1’において使用するエンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’の側面図、正面図である。さらに、図24および図25は、それぞれ、本発明に係る実施形態2の保線用カート1’のカート本体11’から電動モーター13とエンジン13’をそれぞれ装着した2つのハンドルポスト部12,12’を取り外した状態を示す正面図、平面図である。
【0090】
本発明に係る実施形態2の保線用カート1’では、図19図21に示すように着脱式バッテリ13bを備えた電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12のみでなく、ガソリンや軽油等を燃料とするエンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’を同時装着可能に構成するため、図24および図25に示すように、カート本体11の左右のシート11c3,11c3それぞれの前方に同じ構成のハンドルポスト装着部11c4,11c4を設けて、電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12と、エンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’とを併用可能に構成したことを特徴とし、これ以外の構成は、上述した実施形態1の保線用カート1と同じ構成である。
【0091】
ここで、本発明に係る実施形態2の保線用カート1’のエンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’は、図21図23に示すように基本的には、着脱式バッテリ13bを備えた電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12において電動モーター13の代わりに燃料タンク13b’から供給したガソリン等でシャフト13a2’を回転させるエンジン本体13a’を有するエンジン13’を使用したものである。ハンドルポスト部12’は、エンジン13’を使用しているため、周知の減速機12eやワンウエイクラッチ部12fおよびチャック部12b1等を介してポスト回転伝達軸12bに回転力を伝達するように構成しており、それ以外の構成は上述した実施形態1の保線用カート1のハンドルポスト部12と同じであり、実施形態2においても、実施形態1のハンドルポスト部12と同じ構成のハンドルポスト部12を使用している。
【0092】
そのため、本発明に係る実施形態2の保線用カート1’では、図23および図24等に示すようにカート本体11の前輪車軸11bに実施形態1のハンドルポスト装着部11c4を2つ設けて、2つのハンドルポスト部12,12’を同時装着可能に構成していると共に、2つのハンドルポスト部12,12’近傍のカート本体11aに逸走防止ブレーキ状態を解除等するための逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j,17j’を回動可能に設ける。
【0093】
そして、電動モーター13を装着したハンドルポスト部12を使用して走行する場合、およびエンジン13’を装着したハンドルポスト部12’を使用して走行する場合も、通常時は逸走防止ブレーキ状態にあるため、電動モーター13を装着したハンドルポスト部12には、実施基形態1の場合と同様に、図1に示すようにカート本体11aに回動可能に支持された逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17jの上端に逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1が連結され、その下端にはブレーキ部17の逸走防止ブレーキレバー17bb(図13等参照。)に連結された逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1を連結して上述した実施形態1の保線用カート1と同様に逸走防止ブレーキ機能を持たせている。
【0094】
これに対し、エンジン13’を装着したハンドルポスト部12’では、電動モーター13を装着したハンドルポスト部12とは異なり、走行制御部14や駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部15等を設けておらず、エンジン13’を直接駆動して走行するため、逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iも設けていない。そのため、逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j’の上端には、逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ17iの芯ワイヤ17i1が連結されない。
【0095】
ただし、逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j’の下端には、図21に示すようにブレーキ部17の逸走防止ブレーキレバー17b(図13等参照。)に連結された逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1を連結して上述した実施形態1の保線用カート1と同様に逸走防止ブレーキ解除機能を持たせている。
【0096】
そのため、例えば、図26に示すように本発明に係る実施形態2の保線用カート1’に乗車した乗員が足等で逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j’の上端を踏むことにより、逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j’が時計回りに回動して、逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j’の下端に連結された逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1を図26上、左方向に引張り、図20に示すように逸走防止ブレーキ水平ワイヤ17kの芯ワイヤ17k1が連結された逸走防止ブレーキレバー17bを引っ張って逸走防止ブレーキ状態を解除することができると共に、乗員が足で逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク17j’から足等を離すことにより逸走防止ブレーキ状態に移行させることができる。
【0097】
そのため、本発明に係る実施形態2の保線用カート1’では、例えば、作業現場の長距離移動時はエンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’の方を使用し、作業現場に到着しても保線作業時、特に、トンネル内での作業や、検査・測定等の検測作業、さらには都市部における夜間作業時等の振動や騒音を嫌う作業を行う場合には、電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12を使用することができる。
【0098】
ここで、実施形態1のところで説明したように、ハンドルポスト装着部11c4はハンドルポスト部12を着脱可能に構成しているため、実施形態2の2つのハンドルポスト装着部11c4,11c4’もそれぞれ電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12と、エンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’とがそれぞれ着脱可能であり、ハンドルポスト部12とハンドルポスト部12’とを左右で入れ替えたり、さらにはハンドルポスト部12またはハンドルポスト部12’のいずれか一方のみを、左右いずれかのハンドルポスト装着部11c4に連結することができる。
【0099】
そのため、保線現場や保線作業の内容によっては、エンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’を取り外して電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12のみを装着し、その反対に電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12を取り外してエンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’のみを装着して実施形態2の保線用カート1’を使用するようにしても勿論良い。
【0100】
従って、本発明に係る実施形態2の保線用カート1’によれば、電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12と、エンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’とを着脱可能に設けたので、まずは電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12を使用した実施形態1の保線用カート1と同様の効果が得られる。
【0101】
また、電動モーター13を搭載したハンドルポスト部12と、エンジン13’を搭載したハンドルポスト部12’の双方を選択的に使用することにより、移動距離や保線作業の場所、さらには時間帯等に応じて電動モーター13とエンジン13’を選択して使用することが可能となるので、実施形態1の保線用カート1よりもさらに使用勝手を向上させることができると共に、作業性も向上させることができる。
【符号の説明】
【0102】
1.1’ 保線用カート
11 カート本体
11a カート本体フレーム
11b1 前輪車軸(駆動輪軸)
11b2,11b2 前輪(駆動輪)
11b21,11b21 フリーホイール
11c1 後輪車軸
11c2,11c2 後輪
11c3,11c3 シート
11c4,11c4’ ハンドルポスト装着部
11c41,11c41 ハンドルポスト装着板
11c42 連結ピン
12,12’ ハンドルポスト部
12a 中空ポスト部
12b ポスト回転伝達軸
12b1 チャック部
12b2 駆動用傘歯車連結部
12c ハンドルポスト連結板
12d ハンドル部
12e 減速機
12f ワンウエイクラッチ部
13 着脱式バッテリ式電動モーター
13a 電動モーター本体
13a1 駆動源用スイッチ
13a2 シャフト
13b 着脱式バッテリ
13’ エンジン
13a’ エンジン本体
13b’ 燃料タンク
13a2’ シャフト
14 走行制御部
14a 走行制御ベース部
14b ブレーキ・駆動源制御用カム板
14b1 回動軸部
14b2 操作レバー
14b3 逸走防止ブレーキ解除用リンク当接部
14b4 駆動源用スイッチオン/オフ用リンク当接部
14b5 回動防止ストッパ
14c 逸走防止ブレーキ解除用リンク
14d 駆動源用スイッチオン/オフ用リンク
14e 駆動源用スイッチオン/オフワイヤ
14g 第1引張スプリング
15 駆動源用スイッチオン/オフ操作機構部
15a 操作板
15b 偏心ロータ
15b1 偏心回動軸
15b2 偏心ロータレバー
16 回転伝達機構部
16a ベアリング部
16b 連結部
16c 駆動用傘歯車
16d 従動用傘歯車
17 ブレーキ部
17a ブレーキベース部
17b 逸走防止ブレーキレバー
17c 第2引張スプリング
17d 通常ブレーキレバー
17e ブレーキディスク
17f ブレーキシュー
17g ブレーキペダル
17h 通常ブレーキワイヤ
17h1 芯ワイヤ
17h2 通常ブレーキカバー
17i 逸走防止ブレーキ鉛直ワイヤ(逸走防止ブレーキワイヤ)
17i1 芯ワイヤ
17i2 逸走防止ブレーキカバー
17j,17j’ 逸走防止ブレーキワイヤ方向変換リンク
17k 逸走防止ブレーキ水平ワイヤ(逸走防止ブレーキワイヤ)
17k1 芯ワイヤ
17k2 逸走防止ブレーキカバー
17m ピストンロッド
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