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特開2025-20016大型2ストロークユニフロー掃気過給式クローズドサイクル・オキシ燃料内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020016
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】大型2ストロークユニフロー掃気過給式クローズドサイクル・オキシ燃料内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20250131BHJP
   F02B 25/04 20060101ALI20250131BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20250131BHJP
   F02B 47/06 20060101ALI20250131BHJP
   F02M 26/24 20160101ALI20250131BHJP
   F02M 26/25 20160101ALI20250131BHJP
   F02M 26/35 20160101ALI20250131BHJP
   F02M 26/34 20160101ALI20250131BHJP
【FI】
F01N3/08 A
F02B25/04
F01N3/00 A
F02B47/06
F02M26/24
F02M26/25
F02M26/35 D
F02M26/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024113738
(22)【出願日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】PA202370389
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】ウエストリー フレデリック
【テーマコード(参考)】
3G062
3G091
【Fターム(参考)】
3G062AA02
3G062ED08
3G062ED11
3G062FA18
3G091AA11
3G091AA15
3G091AA18
3G091BA13
3G091HB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CO2回収システムを備える、大型2ストロークユニフロー掃気クローズドサイクル・オキシ燃料内燃機関に関する。
【解決手段】複数のシリンダ1と、シリンダの燃焼室に掃気ガスを供給するためにシリンダに接続される掃気受け2を有する吸気システムと、炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受け3を有する排気システムとを備える。前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、排気受けを掃気受けに接続する再循環導管5と、再循環導管内のブロワ7と、酸素供給システム12と、分離及び二酸化炭素液化システム60とを備え、燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、分離及び二酸化炭素液化システムに分流される。分離及び二酸化炭素液化システムは、分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、分流された排気ガス流から酸素を分離する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関であって、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、前記機関は更に、
・ 前記排気ガス流から分流された前記一部を迂回させるための迂回導管であって、前記再循環導管に結合され、分流コンプレッサと1つ又は複数の冷却器を有する迂回導管、
を備える、機関。
【請求項2】
前記迂回導管が、前記第1冷却器の下流の位置で前記再循環導管に結合されている、請求項1に記載の機関。
【請求項3】
前記1つ又は複数の冷却器は前記迂回導管内で前記分流コンプレッサの下流に配される、請求項1又は2に記載の機関。
【請求項4】
前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流を目標圧力に加圧するコンプレッサと、前記分流された排気ガス流を目標温度まで冷却するための1つ又は複数の熱交換器とを有し、
所望の圧力と所望の温度の組み合わせは、蒸気中の二酸化炭素の液化を生じさせ、それによって、分離容器内に、前記分流された排気ガス流内の酸素を分離する、
請求項1から3のいずれかに記載の機関。
【請求項5】
前記酸素供給システムは液体酸素タンクを有する、請求項1から4のいずれかに記載の機関。
【請求項6】
前記炭素系燃料が炭化水素系燃料であり、前記燃焼室における炭化水素系燃料の燃焼によって水が発生し、前記機関は、排気ガス流から水を分離するように構成される水分離システムを備える、請求項1から5のいずれかに記載の機関。
【請求項7】
排気ガスを冷却するための第1の冷却器を前記再循環導管内に備える、請求項1から6のいずれかに記載の機関。
【請求項8】
前記第1の冷却器は排気ガスから水を分離するように構成される、請求項6を引用する請求項7に記載の機関。
【請求項9】
前記燃焼室は炭素系燃料を酸素と共に燃焼させ、それによって二酸化炭素を含む排気ガス流を生成するように構成される、請求項1から8のいずれかに記載の機関。
【請求項10】
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の二酸化炭素のモル分率は、0.70mol/molより大きい、請求項1から9のいずれかに記載の機関。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の機関であって、
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の窒素のモル分率は、0.05 mol/mol未満である。
【請求項12】
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の酸素のモル分率は、0.17 mol/molより大きい、請求項1から11のいずれかに記載の機関。
【請求項13】
前記迂回導管内の冷却器の少なくとも1つが、前記分流された排気ガスと、前記液体酸素タンクから前記掃気受けに供給される液体酸素との間で熱交換を行う熱交換器である、請求項5から12のいずれかに記載の機関。
【請求項14】
大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関であって、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流を目標圧力に加圧するコンプレッサと、前記分流された排気ガス流を目標温度まで冷却するための1つ又は複数の熱交換器とを有し、
所望の圧力と所望の温度の組み合わせは、蒸気中の二酸化炭素の液化を生じさせ、それによって、分離容器内に、前記分流された排気ガス流内の酸素を分離する、
機関。
【請求項15】
大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関であって、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の二酸化炭素のモル分率は、0.70mol/molより大きい、
機関。
【請求項16】
大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関であって、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の窒素のモル分率は、0.05 mol/mol未満である、
機関。
【請求項17】
大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関であって、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の酸素のモル分率は、0.17 mol/molより大きい、
機関。
【請求項18】
大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関であって、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離する、機関。
【請求項19】
大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関であって、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記酸素供給システムは液体酸素タンクを有し、
前記迂回導管内の冷却器の少なくとも1つが、前記分流された排気ガスと、前記液体酸素タンクから前記掃気受けに供給される液体酸素との間で熱交換を行う熱交換器である、
機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示事項(以下、本開示という)は、大型2ストローク内燃機関に関し、特に、CO2回収システムを備える、大型2ストロークユニフロー掃気クローズドサイクル・オキシ燃料内燃機関に関する。
【背景】
【0002】
大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃クロスヘッド機関は、典型的には、大型船舶の推進システムや、発電プラントの原動機として用いられる。その大きさや重量、出力は、大型2ストロークターボ過給式圧縮着火内燃機関を他の燃焼機関からかけ離れたものとしており、このタイプの圧縮内燃機関を独特の分類に位置づけている。
【0003】
大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃クロスヘッド機関はこれまで、ディーゼル油のような燃料油や、天然ガス又は石油ガスのような燃料ガスといった、炭化水素燃料によって主に運転されてきた。炭化水素燃料の燃焼は、二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスの発生を伴うが、これらは大気汚染や気候変動の原因になり得る。副生成物の排出を生じる石油燃料の不純物と違って、CO2の発生は、炭化水素の燃焼に不可避である。燃料のエネルギー密度やCO2排出量は、炭化水素鎖の長さと炭化水素分子の複雑さに依存する。このためガス状炭化水素燃料は、液体の炭化水素燃料よりもCO2排出量が少ない。しかし、ガス状炭化水素燃料は、取り扱いや貯蔵が難しく、コストもかかる。CO2排出量を削減するために、炭化水素燃料で動作する大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式圧縮着火内燃クロスヘッド機関であって、CO2の回収・貯蔵システムを有する機関が提案されている。
【0004】
既知のCO2回収・貯留技術のひとつは、大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃クロスヘッド機関にアミンベースのスクラバーを搭載するものである。これは現在最も完成した炭素回収ソリューションと考えられており、今後数年の間にパイロットプラントや実証プラントとして船舶に搭載される予定である。この技術には次のような不利な点がある。アミンは、SOx、NOx、O2、粒子状物質に弱く、また約150℃以上の温度に弱いため、時間とともに劣化する。アミンが有害な排出物を形成するため、これを制御しなければならない。更に、リボイラーで消費されるエネルギーは膨大で、機関軸出力の60%に相当する。
【0005】
もう一つのCO2回収・貯留技術は、大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃クロスヘッド機関にEGR及び上流空気分離装置(N2とO2)を取り付け、下流にCO2液化装置を搭載するものである。上流空気分離は膜によって行われる。この技術には次のような不利な点がある。この技術の欠点は空気分離膜は大きく、高価で、圧力損失が大きく、壊れやすい。当初、この技術は(NOx生成を避けるために)陸上の発電所でテストされたが、成功したとは言えなかった。更に、排気ガス中でO2とCO2が分離される際、かなりの量のO2が無駄になる可能性がある。
【0006】
もうひとつの既知の技術は、燃料を上流で熱分解/改質してH2とCO2の混合物にすることである。H2とCO2は膜で分離され、H2は水素機関で燃焼され、CO2は液化される。この技術には次のような不利な点がある。熱分解/改質には触媒が必要である。触媒は運転温度を下げ、反応の選択性を向上させる。触媒は高価で、燃料中の不純物に敏感で、寿命が限られる。また、分解・改質プロセスからの生成物には、目的のCO2+H2以外の化学種(CO、CH4など)が含まれる可能性がある。熱分解/改質のためのエネルギー消費は、機関軸出力の40%程度である。更に、この技術は、H2とCO2を効率的に分離するための膜を必要とする。CO2/H2-膜分離に関する情報はほとんど見つかっていないが、コスト、サイズ、寿命を考慮する必要がある。最後に、この技術には水素を燃料とする。大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃クロスヘッド機関の開発が必要である。
【0007】
更にもうひとつの技術は、水素と窒素から合成したアンモニア燃料で動く大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃クロスヘッド機関である。この技術は現在開発中である。この技術には次のような不利な点がある。アンモニアは非常に毒性が強く、特定の材料に対して腐食性がある。アンモニア機関には、SCR触媒と、おそらくN2O触媒も必要になる。アンモニアICEはカーボンフリーであるが、N2Oの排出を考慮すると、ディーゼル油に比べたGWPの削減高価は約90%であると予想される。アンモニアの燃焼特性は、圧縮着火(ディーゼル)機関には適していない。
【摘要】
【0008】
目的は、上述の問題を解決するか又は少なくとも緩和する、大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃クロスヘッド機関を提供することである。別の目的は、大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃クロスヘッド機関からのガス状CO2排出をなくす又は少なくとも低減する方法を提供することである。
【0009】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や明細書、図面から明らかになるだろう。
【0010】
第1の捉え方によれば、次のような、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、前記機関は更に、
・ 前記排気ガス流から分流された前記一部を迂回させるための迂回導管であって、前記再循環導管に結合され、分流コンプレッサと1つ又は複数の冷却器を有する迂回導管を備える。
【0011】
この大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関は、ガスの排出がない。またこの機関における酸素分離と二酸化炭素液化のためのエネルギー消費量は、既知の技術に比べて少ない。効率的な酸素と二酸化炭素の分離は、酸素消費量を最小限に抑える。この機関は様々な燃料に適合し、また様々な後付けソリューションに適合する。既知の二酸化炭素回収技術で使用される触媒やガス分離膜に用いられるレアメタルや高価な土類金属は必要ない。この機関のもうひとつの利点は、掃気中の酸素濃度を自由に設定できることである。更に、NOxの生成を考慮する必要がないため、SFOC(Specific Fuel Oil Consumption,燃料油消費率)が低下する。つまり、機関は高い燃焼温度と圧力で動作でき、それによって燃費が向上する。
【0012】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記迂回導管は、前記第1冷却器の下流、好ましくは前記ブロワの上流の位置で前記再循環回路に結合される。
【0013】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記1つ又は複数の冷却器は、前記分流コンプレッサの下流に配置され、前記迂回導管は好ましくは分離・液化容器に通じている。
【0014】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流を目標圧力に加圧するコンプレッサと、前記分流された排気ガス流を目標温度まで冷却するための1つ又は複数の熱交換器とを有し、所望の圧力と所望の温度の組み合わせは、蒸気中の二酸化炭素の液化を生じさせ、それによって、分離容器内に、前記分流された排気ガス流内の酸素を分離し、前記目標圧力は好ましくは少なくとも7barであり、前記目標温度は好ましくは-50℃未満である。
【0015】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記酸素供給システムは液体酸素タンクを有する。
【0016】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記炭素系燃料が炭化水素系燃料であり、前記燃焼室における炭化水素系燃料の燃焼によって水が発生し、前記機関は、排気ガス流から水を分離するように構成される水分離システムを備える。
【0017】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、排気ガスを冷却するために前記再循環管路内に第1の冷却器を備え、前記第1冷却器は前記ブロワの上流に配置される。
【0018】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記第1の冷却器は排気ガスから水を分離するように構成される。
【0019】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃焼室は炭素系燃料を酸素と共に燃焼させ、それによって二酸化炭素を含む排気ガス流を生成するように構成される。
【0020】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃焼室に供給される掃気ガス中の二酸化炭素のモル分率は、0.70mol/molより大きい。
【0021】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃焼室に供給される掃気ガス中の窒素のモル分率は、0.05 mol/mol未満である。
【0022】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃焼室に供給される掃気ガス中の酸素のモル分率は、0.17 mol/molより大きい。
【0023】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記迂回導管内の冷却器の少なくとも1つが、前記分流された排気ガスと、前記液体酸素タンクから前記掃気受けに供給される液体酸素との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0024】
第2の捉え方によれば、次のような、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流を目標圧力に加圧するコンプレッサと、前記分流された排気ガス流を目標温度まで冷却するための1つ又は複数の熱交換器とを有し、
所望の圧力と所望の温度の組み合わせは、蒸気中の二酸化炭素の液化を生じさせ、それによって、分離容器内に、前記分流された排気ガス流内の酸素を分離する。
【0025】
第3の捉え方によれば、次のような、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の二酸化炭素のモル分率は、0.70mol/molより大きい。
【0026】
第4の捉え方によれば、次のような、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の窒素のモル分率は、0.05 mol/mol未満である。
【0027】
第5の捉え方によれば、次のような、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記燃焼室に供給される掃気ガス中の酸素のモル分率は、0.17 mol/molより大きい。
【0028】
第6の捉え方によれば、次のような、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離する。
【0029】
第7の捉え方によれば、次のような、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
・ シリンダライナ及び前記シリンダライナ内の往復ピストンを有するシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダカバーと;
・ 前記シリンダライナ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
・ 前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口と;
・ 前記シリンダの前記燃焼室に掃気ガスを供給するために前記シリンダに接続される掃気受けを有する吸気システムと;
・ 前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
・ 前記排気弁を介して前記燃焼室に結合され、前記燃焼室での前記炭素系燃料の燃焼により発生した排気ガス流を受容する排気受けを有する排気システムと;
を備え、前記機関はクローズドサイクル・オキシ燃料機関であり、更に、
・ 前記排気受けを前記掃気受けに接続する再循環導管と;
・ 前記排気受けからの排気ガスを加圧して前記掃気受けに送り込むために、前記再循環導管内に配されるブロワと;
・ 前記吸気システムに酸素を供給するように構成される酸素供給システムと;
・ 分離及び二酸化炭素液化システムと;
を備え、前記燃焼室内で生成された排気ガス流の一部が、前記分離及び二酸化炭素液化システムに分流され、前記分離及び二酸化炭素液化システムは、前記分流された排気ガス流からの二酸化炭素の液化に補助されながら、前記分流された排気ガス流から酸素と二酸化炭素を分離し、
前記酸素供給システムは液体酸素タンクを有し、
前記迂回導管内の冷却器の少なくとも1つが、前記分流された排気ガスと、前記液体酸素タンクから前記掃気受けに供給される液体酸素との間で熱交換を行う熱交換器である。
【0030】
これらの捉え方及び他の捉え方は、添付図面及び以下に説明される実施例 により更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、様々な捉え方や実施形態、実装例を詳細に説明する。
図1】ある実施形態に従う大型2ストローク内燃機関を正面から見た概観を示す図である。
図2図1の大型2ストローク機関を背面方向から見た概観を示す。
図3】分離及び二酸化炭素液化システムを有する、図1の大型2ストローク機関の実施形態を示す略図表現である。
図4】分離及び二酸化炭素液化システムを有する、図1の大型2ストローク機関の実施形態を示す略図表現である。
【詳細説明】
【0032】
以下の詳細説明では、実施例のクロスヘッド式大型低速ユニフロー掃気2ストロークターボ過給式内燃機関を参照して、内燃機関が説明される。クロスヘッド式大型2ストローク低速ユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関は、ピストンの上死点(TDC又はその近辺で燃料が噴射される、圧縮着火型の(すなわち高圧型の)機関であることができる。又は、掃気空気が圧縮される前又は圧縮される途中で燃料と混合されて混合気が点火等される、火花点火型の、(また低圧型の、また予混合式の、)エンジンであることができる。予混合式機関の場合は通常、確実に点火を行うために、TDC又はその付近で、添加液(例えば燃料油)によるパイロット点火が行われる。
【0033】
図1図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を示す。このエンジンは、クランクシャフト8及びクロスヘッド9を有し、ディーゼル原理で動作する。すなわち圧縮着火機関である。図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を、その吸気システム及び排気システムと共に略図により表現したものである。この実施例において、機関は直列に6本のシリンダを有する。ターボ過給式大型低速2ストローク内燃機関は、通常、直列に配される4から14のシリンダを有する。これらのシリンダはシリンダフレーム23に担持される。シリンダフレーム23は機関フレーム11に担持される。またこのような機関は、例えば、船舶の主機関や、発電所において発電機を動かすための据え付け型の機関として用いられることができる。機関の全出力は、例えば1000~110000kWの範囲でありうる。
【0034】
この機関は二元燃料機関として構成されることができる。この機関は、圧縮着火機関であってもよく、予混合式機関であってもよい。この実施例におけるエンジンは、2ストロークユニフロー型エンジンであり、各シリンダについて、シリンダライナ1の下部領域に掃気ポート18が設けられ、シリンダライナ1の頂部中央には排気弁4が配される。本エンジンは、炭素系燃料、例えば天然ガス、メタノール、ジメチルエーテル(DME)、又は燃料油(例えば船舶用ディーゼル)で運転される少なくとも1つのモードを有する。
【0035】
掃気ガスは、掃気受け2を通じて、各シリンダ1の掃気ポート18へと導かれる。ピストン10は、シリンダライナ1中で下死点(BDC)と上死点(TDC)の間を往復し、掃気ガスを圧縮する。燃料は、TDC又はTDCの近傍において、シリンダカバー22に配される複数の燃料弁50を通じて、シリンダライナ1内の燃焼室内に高圧で噴射される(ディーゼル原理すなわち圧縮着火式)。機関が予混合式機関として構成されている場合、燃料は、ピストンがTDCに向かう途中に、燃料導入弁から比較的低圧で導入される(オットー原理すなわち予混合式)。典型的には、各シリンダにつき2つ又はそれより多い燃料導入弁が設けられる。燃料導入弁は掃気ポート18の上方においてシリンダライナに設けられるか、シリンダカバー22に設けられることができる。燃料の噴射に続いて燃焼が生じ、排気が生成される。機関が圧縮着火機関として構成されている場合、各シリンダカバー22には2つ以上の燃料弁50が設けられる。燃料弁50は、燃焼室内に燃料のみを噴射するように構成されている。燃料弁50は、シリンダカバー22において、シリンダカバー22の中央部に配される排気弁4の周囲に配される。図示されていないが、実施形態によっては、燃料(例えばガス燃料)を確実に点火するために、点火液を噴射するように構成される、追加の(通常は小さな)燃料弁がシリンダカバー22に設けられてもよい。点火液は、例えばジメチルエーテル(DME)又は燃料油であってもよい。しかし、例えば水素のような、他の形態の点火促進剤であってもよい。図示されていないが、実施形態によっては、シリンダライナに沿って燃料弁が配される(破線で示されている)。燃料弁は、ピストン10がBDCからTDCに向かう途中であって燃料弁を通過する前に、シリンダ内に燃料を導入する。従って、機関が予混合式に構成されている場合、ピストン10は掃気空気と燃料の混合物を圧縮する。TDC又はその近辺でタイミングをはかって点火が行われる。点火は、火花、レーザー、点火液の噴射等によって行われる。燃料弁を有する実施形態では、燃料が導入される時点での圧力は、シリンダカバー22に燃料弁50を有する実施例において燃料が噴射される時点での圧力よりもかなり低い。シリンダカバー22に配される燃料弁50は、ピストンがTDC又はその付近にあるときに燃料を噴射するので、燃料噴射圧力は、圧縮圧力よりもかなり高くなくてはならない。
【0036】
排気弁4が開かれると、排気ガスは、そのシリンダの排気ダクトを通って排気ガス受け3に流入し、続いて再循環導管5を通って第1の冷却器14経由でブロワ7に流入し、そこから排気ガスは掃気受け2に逆流する。燃料が炭化水素燃料であるために燃焼中に水が発生する場合、冷却器14は、排気ガス流から大部分の水を除去し、除去した水を水タンク16に排水するように構成される。排気ガスの一部は、再循環導管5から、好ましくは第1冷却器14の下流且つブロワ7の上流の位置で、分離・二酸化炭素液化システム60に分流される。分離・二酸化炭素液化システム60は、二酸化炭素を液化し、液化した二酸化炭素を液化二酸化炭素貯蔵タンク49に貯蔵し、分流された排気ガス流中の二酸化炭素と分離された酸素を、掃気受け2に輸送する。酸素源(すなわち酸素供給システム12,この実施形態では液体酸素タンク12)は、掃気受け2に酸素流を供給する。
【0037】
ブロワ7により加圧された排気ガスは、掃気受けで酸素供給システム12からの酸素と混合され、掃気ポート18を通じてシリンダライナ1内の燃焼室に供給可能な掃気ガスを形成する。
【0038】
次に図4を参照すると、図1~3の機関が、特に分離及び二酸化炭素液化システムに関して、より詳細に開示されている。本実施形態のこのバージョンでは、機関は炭化水素燃料で運転される。このため燃焼ガスは水と二酸化炭素の両方を含む。第1冷却器14は、排気ガス中の水の大部分を凝縮分離するように構成される。排気ガスから凝縮分離された水は、導管15によって水タンク16に輸送される。第1冷却器14を出た排気ガスの一部は、冷却された排気ガスの主流から迂回導管40に分流される。再循環導管5から分流される排気ガスの量は、実施形態では、迂回導管40に配置された制御弁38によって調節される。分流される排気ガスの量は、機関内で再循環する二酸化炭素の総量が実質的に一定になるように、燃焼プロセスで生成される二酸化炭素の量に対応して調節される。好ましくは、機関は、噴射される燃料中の炭素の量を通知され、燃焼によって生成される二酸化炭素の量を計算するように構成され、それに応じて分流する排気ガスの量を調節するように構成された、マイクロコントローラのような制御装置(図示せず)を備える。第1冷却器14を出る排気ガスの残りの部分は、ブロワ7に行き、そこから加圧された排気ガスとして掃気受け2へ導かれる。なお、二酸化炭素の必要除去量を上記のように決定しない別の方法で、機関運転を制御することも可能である。例えば、排気中二酸化炭素をどのくらい除去する必要があるかを決定するためのパラメータとして、例えば排気受け内の絶対圧力を使用することができる。
【0039】
この例では、制御装置は、排気受け内の基準圧力、又は機関負荷などの機関運転条件の関数である基準圧力を使って、二酸化炭素の除去量を増減又は維持する。
【0040】
つまり、排気受け内で決定又は測定された圧力が基準圧力周辺の許容範囲内にある場合は二酸化炭素の除去量を変更しないが、排気受け内で決定又は測定された圧力が基準圧力より高い場合は二酸化炭素の除去量を多くし、排気受け内で決定又は測定された圧力が基準圧力より低い場合は二酸化炭素の除去量を減らす。
【0041】
分流導管40はコンプレッサ42を備える。このコンプレッサは、分流された排気ガスの圧力を実質的に、例えば少なくとも40bar、上昇させるように構成される。コンプレッサ42の下流には、第2冷却器44が設けられている。第2冷却器44によって残留水が凝縮され、凝縮された水は分離されて水タンク16に送られる。第2冷却器の下流には第3冷却器45が配置されている。第3冷却器45は熱交換器であり、液体酸素供給導管63を通って掃気受け2に送られる、液体酸素タンク61からの液体酸素と熱交換する。
【0042】
第3冷却器45の下流には第4冷却器46が配置されている。第4冷却器46は、二酸化炭素液化・酸素分離容器47から供給され、液化二酸化炭素貯蔵タンク49から供給される、酸素と二酸化炭素の混合物と熱交換する。迂回導管は、二酸化炭素液化・酸素分離容器47に通じている。分流された排気ガスが第4冷却器46を出ると、二酸化炭素液化・酸素分離容器47で液化されるべき、分流された排気ガス中の二酸化炭素にとっては、温度は十分に低く圧力は十分に高い。このため二酸化炭素は酸素から分離される。酸素はこれらの温度と圧力で液化しない。従って、二酸化炭素液化・酸素分離容器47の下部には液化した二酸化炭素が、二酸化炭素液化・酸素分離容器47の上部には気相の酸素と二酸化炭素の混合物が収容される。二酸化炭素液化・酸素分離容器47の下部は、液化二酸化炭素導管48によって液化二酸化炭素タンク49に接続している。液化炭酸ガスタンク49の下部には液化炭酸ガスが貯蔵され、液化炭酸ガスタンク49の上部には酸素と炭酸ガスの混合物(気相)が貯蔵される。二酸化炭素液化・酸素分離容器47及び好ましくは液化二酸化炭素タンク49内の気相の混合物は、それぞれ膨張弁65及び66を経由して酸素戻し導管43で掃気受け2へと送られる。戻し導管43は、実施形態によっては設けられない。しかし設けられる場合、戻し導管43は、分流された排気ガスと熱交換するための第4冷却器46を通過する。
【0043】
掃気ガス中の酸素量は、液体酸素タンク61から液体酸素供給導管63を通して掃気受け2へ供給される液体酸素流を調節することによって調節される。この流量は、酸素供給導管63に配置された制御弁64によって調節される。制御弁64は好ましくは制御装置の制御下に置かれる。
【0044】
ブロワ7をバイパスするために、排気受け3から掃気受け2へと延びるバイパス導管25が設けられる。また、掃気受け2から排気受け3へのガスの流れを制御するために、バイパス制御バルブ26が設けられる。バイパス制御バルブ26は、プロセス制御ハンドルとして機能する。(酸素を加える前の)二酸化炭素リッチなガスがシリンダをバイパスして排気受けに戻ることを可能にすることで、過剰掃気量を減少させることができる。このようにして、短絡する酸素の量を最小限に抑えることができる。更に、掃気効率を低下させ、高温の残留ガスが次のサイクルまでシリンダ内に残るようにすることもできる。このようにして、ノッキング傾向の回避など、必要に応じてより高い圧縮温度を達成することができる。
〔例〕
【0045】
運転条件例では、Sfoc=362gCH3OH/kWhの燃料を使用し、熱効率を50%と仮定する。
【0046】
排気受けでは、排気ガスの温度は通常400~500℃、圧力は約4barである。yCO2は約0.85mol/molであり、yO2は約0.15mol/molである。
【0047】
第1冷却器14の下流では、排気ガスの温度は通常約5℃、圧力は約4barである。yCO2は約0.85mol/mol、yO2は約0.15mol/molである。
【0048】
ブロワ7は圧力を0.3bar上昇させる。
【0049】
掃気受けでは、掃気ガスの温度は通常約10℃、圧力は約4.3barである。yCO2は約0.79mol/mol、yO2は約0.21mol/molである。
【0050】
コンプレッサは、分流された排気ガスの圧力を約41bar上昇させる。第2冷却器44の下流において、分流された排気ガスの温度は10℃、圧力は約45barである。yCO2は約0.79mol/mol、yO2は約0.21mol/molである。
【0051】
分流された排気ガスが二酸化炭素液化・酸素分離容器47に到達するころには、温度はマイナス20℃になっており、圧力は約45barである。
【0052】
液体酸素タンク61内の液体酸素の温度は約-140℃、圧力は約20barである。
【0053】
発明の様々な捉え方や実装形態が、いくつかの実施例と共に説明されてきた。しかし、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施例に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。特に言及されない限り、図面は明細書と共に読まれることが意図されており、本願による開示の全体の一部である。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】