(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020020
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ支持機構、ガイドワイヤ付形装置及びガイドワイヤ付形方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20250131BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
A61M25/092 510
A61M25/09 500
A61M25/09 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115318
(22)【出願日】2024-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2023123482
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591050729
【氏名又は名称】株式会社オーゼットケー
(71)【出願人】
【識別番号】591058459
【氏名又は名称】新和商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】三橋 克伯
(72)【発明者】
【氏名】森下 喜郎
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB53
4C267EE01
4C267FF03
4C267GG04
4C267GG22
4C267HH03
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】
使用者が細径のガイドワイヤの先端部分を付形する際に、こうしたガイドワイヤを取り扱う上で、意図しない部分を変形させずに済むようなガイドワイヤ支持機構、このガイドワイヤ支持機構を備えるガイドワイヤ付形装置及びこのガイドワイヤ付形装置を用いたガイドワイヤ付形方法を提供する。
【解決手段】
天面52aに凹設される回転体装着スペース52bを有する本体52と、天面と略面一の端面53aを有し、回転体装着スペースに回転自在に軸着し、端面が軸着の軸心C1を中心とする円弧状の周縁53bを有し、周縁の一部又は全部に沿うように第1の溝部54を端面に形成し、かつ、ガイドワイヤの一部を挟持可能なクランプ部55を有する回転体53とを備え、軸心を中心とする回転体の回転に伴ってガイドワイヤの先端が移動することを特徴とする。
【選択図】
図36
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤが遊嵌する溝部を有して前記ガイドワイヤを支持することができるガイドワイヤ支持機構であって、
天面に凹設される回転体装着スペースを有する本体と、前記天面と略面一の端面を有し、前記回転体装着スペースに回転自在に軸着し、前記端面が前記軸着の軸心を中心とする円弧状の周縁を有し、前記周縁の一部又は全部に沿うように第1の前記溝部を前記端面に形成し、かつ、前記ガイドワイヤの一部を挟持可能なクランプ部を有する回転体とを備え、
前記軸心を中心とする前記回転体の回転に伴って前記ガイドワイヤの先端が移動する
ことを特徴とするガイドワイヤ支持機構。
【請求項2】
前記第1の溝部は、底壁と前記軸心に近い側の側壁である内側側壁と前記軸心から遠い側の側壁である外側側壁とを有し、前記底壁が前記周縁に形成される一段低いステップ部によって構成され、前記内側側壁が前記ステップ部から立設され、かつ、前記外側側壁が前記回転体装着スペースの内周面によって構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ支持機構。
【請求項3】
前記本体は、前記天面に凹設され且つ前記周縁から前記回転体の径方向外向きに枝分かれする第2の前記溝部を有するとともに、前記第1の溝部と前記第2の溝部とが互いに連通し、
前記外側側壁は前記第2の溝部の内壁と連続し、
前記第1の溝部に遊嵌する前記ガイドワイヤの一部は、前記回転体の前記回転に伴って前記第2の溝部を移動する
ことを特徴とする請求項2に記載のガイドワイヤ支持機構。
【請求項4】
前記回転体は、前記第2の溝部と反対の側において前記第1の溝部から前記回転体の径方向内向きに入り込み、かつ、前記第1の溝部と連通する第3の前記溝部を有し、
前記クランプ部は、前記回転体の軸方向に偏平な偏平状に形成されるとともに、前記軸心と平行な枢軸を中心に回動することができ、
前記ガイドワイヤは、前記回動する前記クランプ部の挟持面と、前記挟持面と対向する前記第3の溝部の内壁との間において挟持される
ことを特徴とする請求項3に記載のガイドワイヤ支持機構。
【請求項5】
少なくとも前記各溝部を含む、前記天面及び前記端面の一部を覆うことができる開閉自在な蓋体を備え、
前記蓋体は、内側面が前記各溝部に蓋をするように構成される
ことを特徴とする請求項4に記載のガイドワイヤ支持機構。
【請求項6】
前記回転体は正転及び逆転を行うことができ、
前記ガイドワイヤの先端は、前記回転体の前記正転又は前記逆転に従って前進及び後退を行うことができる
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のガイドワイヤ支持機構。
【請求項7】
駆動装置を備え、
前記駆動装置によって前記回転が可能な前記回転体は、正転及び逆転を行うことができ、
前記ガイドワイヤの先端は、前記回転体の前記正転又は前記逆転に従って前進及び後退を行うことができる
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のガイドワイヤ支持機構。
【請求項8】
ガイドワイヤが遊嵌する溝部と偏平状の空間である付形部とを有し、前記溝部を経た前記ガイドワイヤの先端が前記溝部と連通する前記付形部に進入して前記付形部の内面に倣うことによって前記ガイドワイヤを付形するように構成されるガイドワイヤ付形装置であって、
天面に前記付形部と回転体装着スペースとが凹設される本体と、前記天面と略面一の端面を有し、前記回転体装着スペースに回転自在に軸着し、その軸心を中心とする円弧状の周縁を有し、前記周縁の一部又は全部に沿い且つ前記付形部と連通するように第1の前記溝部を前記端面に形成し、かつ、前記ガイドワイヤの一部を挟持可能なクランプ部を有する回転体とを備え、
前記ガイドワイヤは、前記軸心を中心とする前記回転体の回転に伴って前記付形部に対して前進及び後退を行う
ことを特徴とするガイドワイヤ付形装置。
【請求項9】
前記本体は、前記天面に凹設され且つ前記周縁から前記回転体の径方向外向きに枝分かれする第2の前記溝部を有するとともに、前記第1の溝部と前記第2の溝部とが互いに連通し、
前記回転体装着スペースの内側面であり且つ前記第1の溝部のうち前記軸心から遠い側の側面である外側側壁は前記第2の溝部の内壁と連続し、
前記第1の溝部に遊嵌する前記ガイドワイヤは、その一部が前記回転体の前記回転に伴って前記第2の溝部を移動するとともに、前記先端が前記第2の溝部と連通する前記付形部に進入する
ことを特徴とする請求項8に記載のガイドワイヤ付形装置。
【請求項10】
駆動装置を備え、
前記駆動装置によって前記回転が可能な前記回転体は、正転及び逆転を行うことができ、
前記ガイドワイヤの先端は、前記回転体の前記正転又は前記逆転に従って前進及び後退を行うことができる
ことを特徴とする請求項8または9に記載のガイドワイヤ付形装置。
【請求項11】
請求項1に記載のガイドワイヤ支持機構を備え、
前記ガイドワイヤ支持機構が支持するガイドワイヤの先端を開口部に挿入して前記ガイドワイヤを通過させる略柱状の空間である入口通路部と、前記入口通路部の最奥に位置する部分である出口部を通じて前記入口通路部と連通し且つ前記出口部から偏平状に広がる空間である付形部と、前記付形部の内周部分を形成する環状の内壁と、前記内壁のうち、前記入口通路部の中心線の延長線と鈍角を成して交差する内壁である延長線交差部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鈍角を成す側の内壁である鈍角側内壁部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鋭角を成す側の内壁である鋭角側内壁部とを有し、
前記ガイドワイヤが、前記開口部から送り込まれるにつれ、順に前記入口通路部と前記付形部とに挿通される前記先端が前記延長線交差部近傍に当接し、この当接時に前記鈍角を成す側に曲がりつつ前記鈍角側内壁部に沿って摺動して全体が環状に配置されるように構成されるガイドワイヤ付形具を備える
ことを特徴とするガイドワイヤ付形装置。
【請求項12】
前記ガイドワイヤを通過させる略柱状の空間であり且つ前記第1の溝部と連通する第2の前記溝部と、
前記第2の溝部の最奥に位置する部分である出口部を通じて前記第2の溝部と連通し且つ前記出口部から偏平状に広がる前記付形部と、
前記付形部の内周部分を形成する環状の内壁と、
前記内壁のうち、前記第2の溝部の中心線の延長線と鈍角を成して交差する内壁である延長線交差部と、
前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鈍角を成す側の内壁である鈍角側内壁部と、
前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鋭角を成す側の内壁である鋭角側内壁部とを有し、
前記ガイドワイヤは、順に前記第2の溝部と前記付形部とに挿通される前記先端が前記延長線交差部近傍に当接し、この当接時に前記鈍角を成す側に曲がりつつ前記鈍角側内壁部に沿って摺動して全体が環状に配置されるように構成される
ことを特徴とする請求項8に記載のガイドワイヤ付形装置。
【請求項13】
請求項8に記載のガイドワイヤ付形装置であって、前記ガイドワイヤを通過させる略柱状の空間であり且つ前記第1の溝部と連通する第2の前記溝部と、前記第2の溝部の最奥に位置する部分である出口部を通じて前記第2の溝部と連通し且つ前記出口部から偏平状に広がる前記付形部と、前記付形部の内周部分を形成する環状の内壁と、前記内壁のうち、前記第2の溝部の中心線の延長線と鈍角を成して交差する内壁である延長線交差部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鈍角を成す側の内壁である鈍角側内壁部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鋭角を成す側の内壁である鋭角側内壁部とを有するガイドワイヤ付形装置を準備する準備工程と、
前記ガイドワイヤが、順に前記第2の溝部と前記付形部とに挿通される前記先端が前記延長線交差部近傍に当接し且つこの当接時に前記鈍角を成す側に曲がりつつ前記鈍角側内壁部に沿って摺動して全体が環状に配置されるように前記ガイドワイヤを送り込む送込み工程とを含む
ことを特徴とするガイドワイヤ付形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガイドワイヤ支持機構、ガイドワイヤ付形装置及びガイドワイヤ付形方法に関し、特にガイドワイヤが遊嵌する溝部を有してこのガイドワイヤを支持するガイドワイヤ支持機構と、ガイドワイヤの先端を溝部と連通する付形部に進入させてこのガイドワイヤを付形するガイドワイヤ付形装置と、このガイドワイヤ付形装置を用いたガイドワイヤ付形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細いガイドワイヤの先端を入口通路部の開口部に挿入し、この入口通路部から飛び出す先端を手指によって押し型に押し付けて希望する形状に付形するように構成されるガイドワイヤ付形具がある(特許文献1)。
【0003】
ガイドワイヤとは、例えばカテーテルイントロデューサなどの血管への挿入及び留置を容易にするための柔軟性のある細径のワイヤ状の器具をいう。そこで、ガイドワイヤ付形具を用いて使用者がガイドワイヤの先端を折り返すような付形加工を行うことにより、ガイドワイヤが患者の血管の内壁を傷つける虞が低減される。また、前記のようなガイドワイヤ付形具による機械的な付形を行うために加熱処理工程、化学的処理工程などが不要であるから、使用者は例えば手術室のような医療現場においても付形加工を行うことができ、作業の場所を選ぶ必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうしたガイドワイヤは人体の血管に挿入し且つ血管の内壁を傷つけないために、十分な強度を有する限り、より細く形成されることが望ましい。それに対し、使用者がこうした細径のガイドワイヤの先端を付形する際には、付形時においてガイドワイヤの意図しない部分を変形させてしまい、使用中、血管内においてスムーズに移動しないような事態を招かないように細心の注意を要する。また、付形のために細いガイドワイヤを狭小箇所に送り込む、狭小箇所の内部で移動させるなどの取り扱う段階で不要な箇所が変形してしまい、それ後の取扱い自体を続けられなくなるような虞もある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、使用者がガイドワイヤを取り扱う上で、意図しない部分を変形させずに済むようなガイドワイヤ支持機構の提供及びこうしたガイドワイヤ支持機構を備えるガイドワイヤ付形装置及びこのガイドワイヤ付形装置を用いたガイドワイヤ付形方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明はガイドワイヤが遊嵌する溝部を有して前記ガイドワイヤを支持することができるガイドワイヤ支持機構であって、天面に凹設される回転体装着スペースを有する本体と、前記天面と略面一の端面を有し、前記回転体装着スペースに回転自在に軸着し、前記端面が前記軸着の軸心を中心とする円弧状の周縁を有し、前記周縁の一部又は全部に沿うように第1の前記溝部を前記端面に形成し、かつ、前記ガイドワイヤの一部を挟持可能なクランプ部を有する回転体とを備え、前記軸心を中心とする前記回転体の回転に伴って前記ガイドワイヤの先端が移動することを特徴とするガイドワイヤ支持機構を提供するものである。
【0008】
すなわち、本発明のガイドワイヤ支持機構は、細径のガイドワイヤを支持するため、第1の溝部に遊嵌するガイドワイヤをクランプ部によって挟持しつつ、回転体によって、これらクランプ部及び第1の溝部ごと回転させる構造を有する。こうして、ガイドワイヤがこの第1の溝部内に留まる状態を保つため、一部がクランプ部によって挟まれているガイドワイヤ全体をそのまま回転体の回転に伴って移動させることができる。このとき、ガイドワイヤがクランプ部以外の部分から力を受けることが少ないため、本発明のガイドワイヤ支持機構は、使用者がガイドワイヤを移動させる上で、意図しない部分を変形させる可能性が低い。
【0009】
また、ガイドワイヤの嵌まる部分が溝部であるため、クランプ部による挟持を止めることによって、ガイドワイヤは溝部から取り外し、本発明のガイドワイヤ支持機構から離脱させることが可能である。こうして、ガイドワイヤに不必要に力を加えることがないため、ガイドワイヤを取り出す時に意図しない部分を変形させてしまう可能性は低い。
【0010】
(2)また、前記第1の溝部は、底壁と前記軸心に近い側の側壁である内側側壁と前記軸心から遠い側の側壁である外側側壁とを有し、前記底壁が前記周縁に形成される一段低いステップ部によって構成され、前記内側側壁が前記ステップ部から立設され、かつ、前記外側側壁が前記回転体装着スペースの内周面によって構成されてもよい。
【0011】
すなわち、第1の溝部の外側側壁が本体の回転体装着スペースの内周面によって構成されているため、この内周面全体のうち、内周面が回転体の円弧状の周縁から離れる箇所においてガイドワイヤは回転体の径方向外向きに開放される。そこで開放されたガイドワイヤの先端が周縁から退出して、付形を行うセクションに進むことができる。こうして、本発明のガイドワイヤ支持機構は、付形を行う直前までガイドワイヤを変形させず、かつ、簡素な構造によってガイドワイヤを付形セクションに進めさせることができる。
【0012】
ところで、ガイドワイヤには、その堅牢性を確保するために平板状のコアワイヤを内部に有するものがある。
図1はこうした平板状のコアワイヤを有するガイドワイヤの例であり、
図1(a)が金属製のコアワイヤの周りを樹脂製のプラスチックジャケットが被覆しているガイドワイヤの例を示し、また、
図1(b)がコアワイヤの周りにコイルが巻き付けられているガイドワイヤの例を示す。金属製のコアワイヤの材質の例としてはステンレススチールなどが挙げられ、プラスチックジャケットの材質の例としてはポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0013】
このような平板状のコアワイヤを有するガイドワイヤの場合、ガイドワイヤを曲げる方向と、コアワイヤの横断面における長手方向又は短手方向との関係によってガイドワイヤの曲がり易さは異なる。具体的には、
図2(a)の上図のように横断面におけるコアワイヤの短手方向が上下方向と一致する場合、すなわち、
図2(a)の下図のように前記長手方向と前記ガイドワイヤの曲がる方向とが同一である場合、ガイドワイヤは左右に曲げ難く、無理に曲げるためには大きな力を加えなければならない。逆に、
図2(b)上図のように横断面におけるコアワイヤの長手方向が上下方向と一致する場合、すなわち、
図2(b)下図のように前記短手方向と前記ガイドワイヤの曲がる方向とが同一である場合、
図2(a)の場合と比べてガイドワイヤは左右に曲げ易い。
図2(a)(b)において、ガイドワイヤが符号Wにより表わされ、コアワイヤが符号Cにより表わされる。
【0014】
これに対して、例えばプラスチックジャケットが着色されていることが多く、ガイドワイヤを外から視るだけでコアワイヤの横断面における長手方向又は短手方向を見定めることは難しい。また、こうしたコアワイヤの方向を見定めることができても、その方向を直そうとするときにガイドワイヤを不要に変形させてしまう虞もある。そのため、ガイドワイヤ付形具にガイドワイヤを挿入して先端を付形しようとするとき、偶々、
図2(b)のようにガイドワイヤを曲げ易い方向にコアワイヤが配置されている場合は付形加工がし易いが、
図2(a)のようにガイドワイヤを曲げ難い方向にコアワイヤが配置されている場合は付形加工の効率が悪く、しかも、必ずしも希望する形状に付形することができない可能性がある。このように、コアワイヤの方向に依ってガイドワイヤの付形加工の難易と付形の品質とにバラつきがあるような事態が生じる。
【0015】
そこで、外側側壁が円弧に沿った第1の溝部の軸心から遠い側壁であるため、元々略直線状に形成されているガイドワイヤは、元々の直線状の形状を維持しようとして、この外側側壁に摺動しながら第1の溝部の内側を進む可能性が高い。このとき、例えば回転体の軸心方向が垂直方向となるようにガイドワイヤ支持機構が配置されているとき、ガイドワイヤは、コアガイドが最初に
図2(a)の断面ような姿勢であっても、第1の溝部の内側を進みながら外側側壁に沿うことによって
図2(b)の断面のような姿勢となるように90°回転することができる。これにより、本発明のガイドワイヤ支持機構は、ガイドワイヤをより適切な姿勢に矯正しつつ付形のセクションに進めることができる。
【0016】
(3)また、前記本体は、前記天面に凹設され且つ前記周縁から前記回転体の径方向外向きに枝分かれする第2の前記溝部を有するとともに、前記第1の溝部と前記第2の溝部とが互いに連通し、前記外側側壁は前記第2の溝部の内壁と連続し、前記第1の溝部に遊嵌する前記ガイドワイヤの一部は、前記回転体の前記回転に伴って前記第2の溝部を移動してもよい。
【0017】
すなわち、第2の溝部が第1の溝部と連続して連通するため、ガイドワイヤは第1の溝部と第2の溝部との間を往き来することができる。そして、第2の溝部の先端がガイドワイヤを付形するセクションと連通するときに、ガイドワイヤの先端は第2の溝部を通ってこのセクションまで引っ掛かりなく進むことができる。また、このセクションから後ろ向きに後退する場合も同様である。
【0018】
このとき、第2の溝部が径方向外向きに枝分かれし且つ第1の溝部の外側側壁と第2の溝部の内壁とが連続するため、元々の略直線状の形状を維持しようとして外側側壁に摺動して進んでいたガイドワイヤの先端は、途中でギャップなどを経ることなく第2の溝部に進入することができる。このようにして、本発明のガイドワイヤ支持装置は、その内部のガイドワイヤが周りから受ける力を抑えることができ、意図しない部分の変形を生じることが少ない。
【0019】
(4)また、前記回転体は、前記第2の溝部と反対の側において前記第1の溝部から前記回転体の径方向内向きに入り込み、かつ、前記第1の溝部と連通する第3の前記溝部を有し、前記クランプ部は、前記回転体の軸方向に偏平な偏平状に形成されるとともに、前記軸心と平行な枢軸を中心に回動することができ、前記ガイドワイヤは、前記回動する前記クランプ部の挟持面と、前記挟持面と対向する前記第3の溝部の内壁との間において挟持されてもよい。
【0020】
すなわち、ガイドワイヤは、順に、ガイドワイヤをクランプ部によって挟むことができる第3の溝部、円弧状の周縁に沿う第1の溝部、および、周縁から径方向外向きに枝分かれする第2の溝部に遊嵌する。そして、クランプ部の挟持状態下における回転体の回転によって、先端が第2の溝部内を進むことができる。また、逆転によって、ガイドワイヤはガイドワイヤ支持機構内を逆行することができる。
【0021】
このとき、第3の溝部が回転体の径方向内側に在るため、クランプ部が第3の溝部の内壁との間でガイドワイヤを挟むときでも、ガイドワイヤは、クランプ部と第3の溝部の内壁との間で挟まれるのであって、回転体装着スペースの内周面との間で挟まれるのではない。これにより、このクランプ部からガイドワイヤに伝わる力が内周面へ直接作用することがなく、ガイドワイヤと内周面との間における摩擦を増すことがない。また、この摩擦によって回転体の回転に対する負荷を増すことがない。このような構造のため、ガイドワイヤが摩擦によって大きな損傷を受けることがない。また、このような構造のため、ガイドワイヤをしっかりクランプしつつ、ガイドワイヤを移動させるためのスムーズな回転運動を維持することができる。その結果、ガイドワイヤを移動させるために不要な箇所が変形してしまう可能性を低減することができる。
【0022】
また、クランプ部が偏平状に形成されるため、軸心方向において、ガイドワイヤを挟持するための構成に必要なスペースを小さくすることができる。さらに、クランプ部が枢軸を中心に回動することによってガイドワイヤを挟むため、簡素な構造によってガイドワイヤの移動を可能とする。
【0023】
(5)また、少なくとも前記各溝部を含む、前記天面及び前記端面の一部を覆うことができる開閉自在な蓋体を備え、前記蓋体は、内側面が前記各溝部に蓋をするように構成されてもよい。
【0024】
すなわち、各溝部が蓋体の内側面によって蓋をされるため、蓋体の閉状態においては、ガイドワイヤが各溝部から浮き上がる、飛び出してしまうなどの事態を防ぐことができる。そのため、ガイドワイヤを移動させる上で、ガイドワイヤが波を立てる、飛び出して湾曲するなどの可能性が低く、意図しない部分が変形するような虞が小さい。
【0025】
しかも、蓋体が開閉自在なため、蓋体の開状態においては、ガイドワイヤを溝部から取り外し、本発明のガイドワイヤ支持機構から離脱させることが可能である。こうして、ガイドワイヤを取り出す時に意図しない部分を変形させてしまう可能性は低い。
【0026】
(6)また、前記回転体は正転及び逆転を行うことができ、前記ガイドワイヤの先端は、前記回転体の前記正転又は前記逆転に従って前進及び後退を行うことができてもよい。
【0027】
すなわち、本発明のガイドワイヤ支持機構は、回転体の正転又は逆転を切り替えて、ガイドワイヤの先端の前進及び後退の両方を行うことができるため、使用者がガイドワイヤの付形時の都合に合わせて回転の正逆を切り替えるだけで、付形するガイドワイヤの先端を容易に進退させることができる。そのため、ガイドワイヤの取扱いに際して手指により不要な力を加えてしまうことによって意図しない部分を変形させる虞は小さい。
【0028】
(7)また、駆動装置を備え、前記駆動装置によって前記回転が可能な前記回転体は、正転及び逆転を行うことができ、前記ガイドワイヤの先端は、前記回転体の前記正転又は前記逆転に従って前進及び後退を行うことができてもよい。
【0029】
すなわち、本発明のガイドワイヤ支持機構は、駆動装置の停止又は回転及び正転又は逆転によって、使用者の手動によらずにガイドワイヤの先端の停止、前進及び後退を操作することができる。そのため、本発明のガイドワイヤ支持機構は、使用者が容易にガイドワイヤの付形のための作業を行うことができる。また、駆動装置を自動に運転させることによって、ガイドワイヤの付形のための一連の動作を自動化させることもできる。
【0030】
(8)本発明はガイドワイヤが遊嵌する溝部と偏平状の空間である付形部とを有し、前記溝部を経た前記ガイドワイヤの先端が前記溝部と連通する前記付形部に進入して前記付形部の内面に倣うことによって前記ガイドワイヤを付形するように構成されるガイドワイヤ付形装置であって、天面に前記付形部と回転体装着スペースとが凹設される本体と、前記天面と略面一の端面を有し、前記回転体装着スペースに回転自在に軸着し、その軸心を中心とする円弧状の周縁を有し、前記周縁の一部又は全部に沿い且つ前記付形部と連通するように第1の前記溝部を前記端面に形成し、かつ、前記ガイドワイヤの一部を挟持可能なクランプ部を有する回転体とを備え、前記ガイドワイヤは、前記軸心を中心とする前記回転体の回転に伴って前記付形部に対して前進及び後退を行うことを特徴とするガイドワイヤ付形装置を提供するものである。
【0031】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形装置は、細径のガイドワイヤを付形するため、第1の溝部に遊嵌するガイドワイヤをクランプ部によって挟持しつつ、回転体によって、これらクランプ部及び第1の溝部ごと回転させる構造を有する。こうして、ガイドワイヤがこの第1の溝部内に留まる状態を保つため、一部がクランプ部によって挟まれているガイドワイヤ全体をそのまま回転体の回転に伴って移動させることができる。こうして、本発明のガイドワイヤ付形装置は、使用者がガイドワイヤを付形部において付形させる上で、意図しない部分を変形させる可能性が低い。
【0032】
また、ガイドワイヤの嵌まる部分が溝部であるため、クランプ部による挟持を止めることによって、ガイドワイヤは溝部から取り外し、本発明のガイドワイヤ付形装置から離脱させることが可能である。そのため、付形後のガイドワイヤを取り出す時に意図しない部分を変形させてしまう可能性は低い。
【0033】
(9)また、前記本体は、前記天面に凹設され且つ前記周縁から前記回転体の径方向外向きに枝分かれする第2の前記溝部を有するとともに、前記第1の溝部と前記第2の溝部とが互いに連通し、前記回転体装着スペースの内側面であり且つ前記第1の溝部のうち前記軸心から遠い側の側面である外側側壁は前記第2の溝部の内壁と連続し、前記第1の溝部に遊嵌する前記ガイドワイヤは、その一部が前記回転体の前記回転に伴って前記第2の溝部を移動するとともに、前記先端が前記第2の溝部と連通する前記付形部に進入してもよい。
【0034】
すなわち、第2の溝部が回転体の周縁から連通して枝分かれするため、ガイドワイヤは周縁に沿った第1の溝部とこの第2の溝部との間を往き来することができる。そして、ガイドワイヤの先端は第2の溝部を経由して、これら溝部と連通する付形部に至るまで引っ掛かりなく進むことができる。また、付形部から後ろ向きに後退する場合も同様である。
【0035】
このとき、第2の溝部が径方向外向きに枝分かれし且つ第1の溝部の外側側壁と第2の溝部の内壁とが連続するため、元々の直線状の形状を維持しようとして第1の溝部の外側側壁に摺動して進んだガイドワイヤの先端は、途中でギャップなどを経ることなく第2の溝部に進入することができる。このようにして、本発明のガイドワイヤ付形装置は、その内部のガイドワイヤが周りから受ける力を抑えることができ、意図しない部分の変形を生じることが少ない。
【0036】
(10)また、駆動装置を備え、前記駆動装置によって前記回転が可能な前記回転体は、正転及び逆転を行うことができ、前記ガイドワイヤの先端は、前記回転体の前記正転又は前記逆転に従って前進及び後退を行うことができてもよい。
【0037】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形装置は、駆動装置の停止又は回転及び正転又は逆転によって、使用者の手動によらずにガイドワイヤの先端の停止、前進及び後退を操作することができる。そのため、本発明のガイドワイヤ付形装置は、使用者が容易にガイドワイヤの付形を行うことができる。また、駆動装置を自動に運転させることによって、ガイドワイヤの付形のための一連の動作を自動化させることもできる。
【0038】
(11)本発明は前記ガイドワイヤ支持機構を備え、前記ガイドワイヤ支持機構が支持するガイドワイヤの先端を開口部に挿入して前記ガイドワイヤを通過させる略柱状の空間である入口通路部と、前記入口通路部の最奥に位置する部分である出口部を通じて前記入口通路部と連通し且つ前記出口部から偏平状に広がる空間である付形部と、前記付形部の内周部分を形成する環状の内壁と、前記内壁のうち、前記入口通路部の中心線の延長線と鈍角を成して交差する内壁である延長線交差部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鈍角を成す側の内壁である鈍角側内壁部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鋭角を成す側の内壁である鋭角側内壁部とを有し、前記ガイドワイヤが、前記開口部から送り込まれるにつれ、順に前記入口通路部と前記付形部とに挿通される前記先端が前記延長線交差部近傍に当接し、この当接時に前記鈍角を成す側に曲がりつつ前記鈍角側内壁部に沿って摺動して全体が環状に配置されるように構成されるガイドワイヤ付形具を備えることを特徴とするガイドワイヤ付形装置を提供するものである。
【0039】
本発明者は、ガイドワイヤ支持機構が支持し且つガイドワイヤ付形具の開口部に挿入されたガイドワイヤの先端が延長線交差部近傍に突き当たって鈍角側に曲がりつつ内壁に沿って摺動するとき、仮に、このガイドワイヤの内部における平板状のコアワイヤが、その断面の長手方向と前記ガイドワイヤの曲がる方向とが略同一であり、
図2(a)のような位置にある場合でも、前記ガイドワイヤがその中心軸を中心に90°回転することを見出し本発明を完成させるに至った。その回転の結果、前記コアワイヤの断面の短手方向と前記ガイドワイヤの曲がる方向とが同一となるため、回転前と比べて前記ガイドワイヤは曲がり易い。また、前記コアワイヤの断面の長手方向と前記ガイドワイヤの曲がる方向とが同一でなくとも90°以下の角度を成している場合でも、前記ガイドワイヤはその90°以下の角度回転することを見出した。そして、その回転の結果、同様に前記コアワイヤの断面の短手方向と前記ガイドワイヤの曲がる方向とが同一となるため、回転前と比べて前記ガイドワイヤは曲がり易い。
【0040】
こうして、ガイドワイヤ支持機構が支持するガイドワイヤの内部におけるコアワイヤの方向にかかわらず、当該ガイドワイヤが延長線交差部近傍に突き当たって内壁に沿って摺動することにより前記ガイドワイヤは曲がり易くなるように姿勢を変えることができる。そのため、本発明のガイドワイヤ付形具によって、均一な、ガイドワイヤの付形加工の容易さと付形の品質とを得ることができる。そして、ガイドワイヤが意図しない部分で変形してしまう事態は少ない。
【0041】
(12)また、前記ガイドワイヤを通過させる略柱状の空間であり且つ前記第1の溝部と連通する第2の前記溝部と、前記第2の溝部の最奥に位置する部分である出口部を通じて前記第2の溝部と連通し且つ前記出口部から偏平状に広がる前記付形部と、前記付形部の内周部分を形成する環状の内壁と、前記内壁のうち、前記第2の溝部の中心線の延長線と鈍角を成して交差する内壁である延長線交差部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鈍角を成す側の内壁である鈍角側内壁部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鋭角を成す側の内壁である鋭角側内壁部とを有し、前記ガイドワイヤは、順に前記第2の溝部と前記付形部とに挿通される前記先端が前記延長線交差部近傍に当接し、この当接時に前記鈍角を成す側に曲がりつつ前記鈍角側内壁部に沿って摺動して全体が環状に配置されるように構成されてもよい。
【0042】
すなわち、第2の溝部が第1の溝部と連通し、また、付形部がこの第2の溝部と連通するため、ガイドワイヤは第1の溝部から付形部に至るまで直接に連通する通り路を通過する。そのため、例えば、ガイドワイヤが途中で通り路を外れる虞は少ない。そして、ガイドワイヤが意図しない部分で変形してしまう事態は少ない。
【0043】
(13)本発明は前記ガイドワイヤ付形装置であって、前記ガイドワイヤを通過させる略柱状の空間であり且つ前記第1の溝部と連通する第2の前記溝部と、前記第2の溝部の最奥に位置する部分である出口部を通じて前記第2の溝部と連通し且つ前記出口部から偏平状に広がる前記付形部と、前記付形部の内周部分を形成する環状の内壁と、前記内壁のうち、前記第2の溝部の中心線の延長線と鈍角を成して交差する内壁である延長線交差部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鈍角を成す側の内壁である鈍角側内壁部と、前記内壁のうち、前記出口部から前記延長線交差部に至る内壁であり且つ前記延長線との間で鋭角を成す側の内壁である鋭角側内壁部とを有するガイドワイヤ付形装置を準備する準備工程と、前記ガイドワイヤが、順に前記第2の溝部と前記付形部とに挿通される前記先端が前記延長線交差部近傍に当接し且つこの当接時に前記鈍角を成す側に曲がりつつ前記鈍角側内壁部に沿って摺動して全体が環状に配置されるように前記ガイドワイヤを送り込む送込み工程とを含むことを特徴とするガイドワイヤ付形方法を提供するものである。
【0044】
すなわち、本発明のガイドワイヤ付形方法により、ガイドワイヤの内部におけるコアワイヤの方向にかかわらず、当該ガイドワイヤが延長線交差部近傍に突き当たって内壁に沿って摺動することにより前記ガイドワイヤは曲がり易くなるように姿勢を変えることができる。そのため、本発明のガイドワイヤ付形具によって、均一な、ガイドワイヤの付形加工の容易さと付形の品質とを得ることができる。そして、ガイドワイヤが意図しない部分で変形してしまう事態は少ない。
【発明の効果】
【0045】
これらのように本発明では、使用者がガイドワイヤを取り扱う上で、意図しない部分を変形させずに済むようなガイドワイヤ支持機構を提供し、こうしたガイドワイヤ支持機構を備えることにより、意図しない部分を変形させずにガイドワイヤの付形を行うことができるガイドワイヤ付形装置を提供し、また、こうしたガイドワイヤ支持装置を用いることによって意図しない部分を変形させずにガイドワイヤの付形を行うことができるガイドワイヤ付形方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】(a)左側の図がコアワイヤの周りをプラスチックジャケットが被覆しているガイドワイヤの横断面を示し、右側の図が同じくガイドワイヤの縦断面を示す。(b)左側の図がコアワイヤの周りにコイルが巻き付かれているガイドワイヤの横断面を示し、右側の図が同じくガイドワイヤの側面を示す。
【
図2】(a)上側の図がコアワイヤの長手方向とガイドワイヤの曲がる方向とが同一である場合のガイドワイヤの横断面を示し、下側の図が同じくガイドワイヤの縦断面を示す。(b)上側の図がコアワイヤの短手方向とガイドワイヤの曲がる方向とが同一である場合のガイドワイヤの横断面を示し、下側の図が同じくガイドワイヤの縦断面を示す。
【
図3】(a)本発明の第1の実施形態に係るガイドワイヤ支持機構の平面図を表す。また、この図は透明である蓋体の閉状態における上述のガイドワイヤ支持機構の平面図でもある。(b)上述のガイドワイヤ支持機構のA-A断面図を表わす。(c)透明である蓋体の閉状態における上述のガイドワイヤ機構のA-A断面図を表わす。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るガイドワイヤ支持機構の平面図であり且つ不透明である蓋体の閉状態における平面図を表す。
【
図5】
図3(c)の断面図のうち、ガイドワイヤの付近を表す拡大断面図を表わす。
【
図6】(a)
図3(a)の平面図に示すガイドワイヤ支持機構を平面視時計廻り向きに回転させた状態を表わす。(b)透明である蓋体の閉状態における上述のガイドワイヤ支持機構のB-B断面図を表わす。
【
図7】
図3(a)の平面図に示す回転体のうちクランプ部装着スペース付近を拡大した拡大平面図を表わす。
【
図8】
図3(a)の平面図に示すガイドワイヤ支持機構であり、クランプ部によるガイドワイヤの挟持状態のまま回転体を反時計廻り向きに回転した状態のガイドワイヤ支持機構の平面図を表わす。
【
図9】(a)
図3に示すガイドワイヤ支持機構の第1の溝部内におけるガイドワイヤの断面図であり、コアワイヤの横断面が上下方向に長い縦長である状態の断面図を表わす。(b)同じくコアワイヤの横断面が左右方向に長い横長である状態の断面図を表わす。
【
図10】(a)本発明の第2の実施形態に係るガイドワイヤ支持機構の平面図を表す。また、この図は透明である蓋体の閉状態における上述のガイドワイヤ支持機構の平面図でもある。(b)透明である蓋体の閉状態における上述のガイドワイヤ機構のC-C断面図を表わす。
【
図11】
図10(a)の平面図のうち第2の溝部が周縁から枝分かれする部分の付近を拡大した拡大平面図を表わす。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置の平面図を表わす。
【
図13】(a)
図12に示すガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。(b)同じく右側面図を表わす。
【
図15】(a)ガイドワイヤ付形具の正面図を表わす。(b)同じく背面図を表わす。
【
図16】スライド部を外した状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。
【
図17】(a)スライド部の左側面図を表わす。(b)同じく平面図を表わす。
【
図18】スライド部が最も左側に位置する状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。
【
図19】(a)スライド部を少し右向きにスライドした状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。(b)(a)のガイドワイヤ付形具の拡大平面図を表わす。
【
図20】(a)スライド部及び保持部を省略したガイドワイヤ付形具の拡大平面図を表わす。(b)ガイドワイヤの先端が出口部に戻った状態のガイドワイヤ付形具の拡大平面図を表わす。
【
図21】(a)保持部の平面図を表わす。(b)保持部の正面図を表わす。(c)保持部の右側面図を表わす。
【
図22】ガイドワイヤを入口通路部に進入させて送り込みつつある状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。
【
図23】ガイドワイヤをさらに送り込み、先端が付形部を後ろ向きに進む状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。
【
図24】ガイドワイヤが環状を描いてゆく状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。
【
図25】ガイドワイヤが折り返した状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。
【
図26】ガイドワイヤが折り返した状態のガイドワイヤ付形具及びガイドワイヤ支持機構の平面図を表わす。
【
図27】付形部内部にとどまるガイドワイヤの環径が次第に縮小する過程の状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。
【
図29】保持部とガイドワイヤとを省略した
図28の拡大平面図を表わす。
【
図30】スライド部をさらにスライドし且つガイドワイヤをさらに引き出した状態のガイドワイヤ付形具の平面図を表わす。
【
図32】(a)ガイドワイヤの折り返し部分ごと更に湾曲する状態を表わす。(b)ガイドワイヤの折り返し部分が反り返す状態を表わす。
【
図33】ガイドワイヤの引出しを経てその付形が完了した状態のガイドワイヤ付形具を表わす。
【
図34】本発明の第3の実施形態に係るガイドワイヤ付形方法のフロー図を表わす。
【
図35】本発明の第4の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置が有するガイドワイヤ支持機構の平面図を表わす。
【
図36】(a)本発明の第5の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置の平面図を表わす。(b)同じくガイドワイヤ付形装置の正面図を表わす。
【
図37】(a)
図36のD-D指示線によるガイドワイヤ付形装置の部分断面図を表わす。(b)同じくE-E指示線による部分断面図を表わす。
【
図38】
図36と異なる形態の第5の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置の平面図を表わす。
【
図39】
図36と異なる形態の第5の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置の正面図を表わす。
【
図40】
図15(b)と異なる形態の第3の実施形態に係るガイドワイヤ付形具の正面図を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を、
図1~
図9を用いて例示する。
図3(a)の平面図において11はガイドワイヤ支持機構である。このガイドワイヤ支持機構11は溝部を有し、
図1及び
図2に例示したガイドワイヤが溝部に遊嵌することによって、これら細径のガイドワイヤを支持することができる。ガイドワイヤは、符号Wを用いて指し示す。各図において矢印U及び矢印Dがそれぞれガイドワイヤ支持機構11の上下方向における上向き及び下向きを表す。各図において矢印L及び矢印Rがそれぞれガイドワイヤ支持機構11の左右方向における左向き及び右向きを表す。また、矢印F及び矢印Bがそれぞれガイドワイヤ支持機構11の前後方向における前向き及び後ろ向きを表す。
【0048】
ガイドワイヤ支持機構11は、本体12及び回転体13を有する。本体12は略直方体であり、かつ、この略直方体の一部を占めるように、天面12aに回転体装着スペース12bが凹設された形状を有する。すなわち、
図3(a)に指示されたA-A断面を表す
図3(b)のA-A断面図が示すように、本体12は天面12aを有し、この天面12aよりも低い平面を底面とする回転体装着スペース12bが設けられている。回転体装着スペース12bは、下述する軸心C1を中心線とする円柱面の一部である内周面12cを有する。回転体装着スペース12cの内側に回転体13が装着される。
【0049】
回転体13は
図3(b)が示すように上下方向に偏平な偏平状に形成され、上向きの端面13aを有する。また、
図3(a)が示すように、端面13aは平面視において円弧状の周縁13bを有する略扇状に形成される。回転体13は上下方向の軸心C1を中心にして本体12に軸着する。このとき、本体12の天面12aと回転体13の端面13aとは略面一に形成される。そして、軸心C1からの内周面12cまでの半径に対して、軸心C1から円弧状の周縁13bから下向きに続く外周面13cまでの半径はわずかに小さいため、外周面13cが内周面12cに対して摺動することにより、回転体13は本体12に対して自在に回転することができる。また、回転体13は、軸心C1を中心にして
図3(a)の時計廻り向きと反時計廻り向きとの両方に回転することができる。
【0050】
回転体13には、周縁13bに沿って、上向きに開口する第1の溝部14が形成される。第1の溝部14は、幅及び深さがそれぞれガイドワイヤWの直径よりも大きく形成されている。各図は、ガイドワイヤWが第1の溝部14に遊嵌している状態を示している。また、回転体13は、ガイドワイヤWをその径方向に挟むことができるクランプ部15を備えている。こうした構成により、ガイドワイヤ支持機構11は、クランプ部15によるガイドワイヤWの挟持状態において、回転体13の回転に伴ってガイドワイヤWを移動させることができる。例えば、回転体13が
図3(a)の想像線が示すように平面視反時計向きに回転する場合、ガイドワイヤWの先端Tは、同じく想像線が示すように後ろ向きに移動することができる。これによって、ガイドワイヤ支持機構11の使用者は、回転体13を回転させるとともに、ガイドワイヤ支持機構11の左側から供給されたガイドワイヤWをガイドワイヤ支持機構11の後ろ向きに送り出すことができる。そして、送り出されたガイドワイヤWの先端T及びその付近を、手持ちの付形具、別途据え付けられるガイドワイヤ付形装置などによって付形させることができる。
【0051】
本体12及び回転体13は、ポリアセタール樹脂(POM)のようなエンジニアリングプラスチックをはじめとする合成樹脂によって形成される。また、洗浄のための耐薬品性をもたせるため、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)によって形成されてもよい。
【0052】
ガイドワイヤ支持機構11は、蓋体16を有していてもよい。
図3(c)は、蓋体16を有する場合に、平板状の蓋体16が上側から本体12及び回転体13を覆っている状態を示す。そして、第1の溝部14も蓋体16によって上方から覆われている。蓋体16は本体12及び回転体13に対して開閉自在に取り付けられる。例えば、蓋体16は、本体12に対して蝶番によって接合され、蝶番の軸を中心に回動してもよい。そして、本体12の天面12aと回転体13の端面13aとが略面一に形成されるため、蓋体16の内側面16aは、同時に天面12a及び端面13aに当接してこれらと密着することができる。また、第1の溝部14の深さがガイドワイヤWの直径よりも大きく形成されているため、内側面16aはガイドワイヤWに干渉することなく天面12a及び端面13aに当接することができる。
【0053】
蓋体16は、ポリカーボネート(PC)のような透明の合成樹脂によって形成される。それによって、
図3(c)のような蓋体16の閉状態においても、回転体13の回転、クランプ部15によるガイドワイヤWの挟持状態、ガイドワイヤWの移動などをガイドワイヤ支持機構11の上方から観察することができる。このように蓋体16が透明である場合に、蓋体16の閉状態におけるガイドワイヤ支持機構11を上方から視た図は
図3(a)の通りである。
【0054】
また、蓋体16を、本体12及び回転体13と同様に、ポリアセタール樹脂(POM)又はポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)によって形成してもよい。これらの樹脂は不透明であるため、ガイドワイヤ支持機構11を上方から視た状態は
図4のように表される。
【0055】
図3(c)の例においては、回転体13が、軸心C1に沿って配置される上下方向の柱状の回転軸17aと接合されている。このとき、回転軸17aの中心線は軸心C1と一致する。また、回転軸17aは、本体12を上下方向に貫通している。これにより、ガイドワイヤ支持機構11が蓋体16を有する場合における蓋体16の閉状態においても、本体12の下方において回転力を加えることによって回転軸17aを任意の向きに回転させることができる。そのため、同じく蓋体16の閉状態においても、回転体13は軸心C1を中心にして時計廻り向きと反時計廻り向きとの両方に回転することができる。
【0056】
図5は、
図3(c)の断面のうち、ガイドワイヤWの付近を表す拡大断面を示す。この
図5においては、煩雑な図示となることを避けるため断面ハッチングを省略している。上向きに開口する第1の溝部14は、閉状態の蓋体16の内側面16aによって蓋をされる。第1の溝部14と内側面16aとは、略円形の横断面を有するガイドワイヤWの上下左右の周面との間にすき間ができるような寸法に形成される。そのため、ガイドワイヤWは第1の溝部14に遊嵌することができる。
【0057】
第1の溝部14は、底壁14aを有する。この底壁14aは、上向きの平面であり、端面13aの周縁13bに形成される一段低いステップ部13dによって形成される。また、第1の溝部14は、軸心C1に近い側の側壁である内側側壁14bを有する。
図5において軸心C1は内側側壁14bよりも左方に位置している。この内側側壁14bはステップ部13dから垂直上向きに立設されている。また、第1の溝部14は、軸心C1から遠い側の側壁である外側側壁14cを有する。この外側側壁14cは、回転体装着スペース12bの内周面12cの一部によって構成され、垂直に形成されている。
【0058】
図6(a)は、ガイドワイヤWの左側の直線部分が図の略縦方向に向くように、
図3(a)を平面視時計廻り向きに回転させた平面図である。
図6(b)は、
図6(a)に指示されたB-B断面を表すガイドワイヤ支持機構11の断面図である。回転軸17aの表示は省略する。
【0059】
ガイドワイヤ支持機構11の溝部は、前述の第1の溝部14と、第1の溝部14と連通して連続する第3の溝部18とから構成される。
図6(a)の平面図が示す通り、軸心C1を中心とした反時計廻り側寄りの溝部が第1の溝部14であり、同じく時計廻り側寄りの溝部が第3の溝部18である。第3の溝部18は、回転体13の端面13aにおいて、第1の溝部14から連続して回転体13の径方向内向きに入り込む。第3の溝部18が入り込むことにより、第1の溝部14と第3の溝部18とは互いに屈曲して連続する。このように、第1の溝部14は、端面13aの周縁13bの一部である。すなわち、第1の溝部14は、周縁13b全体のうち前記の屈曲箇所よりも反時計廻り側寄りの部分に沿うように形成される。第3の溝部18は、第1の溝部14の幅及び深さと同程度の幅及び深さを有し、ガイドワイヤWの周囲との間にすき間ができるほどの寸法に形成される。また、ガイドワイヤ支持機構11が蓋体16を有する場合、蓋体16は、閉状態において上方から第3の溝部18を覆うことができる。
【0060】
ガイドワイヤWは、これら溝部14,18に遊嵌している。また、ガイドワイヤ支持機構11が蓋体16を有する場合における蓋体16の閉状態においては、ガイドワイヤWを、第3の溝部18における時計廻り側の挿入口13eから挿入することができる。そして、ガイドワイヤWは、先端Tが第3の溝部18と第1の溝部14との順に挿通することができる。
【0061】
回転体13は、
図6(a)(b)が示すように、端面13aに凹設されるクランプ部装着スペース13fを有する。このクランプ部装着スペース13fは、端面13aにおいて、第3の溝部18よりも回転体13の径方向内側に設けられ、また、ガイドワイヤWの直径よりも深く、第3の溝部18と同等程度の深さを有する。そして、クランプ部装着スペース13f内にクランプ部15が装着される。
【0062】
図7は、回転体13のうち、クランプ部装着スペース13f付近を拡大した拡大平面を表す。クランプ部15は、上下方向に偏平な偏平状に形成されるクランプ板15aを有する。クランプ板15aは平面視において概ね半開き扇状に形成される。このクランプ板15aは、回転体13の軸心C1と平行に設けられる枢軸15bを中心に回動することができる。枢軸15bの中心線を軸中心C2とよぶ。この枢軸15bは、軸中心C2がクランプ板15aの略半開き扇状の要の位置に在るように配設されている。また、クランプ板15aは、その高さがクランプ部装着スペース13fの高さよりも低いため、ガイドワイヤ支持機構11が蓋体16を有する場合における蓋体16の閉状態においても、クランプ部15aが蓋体16の内側面16aに干渉することがない。
【0063】
クランプ板15aは、枢軸15bを中心として平面視反時計廻り向きに突出する挟持部15cを有する。この挟持部15cは、平面視反時計廻り向きの先端に略平面状の挟持面15dを有する。そのため、クランプ板15aは、軸中心C2を中心として平面視反時計廻りに回転する場合、挟持面15dが先頭となって回動する。その一方、第3の溝部18は、その内側側面が欠けることによって開口する内側側面欠損開口18aを有する。内側側面欠損開口18aは、第3の溝部18の内側側面のうち、クランプ板15aの挟持部15cが回動する軌跡上に位置している。この内側側面欠損開口18aを通って、クランプ部装着スペース13fと第3の溝部18とは連通している。
【0064】
クランプ板15aが平面視反時計廻り向きに回動する場合、挟持部15cが内側側面欠損開口18aを通ることにより、さらに反時計廻り向きに回転することができる。このとき、挟持部15cの挟持面15dは、ガイドワイヤWの径方向において第3の溝部18の内部に進入することができる。その結果、ガイドワイヤWの周面Wsに挟持面15dが当接し、クランプ板15aは、ガイドワイヤWを挟持面15dと第3の溝部18の外側側面18bとの間に挟持することができる。そして、このまま回転体13を回転するときは、クランプ部15がガイドワイヤWを挟持した挟持状態のままガイドワイヤWを軸心C1を中心に回転させることができる。
図8は、
図7に示したガイドワイヤWの挟持状態のまま、回転体13を軸心C1を中心にして反時計廻り向きに回転したときに、ガイドワイヤW全体を図の左方から右方へ移動させ且つ下方から上方へ移動させている状態を例示している。このとき、ガイドワイヤWの軸心C1周りの回転がクランプ部15以外の構成によって束縛されないため、ガイドワイヤWは周りからの抵抗を受けずにガイドワイヤ支持機構11の後方に移動することができる。または、その逆向きに移動することができる。
【0065】
また、クランプ部15はクランプ板15aと、クランプ部装着スペース13fの内壁との間に圧縮コイルばね15dからなる付勢手段を有していてもよい。この圧縮コイルばね15dは、伸びることによってクランプ板15aを反時計回り向きに回動させることができる。そのため、クランプ板15aを反時計回り向きに付勢することができ、その結果、クランプ部15がガイドワイヤWを挟持した挟持状態を保持することができる。
【0066】
以上の構成により、ガイドワイヤ支持機構11は、溝部14,18に遊嵌するガイドワイヤWをクランプ部15によって挟持しつつ、回転体13によって、これら溝部14,18及びクランプ部15ごと回転させる構造を有する。こうして、ガイドワイヤWの一部がこの溝部14,18内に留まる状態を保ちつつ、ガイドワイヤW全体を回転体13の回転に伴って移動させることができる。こうして、ガイドワイヤ支持機構11は、使用者がガイドワイヤWを移動させる上で、ガイドワイヤWがクランプ部以外の部分から力を受けることが少なく、意図しない部分を変形させる可能性が低い。
【0067】
また、ガイドワイヤWの嵌まる部分が溝部であるため、クランプ部15による挟持を止めることによって、ガイドワイヤWは溝部から取り外し、ガイドワイヤ支持機構11から離脱させることが可能である。こうして、ガイドワイヤWに不必要に力を加えることがないため、ガイドワイヤWを取り出す時に意図しない部分を変形させてしまう可能性は低い。
【0068】
また、第1の溝部14の外側側壁14cが本体12の回転体装着スペース12bの内周面12cによって構成されているため、この内周面12c全体のうち、内周面12cが回転体13の円弧状の周縁13bから離れる箇所である軸心C1を中心とした3時の位置においてガイドワイヤWは回転体13の径方向外向きに開放される。この内周面12cが周縁13bから離れる箇所を、
図3(a)及び
図8において符号Sによって指し示す。符号Sの箇所よりも前側に、内側側壁14bと外側側壁14cとに囲まれた第1の溝部14が形成される。この第1の溝部14の後端である符号Sの箇所で開放されたガイドワイヤWの先端Tが周縁13bから退出して、付形を行うセクションに進むことができる。
図3(a)には示されていないが、例えば、本体12の後方に付形を行うセクションを配置することが考えられる。そして、ガイドワイヤWは、図において想像線によって表わされた先端T付近の部分が、付形を行うセクションに進入することが考えられる。こうして、ガイドワイヤ支持機構11は、付形を行う直前までガイドワイヤWを変形させず、かつ、簡素な構造によってガイドワイヤWを付形セクションに進めさせることができる。
【0069】
そして、外側側壁14cが、円弧に沿った第1の溝部14の外側の側壁であるため、元々略直線状に形成されているガイドワイヤWは、元々の直線状の形状を維持しようとして、この外側側壁14cに摺動しながら第1の溝部14の内側を進む可能性が高い。このとき、
図9(a)の例が示すように、ガイドワイヤWは、そのコアワイヤCの横断面が上下方向に長い縦長の姿勢を維持することによって、容易に第1の溝部14の円弧状の形状に沿って湾曲することができる。これによって、ガイドワイヤWを不必要に変形させてしまう可能性が小さい。
図9(a)及びこの次に述べる
図9(b)においては、煩雑な図示となることを避けるため、ガイドワイヤW以外の箇所においては断面ハッチングを省略している。また、たとえコアガイドCが当初
図9(b)の例が示すような横長断面の姿勢であっても、ガイドワイヤWが第1の溝部14の外側側壁14cに摺動しながら進むため、外側側壁14cから受ける反力によって、
図9(a)の縦長断面の姿勢となるように90°回転することができる。これにより、ガイドワイヤ支持機構11は、ガイドワイヤWをより適切な姿勢に修正しつつ付形のセクションに進めることができる。
【0070】
また、第3の溝部18が周縁13bよりも回転体13の径方向内側に在るため、クランプ部15が第3の溝部18の内壁である外側側面18bとの間でガイドワイヤWを挟むのであって、ガイドワイヤWは、回転体装着スペース12bの内周面12cとの間で挟まれるのではない。これにより、このクランプ部15からガイドワイヤWに伝わる力によってガイドワイヤWと内周面12cとの間における摩擦が生じることはない。また、このような摩擦によって回転体13の回転に対する負荷を増すことがない。こうした構造のため、ガイドワイヤWが摩擦によって大きな損傷を受けることがない。また、ガイドワイヤWをしっかりクランプしつつ、ガイドワイヤWを移動させるためのスムーズな回転運動を維持することができる。その結果、ガイドワイヤWを移動させるために不要な箇所が変形してしまう可能性を低減することができる。
【0071】
また、クランプ板15aが偏平状に形成されるため、軸心C方向において、ガイドワイヤWを挟持するために必要なスペースを小さくすることができる。さらに、クランプ板15aが軸中心C2を中心に回動することによってガイドワイヤWを挟むため、簡素な構造によってガイドワイヤWの移動を可能とする。
【0072】
また、ガイドワイヤ支持機構11が蓋体16を有する場合、各溝部14,18が蓋体16の内側面16aによって蓋をされるため、蓋体16の閉状態においては、ガイドワイヤWが各溝部14,18から浮き上がる、飛び出してしまうなどの事態を防ぐことができる。そのため、ガイドワイヤWを移動させる上で、ガイドワイヤWが波を立てる、飛び出して湾曲するなどの可能性が低く、意図しない部分が変形するような虞が小さい。
【0073】
しかも、蓋体16が開閉自在なため、蓋体16の開状態においては、ガイドワイヤWを溝部14,18から取り外し、ガイドワイヤ支持機構11から離脱させることが可能である。こうして、ガイドワイヤWを取り出す時に意図しない部分を変形させてしまう可能性は低い。
【0074】
さらに、ガイドワイヤ支持機構11は、回転体13の時計廻り向きの回転又は反時計廻り向きの回転を切り替えて、すなわち、回転体13の正転又は逆転を切り替えて、ガイドワイヤWの先端Tの前進及び後退の両方を行うことができる。そのため、使用者がガイドワイヤWの付形時の都合に合わせて回転の正逆を切り替えるだけで、付形するガイドワイヤWの先端Tを容易に進退させることができる。そのため、ガイドワイヤWの取扱いに際して手指により不要な力を加えてしまうことによって意図しない部分を変形させる虞は小さい。
【0075】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を、
図10及び
図11を用いて例示する。
図10(a)の平面図において21はガイドワイヤ支持機構である。
図10(b)は、
図10(a)において指示されたガイドワイヤ支持機構21のC-C断面を表す断面図である。ガイドワイヤ支持機構21は、本体22及び回転体23を有する。ガイドワイヤ支持機構21が蓋体26を有してもよく、
図10(b)は蓋体26が上側から本体22及び回転体23を覆っている状態を示す。
【0076】
本体22は略直方体であり、かつ、この略直方体の一部を占めるようにして天面22aに回転体装着スペース22bが凹設された形状を有する。回転体装着スペース22bの内側に回転体23が装着される。回転体23は上向きの端面23aを有し、この端面が平面視において軸心C1を中心とする円弧状の周縁23bを有する。また、回転体23には周縁23bに沿って上向きに開口する第1の溝部24が形成される。さらに、端面23aには上向きに開口する第3の溝部28が凹設される。そして、回転体23は、第3の溝部28内においてガイドワイヤWをその径方向に挟むことができるクランプ部25を備えている。
【0077】
本実施形態のガイドワイヤ支持機構21は、例えば、下記の点において第1の実施形態に係るガイドワイヤ支持機構11と異なる。第一に、回転体装着スペースが小さい。すなわち、
図10(a)の回転体装着スペース22bの内周面22cは軸心C1を中心にして時計の3時から略12時の角度まで延びている。その結果、本体22の天面22aは、図における符号22axが指し示すような領域において拡張している。第二に、本体22は、拡張領域22axを含む天面22aに凹設され且つ周縁23bの前記3時の位置において周縁23bから後ろ向きに枝分かれする第2の溝部29を有する。このとき、第2の溝部29は第1の溝部24よりも軸心C1から遠ざかる方向に枝分かれする。第2の溝部29は上向きに開口する。また、第1の溝部24と第2の溝部29とは連通する。第三に、ガイドワイヤ支持機構21が蓋体26を有するときに、第2の溝部29の後端は、蓋体26の閉状態において本体22の背面側に開口する進退口22dを形成する。
【0078】
図11は、ガイドワイヤ支持機構21の平面図のうち、第2の溝部29が周縁23bから枝分かれする部分の付近を拡大した拡大平面を表す。この枝分かれ部分においては、天面22aの一部であり、その拡張領域である拡張天面22axの前側端が涙滴状に形成されている。そして、第2の溝部29は、この枝分かれ部分から第1の溝部24に続いて後ろ向きに延びている。この第2の溝部29は、第1の溝部24の幅及び深さと同程度の幅及び深さを有し、ガイドワイヤWの左右との間にすき間ができるほどの幅を有し、また、ガイドワイヤWの直径よりもわずかに大きい深さを有する。
【0079】
第1の溝部24は、軸心C1に近い側の側壁である内側側壁24bと、軸心C1から遠い側の側壁である外側側壁24cとを有する。第2の溝部29は、左側の側壁である左側側壁29aと右側の側壁である右側側壁29bとを有する。左側側壁29a及び右側側壁29bは、これらそれぞれの下端同士をつなぐ底壁と合わせて第2の溝部29の内壁を構成する。そして、第1の溝部24の外側側壁14cと第2の溝部29の右側側壁29bとは、枝分かれ部分において前後方向に連続している。
【0080】
第1~第3の溝部24,28,29の平面視における位置について、第2の溝部29は、
図10(a)のように、第1の溝部24の反時計廻り向きの先端からから後方に延びるように形成されている。すなわち、軸心C1を中心とした3時の位置に示された符号Sの箇所よりも前側において内側側壁24bと外側側壁24cとに囲まれる第1の溝部24が形成され、また、同じく符号Sの箇所より後側において左側側壁29aと右側側壁29bとに囲まれる第2の溝部29が形成される。また、第3の溝部28は、第1の溝部24の時計廻り向きの先端から左斜め後方に延びるように形成されている。
【0081】
ガイドワイヤWは、第1~第3の溝部24,28,29に遊嵌する。そして、ガイドワイヤWがクランプ部25によって挟持される状態において、先端Tを含むガイドワイヤWは、回転体23の回転に伴って第2の溝部29の内部を移動する。例えば、回転体23が
図10(a)又は
図11の想像線が示すように平面視反時計向きに回転する場合、ガイドワイヤWは、同じく想像線が示すように後ろ向きに移動することができる。これによって、ガイドワイヤ支持機構21の使用者は、回転体23を回転させることによって、ガイドワイヤWを先端Tを先頭にして進退口22dから後方に送り出すことができる。また、回転体23を逆転させることによって、一旦送り出したガイドワイヤWを、再び進退口22dから前方に引き戻すことができる。こうして、ガイドワイヤWをガイドワイヤ支持機構21によって支持しつつ、送り出されたガイドワイヤWの先端T及びその付近を、手持ちの付形具、別途据え付けられるガイドワイヤ付形装置などによって付形させることができる。
【0082】
ガイドワイヤ支持機構21が、
図10(b)のように、平面視において本体22全体を覆うことができる蓋体26を有する場合、蓋体26は、閉状態において上方から第2の溝部29を覆うことができる。また、第2の溝部29の深さがガイドワイヤWの直径よりも大きいため、蓋体26の閉状態においても、蓋体26の内側面26aがガイドワイヤWに干渉することがない。
【0083】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0084】
以上の構成により、第2の溝部29が第1の溝部24と連続して連通するため、ガイドワイヤWは第1の溝部24と第2の溝部29との間を往き来することができる。そして、進退口22dがガイドワイヤWを付形するセクションと連通するときに、ガイドワイヤWの先端Tは、第2の溝部29を通ってこのセクションまで引っ掛かりなく進むことができる。また、このセクションから後ろ向きに後退する場合も同様である。
【0085】
このとき、元々の略直線状の形状を維持しようとして第1の溝部24の外側側壁24cに摺動して進んでいたガイドワイヤWの先端Tは、涙滴状の前側端の左側に逸れて進むことがない。また、このとき、第2の溝部29が枝分かれ部分から後方へ枝分かれし且つ第1の溝部24の外側側壁24cと第2の溝部29の右側の内壁である外側側壁29bとが連続するため、元々の略直線状の形状を維持しようとして第1の溝部24の外側側壁24cに摺動して進んでいたガイドワイヤWの先端Tは、途中でギャップなどを経ることなく第2の溝部29に進入することができる。このようにして、ガイドワイヤ支持装置21は、その内部のガイドワイヤWが周りから受ける力を抑えることができ、意図しない部分の変形を生じることが少ない。
【0086】
また、ガイドワイヤWは、順に、ガイドワイヤWをクランプ部25によって挟むことができる第3の溝部28、円弧状の周縁23bに沿う第1の溝部24、および、周縁23bから径方向外向きに枝分かれする第2の溝部29に遊嵌する。そして、クランプ部25の挟持状態下における回転体23の回転によって、先端Tが第2の溝部29内を進むことができる。また、逆転して、ガイドワイヤWはガイドワイヤ支持機構21内を逆行することができる。
【0087】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を、
図12~
図34を用いて例示する。
図12の平面図において3011はガイドワイヤ付形装置である。ガイドワイヤ付形装置3011は、ガイドワイヤ支持機構31はガイドワイヤ支持機構31及びガイドワイヤ付形具311を備える。各図において矢印U及び矢印Dがそれぞれガイドワイヤ支持機構31、ガイドワイヤ付形具311及びガイドワイヤ付形装置3011の上下方向における上向き及び下向きを表す。各図において矢印L及び矢印Rがそれぞれ同じく左右方向における左向き及び右向きを表す。また、矢印F及び矢印Bがそれぞれ同じく前後方向における前向き及び後ろ向きを表す。
図12に表されるように、ガイドワイヤ付形装置3011において、ガイドワイヤ付形具311がガイドワイヤ支持機構31の後方に配置される。そして、ガイドワイヤ付形具311の第2の溝部39の中心線Cp及びその延長線CP´と、ガイドワイヤ支持機構31の下述する入口通路部323の中心線CP及びその延長線Cp´とが一致する。これら中心線Cp及びその延長線Cp´は前後方向に位置している。その結果、ガイドワイヤWがガイドワイヤ支持機構31とガイドワイヤ付形具311との間において前後方向に張り渡される。
【0088】
ガイドワイヤ支持機構31は、本体32の上側に蓋体36を有する。蓋体36は、ポリカーボネートのような透明の合成樹脂によって形成される。そのため、蓋体36の閉状態においても、
図12が示すように、本体32上の構成と回転体33上の構成とが平面図において表されている。
【0089】
本実施形態におけるガイドワイヤ支持機構31の構成は、特に記載しない限り、第2の実施形態におけるガイドワイヤ支持機構21の構成と共通する。
【0090】
図13において311はガイドワイヤ付形具である。このガイドワイヤ付形具311は、
図1及び
図2に例示されたガイドワイヤであり、ガイドワイヤ支持機構31によって支持されるガイドワイヤWを、
図14に示す例のようないわばJ字状に付形するために用いられる。ガイドワイヤ付形具311は
図13(a)の平面図に示す付形具本体313を有する。この付形具本体313は
図13(b)の右側面図が示すように上下方向に分割され、下側に配置される第1の本体部314と上側に配置される第2の本体部315とによって構成される。第1の本体部314の分割面である第1の分割面314aと、第2の本体部315の分割面である第2の分割面315aとは略水平面である。第1の本体部314は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性、寸法精度が高い等の特性を備える合成樹脂によって形成される。第2の本体部315は、アクリル樹脂のような透明性の高い合成樹脂によって形成される。第2の本体部315は透明であり上側から素通しであるため、平面図において第1の分割面314a上の構造は実線で表される。
【0091】
第1の本体部314と第2の本体部315とは、蝶番又はボルト及びナットによって接合される。そのため、蝶番の開閉又はボルト及びナットの脱着によって第1の分割面314aと第2の分割面315aとは自在に重なり又は離れることができる。
【0092】
また、ガイドワイヤ付形具311はスライド部316と保持部317とを備える。スライド部316は、上下方向に偏平な略台形柱状の立体と、左右方向の長手方向を有し且つ上下方向に偏平な略直方体状の立体とを組み合わせた形状に形成され、左側の一部が第1の分割面314aに凹設される溝に嵌入される。保持部317は上下方向の長手方向を有する略四角柱状に形成され、下側の一部が第2の本体部315を上下方向に貫通する孔315bに嵌入される。スライド部316及び保持部317は、第1の本体部314と同様に合成樹脂によって形成されてもよいが、より耐衝撃性、耐摩耗性、耐熱性、寸法精度等をもたせるため金属により形成してもよい。例えばチタンにより形成してもよい。
【0093】
図15(a)はガイドワイヤ付形具311の正面図を表し、
図15(b)は同じく背面図を表わす。また、
図16はスライド部316を外した状態の平面図を表わす。第1の本体部314は、左右方向に設けられ且つスライド部316の左側の一部が嵌入される溝状のレール部321を有する。レール部321は、
図15(a)(b)が示すように第1の分割面314aに下向きに凹設され、また、
図16が示すように前向きの側壁321a、後向きの側壁321a及び上向きの底壁321bを有する。これら側壁321a及び底壁321bは左右方向の面方向を有する。レール部321は上下方向に偏平な形状を有し、上下方向の深さは付形部325の深さよりも大きい。
【0094】
これに対して、スライド部316は
図17(a)の左側面図及び
図17(b)の平面図が示すように左右方向且つ上下方向の正面316a及び背面316aと、前後方向且つ左右方向の底面316bを有する。スライド部316は、これら正面316a及び背面316aが前後の側壁321a,321aに接し且つ底面316bが底壁321bに接するとともに、レール部321に摺動して左右方向にスライドすることができる。スライド部316の上下方向の高さは、レール部321の上下方向の深さと略同一である。
【0095】
図18は、スライド部316が最も左側に位置する状態を示し、かつ、見易くするために保持部317の表示を省略した平面図である。第1の本体部314は
図13(a)(b)が示すように正面から奥向きに凹む開口部322を有する。開口部322は奥向きの頂点を有する半円錐体状の空間を形成する。この開口部322にガイドワイヤWの先端が挿入される。そして、開口部322と連通するように、前後方向の略柱状の空間である入口通路部323が形成される。入口通路部323は、第1の分割面314aに下向きに凹設される。そして、
図18が示すように、入口通路部323は、そのうち開口部322から見て最も奥に位置する部分である出口部324を有する。すなわち、出口部324は入口通路部323のうち最も後側に位置する。
【0096】
次に、第1の本体部314は、入口通路部323と連通し且つ出口部324から後向きに広がる付形部325を有する。付形部325は、入口通路部323と同様に第1の分割面314aに下向きに凹設される。付形部325は、
図15(a)(b)の正面及び背面においてかくれ線によって表わす通り上下方向に偏平な空間を形成する。そして、付形部325はその内周部分を形成する略環状の内壁325aを有する。
【0097】
ここで、入口通路部323の中心線Cpは、その延長線Cp´が内壁325aと交差する。こうして交差する部分の内壁325aを延長線交差部326とよぶ。また、延長線Cp´は内壁325aと直交するのでなく、延長線交差部326において鈍角を成して交差する。
図18のように、延長線Cp´は延長線交差部326よりも左側の内壁325aと鈍角を成す。また、それと同時に延長線Cp´は延長線交差部326よりも右側の内壁325aと鋭角を成す。
図18の例においては、延長線Cp´は延長線交差部326において内壁325aと129.0°の角度を成して交差する。そして、これら内壁325aのうち、出口部324から前記の左側を通って延長線交差部326に至る内壁325aであって延長線Cp´と鈍角を成して交差する内壁325aを鈍角側内壁部327とよぶ。また、出口部324から前記の右側を通って延長線交差部326に至る内壁325aであって延長線Cp´と鋭角を成して交差する内壁325aを鋭角側内壁部328とよぶ。
【0098】
鋭角側内壁部328は、
図18の太い矢印によって示すように延長線Cp´から遠ざかる向きである右向きに膨出する形状を有する。
【0099】
ところで、スライド部316は、
図17(b)が示すように左向きに突出する左端部331を有する。左端部331は
図17(a)が示すようにスライド部316の上下方向の厚さに対して上側の部分に配置されている。この左端部331の前側面を制止面331aとよぶ。そこで、
図18のようにスライド部316が最も左側に位置する状態においては、左端部331が中心線Cpと交差することにより、開口部322を経由して入口通路部323を後向きに進入するガイドワイヤWが制止面331aによってそれ以上の進入を阻まれる。これに対して、
図19(a)はスライド部316を少し右向きにスライドした状態を示す。この状態においては左端部331の左側面331bが、出口部324よりも前側部分の入口通路部323の内壁における右端面と前後に連続する、または、入口通路部323よりもわずかに右側に位置するため、ガイドワイヤWが制止面331aによってその進入を阻まれない。この状態を入口通路部323の開放状態とよぶ。スライド部316は、蓋315が閉まった状態でも、付形具本体313の右側面から飛び出す部分を把持することにより左右方向に移動させることができる。
【0100】
左端部331の左側面331bは、下述する鋭角側出口対向部を構成する。
【0101】
図19(b)は、保持部317を想像線により表わした開放状態における拡大平面図である。この図においては、左端部331の左側面331bが、出口部324よりも前側部分の入口通路部323の内壁における右端面323aと前後に連続している。
【0102】
図20(a)はスライド部316及び保持部317を省略した、出口部324付近の拡大平面図である。出口部324は、この図には示していないガイドワイヤWを前後に二重に配置することができる左右方向の幅を有する。この出口部324は、鈍角側内壁部327と連続する略直線状の内壁332aを有する側の片側部分である鈍角側出口部332と、この鈍角側出口部332と反対側の片側部分である鋭角側出口部333とによって構成される。鋭角側出口部333は鋭角側内壁部328と連続する。このように、鈍角側出口部332が左側に、鋭角側出口部333が右側にお互いに並んで配置される。
【0103】
鈍角側出口部332はその前端が閉塞部332bによって閉じられている。一方で、鋭角側出口部333は入口通路部323を後ろ向けに延長した位置に設けられ、その前端が入口通路部323と連通する。
【0104】
図20(b)は、ガイドワイヤWが入口通路部323を後ろ向きに進入して付形部325の内側を反時計向きに曲がりながら進んだのち、先端Tが出口部324に戻ってきた状態を示す。このとき、鋭角側出口333が右側のガイドワイヤWによって占められているため、先端Tは鈍角側出口部332に進入した後に閉塞部332bによって後ろ向きに制止される。このように、出口部324は左側の鈍角側出口部332と右側の鋭角側出口部333とを有するため、ガイドワイヤWを前後に二重に配置することができる。そして、
図20(b)の左右二本のガイドワイヤWのうち、左側の出口部324に戻ってきたガイドワイヤWを左側ガイドワイヤWlとよび鈍角側出口部332の内部に配置される。先端Tは左側ガイドワイヤWlの一部を成す。もう一方の右側のガイドワイヤWを右側ガイドワイヤWrとよび、右側ガイドワイヤWrは鋭角側出口部333を左右に通過する。
【0105】
図21(a)(b)(c)は、それぞれ保持部317の平面図、正面図及び右側面図を表わす。保持部317は、下側の一部が第2の本体部315の孔315bに嵌入される。また、保持部317は下向きに突出する下端部334を有する。下端部334は平面視において保持部317の前後方向における略半分の奥行きを有するとともに前寄りに配置され、また、保持部317の左右方向における略半分の幅を有するとともに右寄りに配置される。また、下端部334は、下側ほど幅が小さくなるように左側面が傾斜して形成される。
【0106】
下端部334は底面に前後方向の部分円柱状に形成される凹状部335を有する。この凹状部335は、
図20(b)の平面図において想像線によって表わす保持部317が孔315bに沿って下降することにより、先端Tとその付近のガイドワイヤWを上側から下向きに押すことができる。このとき、先端Tとその付近のガイドワイヤWは、鈍角側出口部332の底壁に相当する第1の本体部314によって下支えられているため、下端部334によって付形具本体313に押し付けられて保持される状態となる。保持部317は、蓋315が閉まった状態でも、第2の本体部315の上面から飛び出す部分を把持することにより上下方向に移動させることができる。
【0107】
ただし、凹状部335が前後方向に細いため、保持部317は鈍角側出口部332の内部に配置される左側ガイドワイヤWlだけを下向きに押すことができ、右側ガイドワイヤWrを押さない。そのため、左側ガイドワイヤWlが鈍角側出口部332に留まるのに対して右側ガイドワイヤWrは鋭角側出口部333内で自在に前後方向に移動することができる。
【0108】
なお、延長線C´は内壁25aとの間において各図のような129.0°以外の角度を成して交差してもよく、ガイドワイヤWを送込むにつれ先端Tが引っ掛かることなく鈍角側内壁部326に沿って摺動するのであれば129.0°前後の角度を成して交差してもよい。
【0109】
図12において、ガイドワイヤ支持機構31とガイドワイヤ付形具311との間に渡されて前後に移動するように構成されるガイドワイヤWを想像線によって表す。ガイドワイヤ付形装置3011においては、ガイドワイヤ支持機構31から後方に送り出される又はガイドワイヤ支持機構31に対して前方に送り込まれるガイドワイヤWが、前後方向に張り渡された状態で、ガイドワイヤ付形具311に進入し又はガイドワイヤ付形具311から退出できるように、ガイドワイヤ支持機構31及びガイドワイヤ付形具311が配置される。先述の通り、第2の溝部39の中心線Cp及びその延長線Cp´と、入口通路部323の中心線Cp及びその延長線Cp´とは一致する。そして、ガイドワイヤ支持機構31の第2の溝部39及び進退口32dと、ガイドワイヤ付形具311の開口部322及び入口通路部323とは、これらの中心線Cp及び延長線Cp´上に略一直線上に配置される。このような配置を維持するため、例えば、ガイドワイヤ支持機構31及びガイドワイヤ付形具311は共通の架台の上に固定する。
【0110】
この第2の溝部39の中心線Cpの延長線Cp´は、入口通路部323の中心線Cpの延長線Cp´と同様に、延長線交差部326よりも左側の内壁325aと鈍角を成し、また、延長線交差部326よりも右側の内壁325aと鋭角を成す。そして、出口部324から前記の左側を通って延長線交差部326に至る内壁325aであって延長線Cp´と鈍角を成して交差する内壁325aが鈍角側内壁部327であり、また、出口部324から前記の右側を通って延長線交差部326に至る内壁325aであって延長線Cp´と鋭角を成して交差する内壁325aが鋭角側内壁部328である。
【0111】
その他の構成は、第2の実施形態と共通する。
【0112】
以下においては、使用者が、本発明のガイドワイヤ付形装置3011を用いてガイドワイヤWの先端Tを折り返し、先端部分をJ字状に付形するまでのガイドワイヤ付形方法S100を順に
図22~
図31、
図33の平面図及び拡大平面図を用いて示す。これらの図においては保持部317を想像線によって表わすとともに、本来上方から視るときに保持部317によって隠れている構造なども実線で表わしている。また、ガイドワイヤ付形方法S100を
図34のフロー図によっても表わす。
【0113】
ガイドワイヤ付形方法S100のうち、ガイドワイヤ付形具311及びガイドワイヤ付形機構311を含むガイドワイヤ付形装置3011を準備する工程を準備工程S110とよぶ。準備工程S110において、使用者は、ガイドワイヤ付形機構31の蓋体36が開いた状態で、回転体33を図の最も時計廻り向きに回転させるとともに、ガイドワイヤWを各溝部34,38,39に遊嵌させる。その上で、クランプ板35aを反時計廻り向きに回転させ、ガイドワイヤWを第3の溝部38に挟持する。この後に、蓋体36を閉じる。その一方で、ガイドワイヤ付形具311の第1及び第2の本体部314,315を接合する。
図22は、第1の本体部314と第2の本体部315とが上下方向に接合した状態を表わす。
【0114】
これら第1及び第2の本体部314,315を接合した後に、ガイドワイヤ付形機構311の回転体33を平面視反時計廻り向きに回転させ、進退口32dから送り出されるガイドワイヤWの先端Tを、開口部322を経て入口通路部323へ進入させる。
【0115】
また、予め第1及び第2の本体部314,315を接合するのではなく、接合前の第1の本体部314の第1の分割面314aに凹設された入口通路部322に対して、上方からガイドワイヤWを嵌め込んでもよい。この場合は、ガイドワイヤ付形機構31の各溝部34,38,39にガイドワイヤWを遊嵌させる段階で、併せてガイドワイヤ付形具311の入口通路部322に対してガイドワイヤWを嵌めてもよい。ただし、ガイドワイヤWの姿勢を、コアワイヤCの断面の長手方向と、ガイドワイヤ付形具311の上下方向とが略同一となるように整えた上で嵌め込む必要がある。長手方向が上下方向と合っていないときは、後にガイドワイヤWが進行方向に沿って曲がり難いからである。そして、その上で第1の本体部314及び第2の本体部315を接合する。各本体部314,315は、第1の分割面314aと第2の分割面315aとが密着するため、ガイドワイヤWを付形する際に、ガイドワイヤWを正確な向きに導くことができる。
【0116】
図22は、回転体33を回転させて、ガイドワイヤWを入口通路部23の右向きに送り込みつつある状態を示す。ガイドワイヤWの進入方向を矢印により示す。この図において、スライド部316は
図18と同様にレール部321上の最も左側の位置に移動している。そのため、先端Tはスライド部316の制止面331aよりも右向きに進むことができない。ここまでの準備工程S110の後に、後述する
図25のように先端Tが閉塞部332bに突き当たって制止されるまでの工程を送込み工程S120とよぶ。この送込み工程S120においては保持部317が上昇されており、下端部334がガイドワイヤWに触れていない。
【0117】
図23は、使用者がスライド部316を少し右向きにスライドして、
図19(a)(b)のように入口通路部323を開放状態に置いた状態を示す。この状態では、ガイドワイヤWをさらに後ろ向きに送り込むことができ、先端Tが鋭角側出口部333を経て付形部325内を後ろ向きに進む。上昇している保持部317はガイドワイヤWの進行をさまたげない。そして、先端Tはほぼ延長線Cp´に沿って進んで延長線交差部326近傍に当接する。この先端Tが延長線交差部326近傍に当接する際のガイドワイヤWと内壁325aとの間で成す角度は、延長線Cp´と内壁325aとの間における角度と略同一である。本例においては鈍角側内壁部327との間で成す角度が129.0°であり、鈍角である。本発明者は、当接時にガイドワイヤWが自然にその進行方向と鈍角を成す側に曲がりつつ進むことを見出した。これにより、先端Tは延長線交差部326近傍に当接した後に、図の反時計廻り向きに曲がって鈍角側内壁部327に沿って摺動する。その上で、付形部325内のガイドワイヤWは全体が環状に配置されるように曲がってゆく。
【0118】
なお、
図22において、最初にスライド部316が最も左側の位置に配置されている状態の例を示したが、最初からスライド部316が少し右側に配置されていて入口通路部323が開放状態であってもよい。その場合、使用者はスライド部316をスライドすることなく、最初から先端Tを付形部325内にまで進めることができる。
【0119】
ここで、本発明者は、鋭意検討の結果、挿入されたガイドワイヤWの先端Tが延長線交差部326近傍に突き当たって鈍角側に曲がりつつ鈍角側内壁部327に沿って摺動するとき、仮に、このガイドワイヤWの内部における平板状のコアワイヤCが、その断面の長手方向とガイドワイヤ付形具311の左右方向とが略同一であり、
図2(a)のような位置にある場合でも、ガイドワイヤWがその中心軸を中心に90°回転することを見出し本発明を完成させるに至った。その回転の結果、コアワイヤCの断面の長手方向とガイドワイヤ付形具311の上下方向とが略同一となるため、ガイドワイヤWは曲がり易い。また、コアワイヤCの断面の長手方向とガイドワイヤ付形具311の左右方向とが同一でなく90°未満の角度を成している場合でも、ガイドワイヤWはその90°未満の角度回転することを見出した。そして、その回転の結果、同様にコアワイヤCの断面の長手方向とガイドワイヤ付形具311の上下方向とが略同一となるため、回転前と比べてガイドワイヤWは曲がり易い。
【0120】
こうして、ガイドワイヤ付形具311に挿入されている時のガイドワイヤWの内部におけるコアワイヤCの方向にかかわらず、当該ガイドワイヤWが延長線交差部326近傍に突き当たって鈍角側内壁部327に沿って摺動することによりガイドワイヤWは曲がり易くなるように姿勢を変えることができる。そのため、ガイドワイヤ付形装置3011によって、均一な、ガイドワイヤWの付形加工の容易さと付形の品質とを得ることができる。
【0121】
図24は、使用者がガイドワイヤWを後ろ向きに送り込み続け、先端Tが鈍角側内壁部327に沿って反時計回りに摺動しつつ、付形部325内のガイドワイヤWが全体として環状を描いてゆくところの状態を表わす。そして、延長線Cp´に対して鈍角側内壁部327の反対側に位置する鋭角側内壁部328は、延長線Cp´から遠ざかる向きである右向きに膨らんだ形状を有している。
【0122】
そのため、ガイドワイヤWの先端Tに連なる部分は、鋭角側内壁部328に接近する又は接するようにして湾曲することができる。これにより、先端Tに連なる部分が湾曲しない場合と比べて、先端Tは、鈍角側内壁部327の壁面方向に対してより浅い角度を成しつつスムーズに摺動することができる。そのため、ガイドワイヤWはより容易にその中心軸を中心に回転することができ且つより効率的に付形することができる。こうして、ガイドワイヤ付形装置3011によって、均一な、ガイドワイヤWの付形加工の容易さと付形の品質とを得ることができる。
【0123】
図25は、使用者がガイドワイヤWを送り込み続け、付形部325内において大きな環状を描いて反時計回りに曲がり、先端Tが左向きから前向きへと向きを変えながら折り返した状態を表わす。その結果、先端Tは出口部324に戻る。そして、
図20(b)と同様に先端Tは鈍角側出口部332に進入した後に閉塞部332bに突き当たって制止される。
図26は、ガイドワイヤWの挟持状態においてガイドワイヤ付形機構311の回転体33を反時計廻り向きに回転した結果、ガイドワイヤ付形具311内においてガイドワイヤWが折り返すとともに先端Tが閉側部332bに至った態様を例示する。
【0124】
また、
図25において先端Tが閉塞部332bによって制止される後に、使用者は、保持部317を手指によって下降させ、凹状部335を下向きにガイドワイヤWに押し付けることにより保持部317の下端部334と第1の本体部314との間においてガイドワイヤWを保持する。このように、保持部317を下降させ始めてから、後述する
図33のようにガイドワイヤWの付形が完了するまでの工程を引出し工程S130とよぶ。
【0125】
この引出し工程S130においては、ガイドワイヤWの先端T及びその付近を含む左側ガイドワイヤWlが保持部317によって下向きに押し付けられて保持されている。その状態で、使用者はガイドワイヤ付形機構311の回転体33を平面視時計向きに回転させてガイドワイヤWを前向きに引っ張り、入口通路部323を前進させる。これにより、
図25のように付形部325内部に環状に配置されているガイドワイヤWの一部が鋭角側出口部333を経て付形部325から排出される。このとき、右側ガイドワイヤWrは押し付けられていないため前向きに自在に移動することができる。そして、付形部325内部にとどまるガイドワイヤWの残部は、環状の周囲が小さくなることに伴って環状の径が小さくなるように付形される。
【0126】
こうして、ガイドワイヤ付形具311の使用者は、最初にガイドワイヤWを送り込みその先端Tが鈍角側内壁部327に沿って摺動して出口部324に到達したのち、逆に、ガイドワイヤWを部分的に付形部325から引き出す。そして、付形部325内部のガイドワイヤWの環径を縮小させることによりガイドワイヤWを環状に付形することができる。このとき、保持部317が左側ガイドワイヤWlを保持することにより、先端Tの位置を確実に固定することができ、また、左側ガイドワイヤWlが片側部分の鈍角側出口部332において保持されることにより、引き出そうとする側の右側ガイドワイヤWrをもう片側部分の鋭角側出口部333に通すことができる。そのため、より効率的にガイドワイヤWの環径を縮小して付形加工を行うことが可能となる。
【0127】
また、使用者は、ガイドワイヤWを付形部325から引き出し始めるとともに、手指によりスライド部316を右向きに押してレール部321を摺動させるように右側にスライドする。
【0128】
図27は、付形部325内部にとどまるガイドワイヤWの残部の環径が次第に縮小される過程の状態を示す。
図28は、
図27のうち出口部324及びガイドワイヤWの環状部分の付近を拡大した拡大平面図である。鈍角側出口332における右向きの内壁である鈍角側出口対向部341と、鋭角側出口333における左向きの内壁である鋭角側出口対向部342とは左右方向に対向する。そして、鋭角側内壁部328のうち鋭角側出口対向部342と隣り合う一部分を鋭角側出口隣接部343とよぶ。鋭角側出口隣接部343は後側ほど右側に位置するような斜面を形成している。これらの鋭角側出口対向部342と鋭角側出口隣接部343とは、スライド316の一部を構成する。すなわち、鋭角側出口対向部342と鋭角側出口隣接部343とを含むスライド316が第1の本体部314に対する入れ子を形成している。
図29は、鈍角側出口対向部341と鋭角側出口対向部342とを見易くするための、保持部317とガイドワイヤWとを表わさない状態の図である。
【0129】
図27及び
図28のようにスライド部316が右側にスライドすることにより、スライドした分の距離だけ、鋭角側出口対向部342及び鋭角側出口隣接部343は右向きに移動する。これにより、鈍角側出口対向部341と鋭角側出口対向部342との間隔が左右方向に拡がり、また、鈍角側内壁部327と鋭角側出口隣接部343との間隔が左右方向に拡がる。そのため、鋭角側出口対向部342及び鋭角側出口隣接部343が右向きに移動しなかった場合と比べて、右側ガイドワイヤWrは右側に位置する。こうして、ガイドワイヤWの環状部分は広がることができ、その曲率は移動しなかった場合よりも大きい。
【0130】
図30は、使用者が
図27及び
図28の状態よりもさらにガイドワイヤWを前向きに引き出し、かつ、スライド部316を右向きに押してレール部321を摺動させるようにさらにスライドした状態を示す。
図31は、
図28と同様に
図30のうち出口部324及びガイドワイヤWの環状部分の付近を拡大した拡大平面図である。これらのように、引出し工程S130のうち、鈍角側出口対向部341と鋭角側出口対向部342との間隔及び鈍角側内壁部327と鋭角側出口隣接部343との間隔を拡げるステップを拡張ステップS131とよぶ。
【0131】
このように、スライド部316がさらに右側にスライドすることにより、スライドした距離が長い分だけ、鋭角側出口対向部342及び鋭角側出口隣接部343はさらに右向きに移動する。これにより、鈍角側出口対向部341と鋭角側出口対向部342との間隔がさらに左右方向に拡がり、また、鈍角側内壁部327と鋭角側出口隣接部343との間隔がさらに左右方向に拡がる。そのため、尚更にガイドワイヤWの環状部分の曲率は、移動しなかった場合よりも大きい。
【0132】
ところで、ガイドワイヤWをJ字状に折り返す付形加工を行うときは、折り返す際に曲げるために加えられた力が大き過ぎれば、塑性変形後に残る特定の向きの応力が大きい。これにより、ガイドワイヤWを後述する取外し工程においてガイドワイヤ付形具311から外した後に折り返した部分が首を垂れるように曲がってしまう状態に至る場合がある。すなわち、鈍角を成す側に曲がりつつ先端Tが鈍角側内壁部327に沿って折り返して付形されるガイドワイヤWについて、折り返し部分ごと、その折り返した向きにさらに湾曲してしまう状態が生じる。このように、折り返し部分ごとさらに湾曲する状態の一例を
図32(a)に表わす。なお、こうした塑性変形による特定の向きの応力が過度に残存する状態を「扱き(しごき)」が加えられた状態ともいう。
【0133】
特に、ガイドワイヤWの環径を縮小して付形加工するとき、鈍角側出口対向部341と鋭角側出口対向部342との間隔及び鈍角側内壁部327と鋭角側内壁部328との間隔が狭いと、送られるガイドワイヤWの環状部分の曲率が小さい。そのため、ガイドワイヤWは、こうした曲率が小さい状態で送られることによって強い扱きが加えられてしまう。その結果、ガイドワイヤの折り返し部分は、
図32(a)のように図の上向きに不必要に曲がってしまいがちである。
【0134】
これに対して、本発明のガイドワイヤ付形具311は、スライド部316をスライドし、鈍角側出口対向部341と、スライド部316の一部を成す鋭角側出口対向部342との間隔、および、鈍角側内壁部327と、スライド部316の一部を成す鋭角側出口隣接部343との間隔を拡げることにより、送られている状態のガイドワイヤWを緩やかな曲線を描くように付形することができ、その結果、前記の折り返される部分の曲率を大きくすることができる。これにより、ガイドワイヤWに加えられる扱きを緩和することができ、
図32(a)のように、折り返した部分が首を垂れるように曲がってしまう状態を避けることができる。
【0135】
また、本発明のガイドワイヤ付形具311は、スライド部316がレール部321に沿ってスライド可能なため、これらの間隔を自在に変更することができる。これにより、前記の折り返される部分の曲率を調整することができ、使用者の希望に従って、折り返した部分の曲がり具合又は反り返し具合を程よく調整することができる。ここでいう反り返しとは、
図32(b)が示す例のように、ガイドワイヤの折り返し部分が図の下向きに反り返す状態を指す。この反り返しは、ガイドワイヤWが引っ張られて付形部325から入口通路部323に吸い込まれるとき、付形部325内と逆に環状の外向きに曲がる際の扱きによって生じる。この箇所を
図31における符号Nにより例示する。以上により、本発明のガイドワイヤ付形具31はより容易に希望する形状に付形することが可能となる。
【0136】
図33は、ガイドワイヤWの引出しを経てその付形が完了した状態を示す。この状態に至るまでの工程が引出し工程S130である。付形の完了後に、作業者は保持部317を上昇させて、ガイドワイヤWに対する押し付けによるガイドワイヤWの保持を止める。その上で、作業者は蝶番を開く、ボルト及びナットを外すなどによって第1の本体部314と第2の本体部315との接合を解除する。これにより、第1の分割面314aを露出させて作業者は付形後のガイドワイヤWをガイドワイヤ付形具311から取り外す。これとともに、作業者はガイドワイヤ付形機構31の蓋体36を開き、クランプ板35aを時計廻り向きに回転させてクランプ部35による挟持状態を解除した後にガイドワイヤWを各溝部34,38,39から持ち上げる。これにより、ガイドワイヤWをガイドワイヤ支持機構31から取り外す。これらのように、引出し工程S130の後、保持部317を上昇させてからガイドワイヤWをガイドワイヤ付形装置3011から取り外すまでの工程を取外し工程S140とよぶ。
【0137】
このように、ガイドワイヤ付形具311において付形具本体313が第1の本体部314と第2の本体部315とに分割されこれらを自在に接合し、また、接合を解除することができるため、使用者は、付形後のガイドワイヤWを容易にガイドワイヤ付形具311から取り外すことができる。そして、次に別のガイドワイヤWを付形するために、各本体部314、315同士を再度接合することができる。また、ガイドワイヤWの取外しだけのためでなく、入口通路部323、付形部325などに対して清掃、保守等を行うときなどにも各分割面314a,315a同士が離れるように露出させて容易に作業することができる。
【0138】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態を、
図35を用いて例示する。
図35の正面図において41はガイドワイヤ支持機構である。このガイドワイヤ支持機構41は、本発明の第4の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置4011が備えるガイドワイヤ支持機構である。ガイドワイヤ支持機構41及びガイドワイヤ付形具411を含むガイドワイヤ付形装置4011の構成は、特に記載しない限り、第3の実施形態におけるガイドワイヤ付形装置3011の構成と共通する。ガイドワイヤ支持機構41は、本体42と、本体42の上側を覆うことができる蓋体46とを有する。本体42は、第1の実施形態に係る本体12、第2の実施形態に係る本体22又は第3の実施形態に係る本体32に相当する第1本体42Aと、第1本体42Aと一体的に形成され且つ第1本体42Aの下側に配置される直方体状の第2本体42Bとによって構成される。第1本体42Aに回転体装着スペース42bが設けられ、回転体装着スペース42bの内側に回転体43が装着される。なお、第1本体42Aと第2本体42Bとは別体に形成されるとともに上下に接合された状態で使用されてもよい。
【0139】
回転体43は、軸心C1に沿って配置される上下方向の柱状の回転軸47aと接合されている。回転軸47aは第1本体42Aを上下方向に貫通している。また、回転軸47aは駆動部47の一部を構成している。駆動部47は第2本体42Bの内部に収められている。この駆動部47は、回転軸47aの他に、回転軸47aを軸心C1を中心にして平面視における時計廻り向き又は反時計廻り向きに回転させることができる駆動装置47bを有する。駆動装置47bは、電動モーターと、その停止又は回転、正転又は逆転などを制御することができる制御手段とを備えている。また、この制御手段は、電動モーターの回転速度を制御してもよい。
【0140】
その他の構成は、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態と共通する。
【0141】
このような構成により、ガイドワイヤ支持機構41は、駆動装置47bの停止又は回転及び正転又は逆転によって、使用者の手動によらずに先端Tを含むガイドワイヤWの移動の停止、前進及び後退を操作することができる。そのため、ガイドワイヤ支持機構41は、使用者が容易にガイドワイヤWの付形のための作業を行うことができる。また、駆動部47を自動に運転させることによって、ガイドワイヤWの付形のための一連の動作を自動化させることもできる。
【0142】
また、図示しないが、ガイドワイヤ付形装置4011は、ガイドワイヤ付形具411が備えるスライド部416の左右方向における移動、および、同じく保持部417の上昇及び下降のための駆動装置を有するとともに、これらを制御するための制御手段を有してもよい。これにより、準備工程S110~取外し工程S140における、予定された回転体43の正逆両向きの回転、スライド部416の左右両向きの移動、保持部416の上下動などの操作を行い、また、自動的に制御してもよい。
【0143】
さらに、クランプ板45aを正逆両向きに回転させるための駆動装置及び制御手段を有してもよい。
【0144】
なお、
図35において、第2本体42Bがガイドワイヤ支持機構41の本体42の一部として備えられている態様を例示したが、第2本体42Bをガイドワイヤ支持機構41の内部だけに収めなくともよい。例えば、駆動装置をガイドワイヤ支持機構41及びガイドワイヤ付形具411の共通の架台に組み込んで、その駆動装置が回転軸47aなどを動かすように、ガイドワイヤ付形装置4011全体をレイアウトしてもよい。
【0145】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態を、
図36~
図39を用いて例示する。
図36(a)(b)において5011はガイドワイヤ付形装置である。ガイドワイヤ付形装置5011は、第3の実施形態及び第4の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置におけるガイドワイヤ支持機構とガイドワイヤ付形具とが前後方向に且つ一体的に連ねられた構成を有する。そして、第3の実施形態及び第4の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置におけるガイドワイヤ支持機構の第2の溝部に相当する構成と、ガイドワイヤ付形具の入口通路部に相当する構成とが一体化して、これら構成全体を本実施形態においては第2の溝部と称して、図面において符号59を付して示す。また、これらが一体化することにより、第3の実施形態及び第4の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置における進退口及び開口部が設けられることなく、ガイドワイヤWは第1の溝部から付形部に至るまで第2の溝部の内部を通過する。第2の溝部59は第1の溝部54から見て最も奥に位置する出口部524を有する。すなわち、出口部524は第2の溝部59のうち最も後側に位置する。
【0146】
ガイドワイヤ付形装置5011は、本体52及び回転体53を有し、また、本体52及び回転体53を上方から覆う蓋体56を有する。蓋体56が透明の樹脂によって形成されるため、
図36(a)の平面図は、蓋体56の閉状態であり且つ平面視において蓋体56の下側の構成が透けて見えている状態を表わす。蓋体56は、上下方向に持ち上げること、一辺が持ち上がるように回転することなどによって自在に開閉させることができる。そして、蓋体56の開状態においては、本体52及び回転体53を上向きに露出させることができる。なお、ガイドワイヤ付形装置5011は、使用者が上方から目視せずとも精度良くガイドワイヤWを移動及び付形することができれば、蓋体56が不透明であってもよい。
【0147】
本体52は略直方体であり、かつ、この略直方体の一部を占めるようにして天面52aに回転体装着スペース52bが凹設された形状を有する。回転体装着スペース52bの内側に回転体53が装着される。回転体53は上向きの端面53aを有し、この端面が平面視において軸心C1を中心とする円弧状の周縁53bを有する。また、回転体53には周縁53bに沿って上向きに開口する第1の溝部54が形成される。さらに、端面53aには上向きに開口する第3の溝部58が凹設される。そして、回転体53は、第3の溝部58内においてガイドワイヤWをその径方向に挟むことができるクランプ部55を備えている。
【0148】
本体52は、上向きに開口するように天面52aに凹設され、かつ、周縁53bから、軸心C1を中心にした周縁53bの時計の3時の位置において後ろ向きに枝分かれする第2の溝部59を有する。また、本体52の天面52aには、第2の溝部59の後端から連続するように、上向きに開口する偏平状の空間である付形部525が凹設される。第2の溝部59と付形部525とは連通する。そして、順に、第3の溝部58、第1の溝部54、第2の溝部59及び付形部525が連通することにより、1本のガイドワイヤWがこれらの溝部・付形部54,58,59,525内に配置される。また、クランプ55によるガイドワイヤWの挟持状態の下で回転体53を回転又は逆転させることにより、ガイドワイヤWは第2の溝部59及び付形部525を前後に進むことができる。
【0149】
第2の溝部59の中心線Cpは、その延長線Cp´が付形部525の内壁525aと交差する。こうして交差する部分の内壁525aを延長線交差部526とよぶ。また、延長線Cp´は内壁525aと直交するのでなく、延長線交差部526において鈍角を成して交差する。そして、延長線Cp´は延長線交差部526よりも左側の内壁525aと鈍角を成す。また、それと同時に延長線Cp´は延長線交差部526よりも右側の内壁525aと鋭角を成す。これら内壁525aのうち、出口部524から前記の左側を通って延長線交差部526に至る内壁525aであって延長線Cp´と鈍角を成して交差する内壁525aを鈍角側内壁部527とよぶ。また、出口部524から前記の右側を通って延長線交差部526に至る内壁525aであって延長線Cp´と鋭角を成して交差する内壁525aを鋭角側内壁部328とよぶ。
【0150】
図36(b)はガイドワイヤ付形装置5011の正面図を示す。本体52は、ガイドワイヤ付形装置5011の前端から後端まで及んでおり、その後側部分は、第3及び第4の実施形態におけるガイドワイヤ付形具の第1の本体部に相当する。そして、本体52の天面52aの後側部分は、第3及び第4の実施形態におけるガイドワイヤ付形具の第1の分割面に相当する。また、蓋体56は、ガイドワイヤ付形装置5011の前端から後端まで及んでおり、その後側部分は、第3及び第4の実施形態におけるガイドワイヤ付形具の第2の本体部に相当する。そして、蓋体56の内側面56aの後側部分は、第3及び第4の実施形態におけるガイドワイヤ付形具の第2の分割面に相当する。これら天面52a及び内側面56aはそれぞれ水平方向に形成され、蓋体56の閉状態においてお互いに上下方向に密着する。そして、蓋体56は閉状態において上方から回転体装置スペース52b、回転体53、付形部525などを覆うことができる。
【0151】
図37(a)は
図36(a)に指示されているD-D断面の部分図を示す。この図には偏平状の空洞である付形部525の断面の一部が表わされている。また、
図37(b)は
図36(a)に指示されているE-E断面の部分図を示す。この図には第2の溝部59の断面が表わされている。付形部525及び第2の溝部59の深さがそれぞれガイドワイヤWの直径よりも大きいため、蓋体56の内側面56aがガイドワイヤWに干渉することがない。
【0152】
蓋体56が各溝部54,58,59だけでなく、付形部525をも覆うため、準備工程S110においては、蓋体56を閉じることにより、一度にこれら各溝部及び付形部54,58,59,525を密閉することができる。また、取外し工程S140においては、蓋体56を開け且つクランプ部55による挟持状態を解除することにより、ガイドワイヤW全体を各溝部及び付形部54,58,59,525から持ち上げることができる。
【0153】
その他の構成は、第1~第4の実施形態に係るガイドワイヤ支持機構並びに第3及び第4の実施形態に係るガイドワイヤ付形装置の構成と共通する。
【0154】
以上の構成により、ガイドワイヤ付形装置5011は、溝部54,58,59に遊嵌するガイドワイヤWをクランプ部55によって挟持しつつ、回転体53によって、クランプ部55、第1の溝部54及び第3の溝部58ごと回転させる構造を有する。こうして、ガイドワイヤWをこの溝部54,58,59内及び付形部525内に留めた上で、一部がクランプ部55によって挟まれているガイドワイヤW全体を回転体の回転に伴って移動及び付形することができる。その結果、ガイドワイヤ付形装置5011は、使用者がガイドワイヤWを付形部525において付形させる上で、意図しない部分を変形させる可能性が低い。
【0155】
また、ガイドワイヤWの留まる部分が天面52aに凹設される溝部54,58,59又は付形部525であるため、クランプ部55による挟持を止めることによって、ガイドワイヤWは溝部54,58,59及び付形部525から取り外し、ガイドワイヤ付形装置5011から離脱させることが可能である。そのため、付形後のガイドワイヤWを取り出す時に意図しない部分を変形させてしまう可能性は低い。
【0156】
また、第2の溝部59が回転体53の周縁53bから連通して枝分かれする。そのため、ガイドワイヤWは第1の溝部54と第2の溝部59との間を往き来することができる。そして、ガイドワイヤWは第2の溝部59を経由して、第2の溝部59と連通する付形部525に至るまで引っ掛かりなく前後に進むことができる。
【0157】
このとき、元々の略直線状の形状を維持しようとして第1の溝部54の外側側壁54cに摺動して進んでいたガイドワイヤWの先端Tは、涙滴状の前側端の左側に逸れて進むことが少ない。また、このとき、第2の溝部59が径方向外向きに枝分かれし且つ第1の溝部54の外側側壁54cと第2の溝部59の内壁である右側側壁59bとが連続するため、元々の直線状の形状を維持しようとして第1の溝部54の外側側壁54cに摺動して進んだガイドワイヤの先端は、途中でギャップなどを経ることなく第2の溝部59に進入することができる。このようにして、ガイドワイヤ付形装置5011は、その内部のガイドワイヤWが周りから受ける力を抑えることができ、意図しない部分の変形を生じることが少ない。
【0158】
図38の平面図及び
図39の正面図は、ガイドワイヤ付形装置5011の異なる形態を例示する。
図38及び
図39に示すガイドワイヤ付形装置5011のスライド516は、
図36に例示した形態のような、その右側の一部が本体52の右側面から右方へ飛び出す形態でなく、スライド516の全体が平面視において天面52aの内側に収まる形態である。また、保持部517は、
図13(b)に例示した形態のような、その上側の一部が蓋体56の上面から上方へ飛び出す形態でなく、保持部517の全体が本体52及び蓋体56の内側に収まる形態である。この場合、蓋体56の一部に空洞を設けて、保持部517の一部をその空洞に収めてもよい。なお、保持部517は、全体が略四角柱状に形成されてなくともよく、前後方向の部分円柱状に形成される凹状部を配置することができれば、例えば略円柱状に形成されてもよい。
【0159】
図39に示す本体52には、複数の駆動装置57b,57c,57dが内蔵されている。第一の駆動装置57bは回転軸57aを介して回転体53を回転させる。第二の駆動装置57cはスライド516を左右方向に移動させる。また、第三の駆動装置57dは保持部517を上下方向に移動させる。これらの回転軸・駆動装置57a~57dは駆動部57の一部を構成する。また、駆動部57が制御手段を備えている。これらにより、電動モーターの停止又は回転、正転又は逆転などが可能である。また、スライド516が天面52aの内側に収まり且つ蓋体56を閉じた状態であっても、駆動装置57cを用いることによってスライド516を左右方向に移動させることができる。さらに、保持部517が本体52及び蓋体56の内側に収まり且つ蓋体56を閉じた状態であっても、駆動装置57dを用いることによって保持部517を上下方向に移動させることができる。そして、使用者の手動によらずにガイドワイヤWの停止、前進、後退、変形等のための操作及び制御を行うことができる。
【0160】
以上の構成により、ガイドワイヤ付形装置5011を自動に運転させることができる。また、ガイドワイヤWの付形のための一連の動作を自動化させることも可能である。
【0161】
以上、本発明の実施形態について例示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0162】
例えば、ガイドワイヤ付形具の第1の本体部又はガイドワイヤ支持機構若しくはガイドワイヤ付形装置の本体及び回転体の材質は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール樹脂又はこれら以外のエンジニアリングプラスチックでもよく、また、必要な耐薬品性、強度、寸法精度などを備えていれば、エンジニアリングプラスチック以外の合成樹脂でもよい。また、ガイドワイヤ付形具の第2の本体部又はガイドワイヤ支持機構若しくはガイドワイヤ付形装置の蓋体の材質は、アクリル樹脂、ポリカーボネート又はこれら以外の透明な合成樹脂でもよく、また、操作のために上方から観察する必要のない場合に不透明な合成樹脂でもよい。
【0163】
また、必要に応じてガイドワイヤ付形具、ガイドワイヤ支持機構及びガイドワイヤ付形装置の一部が金属により形成されてもよい。すなわち、先述のスライド部及び保持部以外の部分についても金属により形成されてもよい。
【0164】
また、ガイドワイヤ付形具の第2の本体部又はガイドワイヤ支持機構若しくはガイドワイヤ付形装置の蓋体は、それぞれ第1の本体部又は本体に対して、蝶番又はボルト及びナットによって接合されるだけでなく、必要に応じて第2の本体部又は蓋体を持ち上げることができれば、これら以外の係着手段によって接合されてもよい。
【0165】
また、クランプ板の付勢手段は圧縮コイルばねでなくともよく、ガイドワイヤの挟持状態を保持することができれば、引張ばね、ねじりばねなどのばねでもよい。また、クランプ板を付勢するのではなく、例えば、電磁石の動作によりクランプ板を回動させることによってガイドワイヤの挟持状態を保持してもよい。
【0166】
また、ガイドワイヤは、回転体の軸心と平行な軸中心を中心として回動するクランプ板以外の手段によって挟まれてもよく、例えば、上下動が可能な押さえ部材と回転体との間で挟まれることによって挟持されてもよい。このような場合、ガイドワイヤを挟むための第3の溝部を設ける必要がなく、例えば、押さえ部材が第1の溝部内に遊嵌された部分のガイドワイヤを挟んでもよい。また、このようなとき、回転体に第3の溝部を設けることなく、第1の溝部が回転体の周縁全体に沿うようにして形成されていてもよい。
【0167】
また、上記の例においては保持部がガイドワイヤ付形具又はガイドワイヤ付形装置の上側から下向きに嵌入される実施形態を示したが、他の構成と干渉しない限りにおいて、保持部はガイドワイヤ付形具の下側から上向きに嵌入されてもよい。そして、準備工程S110において、これに合った第1の本体部及び第2の本体部又は本体及び蓋体並びに保持部を準備してもよい。
図40は、例えば上記の第3の実施形態に係るガイドワイヤ付形具311に代わり、異なる態様のガイドワイヤ付形具311´を採用する場合の正面図を表わす。このガイドワイヤ付形具311´において、保持部317´は、その上側の一部が第1の本体部314´を上下方向に貫通する孔314b´に嵌入される。この保持部317´は、孔314b´に沿って上昇することにより、先端Tとその付近のガイドワイヤWを下側から上向きに押すことができる。このとき、先端Tとその付近のガイドワイヤWは第2の本体部315´によって上から支えられているため、保持部317´によって本体に押し付けらえて保持される状態となる。
【0168】
また、ガイドワイヤ支持機構又はガイドワイヤ付形装置が駆動装置を備える場合、電動モーター又は制御手段は本体に収められていなくともよく、電動モーターの動力を適切に回転軸に伝達することができ、また、電動モーターを適切に遠隔制御することができれば、例えば本体の外側において設置していてもよい。
【0169】
さらに、ガイドワイヤ支持機構又はガイドワイヤ付形装置が駆動装置を備える場合、駆動装置は電動モーター以外の動力源を有していてもよく、回転体に必要な回転力を与えることができれば、例えば、空気圧によって駆動するアクチュエーターでもよい。
【0170】
また、ガイドワイヤを移動させ又は付形する上で波を立てる、飛び出して湾曲するなどの虞がないときは、ガイドワイヤ支持機構、ガイドワイヤ付形具又はガイドワイヤ付形装置が蓋体又は第1の本体部を有していなくともよい。
【0171】
また、引出し工程S130において、
図33の状態を経た後においても、スライド部のスライドによる往復動を繰り返す、または、ガイドワイヤWの送込みと引出しとを繰り返してもよく、しかも、これらを共に行ってもよい。このときに、スライド部の左端部がガイドワイヤWの折り返し部分を左向きに押すことができ、使用者は、この折り返し部分を僅かずつに変形させることによって希望に合わせて形状を微細に調整することができる。さらに、駆動部及び制御手段によって、これら調整のための操作及び制御を行い、また、半自動又は自動で行ってもよい。
【0172】
また、ガイドワイヤ付形装置の付形部は図に例示した形状に形成される以外に、使用者の好み、付形時のガイドワイヤの曲がり方などに合うように、これ以外の形状に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、カテーテルイントロデューサなどの血管への挿入及び留置を容易にするための柔軟性のあるワイヤ状の器具であるガイドワイヤを付形する際に用いるガイドワイヤ支持機構、ガイドワイヤ付形装置又はガイドワイヤ付形方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0174】
11,21,31,41 ガイドワイヤ支持機構
12,22,32,42,52 本体
12a,22a,52a 天面
12b,22b,42b,52b 回転体装着スペース
13,23,33,43,53 回転体
13a,23a,53a 端面
13b,23b,53b 周縁
14,24,34,54 第1の溝部
14b,24b 内側側壁
14c,24c 外側側壁
15,25,35,55 クランプ部
15a,35a クランプ板
16,26,36,46,56 蓋体
17a,47a,57a 回転軸
18,28,38,58 第3の溝部
29,39,59 第2の溝部
29a 左側側壁
29b 右側側壁
42A 第1本体
42B 第2本体
47,57 駆動部
311,311´ ガイドワイヤ付形具
313 付形具本体
314,314´ 第1の本体部
314a 第1の分割面
314b´ 孔
315,315´ 第2の本体部
315a 第2の分割面
315b 孔
316 スライド部
316a 側面
316b 底面
317,317´ 保持部
321 レール部
321a 側壁
321b 底壁
322 開口部
323 入口通路部
324 出口部
325 付形部
325a 内壁
326 延長線交差部
327 鈍角側内壁部
328 鋭角側内壁部
331 後端部
331a 制止面
331b 背面
332 鈍角側出口部
332a 内壁
332b 閉塞部
333 鋭角側出口部
334 下端部
335 凹状部
341 鈍角側出口対向部
342 鋭角側出口対向部
343 鋭角側出口隣接部
3011,4011,5011 ガイドワイヤ付形装置
S100 ガイドワイヤ付形方法
S110 準備工程
S120 送込み工程
S130 引出し工程
S131 拡張ステップ
S140 取外し工程
C コアガイド
Cp 第2の溝部の中心線、入口通路部の中心線
Cp´ 第2の溝部の中心線の延長線、入口通路部の中心線の延長線
T 先端
W ガイドワイヤ
Wl 左側ガイドワイヤ
Wr 右側ガイドワイヤ
Ws 周面