(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020026
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】複合酸化物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20250131BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
C01G25/00
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117903
(22)【出願日】2024-07-23
(31)【優先権主張番号】P 2023123839
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 覚史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慶徳
【テーマコード(参考)】
4D148
4G048
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA13
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4D148EA04
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE06
(57)【要約】
【課題】本発明は、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物であって、OSCが向上した複合酸化物及び該複合酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物であって、COパルス法で測定されるCeO2 1gあたりの400℃におけるOSC量が1470μmol/g以上である、前記複合酸化物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物であって、
COパルス法で測定されるCeO2 1gあたりの400℃におけるOSC量が1470μmol/g以上である、前記複合酸化物。
【請求項2】
以下の工程:
(1a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子と、場合によりセリウム塩以外の希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(1b)前記原料液に沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(1c)前記原料液から前記沈殿物を分離し、前記沈殿物を含むケーキを得る工程;及び
(1d)前記ケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む、複合酸化物の製造方法であって、
前記アルミニウム化合物粒子が、アルミナ粒子及びアルミナ水和物粒子から選択され、
動的光散乱法により測定される前記アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50が1nm以上500nm以下である、前記製造方法。
【請求項3】
工程(1a)において、前記原料液中の前記アルミニウム化合物粒子の量に対する、前記原料液中の前記水溶性高分子の量の百分率が、0.1質量%以上である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
以下の工程:
(2a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合によりセリウム塩以外の希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(2b)前記原料液にカチオン性又は非イオン性の水溶性高分子及び沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(2c)前記原料液から前記沈殿物を分離し、前記沈殿物を含むケーキを得る工程;及び
(2d)前記ケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む、複合酸化物の製造方法であって、
工程(2b)において、前記水溶性高分子を、前記沈殿物が形成される前に前記原料液に添加し、
前記アルミニウム化合物粒子が、アルミナ粒子及びアルミナ水和物粒子から選択され、
動的光散乱法により測定される前記アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50が1nm以上500nm以下である、前記製造方法。
【請求項5】
工程(2b)において、前記原料液中の前記アルミニウム化合物粒子の量に対する、前記原料液に添加される前記水溶性高分子の量の百分率が、0.1質量%以上である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記カチオン性の水溶性高分子が、第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位を有し、前記繰り返し単位の分子量が180以上である、請求項2~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記繰り返し単位の重量平均重合度が20以上である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
以下の工程:
(3a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合によりセリウム塩以外の希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(3b)前記原料液に沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(3c)前記原料液から前記沈殿物を分離し、前記沈殿物を含むケーキを得る工程;
(3d)前記ケーキとアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子とを溶媒中で混合し、前記水溶性高分子を含むスラリーを得る工程;
(3e)前記スラリーを蒸発乾固させ、乾固物を得る工程;及び
(3f)前記乾固物を焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む、複合酸化物の製造方法であって、
前記アルミニウム化合物粒子が、アルミナ粒子及びアルミナ水和物粒子から選択され、
動的光散乱法により測定される前記アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50が1nm以上500nm以下である、前記製造方法。
【請求項9】
工程(3d)において、前記ケーキの固形分の量に対する、前記ケーキと混合される前記水溶性高分子の量の百分率が、5質量%以上である、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合酸化物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する排ガス浄化用触媒として、HC及びCOを酸化して水及び二酸化炭素に変換するとともに、NOxを還元して窒素に変換する触媒活性を有する三元触媒が使用されている。
【0003】
排ガス中の酸素濃度の変動を緩和してHC、CO、NOx等を効率よく浄化するために、三元触媒の構成材料として、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する材料(以下「OSC材料」という場合がある。)が使用されている。
【0004】
セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物がOSC材料として知られている(例えば特許文献1)。
【0005】
特許文献1には、複合酸化物の作製において、動的光散乱法により測定されるメジアン径D50が1nm以上220nm以下であるアルミニウム化合物粒子を使用することにより、複合酸化物の耐熱性を向上させることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2022/137910号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の排ガス浄化性能への要求の高まりから、OSC材料の性能の向上が求められている。
【0008】
本発明は、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物であって、OSC(特に、高温環境に曝露された後のOSC)が向上した複合酸化物及び該複合酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物であって、
COパルス法で測定されるCeO2 1gあたりの400℃におけるOSC量が1470μmol/g以上である、前記複合酸化物。
[2]以下の工程:
(1a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子と、場合によりセリウム塩以外の希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(1b)前記原料液に沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(1c)前記原料液から前記沈殿物を分離し、前記沈殿物を含むケーキを得る工程;及び
(1d)前記ケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む、複合酸化物の製造方法であって、
前記アルミニウム化合物粒子が、アルミナ粒子及びアルミナ水和物粒子から選択され、
動的光散乱法により測定される前記アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50が1nm以上500nm以下である、前記製造方法。
[3]工程(1a)において、前記原料液中の前記アルミニウム化合物粒子の量に対する、前記原料液中の前記水溶性高分子の量の百分率が、0.1質量%以上である、[2]に記載の製造方法。
[4]以下の工程:
(2a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合によりセリウム塩以外の希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(2b)前記原料液にカチオン性又は非イオン性の水溶性高分子及び沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(2c)前記原料液から前記沈殿物を分離し、前記沈殿物を含むケーキを得る工程;及び
(2d)前記ケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む、複合酸化物の製造方法であって、
工程(2b)において、前記水溶性高分子を、前記沈殿物が形成される前に前記原料液に添加し、
前記アルミニウム化合物粒子が、アルミナ粒子及びアルミナ水和物粒子から選択され、
動的光散乱法により測定される前記アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50が1nm以上500nm以下である、前記製造方法。
[5]工程(2b)において、前記原料液中の前記アルミニウム化合物粒子の量に対する、前記原料液に添加される前記水溶性高分子の量の百分率が、0.1質量%以上である、[4]に記載の製造方法。
[6]前記カチオン性の水溶性高分子が、第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位を有し、前記繰り返し単位の分子量が180以上である、[2]~[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7]前記繰り返し単位の重量平均重合度が20以上である、[6]に記載の製造方法。
[8]以下の工程:
(3a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合によりセリウム塩以外の希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(3b)前記原料液に沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(3c)前記原料液から前記沈殿物を分離し、前記沈殿物を含むケーキを得る工程;
(3d)前記ケーキとアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子とを溶媒中で混合し、前記水溶性高分子を含むスラリーを得る工程;
(3e)前記スラリーを蒸発乾固させ、乾固物を得る工程;及び
(3f)前記乾固物を焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む、複合酸化物の製造方法であって、
前記アルミニウム化合物粒子が、アルミナ粒子及びアルミナ水和物粒子から選択され、
動的光散乱法により測定される前記アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50が1nm以上500nm以下である、前記製造方法。
[9]工程(3d)において、前記ケーキの固形分の量に対する、前記ケーキと混合される前記水溶性高分子の量の百分率が、5質量%以上である、[8]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物であって、OSC(特に、高温環境に曝露された後のOSC)が向上した複合酸化物及び該複合酸化物の製造方法が提供される。本明細書において、「高温」は、好ましくは800℃以上、さらに好ましくは900℃以上、さらに一層好ましくは1000℃以上の温度を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について説明する。
【0012】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で使用される用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書の全体に適用される。
【0013】
<希土類金属元素>
希土類金属元素は、別段規定される場合を除き、セリウム元素以外の希土類金属元素を意味する。
【0014】
<希土類金属イオン>
希土類金属イオンは、別段規定される場合を除き、セリウムイオン以外の希土類金属イオンを意味する。
【0015】
<希土類金属塩>
希土類金属塩は、別段規定される場合を除き、セリウム塩以外の希土類金属塩を意味する。
【0016】
<酸化物>
酸化セリウムはCeO2を、酸化ジルコニウムはZrO2を、酸化アルミニウムはAl2O3を、希土類金属元素の酸化物は、プラセオジム酸化物及びテルビウム酸化物を除いてセスキ酸化物(M2O3、Mは、セリウム元素、プラセオジム元素及びテルビウム元素以外の希土類金属元素を表す)を、酸化プラセオジムはPr6O11を、酸化テルビウムはTb4O7を意味する。
【0017】
<水溶性塩>
20℃の水に対する水溶性塩の溶解度(20℃の水100gに溶解可能な水溶性塩の質量)は、好ましくは1.0g以上、さらに好ましくは2.0g以上、さらに一層好ましくは5.0g以上である。
【0018】
<水難溶性塩>
20℃の水に対する水難溶性塩の溶解度(20℃の水100gに溶解可能な水難溶性塩の質量)は、好ましくは1.0g未満、さらに好ましくは0.5g以下、さらに一層好ましくは0.1g以下である。
【0019】
<水溶性セリウム塩>
水溶性セリウム塩は、例えば、塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウム(III)、酢酸セリウム等から選択することができる。
【0020】
<水難溶性セリウム塩>
水難溶性セリウム塩は、例えば、水酸化セリウム、酸化セリウム、炭酸セリウム、硫酸セリウム(IV)等から選択することができる。原料液が酸性である場合(例えば、水溶性希土類金属塩の加水分解により酸が生じて原料液が酸性となる場合)、原料液に溶解可能である観点から、水難溶性セリウム塩は、水酸化セリウム及び炭酸セリウムから選択することが好ましく、水酸化セリウムであることがさらに好ましい。
【0021】
<水溶性ジルコニウム塩>
水溶性ジルコニウム塩は、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム等から選択することができる。
【0022】
<水難溶性ジルコニウム塩>
水難溶性ジルコニウム塩は、例えば、水酸化ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム等から選択することができる。原料液が酸性である場合(例えば、水溶性希土類金属塩の加水分解により酸が生じて原料液が酸性となる場合)、原料液に溶解可能である観点から、水難溶性ジルコニウム塩は、水酸化ジルコニウム及び塩基性炭酸ジルコニウムから選択することが好ましく、アルミニウム化合物粒子との混合性に優れている観点から、水酸化ジルコニウムであることがさらに好ましい。
【0023】
<水溶性希土類金属塩>
水溶性希土類金属塩は、別段規定される場合を除き、水溶性セリウム塩以外の水溶性希土類金属塩を意味する。水溶性希土類金属塩は、例えば、希土類金属元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等から選択することができる。希土類金属元素の硫酸塩は、好ましくは、3価の希土類金属元素の硫酸塩である。
【0024】
<水難溶性希土類金属塩>
水難溶性希土類金属塩は、別段規定される場合を除き、水難溶性セリウム塩以外の水難溶性希土類金属塩を意味する。水難溶性希土類金属塩は、例えば、希土類金属元素の水酸化物、酸化物、炭酸塩等から選択することができる。原料液が酸性である場合(例えば、水溶性希土類金属塩の加水分解により酸が生じて原料液が酸性となる場合)、原料液に溶解可能である観点から、水難溶性希土類金属塩は、希土類金属元素の水酸化物及び炭酸塩から選択することが好ましく、希土類金属元素の水酸化物であることがさらに好ましい。
【0025】
<アルミニウム化合物粒子>
アルミニウム化合物粒子は、アルミナ粒子及びアルミナ水和物粒子から選択することができる。
【0026】
アルミナ水和物粒子を構成するアルミナ水和物は、例えば、アルミナ1水和物、アルミナ3水和物等から選択することができる。
【0027】
アルミナ1水和物は、典型的には、AlO(OH)、α-Al2O3・H2O等の組成式で表される。アルミナ1水和物は、例えば、ベーマイト、ダイアスポア等から選択することができる。ベーマイトは、1分子以上の水を層間に含んだ、いわゆる擬ベーマイトであってもよい。
【0028】
アルミナ3水和物は、典型的には、Al(OH)3、Al2O3・3H2O等の組成式で表される。アルミナ3水和物は、例えば、ギブサイト(ハイドラルジライトとも呼ばれる)、バイヤライト等から選択することができる。
【0029】
<アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50>
動的光散乱法により測定されるアルミニウム化合物粒子のメジアン径D50は、動的光散乱法により測定されるアルミニウム化合物粒子の体積基準の粒度分布において、累積体積が50%となる粒径を意味する。動的光散乱法によるアルミニウム化合物粒子の体積基準の粒度分布の測定は、アルミニウム化合物粒子を1.5質量%塩酸(1.5質量%HCl水溶液)に分散させ、市販の粒度分布測定装置(例えば、Malvern Panalytical社製「ゼータサイザーナノ ZS」)を使用して実施される。すなわち、動的光散乱法により測定されるアルミニウム化合物粒子のメジアン径D50は、アルミニウム化合物粒子を1.5質量%塩酸に分散させ、動的光散乱法により測定されるアルミニウム化合物粒子のメジアン径D50を意味する。
【0030】
<水溶性高分子>
水溶性高分子は、重量平均分子量が5000以上である水溶性の有機化合物を意味する。
【0031】
20℃の水に対する水溶性高分子の溶解度(20℃の水100gに溶解可能な水溶性高分子の質量)は、好ましくは1.0g以上、さらに好ましくは2.0g以上、さらに一層好ましくは5.0g以上である。
【0032】
水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。コポリマーとしては、例えば、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等が挙げられる。
【0033】
<重量平均分子量>
水溶性高分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に使用して測定することができる。
【0034】
<重量平均重合度>
ホモポリマーの場合、繰り返し単位の重量平均重合度は、ホモポリマーの重量平均分子量を、繰り返し単位の分子量で除することにより求めることができる。コポリマーの場合、各繰り返し単位の重量平均重合度は、1H-NMRによる分析結果に基づいて求めることができる。
【0035】
<アルキル基>
アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。アルキル基の炭素数は、例えば1~10、好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4、さらに一層好ましくは1~3、さらに一層好ましくは1~2、さらに一層好ましくは1である。アルキル基が置換基を有する場合、アルキル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0036】
<シクロアルキル基>
シクロアルキル基は、単環式であってもよいし、多環式(例えば二環式)であってもよいが、単環式であることが好ましい。シクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。シクロアルキル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~6、さらに好ましくは3~4、さらに一層好ましくは4である。シクロアルキル基が置換基を有する場合、シクロアルキル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0037】
<アルケニル基>
アルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。アルケニル基の炭素数は、例えば2~10、好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、さらに一層好ましくは2~3、さらに一層好ましくは2である。アルケニル基が置換基を有する場合、アルケニル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0038】
<シクロアルケニル基>
シクロアルケニル基は、単環式であってもよいし、多環式(例えば二環式)であってもよいが、単環式であることが好ましい。シクロアルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。シクロアルケニル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~6、さらに好ましくは3~4、さらに一層好ましくは4である。シクロアルケニル基が置換基を有する場合、シクロアルケニル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0039】
<アルキニル基>
アルキニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。アルキニル基の炭素数は、例えば2~10、好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、さらに一層好ましくは2~3、さらに一層好ましくは2である。アルキニル基が置換基を有する場合、アルキニル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0040】
<シクロアルキニル基>
シクロアルキニル基は、単環式であってもよいし、多環式(例えば二環式)であってもよいが、単環式であることが好ましい。シクロアルキニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。シクロアルキニル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~6、さらに好ましくは3~4、さらに一層好ましくは4である。シクロアルキニル基が置換基を有する場合、シクロアルキニル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0041】
<アリール基>
アリール基は、例えば、単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の炭素数4~20の芳香族炭化水素環基である。多環式は、縮合環式であってもよい。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、例えば6~20、好ましくは6~14、さらに好ましくは6~12、さらに一層好ましくは6~10である。アリール基が置換基を有する場合、アリール基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0042】
<アリールアルキル基>
アリールアルキル基は、1以上のアリール基を有するアルキル基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基が有するアリール基の数は、例えば、1、2又は3である。アリールアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。
【0043】
<アリールアルケニル基>
アリールアルケニル基は、1以上のアリール基を有するアルケニル基であり、アルケニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基が有するアリール基の数は、例えば、1、2又は3である。アリールアルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。
【0044】
<アリールアルキニル基>
アリールアルキニル基は、1以上のアリール基を有するアルキニル基であり、アルキニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキニル基が有するアリール基の数は、例えば、1、2又は3である。アリールアルキニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。
【0045】
<アルキルアリール基>
アルキルアリール基は、1以上のアルキル基を有するアリール基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アルキルアリール基が有するアルキル基の数は、例えば、1、2又は3である。アルキルアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。
【0046】
<アルケニルアリール基>
アルケニルアリール基は、1以上のアルケニル基を有するアリール基であり、アルケニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アルケニルアリール基が有するアルケニル基の数は、例えば、1、2又は3である。アルケニルアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。
【0047】
<アルキニルアリール基>
アルキニルアリール基は、1以上のアルキニル基を有するアリール基であり、アルキニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アルキニルアリール基が有するアルキニル基の数は、例えば、1、2又は3である。アルキニルアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。
【0048】
<1以上の置換基>
1以上の置換基の数は、例えば1、2又は3である。
【0049】
1以上の置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ニトロ基、ニトロアルキル基、フェニル基、ハロフェニル基、フェノール基等から選択することができる。
【0050】
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択することができる。アルキル基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキル基は、1以上のハロゲン原子を有するアルキル基であり、アルキル基及びハロゲン原子に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、例えば1、2又は3である。アルキルオキシ基は、式:-O-アルキル基で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキルオキシ基は、式:-O-ハロアルキル基で表される基であり、ハロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキルチオ基は、式:-S-アルキル基で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキルチオ基は、式:-S-ハロアルキル基で表される基であり、ハロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。ハロフェニル基は、1以上のハロゲン原子を有するフェニル基であり、ハロゲン原子に関する説明は、上記の通りである。ハロフェニル基が有するハロゲン原子の数は、例えば1、2又は3である。
【0051】
1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、炭素数1~3のハロアルキルオキシ基、炭素数1~3のアルキルチオ基及び炭素数1~3のハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがさらに好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがさらに一層好ましい。
【0052】
≪複合酸化物≫
以下、本発明の複合酸化物について説明する。
【0053】
本発明の複合酸化物は、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む。
【0054】
本発明の複合酸化物の形態は、例えば、粉末状である。
【0055】
本発明の複合酸化物のOSCを向上させる観点から、本発明の複合酸化物中のセリウム元素の酸化セリウム換算の含有率は、本発明の複合酸化物の質量を基準として、好ましくは1.0質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以上40質量%以下、さらに一層好ましくは5.0質量%以上30質量%以下である。
【0056】
本発明の複合酸化物の耐熱性を向上させる観点から、本発明の複合酸化物中のジルコニウム元素の酸化ジルコニウム換算の含有率は、本発明の複合酸化物の質量を基準として、好ましくは1.0質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに一層好ましくは20質量%以上45質量%以下である。
【0057】
本発明の複合酸化物におけるOSCと耐熱性とのバランスを図る観点から、ジルコニウム元素の酸化ジルコニウム換算の含有率の、セリウム元素の酸化セリウム換算の含有率に対する比は、好ましくは0.10以上20以下、さらに好ましくは0.70以上10以下、さらに一層好ましくは1.3以上5.0以下である。
【0058】
本発明の複合酸化物の耐熱性を向上させる観点から、本発明の複合酸化物中のアルミニウム元素の酸化アルミニウム換算の含有率は、本発明の複合酸化物の質量を基準として、好ましくは20質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上80質量%以下、さらに一層好ましくは40質量%以上70質量%以下、さらに一層好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
【0059】
本発明の複合酸化物におけるOSCと耐熱性とのバランスを図る観点から、アルミニウム元素の酸化アルミニウム換算の含有率の、セリウム元素の酸化セリウム換算の含有率とジルコニウム元素の酸化ジルコニウム換算の含有率との合計に対する比は、好ましくは0.10以上9.0以下、さらに好ましくは0.50以上4.0以下、さらに一層好ましくは0.60以上2.3以下、さらに一層好ましくは0.60以上1.9以下である。
【0060】
本発明の複合酸化物は、1種、2種又は3種以上の希土類金属元素を含んでいてもよい。
【0061】
希土類金属元素は、例えば、イットリウム元素、プラセオジム元素、スカンジウム元素、ランタン元素、ネオジム元素、サマリウム元素、ユーロピウム元素、ガドリニウム元素、テルビウム元素、ジスプロシウム元素、ホルミウム元素、エルビウム元素、ツリウム元素、イッテルビウム元素、ルテチウム元素等から選択することができる。
【0062】
一実施形態において、本発明の複合酸化物は、ランタン元素、ネオジム元素、プラセオジム元素及びイットリウム元素から選択される1種、2種又は3種以上の希土類金属元素を含むことができる。
【0063】
本発明の複合酸化物のOSC及び耐熱性を向上させる観点から、本発明の複合酸化物中の希土類金属元素の酸化物換算の含有率は、本発明の複合酸化物の質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上30.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上25.0質量%以下、さらに一層好ましくは5.0質量%以上20.0質量%以下である。本発明の複合酸化物中の希土類金属元素の酸化物換算の含有率は、本発明の複合酸化物が1種の希土類金属元素を含む場合には、当該1種の希土類金属元素の酸化物換算の含有率を意味し、本発明の複合酸化物が2種以上の希土類金属元素を含む場合には、当該2種以上の希土類金属元素の酸化物換算の合計含有率を意味する。
【0064】
本発明の複合酸化物において、セリウム元素は、固溶体相(例えば、酸化セリウムと酸化ジルコニウムとの固溶体相)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、酸化セリウム単独相)を形成していてもよいが、セリウム元素の少なくとも一部は、固溶体相を形成していることが好ましい。
【0065】
本発明の複合酸化物において、ジルコニウム元素は、固溶体相(例えば、酸化セリウムと酸化ジルコニウムとの固溶体相)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、酸化ジルコニウム単独相)を形成していてもよいが、ジルコニウム元素の少なくとも一部は、固溶体相を形成していることが好ましい。
【0066】
本発明の複合酸化物において、アルミニウム元素は、セリウム元素及び/又はジルコニウム元素とともに固溶体相(例えば、酸化セリウムと酸化ジルコニウムと酸化アルミニウムとの固溶体相、酸化セリウムと酸化アルミニウムとの固溶体相、酸化ジルコニウムと酸化アルミニウムとの固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、酸化アルミニウム単独相)を形成していてもよい。
【0067】
本発明の複合酸化物において、希土類金属元素は、セリウム元素及び/又はジルコニウム元素とともに固溶体相(例えば、酸化セリウムと酸化ジルコニウムと希土類金属元素の酸化物との固溶体相、酸化セリウムと希土類金属元素の酸化物との固溶体相、酸化ジルコニウムと希土類金属元素の酸化物との固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、希土類金属元素の酸化物)を形成していてもよい。
【0068】
本発明の複合酸化物が単独で存在する場合、本発明の複合酸化物中の各元素の酸化物換算の含有率は、本発明の複合酸化物をアルカリ融解等で溶解して得られる融解物中の各元素の含有率を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)等の常法により測定し、測定された各元素の含有率から求めることができる。
【0069】
本発明の複合酸化物が他の成分とともに存在する場合(例えば、本発明の複合酸化物が触媒層中に存在する場合)、本発明の複合酸化物中の各元素の酸化物換算の含有率は、本発明の複合酸化物を含む試料(例えば、触媒層から得られた試料)をエネルギー分散型X線分光法(EDX)で分析し、得られた元素マッピングと、指定した粒子のEDX元素分析とから求めることができる。具体的には、元素マッピングにより定性的に本発明の複合酸化物の粒子及びその他の粒子を識別(色分け)し、指定した粒子に対して組成分析(元素分析)することにより、指定した粒子中の各元素の酸化物換算の含有率を求めることができる。
【0070】
COパルス法で測定されるCeO2 1gあたりの400℃における本発明の複合酸化物のOSC量は、好ましくは1470μmol/g以上、より好ましくは1480μmol/g以上、より一層好ましくは1490μmol/g以上、より一層好ましくは1500μmol/g以上である。上限は特に限定されず、例えば2500μmol/g以下である。
【0071】
COパルス法で測定されるCeO2 1gあたりの400℃におけるOSC量が1470μmol/g以上である複合酸化物は、優れたOSC(特に、高温環境に曝露された後のOSC)を発揮することができる。
【0072】
COパルス法による複合酸化物のOSC量の測定は、以下の通り実施することができる。
【0073】
複合酸化物に、複合酸化物 100質量部に対して金属換算で1質量部のロジウム元素を担持させた後、大気中、1000℃で25時間、熱処理することにより、サンプルを調製する。具体的には、次の通りである。水溶性ロジウム塩(例えば、硝酸ロジウム)の水溶液中に本発明の複合酸化物を分散させ、攪拌しながら溶媒を蒸発させた後、大気中、600℃で1時間、焼成することにより、複合酸化物 100質量部に対して金属換算で1質量部のロジウム元素が担持された粉末を調製する。調製された粉末を、大気中、1000℃で25時間、熱処理し、これをサンプルとする。
【0074】
サンプルをサンプル管に詰め、アルゴン気流下で800℃まで昇温した後、400℃まで冷却する。こうして得られた400℃のサンプルを使用して下記操作(A)を行い、CeO2 1gあたりのOSC量を算出し、これを、CeO2 1gあたりの400℃における複合酸化物のOSC量とする。
【0075】
[操作(A)]
サンプル管に酸素を流通させ、続いてヘリウムを流通させた後、25体積%のCO及び75体積%のヘリウムを含む混合ガス(1気圧、0℃)を、50cc/minの流速で15回流通させ、サンプルに含まれるCeO2及びRh2O3の還元を行う。接触後のガスに含まれるCOの量を測定し、COの減少量(μmol)を算出する。測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製の「BELMETAL」を使用する。上記手順によって求めたCOの減少量を使用して、下記式に基づき、CeO2 1gあたりのOSC量(μmol/g)を算出する。
CeO2 1gあたりのOSC量=COの減少量(μmol)/サンプル中のCeO2含有量(g)
【0076】
CeO2 1gあたりの400℃における複合酸化物のOSC量を指標とすれば、複合酸化物のOSCを評価することができる。すなわち、ロジウム元素が担持された複合酸化物に対して、CO/ヘリウム混合ガスを接触させると、(1)2CeO2+CO→Ce2O3+CO2、及び(2)Rh2O3+3CO→2Rh+3CO2の反応が起こる。ここで、(2)の反応は、複合酸化物のOSCによらずに進行する反応である。そのため、COの減少量を測定することにより、複合酸化物による(1)の反応量(すなわち、複合酸化物のOSC)を評価することができる。
【0077】
本発明の複合酸化物は、排ガス浄化用触媒の成分として使用することができる。
【0078】
一実施形態において、排ガス浄化用触媒は、1種又は2種以上の貴金属元素と、本発明の複合酸化物とを含む。排ガス浄化用触媒に含まれる貴金属元素及び本発明の複合酸化物の量は適宜調整することができる。
【0079】
貴金属元素は、例えば、パラジウム元素、白金元素、ロジウム元素、ルテニウム元素、オスミウム元素、イリジウム元素等から選択することができる。貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、貴金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等、貴金属元素を含む触媒活性成分の形態で本発明の複合酸化物に担持される。貴金属元素を含む触媒活性成分は、排ガス浄化性能を高める観点から、粒子状であることが好ましい。
【0080】
触媒活性成分の少なくとも一部は、本発明の複合酸化物に担持されていることが好ましい。
【0081】
「触媒活性成分の少なくとも一部が、本発明の複合酸化物に担持されている」とは、本発明の複合酸化物の外表面及び/又は細孔内表面に、触媒活性成分の少なくとも一部が、物理的及び/又は化学的に吸着又は保持されている状態を意味する。触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていることは、例えば、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)等を使用して確認することができる。具体的には、排ガス浄化用触媒の断面をSEM-EDXで分析して得られた元素マッピングにおいて、触媒活性成分の少なくとも一部と担体とが同じ領域に存在している場合、触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていると判断することができる。
【0082】
排ガス浄化用触媒は、本発明の複合酸化物以外の担体成分を含んでいてもよい。排ガス浄化用触媒が、本発明の複合酸化物以外の担体成分を含む場合、触媒活性成分の少なくとも一部は、本発明の複合酸化物以外の担体成分に担持されていてもよい。本発明の複合酸化物以外の担体成分は、例えば、アルミナ(Al2O3)、修飾アルミナ、希土類金属元素の酸化物、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、MgO、ZnO、SnO2等をベースとした酸化物等から選択することができる。修飾アルミナとしては、例えば、アルミナ-シリカ、アルミナ-シリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-セリア、アルミナ-ランタナ等が挙げられる。
【0083】
排ガス浄化用触媒は、安定剤、バインダー等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0084】
一実施形態において、排ガス浄化用触媒は、ペレット状等の形状を有する成形体である。この実施形態に係る排ガス浄化用触媒は、例えば、排ガス浄化用触媒組成物を乾燥し、焼成することにより製造することができる。乾燥温度、乾燥時間、焼成温度及び焼成時間は適宜調整することができる。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0085】
別の実施形態において、排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒層とを備え、該触媒層は、1種又は2種以上の貴金属元素と、本発明の複合酸化物とを含む。
【0086】
基材は、公知の排ガス浄化用触媒において使用されている基材の中から適宜選択することができる。基材の材質は、例えば、アルミナ(Al2O3)、ムライト(3Al2O3-2SiO2)、コージェライト(2MgO-2Al2O3-5SiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックス、ステンレス等の金属材料等から選択することができる。基材の形状は、例えば、ハニカム状、ペレット状、球状等から選択することができる。ハニカム状の基材を使用する場合、例えば、基材内部を流体が流通するように、基材内部に平行で微細な気体流通路、すなわち、チャンネルを多数有するモノリス型基材を使用することができる。
【0087】
触媒層は、排ガス浄化用触媒組成物を基材表面に塗布した後、乾燥し、焼成することにより形成することができる。例えば、モノリス型基材を使用する場合、モノリス型基材の各チャンネル内壁表面に、排ガス浄化用触媒組成物を塗布した後、乾燥し、焼成することにより、モノリス型基材の各チャンネル内壁表面に触媒層を形成することができる。触媒層は、排ガス浄化用触媒組成物を基材表面に塗布した後、乾燥し、焼成することにより得られた層に対して、貴金属塩含有溶液を含浸させ、乾燥し、焼成する方法によっても製造することができる。乾燥温度、乾燥時間、焼成温度及び焼成時間は適宜調整することができる。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【0088】
排ガス浄化用触媒の製造に使用される排ガス浄化用触媒組成物は、例えば、貴金属元素の塩と、本発明の複合酸化物とを含むスラリーである。貴金属元素の塩は、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、塩化物等から選択することができる。分散液に含まれる溶媒は、例えば、水、有機溶媒等から選択することができる。
【0089】
≪複合酸化物の製造方法≫
以下、本発明の複合酸化物の製造方法について説明する。
【0090】
本発明の複合酸化物の製造方法は、第1、第2及び第3の製造方法を包含する。
【0091】
<第1の製造方法>
以下、第1の製造方法について説明する。
【0092】
第1の製造方法は、以下の工程:
(1a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子と、場合により希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(1b)工程(1a)で準備された原料液に沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(1c)工程(1b)に供された原料液から沈殿物を分離し、沈殿物を含むケーキを得る工程;及び
(1d)工程(1c)で得られたケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む。
【0093】
工程(1a)で準備された原料液において、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子は、正に帯電しているアルミニウム化合物粒子の表面に、過剰な強さではなく、適度な強さで吸着している。アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子は、好ましくは、水溶性高分子層を形成している。
【0094】
工程(1b)で形成された沈殿物及び工程(1c)で得られたケーキは、水難溶性塩粒子とアルミニウム化合物粒子とを混合状態で含む。水難溶性塩粒子としては、例えば、水難溶性セリウム塩と水難溶性ジルコニウム塩と場合により水難溶性希土類金属塩とを含む複合塩粒子、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等が挙げられる。工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿物及びケーキは、複合塩粒子を含むことが好ましい。沈殿物及びケーキは、複合塩粒子に加えて、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等を含んでいてもよい。
【0095】
アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)により、アルミニウム化合物粒子同士の凝集が効果的に抑制される。これより、工程(1b)で形成される沈殿物及び工程(1c)で得られるケーキにおけるアルミニウム化合物粒子の分散性が向上する。
【0096】
工程(1b)で形成された沈殿物及び工程(1c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触の抑制には、上述したアルミニウム化合物粒子の分散性の向上も寄与する。水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制されることにより、工程(1d)においてケーキが焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結が効果的に抑制され、水難溶性塩粒子同士の焼結に起因する複合酸化物の比表面積の低下と、複合酸化物の比表面積の低下に起因する複合酸化物のOSCの低下とが効果的に抑制される。したがって、第1の製造方法によれば、OSCが向上した複合酸化物を製造することができる。第1の製造方法は、本発明の複合酸化物の製造方法として適している。
【0097】
工程(1a)で準備された原料液が、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を含まない場合、又は、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子の代わりに低分子化合物を含む場合、工程(1b)で形成された沈殿物及び工程(1c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制することができず、工程(1d)においてケーキが焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結を効果的に抑制することができない。
【0098】
工程(1a)で準備された原料液が、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子の代わりにアニオン性の水溶性高分子を含む場合、アニオン性の水溶性高分子が、正に帯電しているアルミニウム化合物粒子に過剰に強く結合し、アルミニウム化合物粒子同士の凝集を生じさせるため、工程(1b)で形成された沈殿物及び工程(1c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制することができず、工程(1d)においてケーキが焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結を効果的に抑制することができない。
【0099】
工程(1a)で準備された原料液が、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を含まず、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子が、工程(1b)において、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物が形成される際、又は、当該沈殿物が形成された後に、原料液に添加される場合、工程(1b)で形成された沈殿物及び工程(1c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制することができず、工程(1d)においてケーキが焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結を効果的に抑制することができない。
【0100】
以下、工程(1a)~(1d)について説明する。
【0101】
工程(1a)
工程(1a)は、水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子と、場合により希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程である。
【0102】
工程(1a)で準備された原料液において、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子は、正に帯電しているアルミニウム化合物粒子の表面に、過剰な強さではなく、適度な強さで吸着している。アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子は、好ましくは、水溶性高分子層を形成している。
【0103】
工程(1a)は、原料液の調製工程を含んでいてもよい。例えば、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子と、場合により希土類金属塩とを水中で混合することにより、原料液を調製することができる。成分の混合順序は特に限定されない。例えば、アルミニウム化合物粒子と、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子とを水中で混合した後、得られた混合物に、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、場合により希土類金属塩とを添加して混合することにより、原料液を調製することができる。また、アルミニウム化合物粒子を水中で分散させ、得られた分散液にカチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を添加して混合し、得られた混合物に、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、場合により希土類金属塩とを添加して混合することにより、原料液を調製することができる。
【0104】
工程(1b)において所望の沈殿物を得る観点から、原料液は、工程(1b)に供する前に、攪拌し、アルミニウム化合物粒子を原料液中に分散させておくことが好ましい。
【0105】
原料液に含まれる水は、イオン交換水等の純水であることが好ましい。原料液は、水以外の1種又は2種以上の溶媒を含んでいてもよい。水以外の溶媒は、例えば、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒から選択することができる。水以外の1種又は2種以上の溶媒の合計量は、水溶性塩が原料液に溶解可能である限り特に限定されないが、原料液の体積を基準として、通常50.0vol%以下、好ましくは20.0vol%以下である。
【0106】
原料液に含まれるセリウム塩及びジルコニウム塩は、それぞれ、水溶性塩であってもよいし、水難溶性塩であってもよいが、セリウム塩及びジルコニウム塩の少なくとも一方が水溶性塩であることが好ましく、セリウム塩及びジルコニウム塩の両方が水溶性塩であることがさらに好ましい。場合により原料液に含まれる希土類金属塩は、水溶性塩であってもよいし、水難溶性塩であってもよいが、水溶性塩であることが好ましい。
【0107】
原料液は、1種の水溶性セリウム塩を含んでいてもよいし、2種以上の水溶性セリウム塩を含んでいてもよい。原料液に含まれる水溶性セリウム塩の量は、工程(1d)で製造される複合酸化物中のセリウム元素の酸化セリウム換算の含有率が所望の範囲内となるように適宜調整される。
【0108】
原料液は、1種の水難溶性セリウム塩を含んでいてもよいし、2種以上の水難溶性セリウム塩を含んでいてもよい。原料液に含まれる水難溶性セリウム塩の量は、工程(1d)で製造される複合酸化物中のセリウム元素の酸化セリウム換算の含有率が所望の範囲内となるように適宜調整される。
【0109】
原料液は、1種の水溶性ジルコニウム塩を含んでいてもよいし、2種以上の水溶性ジルコニウム塩を含んでいてもよい。原料液に含まれる水溶性ジルコニウム塩の量は、工程(1d)で製造される複合酸化物中のジルコニウム元素の酸化ジルコニウム換算の含有率が所望の範囲内となるように適宜調整される。
【0110】
原料液は、1種の水難溶性ジルコニウム塩を含んでいてもよいし、2種以上の水難溶性ジルコニウム塩を含んでいてもよい。原料液に含まれる水難溶性ジルコニウム塩の量は、工程(1d)で製造される複合酸化物中のジルコニウム元素の酸化ジルコニウム換算の含有率が所望の範囲内となるように適宜調整される。
【0111】
原料液は、1種の水溶性希土類金属塩を含んでいてもよいし、2種又は3種以上の水溶性希土類金属塩を含んでいてもよい。原料液に含まれる水溶性希土類金属塩の量は、工程(1d)で製造される複合酸化物中の希土類金属元素の酸化物換算の含有率が所望の範囲内となるように適宜調整される。
【0112】
原料液は、1種の水難溶性希土類金属塩を含んでいてもよいし、2種又は3種以上の水難溶性希土類金属塩を含んでいてもよい。原料液に含まれる水難溶性希土類金属塩の量は、工程(1d)で製造される複合酸化物中の希土類金属元素の酸化物換算の含有率が所望の範囲内となるように適宜調整される。
【0113】
原料液に含まれるアルミニウム化合物粒子は、アルミナ粒子及びアルミナ水和物粒子の一方で構成されていてもよいし、両方で構成されていてもよいが、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、アルミナ水和物粒子で構成されていることが好ましい。アルミナ水和物粒子は、焼結性が弱く、複合酸化物中に微細に分散しやすいため、複合酸化物のOSCを向上させる上で有利である。
【0114】
工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、アルミナ水和物粒子を構成するアルミナ水和物は、アルミナ1水和物又はアルミナ3水和物であることが好ましく、アルミナ1水和物であることがさらに好ましい。
【0115】
工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、アルミナ1水和物は、ベーマイトであることが好ましい。
【0116】
原料液に含まれるアルミニウム化合物粒子のメジアン径D50は、好ましくは1nm以上500nm以下、さらに好ましくは5nm以上400nm以下、さらに一層好ましくは、10nm以上350nm以下、さらに一層好ましくは15nm以上300nm以下である。アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50が上記範囲内であると、工程(1b)で形成される沈殿物及び工程(1c)で得られるケーキにおけるアルミニウム化合物粒子の分散性を向上させることができ、これにより、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させることができる。アルミニウム化合物粒子のメジアン径D50は、動的光散乱法により測定される。
【0117】
原料液は、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を含む。「原料液がカチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を含む」は、原料液が1種又は2種以上のカチオン性の水溶性高分子を含み、非イオン性の水溶性高分子を含まない実施形態、原料液が1種又は2種以上の非イオン性の水溶性高分子を含み、カチオン性の水溶性高分子を含まない実施形態、並びに、原料液が1種又は2種以上のカチオン性の水溶性高分子と1種又は2種以上の非イオン性の水溶性高分子とを含む実施形態を包含する。
【0118】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、原料液中のアルミニウム化合物粒子の量に対する、原料液中の水溶性高分子の量の百分率は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらに一層好ましくは1.0質量%以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは200質量%以下、さらに好ましくは100質量%以下、さらに一層好ましくは50質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。「原料液中のアルミニウム化合物粒子の量」は、原料液が、1種のアルミニウム化合物粒子を含む場合には、当該1種のアルミニウム化合物粒子の量を意味し、原料液が、2種以上のアルミニウム化合物粒子を含む場合には、当該2種以上のアルミニウム化合物粒子の合計量を意味する。「原料液中の水溶性高分子の量」は、原料液が、カチオン性の水溶性高分子及び非イオン性の水溶性高分子から選択される1種の水溶性高分子を含む場合には、当該1種の水溶性高分子の量を意味し、原料液が、カチオン性の水溶性高分子及び非イオン性の水溶性高分子から選択される2種以上の水溶性高分子を含む場合には、当該2種以上の水溶性高分子の合計量を意味する。
【0119】
以下、カチオン性の水溶性高分子及び非イオン性の水溶性高分子について説明する。
【0120】
<カチオン性の水溶性高分子>
カチオン性の水溶性高分子は、カチオン性基を含み、アニオン性基を含まない水溶性高分子、並びに、カチオン性基及びアニオン性の両方を含み、かつ、7以上の等電点を有する水溶性高分子を包含する。
【0121】
カチオン性の水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。
【0122】
カチオン性基は、原料液中において正に帯電し得る官能基を意味する。カチオン性基としては、例えば、第4級アンモニウム基、第3級アミノ基、第2級アミノ基、第1級アミノ基、ピロール基、ピリジル基、グアジニノ基、プリン基、ピリミジン基等が挙げられる。
【0123】
第1級アミノ基は、式:-NH2で表される。第2級アミノ基は、式:-NHR1で表される。第3級アミノ基は、式:-NR1R2で表される。第4級アンモニウム基は、式:-N+R1R2R3で表される。
【0124】
R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、例えば、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、1以上の置換基を有していてもよいアリール基、1以上の置換基を有していてもよいアリールアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいアリールアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいアリールアルキニル基、1以上の置換基を有していてもよいアルキルアリール基、1以上の置換基を有していてもよいアルケニルアリール基、1以上の置換基を有していてもよいアルキニルアリール基等である。アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基及びアルキニルアリール基に関する説明並びに1以上の置換基に関する説明は、上記の通りである。
【0125】
R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、脂肪族飽和炭化水素基であることがさらに好ましい。したがって、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいアルキニル基及び1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキニル基から選択することが好ましく、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基及び1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基から選択することがさらに好ましく、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基から選択することがさらに一層好ましい。
【0126】
第4級アンモニウム基に結合するカウンターアニオンとしては、例えば、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。アルキル硫酸イオンとしては、例えば、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、ブチル硫酸イオン等が挙げられる。アリール硫酸イオンとしては、例えば、フェニル硫酸イオン等が挙げられる。
【0127】
アニオン性基は、原料液中において電離し負に帯電し得る官能基を意味する。アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、フェノール基等が挙げられる。
【0128】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、カチオン性の水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは2000以上、さらに好ましくは4000以上、さらに一層好ましくは8000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0129】
一実施形態において、カチオン性の水溶性高分子は、ポリアルキレンイミンから選択することができる。
【0130】
ポリアルキレンイミンとしては、例えば、1種又は2種以上のアルキレンアミンを常法により重合して得られるポリマー等が挙げられる。ポリアルキレンイミンは、1種又は2種以上のアルキレンアミンを常法により重合して得られるポリマーと所望の化合物と反応させて化学的に変性させたポリマーであってもよい。ポリアルキレンイミンは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。ポリアルキレンイミンとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリペンテンイミン、ポリヘキセンイミン等が挙げられる。
【0131】
ポリアルキレンイミンにおけるアルキレンは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。ポリアルキレンイミンにおけるアルキレンの炭素数は、例えば2~6、好ましくは2~4、さらに好ましくは2である。
【0132】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量は、好ましくは2000以上、さらに好ましくは4000以上、さらに一層好ましくは8000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0133】
別の実施形態において、カチオン性の水溶性高分子は、炭素原子と、炭素原子より電気陰性度が大きい1種又は2種以上の原子(以下「陰性原子」という。)とを含む繰り返し単位を有する。陰性原子は、例えば、N、O、S、F、Cl、Br、I等から選択することができるが、N及びOから選択することが好ましい。
【0134】
炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位を有するカチオン性の水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよいが、ホモポリマーであることが好ましい。
【0135】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位を有するカチオン性の水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは2000以上、さらに一層好ましくは10000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0136】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量は、好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上、さらに一層好ましくは45以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは10000以下、さらに好ましくは2000以下、さらに一層好ましくは500以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0137】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の重量平均重合度は、好ましくは20以上、さらに好ましくは100以上、さらに一層好ましくは150以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは200000以下、さらに好ましくは100000以下、さらに一層好ましくは60000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0138】
炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量が大きいほど、アルミニウム化合物粒子の表面に対するカチオン性の水溶性高分子の吸着性が向上する。また、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位における、炭素原子の個数の、陰性原子の個数に対する比が大きいほど、アルミニウム化合物粒子の表面に対するカチオン性の水溶性高分子の吸着性が向上する。一方、アルミニウム化合物粒子の表面に対するカチオン性の水溶性高分子の吸着性が高すぎると、アルミニウム化合物粒子同士の凝集が生じるおそれがある。したがって、アルミニウム化合物粒子同士の凝集を防止しつつ、アルミニウム化合物粒子の表面に対するカチオン性の水溶性高分子の吸着性を向上させる観点から、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量と、当該繰り返し単位における、炭素原子の個数の、陰性原子の個数に対する比とを調整することが好ましい。
【0139】
炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量が150以下である場合、当該繰り返し単位における、炭素原子の個数の、陰性原子の個数に対する比は、好ましくは2以上、さらに好ましくは2.3以上、さらに一層好ましくは2.6以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、さらに一層好ましくは5以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0140】
炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量が150超である場合、当該繰り返し単位における、炭素原子の個数の、陰性原子の個数に対する比は、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上、さらに一層好ましくは1.5以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、さらに一層好ましくは5以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0141】
カチオン性の水溶性高分子は、第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位を有することが好ましい。第4級アンモニウム基は、カチオン性基に該当する。第4級アンモニウム基は、カチオン性の水溶性高分子の側鎖に存在する。
【0142】
第4級アンモニウム基は、嵩高いため、アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から好ましい。また、第4級アンモニウム基は、アルミニウム化合物粒子同士の凝集を防止しつつ、アルミニウム化合物粒子の表面に対するカチオン性の水溶性高分子の吸着性を向上させる観点からも好ましい。
【0143】
第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位を有するカチオン性の水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよいが、ホモポリマーであることが好ましい。
【0144】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位を有するカチオン性の水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは10000以上、さらに好ましくは20000以上、さらに一層好ましくは40000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0145】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位の分子量は、好ましく100以上、さらに好ましくは180以上、さらに一層好ましくは300以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは10000以下、さらに好ましくは2000以下、さらに一層好ましくは500以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。なお、「第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位の分子量」は、第4級アンモニウム基に結合するカウンターアニオンの分子量を含む値である。
【0146】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位の重量平均重合度は、好ましくは20以上、さらに好ましくは100以上、さらに一層好ましくは150以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは3000以下、さらに好ましくは1100以下、さらに一層好ましくは550以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0147】
第4級アンモニウム基を含む繰り返し単位を有するカチオン性の水溶性高分子は、式(I)で表される水溶性高分子であることが好ましい。
【0148】
【0149】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、式(I)で表される水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは10000以上、さらに好ましくは20000以上、さらに一層好ましくは40000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0150】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、式(I)で表される水溶性高分子における繰り返し単位の分子量は、好ましくは180以上、さらに好ましくは250以上、さらに一層好ましくは300以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下、さらに一層好ましくは1500以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0151】
式(I)において、nは、繰り返し単位の重量平均重合度を表す。アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、nは、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上、さらに一層好ましくは150以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下、さらに一層好ましくは1000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0152】
式(I)において、R1~R4は、それぞれ独立して、例えば、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキニル基、1以上の置換基を有していてもよいアリール基、1以上の置換基を有していてもよいアリールアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいアリールアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいアリールアルキニル基、1以上の置換基を有していてもよいアルキルアリール基、1以上の置換基を有していてもよいアルケニルアリール基、1以上の置換基を有していてもよいアルキニルアリール基等である。アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基及びアルキニルアリール基に関する説明並びに1以上の置換基に関する説明は、上記の通りである。
【0153】
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、脂肪族飽和炭化水素基であることがさらに好ましい。したがって、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、1以上の置換基を有していてもよいアルキニル基及び1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキニル基から選択することが好ましく、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基及び1以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基から選択することがさらに好ましく、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基から選択することがさらに一層好ましい。
【0154】
式(I)で表される水溶性高分子の水溶性、アルミニウム化合物粒子の表面に対する吸着性等を考慮すると、脂肪族炭化水素基の分子量は、好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下、さらに一層好ましくは40以下である。下限は適宜選択可能であるが、好ましくは15以上である。この下限は、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0155】
式(I)において、Lは、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-NH-CO-、-CO-NH-、-O-又は-CH2-を表す。Lの左側は、R4が結合している炭素原子に結合しており、Lの右側は、-(CH2)p-に結合している。
【0156】
Lは、好ましくは-CO-O-である。
【0157】
式(I)において、pは、1~3の整数を表す。
【0158】
pは、好ましくは2~3、さらに好ましくは2である。
【0159】
式(I)で表されるカチオン性の水溶性高分子において、第4級アンモニウム基には、カウンターアニオンが結合している。式(I)において、カウンターアニオンは、式:(Xq-)1/qで表されている。qは、1~3の整数を表す。qは、好ましくは1~2、さらに好ましくは1である。
【0160】
式(I)で表される水溶性高分子の水溶性、アルミニウム化合物粒子の表面に対する吸着性等を考慮すると、カウンターアニオンの分子量は、好ましくは300以下、さらに好ましくは200以下、さらに一層好ましくは150以下である。下限は適宜調整可能であるが、好ましくは15である。この下限は、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0161】
カウンターアニオンとしては、例えば、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。
【0162】
アルキル硫酸イオンは、式:R-O-SO3
-[式中、Rは、1以上の置換基を有していてもよいアルキル基を表す。]で表される。アルキル基に関する説明及び1以上の置換基に関する説明は、上記の通りである。アルキル硫酸イオンとしては、例えば、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、ブチル硫酸イオン等が挙げられる。
【0163】
アリール硫酸イオンとしては、例えば、フェニル硫酸イオン等が挙げられる。
【0164】
式(I)で表されるカチオン性の水溶性高分子としては、例えば、ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩が挙げられる。ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩は、下記式で表される。下記式中、「Et」はエチル基を表す。
【0165】
【0166】
<非イオン性の水溶性高分子>
非イオン性の水溶性高分子は、カチオン性基又はアニオン性基のいずれも含まない水溶性高分子を意味する。カチオン性基及びアニオン性基に関する説明は、上記の通りである。
【0167】
非イオン性の水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。
【0168】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、非イオン性の水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上、さらに一層好ましくは2000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0169】
一実施形態において、非イオン性の水溶性高分子は、炭素原子と、炭素原子より電気陰性度が大きい1種又は2種以上の原子(以下「陰性原子」という。)とを含む繰り返し単位を有する。陰性原子は、例えば、N、O、S、F、Cl、Br、I等から選択することができるが、N及びOから選択することが好ましい。
【0170】
炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位を有する非イオン性の水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよいが、ホモポリマーであることが好ましい。
【0171】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位を有する非イオン性の水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは2000以上、さらに一層好ましくは10000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0172】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量は、好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上、さらに一層好ましくは45以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは10000以下、さらに好ましくは2000以下、さらに一層好ましくは500以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0173】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の重量平均重合度は、好ましくは20以上、さらに好ましくは100以上、さらに一層好ましくは150以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは200000以下、さらに好ましくは100000以下、さらに一層好ましくは60000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0174】
炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量が大きいほど、アルミニウム化合物粒子の表面に対する非イオン性の水溶性高分子の吸着性が向上する。また、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位における、炭素原子の個数の、陰性原子の個数に対する比が大きいほど、アルミニウム化合物粒子の表面に対する非イオン性の水溶性高分子の吸着性が向上する。一方、アルミニウム化合物粒子の表面に対する非イオン性の水溶性高分子の吸着性が高すぎると、アルミニウム化合物粒子同士の凝集が生じるおそれがある。したがって、アルミニウム化合物粒子同士の凝集を防止しつつ、アルミニウム化合物粒子の表面に対する非イオン性の水溶性高分子の吸着性を向上させる観点から、炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量と、当該繰り返し単位における、炭素原子の個数の、陰性原子の個数に対する比とを調整することが好ましい。
【0175】
炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量が150以下である場合、当該繰り返し単位における、炭素原子の個数の、陰性原子の個数に対する比は、好ましくは2以上、さらに好ましくは2.3以上、さらに一層好ましくは2.6以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、さらに一層好ましくは5以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0176】
炭素原子と1種又は2種以上の陰性原子とを含む繰り返し単位の分子量が150超である場合、当該繰り返し単位における、炭素原子の個数の、陰性原子の個数に対する比は、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上、さらに一層好ましくは1.5以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、さらに一層好ましくは5以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0177】
別の実施形態において、非イオン性の水溶性高分子は、セルロースエーテル等のセルロース誘導体から選択することができる。
【0178】
セルロースエーテルは、セルロースのヒドロキシ基をエーテルに変換した化合物である。セルロースエーテルとしては、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が挙げられる。
【0179】
アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースにおけるアルキルは、それぞれ独立して、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースにおけるアルキルの炭素数は、それぞれ独立して、例えば1~16、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8、さらに一層好ましくは1~6、さらに一層好ましくは1~3である。
【0180】
アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロース等が挙げられる。
【0181】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシヘキシルセルロース等が挙げられる。
【0182】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキル基及びアルキル基の両方を有するセルロースであり、例えば、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース等が挙げられる。
【0183】
セルロースエーテルのうち、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおける繰り返し単位の分子式は、例えば、CxHyOz(式中、xは6以上10以下、yは10以上20以下、zは5以上7以下)である。
【0184】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、セルロースエーテルの重量平均分子量は、好ましくは2000以上、さらに好ましくは5000以上、さらに一層好ましくは30000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0185】
さらに別の実施形態において、非イオン性の水溶性高分子は、ポリビニルピロリドンから選択することができる。
【0186】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは3000以上、さらに一層好ましくは8000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは1000000以下、さらに好ましくは400000以下、さらに一層好ましくは200000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0187】
さらに別の実施形態において、非イオン性の水溶性高分子は、下記式(II)で表されるポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(プロピレングリコール)-block-ポリ(エチレングリコール)から選択することができる。
【0188】
【0189】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、式(II)で表される水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上、さらに一層好ましくは2000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは100000以下、さらに好ましくは50000以下、さらに一層好ましくは30000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0190】
式(II)において、x、y及びzは、それぞれ、左側、中央及び右側の繰り返し単位の重量平均重合度を表す。
【0191】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、xのyに対する比は、好ましくは0.10以上5.00以下、さらに好ましくは0.15以上2.00以下、さらに一層好ましくは0.20以上1.60以下である。
【0192】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、zのyに対する比は、好ましくは0.10以上5.00以下、さらに好ましくは0.15以上2.00以下、さらに一層好ましくは0.20以上1.60以下である。
【0193】
工程(1b)
工程(1b)は、工程(1a)で準備された原料液に沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程である。
【0194】
工程(1a)で準備された原料液には、水溶性塩の電離により生じた金属イオンが含まれている。原料液に添加される沈殿剤は、水溶性塩の電離により生じた金属イオンの少なくとも一部を水難溶性塩として沈殿させるものであり、原料液に含まれる水溶性塩の種類、沈殿させる水難溶性塩の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0195】
原料液が水溶性セリウム塩を含む場合、セリウムイオンを水難溶性セリウム塩として沈殿させる沈殿剤を使用することができる。沈殿させる水難溶性セリウム塩は、例えば、水酸化セリウム、炭酸セリウム等から選択することができるが、水酸化セリウムであることが好ましい。沈殿させる水難溶性セリウム塩が炭酸セリウムである場合、炭酸セリウム形成のために使用される炭酸イオンにより、ジルコニウムイオンの沈殿物形成が阻害されるおそれがある。例えば、炭酸イオンにより、水溶性ジルコニウム錯体(例えば、[Zr(CO3)4]4-、[ZrOH(CO3)3]3-等)等が形成される場合がある。
【0196】
原料液が水溶性ジルコニウム塩を含む場合、ジルコニウムイオンを水難溶性ジルコニウム塩として沈殿させる沈殿剤を使用することができる。沈殿させる水難溶性ジルコニウム塩は、例えば、水酸化ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム等から選択することができるが、水酸化ジルコニウム及び塩基性硫酸ジルコニウムから選択することが好ましく、水酸化ジルコニウムであることがさらに好ましい。
【0197】
原料液が水溶性希土類金属塩を含む場合、希土類金属イオンを水難溶性希土類金属塩として沈殿させる沈殿剤を使用することができる。沈殿させる水難溶性希土類金属塩は、例えば、希土類金属元素の水酸化物、炭酸塩等から選択することができるが、希土類金属元素の水酸化物(例えば、水酸化ランタン、水酸化ネオジム、水酸化イットリウム等)であることが好ましい。沈殿させる水難溶性希土類金属塩が希土類金属元素の炭酸塩である場合、炭酸塩形成のために使用される炭酸イオンにより、ジルコニウムイオンの沈殿物形成が阻害されるおそれがある。
【0198】
1種類の沈殿剤が、2種類又は3種類以上の金属イオンを水難溶性金属塩として沈殿させる場合もある。したがって、セリウムイオンを水難溶性セリウム塩として沈殿させる沈殿剤と、ジルコニウムイオンを水難溶性ジルコニウム塩として沈殿させる沈殿剤と、希土類金属イオンを水難溶性希土類金属塩として沈殿させる沈殿剤とは、同一種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0199】
沈殿剤としては、例えば、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を使用することができる。この沈殿剤は、ジルコニウムイオンを塩基性硫酸ジルコニウムとして沈殿させることができる。硫酸イオンを含む水溶液は、水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物を水に溶解することにより得ることができる。水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物は、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸、アルカリ金属硫酸塩、硫酸セリウム(III)、希土類金属硫酸塩等から選択することができるが、セリウム元素、ジルコニウム元素及び酸素元素によって形成される固溶体相(例えば、酸化セリウムと酸化ジルコニウムとの固溶体相)の均一性を高める観点並びに入手が容易である観点から、硫酸アンモニウム、硫酸及びアルカリ金属硫酸塩から選択することが好ましい。希土類金属硫酸塩は、好ましくは、3価の希土類金属硫酸塩である。
【0200】
沈殿剤としては、例えば、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を使用することができる。この沈殿剤は、セリウムイオン、ジルコニウムイオン及び希土類金属イオンをそれぞれ水酸化セリウム、水酸化ジルコニウム及び希土類金属元素の水酸化物として沈殿させることができる。水酸化物イオンを含む水溶液は、水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物を水に溶解することにより得ることができる。水に溶解して水酸化物イオンを生じる化合物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、アンモニア、アミン類、第四級アンモニウム水酸化物、グアニジン、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、尿素等から選択することができるが、水酸化ナトリウム及びアンモニアから選択することが好ましい。
【0201】
沈殿物を形成する際の原料液(沈殿剤を添加した後の原料液)のpHは適宜調整することができる。セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物中の成分の溶出抑制の観点から、当該pHは、例えば9以上14以下に設定することができる。
【0202】
工程(1a)で準備された原料液に沈殿剤を添加することにより、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物が形成される。
【0203】
セリウム元素は、水難溶性セリウム塩の形態で沈殿物に含まれている。沈殿物に含まれる水難溶性セリウム塩は、原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩であってもよいし、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩であってもよいが、工程(1b)で形成される沈殿物及び工程(1c)で得られるケーキにおけるアルミニウム化合物粒子の分散性を向上させ、これにより、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩であることが好ましい。
【0204】
ジルコニウム元素は、水難溶性ジルコニウム塩の形態で沈殿物に含まれている。沈殿物に含まれる水難溶性ジルコニウム塩は、原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩であってもよいし、沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩であってもよいが、工程(1b)で形成される沈殿物及び工程(1c)で得られるケーキにおけるアルミニウム化合物粒子の分散性を向上させ、これにより、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩であることが好ましい。
【0205】
希土類金属元素は、水難溶性希土類金属塩の形態で沈殿物に含まれている。沈殿物に含まれる水難溶性希土類金属塩は、原料液に当初から含まれていた水難溶性希土類金属塩であってもよいし、沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩であってもよいが、工程(1b)で形成される沈殿物及び工程(1c)で得られるケーキにおけるアルミニウム化合物粒子の分散性を向上させ、これにより、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩であることが好ましい。
【0206】
工程(1b)で得られた沈殿物は、水難溶性塩粒子とアルミニウム化合物粒子とを混合状態で含む。水難溶性塩粒子としては、例えば、水難溶性セリウム塩と水難溶性ジルコニウム塩と場合により水難溶性希土類金属塩とを含む複合塩粒子、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等が挙げられる。工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿物は、複合塩粒子を含むことが好ましい。沈殿物は、複合塩粒子に加えて、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等を含んでいてもよい。
【0207】
アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)により、アルミニウム化合物粒子同士の凝集が効果的に抑制される。これより、工程(1b)で形成される沈殿物におけるアルミニウム化合物粒子の分散性が向上する。
【0208】
工程(1b)で形成された沈殿物において、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触の抑制には、上述したアルミニウム化合物粒子の分散性の向上も寄与する。
【0209】
工程(1c)
工程(1c)は、工程(1b)に供された原料液から沈殿物を分離し、沈殿物を含むケーキを得る工程である。
【0210】
ケーキは、工程(1b)に供された原料液を固液分離法に供することにより得ることができる。固液分離法は、例えば、ろ過、遠心分離、デカンテーション等から選択することができるが、操作が容易であり、固液分離効率に優れている観点から、ろ過が好ましい。溶媒は完全には除去されないので、ケーキには溶媒が残存する。ケーキは、未乾燥の固形物である点で、乾燥した固形物である乾固物とは異なる。
【0211】
工程(1c)で得られたケーキは、水難溶性塩粒子とアルミニウム化合物粒子とを混合状態で含む。水難溶性塩粒子としては、例えば、水難溶性セリウム塩と水難溶性ジルコニウム塩と場合により水難溶性希土類金属塩とを含む複合塩粒子、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等が挙げられる。工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、ケーキは、複合塩粒子を含むことが好ましい。ケーキは、複合塩粒子に加えて、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等を含んでいてもよい。
【0212】
アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)により、アルミニウム化合物粒子同士の凝集が効果的に抑制される。これより、工程(1c)で得られるケーキにおけるアルミニウム化合物粒子の分散性が向上する。
【0213】
工程(1c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触の抑制には、上述したアルミニウム化合物粒子の分散性の向上も寄与する。
【0214】
工程(1c)で得られたケーキは、工程(1d)に供する前に、洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄液としては、水(例えば、イオン交換水等の純水)を使用することができる。その他に、沈殿物中の成分の溶出抑制の観点及び沈殿物中の硫黄分の洗浄除去の観点から、ナトリウム塩(水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)を含む溶液、アンモニア水、酸(硝酸、酢酸等)を含む溶液を洗浄液として使用することができ、洗浄液のpHは、例えば6以上14以下に調整することができる。
【0215】
工程(1d)
工程(1d)は、工程(1c)で得られたケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程である。
【0216】
工程(1c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制されることにより、工程(1d)においてケーキが焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結が効果的に抑制され、水難溶性塩粒子同士の焼結に起因する複合酸化物の比表面積の低下と、複合酸化物の比表面積の低下に起因する複合酸化物のOSCの低下とが効果的に抑制される。したがって、工程(1d)において、OSCが向上した複合酸化物を製造することができる。工程(1d)で製造される複合酸化物は、好ましくは、本発明の複合酸化物である。
【0217】
沈殿物の焼成は、常法に従って行うことができる。焼成は、通常、大気雰囲気下で行われる。焼成温度は、通常400℃以上1200℃以下、好ましくは500℃以上1100℃以下、さらに好ましくは600℃以上1000℃以下である。焼成時間は、通常0.1時間以上20時間以下、好ましくは0.5時間以上10時間以下、さらに好ましくは1時間以上5時間以下である。
【0218】
得られた複合酸化物は、必要に応じて粉砕してもよい。粉砕は、常法に従って行うことができる。粉砕は、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ローラーミル等を使用して乾式又は湿式にて行うことができる。
【0219】
以下、第1の製造方法の実施形態について説明する。
【0220】
<実施形態1A>
実施形態1Aでは、工程(1a)において、セリウム塩、ジルコニウム塩及び希土類金属塩がすべて水溶性塩である原料液を準備する。実施形態1Aは、工程(1a)で準備される原料液が希土類金属塩を含まない実施形態も包含する。工程(1a)で準備される原料液が希土類金属塩を含まない実施形態において、「セリウム塩、ジルコニウム塩及び希土類金属塩がすべて水溶性塩である」は、セリウム塩及びジルコニウム塩がともに水溶性塩であることを意味する。
【0221】
実施形態1Aでは、工程(1b)において、原料液に添加する沈殿剤として、セリウムイオンを水難溶性セリウム塩として沈殿させる沈殿剤と、ジルコニウムイオンを水難溶性ジルコニウム塩として沈殿させる沈殿剤とを使用する。原料液が希土類金属塩を含む実施形態では、希土類金属イオンを水難溶性希土類金属塩として沈殿させる沈殿剤も使用する。これらの沈殿剤は、同一種であってもよいし、異なる種であってもよい。
【0222】
実施形態1Aは、実施形態1A-1及び実施形態1A-2を包含する。
【0223】
<実施形態1A-1>
以下、実施形態1A-1について説明する。
【0224】
実施形態1A-1では、工程(1b)において、原料液に、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される第1の沈殿剤を添加し、ジルコニウム元素とアルミニウム元素とを含む第1の沈殿物を形成させた後、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される第2の沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第2の沈殿物を形成させる。
【0225】
工程(1b)において、原料液に第1の沈殿剤を添加すると、ジルコニウム元素とアルミニウム元素とを含む第1の沈殿物が形成される。
【0226】
ジルコニウム元素は、塩基性硫酸ジルコニウムの形態で第1の沈殿物に含まれている。塩基性硫酸ジルコニウムは、第1の沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩である。
【0227】
アルミニウム元素は、アルミニウム化合物粒子の形態で第1の沈殿物に含まれている。アルミニウム化合物粒子は、原料液に当初から含まれていたアルミニウム化合物粒子に由来する。原料液中のアルミニウム化合物粒子は、第1の沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩とともに共沈する。
【0228】
第1の沈殿物は、塩基性硫酸ジルコニウム粒子とアルミニウム化合物粒子とを混合状態で含む。
【0229】
塩基性硫酸ジルコニウムを十分に析出させ、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、第1の沈殿剤を添加する際の原料液の温度は、好ましくは40℃以上150℃以下、さらに好ましくは55℃以上130℃以下、さらに一層好ましくは70℃以上100℃以下である。
【0230】
塩基性硫酸ジルコニウムを十分に析出させるとともに、過剰な硫酸イオンによる悪影響を抑止し、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、原料液中の硫酸イオンのモル量が原料液中のジルコニウム元素のモル量の0.10倍以上10倍以下となるように、原料液に第1の沈殿剤を添加することが好ましい。原料液中の硫酸イオンのモル量は、原料液中のジルコニウム元素のモル量の0.20倍以上5.0倍以下であることがさらに好ましく、0.30倍以上2.0倍以下であることがさらに一層好ましい。
【0231】
塩基性硫酸ジルコニウムを十分に析出させ、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、第1の沈殿剤を添加した後、原料液を攪拌しながら、第1の沈殿物を熟成させることが好ましい。熟成時間は、好ましくは0.1時間以上10時間以下、さらに好ましくは0.2時間以上5時間以下、さらに一層好ましくは0.3時間以上3時間以下である。
【0232】
第1の沈殿物を形成させ、必要に応じて熟成させた後、原料液に第2の沈殿剤を添加すると、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第2の沈殿物が形成される。
【0233】
セリウム元素は、水酸化セリウムの形態で第2の沈殿物に含まれている。水酸化セリウムは、第2の沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩である。
【0234】
ジルコニウム元素は、水酸化ジルコニウムの形態で第2の沈殿物に含まれている。水酸化ジルコニウムは、第2の沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩である。第1の沈殿剤によって形成された塩基性硫酸ジルコニウムは、第2の沈殿剤によって水酸化ジルコニウムに変換される。
【0235】
希土類金属元素は、希土類金属元素の水酸化物の形態で第2の沈殿物に含まれている。希土類金属元素の水酸化物は、第2の沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩である。第2の沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩は、第2の沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩とともに共沈する。
【0236】
アルミニウム元素は、アルミニウム化合物粒子の形態で第2の沈殿物に含まれている。アルミニウム化合物粒子は、原料液に当初から含まれていたアルミニウム化合物粒子に由来する。原料液中のアルミニウム化合物粒子は、第2の沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩及び場合により第2の沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩とともに共沈する。第1の沈殿物に含まれていたアルミニウム化合物粒子の少なくとも一部は、通常、そのまま、第2の沈殿物に含まれる。
【0237】
第2の沈殿物は、水酸化セリウムと水酸化ジルコニウムと場合により水酸化セリウム以外の希土類金属元素の水酸化物とを含む複合塩粒子と、アルミニウム化合物粒子とを、混合状態で含む。第2の沈殿物は、複合塩粒子に加えて、水酸化セリウム粒子、水酸化ジルコニウム粒子、希土類金属元素の水酸化物粒子等を含んでいてもよい。複合塩粒子は、例えば、第1の沈殿剤によって形成された塩基性硫酸ジルコニウム(当該塩基性硫酸ジルコニウムは、第2の沈殿剤によって水酸化ジルコニウムに変換される)の表面に、第2の沈殿剤によって形成された水酸化セリウム及び/又は水酸化セリウム以外の希土類金属元素の水酸化物が付着及び成長することにより形成される。
【0238】
目的の水酸化物(水酸化セリウム、水酸化ジルコニウム及び場合により希土類金属元素の水酸化物)を十分に析出させるとともに、水酸化物イオンによるアルミニウム化合物粒子の溶解を防止し、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、第2の沈殿剤を添加する際の原料液の温度は、好ましくは35℃以上60℃以下、さらに好ましくは35℃以上55℃以下、さらに一層好ましくは35℃以上45℃以下である。
【0239】
水酸化物イオンによるアルミニウム化合物粒子の溶解を抑制し、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、原料液中の水酸化物イオンのモル量が、原料液中のセリウム元素、ジルコニウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量の2.0倍以上10倍以下となるように、原料液に第2の沈殿剤を添加することが好ましい。原料液中の水酸化物イオンのモル量は、原料液中のセリウム元素、ジルコニウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量の2.0倍以上5.0倍以下であることがさらに好ましく、2.0倍以上3.0倍以下であることがさらに一層好ましい。
【0240】
原料液中のセリウム元素、ジルコニウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量(M)は、M=[(セリウム元素のモル量)×2]+[(ジルコニウム元素のモル量)×2]+[(セリウム元素、プラセオジム元素及びテルビウム元素以外の希土類金属元素のモル量)×3/2]+[(プラセオジム元素のモル量)×11/6]+[(テルビウム元素のモル量)×7/4]によって求めることができる。
【0241】
目的の水酸化物(水酸化セリウム、水酸化ジルコニウム及び場合により希土類金属元素の水酸化物)を十分に析出させ、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、第2の沈殿剤を添加した後、原料液を攪拌しながら、第2の沈殿物を熟成させることが好ましい。熟成時間は、好ましくは1時間以上96時間以下、さらに好ましくは1時間以上48時間以下、さらに一層好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0242】
実施形態1A-1では、工程(1c)において、工程(1b)に供された原料液から第2の沈殿物を分離し、第2の沈殿物を含むケーキを得ることが好ましい。
【0243】
実施形態1A-1では、工程(1d)において、工程(1c)で得られた第2の沈殿物を含むケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造することが好ましい。
【0244】
<実施形態1A-2>
以下、実施形態1A-2について説明する。
【0245】
実施形態1A-2では、工程(1b)において、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる。実施形態1A-2では、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を使用する必要はない。
【0246】
原料液に沈殿剤を添加すると、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物が形成される。
【0247】
セリウム元素は、水酸化セリウムの形態で沈殿物に含まれている。水酸化セリウムは、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩である。
【0248】
ジルコニウム元素は、水酸化ジルコニウムの形態で沈殿物に含まれている。水酸化ジルコニウムは、沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩である。沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩は、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩とともに共沈する。
【0249】
希土類金属元素は、希土類金属元素の水酸化物の形態で沈殿物に含まれている。希土類金属元素の水酸化物は、沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩である。沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩は、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩及び水難溶性ジルコニウム塩とともに共沈する。
【0250】
アルミニウム元素は、アルミニウム化合物粒子の形態で沈殿物に含まれている。アルミニウム化合物粒子は、原料液に当初から含まれていたアルミニウム化合物粒子に由来する。原料液中のアルミニウム化合物粒子は、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩、水難溶性ジルコニウム塩及び場合により沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩とともに共沈する。
【0251】
沈殿物は、水酸化セリウムと水酸化ジルコニウムと場合により水酸化セリウム以外の希土類金属元素の水酸化物と含む複合塩粒子と、アルミニウム化合物粒子とを、混合状態で含む。沈殿物は、複合塩粒子に加えて、水酸化セリウム粒子、水酸化ジルコニウム粒子、希土類金属元素の水酸化物粒子等を含んでいてもよい。
【0252】
実施形態1A-1において第2の沈殿剤を添加する際の原料液の温度に関する上記説明は、実施形態1A-2において沈殿剤を添加する際の原料液の温度にも適用される。
【0253】
実施形態1A-1において原料液に添加される第2の沈殿剤の量に関する上記説明(原料液中の水酸化物イオンのモル量に関する上記説明)は、実施形態1A-2において原料液に添加される沈殿剤の量(原料液中の水酸化物イオンのモル量)にも適用される。
【0254】
目的の水酸化物(水酸化セリウム、水酸化ジルコニウム及び場合により希土類金属元素の水酸化物)を十分に析出させ、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿剤を添加した後、原料液を攪拌しながら、沈殿物を熟成させることが好ましい。熟成時間は、好ましくは1時間以上96時間以下、さらに好ましくは1時間以上48.0時間以下、さらに一層好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0255】
<実施形態1B>
実施形態1Bでは、工程(1a)において、セリウム塩及び希土類金属塩がともに水溶性塩であり、ジルコニウム塩が水難溶性塩である原料液を準備する。実施形態1Bは、工程(1a)で準備される原料液が希土類金属塩を含まない実施形態も包含する。工程(1a)で準備される原料液が希土類金属塩を含まない実施形態において、「セリウム塩及び希土類金属塩がともに水溶性塩であり、ジルコニウム塩が水難溶性塩である」は、セリウム塩が水溶性塩であり、ジルコニウム塩が水難溶性塩であることを意味する。
【0256】
実施形態1Bでは、工程(1b)において、原料液に添加する沈殿剤として、セリウムイオンを水難溶性セリウム塩として沈殿させる沈殿剤を使用する。原料液が希土類金属塩を含む実施形態では、希土類金属イオンを水難溶性希土類金属塩として沈殿させる沈殿剤も使用する。これらの沈殿剤は、同一種であってもよいし、異なる種であってもよい。
【0257】
実施形態1Bでは、工程(1b)において、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させることが好ましい。実施形態1Bでは、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を使用する必要はない。
【0258】
原料液に沈殿剤を添加すると、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物が形成される。
【0259】
セリウム元素は、水酸化セリウムの形態で沈殿物に含まれている。水酸化セリウムは、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩である。
【0260】
ジルコニウム元素は、原料液に当初から含まれていた水難溶性塩の形態で、又は、水酸化ジルコニウムの形態で沈殿物に含まれている。原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩が塩基性硫酸ジルコニウムであった場合、塩基性硫酸ジルコニウムは、沈殿剤によって水酸化ジルコニウムに変換される。この場合、ジルコニウム元素は、水酸化ジルコニウムの形態で沈殿物に含まれる。原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩が水酸化ジルコニウムであった場合、ジルコニウム元素は、原料液に当初から含まれていた水難溶性塩の形態(水酸化ジルコニウムの形態)で沈殿物に含まれる。
【0261】
希土類金属元素は、希土類金属元素の水酸化物の形態で沈殿物に含まれている。希土類金属元素の水酸化物は、沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩である。沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩は、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩とともに共沈する。
【0262】
アルミニウム元素は、アルミニウム化合物粒子の形態で沈殿物に含まれている。アルミニウム化合物粒子は、原料液に当初から含まれていたアルミニウム化合物粒子に由来する。原料液中のアルミニウム化合物粒子は、沈殿剤によって形成された水難溶性セリウム塩及び場合により沈殿剤によって形成された水難溶性希土類金属塩とともに共沈する。
【0263】
沈殿物は、水酸化セリウムと水難溶性ジルコニウム塩(原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩が塩基性硫酸ジルコニウムであった場合、塩基性硫酸ジルコニウムは、沈殿剤によって水酸化ジルコニウムに変換される)と場合により水酸化セリウム以外の希土類金属元素の水酸化物と含む複合塩粒子と、アルミニウム化合物粒子とを、混合状態で含む。沈殿物は、複合塩粒子に加えて、水酸化セリウム粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水酸化ジルコニウム粒子、希土類金属元素の水酸化物粒子等を含んでいてもよい。複合塩粒子は、例えば、水難溶性ジルコニウム塩(原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩が塩基性硫酸ジルコニウムであった場合、塩基性硫酸ジルコニウムは、沈殿剤によって水酸化ジルコニウムに変換される)の表面に、沈殿剤によって形成された水酸化セリウム及び/又は水酸化セリウム以外の希土類金属元素の水酸化物が付着及び成長することにより形成される。
【0264】
実施形態1A-1において第2の沈殿剤を添加する際の原料液の温度に関する上記説明は、実施形態1Bにおいて沈殿剤を添加する際の原料液の温度にも適用される。
【0265】
実施形態1A-1において原料液に添加される第2の沈殿剤の量に関する上記説明(原料液中の水酸化物イオンのモル量に関する上記説明)は、実施形態1Bにおいて原料液に添加される沈殿剤の量(原料液中の水酸化物イオンのモル量)にも適用される。
【0266】
実施形態1Bにおいて、「原料液中のセリウム元素、ジルコニウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量」は、原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩が沈殿剤によって水酸化ジルコニウムに変換される場合(例えば、原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩が塩基性硫酸ジルコニウムである場合)、原料液中のセリウム元素、ジルコニウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量を意味し、原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩が沈殿剤によって水酸化ジルコニウムに変換されない場合(例えば、原料液に当初から含まれていた水難溶性ジルコニウム塩が水酸化ジルコニウムである場合)、原料液中のセリウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量を意味する。
【0267】
目的の水酸化物(水酸化セリウム、場合により水酸化ジルコニウム及び場合により希土類金属元素の水酸化物)を十分に析出させ、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿剤を添加した後、原料液を攪拌しながら、沈殿物を熟成させることが好ましい。熟成時間は、好ましくは1時間以上96時間以下、さらに好ましくは1時間以上48.0時間以下、さらに一層好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0268】
<実施形態1C>
実施形態1Cでは、工程(1a)において、セリウム塩及び希土類金属塩がともに水難溶性塩であり、ジルコニウム塩が水溶性塩である原料液を準備する。実施形態1Cは、工程(1a)で準備される原料液が希土類金属塩を含まない実施形態も包含する。工程(1a)で準備される原料液が希土類金属塩を含まない実施形態において、「セリウム塩及び希土類金属塩がともに水難溶性塩であり、ジルコニウム塩が水溶性塩である」は、セリウム塩が水難溶性塩であり、ジルコニウム塩が水溶性塩であることを意味する。
【0269】
実施形態1Cでは、工程(1b)において、原料液に添加する沈殿剤として、ジルコニウムイオンを水難溶性ジルコニウム塩として沈殿させる沈殿剤を使用する。
【0270】
実施形態1Cでは、工程(1b)において、原料液に、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第1の沈殿物を形成させた後、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される試薬を添加して第1の沈殿物を水酸化物イオンで処理し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第2の沈殿物を形成させることが好ましい。
【0271】
工程(1b)において、原料液に沈殿剤を添加すると、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第1の沈殿物が形成される。
【0272】
セリウム元素は、原料液に当初から含まれていた水難溶性塩の形態で第1の沈殿物に含まれている。
【0273】
ジルコニウム元素は、塩基性硫酸ジルコニウムの形態で第1の沈殿物に含まれている。塩基性硫酸ジルコニウムは、沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩である。
【0274】
希土類金属元素は、原料液に当初から含まれていた水難溶性塩の形態で第1の沈殿物に含まれている。
【0275】
アルミニウム元素は、アルミニウム化合物粒子の形態で第1の沈殿物に含まれている。アルミニウム化合物粒子は、原料液に当初から含まれていたアルミニウム化合物粒子に由来する。原料液中のアルミニウム化合物粒子は、沈殿剤によって形成された水難溶性ジルコニウム塩とともに共沈する。
【0276】
第1の沈殿物は、水難溶性セリウム塩と、塩基性硫酸ジルコニウムと、アルミニウム化合物粒子と、場合により水難溶性希土類金属塩とを、混合状態で含む。
【0277】
実施形態1A-1において第1の沈殿剤を添加する際の原料液の温度に関する上記説明は、実施形態1Cにおいて沈殿剤を添加する際の原料液の温度にも適用される。
【0278】
実施形態1A-1において原料液に添加される第1の沈殿剤の量に関する上記説明(原料液中の硫酸イオンのモル量に関する上記説明)は、実施形態1Cにおいて原料液に添加される沈殿剤の量(原料液中の硫酸イオンのモル量)にも適用される。
【0279】
塩基性硫酸ジルコニウムを十分に析出させ、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿剤を添加した後、原料液を攪拌しながら、第1の沈殿物を熟成させることが好ましい。熟成時間は、好ましくは0.1時間以上10時間以下、さらに好ましくは0.2時間以上5時間以下、さらに一層好ましくは0.3時間以上3時間以下である。
【0280】
第1の沈殿物を形成させ、必要に応じて熟成させた後、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される試薬を添加して第1の沈殿物を水酸化物イオンで処理すると、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第2の沈殿物が形成される。
【0281】
セリウム元素は、原料液に当初から含まれていた水難溶性塩の形態で、又は、水酸化セリウムの形態で第2の沈殿物に含まれている。原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩が酸化セリウム、炭酸セリウム又は硫酸セリウム(IV)であった場合、水難溶性セリウム塩は、水酸化物イオンによって水酸化セリウムに変換される。この場合、セリウム元素は、水酸化セリウムの形態で第2の沈殿物に含まれる。原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩が水酸化セリウムであった場合、セリウム元素は、原料液に当初から含まれていた水難溶性塩の形態(水酸化セリウムの形態)で第2の沈殿物に含まれる。
【0282】
ジルコニウム元素は、水酸化ジルコニウムの形態で第2の沈殿物に含まれている。水酸化ジルコニウムは、水酸化物イオンによって形成された水難溶性ジルコニウム塩である。なお、沈殿剤によって形成された塩基性硫酸ジルコニウムは、水酸化物イオンによって水酸化ジルコニウムに変換される。
【0283】
希土類金属元素は、原料液に当初から含まれていた水難溶性塩の形態で、又は、水酸化物の形態で第2の沈殿物に含まれている。原料液に当初から含まれていた水難溶性希土類金属塩が酸化物又は炭酸塩であった場合、水難溶性希土類金属塩は、水酸化物イオンによって希土類金属元素の水酸化物に変換される。この場合、希土類金属元素は、水酸化物の形態で第2の沈殿物に含まれる。原料液に当初から含まれていた水難溶性希土類金属塩が希土類金属元素の水酸化物であった場合、希土類金属元素は、原料液に当初から含まれていた水難溶性塩の形態(水酸化物の形態)で第2の沈殿物に含まれる。
【0284】
アルミニウム元素は、アルミニウム化合物粒子の形態で第2の沈殿物に含まれている。アルミニウム化合物粒子は、原料液に当初から含まれていたアルミニウム化合物粒子に由来する。なお、第1の沈殿物に含まれていたアルミニウム化合物粒子の少なくとも一部は、通常、そのまま、第2の沈殿物に含まれる。
【0285】
第2の沈殿物は、水難溶性セリウム塩(原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩が酸化セリウム、炭酸セリウム又は硫酸セリウム(IV)であった場合、水難溶性セリウム塩は、水酸化物イオンによって水酸化セリウムに変換される)と水酸化ジルコニウムと場合により水難溶性希土類金属塩(原料液に当初から含まれていた水難溶性希土類金属塩が酸化物又は炭酸塩であった場合、水難溶性希土類金属塩は、水酸化物イオンによって希土類金属元素の水酸化物に変換される)とを含む複合塩粒子と、アルミニウム化合物粒子とを、混合状態で含む。第2の沈殿物は、複合塩粒子に加えて、水難溶性セリウム塩粒子、水酸化セリウム粒子、水酸化ジルコニウム粒子、水難溶性希土類金属塩粒子、希土類金属元素の水酸化物粒子等を含んでいてもよい。複合塩粒子は、例えば、沈殿剤によって形成された塩基性硫酸ジルコニウム(当該塩基性硫酸ジルコニウムは、水酸化物イオンによって水酸化ジルコニウムに変換される)の表面に、水難溶性セリウム塩(原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩が酸化セリウム、炭酸セリウム又は硫酸セリウム(IV)であった場合、水難溶性セリウム塩は、水酸化物イオンによって水酸化セリウムに変換される)及び/又は水難溶性希土類金属塩(原料液に当初から含まれていた水難溶性希土類金属塩が酸化物又は炭酸塩であった場合、水難溶性希土類金属塩は、水酸化物イオンによって希土類金属元素の水酸化物に変換される)が付着及び成長することにより形成される。
【0286】
実施形態1A-1において第2の沈殿剤を添加する際の原料液の温度に関する上記説明は、実施形態1Cにおいて試薬を添加する際の原料液の温度にも適用される。
【0287】
実施形態1A-1において原料液に添加される第2の沈殿剤の量に関する上記説明(原料液中の水酸化物イオンのモル量に関する上記説明)は、実施形態1Cにおいて原料液に添加される試薬の量(原料液中の水酸化物イオンのモル量)にも適用される。
【0288】
実施形態1Cにおいて、「原料液中のセリウム元素、ジルコニウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量」は、原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩及び水難溶性希土類金属塩が試薬によってそれぞれ水酸化セリウム及び希土類金属元素の水酸化物に変換される場合、原料液中のセリウム元素、ジルコニウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量を意味し、原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩が試薬によって水酸化セリウムに変換され、原料液に当初から含まれていた水難溶性希土類金属塩が試薬によって希土類金属元素の水酸化物に変換されない場合、原料液中のセリウム元素及びジルコニウム元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量を意味し、原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩が試薬によって水酸化セリウムに変換されず、原料液に当初から含まれていた水難溶性希土類金属塩が試薬によって希土類金属元素の水酸化物に変換される場合、原料液中のジルコニウム元素及び希土類金属元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量を意味し、原料液に当初から含まれていた水難溶性セリウム塩及び水難溶性希土類金属塩が試薬によってそれぞれ水酸化セリウム及び希土類金属元素の水酸化物に変換されない場合、原料液中のジルコニウム元素を酸化物にするために必要な酸素元素のモル量を意味する。
【0289】
目的の水酸化物(水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム及び場合により希土類金属元素の水酸化物)を十分に析出させ、工程(1d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、試薬を添加した後、原料液を攪拌しながら、第2の沈殿物を熟成させることが好ましい。熟成時間は、好ましくは1時間以上96時間以下、さらに好ましくは1時間以上48時間以下、さらに一層好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0290】
実施形態1Cでは、工程(1c)において、工程(1b)に供された原料液から第2の沈殿物を分離し、第2の沈殿物を含むケーキを得ることが好ましい。
【0291】
実施形態1Cでは、工程(1d)において、工程(1c)で得られた第2の沈殿物を含むケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造することが好ましい。
【0292】
<第2の製造方法>
以下、第2の製造方法について説明する。第1の製造方法に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、第2の製造方法にも適用される。
【0293】
第2の製造方法は、以下の工程:
(2a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合により希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(2b)工程(2a)で準備された原料液にカチオン性又は非イオン性の水溶性高分子及び沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(2c)工程(2b)に供された原料液から沈殿物を分離し、沈殿物を含むケーキを得る工程;及び
(2d)工程(2c)で得られたケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む。
【0294】
工程(2b)において、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物が形成される前に原料液に添加する。
【0295】
工程(2b)において、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物が形成される前に原料液に添加することにより、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子は、正に帯電しているアルミニウム化合物粒子の表面に、過剰な強さではなく、適度な強さで吸着する。アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子は、好ましくは、水溶性高分子層を形成する。
【0296】
工程(2b)で形成された沈殿物及び工程(2c)で得られたケーキは、水難溶性塩粒子とアルミニウム化合物粒子とを混合状態で含む。水難溶性塩粒子としては、例えば、水難溶性セリウム塩と水難溶性ジルコニウム塩と場合により水難溶性希土類金属塩とを含む複合塩粒子、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等が挙げられる。工程(2d)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、沈殿物及びケーキは、複合塩粒子を含むことが好ましい。沈殿物及びケーキは、複合塩粒子に加えて、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等を含んでいてもよい。
【0297】
アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)により、アルミニウム化合物粒子同士の凝集が効果的に抑制される。これより、工程(2b)で形成される沈殿物及び工程(2c)で得られるケーキにおけるアルミニウム化合物粒子の分散性が向上する。
【0298】
工程(2b)で形成された沈殿物及び工程(2c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触の抑制には、上述したアルミニウム化合物粒子の分散性の向上も寄与する。水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制されることにより、工程(2d)においてケーキが焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結が効果的に抑制され、水難溶性塩粒子同士の焼結に起因する複合酸化物の比表面積の低下と、複合酸化物の比表面積の低下に起因する複合酸化物のOSCの低下とが効果的に抑制される。したがって、第2の製造方法によれば、OSCが向上した複合酸化物を製造することができる。第2の製造方法は、本発明の複合酸化物の製造方法として適している。
【0299】
工程(2a)で準備された原料液が、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を含まず、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子が、工程(2b)において、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物が形成される際、又は、当該沈殿物が形成された後に、原料液に添加される場合、工程(2b)で形成された沈殿物及び工程(2c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制することができず、工程(2d)においてケーキが焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結を効果的に抑制することができない。
【0300】
以下、工程(2a)~(2d)について説明する。
【0301】
工程(2a)
工程(2a)は、水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合により希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程である。
【0302】
工程(1a)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、工程(2a)にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0303】
工程(2a)は、原料液の調製工程を含んでいてもよい。例えば、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合により希土類金属塩とを水中で混合することにより、原料液を調製することができる。成分の混合順序は特に限定されない。例えば、アルミニウム化合物粒子を水中に分散させた後、得られた分散液に、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、場合により希土類金属塩とを添加して混合することにより、原料液を調製することができる。
【0304】
工程(2b)において所望の沈殿物を得る観点から、原料液は、工程(2b)に供する前に、攪拌し、アルミニウム化合物粒子を原料液中に分散させておくことが好ましい。
【0305】
工程(2b)
工程(2b)は、工程(2a)で準備された原料液にカチオン性又は非イオン性の水溶性高分子及び沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程である。
【0306】
工程(1b)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、工程(2b)にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0307】
カチオン性の水溶性高分子及び非イオン性の水溶性高分子に関する説明は、上記の通りである。
【0308】
工程(2b)において、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物が形成される前に原料液に添加する。カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を、複数回、原料液に添加してもよい。
【0309】
「原料液にカチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を添加する」は、原料液に、1種又は2種以上のカチオン性の水溶性高分子を添加し、非イオン性の水溶性高分子を添加しない実施形態、原料液に、1種又は2種以上の非イオン性の水溶性高分子を添加し、カチオン性の水溶性高分子を添加しない実施形態、並びに、原料液に、1種又は2種以上のカチオン性の水溶性高分子と1種又は2種以上の非イオン性の水溶性高分子とを添加する実施形態を包含する。
【0310】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、原料液中のアルミニウム化合物粒子の量に対する、原料液に添加される水溶性高分子の量の百分率は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらに一層好ましくは1.0質量%以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは200質量%以下、さらに好ましくは100質量%以下、さらに一層好ましくは50質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。「原料液中のアルミニウム化合物粒子の量」は、原料液が、1種のアルミニウム化合物粒子を含む場合には、当該1種のアルミニウム化合物粒子の量を意味し、原料液が、2種以上のアルミニウム化合物粒子を含む場合には、当該2種以上のアルミニウム化合物粒子の合計量を意味する。「原料液に添加される水溶性高分子の量」は、原料液に、カチオン性の水溶性高分子及び非イオン性の水溶性高分子から選択される1種の水溶性高分子が添加される場合には、当該1種の水溶性高分子の量を意味し、原料液に、カチオン性の水溶性高分子及び非イオン性の水溶性高分子から選択される2種以上の水溶性高分子が添加される場合には、当該2種以上の水溶性高分子の合計量を意味する。
【0311】
工程(2c)
工程(2c)は、工程(2b)に供された原料液から沈殿物を分離し、沈殿物を含むケーキを得る工程である。
【0312】
工程(1c)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、工程(2c)にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0313】
工程(2d)
工程(2d)は、工程(2c)で得られたケーキを焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程である。
【0314】
工程(1d)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、工程(2d)にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0315】
工程(2c)で得られたケーキにおいて、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制されることにより、工程(2d)においてケーキが焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結が効果的に抑制され、水難溶性塩粒子同士の焼結に起因する複合酸化物の比表面積の低下と、複合酸化物の比表面積の低下に起因する複合酸化物のOSCの低下とが効果的に抑制される。したがって、工程(2d)において、OSCが向上した複合酸化物を製造することができる。工程(2d)で製造される複合酸化物は、好ましくは、本発明の複合酸化物である。
【0316】
得られた複合酸化物は、必要に応じて粉砕してもよい。粉砕は、常法に従って行うことができる。粉砕は、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ローラーミル等を使用して乾式又は湿式にて行うことができる。
【0317】
以下、第2の製造方法の実施形態について説明する。
【0318】
<実施形態2A>
実施形態2Aでは、工程(2a)において、セリウム塩、ジルコニウム塩及び希土類金属塩がすべて水溶性塩である原料液を準備する。
【0319】
実施形態2Aは、実施形態1Aに対応する。実施形態1Aに関する上記説明は、別段規定される場合を除き、実施形態2Aにも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0320】
実施形態2Aは、実施形態2A-1及び実施形態2A-2を包含する。
【0321】
<実施形態2A-1>
以下、実施形態2A-1について説明する。
【0322】
実施形態2A-1では、工程(2b)において、原料液に、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される第1の沈殿剤を添加し、ジルコニウム元素とアルミニウム元素とを含む第1の沈殿物を形成させた後、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される第2の沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第2の沈殿物を形成させることが好ましい。
【0323】
実施形態2A-1は、実施形態1A-1に対応する。実施形態1A-1に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、実施形態2A-1にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0324】
実施形態2A-1では、工程(2b)において、第1の沈殿剤の添加と同時に、又は、第1の沈殿剤の添加後であって第2の沈殿剤の添加前に、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を原料液に添加することが好ましい。カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を、複数回、原料液に添加してもよい。
【0325】
第1の沈殿剤の添加と同時に、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を原料液に添加する場合、第1の沈殿剤とカチオン性又は非イオン性の水溶性高分子との混合物を原料液に添加してもよい。
【0326】
<実施形態2A-2>
以下、実施形態2A-2について説明する。
【0327】
実施形態2A-2では、工程(2b)において、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる。実施形態2A-2では、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を使用する必要はない。
【0328】
実施形態2A-2は、実施形態1A-2に対応する。実施形態1A-2に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、実施形態2A-2にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0329】
実施形態2A-2では、工程(2b)において、沈殿剤の添加前に、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を原料液に添加することが好ましい。カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を、複数回、原料液に添加してもよい。
【0330】
<実施形態2B>
実施形態2Bでは、工程(2a)において、セリウム塩及び希土類金属塩がともに水溶性塩であり、ジルコニウム塩が水難溶性塩である原料液を準備する。
【0331】
実施形態2Bは、実施形態1Bに対応する。実施形態1Bに関する上記説明は、別段規定される場合を除き、実施形態2Bにも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0332】
実施形態2Bでは、工程(2b)において、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させることが好ましい。実施形態2Bでは、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を使用する必要はない。
【0333】
実施形態2Bでは、工程(2b)において、沈殿剤の添加前に、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を原料液に添加することが好ましい。カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を、複数回、原料液に添加してもよい。
【0334】
<実施形態2C>
実施形態2Cでは、工程(2a)において、セリウム塩及び希土類金属塩がともに水難溶性塩であり、ジルコニウム塩が水溶性塩である原料液を準備する。
【0335】
実施形態2Cは、実施形態1Cに対応する。実施形態1Cに関する上記説明は、別段規定される場合を除き、実施形態2Bにも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(2a)」に、「工程(1b)」は「工程(2b)」に、「工程(1c)」は「工程(2c)」に、「工程(1d)」は「工程(2d)」に読み替えられる。
【0336】
実施形態2Cでは、工程(2b)において、原料液に、硫酸イオンを含む水溶液及び水に溶解して硫酸イオンを生じ得る化合物から選択される沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第1の沈殿物を形成させた後、原料液に、水酸化物イオンを含む水溶液及び水に溶解して水酸化物イオンを生じ得る化合物から選択される試薬を添加して第1の沈殿物を水酸化物イオンで処理し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む第2の沈殿物を形成させることが好ましい。
【0337】
実施形態2Cでは、工程(2b)において、沈殿剤の添加前(第1の沈殿物の形成前)に、カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を原料液に添加することが好ましい。カチオン性又は非イオン性の水溶性高分子を、複数回、原料液に添加してもよい。
【0338】
<第3の製造方法>
以下、第3の製造方法について説明する。第1の製造方法に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、第3の製造方法にも適用される。
【0339】
第3の製造方法は、以下の工程:
(3a)水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合により希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程;
(3b)工程(3a)で準備された原料液に沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程;
(3c)工程(3b)に供された原料液から沈殿物を分離し、沈殿物を含むケーキを得る工程;
(3d)工程(3c)で得られたケーキとアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子とを溶媒中で混合し、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子を含むスラリーを得る工程;
(3e)工程(3d)で得られたスラリーを蒸発乾固させ、乾固物を得る工程;及び
(3f)工程(3e)で得られた乾固物を焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程
を含む。
【0340】
工程(3d)で得られたスラリーにおいて、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子は、正に帯電しているアルミニウム化合物粒子の表面に、過剰な強さではなく、適度な強さで吸着している。アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子は、好ましくは、水溶性高分子層を形成している。
【0341】
工程(3d)において、工程(3c)で得られたケーキとカチオン性の水溶性高分子とを溶媒中で混合する場合、カチオン性の水溶性高分子は、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着しにくい。このため、工程(3d)において、アルミニウム化合物粒子の表面に対する吸着性がカチオン性の水溶性高分子よりも高い、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子が使用される。
【0342】
工程(3d)で得られたスラリーは、水難溶性塩粒子とアルミニウム化合物粒子とを混合状態で含む。水難溶性塩粒子としては、例えば、水難溶性セリウム塩と水難溶性ジルコニウム塩と場合により水難溶性希土類金属塩とを含む複合塩粒子、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等が挙げられる。工程(3f)で製造される複合酸化物のOSCを向上させる観点から、スラリーは、複合塩粒子を含むことが好ましい。スラリーは、複合塩粒子に加えて、水難溶性セリウム塩粒子、水難溶性ジルコニウム塩粒子、水難溶性希土類金属塩粒子等を含んでいてもよい。
【0343】
アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)により、アルミニウム化合物粒子同士の凝集が効果的に抑制される。これより、工程(3d)で得られるスラリーにおけるアルミニウム化合物粒子の分散性が向上する。
【0344】
工程(3d)で得られたスラリーにおいて、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触の抑制には、上述したアルミニウム化合物粒子の分散性の向上も寄与する。
【0345】
アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子がアルミニウム化合物粒子の表面に吸着している状態を確保するために、工程(3e)において、工程(3d)で得られたスラリーを蒸発乾固させ、乾固物を得る。工程(3e)で得られた乾固物は、水難溶性塩粒子とアルミニウム化合物粒子とを混合状態で含む。工程(3e)で得られた乾固物において、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触の抑制には、上述したアルミニウム化合物粒子の分散性の向上も寄与する。水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制されることにより、工程(3f)において乾固物が焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結が効果的に抑制され、水難溶性塩粒子同士の焼結に起因する複合酸化物の比表面積の低下と、複合酸化物の比表面積の低下に起因する複合酸化物のOSCの低下とが効果的に抑制される。したがって、第3の製造方法によれば、OSCが向上した複合酸化物を製造することができる。第3の製造方法は、本発明の複合酸化物の製造方法として適している。
【0346】
以下、工程(3a)~(3f)について説明する。
【0347】
工程(3a)
工程(3a)は、水と、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合により希土類金属塩とを含む原料液を準備する工程である。
【0348】
工程(1a)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、工程(3a)にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(3a)」に、「工程(1b)」は「工程(3b)」に、「工程(1c)」は「工程(3c)」に、「工程(1d)」は「工程(3f)」に、「工程(1c)で得られたケーキ」は「工程(3e)で得られた乾固物」に読み替えられる。
【0349】
工程(3a)は、原料液の調製工程を含んでいてもよい。例えば、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、アルミニウム化合物粒子と、場合により希土類金属塩とを水中で混合することにより、原料液を調製することができる。成分の混合順序は特に限定されない。例えば、アルミニウム化合物粒子を水中に分散させた後、得られた分散液に、セリウム塩と、ジルコニウム塩と、場合により希土類金属塩とを添加して混合することにより、原料液を調製することができる。
【0350】
工程(3b)において所望の沈殿物を得る観点から、原料液は、工程(3b)に供する前に、攪拌し、アルミニウム化合物粒子を原料液中に分散させておくことが好ましい。
【0351】
工程(3b)
工程(3b)は、工程(3a)で準備された原料液に沈殿剤を添加し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む沈殿物を形成させる工程である。
【0352】
工程(1b)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、工程(3b)にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(3a)」に、「工程(1b)」は「工程(3b)」に、「工程(1c)」は「工程(3c)」に、「工程(1d)」は「工程(3f)」に、「工程(1c)で得られたケーキ」は「工程(3e)で得られた乾固物」に読み替えられる。
【0353】
工程(3c)
工程(3c)は、工程(3b)に供された原料液から沈殿物を分離し、沈殿物を含むケーキを得る工程である。
【0354】
工程(1c)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、工程(3c)にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(3a)」に、「工程(1b)」は「工程(3b)」に、「工程(1c)」は「工程(3c)」に、「工程(1d)」は「工程(3f)」に、「工程(1c)で得られたケーキ」は「工程(3e)で得られた乾固物」に読み替えられる。
【0355】
工程(3c)で得られたケーキは、工程(3d)に供する前に、洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄液としては、水(例えば、イオン交換水等の純水)を使用することができる。その他に、沈殿物中の成分の溶出抑制の観点及び沈殿物中の硫黄分の洗浄除去の観点から、ナトリウム塩(水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)を含む溶液、アンモニア水、酸(硝酸、酢酸等)を含む溶液を洗浄液として使用することができ、洗浄液のpHは、例えば、6以上14以下に調整することができる。
【0356】
工程(3d)
工程(3d)は、工程(3c)で得られたケーキとアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子とを溶媒中で混合し、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子を含むスラリーを得る工程である。
【0357】
ケーキとアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子との混合に使用される溶媒は、水を含む。水は、イオン交換水等の純水であることが好ましい。溶媒は、1種又は2種以上の有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒は、例えば、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒から選択することができる。1種又は2種以上の有機溶媒の合計量は、溶媒の体積を基準として、通常50.0vol%以下、好ましくは20.0vol%以下である。
【0358】
ケーキとアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子とを水中で混合する際、ケーキにアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子及び水を添加して混合してもよいし、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子にケーキ及び水を添加して混合してもよい。ケーキにアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子及び水を添加する場合、ケーキにアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子及び水を別々に添加してもよいし、ケーキにアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子と水との混合物を添加してもよい。アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子にケーキ及び水を添加する場合、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子にケーキ及び水を別々に添加してもよいし、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子にケーキと水との混合物を添加してもよい。
【0359】
「ケーキとアニオン性又は非イオン性の水溶性高分子とを水中で混合する」は、ケーキと混合する水溶性高分子として、1種又は2種以上のアニオン性の水溶性高分子を使用し、非イオン性の水溶性高分子を使用しない実施形態、ケーキと混合する水溶性高分子として、1種又は2種以上の非イオン性の水溶性高分子を使用し、アニオン性の水溶性高分子を使用しない実施形態、並びに、ケーキと混合する水溶性高分子として、1種又は2種以上のアニオン性の水溶性高分子と1種又は2種以上の非イオン性の水溶性高分子とを使用する実施形態を包含する。
【0360】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、ケーキの固形分の量に対する、ケーキと混合される水溶性高分子の量の百分率が、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに一層好ましくは15質量%以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは200質量%以下、さらに好ましくは100質量%以下、さらに一層好ましくは50質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。「ケーキと混合される水溶性高分子の量」は、ケーキと混合する水溶性高分子として、アニオン性の水溶性高分子及び非イオン性の水溶性高分子から選択される1種の水溶性高分子が使用される場合には、当該1種の水溶性高分子の量を意味し、ケーキと混合する水溶性高分子として、アニオン性の水溶性高分子及び非イオン性の水溶性高分子から選択される2種以上の水溶性高分子を含む場合には、当該2種以上の水溶性高分子の合計量を意味する。
【0361】
非イオン性の水溶性高分子に関する説明は、上記の通りである。
【0362】
以下、アニオン性の水溶性高分子について説明する。
【0363】
<アニオン性の水溶性高分子>
アニオン性の水溶性高分子は、アニオン性を含み、カチオン性基を含まない水溶性高分子、並びに、カチオン性基及びアニオン性の両方を含み、かつ、7未満の等電点を有する水溶性高分子を包含する。カチオン性基及びアニオン性基に関する説明は、上記の通りである。
【0364】
アニオン性の水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。
【0365】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、アニオン性の水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上、さらに一層好ましくは3000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0366】
一実施形態において、アニオン性の水溶性高分子は、ポリアクリル酸塩及びポリメタクリル酸塩から選択することができる。アニオン性の水溶性高分子は、ポリアクリル酸塩から選択することが好ましい。
【0367】
ポリアクリル酸塩としては、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸メチルアンモニウム、ポリアクリル酸ジメチルアンモニウム、ポリアクリル酸テトラメチルアンモニウム、ポリアクリル酸エチルアンモニウム、ポリアクリル酸プロピルアンモニウム、ポリアクリル酸ブチルアンモニウム、ポリアクリル酸グアジニウム、ポリアクリル酸ピリジニウム等が挙げられる。
【0368】
ポリメタクリル酸塩としては、例えば、ポリメタクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸メチルアンモニウム、ポリメタクリル酸ジメチルアンモニウム、ポリメタクリル酸テトラメチルアンモニウム、ポリメタクリル酸エチルアンモニウム、ポリメタクリル酸プロピルアンモニウム、ポリメタクリル酸ブチルアンモニウム、ポリメタクリル酸グアジニウム、ポリメタクリル酸ピリジニウム等が挙げられる。
【0369】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、ポリアクリル酸塩の重量平均分子量は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上、さらに一層好ましくは3000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0370】
アルミニウム化合物粒子同士の凝集及び水難溶性塩粒子同士の接触を効果的に抑制する観点から、ポリメタクリル酸塩の重量平均分子量は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上、さらに一層好ましくは3000以上である。上限は適宜調整可能であるが、好ましくは500000以下、さらに好ましくは200000以下、さらに一層好ましくは100000以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0371】
工程(3e)
工程(3e)は、工程(3d)で得られたスラリーを蒸発乾固させ、乾固物を得る工程である。
【0372】
スラリーを蒸発乾固させることにより、スラリー中の溶媒が蒸発し、スラリーの固形分からなる乾固物が得られる。乾固物は、乾燥した固形物である点で、未乾燥の固形物であるケーキとは異なる。スラリーの蒸発乾固は、常法に従って行うことができる。スラリーを蒸発乾固させる際、乾燥温度及び乾燥時間は適宜調整することができる。
【0373】
工程(3d)で得られたスラリーを蒸発乾固させることにより、乾固物において、アニオン性又は非イオン性の水溶性高分子がアルミニウム化合物粒子の表面に吸着している状態を確保することができる。
【0374】
工程(3f)
工程(3f)は、工程(3e)で得られた乾固物を焼成し、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合により希土類金属元素とを含む複合酸化物を製造する工程である。
【0375】
工程(1d)に関する上記説明は、別段規定される場合を除き、工程(3f)にも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(3a)」に、「工程(1b)」は「工程(3b)」に、「工程(1c)」は「工程(3c)」に、「工程(1d)」は「工程(3f)」に、「工程(1c)で得られたケーキ」は「工程(3e)で得られた乾固物」に読み替えられる。
【0376】
工程(3e)で得られた乾固物は、水難溶性塩粒子とアルミニウム化合物粒子とを混合状態で含む。工程(3e)で得られた乾固物において、水難溶性塩粒子同士の間には、アルミニウム化合物粒子と、アルミニウム化合物粒子の表面に吸着した水溶性高分子(好ましくは、アルミニウム化合物粒子の表面に形成された水溶性高分子層)とが存在し、これにより、水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制される。水難溶性塩粒子同士の接触の抑制には、上述したアルミニウム化合物粒子の分散性の向上も寄与する。水難溶性塩粒子同士の接触が効果的に抑制されることにより、工程(3f)において乾固物が焼成される際、水難溶性塩粒子同士の焼結が効果的に抑制され、水難溶性塩粒子同士の焼結に起因する複合酸化物の比表面積の低下と、複合酸化物の比表面積の低下に起因する複合酸化物のOSCの低下とが効果的に抑制される。したがって、第3の製造方法によれば、OSCが向上した複合酸化物を製造することができる。第3の製造方法は、本発明の複合酸化物の製造方法として適している。
【0377】
以下、第3の製造方法の実施形態について説明する。
【0378】
<実施形態3A>
実施形態3Aでは、工程(3a)において、セリウム塩、ジルコニウム塩及び希土類金属塩がすべて水溶性塩である原料液を準備する。
【0379】
実施形態3Aは、実施形態1Aに対応する。実施形態1Aに関する上記説明(実施形態1A-1及び実施形態1A-2に関する上記説明を含む)は、別段規定される場合を除き、実施形態3Aにも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(3a)」に、「工程(1b)」は「工程(3b)」に、「工程(1c)」は「工程(3c)」に、「工程(1d)」は「工程(3f)」に、「工程(1c)で得られたケーキ」は「工程(3e)で得られた乾固物」に読み替えられる。
【0380】
<実施形態3B>
実施形態3Bでは、工程(3a)において、セリウム塩及び希土類金属塩がともに水溶性塩であり、ジルコニウム塩が水難溶性塩である原料液を準備する。
【0381】
実施形態3Bは、実施形態1Bに対応する。実施形態1Bに関する上記説明は、別段規定される場合を除き、実施形態3Bにも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(3a)」に、「工程(1b)」は「工程(3b)」に、「工程(1c)」は「工程(3c)」に、「工程(1d)」は「工程(3f)」に、「工程(1c)で得られたケーキ」は「工程(3e)で得られた乾固物」に読み替えられる。
【0382】
<実施形態3C>
実施形態3Cでは、工程(3a)において、セリウム塩及び希土類金属塩がともに水難溶性塩であり、ジルコニウム塩が水溶性塩である原料液を準備する。
【0383】
実施形態3Cは、実施形態1Cに対応する。実施形態1Cに関する上記説明は、別段規定される場合を除き、実施形態3Cにも適用される。適用の際、「工程(1a)」は「工程(3a)」に、「工程(1b)」は「工程(3b)」に、「工程(1c)」は「工程(3c)」に、「工程(1d)」は「工程(3f)」に、「工程(1c)で得られたケーキ」は「工程(3e)で得られた乾固物」に読み替えられる。
【実施例0384】
<実施例1>
容器中で、塩化セリウム(酸化セリウム換算量:3.6g)、オキシ塩化ジルコニウム(酸化ジルコニウム換算量:16.0g)、塩化ランタン(酸化ランタン換算量:1.2g)、塩化ネオジム(酸化ネオジウム換算量:1.2g)及び塩化イットリウム水溶液(酸化イットリウム換算量:1.2g)を純水に溶解し、金属塩水溶液を得た。
【0385】
別の容器に、純水及びベーマイト粒子(AlO(OH)、酸化アルミニウム換算量:16.8g)を添加して攪拌し、ベーマイト粒子を分散させ、ベーマイト粒子分散液を得た。
【0386】
ベーマイト粒子のメジアン径D50は278nmであった。ベーマイト粒子のメジアン径D50は、動的光散乱法により測定されるベーマイト粒子の体積基準の粒度分布において、累積体積が50%となる粒径を意味する。動的光散乱法によるベーマイト粒子の体積基準の粒度分布の測定は、ベーマイト粒子を1.5質量%塩酸に分散させ(ベーマイト粒子濃度:8質量%)、市販の粒度分布測定装置(Malvern Panalytical社製「ゼータサイザーナノ ZS」)を使用して実施した。
【0387】
ベーマイト粒子分散液に、ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩(重量平均分子量:56000)を添加し、先に調製した金属塩水溶液をさらに添加した後、合計質量が537.3gとなるように純水を添加し、原料液を得た。ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩の添加量は、ベーマイト粒子分散液の固形分量40gに対して7gとした。
【0388】
原料液を85℃まで昇温した後、原料液を攪拌しながら、25質量%硫酸アンモニウム水溶液68.6gを滴下した。滴下終了後、原料液を攪拌しながら、85℃で沈殿物を熟成させた。原料液を40℃まで冷却した後、原料液を攪拌しながら、25質量%水酸化ナトリウム水溶液136.8gを滴下した。滴下終了後、沈殿物を熟成させ、スラリーを得た。得られたスラリーを吸引ろ過し、沈殿物をケーキとして回収し、回収したケーキを純水により洗浄した。洗浄後のケーキを電気炉において焼成した。焼成後の塊を粉砕し、ジルコニウム元素と、セリウム元素と、ランタン元素と、ネオジム元素と、イットリウム元素と、アルミニウム元素とを含む複合酸化物の粉末を得た。
【0389】
得られた複合酸化物の粉末に含まれるジルコニウム元素、セリウム元素、ランタン元素、ネオジム元素、イットリウム元素及びアルミニウム元素の酸化物換算の質量比(ZrO2:CeO2:La2O3:Nd2O3:Y2O3:Al2O3)は、40.0:9.0:3.0:3.0:3.0:42.0であった。複合酸化物の粉末に含まれる各金属元素の酸化物換算の含有率は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)により測定された各金属元素の金属換算の含有率から算出した。他の実施例及び比較例も同様である。
【0390】
<実施例2>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製メトローズ60SH-15,重量平均分子量:45000)に変更した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0391】
<実施例3>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をポリビニルピロリドン(重量平均分子量:30000)に変更した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0392】
<実施例4>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をSigma-Aldrich社製Pluronic P-123(重量平均分子量:5800)に変更した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。Pluronic P-123は、下記式(II)で表され、x=20、y=70、z=20であるポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(プロピレングリコール)-block-ポリ(エチレングリコール)である。
【0393】
【0394】
<実施例5>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をポリエチレンイミン(重量平均分子量:10000)に変更した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0395】
<実施例6>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をSigma-Aldrich社製Pluronic F-127(重量平均分子量:12500)に変更した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。Pluronic F-127は、上記式(II)で表され、x=106、y=70、z=106であるポリ(エチレングリコール)-block-ポリ(プロピレングリコール)-block-ポリ(エチレングリコール)である。
【0396】
<実施例7>
容器中で、硝酸セリウム(酸化セリウム換算量:3.6g)、オキシ硝酸ジルコニウム(酸化ジルコニウム換算量:16.0g)、硝酸ランタン(酸化ランタン換算量:1.2g)、硝酸ネオジム(酸化ネオジウム換算量:1.2g)及び硝酸イットリウム水溶液(酸化イットリウム換算量:1.2g)を純水に溶解し、金属塩水溶液を得た。
【0397】
別の容器に、純水及びベーマイト粒子(AlO(OH)、酸化アルミニウム換算量:16.8g)を添加して攪拌し、ベーマイト粒子を分散させ、ベーマイト粒子分散液を得た。
【0398】
ベーマイト粒子のメジアン径D50は278nmであった。ベーマイト粒子のメジアン径D50の意義及び測定方法は、実施例1と同様である。
【0399】
ベーマイト粒子分散液に、ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩(重量平均分子量:56000)を添加し、先に調製した金属塩水溶液をさらに添加した後、合計質量が584.3gとなるように純水を添加し、原料液を得た。ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩の添加量は、ベーマイト粒子分散液の固形分量40gに対して7gとした。
【0400】
原料液を攪拌しながら、25℃の温度で、10質量%アンモニア水溶液209.1gを滴下した。滴下終了後、25℃の温度で、沈殿物を熟成させ、スラリーを得た。得られたスラリーを吸引ろ過し、沈殿物をケーキとして回収し、回収したケーキを純水により洗浄した。洗浄後のケーキを電気炉において焼成した。焼成後の塊を粉砕し、ジルコニウム元素と、セリウム元素と、ランタン元素と、ネオジム元素と、イットリウム元素と、アルミニウム元素とを含む複合酸化物の粉末を得た。
【0401】
得られた複合酸化物の粉末に含まれるジルコニウム元素、セリウム元素、ランタン元素、ネオジム元素、イットリウム元素及びアルミニウム元素の酸化物換算の質量比(ZrO2:CeO2:La2O3:Nd2O3:Y2O3:Al2O3)は、40.0:9.0:3.0:3.0:3.0:42.0であった。
【0402】
<実施例8>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩の添加量を、ベーマイト粒子分散液の固形分量40gに対して1.75gとした点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0403】
<実施例9>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩の添加量を、ベーマイト粒子分散液の固形分量40gに対して0.35gとした点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0404】
<実施例10>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をベーマイト粒子分散液に添加せずに、原料液に滴下される硫酸アンモニウム水溶液に添加した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0405】
<実施例11>
容器中で、塩化セリウム(酸化セリウム換算量:3.2g)、オキシ塩化ジルコニウム(酸化ジルコニウム換算量:13.9g)、塩化ネオジム(酸化ネオジウム換算量:1.2g)及び塩化イットリウム水溶液(酸化イットリウム換算量:0.5g)を純水に溶解し、金属塩水溶液を得た。
【0406】
別の容器に、純水及びベーマイト粒子(AlO(OH)、酸化アルミニウム換算量:19.3g)を添加して攪拌し、ベーマイト粒子を分散させ、ベーマイト粒子分散液を得た。
【0407】
ベーマイト粒子のメジアン径D50は278nmであった。ベーマイト粒子のメジアン径D50の意義及び測定方法は、実施例1と同様である。
【0408】
ベーマイト粒子分散液に、先に調製した金属塩水溶液を添加した後、合計質量が518.7gとなるように純水を添加し、原料液を得た。
【0409】
原料液を85℃まで昇温し、原料液を攪拌しながら、25質量%硫酸アンモニウム水溶液68.6gを滴下した。滴下終了後、原料液を攪拌しながら、85℃で沈殿物を熟成させた。原料液を40℃まで冷却した後、原料液を攪拌しながら、25質量%水酸化ナトリウム水溶液136.8gを滴下した。滴下終了後、沈殿物を熟成させ、スラリーを得た。得られたスラリーを吸引ろ過し、沈殿物をケーキとして回収し、回収したケーキを純水により洗浄した。洗浄後のケーキに、ポリアクリル酸アンモニウム(東亞合成株式会社製アロンA-30SL,重量平均分子量:6000)を添加した後、固形分量の6倍程度の純水を添加し、リスラリーを行った。ポリアクリル酸アンモニウムの添加量は、洗浄後のケーキの固形分量40gに対して7gとした。リスラリーにより得られたスラリーを蒸発乾固し、得られた乾固物を電気炉において焼成した。焼成後の塊を粉砕し、ジルコニウム元素と、セリウム元素と、ランタン元素と、ネオジム元素と、イットリウム元素と、アルミニウム元素とを含む複合酸化物の粉末を得た。
【0410】
得られた複合酸化物の粉末に含まれるジルコニウム元素、セリウム元素、ランタン元素、ネオジム元素、イットリウム元素及びアルミニウム元素の酸化物換算の質量比(ZrO2:CeO2:La2O3:Nd2O3:Y2O3:Al2O3)は、35.0:8.0:0:6.0:3.0:48.0であった。
【0411】
<実施例12>
ポリアクリル酸アンモニウム(東亞合成株式会社製アロンA-30SL)をヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製メトローズ60SH-15,重量平均分子量:45000)に変更した点を除き、実施例11と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0412】
<比較例1>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩を添加しなかった点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0413】
<比較例2>
メジアン径D50が278nmのベーマイト粒子を、メジアン径D50が58nmのベーマイト粒子に変更した点を除き、比較例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0414】
<比較例3>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をラウリルアミンに変更し、ラウリルアミンの添加量を、ベーマイト粒子分散液の固形分量40gに対して5gとした点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0415】
<比較例4>
ラウリルアミンの添加量を、ベーマイト粒子分散液の固形分量40gに対して1gに変更した点を除き、比較例3と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0416】
<比較例5>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をデシルグルコシドに変更し、デシルグルコシドの添加量を、ベーマイト粒子分散液の固形分量40gに対して5gとした点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0417】
<比較例6>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をポリアクリル酸アンモニウム(東亞合成株式会社製アロンA-30L,重量平均分子量:6000)に変更した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0418】
<比較例7>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩を添加しなかった点を除き、実施例7と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0419】
<比較例8>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をベーマイト粒子分散液に添加せずに、原料液に滴下される水酸化ナトリウム水溶液に添加した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0420】
<比較例9>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をベーマイト粒子分散液に添加せずに、水酸化ナトリウム水溶液の滴下後の原料液に添加した点を除き、実施例1と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0421】
<比較例10>
ポリ[メタクリル酸[2-(エチルジメチルアンモニオ)エチル]]エチル硫酸塩をベーマイト粒子分散液に添加せずに、原料液に滴下されるアンモニア水溶液に添加した点を除き、実施例7と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0422】
<比較例11>
ポリアクリル酸アンモニウム(東亞合成株式会社製アロンA-30SL)をポリエチレンイミン(重量平均分子量:6000)に変更した点を除き、実施例11と同様にして複合酸化物の粉末を得た。
【0423】
<OSC量の測定>
実施例1~12及び比較例1~10で得られた複合酸化物のOSC量を、以下の通り、COパルス法で測定した。
【0424】
複合酸化物に、複合酸化物 100質量部に対して金属換算で1質量部のロジウム元素を担持させた後、大気中、1000℃で25時間、熱処理することにより、サンプルを調製した。具体的には、次の通りである。水溶性ロジウム塩(例えば、硝酸ロジウム)の水溶液中に本発明の複合酸化物を分散させ、攪拌しながら溶媒を蒸発させた後、大気中、600℃で1時間、焼成することにより、複合酸化物 100質量部に対して金属換算で1質量部のロジウム元素が担持された粉末を調製した。調製された粉末を、大気中、1000℃で25時間、熱処理し、これをサンプルとした。
【0425】
サンプルをサンプル管に詰め、アルゴン気流下で800℃まで昇温した後、400℃まで冷却した。こうして得られた400℃のサンプルを使用して下記操作(A)を行い、CeO2 1gあたりのOSC量を算出し、これを、CeO2 1gあたりの400℃における複合酸化物のOSC量とした。
【0426】
[操作(A)]
サンプル管に酸素を流通させ、続いてヘリウムを流通させた後、25体積%のCO及び75体積%のヘリウムを含む混合ガス(1気圧、0℃)を、50cc/minの流速で15回流通させ、サンプルに含まれるCeO2及びRh2O3の還元を行った。接触後のガスに含まれるCOの量を測定し、COの減少量(μmol)を算出した。測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製の「BELMETAL」を使用した。上記手順によって求めたCOの減少量を使用して、下記式に基づき、CeO2 1gあたりのOSC量(μmol/g)を算出した。
CeO2 1gあたりのOSC量=COの減少量(μmol)/サンプル中のCeO2含有量(g)
【0427】
結果を表1に示す。
【0428】
【0429】
表1に示すように、本発明に係る第1、第2及び第3の製造方法によれば、セリウム元素と、ジルコニウム元素と、アルミニウム元素と、場合によりセリウム元素以外の希土類金属元素とを含む複合酸化物であって、OSC(特に、高温環境に曝露された後のOSC)が向上した複合酸化物、具体的には、COパルス法で測定されるCeO2 1gあたりの400℃におけるOSC量が1470μmol/g以上である複合酸化物を製造することができた。