(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020027
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】デュアル硬化から形成された研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20250131BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20250131BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/26
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024118359
(22)【出願日】2024-07-24
(31)【優先権主張番号】18/360,947
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】デュポン・エレクトロニック・マテリアルズ・ホールディング・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DuPont Electronic Materials Holding, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】フォンジー・イェー
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158DA12
3C158EB05
3C158EB29
5F057AA24
5F057EB03
(57)【要約】
【課題】 デュアル硬化から形成された研磨パッドを提供する。
【解決手段】 研磨層を含む化学機械研磨パッドであって、研磨層が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、硫黄含有ジアミン硬化剤及び高分子量ポリオール硬化剤を含む硬化剤系と、の反応生成物を含み、高分子量ポリオール硬化剤は研磨欠陥を低減することができる、化学機械研磨パッド。高分子量ポリオール硬化剤は、2,500~100,000gの数平均分子量と、1分子あたり平均3~10個のヒドロキシル基とを有する。高分子量ポリオール硬化剤対硫黄含有ジアミン硬化剤の重量比は、3:10~7:10の範囲である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨層を含む化学機械研磨パッドであって、前記研磨層が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、
(a)硫黄含有ジアミン硬化剤及び
(b)高分子量ポリオール硬化剤を含む硬化剤系と、の反応生成物を含み、前記高分子量ポリオール硬化剤が2,500~100,000の数平均分子量Mnを有し、前記高分子量ポリオール硬化剤が1分子あたり平均3~10個のヒドロキシル基を有し、
前記高分子量ポリオール硬化剤対前記硫黄含有ジアミン硬化剤の重量比が3:10~7:10の範囲である、化学機械研磨パッド。
【請求項2】
前記硫黄含有ジアミン硬化剤が、芳香族環からのペンダント基である1つ以上のアルキルチオ基を有するジアミン官能性芳香族化合物を含む、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
【請求項3】
前記硫黄含有ジアミン硬化剤が、ジアルキルチオトルエンジアミン、モノアルキルチオトルエンジアミン、又はその両方を含み、それぞれの場合において、アルキル基が1、2、又は3個の炭素原子を含む、請求項2に記載の化学機械研磨パッド。
【請求項4】
前記硫黄含有ジアミン硬化剤が、前記ジアミン硬化剤の総重量を基準として少なくとも95重量パーセントのジメチルチオトルエンジアミンを含む、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
【請求項5】
前記高分子量ポリオール硬化剤対前記硫黄含有ジアミンの重量比が4:10~5:10の範囲である、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
【請求項6】
前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが8.3~9.8重量%の未反応NCO基を有する、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
【請求項7】
前記硬化剤系が複数の反応性水素基を有し、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが複数の未反応NCO基を有し;前記未反応NCO基に対する前記反応性水素基の化学量論比が0.85~1.15である、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
【請求項8】
前記研磨層が、実際の重量を実際の体積で割ることにより決定される0.7~1.1g/立方センチメートルの密度を有する、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
【請求項9】
研磨層が膨張したポリマーミクロスフェアを含む、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
【請求項10】
研磨面が、同心円状、放射状、又はそれらの組み合わせのパターンの溝を含む、請求項1に記載の化学機械研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨に有用な研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及びその他の電子デバイスの製造では、半導体ウェハの表面上に、導電性、半導電性、及び誘電性の材料の複数の層が堆積され、そこから除去される。導電性、半導電性、及び誘電性の材料の薄層は、多数の堆積技術を使用して堆積され得る。現在のウェハ処理における一般的な堆積技術としては、特に、スパッタリングとしても知られる物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)、及び電気化学めっきが挙げられる。一般的な除去技術としては、特に、湿式及び乾式の等方性エッチング及び異方性エッチングが挙げられる。
【0003】
材料の層が逐次的に堆積及び除去されるのに伴い、ウェハの最上面は平坦でなくなる。その後の半導体処理(例えばメタライゼーション)ではウェハが平坦な表面を有する必要があるため、ウェハを平坦化する必要がある。平坦化は、粗い表面、凝集した材料、結晶格子の損傷、引掻き傷、及び汚染された層又は材料などの、望ましくない表面形状及び表面欠陥を除去するために有用である。
【0004】
化学機械平坦化、又は化学機械研磨(CMP)は、半導体ウェハなどのワークピースを平坦化又は研磨するために使用される一般的な技術である。従来のCMPでは、ウェハキャリア、又は研磨ヘッドがキャリアアセンブリに取り付けられる。研磨ヘッドはウェハを保持し、CMP装置内のテーブル又はプラテンに取り付けられた研磨パッドの研磨層と接触するようにウェハを配置する。キャリアアセンブリは、ウェハと研磨パッドとの間に制御可能な圧力を提供する。同時に、研磨媒体(例えばスラリー)が研磨パッド上に吐出され、ウェハと研磨層との間の隙間に引き込まれる。研磨を行うために、研磨パッドとウェハは典型的には互いに対して回転する。研磨パッドがウェハの下で回転すると、ウェハは典型的には環状の研磨トラック、又は研磨領域をスイープし、その際にウェハの表面は研磨層と直接相対することになる。ウェハ表面は、表面上の研磨層及び研磨媒体の化学的及び機械的作用によって研磨され、平坦化される。
【0005】
研磨プロセス中に研磨される基板には、引掻き傷やチャターマークなどの欠陥が形成される可能性がある。
【0006】
研磨レートなどの他の重要な特性を維持又は改善しながらも、研磨欠陥を低減するパッドを得ることが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、研磨面を有する研磨層を含む化学機械研磨パッドであって、研磨層が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、硫黄含有ジアミン硬化剤及び高分子量ポリオール硬化剤を含む硬化剤系と、の反応生成物を含み、高分子量ポリオール硬化剤が2,500~100,000の数平均分子量Mnを有し、高分子量ポリオール硬化剤が1分子あたり平均3~10個のヒドロキシル基を有し、高分子量ポリオール硬化剤対硫黄含有ジアミン硬化剤の重量比が3:10~7:10の範囲である、化学機械研磨パッドが開示される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層の形成に使用されるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、多官能イソシアネートとプレポリマーポリオールとを含む成分の反応生成物を含むことができる。
【0009】
多官能性イソシアネートは、脂肪族多官能性イソシアネート、芳香族多官能性イソシアネート、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。多官能性イソシアネートは、2,4トルエンジイソシアネート、2,6トルエンジイソシアネート、2,2’ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5ジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、及びそれらの混合物からなる群から選択されるジイソシアネートであってよい。
【0010】
プレポリマーポリオールは、ジオール、ポリオール、ポリオールジオール、それらのコポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。プレポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール(例えばポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)-co-ポリ(オキシエチレン)グリコール)、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、それらの混合物;並びにそれらと、エチレングリコール、1,2プロピレングリコール、1,3プロピレングリコール、1,2ブタンジオール、1,3ブタンジオール、2メチル1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5ペンタンジオール、3メチル1,5ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びトリプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上の低分子量ポリオールとの混合物、からなる群から選択することができる。例えば、プレポリマーポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、及びポリエチレンエーテルグリコール-co-ポリプロピレンエーテルグリコール(PEG-PPGコポリマー)のうちの少なくとも1種からなる群から選択することができ;任意選択的にはエチレングリコール、1,2プロピレングリコール、1,3プロピレングリコール、1,2ブタンジオール、1,3ブタンジオール、2メチル1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5ペンタンジオール、3メチル1,5ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びトリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種の低分子量ポリオールと混合されていてもよい。プレポリマーポリオールは、主に(すなわち90重量%以上)PTMEGであってもよい。
【0011】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーの総重量を基準として、7~11.4、8~10、8.3~9.8、8.5~9.5、8.6~9.3、8.7~9.25、又は8.9~9.25重量%の未反応イソシアネート(NCO)濃度を有することができる。市販のイソシアネート末端ウレタンプレポリマーの例としては、Imuthane(登録商標)プレポリマー(COIM USA,Inc.から入手可能、例えばPET80A、PET85A、PET90A、PET93A、PET95A、PET60D、PET70D、PET75D);Adiprene(登録商標)プレポリマー(LANXESS Urethane Systemsから入手可能、例えばLF800A、LF900A、LF910A、LF930A、LF931A、LF939A、LF950A、LF952A、LF600D、LF601D、LF650D、LF667、LF700D、LF750D、LF751D、LF752D、LF753D、L325);Andur(登録商標)プレポリマー(Anderson Development Companyから入手可能、例えば70APLF、80APLF、85APLF、90APLF、95APLF、60DPLF、70APLF、75APLF)が挙げられる。
【0012】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、遊離トルエンジイソシアネート(TDI)モノマー含有量が0.1重量%未満の低遊離イソシアネート末端ウレタンプレポリマーであってもよい。
【0013】
硬化剤
硬化剤は、硫黄含有ジアミン硬化剤及び高分子量ポリオール硬化剤を含む。
【0014】
硫黄含有ジアミン硬化剤は、芳香族環からのペンダント基である1つ以上のアルキルチオ基を有するジアミン官能性芳香族化合物を含むことができる。例えば、硫黄含有ジアミン硬化剤は、ジアルキルチオトルエンジアミン、モノアルキルチオトルエンジアミン、又はその両方を含むか、又は本質的にそれらからなるか、又はそれらからなることができ、それぞれの場合において、アルキル基は1、2、又は3個の炭素原子を含む。例えば、硫黄硬化剤は、モノメチルチオトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、又はそれらの組み合わせを含むか、又は本質的にそれらからなるか、又はそれらからなることができる。例えば、硫黄硬化剤は、硫黄含有ジアミン硬化剤の総重量を基準として95~97重量パーセントのジメチルチオトルエンジアミンを含むことができる。例えば、硫黄硬化剤は、硫黄含有ジアミン硬化剤の総重量を基準として2~3%のモノメチルチオトルエンジアミンを含むことができる。例えば、硫黄含有ジアミン硬化剤は、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミンの異性体(例えば3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0015】
高分子量ポリオール硬化剤は、2,500~100,000gの数平均分子量Mnを有することができる。例えば、使用される高分子量ポリオール硬化剤は、5,000~50,000、7,500~25,000、又は10,000~12,000の数平均分子量Mnを有することができる。数平均分子量は、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することができる。
【0016】
高分子量ポリオール硬化剤は、1分子あたり平均3~10個、4~8個、5~7個、又は6個のヒドロキシル基を有することができる。
【0017】
市販の高分子量ポリオール硬化剤の例としては、Specflex(登録商標)ポリオール、Voranol(登録商標)ポリオール、及びVoralux(登録商標)ポリオール(The Dow Chemical Companyから入手可能)、Multranol(登録商標)Specialty Polyols及びUltracel(登録商標)Flexible Polyols(Covestro AGから入手可能)、及びPluracol(登録商標)Polyols(BASFから入手可能)が挙げられる。
【0018】
本発明者らは、研磨パッドの形成において硫黄含有ジアミン硬化剤と高分子量ポリオール硬化剤との組み合わせを使用すると、これらの硬化剤のいずれかを単独で使用した場合と比較して、或いは高分子量ポリオールと4,4’メチレンビス(2クロロアニリン)(MBOCA)などの硫黄非含有硬化剤とを組み合わせた場合と比較して、研磨中の欠陥が驚くほど減少することを見出した。
【0019】
反応性基の化学量論比
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層の形成に使用される硬化剤系の成分(すなわち、高分子量ポリオール硬化剤及び二官能性硬化剤)に含まれる反応性水素基の合計(すなわち、アミン(NH2)基とヒドロキシル(OH)基の合計)をイソシアネート末端ウレタンプレポリマー中の未反応イソシアネート(NCO)基で割った値(すなわち化学量論比)は、0.85から最大1.15、又は最大1.05、又は最大1.0とすることができる。
【0020】
パッドの構造及び構成
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層の研磨面は、基板の研磨に適するようにされる。例えば、研磨面は、磁性基板、光学基板、及び半導体基板のうちの少なくとも1つから選択される基板の研磨に適するようにすることができる。好ましくは、研磨面は半導体基板の研磨に適するようにされる。例えば、研磨面は半導体基板のケイ素酸化物(例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS))表面又はケイ素窒化物(SiN)表面の研磨に適するようにすることができる。
【0021】
研磨面は、穴及び溝のうちの少なくとも1つから選択されるマクロテクスチャーを有することができる。穴は、研磨面から研磨層の厚さの途中又は全体にわたって延在することができる。溝は、研磨中に化学機械研磨パッドが回転する際に少なくとも1つの溝が研磨される基板の表面をスイープするように、研磨面上に配置することができる。例えば、研磨面は、湾曲した溝、直線状の溝、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの溝を含むマクロテクスチャーを有することができる。
【0022】
例えば、溝のデザインは、同心円状の溝(円形又は螺旋状であってもよい)、湾曲した溝、放射状の溝、クロスハッチ溝(例えばパッド表面を横切るXY格子として配置)、その他の規則的なデザイン(例えば六角形、三角形)、タイヤトレッド型パターン、不規則なデザイン(例えばフラクタルパターン)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。例えば、溝のデザインは、ランダムな溝、同心円状の溝、螺旋溝、放射状の溝、クロスハッチ溝、XY格子溝、六角形溝、三角形溝、フラクタル溝、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。具体的な例として、研磨面は、同心円状の溝パターン、又は同心円状の溝パターンとその中に形成された放射状の溝との組み合わせを有することができる。溝の形状は、直線状の側壁を有する長方形から選択することができ、或いは溝の断面は、「V」字形、「U」字形、鋸歯形、及びそれらの組み合わせであってよい。
【0023】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、任意選択的には、複数のマイクロエレメントをさらに含む。複数のマイクロエレメントは、研磨層全体に均一に分布させることができる。複数のマイクロエレメントは、閉じ込められた気泡、中空コアポリマー系材料、液体充填中空コアポリマー系材料、水溶性材料、及び不溶性相材料(例えば鉱油)から選択することができる。複数のマイクロエレメントは、150μm未満(より好ましくは50μm未満、最も好ましくは10~50μm)の体積平均径を有する。複数のマイクロエレメントは、ポリマーマイクロバルーンを含む。マイクロバルーンは、例えば、ポリアクリロニトリル又はポリアクリロニトリルコポリマー(例えばNouryonのExpancel(登録商標)ミクロスフェア)を含むシェル壁を有することができる。複数のマイクロエレメントは、0~50、5~35、又は10~25体積%の空隙率を提供するように研磨層の中に組み込まれる。
【0024】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、多孔質構成と非多孔質構成(すなわち充填されていない)の両方で提供することができる。本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、ASTM D1622に従って測定される0.6g/cm3を超える密度、例えば0.7~1.2、0.75~1.0、又は0.75~0.95g/cm3の密度を示す。
【0025】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、ASTM D2240に従って測定される40~70、45~55、又は50~55のショアD硬度を有することができる。これらの硬度は、Dプローブを備えたHoto Instruments Asker P2デュロメータを使用して、支持面を測定する際の誤差を排除するために、80ミル(2.032mm)の厚さを有する3.81cm四方のサンプルを4枚積み重ねることによって測定した。
【0026】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、ASTM D412-98a(2002年再承認)の試験方法Aに従って測定される125~350、140~300、又は150~200%の破断伸びを示す。この試験では、最大荷重1000ニュートンのInstron2712-02ロードセルと、約30psi(207kPa)でクランプするInstron空気圧式サイドアクショングリップとを備えたMTS Criterion C43試験機を使用した。試験片は、厚さ80ミル(2.032mm)の米国慣用単位の標準ダンベルダイCの寸法に基づき、試験温度は23℃+/-2℃であった。試験片は、20インチ(50.8cm)+/-2インチ毎分(5.08cm/分)のグリップで変形させた。各サンプルについて5回繰り返して測定され、中央値が報告された。
【0027】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、20.00mm×6.53mm×2.02mmのサンプルサイズでASTM D5279-13に従って測定される50~300、75~250、又は100~200MPaのせん断弾性率(30℃)G’30を有することができる。昇温速度は3℃/分に設定され、TA InstrumentsのARES-G2ねじりレオメーター及びねじり長方形試料クランプが使用され、動的ねじり変位は0.2%であり、周波数は10.0rad/秒である。
【0028】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、ASTM D5279-13に従って測定される45~275MPaのせん断弾性率(40℃)G’40を有することができる。
【0029】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、ASTM D5279-13に従って測定される3~20MPaのせん断損失弾性率(40℃)G’40を有することができる。
【0030】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、ASTM D5279-13に従って測定される1.5又は2から4までのG’30/90比を有することができる。
【0031】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、上述したASTM D412-98a(2002年再承認)の試験方法Aに従って測定された応力-歪み曲線から計算される20MPaから又は25MPaから80MPaまで又は70MPaまで又は60MPaまで又は50MPaまで又は40MPaまでの靭性を有することができる。
【0032】
本発明の化学機械研磨パッドの研磨層は、上述したASTM D412-98a(2002年再承認)の試験方法Aに従って測定される10MPa又は15MPaから35MPaまで又は30MPaまで又は25MPaまでの引張強さを有することができる。
【0033】
高い破断伸び値を示す研磨層材料は、機械加工操作を受けると可逆的に変形する傾向があり、その結果、溝形成が許容できないほど悪くなり、ダイヤモンドコンディショニング中のテクスチャー形成が不十分になる。本発明の化学機械研磨パッドの研磨層の形成に使用される独自の硬化剤系は、40~70、45~55、又は50~55のショアD硬度と、前述したASTM D412-98a(2002年再承認)の試験方法Aに従って測定される125~300、140~300、150~250、又は150~200%の破断伸びの両方を提供する。
【0034】
研磨層は、20~150ミル、30~125ミル、40~120ミル、又は50~100ミル(0.5~3.8mm、0.8~3.2mm、1.0~3.0mm、又は1.3~2.5mm)の平均厚さを有することができる。
【0035】
本発明の化学機械研磨パッドは、研磨機のプラテンと界面で接合されるようにすることができる。例えば、化学機械研磨パッドは、研磨機のプラテンに貼り付けられるようにすることができる。例えば、貼り付けは、感圧接着剤及び真空のうちの少なくとも1つを使用して行うことができる。
【0036】
本発明の化学機械研磨パッドは、任意選択的には、研磨層と界面で接合された少なくとも1つの追加の層をさらに含む。例えば、化学機械研磨パッドは、任意選択的には、研磨層に接着された圧縮可能なベース層をさらに含む。圧縮可能なベース層は、研磨される基板の表面に対する研磨層の形状適合性を向上させることができる。
【0037】
基板研磨作業における重要なステップは、プロセスの終点を決定することである。終点を検出するための1つの一般的なin situ法は、選択された波長の光に対して透明な1つ以上の窓を備えた研磨パッドを提供することを含む。 研磨中、光線は窓を通して基板表面に照射され、そこで反射して窓を通って戻り、検出器(例えば分光光度計)に入る。戻り信号に基づいて、基板表面の特性(例えばその上の膜厚)を終点検出の目的で決定することができる。このような光に基づく終点法を容易にするために、本発明の化学機械研磨パッドは、終点検出窓を任意選択的にさらに含む。終点検出窓は、研磨層に組み込まれた一体型窓、及び化学機械研磨パッドに組み込まれたプラグインプレイス終点検出窓ブロックから選択することができる。当業者であれば、意図された研磨プロセスで使用するための終点検出窓の適切な構成材料を選択することを理解しているであろう。
【0038】
パッドの製造方法
本発明の化学機械研磨パッドの製造方法は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと硬化剤系とを組み合わせて組み合わせを形成すること;組み合わせを反応させて生成物を形成すること;生成物から研磨層を形成すること;及び研磨層を備えた化学機械研磨パッドを形成すること;を含み得る。イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと硬化剤系との組み合わせは、例えば膨張性ポリマーマイクロバルーンなどのマイクロエレメントをさらに含むことができる。
【0039】
方法は、鋳型を準備すること;鋳型に組み合わせを注ぐこと;及び鋳型内で組み合わせを反応させて加熱オーブン内で硬化ケーキを形成すること;を含むことができ、研磨層はこの硬化ケーキから得られる。例えば、硬化ケーキを削り取る(スライス又はカット)ことで、単一の硬化ケーキから複数の研磨層が得られる。任意選択的には、方法は、削り取る操作を行いやすくするために硬化ケーキを加熱することをさらに含む。任意選択的には、硬化ケーキは、硬化ケーキが複数の研磨層へと削られる削り取り操作中に赤外線加熱ランプを使用して加熱することができる。
【0040】
本発明の化学機械研磨パッドの製造方法は、任意選択的には、少なくとも1つの追加の層(例えばベース層又はサブパッド層)を準備すること;及び少なくとも1つの追加の層を研磨層と界面で接合して化学機械研磨パッドを形成すること;をさらに含む。少なくとも1つの追加の層は、接着剤(例えば感圧接着剤、ホットメルト接着剤、コンタクト接着剤)を使用することによるなどの公知の技術によって研磨層に貼り付けることができる。
【0041】
本発明の化学機械研磨パッドの製造方法は、任意選択的には、終点検出窓を準備すること;及び終点検出窓を化学機械研磨パッドに組み込むこと;をさらに含む。
【0042】
研磨方法
基板を化学機械研磨するための本発明の方法は、好ましくは、プラテンを有する化学機械研磨装置を準備すること;研磨される少なくとも1つの基板を準備すること(例えば、基板は、磁性基板、光学基板、及び半導体基板のうちの少なくとも1つからなる群から選択され、好ましくは基板は半導体基板である);本発明の化学機械研磨パッドを準備すること;化学機械研磨パッドをプラテン上に取り付けること;任意選択的に、化学機械研磨パッドの研磨面と基板との間の界面に研磨媒体(例えば研磨スラリー又は非研磨材含有反応性液体配合物)を準備すること、研磨面と基板との間に動的接触を形成し、少なくとも一部の材料を基板から除去すること;並びに任意選択的に研磨面を研磨材コンディショナーでコンディショニングすること;を含む。研磨スラリーは、例えば、化学添加剤の有無にかかわらず、酸化セリウム研磨材を含むことができる。任意選択的には、本発明の方法において準備される化学機械研磨装置は、光源及び光センサー(好ましくはマルチセンサー分光器)をさらに含み、準備される化学機械研磨パッドは、終点検出窓をさらに含み;方法は、光源からの光を終点検出窓を通して透過させることによって研磨終点を決定すること;及び基板の表面から反射して戻り終点検出窓を通って光センサーに入射した光を分析すること;をさらに含む。
【実施例0043】
研磨層の形成
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを、表1に示す配合に従って硬化剤系及び膨張性ポリマーミクロスフェアと混合した。各配合で、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは約9.1%のNCO%を有する。SC1と表されている硫黄含有硬化剤は、95~98重量%のジメチルチオトルエンジアミンと2~3重量%のモノメチルチオトルエンジアミンとを含む。HMWC2と表されている高分子量ポリオール硬化剤は、約11,400グラム/モルの平均分子量及び6のOH基の公称官能価を有する。膨張性ポリマーミクロスフェアは、表1に記載されている比重が得られる量で混合物に添加した。イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤系の量は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中の未反応NCO基に対する硬化剤系中の反応性水素基の化学量論比が表に示されている通りになるように選択される。混合物を鋳型に供給し、加熱して硬化組成物を形成する。密度又は比重は、ポリマー密度を使用して、削ったパッドの実際の重量及び体積によって決定される。硬化した組成物を研磨層として使用する厚さに成形し、サブパッドに塗布する。
【0044】
【0045】
研磨層を有するパッドの欠陥についての試験。
表1に示す配合物の研磨層を有するパッドを製造した。これらを使用して、セリアスラリーで3枚のウェハを研磨した。
【0046】
表2に示す配合物の研磨層を有するパッドで研磨した第1のセットのウェハを、走査型電子顕微鏡により引掻き傷及びチャターマーク欠陥について検査した。表2に示す比較1の配合物を含むパッドに正規化されたデータは、本発明の配合物で欠陥が大幅に改善されていることを示している。
【0047】
表3に示す配合物の研磨層を有するパッドで研磨した第2のセットのウェハを、走査型電子顕微鏡によって引掻き傷及びチャターマーク欠陥について、並びにTEOS及びSiNの研磨レートについて検査した。表3に示す比較1の配合物を含むパッドに正規化されたデータは、本発明の配合物で欠陥が大幅に改善されており、且つSiNの研磨レートが改善されていることを示している。
【0048】
表4に示す配合物の研磨層を有するパッドで研磨した第3のセットのウェハを、走査型電子顕微鏡によって引掻き傷及びチャターマーク欠陥について、並びにTEOS及びSiNの研磨レートについて検査した。表4に示す比較1の配合物を含むパッドに正規化されたデータは、本発明の配合物で欠陥が大幅に改善されており、且つTEOSの研磨レートがほとんど又は全く低下せずにSiNの研磨レートが改善されていることを示している。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
したがって、本明細書では、以下の非限定的な態様が開示される:
【0053】
態様1.研磨面を有する研磨層を含む化学機械研磨パッドであって、研磨層が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、(a)硫黄含有ジアミン硬化剤及び(b)高分子量ポリオール硬化剤を含む硬化剤系と、の反応生成物を含み、高分子量ポリオール硬化剤が2,500~100,000の数平均分子量Mnを有し、高分子量ポリオール硬化剤が1分子あたり平均3~10個のヒドロキシル基を有し、高分子量ポリオール硬化剤対硫黄含有ジアミン硬化剤の重量比が3:10~7:10の範囲である、化学機械研磨パッド。
【0054】
態様2.硫黄含有ジアミン硬化剤が、芳香族環からのペンダント基である1つ以上のアルキルチオ基を有するジアミン官能性芳香族化合物を含む、態様1に記載の化学機械研磨パッド。
【0055】
態様3.硫黄含有ジアミン硬化剤が、ジアルキルチオトルエンジアミン、モノアルキルチオトルエンジアミン、又はその両方を含み、それぞれの場合において、アルキル基が1、2、又は3個の炭素原子を含む、態様1又は2に記載の化学機械研磨パッド。
【0056】
態様4.硫黄含有ジアミン硬化剤が、ジアミン硬化剤の総重量を基準として少なくとも95重量パーセントのジメチルチオトルエンジアミンを含む、態様1~3のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0057】
態様5.高分子量ポリオール硬化剤対硫黄含有ジアミンの重量比が4:10~5:10の範囲である、態様1~4のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0058】
態様6.イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが8.3~9.8重量%の未反応NCO基を有する、態様1~5のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0059】
態様7.硬化剤系が複数の反応性水素基を有し、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが複数の未反応NCO基を有し;未反応NCO基に対する反応性水素基の化学量論比が0.85~1.15である、態様1~6のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0060】
態様8.研磨層が、実際の重量を実際の体積で割ることにより決定される0.7~1.1g/立方センチメートルの密度を有する、態様1~7のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0061】
態様9.研磨層が膨張したポリマーミクロスフェアを含む、態様1~8のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0062】
態様10.研磨面が、同心円状、放射状、又はそれらの組み合わせのパターンの溝を含む、態様1~9のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0063】
態様11.高分子量ポリオール硬化剤が、5,000~50,000、好ましくは7,500~25,000、又はより好ましくは10,000~12,000の数平均分子量を有する、態様1~10のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0064】
態様12.高分子量ポリオール硬化剤が、1分子あたり平均4~8個、好ましくは5~7個、又はより好ましくは6個のヒドロキシル基を有する、態様1~11のいずれか1つに記載の化学研磨パッド。
【0065】
本明細書に開示されている全ての範囲は終点を含み、終点は独立して互いに組み合わせることが可能である(例えば、「最大25重量%、より具体的には5重量%~20重量%」の範囲は、終点と、「5重量%~25重量%」の範囲の全ての中間値を包含する、など)。さらに、記載されている上限及び下限を組み合わせて範囲を形成することができる(例えば、「少なくとも1重量%又は少なくとも2重量%」と「最大10又は5重量%」を組み合わせて、「1~10重量%」又は「1~5重量%」又は「2~10重量%」又は「2~5重量%」の範囲とすることができる)。
【0066】
本開示は、本明細書に開示されている任意の適切な成分を含む、又はそれらからなる、又はそれらから本質的になるのいずれかであることができる。本開示は、追加的に、又は代わりに、先行技術の組成物において使用されている、或いは本開示の機能及び/又は目的の達成に必要でない任意の成分、材料、原料、助剤、又は種を含まないように、或いは実質的に含まないように配合することができる。
【0067】
引用されている全ての特許、特許出願、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ただし、組み込まれた参考文献の用語と本出願の用語が矛盾又は対立する場合、組み込まれた参考文献の対立する用語よりも本出願の用語が優先される。
【0068】
本明細書で別段の指定がない限り、全ての試験規格は、本出願の出願日時点で有効な最新の規格であり、或いは優先権が主張されている場合は、試験規格が登場する最先の優先出願の出願日時点で有効な最新の規格である。