(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020041
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】オンシジウム(Oncidium)植物抽出物、および糖尿病を治療し、肝臓を保護し、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止するための薬剤製造のためのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/8984 20060101AFI20250131BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250131BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250131BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
A61K36/8984
A61P1/16
A61P3/10
A61P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024120868
(22)【出願日】2024-07-26
(31)【優先権主張番号】63/516,145
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520458635
【氏名又は名称】長庚學校財團法人長庚科技大學
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】黄聰龍
(72)【発明者】
【氏名】張祐嘉
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB89
4C088AC05
4C088AC11
4C088BA08
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA07
4C088MA17
4C088MA52
4C088MA66
4C088NA14
4C088ZA59
4C088ZA75
4C088ZC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】天然化合物、及び糖尿病を治療し、肝臓を保護し、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止するための薬剤製造のためのその使用を提供する。
【解決手段】オンシジウム植物抽出物が提供される。その調製ステップは、オンシジウム植物試料を採取するステップと、試料を乾燥させて粉砕し、粉砕オンシジウム植物試料を得るステップと、次いで、加速溶媒抽出または超音波抽出によって、粉砕オンシジウム植物試料を溶媒中で抽出して、オンシジウム植物抽出物を得るステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンシジウム植物抽出物であって、以下のステップ:
オンシジウム植物試料を採取するステップと、
前記試料を乾燥させて粉砕し、粉砕オンシジウム植物試料を得るステップと、
加速溶媒抽出または超音波抽出によって、前記粉砕オンシジウム植物試料を溶媒中で抽出して、オンシジウム植物抽出物を得るステップと、
によって調製される、前記オンシジウム植物抽出物。
【請求項2】
前記溶媒が、アルコール、エステル、または水であり、前記オンシジウム植物抽出物が、オンシジウム植物のアルコール抽出物、エステル抽出物、または水によって抽出され、次いでエステルによって抽出された抽出物である、請求項1記載のオンシジウム植物抽出物。
【請求項3】
前記オンシジウム植物抽出物が、前記オンシジウム植物の根、茎または葉から抽出されるか、あるいは前記オンシジウム植物の根、茎および葉で構成される混合物である、請求項1記載のオンシジウム植物抽出物。
【請求項4】
前記オンシジウム植物抽出物が、前記オンシジウム植物の根から抽出される、請求項3記載のオンシジウム植物抽出物。
【請求項5】
オンシジウム種が、オンシジウム・スタシ(Oncidium stacyi)、オンシジウム・スプレンジドゥム(Oncidium splendidum)、オンシジウム・プシルム(Oncidium pusillum)、オンシジウム・ジョネシアヌム(Oncidium jonesianum)、オンシジウム・ハウケシアナ(Oncidium hawkesiana)、オンシジウム・アセンデンス(Oncidium ascendens)、オンシジウム・アムプリアツム(Oncidium ampliatum)、またはオンシジウム・フレクスオスム(Oncidium flexuosum)を含む、請求項1記載のオンシジウム植物抽出物。
【請求項6】
糖尿病治療を必要とする被験体において、糖尿病を治療するための薬剤製造のための、請求項1~5のいずれかに記載のオンシジウム植物抽出物の使用。
【請求項7】
前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.007mg/kg体重~100mg/kg体重である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.035mg/kg体重~75mg/kg体重である、請求項6記載の使用。
【請求項9】
ヒトにおける前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.07mg/kg体重~50mg/kg体重である、請求項6記載の使用。
【請求項10】
前記被験体が哺乳動物またはヒトである、請求項6記載の使用。
【請求項11】
肝臓保護を必要とする被験体において、肝臓を保護するための薬剤製造のための、請求項1~5のいずれかに記載のオンシジウム植物抽出物の使用。
【請求項12】
前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.001mg/kg体重~50mg/kg体重である、請求項11記載の使用。
【請求項13】
前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.009mg/kg体重~25mg/kg体重である、請求項11記載の使用。
【請求項14】
前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.015mg/kg体重~10mg/kg体重である、請求項11記載の使用。
【請求項15】
前記被験体が哺乳動物またはヒトである、請求項11記載の使用。
【請求項16】
急性呼吸促迫症候群(ARDS)防止を必要とする被験体において、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止するための薬剤製造のための、請求項1~5のいずれかに記載のオンシジウム植物抽出物の使用。
【請求項17】
ヒトにおける前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.007mg/kg体重~50mg/kg体重である、請求項16記載の使用。
【請求項18】
ヒトにおける前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.02mg/kg体重~25mg/kg体重である、請求項16記載の使用。
【請求項19】
ヒトにおける前記オンシジウム植物抽出物の有効量が、0.035mg/kg体重~20mg/kg体重である、請求項16記載の使用。
【請求項20】
前記被験体が哺乳動物またはヒトである、請求項16記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンシジウム(Oncidium)植物抽出物、および糖尿病を治療し、肝臓を保護し、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止するための薬剤製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病(DM)は、インスリンおよび/またはインスリン産生の障害によって引き起こされる代謝性疾患であり、高血糖を導く。DM患者はしばしば、多くの合併症を有し、このうちの1つが自己治癒障害である。
【0003】
糖尿病創傷治癒障害は、糖尿病患者の主要かつ最も難治性の合併症であり、血管、神経障害、免疫および生化学構成要素などの多様な要因に関連する。高血糖は動脈を硬化させ、続いて循環遅延および微小血管機能障害、ならびに組織酸素供給減少を導き;高血糖はまた、創傷への白血球の遊走を減少させ、ヒトをより感染しやすくする。DMにおける末梢神経障害は、その領域を無感覚にし、疼痛を感じる能力を減少させる可能性があり、このため、創傷が直ちに気付かれず、適切な治療が取られなくなる可能性がある。
【0004】
肝臓は、人体における最も重要な臓器の1つであり、薬剤、アルコール、食餌、低質な仕事や休息によって損傷を受けうる。肝臓傷害は、肝細胞の変性、壊死、線維性組織過形成および他の病変を導く可能性があり、続いて、一連の肝臓病的変化および続発性疾患、例えば肝炎、肝癌、および肝硬変を導くであろう。
【0005】
グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)およびグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)は、人体において、アミノ酸およびタンパク質の代謝に主に関与し、肝細胞で高濃度であるため、ひとたび肝臓が損傷を受けると、GOTおよびGPTは血中に流れ込み、したがってこれらは血液試験において、肝臓傷害を同定する生物学的指標として用いられる。
【0006】
急性呼吸促迫症候群(ARDS)は、肺への急性炎症性傷害であり、肺胞の正常な機能に影響を及ぼし、呼吸交換に影響して、血中の不十分な酸素濃度や、それに続く体の多様な臓器への損傷を生じる、致死性急性疾病である。ARDSの治療は、人工呼吸器などの支持療法に基づく。
【0007】
天然化合物は、豊富に供給され多様な骨格を持つ利点があり、薬剤開発の重要な基剤である。1981年から2019年まで、新規FDA認可薬剤の半数近くが天然産物またはその誘導体に由来しており、例えば癌治療用のコカイン由来麻薬、モルヒネ由来鎮痛剤、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびパクリタキセル、ならびに抗生物質としての真菌由来ペニシリンがある。したがって、本発明は、どの天然化合物が、DMを治療し、肝臓を保護し、またはARDSを防止するための新規薬剤として発展させる潜在的可能性を有するかを決定するため、積極的に研究する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、オンシジウム植物抽出物であり、その調製ステップは、オンシジウム植物試料を採取するステップと、この試料を乾燥させて粉砕し、粉砕オンシジウム植物試料を得るステップと、次いで、加速溶媒抽出または超音波抽出によって粉砕オンシジウム植物試料を溶媒中で抽出して、オンシジウム植物抽出物を得るステップである。
【0009】
本発明において、溶媒は、好ましくは、アルコール、エステル、または水であり、オンシジウム植物抽出物は、好ましくは、オンシジウム植物のアルコール抽出物、エステル抽出物、または水によって抽出され、次いでエステルによって抽出された抽出物である。
【0010】
本発明のアルコールは、限定されるわけではないが、最も好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノールを含み、エステルは、限定されるわけではないが、最も好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルを含む。
【0011】
本発明のオンシジウム植物抽出物は、好ましくは、オンシジウム植物の根、茎または葉、あるいはオンシジウム植物の根、茎および葉で構成される混合物から抽出される。
【0012】
本発明のオンシジウム植物抽出物は、最も好ましくは、オンシジウム植物の根から抽出される。
【0013】
本発明において、オンシジウム種は、オンシジウム・スタシ(Oncidium stacyi)、オンシジウム・スプレンジドゥム(Oncidium splendidum)、オンシジウム・プシルム(Oncidium pusillum)、オンシジウム・ジョネシアヌム(Oncidium jonesianum)、オンシジウム・ハウケシアナ(Oncidium hawkesiana)、オンシジウム・アセンデンス(Oncidium ascendens)、オンシジウム・アムプリアツム(Oncidium ampliatum)、またはオンシジウム・フレクスオスム(Oncidium flexuosum)を含む。
【0014】
本発明は、糖尿病治療を必要とする被験体において、糖尿病を治療するための薬剤を製造するためのオンシジウム植物抽出物の使用に関する。
【0015】
本発明はまた、肝臓保護を必要とする被験体において、肝臓を保護するための薬剤を製造するためのオンシジウム植物抽出物の使用に関する。
【0016】
本明細書で使用される際、本発明における用語「肝臓保護」は、肝臓傷害から被験体を保護するか、肝臓傷害の可能性を減少させるか、または肝臓傷害の度合いを軽減することを指す。本発明の用語「肝臓傷害」には、限定されるわけではないが、肝臓傷害、肝臓疾患、例えば肝炎(限定されるわけではないが、アルコール性肝炎、薬剤誘導性肝炎、脂肪性肝炎、慢性肝炎を含む)、肝癌、肝硬変、肝線維症、脂肪肝、肝機能低下(hepatic decline)、および肝臓傷害によって引き起こされる他の肝臓疾患(限定されるわけではないが、急性肝臓傷害または慢性肝臓傷害)が含まれる。
【0017】
本発明はさらに、急性呼吸促迫症候群(ARDS)防止を必要とする被験体において、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止するための薬剤を製造するためのオンシジウム植物抽出物の使用に関する。
【0018】
本明細書で使用される際、本発明の用語「急性呼吸促迫症候群(ARDS)」は、輸血関連肺傷害、人工呼吸器誘導性肺傷害、細菌誘導性肺傷害、またはウイルス誘導性肺傷害を含む。
【0019】
本発明において、薬剤は、オンシジウム植物抽出物に関して医薬的に許容されうるキャリアーをさらに含んでもよい。
【0020】
用語「有効量」は、個体に投与された際に有効な結果を達成しうる量、あるいはin vivoまたはin vitroで望ましい活性を有する量である。炎症性障害の場合、無治療と比較した際、有効臨床転帰には、疾患または状態と関連する症状の度合いまたは重症度の軽減、および/または個体の生命の延長、および/または個体の生活の質の改善が含まれる。個体に投与される化合物の正確な量は、疾患または症状のタイプおよび重症度に応じ、かつ個体の全身健康状態、個体の年齢、性別、体重、および薬剤耐性などの個々の特性に応じる。こうした量は、炎症性障害、自己免疫障害およびアレルギー性障害の状態、重症度およびタイプ、または望ましい免疫抑制効果によっても支配される。当業者は、本発明の開示される技術的特徴に基づいて、これらのおよび他の要因にしたがって、適切な用量を決定することが可能であろう。
【0021】
本発明において、本発明のオンシジウム植物抽出物の有効量は、0.001mg/kg体重~100mg/kg体重である。
【0022】
さらに、本発明のオンシジウム植物抽出物の有効量は、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、100mg/kg体重であってもよい。
【0023】
本発明の有効量は、2005年7月にFDAによって刊行された、Guidance for Industry: Establishing the Maximum Safe Starting Doses in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers, U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research(CDER)に提供される公式および安全性要因にしたがって、異なる種の被験体の同等の有効量に変換されうる。
【0024】
被験体において、糖尿病を治療するための薬剤製造のための使用において、被験体はヒトまたは哺乳動物であり、本発明の有効量は、0.007mg/kg体重~1.5mg/kg体重であり;本発明の有効量は、好ましくは、0.035mg/kg体重~1.3mg/kg体重であり;本発明の有効量は、最も好ましくは、0.07mg/kg体重~0.75mg/kg体重である。
【0025】
詳細には、被験体において糖尿病を治療するための薬剤製造のための使用において、平均体重25グラムのマウスにおける本発明の有効量は、1mg/kg体重~100mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.01mg/kg体重~1.5mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.007mg/kg体重~0.8mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.01mg/kg体重~1.2mg/kg体重であり;好ましくは、平均体重25グラムのマウスにおける本発明の有効量は、5mg/kg体重~75mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.05mg/kg体重~1.3mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.035mg/kg体重~0.6mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.05mg/kg体重~0.85mg/kg体重であり;最も好ましくは、平均体重25グラムのマウスにおける本発明の有効量は、10mg/kg体重~50mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.13mg/kg体重~0.75mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.07mg/kg体重~0.45mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.1mg/kg体重~0.6mg/kg体重である。
【0026】
被験体において肝臓を保護するための薬剤製造のための使用において、被験体はヒトまたは哺乳動物であり、本発明の有効量は、0.001mg/kg体重~1.75mg/kg体重であり;本発明の有効量は、好ましくは、0.009mg/kg体重~1mg/kg体重であり;本発明の有効量は、最も好ましくは、0.015mg/kg体重~0.4mg/kg体重である。
【0027】
詳細には、被験体において肝臓を保護するための薬剤製造のための使用において、平均体重350グラムのラットにおける本発明の有効量は、0.1mg/kg体重~50mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.003mg/kg体重~1.75mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.001mg/kg体重~1.25mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.002mg/kg体重~1.5mg/kg体重であり;好ましくは、平均体重350グラムのラットにおける本発明の有効量は、0.5mg/kg体重~25mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.015mg/kg体重~1mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.009mg/kg体重~0.5mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.013mg/kg体重~0.7mg/kg体重であり;最も好ましくは、平均体重350グラムのラットにおける本発明の有効量は、1mg/kg体重~10mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.03mg/kg体重~0.4mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.015mg/kg体重~0.2mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.025mg/kg体重~0.3mg/kg体重である。
【0028】
被験体において急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止するための薬剤製造のための使用において、被験体はヒトまたは哺乳動物であり、本発明の有効量は、0.007mg/kg体重~0.75mg/kg体重であり;本発明の有効量は、好ましくは、0.02mg/kg体重~0.4mg/kg体重であり;本発明の有効量は、最も好ましくは、0.035mg/kg体重~0.35mg/kg体重である。
【0029】
詳細には、被験体において急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止するための薬剤製造のための使用において、平均体重25グラムのマウスにおける本発明の有効量は、1mg/kg体重~50mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.01mg/kg体重~0.75mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.007mg/kg体重~0.45mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.01mg/kg体重~0.65mg/kg体重であり;好ましくは、平均体重25グラムのマウスにおける本発明の有効量は、3mg/kg体重~25mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.04mg/kg体重~0.4mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.02mg/kg体重~0.25mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.03mg/kg体重~0.3mg/kg体重であり;最も好ましくは、平均体重25グラムのマウスにおける本発明の有効量は、5mg/kg体重~20mg/kg体重であり、平均体重10キログラムのイヌまたはネコにおける同等な有効量は、0.06mg/kg体重~0.35mg/kg体重であり、平均体重60キログラムの成人における同等な有効量は0.035mg/kg体重~0.2mg/kg体重であり、平均体重20キログラムの小児における同等な有効量は、0.05mg/kg体重~0.25mg/kg体重である。
【0030】
本発明において、本発明の被験体はヒト(例えば乳児、幼児、ティーンエージャー、若年成人、中年成人または高齢者)、齧歯類(例えばマウス、ラット)または哺乳類(例えばコンパニオン動物、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、テン(marten);実用動物(economic animal)、例えばウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ)である。好ましい様式において、本発明の被験体はヒトまたは哺乳動物である。本発明の被験体は、最も好ましくはヒトである。
【0031】
本発明はまた、医薬的に許容されうるキャリアーを含んでもよく、特に、あらかじめ決定された溶媒または油、pH調整剤をさらに含んでもよく、望ましい場合、分散剤をさらに含んでもよい。
本発明で用いられる溶媒の例には、限定されるわけではないが、水、エタノール、イソプロパノール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン等が含まれる。本発明で用いられる油の例は、限定されるわけではないが、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、綿実油、大豆油、ピーナツ油、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ミネラルオイル、スクアレン、ホホバ油、オリーブ油、月見草油、ルリジサ油、ブドウ種子油、ココナツ油、ヒマワリ油、シアバター、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0032】
溶媒および油を単独で、またはその任意の組み合わせで用いてもよい。
【0033】
本発明に有益な有用な分散剤の例には、限定されるわけではないが、レシチン、有機モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタン等が含まれてもよい。これらの原材料もまた、単独で、またはその任意の組み合わせで用いてもよい。
【0034】
本発明において、薬剤は、好ましくは経口で、または注射によって投与される。
【0035】
本発明において、本発明の薬剤はまた、外用剤として調製されてもよく、外用剤の例には、限定されるわけではないが、クリーム、軟膏、ジェル、洗浄ローションまたはパッチ等が含まれてもよく、あるいは吸入剤、エアロゾル、座薬等であってもよい。
【0036】
薬剤を外用剤として用いる際、基材として適切な皮膚外用剤を用いてもよく、既知の方法にしたがって、水性溶液、非水性溶媒、懸濁物、エマルジョンまたは凍結乾燥調製剤等を用い、滅菌してもよい。既知の方法を用いることによって、かつ既知の柔軟剤、乳化剤および増粘剤または当該技術分野に知られる他の材料を添加することによって、ジェル、クリームおよび軟膏の形の組成物を調製してもよい。
【0037】
例えば、柔軟剤、例えばトリメチロールプロパン、ポリエチレングリコールおよびグリセロール、例えばプロピレングリコール、エタノールおよびイソセチルアルコールの溶媒、ならびに純水を添加することによって、ジェル型組成物を調製してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、窒素フリーラジカルDPPHを阻害する際の各オンシジウム植物抽出物の有効性を例示する。
**/
***は有意に異なることを意味する。
【
図2】
図2は、酸素フリーラジカルAAPHを阻害する際の各オンシジウム植物抽出物の有効性を例示する。ΔAUCは、受信者操作特性曲線の曲線下面積を意味する;
**/
***は有意に異なることを意味する。
【
図3】
図3は、I型糖尿病の治療におけるオンシジウム植物抽出物の有効性を評価するための動物実験のフロー図を示す。記号の説明:*はストレプトゾトシンによる糖尿病の誘導を示す;$は非絶食時血中グルコースレベルのチェックを示す;#は18時間絶食時血中グルコースレベルのチェックを示す;→はオンシジウム植物抽出物を投与する期間を示す;!は屠殺を示す;%は肝臓機能指数(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT))および腎臓機能指数(クレアチニン(CRE)、尿素窒素(BUN))を決定するための血液パラメータを示す。
【
図4】
図4は、健康なマウス、糖尿病マウス、およびオンシジウム植物抽出物を投与された糖尿病マウスにおける、絶食前および18時間絶食後の血中グルコースレベルを例示する。
*は、処置群を非処置群に比較した際の有意差(P<0.05)を示す;+は投与を示す;-は非投与を示す。
【
図5】
図5は、健康なマウス、糖尿病マウス、およびオンシジウム植物抽出物を投与された糖尿病マウスにおける、耐糖試験を例示する。
*は、低投薬量ORC001R-U-EtOH群を非処置群に比較した際の有意差(P<0.05)を示す;#は、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群を非処置群に比較した際の有意差(P<0.05)を示す。
【
図6】
図6は、健康なマウス、糖尿病マウス、およびオンシジウム植物抽出物を投与された糖尿病マウスの血液パラメータを例示する。
*は、処置群を非処置群に比較した際の有意差を示す;+は投与を示す;-は非投与を示す。
【
図7】
図7は、健康なマウス、糖尿病マウス、およびオンシジウム植物抽出物を投与された糖尿病マウス由来の肝臓および腎臓切片の染色を例示する。+は投与を示す;-は非投与を示す。
【
図8】
図8は、健康なマウス、糖尿病マウス、およびオンシジウム植物抽出物を投与された糖尿病マウスの体重変化を例示する。
*は、低投薬量ORC001R-U-EtOH群を非処置群に比較した際の有意差(P<0.05)を示す;#は、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群を非処置群に比較した際の有意差(P<0.05)を示す;@は、高投薬量ORC001R-U-EtOH群を非処置群に比較した際の有意差(P<0.05)を示す。
【
図9】
図9は、2型糖尿病(T2DM)治療におけるオンシジウム植物抽出物の有効性を評価するための動物実験のフロー図を示す。記号の説明:*は非絶食時血中グルコースレベルのチェックを示す;$は8時間絶食時血中グルコースレベルのチェックを示す;#は腹腔内(I.P.)インスリン耐性試験を示す;@はI.P.耐糖試験を示す;→はオンシジウム植物抽出物を投与する期間を示す;!は屠殺を示す;%は肝臓機能指数(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT))および腎臓機能指数(クレアチニン(CRE)、尿素窒素(BUN))を決定するための血液パラメータを示す。
【
図10】
図10は、T2DMマウス、およびオンシジウム植物抽出物を4週間投与されたT2DMマウスにおける、8時間絶食後の血中グルコースレベルを示す。
**は、処置群を非処置群に比較した際の有意差(P<0.01)を示す。
【
図11】
図11は、T2DMマウス、およびオンシジウム植物抽出物を4週間投与されたT2DMマウスにおける、耐糖試験を示す。
*は、50mg/kg処置群を非処置群に比較した際の有意差(P<0.01)を示す。
【
図12】
図12は、T2DMマウス、およびオンシジウム植物抽出物を4週間投与されたT2DMマウスにおける、インスリン耐性試験を示す。#は、10mg/kg処置群を非処置群に比較した際の有意差(p<0.01)を示す。@は、25mg/kg処置群を非処置群に比較した際の有意差(p<0.01)を示す。
*は、50mg/kg処置群を非処置群に比較した際の有意差(p<0.01)を示す。
【
図13】
図13は、T2DMマウス、およびオンシジウム植物抽出物を4週間投与されたT2DMマウスの血液パラメータを示す。-は非投与を示す。
【
図14】
図14は、肝臓保護におけるオンシジウム植物抽出物の有効性を評価するための動物実験のフロー図を示す。記号の説明:*は、CCl
4による肝線維症の誘導を示す;%は血液収集を示す;→はオンシジウム植物抽出物を投与する期間を示す;!は屠殺を示す。
【
図15】
図15は、異なる群における肝線維症ラットの第7週の血液生化学分析結果(GOT、GPT)を例示する。+は投与を示す;-は非投与を示す。
【
図16】
図16は、異なる群における肝線維症ラットの血液生化学分析の週ごとの変化を例示する。
【
図17】
図17は、異なる群における肝線維症ラットのラット体重追跡結果を例示する。
【
図18】
図18は、オンシジウム植物抽出物が、マウスにおけるD-GalN/LPS誘導性急性肝傷害(ALI)を緩和したことを示す。+は投与を示す;-は非投与を示す;
*は、処置群を非処置群に比較した際の有意差(p<0.05)を示す;
***は、処置群を非処置群に比較した際の有意差(p<0.005)を示す。
【
図19】
図19は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止する際のオンシジウム植物抽出物の有効性を評価するための動物実験のフロー図を示す。記号の説明:*は、リポ多糖(LPS)によるARDSの誘導を示す;%は、オンシジウム植物抽出物の投与を示す;!は屠殺を示す。
【
図20】
図20は、異なる群のマウスにおける肺組織切片の染色結果を例示する。+は投与を示す;-は非投与を示す。
【
図21】
図21は、異なる群のマウスにおける血液分析結果を例示する。+は投与を示す;-は非投与を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本実施形態は、単に、最適な実施形態を記載し、本発明を制限するようには意図されない。
【0040】
オンシジウム植物抽出物の調製
【0041】
本発明において、抽出調製に用いられるオンシジウム植物試料は、オンシジウム植物の根(R)、茎(B)または葉(L)、あるいはその根、茎および葉の混合物のいずれかであった。オンシジウム植物の種は、オンシジウム・スタシ、オンシジウム・スプレンジドゥム、オンシジウム・プシルム、オンシジウム・ジョネシアヌム、オンシジウム・ハウケシアナ、オンシジウム・アセンデンス、オンシジウム・アムプリアツム、またはオンシジウム・フレクスオスムより選択されてもよい。オンシジウム植物試料を乾燥させ、粉砕し、使用準備が整うまで-20℃で保存した。
【0042】
本発明において、オンシジウム試料をまず、加速溶媒抽出(A)および超音波抽出(U)によって抽出した。
【0043】
加速溶媒抽出において、酢酸エチル(A-EA)、95%エタノール(A-EtOH)、H2O(A-W)、およびH2Oで抽出した後の残渣を、次いで、それぞれ、精製および抽出のための溶媒として酢酸エチルを用いることによって再抽出し、抽出温度は30~70℃であり(好ましくは50℃であり)、抽出時間は10~30分間であり(好ましくは15分間であり)、抽出圧は1300~1700psiであり(抽出プロセス中のわずかな圧力変動のため、好ましくは1500psiの平均圧であり)、次いで、本発明のオンシジウム植物抽出物(ORC001)を得た。異なる抽出部分および異なる溶媒にしたがって、抽出を:ORC001R-A-EA、ORC001R-A-EtOH、ORC001R-A-W、ORC001R-A-W+EA、ORC001B-A-EA、ORC001B-A-EtOH、ORC001B-A-W、ORC001B-A-W+EA、ORC001L-A-EA、ORC001L-A-EtOH、ORC001L-A-W、およびORC001L-A-W+EAと名付けた。
【0044】
超音波抽出において、酢酸エチル(U-EA)、95%エタノール(U-EtOH)、H2O(U-W)、およびH2Oで抽出した後の残渣を、次いで、それぞれ、室温での精製および抽出のための溶媒として酢酸エチルを用いることによって再抽出し、抽出温度は30~70℃であり(好ましくは50℃であり)、抽出時間は15~60分間であり(好ましくは30分間であり)、出力は200~600ワットであり(好ましくは400ワットであり)、周波数は20~60Hzであり(好ましくは40Hzであり)、次いで、本発明のオンシジウム植物抽出物(ORC001)を得た。抽出部分および溶媒にしたがって、抽出を:ORC001R-U-EA、ORC001R-U-EtOH、ORC001R-U-W、ORC001R-U-W+EA、ORC001B-U-EA、ORC001B-U-EtOH、ORC001B-U-W、ORC001B-U-W+EA、ORC001L-U-EA、ORC001L-U-EtOH、ORC001L-U-W、およびORC001L-U-W+EAと名付けた。
【0045】
異なる種のオンシジウム植物抽出物(同じ部分、同じ溶媒、同じ抽出法)の構成要素プロファイルの決定を、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)フィンガープリントによって行い、結果は、異なる種のオンシジウム植物抽出物で類似のフィンガープリントが観察されることを明らかにし、これは、これらの異なる種のオンシジウム植物抽出物に同じ化合物が存在することを示した。したがって、本発明のオンシジウム植物試料として、オンシジウム・フレクスオスム種を選択した。
【0046】
スーパーオキシドアニオンおよびエラスターゼ放出の阻害試験
【0047】
上述の多様なオンシジウム植物抽出物の抗炎症能を、スーパーオキシドアニオンおよびエラスターゼ放出の阻害試験を通じて、本発明において評価した。
【0048】
まず、好中球の調製を行った。
【0049】
健康なドナー(20~35歳;通常の仕事および休息を行い、1週間を超えて薬剤の摂取を控えている)の血液約50mLを肘静脈から真空無菌血液収集チューブに収集し、これを等体積の3%デキストラン溶液(デキストラン)に添加し、均一に混合し、静置させて赤血球を沈降させた。好中球を含有する上清を採取し、遠心管中に含有されるFicoll-Paque溶液上を覆い、次いで、遠心管を遠心分離して、異なる血液細胞を密度勾配によって分離させ、底部に沈殿した好中球およびわずかな赤血球を得た。残渣赤血球を異なる濃度のNaCl溶液で膨張させ、2つの細胞間の浸透圧耐性の相違を利用することによって、必要な好中球を保持した。
【0050】
呼吸器ブラスティング(respiratory blasting)実験および脱顆粒機能の評価によって、好中球に対する、上述の多様なオンシジウム植物抽出物の炎症反応の評価を行った。
【0051】
呼吸器ブラスティングは、主に、スーパーオキシドアニオン(O2
・-)及び反応性酸素種(ROS)を生じ、上記オンシジウム植物抽出物に、0.6mg/mLのフェリチトクロムcを含有する好中球懸濁物(6x105細胞/mL)を37℃で2分間添加することによって、スーパーオキシドアニオン(O2
・-)の検出を行い、次いで、1μg/mLサイトカラシンB(CB)で3分間処理した。次いで、N-ホルミル-L-メチオニル-L-ロイシノイル-L-フェニルアラニン(fMLF)を刺激剤として用いて、細胞を約10分間活性化した。次いで、UV分光光度計を用いて、550nmの波長で、吸光度値を測定した。
【0052】
エラスターゼ放出実験において、100μMエラスターゼアクセプター、メトキ
シスクシニル-ala-ala-プロリネート-バリン-p-ニトロアニリド(MeOSuc-Ala-Ala-Pro-Val-p-ニトロアニリド)を含有する好中球懸濁物(6x105細胞/mL)を5分間、あらかじめ温めて37℃に到達させた後、上記の多様なオンシジウム植物抽出物を2分間添加した。細胞を0.5μg/mLサイトカラシンB(CB)で3分間処理し、0.1μM fMLFでおよそ10分間刺激することによって好中球を活性化し、最後に、UV分光光度計を用いて、405nmで吸光度値を測定した。実験結果を阻害パーセントとして表した。
【0053】
結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
10μg/mlでの阻害パーセント(阻害%)。結果を平均±S.E.M.として提示する(n=3~5)。対照(DMSOまたはH
2O)と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
a50%阻害に必要な濃度(IC
50)
bH
2O中に溶解。
c実験前に、ORC001R-A-EA(10μg/ml)を0.22μmフィルターでろ過した。
【0055】
本発明のオンシジウム植物抽出物の細胞傷害性を表2に示した。
【0056】
【表2】
10μg/mlでの細胞生存パーセント(%)。結果を平均±S.E.M.として提示する(n=3)。
a実験前に、ORC001R-A-EA(10μg/ml)を0.22μmフィルターでろ過した。
【0057】
フリーラジカルスカベンジング能試験
【0058】
窒素ラジカル:1,1-ジフェニル-p-ピクリルヒドラジル(DPPH)、および酸素ラジカル:2,2’-アゾビス(2-アミノプロパン)ヒドロクロリド(AAPH)は、炎症と関連する安定フリーラジカルである。本発明において、10μg/mLの各オンシジウム植物抽出物が、フリーラジカルをスカベンジングする能力をさらに試験し、ここで、DMSOまたはH2Oを対照群として用い、α-トコフェロールを比較試薬として用い、各オンシジウム植物抽出物がフリーラジカルをスカベンジングする能力を有する場合、これを、フリーラジカルスカベンジングの活性指数として、それぞれ、30分間および2時間、エタノール設定DPPH(100μM)またはAAPH(25mM)と混合した。
【0059】
図1に示されるように、オンシジウム根(ORC001R)の有機溶媒抽出物(EA、EtOH、W+EA)は、窒素ラジカルDPPHの阻害において、より有意であった。
【0060】
さらに、
図2に示されるように、オンシジウム根(ORC001R)およびオンシジウム茎(ORC001B)の有機溶媒抽出物(EA、EtOH、W+EA)、ならびにオンシジウム葉(ORC001L)のEtOHおよび水抽出物は、酸素ラジカル阻害において、より有意であることを示した。
【0061】
1型糖尿病(T1DM)モデルの確立
【0062】
すべての実験は、長庚大学動物管理使用委員会(IACUC)によって認可された。
【0063】
まず、糖尿病の動物モデルを確立した。5日連続で、4時間絶食させた後、クエン酸緩衝液(pH4.5)中の55mg/kgストレプトゾトシン(STZ)(Sigma-Aldrich)を腹腔内注射することによって、体重20~25グラムの7週齢C57BL/6マウスにおいて、糖尿病を誘導した。1型糖尿病の誘導のため、第1日~第4日に、STZ注射後に、通常の固形飼料および1%グルコース水を提供した。第5日以降は、グルコース水を提供する代わりに、通常の飲用水を提供した。
【0064】
STZ注射の72時間後、マウスを4時間絶食させた。尾を刺して出血させ、Contour Plusポータブル血糖測定器(Ascensia,United Kingdom)を用いて、絶食時血中グルコースレベルを測定した。150~250mg/dLの絶食時血中グルコースレベルを有する動物を前糖尿病と見なし、一方、>250mg/dLを糖尿病と見なし、続く実験に用いた。すべてのマウスの絶食時血中レベルは>250mg/dLであった。
【0065】
T1DM治療効果の評価
【0066】
抽出物投与を伴うまたは伴わない血中グルコースレベルを監視することによって、糖尿病におけるオンシジウム根抽出物(ORC001R)の療法効果を評価した。溶媒としてEtOHを用いたオンシジウム根超音波抽出物(ORC001R-U-EtOH)を本発明に用いた。実験フロー図を
図3に示す。
【0067】
総数25のC57BL/6雄マウスを実験に用いた。これらのマウスをランダムに5群に分けた:処置対照群の4匹のマウス(生理食塩水中の10%エタノールおよび10%Tween-20;NC)、非処置群の7匹のマウス(STZ;T1DM)、低投薬量ORC001R-U-EtOH群の7匹のマウス(10mg/kg ORC001R-U-EtOHを投与;T1DM+ORC001R-U-EtOH(10mg/kg))、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群の4匹のマウス(25mg/kg ORC001R-U-EtOHを投与;T1DM+ORC001R-U-EtOH(25mg/kg))、および高投薬量ORC001R-U-EtOH群の3匹のマウス(50mg/kg ORC001R-U-EtOHを投与;T1DM+ORC001R-U-EtOH(50mg/kg))。
【0068】
薬剤投与前に、動物の体重をチェックし、尾端を刺し、血液を収集することにより、Contour Plusポータブル血糖測定器(Ascensia,United Kingdom)を用いることによって、動物の非絶食時血中グルコースレベルをチェックした。その後、動物を18時間絶食させて、絶食時血中グルコースレベルを得た。薬剤投与後、7日目および14日目に、これらのステップを反復して、血中グルコースレベルの傾向を観察した。
【0069】
図4に示されるように、投与14日後の動物の18時間絶食時血中レベルの結果は、低投薬量ORC001R-U-EtOH群が、血中グルコースを減少させる傾向を示し、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群では血中グルコースを減少させる好ましい効果が観察され、高投薬量ORC001R-U-EtOH群では血中グルコースを減少させる有意な効果が観察されることを示した。
【0070】
腹腔内耐糖能試験(IPGTT)によって、動物の血中グルコースレベルの傾向の結果を調べた。18時間絶食後、1g/kg体重の用量で、グルコース(Sigmaより購入)をマウスに腹腔内投与し、血糖測定器を用いることによって、注射0分後、15分後、30分後、60分後、120分後、および180分後の時点で血中グルコースレベルを検出した。結果を
図5に示し、ここで、低投薬量ORC001R-U-EtOH群、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群および高投薬量ORC001R-U-EtOH群はすべて、連続14日の経口投与後、血中グルコースレベルを減少させる傾向を有し、特に、血中グルコースレベルを減少させる最良の傾向は、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群および高投薬量ORC001R-U-EtOH群の両方で示されることが立証された。
【0071】
連続14日のORC001R-U-EtOH処置後、動物モデルの心臓から血液を抜き取り、次いで、2000xgで15分間、室温で遠心分離して、全血から血清を分離し、富士フイルムDRI-CHEM NX500iデバイスを用いることによって、動物の血液において、肝機能指数(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT))および腎機能指数(クレアチニン(CRE)、尿素窒素(BUN))を試験し、肝臓組織および腎臓組織の切片作製も行い、ヘマトキシリン-エオジンで染色し(H&E染色)、結果を
図6および7に示し、ORC001R-U-EtOHは、肝臓または腎臓において毒性を示さず、また、糖尿病によって引き起こされる肝臓および腎臓の損傷を修復する効果も有した。
【0072】
動物の体重変化を
図8に示し、動物におけるORC001R-U-EtOH投与は、第9日以降、体重再増加の傾向を示した。
【0073】
2型糖尿病(T2DM)モデルの確立
【0074】
すべての実験は、長庚大学動物管理使用委員会(IACUC)によって認可された。
【0075】
まず、2型糖尿病動物モデルを確立した。本発明は、体重31~35グラムの5週齢雄BKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/Jnarlマウスを選択した。この系統は、遺伝子操作された自発性2型糖尿病マウスで、長年確立されてきており、メタボリックシンドローム疾患のモデルとして広く許容されている。
【0076】
尾を刺して出血させ、Contour Plusポータブル血糖測定器(Ascensia,United Kingdom)を用いて、絶食時血中グルコースレベルを測定した。150~250mg/dLの絶食時血中グルコースレベルを有する動物を前糖尿病状態と見なす。実験の週が進むにつれて、マウスの絶食時血中グルコースレベルは徐々に増加し、>250mg/dLを糖尿病と分類した。
【0077】
T2DM治療効果の評価
【0078】
抽出物投与を伴うまたは伴わない血中グルコースレベルを監視することによって、糖尿病におけるオンシジウム根抽出物(ORC001R)の療法効果を評価した。溶媒としてEtOHを用いたオンシジウム根超音波抽出物(ORC001R-U-EtOH)を本発明に用いた。実験フロー図を
図9に示す。
【0079】
総数12のBKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/Jnarl雄マウスを実験に用いた。これらのマウスをランダムに4群に分けた:非処置群の3匹のマウス(T2DM)(1%Tween20および99%CMC溶液(0.5%w/v);T2DM)、低投薬量ORC001R-U-EtOH群の3匹のマウス(10mg/kg ORC001R-U-EtOHを投与;T2DM+ORC001R-U-EtOH(10mg/kg))、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群の3匹のマウス(25mg/kg ORC001R-U-EtOHを投与;T2DM+ORC001R-U-EtOH(25mg/kg))、および
高投薬量ORC001R-U-EtOH群の3匹のマウス(50mg/kg ORC001R-U-EtOHを投与;T2DM+ORC001R-U-EtOH(50mg/kg))。
【0080】
薬剤投与前に、動物の体重をチェックし、尾端を刺し、血液を収集することにより、Contour Plusポータブル血糖測定器(Ascensia,United Kingdom)を用いることによって、動物の非絶食時血中グルコースレベルをチェックした。その後、動物を8時間絶食させて、絶食時血中グルコースレベルを得た。薬剤投与後、1日目、7日目、14日目、21日目および28日目に、これらのステップを反復して、血中グルコースレベルの傾向を観察した。
【0081】
処置28日後の実験動物の絶食時血中グルコースレベルを
図10に示す。結果は、ORC001R-U-EtOHの根抽出物が、低用量で血中グルコースを低下させる傾向を示すことを示す。中程度用量では、より顕著な血中グルコース低下効果を示し、高用量では、有意な血中グルコース低下効果を示し、用量依存性反応を示した。
【0082】
腹腔内耐糖能試験(IPGTT)によって、動物の血中グルコースレベルの傾向の結果を調べた。18時間絶食後、1g/kg体重の用量で、グルコース(Sigmaより購入)をマウスに腹腔内注射し、血糖測定器を用いることによって、注射0分後、15分後、30分後、60分後、120分後、および180分後の時点で血中グルコースレベルを検出した。結果を
図11に示し、ここで、低投薬量ORC001R-U-EtOH群、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群および高投薬量ORC001R-U-EtOH群はすべて、連続28日の経口投与後、血中グルコースレベルを減少させる傾向を有し、特に、血中グルコースレベルを減少させる最良の傾向は、低投薬量ORC001R-U-EtOH群および高投薬量ORC001R-U-EtOH群の両方で示されることが立証された。高用量のみが、非処置群に比較して、有意な改善を示す。
【0083】
I.P.インスリン耐性試験(IPITT)のため、マウスにインスリン(Humulin R U-500,Lilly)0.75U/kg体重を、5時間の絶食後に注射し、0分後、15分後、30分後、60分後、120分後、および180分後の時点で血糖測定器でグルコース濃度を決定した。結果を
図12に示し、ここで、低投薬量ORC001R-U-EtOH群、中程度投薬量ORC001R-U-EtOH群および高投薬量ORC001R-U-EtOH群はすべて、連続28日の経口投与後、血中グルコースレベルを減少させる傾向を有することが立証された。この傾向は、インスリン感度を改善する有意な改善を立証し、用量依存性反応を示す。
【0084】
連続28日のORC001R-U-EtOH処置後、動物モデルの心臓から血液を抜き取り、次いで、2000xgで15分間、室温で遠心分離して、全血から血清を分離し、富士フイルムDRI-CHEM NX500iデバイスを用いることによって、動物の血液において、肝機能指数(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT))および腎機能指数(クレアチニン(CRE)、尿素窒素(BUN))を試験した。結果を
図13に示す。ORC001R-U-EtOHは、肝臓または腎臓において毒性を示さなかった。
【0085】
肝臓保護に関する効果の評価
【0086】
動物に関するすべての実験は、長庚大学IACUCガイドラインに準拠した。
【0087】
実験法は、台湾衛生福利部(Ministry of Health and Welfare of Taiwan)の健康食品の肝臓保護およびヘルスケア有効性の評価法(2016年4月25日の衛生署(Department of Health)の食品特性公示(Announcement Food Characters)第1031304063号の改訂版)に準拠して設計された。
【0088】
まず、CCl4溶液およびORC001R-U-EtOH懸濁物を調製した。ラットにおいて肝線維症を誘導するため、CCl4を40%濃度でコーン油に溶解した。ORC001R-U-EtOH抽出物を、1%Tween80+99体積%の0.5%CMC(カルボキシメチルセルロース)で構成される混合溶液中に溶解して、懸濁物を生成した。
【0089】
8~10週齢の10匹のSD雄ラットをLascoから得て、以下の群にランダムに分けた:ビヒクル群(1%Tween80+99体積%の0.5%CMC、CCl4誘導なし;n=3)、CCl4対照(n=3)、ORC001R-U-EtOH 1mg/kg-BW(kg体重)(n=2)、およびORC001R-U-EtOH 10mg/kg-BW(n=2)。
【0090】
それぞれの処置にしたがってまたは1%Tween80+99体積%の0.5%CMC(ビヒクル群)を毎日1週間経口投与した後、40%CCl4によって肝線維症を誘導し、次いで、同じ投与ステップを8週間維持した。週2回、全部で8週間の期間、腹腔内(I.P.)注射を通じて、動物に肝線維症を誘導した。肝線維症を誘導する日、CCl4の腹腔内注射の1時間後に動物に投与した。
【0091】
GOT、GPT、アルブミン、トリグリセリド、およびコレステロールの生化学分析のため、第0週、1週、2週、4週、7週、8週および9週に血液試料を収集した。9週の終わりに、すべてのラットを人道的に屠殺し;血液、肝臓、腎臓、および脾臓試料を採取した。実験のタイムラインを
図14に示す。
【0092】
第7週の血液生化学分析、血液生化学分析の週ごとの変化およびラット体重追跡の結果を
図15~17に示す。
【0093】
第7週の血液生化学分析の結果(
図15)および血液生化学分析の週ごとの変化の結果(
図16)は、低用量(1mg/kg-BW)および高用量(10mg/kg-BW)のORC001R-U-EtOHがどちらも、血清GOTおよびGPTレベルを顕著に減少させることを示し、これはORC001R-U-EtOHが肝臓保護の潜在能力を有することを示した。ラットの体重追跡の結果(
図17)は、本発明のORC001R-U-EtOHが、ラットに副作用を引き起こさないことを示した。
【0094】
以前の研究は、オンシジウム植物の一種のオンシジウム・ソトアヌム(Oncidium sotoanum)が、肝臓保護または糖尿病の改善に効果を有するクリシン(5,7ジヒドロキシフラボン)を含むことを示した。したがって、本発明は本発明のオンシジウム植物抽出物がクリシンを含むかどうかを分析した。興味深いことに、本発明のオンシジウム植物抽出物中にはクリシンの化学的シグナルはまったく検出されなかった(データ未提示)。
【0095】
別の実験において、D-GalN(D-ガラクトサミン)およびLPSの組み合わせ処置が、マウスにおいて急性肝臓傷害(ALI)を誘導した。
【0096】
雄C57BL/6マウスを3群(6~8匹のマウス/群)にランダムに分けた:ビヒクルのみ(DMSO、LPS+D-GalNを含まず、ORC001R-U-EtOHを含まない)、LPS+D-GalN対照(LPS、40μg/mL;D-ガラクトサミン、500mg/kg、ORC001R-U-EtOHを含まない)、LPS+D-GalN+ORC001R-U-EtOH抽出物(25mg/kg体重)群。各マウスに10%DMSOまたはLPS+D-GalNを1時間腹腔内注射した後、対応する群に、さらに5時間、ORC001R-U-EtOH抽出物を静脈内注射した。血液試料を収集し、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、クレアチニン(CRE)、および尿素窒素(BUN)のレベルに関して分析した。
【0097】
結果は、血清中のGOT、GPT、CRE、およびBUNのレベル上昇によって立証されるように、D-GalN/LPSが重大な肝臓組織損傷を引き起こすことを示した。しかし、オンシジウム植物抽出物での処置は、GOTおよびGPTのレベル上昇を有効に減少させた(
図18)。
【0098】
急性呼吸促迫症候群(ARDS)を防止するための効果の評価
【0099】
動物に対するすべての実験は、長庚大学IACUCガイドラインに準拠した。
【0100】
15匹の7~10週齢のBALB/c雄マウスを選択し、以下の群にランダムに分けた:陰性対照群(非処置、非誘導;n=3)、リポ多糖(LPS)誘導対照(非処置、LPSによるARDS誘導;n=3)、低投薬量群(5mg/kg体重のORC001R-U-EtOHを投与、LPSによるARDS誘導;n=3)、中程度投薬量群(10mg/kg体重のORC001R-U-EtOHを投与、LPSによるARDS誘導;n=3)、および高投薬量群(20mg/kg体重のORC001R-U-EtOHを投与、LPSによるARDS誘導;n=3)。
【0101】
図19に示されるように、実験開始時、陰性対照群およびLPS対照群を除いて、すべての実験動物にはまず、それぞれ、群にしたがって、本発明のORC001R-U-EtOHの静脈内注射(I.V.)を与えた。ORC001R-U-EtOH投与の1時間後、肺投与噴霧器(Shanghai Yuyan Instruments Co.,Ltdより購入)を用い、陰性対照群を除くすべての実験動物に5mg/kg体重のLPSを投与し、マウスにおいてARDSを誘導した。すべての実験動物をARDS誘導の24時間後に安楽死させ、血液を収集し、遠心分離し、続く生化学値検出のため、上清を採取し、21cm H
2Oカラム圧下で肺を収集し、このうち半分をヘマトキシリン-エオジン(H&E)組織切片染色分析のために用い、もう半分を後に使用するために-80℃で凍結した。
【0102】
結果を
図20および21に示し、肺組織切片の染色は、本発明のORC001R-U-EtOH投与がARDSの発生を有効に防止するか、またはARDSの度合いを軽減することが可能であり、これが用量依存性であることを示した。
血液分析結果はまた、本発明のORC001R-U-EtOHが実験動物の肝臓および腎臓に明らかな害を示さなかったことも示す。
【0103】
本発明は、当業者がこれを行い使用するために十分に詳細に記載され例示されてきているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多様な代替物、修飾および改善が明らかであるはずである。
【0104】
当業者は、本発明が目的を実行し、言及されるとともに内在性である目標および利点を得るためによく適応されることを容易に認識する。これらを産生するための細胞、動物、ならびにプロセスおよび方法は、好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本発明の範囲に対する限定とは意図されない。その修飾および他の使用が当業者には思い浮かぶであろう。これらの修飾は、本発明の精神内に含まれ、特許請求の範囲によって定義される。
【外国語明細書】