(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020051
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ドライアイスブロックの製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/55 20170101AFI20250131BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
C01B32/55
B01D39/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122541
(22)【出願日】2024-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2023123039
(32)【優先日】2023-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000156178
【氏名又は名称】株式会社櫻製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 正基
(72)【発明者】
【氏名】安永 昌平
【テーマコード(参考)】
4D019
4G146
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA02
4D019BB07
4D019BD01
4D019CB04
4G146JA03
4G146JB04
4G146LA05
4G146LA07
(57)【要約】
【課題】熱所作業用冷却服へ収容して使用されるドライアイスとして適した、圧密度の高いドライアイスを製造可能なドライアイスブロックの製造装置を提供する。
【解決手段】ドライアイスブロックの製造装置1は、プレス室10と、プレス室10に、炭酸ガスと粒子状ドライアイスとを有する混合流体を供給する供給部50と、供給された混合流体から炭酸ガスを選別して、選別した炭酸ガスを、排出口を介して外部へ排出する排出部と、プレス室10に残存する粒子状ドライアイスに圧力を付与してドライアイスブロックを成形するプレス部とを備える。排出部は、焼結金属フィルタ40を有する。焼結金属フィルタ40は、プレス室10と排出口との間に介在し、混合流体から炭酸ガスを選別する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス室と、
プレス室に、炭酸ガスと粒子状ドライアイスとを有する混合流体を供給する供給部と、
供給された混合流体から炭酸ガスを選別して、選別した炭酸ガスを、排出口を介して外部へ排出する排出部と、
プレス室内部に残存する粒子状ドライアイスに圧力を付与してドライアイスブロックを成形するプレス部と
を備え、
排出部は、プレス室内部と排出口との間に介在し混合流体から炭酸ガスを選別する焼結金属フィルタを有している
ことを特徴とするドライアイスブロックの製造装置。
【請求項2】
焼結金属フィルタは、
プレス室内部側に配置される選別用フィルタ材と排出口側に配置される補強材とを積層状態で有し、
選別用フィルタ材は、目開きが粒子状ドライアイスの粒子径よりも小さいとともに、炭酸ガスが通過可能であり、
補強材は、目開きが選別用フィルタ材よりも大きいとともに、厚さ方向の曲げ強度が選別用フィルタ材よりも高い
ことを特徴とする請求項1に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項3】
プレス室は、底板と底板よりも上方に連なって配置された周壁部とを有し、
焼結金属フィルタは、
周壁部の内面に設けられたフィルタ収容部において、選別用フィルタ材がプレス室側に配置された状態で収容されるとともに、
フィルタ収容部に収容された焼結金属フィルタにおけるプレス室の内側に向いている面と、フィルタ収容部に連なる周壁部の内面とが面一となるように配置される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項4】
フィルタ収容部は、プレス室内で成形されるドライアイスブロックの厚さの範囲内における周壁部の内面には配置されない
ことを特徴とする請求項3に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項5】
焼結金属フィルタは、焼結金網フィルタである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項6】
供給部は、
液化炭酸ガスを炭酸ガスおよび粒子状ドライアイスに相変化させる造粒部と、
液化炭酸ガスを造粒部に供給する液化炭酸ガス供給経路と
を有し、
液化炭酸ガス供給経路は、
液化炭酸ガス供給経路の一部を開閉する開閉弁と、
開閉弁の二次側に配置され、液化炭酸ガスの流路面積を規制するオリフィスと
を有し、
オリフィスによって規制される液化炭酸ガスの流路面積は、開閉弁により開状態とされたときの開閉弁における液化炭酸ガスの流路面積よりも小さい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項7】
前記オリフィスと前記開閉弁とは、オリフィス付き開閉弁として一体として構成される
ことを特徴とする請求項6に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項8】
プレス室と、
プレス室に、炭酸ガスと粒子状ドライアイスとを有する混合流体を供給する供給部と、
供給された混合流体から炭酸ガスを選別して、選別した炭酸ガスを、排出口を介して外部へ排出する排出部と、
プレス室内部に残存する粒子状ドライアイスに圧力を付与してドライアイスブロックを成形するプレス部と
を備え、
プレス室は、底板と底板よりも上方に連なって配置された周壁部とを有し、
プレス部は、周壁部内を昇降するプレス板を有し、
プレス板は、
プレス板の外周縁に沿って上面に配置される環状の弾性部材と、
弾性部材の上方に積層される環状の第1の金属部材と
を有し、
周壁部の上端部には、環状の第2の金属部材が設けられており、
プレス板が上昇したときに、第1の金属部材と第2の金属部材とが上下方向に接触して互いに押圧する、ドライアイスブロックの製造装置。
【請求項9】
プレス板は、
プレス板の上面の外周端部には、上面から下方に環状に凹む窪み部と、
窪み部の外周縁に沿って上方に延びる周壁部材と
をさらに有し、
弾性部材および第1の金属部材は、窪み部に嵌り込んで周壁部材の内側に収容され、
周壁部材の高さは、弾性部材の高さよりも小である、請求項8に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項10】
周壁部材は、上端内側縁に沿って面取り部が形成されている、請求項9に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項11】
プレス板には、
プレス板の上下方向位置に関する原点位置が設けられており、
プレス板は、
プレス部がドライアイスを成形した後、供給部がプレス室に、次のドライアイスを成形するための混合流体を供給する前には原点位置に配置され、
原点位置では第1の金属部材と第2の金属部材とは互いに接触しない、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項12】
プレス室と、
プレス室に、炭酸ガスと粒子状ドライアイスとを有する混合流体を供給する供給部と、
供給された混合流体から炭酸ガスを選別して、選別した炭酸ガスを、排出口を介して外部へ排出する排出部と、
プレス室内部に残存する粒子状ドライアイスに圧力を付与してドライアイスブロックを成形するプレス部と
を備え、
プレス室は、底板と底板よりも上方に連なって配置された周壁部とを有し、
プレス部は、周壁部内を昇降するプレス板を有し、
供給部は、
プレス室内に連通するとともに、前記混合流体をプレス室内におけるプレス板の下方に供給する供給経路と、
プレス室内における供給経路の上方に設けられるとともに、前記混合流体をプレス室内におけるプレス板の上方に排気する排気経路と
を有し、
排気経路は、一端部がプレス室内に連通するとともに、他端部が供給経路内に連通して設けられ、
プレス板の上昇時には、排気経路の一端部がプレス板の外面と対向することで、排気経路が閉状態となり、
プレス板の下降時には、排気経路の一端部がプレス板の外面と対向しないことで、排気経路が開状態となる、ドライアイスブロックの製造装置。
【請求項13】
排気経路は、
周壁部の内面において外側に凹む凹部として形成されて、凹部の一端部がプレス室内に連通するとともに、凹部の他端部が供給経路内に連通する、請求項12に記載のドライアイスブロックの製造装置。
【請求項14】
プレス室と、
プレス室に、炭酸ガスと粒子状ドライアイスとを有する混合流体を供給する供給部と、
供給された混合流体から炭酸ガスを選別して、選別した炭酸ガスを、排出口を介して外部へ排出する排出部と、
プレス室内部に残存する粒子状ドライアイスに圧力を付与してドライアイスブロックを成形するプレス部と
を備え、
プレス室は、底板と底板よりも上方に連なって配置された周壁部とを有し、
プレス部は、
周壁部内を昇降するプレス板と、
プレス板と接続されるプレスロッドと
を有し、
プレス板は、第1プレス板と第2プレス板とを有し、
第1プレス板の下方には、PTFE製の第2プレス板が配置され、
第1プレス板の上方には、プレス板とプレスロッドとを連結して接続する連結部材が配置され、
第2プレス板が第1プレス板に上方からネジ止めされるとともに、連結部材の下面が、第1プレス板の上方からネジの頭部を押圧する、ドライアイスブロックの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイスブロックの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の熱所作業用冷却服は、熱所での作業時における作業者の熱中症対策として、ドライアイスブロックを収容可能なポケットを衣服に設け、収容したドライアイスブロックの昇華熱を利用して作業者に冷感を与えるとともに作業者の体温を低下する。冷却服に収容するドライアイスブロックは、例えば、特許文献2に記載のドライアイスブロックの製造装置のように、液化炭酸ガスから生成された粒子状のドライアイスを捕集し、捕集した粒子状ドライアイスをプレス機で加圧して圧密することで成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-53387号公報
【特許文献2】特開2020-132481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような熱所作業用冷却服に収容されるドライアイスブロックは、作業者の作業性の観点からは厚さが薄く、かつ収容作業の頻度を下げる観点からは昇華時間が長いことが望まれる。ドライアイスブロックの厚さを薄くすることと、昇華時間を長くすることとはトレードオフの関係にあり、これらを両立させるためには、ドライアイスブロックの圧密度を高める必要がある。しかしながら、特許文献2に記載のドライアイスブロックの製造装置においては、ドライアイスブロックの圧密度を高める手段については開示されていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱所作業用冷却服へ収容して使用されるドライアイスブロックとして適した、圧密度の高いドライアイスブロックを高効率に製造可能な、ドライアイスブロックの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、ドライアイスブロックの製造装置は、プレス室と、炭酸ガスと粒子状ドライアイスとを有する混合流体をプレス室に供給する供給部と、供給された混合流体から炭酸ガスを選別して、選別した炭酸ガスを、排出口を介して外部へ排出する排出部と、プレス室に残存する粒子状ドライアイスに圧力を付与してドライアイスブロックを成形するプレス部とを備える。排出部は、焼結金属フィルタを有する。焼結金属フィルタは、プレス室と排出口との間に介在し、混合流体から炭酸ガスを選別する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライアイスブロックの製造装置は、焼結金属フィルタにより粒子状ドライアイスの捕集性と圧力損失の抑制による炭酸ガスの排出性とを両立させることで、粒子状ドライアイスと炭酸ガスとを高効率に分離して、粒子状ドライアイスを高密度に捕集することができる。そして、高密度に捕集された粒子状のドライアイスをプレス部により加圧することで、圧密度の高いドライアイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のドライアイスブロックの製造装置によって製造されたドライアイスブロックを収容可能な熱所作業用冷却服の一例を着用者の前方から見た図である。
【
図2】同熱所作業用冷却服例を着用者の後方から見た図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るドライアイスブロックの製造装置を示す図である。
【
図4】同ドライアイスブロックの製造装置におけるプレス室の外観図である。
【
図5】
図4のA-A線に沿った断面構造を立体的に示す図である。
【
図6】
図4のA-A線に沿った要部の拡大断面図である。
【
図7】プレス室に設けられる焼結金属フィルタを示す斜視図である。
【
図8】
図7のB矢視であって、同焼結金属フィルタの構成を示す要部拡大側面図である。
【
図9】同ドライアイスブロックの製造装置による製造工程であって、原料の供給工程を示す縦断面図である。
【
図10】同ドライアイスブロックの製造装置による製造工程であって、ドライアイスブロックのプレス工程を示す縦断面図である。
【
図11】同ドライアイスブロックの製造装置による製造工程であって、ドライアイスブロックの取出工程を示す縦断面図である。
【
図12】本発明のドライアイスブロックの製造装置における開閉弁の一例を示す縦断面図である。
【
図14】本発明の実施形態2に係るドライアイスブロックの製造装置のプレス室の分解斜視図である。
【
図16】
図15において示した各断面を展開した縦断面図(以下、「同縦断面図」と称する)である。
【
図18A】
図16のD部分について拡大した縦断面図であり、排気経路が閉状態の様子を示す図である。
【
図19A】
図16のD部分について拡大した縦断面図であり、排気経路が開状態の様子を示す図である。
【
図21】同ドライアイスブロックの製造装置による製造工程であって、原料の供給工程を示す同縦断面図である。
【
図22B】
図21のG部分について拡大した縦断面図であって、周壁部材がない場合について示す図である。
【
図22C】
図21のG部分について拡大した縦断面図であって、周壁部材の面取り部がない場合について示す図である。
【
図23】同ドライアイスブロックの製造装置による製造工程であって、ドライアイスブロックのプレス工程を示す同縦断面図である。
【
図24】同ドライアイスブロックの製造装置による製造工程であって、ドライアイスブロックのプレス工程を示す同縦断面図である。
【
図25】同ドライアイスブロックの製造装置による製造工程であって、ドライアイスブロックの取出工程を示す同縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態1>
[熱所作業用冷却服]
以下、本発明の実施形態1に係るドライアイスブロックの製造装置1について、図面を参照して説明する。なお、図中、同一または相当部分については、同一の参照符号を付すことで、説明を繰り返さない。また、以下の説明において、「上」、「下」、「横」および「縦」等の位置または方向を意味する用語が用いられることもある。これらの用語は、実施形態の理解を容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の位置または方向に限定されない。
【0010】
まず、
図1および
図2を参照して、本発明のドライアイスブロックの製造装置によって製造されたドライアイスブロックを収容可能な熱所作業用冷却服の一例Wについて説明する。
図1は、熱所作業用冷却服の一例Wを着用者の前方から見た図である。
図2は、同熱所作業用冷却服Wを着用者の後方から見た図である。
【0011】
図1および
図2に示す熱所作業用冷却服Wは、ドライアイスブロックDを収容可能なドライアイスポケットPを複数有する。ドライアイスブロックDの具体的なサイズ例としては、厚さ20mm×長さ140mm×幅75mmである。図示の例では、ドライアイスポケットPは、作業者の脇腹付近に2箇所、作業者の背中付近に4箇所配置される。ドライアイスポケットPには、ドライアイスブロックDが収容されて、ドライアイスブロックDの昇華熱により作業時の作業者に冷感を与えるとともに作業者の身体を冷却することで、体温の上昇による熱中症の発症を予防する。
【0012】
[ドライアイスブロックの生成方法]
ドライアイスブロックは、液化炭酸ガスを原料として生成される。ドライアイスブロックを製造するためのドライアイスは、二酸化炭素を液体から固相および気相へ相変化させることで生成される。液化炭酸ガスからの相変化は、ボンベ内で加圧状態にある液化炭酸ガスを、ノズルを介して大気解放することにより行う。すなわち、大気解放されることで、液化炭酸ガスは、断熱膨張により減圧されていく過程で、圧力-エンタルピー線図における飽和液線上から気液二相領域を経て固気二相領域に至り、粒子状のドライアイスと気体状態の二酸化炭素が生成する。以下では、このように生成された粒子状のドライアイスを「粒子状ドライアイス」と称し、気体状態の二酸化炭素を「炭酸ガス」と称する。
【0013】
[ドライアイスブロックの製造装置]
次に、
図3を参照して、本発明の実施形態1のドライアイスブロックの製造装置1について説明する。
図3は、本発明の実施形態1に係るドライアイスブロックの製造装置1を示す図である。
【0014】
図3より、ドライアイスブロックの製造装置1は、プレスユニット100と、油圧ユニット6と、空圧ユニット8と、液化炭酸ガスを貯蔵する液化炭酸ガスボンベ9と、制御部2と、入力部4とを備える。
【0015】
プレスユニット100は、供給部50と、プレス室10と、プレスシリンダ部60と、スライドシリンダ部70とを有する。
【0016】
供給部50は、供給経路52と、供給経路52に設けられた開閉弁51とを有する。供給経路52は、開閉弁51よりも下流側の供給経路52における供給過程において、液化炭酸ガスボンベ9からの液化炭酸ガスを大気解放することで、液化炭酸ガスを粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスの混合流体に相変化させて、混合流体をプレスユニット100のプレス室10に供給する。
【0017】
プレス室10は、焼結金属フィルタ40を有し、焼結金属フィルタ40を介して、プレス室10に供給された混合流体のうち、炭酸ガスを外部に排出する(詳細は後述する)。
【0018】
プレスシリンダ部60は、プレスブロック61と、プレスブロック61と接続されるプレスロッド62とを有し、プレスロッド62を介して油圧ユニット6によりプレスブロック61を駆動される。スライドシリンダ部70は、スライド板71とスライド板71と接続されるスライドロッド72とを有し、スライドロッド72を介して空圧ユニット8によりスライド板71を駆動される。
【0019】
制御部2は、ユーザーによって入力部4(タッチパネルなど)に入力されたドライアイスの製造条件(個数など)に基づいて、各ユニットおよび機器を制御する。具体的には、制御部2は、開閉弁51(電磁弁など)を駆動し、液化炭酸ガスボンベ9からの液化炭酸ガスを、供給経路52に供給させる。
【0020】
制御部2は、油圧ユニット6を制御して、プレスシリンダ部60のプレスブロック61を駆動させる。制御部2は、プレス室10内部に供給された混合流体のうち粒子状ドライアイスにプレスブロック61で圧力を付与することで、プレス室10内部において粒子状ドライアイスを圧密させて、ドライアイスブロックを成形させる。
【0021】
制御部2は、空圧ユニット8を制御して、スライドシリンダ部70のスライド板71を駆動させる。制御部2は、成形されたドライアイスブロックをスライド板71で押し出すことでドライアイスブロックをユニット外に排出させる。
【0022】
以上のように、ドライアイスブロックの製造装置1は、供給された液化炭酸ガスからドライアイスブロックを成形する。
【0023】
以下では、ドライアイスブロックの製造装置1の詳細について説明する。プレス室10の構成および焼結金属フィルタ40の構成について説明したのち、具体的なドライアイスの製造工程について説明する。
【0024】
[プレス室の構成]
まず、
図4および
図5を参照して、プレスユニット100におけるプレス室10について説明する。
図4は、ドライアイスブロックの製造装置1におけるプレス室10の外観図である。
図5は、
図4のA-A線に沿った断面構造を立体的に示す図である。なお、
図4では、本実施形態に係るプレス室10の外観を詳細に示し、
図5では、一部の形態を簡略化して、同プレス室10の要部の断面構造について示している。
【0025】
図4より、プレス室10は、桝形状であり、プレス室10と、プレスブロック61と、スライド板71とで、内部に空間を有する箱状体を構成する。プレス室10は、底板20と、底板20から上方に連なって配置される周壁部30とを有する。周壁部30は、供給部50の供給経路52から連なる供給孔31と、排出孔32とを有する。
【0026】
図4に示すように、周壁部30は、具体的には、プレス室10の長手方向の両端に配置される周壁部30a1,30a2と、プレス室10の幅方向の両端に配置される周壁部30b1,30b2とが組み合わされて構成される。各周壁部30a1,30a2,30b1,30b2は、ボルト36により連結される。(以降の図では、周壁部30a1,30a2,30b1,30b2とボルト36は図示を省略する)
【0027】
供給孔31は、プレス室10の長手方向に位置する一方の周壁部30a2を厚さ方向に貫通して設けられる。供給孔31と供給経路52とは、ねじ接続される。このとき、供給経路52は供給孔31を通じてプレス室10の内部に露出する。
【0028】
排出孔32は、プレス室10の幅方向に位置する両側の周壁部30b1,30b2において、プレス室10の長手方向に延びる長孔状に、周壁部30b1,30b2を厚さ方向に貫通して設けられる。
【0029】
本実施形態に係る排出孔32は、排出孔の内面に接続される仕切壁32cによって上下に分割されて、上側の排出孔32aと下側の排出孔32bとを有する。(
図5、および
図7以降の図では、仕切壁32cは図示を省略する)
【0030】
排出孔32は、炭酸ガスを排出する排出経路として機能する。排出孔32の外端部は、炭酸ガスをユニット外部へ排出する排出口として機能する。
【0031】
図5より、プレス室10は、さらに排出孔32の内端部に配置されるフィルタ収容部33と、フィルタ収容部33に設けられる焼結金属フィルタ40と、プレス領域34(「プレス室内部」の一例)と、ガイド部35とを有する。
【0032】
フィルタ収容部33は、周壁部30の内面において、プレス室10の内側から外側に向く方向に凹むように、排出孔32の内端部の周囲に設けられた周状の凹部である。
【0033】
焼結金属フィルタ40は、板状のフィルタ材であり、その周縁がフィルタ収容部33に収容される(詳細は、後述する)。
【0034】
プレス領域34は、スライド板71の上面71aと、周壁部30の内周面30cと、プレスブロック61の下面61aと、フィルタ収容部33に収容された焼結金属フィルタ40におけるプレス室10内の内側に向いている面41aとで囲まれた空間である。
【0035】
ガイド部35は、プレス室10の幅方向に位置する両側の周壁部30の下端部において、周壁部30が底板20に向けて貫通状態で開口するように設けられた開口部である。スライド板71は、ガイド部35の開口面と底板20の上面との間に、擦動可能なように支持される。
【0036】
つまり、スライド板71は、ドライアイスブロックの成形時には、部分的にガイド部35の内側に収容され、ドライアイスブロックの取り出し時には、ガイド部35の開口面と底板20の上面にて、外周面の擦動をガイドされる。
【0037】
以上で説明したプレス室10の構成のうち、排出孔32と、フィルタ収容部33と、焼結金属フィルタ40とで、炭酸ガスを外部に排出する排出部として機能する。プレス領域34と、プレスブロック61と、スライド板71とが、粒子状ドライアイスをプレスするプレス部として機能する。スライド板71が、ドライアイスブロックを取り出す取出部として機能する。
【0038】
[焼結金属フィルタの構成]
次に
図6および
図7を参照して、焼結金属フィルタ40の詳細について説明する。
図6は、
図4のA-A線に沿った要部の拡大断面図である。
図7は、プレス室10に設けられる焼結金属フィルタ40を示す斜視図である。
【0039】
図6および
図7に示すように、焼結金属フィルタ40は、選別用フィルタ材41と補強材42とを積層状態で有する。焼結金属フィルタ40は、選別用フィルタ材41と補強材42とが積層されて、選別用フィルタ材41の表側の面41aと、補強材42の表側の面42aとが表面に露出する。
【0040】
図6より、フィルタ収容部33は、収容底面33aと、収容底面33aの外周に連なる収容側面33bとを有する。焼結金属フィルタ40は、収容底面33aと補強材42の露出面42aとが当接して、かつ収容側面33bと焼結金属フィルタ40の外周面とが隙間をもって互いに嵌合されることで、フィルタ収容部33に収容されて固定される。つまり、焼結金属フィルタ40の選別用フィルタ材41の露出面41aは、プレス室10内の内側に向く。焼結金属フィルタ40とフィルタ収容部33との固定は、ねじ接合などにより行う(不図示)。
【0041】
なお、
図6に仮想線(2点鎖線)で示すように、
図4で示した本実施形態に係る排出孔32の仕切壁32cは、仕切壁32cのプレス室10側の端部が、フィルタ収容部33に収容された焼結金属フィルタ40における補強材42の露出面42aに当接するように配置される。これにより、仕切壁32cは、プレス室10の内側から焼結金属フィルタ40材の厚さ方向にかかるプレス圧の一部を分担するリブとして機能する。
【0042】
図6より、焼結金属フィルタ40の選別用フィルタ材41の露出面41aは、フィルタ収容部33に連なる周壁部30の内周面30cと面一となるように配置される。
【0043】
但し、
図6に示すように、選別用フィルタ材41の露出面41aは、製造ばらつきなどを考慮して、周壁部30の内周面30cに対してプレス室10の外側に位置するように所定寸法(50μm~100μm程度)の公差Tが設定されるように構成されても良い。
【0044】
ここで、
図6より、プレス領域34は、具体的には排出プレス領域34Eと、圧密プレス領域34Pとを有する。排出プレス領域34Eは、プレス領域34のうちフィルタ収容部33の下端部より上側の領域である。圧密プレス領域34Pは、プレス領域34のうちフィルタ収容部33の下端部よりも下側で、かつ最終的に成形されるドライアイスブロックの厚さtよりも上側の領域である。排出プレス領域34Eでは、炭酸ガスの排出と粒子状ドライアイスの圧密が並行して進行する。圧密プレス領域34Pでは、主として粒子状ドライアイスの圧密が進行する。
【0045】
次に、
図8を参照して焼結金属フィルタ40についてさらに説明する。
図8は、
図7のB矢視であって、焼結金属フィルタ40の構成を示す要部拡大側面図である。
【0046】
図8より、焼結金属フィルタ40は、具体的には焼結金網フィルタであり、選別用フィルタ材41および補強材42は、それぞれ、複数枚の金網41n,41n,42n,42nが積層されて、さらに焼結処理を施して形成される。
【0047】
焼結処理は、典型的には、金網素材を融点近くの温度域で保持することによって、金網の線と線とを融着させて金網を一体構造化する処理である。焼結金属フィルタ40は、各層の金網の網目が互いに交錯して融着されることによって、形状が微細で均一な濾過孔を形成することができ、金網のメッシュサイズ、積層毎数によってフィルタ濾過孔の径、すなわち目開きを調節可能である。
【0048】
本実施形態では、選別用フィルタ材41は、線径が微細な金網41nを複数枚積層させて焼結処理を施すことで、選別用フィルタ材41の濾過孔の径が粒子状ドライアイスの粒子径よりも小さく、但し、気体である炭酸ガスは通過可能な程度に設定される。
【0049】
具体的には、選別用フィルタ材41の濾過孔の径は60~140μmの範囲で設定される。この範囲で設定されることで、粒子状ドライアイスのプレス室10内への捕集と炭酸ガスのプレス室10外への効率的な排出、すなわち通気度の確保とを両立させることができる。
【0050】
補強材42は、形成される濾過孔の径が選別用フィルタ材41よりも大きいとともに、選別用フィルタ材41の金網41nよりも線径が大きいことで厚さ方向の曲げ強度が選別用フィルタ材41よりも大きい複数の金網42n,42nを積層して形成される。
【0051】
具体的には、補強材42で用いる金網42nの線径は、選別フィルタ材に用いる金網41nの線径の7~13倍程度である。補強材42の金網42nの線径がこの範囲で設定されることで、補強材42は、選別用フィルタ材41との融着性を確保しながら、焼結金属フィルタ40全体としての機械的強度(特に曲げ強度)を高めることが可能である。これにより、焼結金属フィルタ40は、プレス室10内において粒子状ドライアイスへの加圧時において、焼結金属フィルタ40に付加される圧力により塑性変形することを防止できる。
【0052】
また、補強材42の濾過孔の径が選別用フィルタ材41よりも大きいことで、焼結金属フィルタ40は、焼結金属フィルタ40全体としての通気度の低下を小さくしながら(または圧力損失の増加を抑制しながら)、焼結金属フィルタ40の機械的強度を補強することができる。
【0053】
以上の構成により、焼結金属フィルタ40は、適切な目開きを設定することで粒子状ドライアイスを確実にプレス室10内に捕集するとともに、多層構造とすることで、通気度の確保(または圧力損失の低減)による効率的な炭酸ガスの排出と、必要な機械的強度とを両立させることができる。
【0054】
焼結金属フィルタ40は、3以上の金網から構成されても良く、例えば補強材42とは別に、目開きが選別用フィルタ材41の目開きよりも大きいとともに、補強材42の目開きよりも小さく、金網の線径が、選別用フィルタ材41の金網の線径よりも大きいとともに、補強材42の金網の線径よりも小さい、第2の補強材(不図示)を有するように構成されても良い。
【0055】
[ドライアイスブロックの製造工程]
次に、
図9~
図11を参照して、上述した構成から具体的にドライアイスブロックを製造する工程について説明する。ドライアイスブロックの製造工程は、主に、液化炭酸ガスから粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスの混合流体を生成してプレスユニット100に供給する供給工程、粒子状ドライアイスをプレスするプレス工程、成形されたドライアイスブロックを取り出す取出工程の3工程で進行する。
【0056】
(供給工程)
まず、
図9を参照して、供給工程について説明する。
図9は、ドライアイスブロックの製造装置1の供給工程を示す縦断面図である。
【0057】
繰り返しになるが、供給経路52は、供給過程において液化炭酸ガスを大気解放することで、液化炭酸ガスを粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスの混合流体に相変化させて、混合流体をプレスユニット100のプレス室10に供給する。具体的には
図9に示すように、供給経路52から供給孔31を通じて粒子状ドライアイスと炭酸ガスとの混合流体DPがプレス室10に供給される。この際、プレス室10に設けられた焼結金属フィルタ40のうち、プレス室10の内側に面する選別用フィルタ材41の濾過孔の径が粒子状ドライアイスの粒子径よりも小さいことで、粒子状のドライアイスは、排出孔32から排出されることなく、プレス室10内に確実に捕集される。一方で選別用フィルタ材41の濾過孔は、気体である炭酸ガスが通過可能であることで、炭酸ガスは、排出孔32から外部に排出される(
図9の矢印D1)。
【0058】
このとき焼結金属フィルタ40の通気度が高い(または圧力損失が低い)ことで、炭酸ガスは、効率的にプレス室10外に排出される。炭酸ガスの排出効率が悪い場合、混合流体DPにおける炭酸ガスの混合比率が高くなる。その結果、粒子状ドライアイスが堆積していく過程でプレス室10内の内側に炭酸ガスが溜まり、堆積した粒子状ドライアイスの内部に空洞が形成される可能性が高くなる。
【0059】
ドライアイス内部に形成された空洞は、局所的な密度不足につながる結果、プレス時におけるプレス圧の不足をまねき、成形されたドライアイスブロックの割れ欠けの要因となり得る。つまり、炭酸ガスの排出効率が悪いことは、ドライアイスブロックの成形品質の低下につながる。したがって、ドライアイスブロックの製造装置1は、焼結金属フィルタ40の圧力損失が低いことで、ドライアイス内部に空洞が形成されるのを防止でき、プレス室10内に粒子状ドライアイスを高密度に捕集することにより、ドライアイスの圧密度の向上とともに成形品質の向上が図れる。
【0060】
(プレス工程)
次に、
図10を参照して、プレス工程について説明する。
図10は、ドライアイスブロックの製造装置1のプレス工程を示す断面図である。
【0061】
繰り返しになるが、プレス領域34は、排出プレス領域34Eと、圧密プレス領域34Pとを有する。
【0062】
図10に示すように、プレスシリンダ部60は、プレスブロック61が、排出プレス領域34Eを経て圧密プレス領域34Pに至り最終的にドライアイスブロックDBが成形されるまでプレス室10内でプレスブロック61を下降させる(
図10の矢印D2)。
【0063】
この過程で、排出プレス領域34Eにおけるプレス室10の内周面には、焼結金属フィルタ40が配置されていることから、プレスブロック61は、粒子状ドライアイスに対して圧力を付与しながら、さらに余分な炭酸ガスを焼結金属フィルタ40および排出孔32を介して外部に押し出すことができる。
【0064】
よって、ドライアイスブロックの製造装置1は、ドライアイスブロックDBの成形が完了する直前まで粒子状ドライアイスの圧密と炭酸ガスの排出とを並行して進行することができ、プレス領域34の粒子状ドライアイスを高密度に圧密することができる。したがって、ドライアイスブロックの製造装置1は、ドライアイスブロックDBの圧密度の向上が図れる。
【0065】
さらに、フィルタ収容部33に収容された焼結金属フィルタ40におけるプレス室10の内側に向いている面と、フィルタ収容部33に連なる周壁部30の内周面とが面一となるように構成されていることで、成形途中において焼結金属フィルタ40に近接している粒子状ドライアイスは、排出プレス領域34Eから圧密プレス領域34Pへスムーズに移行することができる。これにより、ドライアイスブロックDBの側面に凹凸形状、傷などを生じさせることなく、ドライアイスブロックDBを成形することができる。ドライアイスブロックDB側面の凹凸形状、傷などは、ドライアイスブロックDBに外力が作用したときにドライアイスブロックDBの強度低下の要因となり得る。したがって、ドライアイスブロックの製造装置1は、凹凸形状、傷などのない平滑な表面のドライアイスブロックDBを成形できることで、ドライアイスブロックDBの成形品質を向上することができる。
【0066】
この際、焼結金属フィルタ40は、選別用フィルタ材41よりも曲げ強度が大きい補強材42により、曲げ強度が補強されていることで、粒子状ドライアイスの圧密と炭酸ガスの排出とを並行して進行する過程において、プレス圧によって焼結金属フィルタ40が塑性変形することを防止できる。焼結金属フィルタ40の塑性変形は、ドライアイス側面の凹凸形状、傷などの要因となり、ドライアイスの強度低下をまねくことで、ドライアイスブロックDBの成形品質に影響する。
【0067】
圧密プレス領域34Pでは、粒子状ドライアイスは、プレスブロック61によって高圧(最大10MPa程度)で圧密される。僅かながら残存している炭酸ガスは、周壁部30と、プレスブロック61との隙間から外部に排出される。
【0068】
このとき、成形されるドライアイスブロックDBの厚さの範囲内における周壁部30のプレス室10の内周面に、フィルタ収容部33が配置されないことで、ドライアイスブロックの製造装置1は、ドライアイスブロックDBの側面に焼結金属フィルタ40に接することで生じるさまざまな影響を受けることなく、成形を完了させることができる。これにより、ドライアイスブロックの製造装置1は、成形されたドライアイスブロックDBの成形品質を向上することができる。
【0069】
ドライアイスブロックDBの成形が終了した後、プレスシリンダ部60は、プレスブロック61を僅かに上昇させて、ドライアイスブロックDBへの加圧力を除荷する。
【0070】
(取出工程)
次に、
図11を参照して、取出工程について説明する。
図11は、ドライアイスブロックの製造装置1の取出工程を示す縦断面図である。
【0071】
図11より、スライドシリンダ部70がスライド板71をプレス室10の外側に向けて駆動させる(
図11の矢印D3)とともに、プレスシリンダ部60がプレスブロック61を下降させる(
図11の矢印D2)ことで、ドライアイスブロックDBは、プレス室10の底板20上に移動される。その後、スライドシリンダ部70が、スライド板71をプレス室10の内側に向けて駆動させる(
図11の矢印D3の反対方向)ことで、底板20上のドライアイスブロックDBを装置の外部に押し出すことができる(
図11の仮想線)。
【0072】
一連の操作は、
図3で示した制御部2によりシーケンスとして自動化されて、ユーザーは、
図3における入力部4で製造条件を入力した後しばらく待機することで
図11の仮想線に示すようにドライアイスブロックDBを取り出すことができる。
【0073】
[開閉弁の構成]
次に、
図12を参照して本発明のドライアイスブロックの製造装置における開閉弁51の構成について説明する。
図12は、本発明のドライアイスブロックの製造装置における開閉弁51を示す縦断面図である。
【0074】
なお、以下の説明では、開閉弁51から見て開閉弁51に液化炭酸ガスを供給する側を「上流側」、開閉弁51を通過した液化炭酸ガスがプレスユニット100に供給される側を「下流側」と称する。
【0075】
図12より、開閉弁51は、弁箱53と、弁箱53の下流側に連設される造粒部56と、弁箱53の内部を移動可能に設けられる弁体54と、弁体54を移動させる弁体移動手段55と、液化炭酸ガスの流路面積を規制するオリフィス57とを有する。
【0076】
繰り返しになるが、開閉弁51は、供給経路52に設けられる。供給経路52は、具体的には上流側から、上流側供給経路52aと、弁座52bと、下流側供給経路52cとを有する。
【0077】
弁座52bは、弁体54とともに供給経路52を開閉する。造粒部56は、具体的には、下流側供給経路52cの下流側に連設される。
【0078】
開閉弁51は、閉状態のとき、弁体54は弁座52bとともに供給経路52を塞ぎ(
図12の仮想線)、このとき液化炭酸ガスは上流側供給経路52aよりも下流側には供給されない。
【0079】
一方、開閉弁51は、弁体54が弁移動手段により移動されることで開状態となり、弁体54と弁座52bとの間に液化炭酸ガスの流路(以下、弁座経路52dと称する)が形成される。
【0080】
オリフィス57は、造粒部56内に、造粒部56の上流側に配置される。オリフィス57によって規制される液化炭酸ガスの流路面積は、上流側供給経路52aから弁座経路52dへの流路において流路面積が縮小する狭路部52eの流路面積よりも小さい。
【0081】
これにより、液化炭酸ガスは、供給流路内で流路面積が最小となるオリフィス57を過ぎた造粒部56内で断熱膨張により減圧されて相変化する。つまり、粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスは、造粒部56内で生成される。
【0082】
液化炭酸ガスは、狭路部52eを過ぎても、オリフィス57よりも上流側に位置する間は減圧が抑制されるため相変化しない。つまり、液化炭酸ガスは、弁座経路52d内では相変化せず、弁座経路52d内では粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスは生成されない。
【0083】
ここで、従来の開閉弁は、オリフィス57を有さない。このとき液化炭酸ガスは、供給経路52において流路面積が最小となる狭路部52eを過ぎると、断熱膨張により減圧されて相変化する。つまり、粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスが、弁座経路52d内で生成される。その結果、従来の開閉弁は、生成された粒子状ドライアイスが弁座52bに固着などすることで、閉状態としたときに弁体54と弁座52bとの間に粒子状ドライアイスが噛み込むなどの結果、動作に不具合を生じることがあった。
【0084】
これに対し、開閉弁51は、液化炭酸ガスが弁座経路52dで相変化せず液相状態を保持することで、弁座経路52dでは粒子状ドライアイスが生成されない。よって、開閉弁51は、生成された粒子状ドライアイスが弁座52bに固着などすることで動作に不具合を生じることはない。したがって、ドライアイスブロックの製造装置1は、造粒部56内で粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスを安定して生成することができることで、ドライアイスの成形品質が向上する。
【0085】
なお、
図13に示すように、オリフィス257は、弁箱53における弁座52bの構成と一体となるように配置されて、構成されても良い。
図13は、本発明の変形例(「オリフィス付き開閉弁」の一例)に係る開閉弁251を示す縦断面図である。
【0086】
オリフィス57と同様に、オリフィス257によって規制される液化炭酸ガスの流路面積は、弁座経路52d内における狭路部52eの流路面積よりも小さい。これにより、開閉弁251は、オリフィス257の上流側における液化炭酸ガスの内圧低下を抑制できる。つまり、液化炭酸ガスは、オリフィス257を過ぎた造粒部56内で断熱膨張により減圧されて相変化するため、これより上流側の弁座経路52dで粒子状ドライアイスが生成されて、弁座52bにドライアイスが固着などすることはない。したがって、開閉弁251は、開閉弁51と同様に動作の不具合を防止できる。
【0087】
以上述べたように、ドライアイスブロックの製造装置1は、焼結金属フィルタ40による粒子状ドライアイスの捕集性と圧力損失の抑制による炭酸ガスの排出性とを両立させることで、粒子状ドライアイスと炭酸ガスとを高効率に分離して、粒子状ドライアイスを高密度に捕集することができる。そして、高密度に捕集された粒子状のドライアイスがプレス部で加圧されることで、圧密度の高いドライアイスが生成される。したがって、ドライアイスブロックの製造装置1は、ドライアイスの圧密度を向上することができる。
【0088】
また、ドライアイスブロックの製造装置1は、多層構造の焼結金属フィルタ40をプレス室10内の最適な位置に配置することで、粒子状ドライアイスを確実にプレス室10内に捕集するとともに、通気度の確保(または圧力損失の低減)による炭酸ガスの効率的な排出と、必要な機械的強度とを両立させることができる。これにより、焼結金属フィルタ40の変形に起因するドライアイスブロックの凹凸、傷などを防止し、凹凸、傷などがない平滑な表面を有するドライアイスブロックを生成することができる。したがって、ドライアイスブロックの製造装置1は、ドライアイスブロックの圧密度を向上するとともに、ドライアイスブロックの成形品質の向上が図れる。
【0089】
[ドライアイスブロック良品率の確認結果]
ドライアイスブロックの製造試験として、厚さ20mm×長さ140mm×幅75mm程度の、冷却服に取り込みやすいサイズのドライアイスブロックを製造し、製造されたドライアイスブロックに割れ、欠けなどが無い良品率を確認した。従来装置として、本発明に係る焼結金属フィルタ40を有さないプレス装置、および本発明に係るオリフィス57を有さない開閉弁を備えるドライアイスブロックの製造装置で製造したドライアイスブロックの良品率は、72%であった。これに対して、本発明に係る焼結金属フィルタ40を有するプレス室10、および本発明に係る開閉弁51を備えるドライアイスブロックの製造装置1で成形したドライアイスブロックの良品率は、98%であった。すなわち、ドライアイスブロックの圧密度が向上することで、冷却服に取り込みやすいサイズのドライアイスブロックの良品率が大幅に向上した。
<実施形態2>
【0090】
次に、
図14以降を参照して、本発明の実施形態2に係るドライアイスブロックの製造装置1のプレスユニット200について説明する。本実施形態に係るプレスユニット200は、実施形態1に係るプレスユニット100に対して、「シール構造」、「供給部」、「プレス部」についてそれぞれ改善を行い、ドライアイスブロックの製造装置1の製造効率、成形品質の向上を図ったものである。プレスユニット200は、プレス室210と、供給部250と、スライドシリンダ部70とを備える。
【0091】
[プレス室210の構成]
まず
図14、
図15、
図16を参照して、プレスユニット200のプレス室210の構成について説明する。
図14は、プレス室210の分解斜視図である。
図15は、プレス室210の縦断面斜視図である。
図16は、
図15において示した各断面を展開した縦断面図である。
【0092】
プレス室210は、上記に実施形態1で説明したプレスシリンダ部60および周壁部30に代えて、プレスシリンダ部260および周壁部230を有する。
【0093】
プレスシリンダ部260は、プレスブロック261と、第1シールプレート63(第1の金属部材の一例)と、ダンパー64(弾性部材の一例)と、プレスプレート80(プレス板の一例)と、第1ボルトB1とを有する。プレスブロック261は、プレスロッド262に接続される。なお、以降においては、プレスシリンダ部260におけるプレスロッド262より上方の構成は、上記で説明した実施形態1の構成と同様であるため、上記を参照することで、図示および説明を省略する。
【0094】
プレスプレート80は、上方に配置される金属製の第1プレスプレート81(第1プレス板の一例)と、下方に配置される例えばPTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)製の第2プレスプレート82(第2プレス板の一例)とが上下に積層されて構成される。第2プレスプレート82は第1プレスプレート81に上方からネジ止めされる。
【0095】
ダンパー64は、第1プレスプレート81の外周縁に沿って上面に環状に配置される弾性部材である。ダンパー64は例えばNBR(Nitril-Butadiene Rubber)製として構成される。第1シールプレート63は、ダンパー64の上方にダンパー64の上面を覆うように環状に積層される例えば金属部材である。
【0096】
第1プレスプレート81の上面の外周端部には、上面から下方に環状に凹む窪み部86が設けられている。ダンパー64および第1シールプレート63は、窪み部86に嵌り込んで積層された状態で収容される。
【0097】
ダンパー64と第1シールプレート63とが窪み部86に収容された状態で、プレスブロック261が第1プレスプレート81に第1ボルトB1で固定される。第1ボルトB1は第1プレスプレート81に設けられたネジ孔(符号省略)に螺合される。この際、プレスブロック261下面の外側端部と第1シールプレート63上面の内側端部とは、上面視において全周に亘ってオーバーラップしており、このオーバーラップした部分においてプレスブロック261下面は、第1シールプレート63上面と上下方向に接触可能に構成される。
【0098】
周壁部230は、第2シールプレート37(第2の金属部材の一例)と、ガスケット38と、第2ボルトB2とを有する。
【0099】
第2シールプレート37は、環状の例えば金属部材であり、ガスケット38を介して周壁部230の上端部に第2ボルトB2で固定される。第2ボルトB2は周壁部230の上端部に設けられたネジ孔(符号省略)に螺合される。この際、第2シールプレート37下面の内側端部と第1シールプレート63上面の外側端部とは、上面視において全周に亘ってオーバーラップしており、このオーバーラップした部分において第2シールプレート37下面は、第1シールプレート63上面と上下方向に接触可能に構成される。
【0100】
第2シールプレート37の内面と、プレスブロック261の外面とは、所定の隙間を有して対向するように配置される。
【0101】
以下では、
図16において符号Cで示す部分(シール構造)、符号Dで示す部分(供給部250)、符号Eで示す部分(プレス部:プレスプレート80)の構成について順に説明する。
【0102】
(シール構造の構成)
まず
図17を参照して、プレス室210におけるシール構造の構成について説明する。
図17は、
図16のC部分について拡大した縦断面図である。
【0103】
繰り返しになるが、ドライアイスブロックの製造装置1では、液化炭酸ガスを粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスの混合流体に相変化させて、混合流体をプレス室210に供給してドライアイスブロックを製造する。ここでドライアイスブロックの製造装置1では、供給された単位量当たりの液化炭酸ガスに対するドライアイスブロックの製造効率(変換効率)の向上が課題となる。具体的には、混合流体の供給時におけるプレス室210内のシール性確保が課題となる。プレス室210内ではプレス部が駆動するための所定の隙間が必要となるが、混合流体の供給時において、この隙間が適切にシールされていないと、混合流体(特に粒子状ドライアイス)の隙間からの漏出量が多くなり、変換効率が悪化する。加えて、低温環境下での稼働が前提となるドライアイス製造装置においては、シール材の低温時収縮によるシール性の悪化、および物性の低温時脆化傾向によるシール材の耐久強度の低下が課題となる。本実施形態のシール構造は、低温環境であってもプレス室210内のシール性を十分に確保できるシール構造を提供するものである。
【0104】
本実施形態では、上記で説明した、第1シールプレート63と、第2シールプレート37と、ダンパー64と、第1プレスプレート81と、プレスブロック261とにより、プレス室210内をシールするシール構造を構成する。
【0105】
上記で説明したように、第1プレスプレート81は、窪み部86にダンパー64と第1シールプレート63とが積層されて嵌め込まれた状態で、上方からプレスブロック261が第1ボルトB1(
図16参照)が第1プレスプレート81に締結されて固定される。この際、プレスブロック261は、図示のようにプレスブロック261下面の外側端部261bと第1シールプレート63上面の内側端部63bとが全周に亘って接触した状態で固定される。
【0106】
第1プレスプレート81にプレスブロック261が固定される過程において、ダンパー64は初期状態(
図17の仮想線参照)から図示するΔ1だけ圧縮される。つまり、ダンパー64は予めΔ1だけ圧縮されて与圧が掛かった状態で、第1プレスプレート81に組み付けられる。
【0107】
窪み部86には、外周縁に沿って上方に延びる周壁部材87が設けられている。ダンパー64および第1シールプレート63は、窪み部86に嵌り込んで積層された状態で周壁部材87の内側に収容される。
【0108】
周壁部材87には、上端内側縁に沿って面取り部87cが形成されている。また、周壁部材87の高さH1は、圧縮されたダンパー64の高さH2よりも小となるように設定される。つまり、ダンパー64はこれらの高さの差分(H2-H1)だけさらに圧縮されることができる。
【0109】
周壁部材87の内面87bとダンパー64の外面との間には所定の隙間が設けられている。ダンパー64はこの隙間の範囲内で弾性変形が可能である。
【0110】
以下では、
図16、
図17に示されるように、第1プレスプレート81(プレスプレート80)がプレス室210内における上方に位置し、かつ第1シールプレート63と第2シールプレート37とが互いに接触していない位置をプレスプレート80の上下方向位置に関する「原点位置」と称する。
【0111】
【0112】
詳しくは後述するが、ドライアイスブロックの製造装置1では、例えば開閉弁51(
図1参照)の作動不良などを原因として、意図せず液化炭酸ガスがプレス室210内に供給される可能性がある。その場合、ドライアイスブロックの成形品質に影響が及ぶおそれがある。本実施形態の供給部250は、意図せず混合流体または、液化炭酸ガス混合流体に相変化されずに供給経路52からプレス室210内に供給された場合であっても、ドライアイスブロックの成形品質を確保できる供給部250を提供するものである。以下では例として、意図せず液化炭酸ガスが供給路52からプレス室210内に供給された場合について説明する。
【0113】
図示のように供給部250は、供給経路52を有する。繰り返しになるが供給経路52は、液化炭酸ガスを粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスの混合流体に相変化させて、プレス室210のプレス領域34に供給する(矢印D6)。
【0114】
供給部250は、さらに排気経路58を有する。排気経路58は、プレス室210内における供給経路52の上方に設けられる。具体的には排気経路58は、周壁部230の内面において外側に凹む凹部として構成される。排気経路58は、一端部58bがプレス室210内に開口するとともに、他端部58cの下端が供給経路52内に開口して設けられる。本実施形態では、一端部58bが周壁部230の周方向に延びて形成されるとともに、他端部58cが上下方向に延びて形成される。
【0115】
排気経路58は、プレスプレート80(第1プレスプレート81、第2プレスプレート82)の動きによって、閉状態と開状態とが切り替えられる。ここで、
図18Aに示されるように、プレスプレート80は、第1プレスプレート81の外面と周壁部230の内面との隙間CL1が、第2プレスプレート82の外面と周壁部230の内面との隙間CL2よりも大となるように構成される。なお、CL1は上記で説明した粒子状ドライアイスが継続的に通過することが容易な寸法として設定される。またCL2は、粒子状ドライアイスが継続的に通過することが困難な寸法として設定される。
【0116】
図18A、
図18Bに示されるように、プレスプレート80が、仮想線(
図18A参照)で示す原点位置から上昇したとき(同図の矢印D4)、排気経路58の一端部58bが第2プレスプレート82の外面と対向する。CL2が、粒子状ドライアイスの通過が困難な寸法として設定されていることで、排気経路58は閉状態となる。このとき供給経路52からの液化炭酸ガスは、プレスプレート80の上方に排気されない(同図の点線矢印)。
【0117】
一方で
図19A、
図19Bに示されるように、プレスプレート80が、
図18A、
図18Bで示された状態から下降したとき(
図19Aの矢印D5)、排気経路58の一端部58bは第2プレスプレート82の外面と対向せずに、第1プレスプレート81の外面と対向する。このときCL1が粒子状ドライアイスの通過が容易な寸法として設定されていることで、排気経路58は開状態となる。具体的にはこのとき供給経路52からの液化炭酸ガスは、他端部58c、一端部58b、および周壁部230の内面と第1プレスプレート81との隙間CL1をこの順に通って、プレス室210内におけるプレスプレート80の上方に排気可能となる(矢印D7)。
【0118】
(プレスプレート80の構成)
次に、
図20を参照して、プレス室210におけるプレスプレート80の構成について説明する。
図20は、
図16のE部分について拡大した縦断面図である。
【0119】
詳しくは後述するが、ドライアイスブロックの製造装置1では、ドライアイスブロックの成形品質の向上が課題となる。本実施形態のプレスプレート80は、第2プレスプレート82(PTFE製プレート)を効果的に用いることで、ドライアイスブロックの成形品質を向上できるプレスプレート80を提供するものである。
【0120】
上記で説明したように、第1プレスプレート81の下方には、第2プレスプレート82(PTFE製プレート)が配置され、第2プレスプレート82は、第1プレスプレート81に上方からネジ止めされる。具体的には、第1プレスプレート81には複数の貫通孔84が設けられており(
図1参照)、それぞれの貫通孔84の上端にはザグリ84b、それぞれのネジ孔の下端には面取り部84cが形成されている。
【0121】
また第2プレスプレート82には、複数の貫通孔84と対応する位置に複数のタッピング孔85が設けられている(
図1参照)。そして複数のタッピングネジ83(ネジの一例)のそれぞれを、貫通孔84に通して、第2プレスプレート82のタッピング孔85にネジ止めする。この際、上の吹出部で図示されるように、タッピングネジ83の頭部の高さは、ネジ孔のザグリ84bの高さよりも若干大となるように構成されている。これによりタッピングネジ83の頭部は、第1プレスプレート81の上面からΔ2だけ突出した状態となる。
【0122】
そして、この状態でプレスブロック261(連結部材)が第1ボルトB1(
図16参照)によって、第1プレスプレート81に固定される。これにより
図20に示されるように、プレスブロック261の下面がタッピングネジ83の頭部を上方から所定の作用力F1で押圧する。
【0123】
一般的に、PTFE部材(第2プレスプレート82)は摩擦係数が低く、ネジ止めが困難であるという課題がある。ネジ山とPTFE部材との接触面に十分な摩擦力が発生しないことから、ネジの軸力が不十分となりネジが緩みやすくなるためである。
【0124】
本実施形態では上記のように構成されて、タッピングネジ83の頭部が上方から押圧されることで、不足しているネジの軸力が補われて、タッピングネジ83の頭部の座面と第1プレスプレート81との接触面において一定の摩擦力が得られる。これにより、タッピングネジ83の回転が抑制されることで、タッピングネジ83の緩みが抑制される。つまり、タッピングネジ83は、例えば座金などの新たな部品などを要さずにプレスシリンダ部260の構成要素のみで緩み止めがされて、PTFE部材(第2プレスプレート82)のネジ止めを行うことができる。
【0125】
また、PTFE部材をネジ止めする際、タッピングネジ83孔を押し広げてねじ込んでいくことで、第2プレスプレート82が変形し、仮想線で図示されるように変形分が第1プレスプレート81と第2プレスプレート82との境界部に流動し、第1プレスプレート81と第2プレスプレート82との間に隙間CLを生じさせることがある。これにより第2プレスプレート82が安定的に第1プレート81に固定されないことがある。
【0126】
本実施形態では第1プレスプレート81の貫通孔84の下端に面取り部84cが形成されていることで、下の吹出部に示されるように、面取り部84cと第2プレスプレート82との間には所定の空間が形成される。これにより、第2プレスプレート82へのねじ込みによって押し広げられた前記変形分のPTFE部材をこの空間の中に収容することができる。よって第1プレスプレート81と第2プレスプレート82との境界部における隙間CLの発生が抑制されることで、第2プレスプレート82が第1プレスプレート81に密着して安定的に固定される。
【0127】
[ドライアイスブロックの製造工程]
次に、
図21~
図25を参照して、上記の構成においてドライアイスブロックを製造する工程について説明する。繰り返しとなるが、ドライアイスブロックの製造工程は、主に、粒子状ドライアイスおよび炭酸ガスの混合流体をプレスユニット200に供給する供給工程、粒子状ドライアイスをプレスしてドライアイスブロックを成形するプレス工程、成形されたドライアイスブロックを取り出す取出工程の3工程で進行する。
【0128】
(供給工程)
まず、
図21を参照して、供給工程について説明する。
図21は、プレスユニット200を用いたドライアイスブロックの製造装置1の供給工程を示す縦断面図である。
【0129】
図21に示されるように、プレスシリンダ部260は、
図16、
図17で示されたプレスプレート80が原点位置にある状態(第1シールプレート63と第2シールプレート37とが接触していない状態)から、プレスプレート80を上昇させる(
図21の矢印D4)。
【0130】
これにより、
図21、
図22Aに示されるように、第1シールプレート63と第2シールプレート37とが接触する。
図22Aは、
図21のG部分について拡大した縦断面図である。
そして、図示のように第1シールプレート63上面の外側端部63bと第2シールプレート37下面の内側端部37bとが接触し、上下方向に互いに押圧されることで、第1シールプレート63の下部のダンパー64が図示する仮想線の状態から圧縮方向の作用力F2を受けて弾性変形(
図22のΔ3)する。この反力として第1シールプレート63から第2シールプレート37へ作用力F3が付与されることで第1シールプレート63と第2シールプレート37との間がシールされる。なお、第2シールプレート37と周壁部230との間は、ガスケット38が配置されていることで、適切にシールされている。よって周壁部230の内面と第1プレスプレート81の外面との隙間において、下方から流動してきた混合流体のうちの特に粒子状ドライアイスDP(図中の矢印D9)は、上方で遮断される(図中の破線矢印)ことで外部に漏出しない。すなわち、供給工程におけるプレス室210内のシール性が確保される。
【0131】
ここで、上記で説明したように、ダンパー64は予めΔ1だけ収縮された状態で第1プレスプレート81に組付けられているため(
図17参照)、
図22Aで示される時点では、ダンパー64は初期状態からΔ1+Δ3だけ圧縮された状態にある。本実施形態のシール構造では、ダンパー64の圧縮代Δ1、Δ3が十分に確保できるように設定されることができる。これにより、ダンパー64の低温時収縮(および製造ばらつきなど)を考慮しても所望の作用力F3が確保されるように構成されることが可能である。ダンパー64の圧縮代Δ1、Δ3は、例えば周壁部材87の高さH1、ダンパー64の高さH2(
図17参照)、プレスシリンダ部260の上昇量、窪み部86の窪み深さなどをパラメータとして設定される。
【0132】
例えば、ダンパー64が周壁部230の内面と第1プレスプレート81との隙間に配置された場合、低温時収縮によるシール性の悪化を懸念してダンパー64の圧縮代を大にし過ぎると常温稼働時にダンパー64部材における過大応力の発生などが背反となるが、本実施形態によるシール構造では、圧縮代を十分確保していても常温稼働時における上記のような背反が生じない。
【0133】
なおこの際、ダンパー64には圧縮力のみが付与されて、せん断力・擦動力などが付与されないことで、ダンパー64への機械的な負荷を安定的にすることができる。さらに、ダンパー64は、第1シールプレート63を介して第2シールプレート37に押圧されることで、第2シールプレート37に直接押圧されない。よって、例えば第2シールプレート37の端部との局所的な強当たりによるダンパー64における応力集中の発生などが抑制される。
【0134】
ここで第1プレスプレート81には周壁部材87および周壁部材87への面取り部87cが設けられている。
図22Bに示されるように、仮に周壁部材87が設けられていない場合、例えばダンパー64が弾性変形するとともに外方に移動した場合、符号C1で示されるようにダンパー64が窪み部86の外周縁と強当たりするおそれがある。またこの際、ダンパー64は符号C2で示されるように、周壁部230の内面と接触してせん断力、擦動力などが付与されるおそれがある。また、
図22Cに示されるように、仮に周壁部材87の面取り部87cが設けられていない場合、ダンパー64が弾性変形した際に、符号C3で示されるようにダンパー64が周壁部230の上端と強当たりするおそれがある。以上のように、周壁部材87および周壁部材87への面取り部87cが設けられていることで、ダンパー64における応力集中の発生や、せん断力・擦動力の発生が抑制される結果、ダンパー64の耐久強度を向上することができる。とりわけダンパー64は、低温環境下で使用されることで物性が脆性傾向を示し、応力集中による影響が大きくなるが、上記のように構成されることで低温環境下においても発生応力が緩和されて所定の耐久強度を確保することができる。なお、本実地形態では、面取り部87cは、C面取りとして構成されたが、面取り部87cは、例えばR面取りとして構成されてもよい。
【0135】
その後、実施形態1の場合と同様、混合流体がプレス室210に供給される(
図21の矢印D6)。混合流体中の炭酸ガスは、排出孔32から外部に排出される(
図21の矢印D8)とともに、粒子状ドライアイスDPは、上記で説明したようにプレス室210内のシール性が保たれることで、プレス室210内に確実に捕集される。つまりドライアイスブロックの製造装置1は、長期間にわたって安定的にプレス室210内のシール性を確保することができる。
【0136】
(プレス工程)
次に、
図23、
図24を参照して、プレス工程について説明する。
図23、
図24は、プレスユニット200を用いたドライアイスブロックの製造装置1のプレス工程を示す縦断面図である。
図23では、プレス工程開始直後の様子が示されており、
図24では、プレス工程が終了した状態が示されている。
【0137】
プレス工程は、上記で説明した供給工程において、液化炭酸ガスのプレス室210内への供給が完了し、液化炭酸ガスの供給を停止した後に開始される。液化炭酸ガスの供給は上記で説明した開閉弁51(
図1参照)の操作により停止される。しかしながら、例えば開閉弁51の作動不良などを原因として、プレス工程が開始されてからも、意図せず液化炭酸ガスがプレス室210内へ供給されるおそれがある。この場合、プレス室210内では液化炭酸ガスの過剰供給によりプレス室210内の圧力が過剰に高くなると、液化炭酸ガスは、混合流体に相変化されずに液化炭酸ガスのままプレス室210内に残存してドライアイスブロックと共存する可能性がある。その場合、その後の取出工程においてプレス室210内が外部に開口されて大気解放されると、プレス室210内が急激に減圧されて、液化炭酸ガスが気体に相変化して急激に膨張することで、ドライアイスブロックに亀裂などが発生し、ドライアイスブロックの成形品質が低下するおそれがある。
【0138】
本実施形態では、
図23に示されるように、プレスシリンダ部260が下降(
図23の矢印D5)を開始した初期において、上記で説明したように排気経路58が開状態となり、供給経路52とプレスプレート80の上方とが連通する(
図23の矢印D7)。よって、プレス工程において仮に意図せず液化炭酸ガスが供給経路52から供給された場合(
図23の矢印D6)であっても、過剰に供給された液化炭酸ガスは、開状態となった排気経路58からプレスプレート80の上方に排気されることができる。これにより、液化炭酸ガスの過剰供給があった場合でも、プレス室210内の圧力がベントされることで、プレス室210内における急激な圧力上昇が回避される。結果として、意図せず液化炭酸ガスがプレス室210内へ供給された場合においても、ドライアイスブロックの成形品質が確保される。
【0139】
より具体的には、開閉弁51としてパイロット式の開閉弁51が用いられる場合、弁の開閉は開閉弁51の一次側と二次側の圧力差に基づいて制御される。この場合、上記のように液化炭酸ガスの過剰供給があることで、二次側(プレス室210内)の圧力が高くなると開閉弁51の誤作動を招くおそれがある。本実施形態では、パイロット式の開閉弁51が用いられる場合であっても、上記のように過剰供給された液化炭酸ガスを排気して、二次側圧力をベントすることで、開閉弁51の誤作動を回避することができる。
【0140】
そして、
図24に示されるように、プレスシリンダ部260がさらにプレスブロック261を下降することで(
図24の矢印D5)、プレス領域34においてドライアイスブロックDBが成形される。
【0141】
(取出工程)
次に、
図25を参照して、取出工程について説明する。
図25は、プレスユニット200を用いたドライアイスブロックの製造装置1の取出工程を示す縦断面図である。
【0142】
図25より、スライドシリンダ部70がスライド板71をプレス室210の外側に向けて駆動させる(
図25の矢印D10)とともに、プレスシリンダ部260がプレスブロック261を下降させる(
図25の矢印D5)ことで、ドライアイスブロックDBは、プレス室210の底板20上に移動される。
【0143】
この際、ドライアイスブロックの製造装置1では、プレスプレート80からのドライアイスブロックDBの剥離性の確保と、ドライアイスブロックDBの成形品質としてドライアイス表面の平滑性の確保と、プレスプレート80による断熱性の確保とが課題となる。例えばプレスプレート80の表面に剥離性の低い金属面が露出しており、ドライアイスブロックDBがプレスプレート80から剥離されないと、ドライアイスブロックDBはプレスユニット200の外部に取り出されず、プレスユニット200内に残存して堆積する結果、製造シーケンスの継続が困難となるおそれがある。また、ドライアイスブロックDB表面の凹凸は、応力集中の起点になり得るため、表面の平滑性の確保は、ドライアイスブロックDBの強度確保の観点からも重要となる。また、装置起動時プレス室210内は常温状態にあるところ、仮にプレスプレート80が熱伝導性の高い部材で構成されていた場合、プレス行程においてドライアイスブロックDBの表面にプレスプレート80から著しい入熱が生じると、ドライアイスブロックDBの表面では激しく昇華が起こり、ドライアイスブロックDBの表面で高圧のガスが発生する。すると、取出工程において、ドライアイスブロックへの荷重が除荷された際に、このガスが膨張し、ドライアイスブロックDBに亀裂が発生するおそれがある。よって、ドライアイスブロックDBの成形品質の観点からプレスプレート80は高い断熱性を有することが重要となる。
【0144】
本実施形態では、プレスプレート80が高い剥離性を有する第2プレスプレート82(PTFE製プレート)を介してドライアイスブロックDBに接触していることで、ドライアイスブロックDBは、プレスプレート80から容易に剥離される。また、第2プレスプレート82は上方からネジ止めされていることで、第2プレスプレート82下面にネジの表面が露出しない。よって、ドライアイスブロックDBは、例えばネジ部頭を収める凹凸部に侵入して、アンカー効果によって第2プレスプレート82からの剥離性が悪化するようなことがないため、プレスプレート80から容易に剥離される。
【0145】
また、第2プレスプレート82は上方からネジ止めされていることで第2プレスプレート82下面は、ネジ表面が露出しないことで平滑性が保たれる。さらに貫通孔84に面取り部84c(
図20参照)が設けられていることで、第2プレスプレート82が安定的に第1プレスプレート81に固定される。よって、第2プレスプレート82下面と接触するドライアイスブロックDBは、安定的に表面の平滑性が保たれることで成形品質面での向上が図れる。
【0146】
また、第2プレスプレート82をネジ止めするタッピングネジ83の頭部が上方から押圧されていることで(
図20参照)、タッピングネジ83が廻り止めされる。よって、ドライアイスブロックの製造装置1は、上記のような品質が確保されたドライアイスブロックDBを長期間にわたって安定的に製造することができる。
【0147】
また、第2プレスプレート82(PTFE製プレート)は、例えば金属材料と比較して熱伝導性が低く、すなわち高い断熱性を有している。よってこれと上方に接続される第1プレスプレート81からの入熱は第2プレスプレート82でほぼ遮断される。これにより、上記で説明したようなドライアイスブロックDB表面における昇華によるガスの発生、およびガスの発生によるドライアイスブロックDBの亀裂の発生が抑制される。
【0148】
図示を省略するが、その後、スライドシリンダ部70によって、ドライアイスブロックDBは装置の外部に押し出される。最後に、プレスシリンダ部260が、プレスプレート80が原点位置(
図16、
図17参照)に配置されるまでプレスブロック261を移動し、処理は終了する。これにより、ドライアイスブロックDBの製造が完了し、製造シーケンスにおいて次のドライアイスブロックDBが製造されるまで待機している間は、プレスプレート80は原点位置に配置される。すなわちこの間は、ダンパー64が圧縮変形されない。よって、ダンパー64は、長期間圧縮力が付与されることによる圧縮永久歪みの発生が抑制される。
【0149】
以上述べたように、本実施形態に係るドライアイスブロックの製造装置1は、実施形態1に対して、プレス室210におけるシール構造の改善により、プレス室210のシール性が確保されることで液化炭酸ガスからドライアイスブロックDBへの変換効率(単位量当たりの液化炭酸ガスからのドライアイスブロックDBの製造効率)が改善されるとともに、シール材(ダンパー64)の耐久強度が確保される。また、プレス室210における排気構造の改善により、ドライアイスブロックDBの製造工程における成形品質が確保される。また、プレス室210におけるプレスプレート80の改善により、ドライアイスブロックDBの成形品質が改善される。
【0150】
結果として、本実施形態に係るドライアイスブロックの製造装置1は、実施形態1に対して、改善されたドライアイスブロックDBの製造効率および成形品質を長期間にわたって安定的に確保することができる。
【0151】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、ドライアイスブロックの製造装置1を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0153】
W 熱所作業用冷却服
D ドライアイスブロック
P ドライアイスポケット
1 ドライアイスブロックの製造装置
2 制御部
4 入力部
6 油圧ユニット
8 空圧ユニット
9 液化炭酸ガスボンベ
10 プレス室
20 底板
30 周壁部
31 供給孔
32 排出孔
33 フィルタ収容部
34 プレス領域
35 ガイド部
40 焼結金属フィルタ
41 選別用フィルタ材
42 補強材
50 供給部
51 開閉弁
52 供給経路
56 造粒部
57 オリフィス
60 プレスシリンダ部
61 プレスブロック
63 第1シールプレート
64 ダンパー
80 プレスプレート(プレス板)
81 第1プレスプレート(第1プレス板)
82 第2プレスプレート(第2プレス板)
83 タッピングネジ
84 貫通孔
85 タッピング孔
86 窪み部
87 周壁部材
37 第2シールプレート
38 ガスケット
58 排気経路
70 スライドシリンダ部
71 スライド板
100 プレスユニット