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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020078
(43)【公開日】2025-02-12
(54)【発明の名称】炭素繊維束及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 9/22 20060101AFI20250204BHJP
   D01F 9/12 20060101ALI20250204BHJP
   D06M 15/507 20060101ALI20250204BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20250204BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20250204BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20250204BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20250204BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20250204BHJP
【FI】
D01F9/22
D01F9/12
D06M15/507
D06M15/53
D06M15/55
B29C70/06
B29C70/32
D06M101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123920
(22)【出願日】2023-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163120
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 嘉弘
(72)【発明者】
【氏名】立花 圭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽輔
【テーマコード(参考)】
4F205
4L033
4L037
【Fターム(参考)】
4F205AD16
4F205AG07
4F205HA02
4F205HC02
4F205HC17
4F205HF05
4F205HL01
4F205HT22
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC12
4L033CA45
4L033CA48
4L033CA49
4L037AT01
4L037CS02
4L037CS03
4L037FA01
4L037FA08
4L037FA12
4L037FA20
4L037PA55
4L037PC05
4L037PF27
4L037PF41
4L037PF52
4L037PS02
4L037UA09
4L037UA12
4L037UA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐擦過性及び耐糸切れ性が高い炭素繊維束を提供する。
【解決手段】サイジング剤が付着している炭素繊維束であって、繊度を800~3000Tex、単糸数を20000~50000本、各単繊維の繊維径の変動係数を10%以下、平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の比率を3.0%以下、1Nの張力をかけて再巻き付けした際の糸幅(mm)を繊度(Tex)で除した値を0.0180mm/Tex以上、引張強度を5600MPa以上とすることにより、上記課題を解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイジング剤が付着している炭素繊維束であって、
繊度が800~3000Texであり、
単糸数が20000~50000本であり、
各単繊維の繊維径の変動係数が10%以下であり、
平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率が3.0%以下であり、
1Nの張力をかけて再巻き付けした際の糸幅(mm)を繊度(Tex)で除した値が0.0180mm/Tex以上であり、
引張強度が5600MPa以上であることを特徴とする炭素繊維束。
【請求項2】
炭素繊維束を構成する各単繊維が、その表面に繊維軸方向に沿った筋状の凹凸を有する請求項1に記載の炭素繊維束。
【請求項3】
結節強度が600~800N/mmの範囲である請求項1又は2に記載の炭素繊維束。
【請求項4】
フィラメントワインディング成形用である請求項1又は2に記載の炭素繊維束。
【請求項5】
金属製又は樹脂製のライナーの外周を補強繊維と樹脂とからなる繊維強化プラスチック製のシェルで覆った圧力容器の前記補強繊維として用いられる請求項1又は2に記載の炭素繊維束。
【請求項6】
炭素繊維前駆体繊維束を耐炎化処理することにより、
繊度が1600~6000Texであり、
単糸数が20000~50000本であり、
各単繊維の繊維径の変動係数が10%以下であり、
平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率が3.0%以下である耐炎繊維束を得、
次いで、前記耐炎繊維束を炭素化することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
【請求項7】
前記炭素繊維前駆体繊維束が湿式紡糸法によって製造された炭素繊維前駆体繊維束である請求項6に記載の炭素繊維束の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維束及びその製造方法に関する。特に、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製圧力容器の製造に適した炭素繊維束及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維とマトリックス樹脂とからなるCFRPは、その高い比強度、比剛性を利用して、一般産業、自動車、スポーツ・レジャー、航空宇宙等の各分野において広く用いられており、これらのCFRPの工業的な用途は、近年、さらに拡大しつつある。CFRPの用途の拡大とともに、コンポジット物性を高く発現させるCFRPの製造方法に対する要求が高くなっている。
【0003】
CFRPは、優れた機械的性質を有しているため、価格の低下とともに金属材料から代替されつつある。特に、軽くて強い特徴を生かし、コンクリート構造物の補修材、風力発電用の羽根、輸送用乗り物のボディやシャフトのような構造材、各種圧力容器等への開発が盛んに行われている。
CFRP製圧力容器は、芯材となるライナーの外表面に、マトリックス樹脂を含浸させた炭素繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング成形法(以下、「FW成形法」ともいう)によって製造される。このFW成形法は、ガラス繊維を用いて圧力容器を製造する場合に広く採用されてきた成形法であるが、炭素繊維を用いて圧力容器を製造する場合にも採用されている。しかし、炭素繊維を用いてFW成形法により製造した圧力容器は、炭素繊維の持つ優れた繊維物性が十分に反映されていないという問題がある。
【0004】
炭素繊維束は、工程中の固定ガイドやローラー等との擦過によって、毛羽立ちや糸切れが生じ易い。炭素繊維束の毛羽立ちや糸切れは、工程通過性や工程安定性を悪化させるだけでなく、最終成形物であるCFRPの性能にも悪影響を及ぼす。即ち、炭素繊維束に毛羽立ちや糸切れが生じると、高い引張強度を有する炭素繊維束の優れた物性を、CFRPの性能に十分に反映させることができない。そのため、炭素繊維束には、耐擦過性、耐糸切れ性が求められる。
【0005】
特許文献1には、繊維を構成するポリアクリロニトリル系重合体のZ平均分子量Mz(F)が60万~200万であり、多分散度であるMz(F)/Mw(F) (Mw(F)は、繊維を構成するポリアクリロニトリル系重合体の重量平均分子量を表す)が2~5であり、原子間力顕微鏡で3μmの範囲で測定した自乗平均面粗さRmsが15~40nmであり、単繊維繊度が0.3~1.5dtexであり、単繊維断面直径の変動係数が0~5%である炭素繊維前駆体繊維が開示されている。この炭素繊維前駆体繊維は、繊維径のバラツキは小さいが、超高分子量ポリマーの使用が必要であり、繊維束中の単糸数を多くすることもできないためコストが見合わない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-255159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐擦過性及び耐糸切れ性が高い炭素繊維束を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このような炭素繊維束を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、炭素繊維束を構成する単繊維の繊維径の変動係数を所定の値以下とし、且つ平均繊維径の85%以下の繊維径を有する単繊維の本数を所定の値以下とするとともに、炭素繊維束を所定の引張強度とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記課題を解決する本発明は以下に記載するとおりである。
【0010】
〔1〕 サイジング剤が付着している炭素繊維束であって、
平均繊度が800~3000Texであり、
単糸数が20000~50000本であり、
各単繊維の繊維径の変動係数が10%以下であり、
平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率が3.0%以下であり、
1Nの張力をかけて再巻き付けした際の糸幅(mm)を繊度(Tex)で除した値が0.0180mm/Tex以上であり、
引張強度が5600MPa以上であることを特徴とする炭素繊維束。
【0011】
〔2〕 炭素繊維束を構成する各単繊維が、その表面に繊維軸方向に沿った筋状の凹凸を有する前記〔1〕に記載の炭素繊維束。
【0012】
〔3〕 結節強度が600~800N/mmの範囲である前記〔1〕又は〔2〕に記載の炭素繊維束。
【0013】
〔4〕 フィラメントワインディング成形用である前記〔1〕~〔3〕の何れかに記載の炭素繊維束。
【0014】
〔5〕 金属製又は樹脂製のライナーの外周が補強繊維と樹脂とからなる繊維強化プラスチック製のシェルで覆われた圧力容器の前記補強繊維として用いられる前記〔1〕~〔4〕の何れかに記載の炭素繊維束。
【0015】
上記〔1〕に記載の発明は、所定の繊度及び単糸数であって、繊維径のバラツキが小さく、且つ平均繊維径を大きく下回る繊維径を有する単繊維の比率が小さく、1Nの張力をかけて再巻き付けした際の糸幅(mm)を繊度(Tex)で除した値(糸幅/繊度を意味する。以下、開繊幅とも言う。)が大きい炭素繊維束である。
上記〔2〕に記載の発明は、炭素繊維束を構成する各単繊維が、その表面に繊維軸方向に沿った筋状の凹凸を有している。この筋状の凹凸の存在は、炭素繊維の原料となる炭素繊維前駆体繊維が湿式紡糸法で製造されたことを意味する。
上記〔3〕に記載の発明は、結節強度が所定の範囲内にあり、曲げ応力や圧縮応力などに対する強度が高く、高次加工性に優れた炭素繊維束である。糸切れや毛羽の発生が少ないため、例えば上記〔4〕及び〔5〕に記載される、フィラメントワインディング成形によって製造される圧力容器の補強繊維としての用途に特に適している。
【0016】
〔6〕 炭素繊維前駆体繊維束を耐炎化処理することにより、
繊度が1600~6000Texであり、
単糸数が20000~50000本であり、
各単繊維の繊維径の変動係数が10%以下であり、
平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率が3.0%以下である耐炎繊維束を得、
次いで、前記耐炎繊維束を炭素化することを特徴とする〔1〕に記載の炭素繊維束の製造方法。
【0017】
〔7〕 前記炭素繊維前駆体繊維束が湿式紡糸法によって製造された炭素繊維前駆体繊維束である前記〔6〕に記載の炭素繊維束の製造方法。
【0018】
上記〔6〕及び〔7〕に記載の発明は、所定の繊度及び単糸数であって、繊維径のバラツキが小さく、且つ平均繊維径を大きく下回る繊維径を有する単繊維の比率が小さい耐炎繊維束を用いる炭素繊維束の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の炭素繊維束は、耐擦過性及び耐糸切れ性が高い。そのため、この炭素繊維束は、FW成形に特に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の炭素繊維束及びその製造方法について説明する。
【0021】
(1) 炭素繊維束
本発明の炭素繊維束は、サイジング剤が付着している炭素繊維束であって、繊度が800~3000Texであり、単糸数が20000~50000本であり、各単繊維の繊維径の変動係数が10%以下であり、平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率が3.0%以下であり、1Nの張力をかけて再巻き付けした際の糸幅(mm)を繊度(Tex)で除した値が0.0180mm/Tex以上であり、引張強度が5600MPa以上であることを特徴とする。
【0022】
炭素繊維束は特に限定されないが、ピッチ系、レーヨン系、ポリアクリルニトリル(PAN)系等の炭素繊維束が使用できる。操作性及び工程通過性、機械強度を特に向上させるには、PAN系の炭素繊維束が好ましい。
【0023】
炭素繊維束の繊度は、800~3000Texであり、800~2500Texが好ましく、800~2000Texが特に好ましい。800Tex未満の場合は生産性が悪く、3000Texを超える場合、炭素繊維束の強度が低下したり、耐炎化工程での蓄熱切断などによって十分な強度を有する炭素繊維束を生産性良く得ることができない。
【0024】
炭素繊維束の単糸数は、20000~50000本であり、24000~48000本が好ましく、30000~48000本がより好ましい。20000本以上であることにより、炭素繊維束の製造効率やFW法による複合材料の製造効率を高くできる。50000本以下であることにより、高強度の炭素繊維束を得やすい。
【0025】
炭素繊維束中の各単繊維の繊維径の変動係数は、10%以下であり、3.0~10.0%であることが好ましく、5.0~8.0%であることがより好ましく、5.0~7.0%であることが特に好ましい。10%を超える場合、炭素繊維束内で強度のバラツキが大きく、複合材料の強度を高くすることが困難となる。また、FW成形時に単繊維の破断によって毛羽を生じ易くなる。
【0026】
平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率は、3.0%以下であり、0.1~3.0%であることが好ましく、0.1~2.0%であることが特に好ましい。3.0%を超える場合、繊維径の小さい単繊維が存在する箇所が複合材料の破壊の起点となり易いため、複合材料の強度を高くすることが困難となる。また、FW成形時には、繊維径が小さい単繊維が破断して毛羽が生じ易い。そのため、高強度の炭素繊維束を用いているにもかかわらず、当該繊維物性が複合材料の物性に十分に反映され難くなる。
【0027】
1Nの張力をかけて再巻き付けした際の糸幅(mm)/繊度(Tex)の比(開繊幅とも言う)は0.0180mm/Tex以上であり、0.0180~0.0500mm/Texであることが好ましく、0.0200~0.0300mm/Texであることがより好ましい。0.0180mm/Tex未満の場合、圧力容器を製造する際に十分な繊維の開繊幅が得られないため、炭素繊維束間に隙間が生じて圧力容器の性能が低下し易い。
【0028】
炭素繊維束の引張強度は、5600MPa以上であり、5600~6600MPaであることが好ましく、5700~6500MPaであることが特に好ましい。5600MPa以上であることにより、これを用いて作製される複合材料の強度を維持しつつ軽量化を達成し易い。
【0029】
炭素繊維束の結節強度は、600~800N/mmであることが好ましく、650~800N/mmであることがより好ましく、680~800N/mmであることがさらに好ましい。600~800N/mmであれば、製造工程で発生する毛羽量が少なくなり、高次加工性が優れる。
【0030】
本発明の炭素繊維束は、炭素繊維束を構成する各単繊維が、その表面に繊維軸方向に沿った筋状の凹凸を有することが好ましい。筋状の凹凸を有することで、マトリックス樹脂との接着性の向上が期待できる。筋状の凹凸は、炭素繊維の原料となる炭素繊維前駆体繊維が湿式紡糸法で製造されることによって形成される。
【0031】
本発明の炭素繊維束は、サイジング剤が付着している。サイジング剤の付着量は0.4~1.4質量%であることが好ましく、0.5~1.2質量%であることがより好ましい。サイジング剤が0.4質量%未満の場合、開繊性は向上するが、工程通過時のガイド、ローラー等への耐擦過性が低下し易い。1.4質量%を超える場合、開繊性が悪くなるとともに圧力容器としたときに樹脂と炭素繊維との界面に多くのサイジング剤が存在することにより、破裂試験での破裂圧が低くなることがある。なお、サイジング剤とは、最終的な炭素繊維束に残存するサイジング剤の有効成分を意味する。後工程で除去される水等の溶媒は、サイジング剤の質量に含まない。
【0032】
サイジング剤は、複合材料に用いるマトリックス樹脂に応じて選択することが好ましい。例えば、エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等を、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、マトリクス樹脂との接着性の観点から、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましく、特に共重合ポリアミドが好ましい。
【0033】
また、本発明で用いるサイジング剤としては、25℃で固体のサイジング剤であることが好ましい。25℃で固体のサイジング剤を用いると、サイジング剤を付着させた繊維束をローラー搬送等する際に、ローラーやガイドにサイジング剤が付着し難くなるため、製造工程での毛羽の発生を抑制でき、耐擦過性がさらに高い炭素繊維束を得ることができる。
サイジング剤の有効成分の好ましい融点は、60~140℃である。
【0034】
本発明の炭素繊維束は、後述するフィラメントワインディング成形の補強繊維としての用途として好ましい。
【0035】
(2) 炭素繊維束の製造方法
本発明の炭素繊維束は以下の方法によって製造できる。
先ず、紡糸原液を紡糸して炭素繊維前駆体繊維束を得、この炭素繊維前駆体繊維束を耐炎化処理して耐炎繊維束を得、次いでこの耐炎繊維束を炭素化して炭素繊維束を得る。
【0036】
炭素繊維の製造に用いる前駆体繊維としては、PAN系繊維が好ましい。具体的には、アクリロニトリルを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含有し、その他の単量体を10質量%以下含有する単量体を単独又は共重合した紡糸原液を紡糸口金から紡出して製造する、PAN系繊維が好ましい。その他の単量体としては、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸エステルが例示される。
【0037】
炭素繊維前駆体繊維束の紡糸方法としては、湿式紡糸法が好ましい。湿式紡糸法を採用することにより、最終的に得られる炭素繊維束を構成する各単繊維の表面に、繊維軸方向に沿った筋状の凹凸を形成することができる。なお、紡糸原液は、30~60質量%の塩化亜鉛溶液に上記アクリル系重合体を溶解したものが好ましい。紡糸原液の粘度は、3~100Pa・sが好ましい。
【0038】
なお、紡糸原液の不純物を除去するために紡糸原液を濾過しても良い。紡糸原液の濾過は、工程安定化、強度・弾性率等の改善に大きく寄与する。
【0039】
本発明の炭素繊維束を製造するためには、前駆体繊維束の段階で、繊維径の変動係数を上述の範囲とし、且つ平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率を上述の範囲とすることが必要である。そのためには、各単繊維におけるドラフト率を均一にすることが有効である。ドラフト率を均一にするためには、紡糸孔数の少ない紡糸口金を用いるか、紡糸孔をドーナツ状に配置する等によって、紡糸口金下で各単繊維が受ける張力を均一にすることが有効である。そのような紡糸口金としては、特開2022-173821に記載の紡糸口金を用いることもできる。
【0040】
紡糸口金の紡糸孔数としては、10000~50000が好ましく、12000~36000が好ましい。紡糸口金の孔数が10000未満の場合は、本発明の目的としている20000~50000本の単繊維からなる繊維束を得る場合には複数の紡糸口金から得られた繊維を合糸する必要があり、紡糸口金の個数が増えるほど各繊維間でのばらつきの影響が出てしまうため、得られた炭素繊維束中の繊維径ばらつきが大きくなってしまう。また、紡糸孔数が50000を超える場合には均一に紡糸原液を吐出することが難しく、繊維径のばらつきも大きくなる。
【0041】
紡糸口金から紡糸原液を吐出する際のドラフト率は、使用する紡糸原液の種類及び紡糸口金により調整する必要がある。多数の紡糸孔を有する紡糸口金を使用する場合は、ドラフト率を高くしすぎると単繊維の繊維径のばらつきが大きくなる傾向がある。一例として、後述の実施例1で使用したアクリル系重合体紡糸原液を用いる場合のドラフト率(引き取りローラーの表面速度/吐出線速度)について説明すると、紡糸孔数が12000以下の場合は14~40%が好ましく、紡糸孔数が12000を超え18000以下の場合は14~30%、紡糸孔数が18000を超える場合は14~28%とすることが好ましい。この範囲を逸脱すると、平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率が高くなる傾向がある。
即ち、アクリル系重合体紡糸原液を用いる場合(最終的に得られる炭素繊維がPAN系繊維である場合)、
紡糸孔数が12000以下の場合、ドラフト率14~40%
紡糸孔数が12000超18000以下の場合、ドラフト率14~30%
紡糸孔数が18000超の場合、ドラフト率14~28%
の条件で紡糸することが好ましく、このような条件で製造された炭素繊維前駆体繊維束を耐炎化繊維束の原料とすることが好ましい。
【0042】
上記前駆体繊維束は、張力をかけながら洗浄処理及び湿熱延伸処理を施すが、洗浄工程及び湿熱延伸工程におけるトータル延伸倍率は10~15倍とすることが好ましい。
【0043】
得られた炭素繊維前駆体繊維束は、引き続き加熱空気中、220~300℃、好ましくは230~260℃で熱処理(耐炎化処理)して耐炎化繊維束を得る。この時の処理は、一般的に、延伸倍率0.85~1.30の範囲で処理されるが、高強度・高弾性率の炭素繊維束を得るためには、延伸倍率0.95~1.30とすることがより好ましい。
【0044】
上記の炭素繊維前駆体繊維束を耐炎化処理することにより得られる耐炎繊維束は、
繊度が1600~6000Texであり、
単糸数が20000~50000本であり、
各単繊維の繊維径の変動係数が10%以下であり、
平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率を3.0%以下とすることが必要である。
【0045】
耐炎繊維束の繊度は、1600~6000Texであり、2000~5000Texが好ましく、2500~3500Texが特に好ましい。1600Tex未満の場合は生産性が悪く、6000Texを超える場合、耐炎化工程において蓄熱切断などが生じる場合がある。また、この耐炎繊維束を炭素化して得られる炭素繊維束の強度が低下する場合がある。
【0046】
耐炎繊維束の単糸数は、20000~50000本であり、24000~48000本が好ましく、30000~48000本がより好ましい。20000本以上であることにより、炭素繊維束の製造効率やFW法による複合材料の製造効率を高くできる。50000本以下であることにより、この耐炎繊維束を炭素化して得られる炭素繊維束が高強度となり易い。
【0047】
耐炎繊維束を構成する各単繊維の繊維径の変動係数は、10%以下であり、3.0~10.0%であることが好ましく、5.0~8.0%であることがより好ましく、5.0~7.0%であることが特に好ましい。10%を超える場合、耐炎化工程において蓄熱切断などを生じる場合がある。また、この耐炎繊維束を炭素化して得られる炭素繊維束内で単繊維の強度のバラツキが大きくなり、これを補強繊維として用いても複合材料の強度を高くすることが困難となる。
【0048】
耐炎繊維束を構成する各単繊維の平均繊維径に対し、85%未満の繊維径を有する単繊維の本数の比率は、3.0%以下であり、0.1~3.0%であることが好ましく、0.1~2.9%であることが特に好ましい。3.0%を超える場合、繊維径の小さい単繊維が存在する箇所が最終的に得られる複合材料において破壊の起点となり易く、複合材料の強度を高くすることが困難となる。また、この耐炎繊維束を炭素化して得られる炭素繊維束において、FW成形時、繊維径が小さい単繊維が破断して毛羽が生じ易い。そのため、高強度の炭素繊維束を用いているにもかかわらず、当該繊維物性が複合材料の物性に十分に反映され難くなる。
【0049】
上記耐炎化繊維束は、従来の公知の方法によって炭素化される。例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、好ましくは酸素濃度が0.05体積ppm未満の不活性ガス雰囲気下で昇温し、炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、耐炎化繊維束の張力を制御して焼成する。焼成温度は、600~2000℃が好ましく、1000~1700℃が特に好ましい。不活性ガスは、窒素が廉価であるため好ましい。
【0050】
炭素化処理後、表面処理を行うことも好ましい。表面処理の方法は特に限定されないが、薬液を用いる液相酸化、又は電解液溶液中で炭素繊維を陽極として電解処理する電解酸化、気相状態でプラズマ処理する気相酸化等を用いることができる。これらのうち、生産性、処理の均一性、安全性の観点から、電解酸化を用いることが好ましい。電解処理で用いる電解液の電解質は特に限定されないが、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸; 酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、マレイン酸等の有機酸; 硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸水素アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等のアンモニウム塩又はアンモニア; 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ水酸化物; 炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩; マレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸ナトリウム等の有機塩; を単独又は2種類以上の混合物として用いることができる。
【0051】
電解液の温度は、0~100℃が好ましく、25~45℃が特に好ましい。また、電解質の濃度は、5~25質量%が好ましく、8~12質量%が特に好ましい。電解処理は複数の電解槽を使用して行うことが好ましい。設備及びコスト、条件設定の煩雑さを考慮すれば、2~10槽を使用することが好ましい。電気量は、炭素繊維1gに対して、0.5クーロン以上であることが好ましく、2~100クーロンであることが特に好ましい。
【0052】
本発明の炭素繊維束には、耐擦過性を向上させるためにサイジング剤が付与される。サイジング剤については既に説明したとおりである。サイジング剤の付与は公知の方法によって行えばよく、炭素繊維束をサイジング剤浴に浸漬する方法等が例示される。サイジング剤の種類や付着量を調整することにより、前述の開繊幅を制御することができる。
【0053】
(3) FW成形法による圧力容器の製造方法
本発明の炭素繊維束に樹脂を含浸させながらライナー等に巻き付けた後、この樹脂を硬化させることによって圧力容器を製造できる。
【0054】
このFW成形法は、工程中のローラーやガイドとの擦過によって炭素繊維束の損傷を引起し易い。炭素繊維束が損傷すると工程通過性や工程安定性が低下するだけでなく、得られる炭素繊維複合材料の性能も低下する。本発明の炭素繊維束は、平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の本数の比率が3.0%以下であり均一であるため、ローラーやガイドとの擦過が生じても、毛羽立ちや糸切れが生じ難い。
【0055】
樹脂は、開繊ローラー等を用いてサイジング剤付着炭素繊維束を開繊しながら含浸させることが好ましい。樹脂(マトリックス樹脂)としては、熱硬化性樹脂が好ましい。例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂を用いることができる。また、樹脂には、硬化剤、脱泡剤等の添加剤を添加しても良い。硬化温度、硬化時間などは従来公知であり、使用する樹脂に応じて適宜調整される。
【0056】
金属製又は樹脂製のライナーの外表面が、補強繊維として使用される炭素繊維と樹脂とからなる繊維強化プラスチック製のシェルで覆われたCFRP製圧力容器製造方法について説明する。
圧力容器の製造方法では、中空部を有する金属製又は樹脂製のライナーの外表面に、樹脂が含浸されたサイジング剤付着炭素繊維束(以下、「樹脂含浸炭素繊維束」ともいう)がライナーの軸を周回するように配置される繊維強化樹脂層(フープ層)及び/又は、樹脂含浸炭素繊維束がライナーの軸方向に対してヘリカルに配置される繊維強化樹脂層(ヘリカル層)が積層される。なお、繊維強化樹脂層(フープ層)及び/又は繊維強化樹脂層(ヘリカル層)の積層構成は、所望の圧力容器の性能に応じて適宜決定される。
【0057】
その後、樹脂含浸炭素繊維束に含浸されている樹脂は、その樹脂に応じた硬化方法によって硬化されて、CFRP製圧力容器が製造される。
このようにして製造されるCFRP製圧力容器は、炭素繊維束の優れた繊維物性が十分に反映される。本製造方法で製造されるCFRP製圧力容器の理論破壊圧に対する実破壊圧は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の評価方法は、次の通りである。
【0059】
[単繊維の平均繊維径、及び単繊維の繊維径の変動係数、平均繊維径に対して85%未満の繊維径を有する単繊維の比率]
繊維束の断面を画像解析して各繊維の繊維径及び変動係数を測定した。具体的には、前駆体繊維束又は炭素繊維束を樹脂に包埋した後、繊維軸に対して垂直方向にカットした試験片を作成し、カットした面を研磨機により研磨した。研磨した面をマイクロスコープで400倍の倍率で複数箇所観察し、画像処理により繊維径を測定した。測定した単繊維の本数は繊維束中の単繊維の総数の3%以上10%以下とした。
これらの測定値から平均繊維径及び繊維径の変動係数を求めた。
変動係数=標準偏差/平均値
また、上記測定により得られた結果から平均繊維径の85%未満の繊維径を有する単繊維の本数の比率を求めた。
【0060】
[炭素繊維束の樹脂含浸ストランド強度]
サイジング剤付着炭素繊維束の樹脂含浸ストランド強度は、JIS・R・7608に規定された方法により測定した。
【0061】
[炭素繊維の結節強度]
結節強度は、JIS・L・1015に規定された方法より測定した。
【0062】
[開繊幅]
ボビンに巻かれた炭素繊維束を1Nの張力をかけて10m/minの速度で繰り出し、フリーローラー上を通過した後にドラムに巻き付けた。ドラムに巻かれた際の糸幅(mm)を異なる場所で90箇所測定し、糸幅の平均値を算出した。この糸幅の平均値と炭素繊維の繊度とから以下の式で開繊幅を計算した。
開繊幅 = 糸幅の平均値(mm) / 繊度(Tex)
【0063】
[擦過性評価]
直径50mmのSUS304製のガイドを固定し、1Nの張力でガイド表面にボビンに巻かれた炭素繊維束を10m/minの速度で繰り出し、ガイド上を30分走行させた後、ガイド表面に付着した炭素繊維毛羽の質量を測定した。毛羽質量をa(μg)とし、走行させた炭素繊維束の質量をb(g)とし、c=a/bの値により以下の基準で判定した。
〇:c ≦0.1、
△:0.1< c <0.5、
×:c ≧ 0.5
【0064】
[圧力容器破裂圧の評価方法]
長さ504mm、外径160mm、肉厚2mmのボンベ形状アルミニウムライナーの外表面に、炭素繊維束を以下の樹脂組成から成る樹脂組成物に含浸させながら、バックテンション4kg/束、ワインディング速度0.5m/secの速度でフープ層を1.6cmピッチで1層巻き付けた後、ヘリカル層をライナー軸に対して14度の角度として1.6cmピッチで1層積層した。その後、120℃の硬化炉で11時間硬化させて、破壊強度評価用圧力容器を得た。
樹脂組成:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 ・・・ 100質量部
4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物・・・ 80質量部

ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、油化シェルエポキシ株式会社製のEPON828(商品名)を使用した。4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物としては、LINDAU CHEMICAL INC.製のLindride52(商品名)を使用した。
この破壊強度評価用圧力容器を、バースト試験装置を用いて45MPa/secで水圧をかけて、破壊圧(d)を測定した。この測定は、各実施例及び比較例毎に3回実施し、それぞれ平均値を求め、以下の基準で判定した。
〇:d > 150MPa、
△:150MPa ≧d >130MPa、
×:d ≦ 130MPa
【0065】
[実施例1]
アクリロニトリル95質量%/アクリル酸メチル4質量%/イタコン酸1質量%よりなる共重合体紡糸原液を、孔数12000の紡糸口金を3つ用いて常法によりドラフト率24%にて湿式紡糸し、水洗・オイリング・乾燥後、トータル延伸倍率が14倍になるようにスチーム延伸を行い、単糸数36000の前駆体繊維束を得た。得られた前駆体繊維束を加熱空気中で延伸しながら、240~250℃の温度範囲内で耐炎化処理を行い、耐炎繊維束を得た。この耐炎繊維束を構成する単繊維の平均繊維径は10.42μmであり、繊維径の変動係数は5.80%であり、平均繊維径の85%、即ち8.857μm未満の単繊維の本数は1.14%であった。この耐炎繊維束を窒素雰囲気中、300~1200℃の温度範囲内で3分間炭素化処理を行った後、10%硫酸アンモニウム水液中で20C/gの電気量で電解酸化による表面処理、サイジング剤を付与することにより炭素繊維束を得た。サイジング剤としては、40質量%のエポキシ樹脂、50質量%のポリエステル樹脂及び10質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの混合物を水に2質量%分散させたものを用いた。サイジング剤の付着量は0.8質量%であった。この炭素繊維束を構成する単繊維の平均繊維径は5.84μmであり、繊維径の変動係数は5.09%であり、平均繊維径の85%、即ち4.964μm未満の単繊維の本数は1.37%、樹脂含浸ストランド強度は5990MPaであった。この炭素繊維束について、耐擦過性(a/b)は0.05であり、開繊幅は0.0225mm/Texであった。また、この炭素繊維を用いて作製した圧力容器の評価での破壊圧は、155MPaであった。
【0066】
[実施例2~4、比較例1~3]
実施例2では、ドラフト率を30%に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例3では、孔数18000の紡糸口金を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例4では、孔数36000の紡糸口金を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
比較例1では、ドラフト率を40%とした以外は、実施例4と同様に実施した。
比較例2では、ドラフト率を30%とした以外は、実施例4と同様に実施した。
比較例3では、ドラフト率を12%とした以外は、実施例4と同様に実施した。
比較例4では、サイジング剤の付着量を1.6質量%とした以外は、実施例4と同様に実施した。
これらの結果は表1に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
比較例1及び2は、紡糸口金の孔数が大きいにもかかわらず、ドラフト率が高かった。そのため、比較例1及び2では、耐炎繊維束における平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の比率が3.0%を超えた。また、比較例3では、紡糸口金の孔数が大きいにもかかわらず、ドラフト率が低かった。そのため、最終的に得られる炭素繊維の引張強度が低くなった。比較例4では開繊幅が0.0180mm/Texを下回ったため、圧力容器の破裂圧が低くなった。即ち、十分な破裂圧を発現させるためには、炭素繊維の巻き付け時のピッチを狭くする必要があり、その結果、圧力容器の質量が増大する。
比較例1及び3では、得られる炭素繊維の強度が低く、その結果、圧力容器の破裂圧は低くなった。一方、比較例2では、得られる炭素繊維の強度は高かった。しかしながら、炭素繊維束における平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の比率が3.0%を超えたため、高強度の炭素繊維が得られているにもかかわらず、耐擦過性が低く、圧力容器の実破壊圧は低くなった。即ち、高強度の炭素繊維であるために高い理論破壊圧となるが、フィラメントワインディング成形の際に、繊維径の小さい単繊維の切断が生じた結果、圧力容器の実破壊圧は低くなった。比較例4では、得られる炭素繊維の強度は高かった。しかしながら、開繊幅が0.0180mm/Texを下回ったため、高強度の炭素繊維が得られ、且つ耐擦過性が高いにもかかわらず、圧力容器への繊維束巻き付け時に炭素繊維間に隙間が生じたため、圧力容器の実破壊圧は低くなった。
これに対して、実施例1~4は、紡糸口金の孔数とドラフト率が適切な組み合わせであり、耐炎繊維束及び炭素繊維における平均繊維径の85%未満の繊維径である単繊維の比率が何れも3.0%を大きく下回った。そのため、炭素繊維束の耐擦過性が高く、フィラメントワインディング成形法によって作製した圧力容器は、破裂圧が高くなった。