(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020170
(43)【公開日】2025-02-12
(54)【発明の名称】単胃動物の腸内において微生物の集団を成長させるための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A23K 10/18 20160101AFI20250204BHJP
A23K 20/195 20160101ALI20250204BHJP
A23K 20/20 20160101ALI20250204BHJP
A23K 50/30 20160101ALI20250204BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20250204BHJP
C12Q 1/689 20180101ALN20250204BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20250204BHJP
【FI】
A23K10/18 ZNA
A23K20/195
A23K20/20
A23K50/30
A23K10/18
C12N1/16 G
C12Q1/689 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024182551
(22)【出願日】2024-10-18
(62)【分割の表示】P 2021573849の分割
【原出願日】2019-11-29
(31)【優先権主張番号】19305767.6
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515301144
【氏名又は名称】ダンスター フェルメント アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】アッパー,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】カステックス,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】アシャール,キャロライン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】単胃動物の腸内において微生物の集団を成長させるための組成物、および単胃動物の腸内において微生物の集団を成長させるための方法、さらに単胃動物の平均1日増体量を増大させるための方法を提供する。
【解決手段】単胃動物の平均1日増体量を増大させるのに有効な量のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と好適な担体とを含む組成物を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単胃動物の平均1日増体量を増大させるのに有効な量のサッカロミセス・セレビシエ(
Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と好適な担体
とを含む、組成物。
【請求項2】
単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持するまたは成長
させるのに有効な量のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少
なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と好適な担体とを含む、組成物。
【請求項3】
前記微生物の集団が、繊維消化、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換または両方に関与す
る、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
繊維消化に関与する前記微生物が、フィブロバクター門(Fibrobacteres)、放線菌門
(Actinobacteria)または両方の微生物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
繊維消化に関与する前記微生物が、フィブロバクター門(Fibrobacteres)の属、ビフ
ィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)または両方の微生物である、請求項4に記載
の組成物。
【請求項6】
繊維消化に関与する前記微生物が、フィブロバクター・インテスティナリス(Fibrobac
ter intestinalis)株である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換に関与する前記微生物が、放線菌門(Actinobacteria
)の微生物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換に関与する前記微生物が、コリオバクテリウム科(Co
riobacteriaceae)の微生物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記微生物の集団が、単胃動物の平均1日増体量の増大を可能にする、請求項2から8
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株がプロバイオティク
ス株である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株が、サッカロミセス
・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)株である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株が、CNCMにアク
セッション番号I-1079で寄託されているサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウデ
ィ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)株である、請求項1から11のいずれ
か一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記好適な担体が飼料である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の前記少なくとも1種の
生物学的に純粋な培養物が、前記組成物1キログラム当たり少なくとも1×109CFU
の量である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種の追加の微生物株をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記
載の組成物。
【請求項16】
ゼラチンカプセル剤、プレス錠、ゲルキャップ剤、動物用飼料または液体飲料の形態で
ある、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記単胃動物がブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギもしくは家禽またはそれらの子孫であ
る、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を含む、飼料または食品添加物。
【請求項19】
単胃動物の平均1日増体量を増大させるための、請求項1および9から17のいずれか
一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
前記組成物が給餌された単胃動物の前記平均1日増体量が、前記組成物が給餌されなか
った単胃動物の前記平均1日増体量と比較した場合、少なくとも1、2、3、4、5、1
0、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75
、80、85、90、95または100%増大される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において前記微生物の集団を維持するまたは
成長させるための、請求項2から17のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項22】
前記組成物が給餌された単胃動物の腸内の前記微生物の集団が、前記組成物が給餌され
なかった単胃動物の前記微生物の集団と比較した場合、少なくとも10、15、20、2
5、30、35、40、45、50、55、60、70、80、85、90、100、1
05、110、115、120、125、130、135、140、145、145、1
50、155、160、165、170、175、180、185、190、200、2
05、210、215、220、225、230、235、240、245、250、2
55、260、265、270、275、280、285、290、295または300
%増大される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記微生物の集団が、繊維消化、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換または両方に関与す
る、請求項21または23に記載の使用。
【請求項24】
単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持するまたは成長
させる方法であって、請求項2から17のいずれか一項に記載の組成物の有効量を前記単
胃動物に給餌するステップを含む、方法。
【請求項25】
単胃動物の腸内の前記微生物の集団の成長が、前記組成物が給餌されなかった単胃動物
の前記微生物の集団と比較した場合、少なくとも10、15、20、25、30、35、
40、45、50、55、60、70、80、85、90、100、105、110、1
15、120、125、130、135、140、145、145、150、155、1
60、165、170、175、180、185、190、200、205、210、2
15、220、225、230、235、240、245、250、255、260、2
65、270、275、280、285、290、295または300%増大される、請
求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物を前記動物の基礎食餌と混合するステップを含む、請求項24または25に
記載の方法。
【請求項27】
前記組成物の有効量を前記単胃動物に給餌するステップが、少なくとも10、11、1
2、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25
、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、
39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、5
2、53、54、55、56、57、58、59または60日間の期間にわたって毎日行
われる、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記単胃動物に給餌される前記組成物が、少なくとも1種の抗生物質、酸化亜鉛または
それらの混合物をさらに含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗生物質が、アモキシシリン、ドキシサイクリン、リンコマイシン、コリスチン、
チアムリン、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記単胃動物が、妊娠中、授乳中、離乳中または成長中である、請求項24から29の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が給餌された単胃動物からの子孫の腸内の前記微生物の集団の成長が、前記
組成物が給餌されなかった単胃動物からの子孫の腸内の前記微生物の集団と比較した場合
、増大される、請求項24から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が給餌された単胃動物からの子孫の腸内の前記微生物の集団の成長が、前記
組成物が給餌されなかった単胃動物からの子孫の腸内の前記微生物の集団と比較した場合
、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50
、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%増大される、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
単胃動物の平均1日増体量を増大させるための方法であって、請求項1および9から1
7のいずれか一項に記載の組成物の有効量を単胃動物に給餌するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記組成物の有効量が給餌された単胃動物の前記平均1日増体量が、前記組成物の有効
量が給餌されなかった単胃動物の前記平均1日増体量と比較して、少なくとも21日以内
に増加される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が給餌された単胃動物の前記平均1日増体量が、前記組成物が給餌されなか
った単胃動物の前記平均1日増体量と比較した場合、少なくとも1、2、3、4、5、1
0、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75
、80、85、90、95または100%増大される、請求項33または34に記載の方
法。
【請求項36】
前記単胃動物がブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、家禽またはそれらの子孫である、請
求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ブタが、雌ブタ、成長中および肥育中のブタならびに仔ブタからなる群から選択さ
れる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記単胃動物が、妊娠中、授乳中、離乳中または成長中である、請求項33から36の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物がエンテロコッカス属(Enterococcus)株を含まない、請求項1から14お
よび16から38のいずれか一項に記載の組成物、方法または使用。
【請求項40】
前記組成物が細菌の株および/もしくは追加の酵母株を含まない、または追加の微生物
株を含まない、請求項39に記載の組成物、方法または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単胃動物の腸内において微生物の集団を成長させるための組成物、および単
胃動物の腸内において微生物の集団を成長させるための方法に関する。本発明はまた、単
胃動物の平均1日増体量を増大させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健常で疾患のない動物が、病気の動物または免疫負荷された動物よりも、速く成長する
または飼料を効率的に体組織に変換できることは公知である。動物における、より速い成
長または望ましい体組織への飼料のより効率的な変換は、経済的にも生態学的にも、食品
のために飼育される動物においては特に、重要であることは明白である。この理由および
他の理由から、動物が疾患と接するのを予防することが望ましい。
【0003】
動物を健康に保つための1つのアプローチは、動物に抗生物質を与えることである。し
かし、そのアプローチは、食品に抗生物質残留物が存在し得るため、食品のために飼育さ
れる動物には望ましくない。さらに、抗生物質の使用は、抗生物質耐性細菌を選択するリ
スクを増加させ、これは、ヒトの健康にとって非常に重要な懸念事項である。
【0004】
別のアプローチにおいて、反芻動物への生酵母の補給は、繊維消化を増大させ、その成
長を改善することが示されている。多数のインビボ実験により、反芻動物で、繊維消化の
増大における生酵母の効果が証明され(Wohlt et al., 1988; Guedes et al., 2008; Mar
den et al., 2008)、これを達成する主なメカニズムの1つが、フィブロバクター・スク
シノゲネス(Fibrobacter succinogenes)を含む繊維分解性細菌群の成長および活性を増
加させることによるものであることが結論付けられている(Chaucheyras-Durand and Fon
ty, 2002; Mosoniet al., 2007; Wallace and Newbold, 2007)。フィブロバクター門(F
ibrobacteres)は、反芻動物において最初に記載された細菌門である。この門については
、フィブロバクター属(Fibrobacter)のみが記載されており、この属は現在、正式に培
養された記載されている種、フィブロバクター・インテスティナリス(Fibrobacter inte
stinalis)およびフィブロバクター・スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)のみ
を含む。フィブロバクター門(Fibrobacteres)は、独特の一連のヘミセルロース分解酵
素を持つことが公知であり、その単一エネルギー源としてのセルロースの効率的で多産な
分解菌である(Suen et al., 2011)。
【0005】
しかし、単胃動物、より特定するとブタにおけるフィブロバクター門(Fibrobacteres
)に関する知識は、あまり進歩していない。選択培地を使用する培養依存的なアプローチ
および16SrDNAを標的とする培養非依存的技術により、フィブロバクター属(Fibr
obacter)を含む、ブタの腸集団に生息する潜在的なコア集団が確認された。フィブロバ
クター・インテスティナリス(Fibrobacter intestinalis)およびフィブロバクター・ス
クシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)は共に、ブタの腸内で確認されている。単胃
動物におけるプロバイオティクスとフィブロバクター門(Fibrobacteres)との相互作用
についてはほとんど知られていない。唯一の公表されている結果は、離乳後の仔ブタに離
乳後28日間プロバイオティクス細菌を補給すると、フィブロバクター門(Fibrobactere
s)の集団が減少するという研究である(Li et al., 2016)。反芻動物において公知であ
って観察されていることとは逆に、単胃動物における繊維分解性群集、より正確にはフィ
ブロバクター門(Fibrobacteres)の活性および成長に対する酵母の効果は実証されてい
ない。
【0006】
別の研究の少ない門は、放線菌門(Actinobacteria)であり、この門は、相対存在量の
点からはマイナーであると考えられるが、機能の重要性がますます主張されるようになっ
ている。重要な繊維分解性の科であるビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)は
、放線菌門(Actinobacteria)の一部である。同様に、コリオバクテリウム科(Coriobac
teriaceae)も、放線菌門(Actinobacteria)に属する。この科の一部である数種の細菌
は、動物の飼料効率および成長能力を促進する興味深い標的である、胆汁酸の代謝に関与
している。
【0007】
繊維分解は、数ある利点の中でも結腸細胞のエネルギー源である短鎖脂肪酸(SCFA
)を生成するので、例えばブタのような単胃動物にとって重要である。
【0008】
同様に、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換による成長能力の改善(Ipharaguerre et al
., 2018)もまた、重要性が増しつつある。したがって、腸内微生物叢の調節による一次
胆汁酸と二次胆汁酸とのバランスの促進は、単胃動物の飼料利用および成長能力を最適化
するために興味深い。
【0009】
フィブロバクター門(Fibrobacteres)および放線菌門(Actinobacteria)は、相対存
在量の点からはマイナー細菌門であるが、それらが繊維分解効果を発揮しかつ放線菌門(
Actinobacteria)が胆汁酸を変換できる細菌(例えば、コリンセラ属(Collinsella)の
種およびオルセネラ属(Olsenella)の種)を含むという事実により、実際に重要な機能
的役割を果たすことができる。腸内において、コリオバクテリウム科(Coriobacteriacea
e)は、重要な機能、例えば、胆汁塩およびステロイドの変換ならびに食餌性ポリフェノ
ールの活性化を行う(Clavel et al., 2014)。コリオバクテリウム科(Coriobacteriace
ae)は、コリオバクテリウム目(Coriobacteriales)(放線菌門(Actinobacteria))内
の科である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、単胃動物の繊維消化を増大させるために、単胃動物および/またはその同
腹仔の腸内における繊維消化、胆汁酸の変換または両方に関与する微生物の集団を維持す
るまたは成長させることが必要である。また、単胃動物の平均1日増体量を増大させる必
要性も高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、単胃動物の平均1日増体量を増大させるのに有効な量のサッカロミセス・セ
レビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と
好適な担体とを含む組成物を提供する。
【0012】
本開示はまた、単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持
するまたは成長させるのに有効な量のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cere
visiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と好適な担体とを含む組成物を提
供する。本開示の一態様において、微生物の集団は、繊維消化、一次胆汁酸の二次胆汁酸
への変換または両方に関与する。
【0013】
本発明はさらに、本開示の実施形態において定義される組成物を含む飼料または食品添
加物を提供する。
【0014】
本開示はまた、単胃動物の平均1日増体量を増大させるための、本開示の実施形態にお
いて定義される組成物の使用を提供する。
【0015】
本開示はまた、単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持
するまたは成長させる方法であって、本開示の実施形態において定義される組成物の有効
量を単胃動物に給餌するステップを含む、方法を提供する。
【0016】
本開示はまた、単胃動物の平均1日増体量を増大させるための方法であって、本開示の
実施形態において定義される組成物の有効量を単胃動物に給餌するステップを含む、方法
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】全試験期間において、抗生物質のみ(対照(Ctl))、抗生物質と組み合わされたサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079(T1)、および抗生物質を含まないサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079(T2)が給餌された仔ブタにおいて得られた、平均1日増体量(ADG)および飼料変換比を示すグラフである。
【
図2】抗生物質のみ(対照(Ctl+AB))、抗生物質と組み合わされたサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079(LSB+AB)、および抗生物質を含まないサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079(LSB)が給餌された仔ブタにおける、異なる時点(10日目、34日目および50日目(D10、D34およびD50))におけるおよび平均での、フィブロバクター門(Fibrobacteres)の平均存在量および検出頻度を示すグラフである。第1のプロット(左側)は、時点(10日目、34日目および50日目)毎の結果を示す。第2のプロット(中間)は、同じ結果を、全実験期間における処置毎の平均で表したものを示し、最後の図(右側)は、処理毎の平均検出頻度を示す。
【
図3】抗生物質のみ(Ctl+AB)、サッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079+抗生物質(LSB+AB)、およびサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079のみ(LSB)が給餌された仔ブタにおける、放線菌門(Actinobacteria)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)ならびにコリンセラ属(Collinsella)種およびオルセネラ属(Olsenella)種の存在量の中央値を示すグラフである。
【
図4】対照食餌(Ctl)またはサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079(LSB)が給餌された雌ブタにおける、フィブロバクター門(Fibrobacteres)の平均存在量を、平均で(左側パネル)および出産歴毎に(右側パネル)示すグラフである。
【
図5】左側:対照食餌(Ctl)またはサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079(LSB)のいずれかが給餌された母親からの仔ブタにおけるフィブロバクター・インテスティナリス(Fibrobacter intestinalis)の検出頻度、右側:雌ブタ(CtlまたはLSB)および仔ブタ(AB:抗生物質を含む陽性対照;Ctl:抗生物質を含まない陰性対照およびSB:サッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079食餌)が受けた処置の、時点(0日目、6日目および20日目)毎のF.インテスティナリス(F. intestinalis)の、検出頻度に対する効果を示すグラフである。仔ブタに抗生物質を与えると、雌ブタにサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079が給餌された場合を除いて、仔ブタ糞便中にF.インテスティナリス(F. intestinalis)は検出されない。仔ブタが陰性対照(Ctl)を受けた場合、雌ブタへのサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079の補給は、仔ブタ糞便中におけるF.インテスティナリス(F. intestinalis)の検出頻度の増加をもたらす。
【
図6】分娩(farrowing)前の雌ブタにおけるフィブロバクター門(Fibrobacteres)の相対存在量(%)と仔ブタの平均離乳時体重(kg)との正の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
飼料からのほとんどの栄養素は、化学的に消化されて、小腸によって吸収される。これ
は一般に、タンパク質、脂質および可消化性炭水化物にも当てはまる。しかし、非消化性
炭水化物の大部分は後腸に到達し、そこで局所の微生物群集である微生物叢によって部分
的に消費されることになる。この微生物発酵の産物として短鎖脂肪酸(SCFA)が形成
される。これは、局所的に吸収されて、宿主のエネルギー源として使用されることが可能
である。飼料の繊維画分は非常に不均一であり、以下を含み得る:
例えば、フルクタン、ガムおよび/またはペクチンなどの、容易に発酵される可溶性成分
;
セルロースおよび/またはヘミセルロースなどの、部分的に分解可能な構造成分;
キチンおよび/またはリグニンのような、実際には不消化の細胞壁保護物質。
【0019】
ブタの食餌に繊維を含めると、中性デタージェント繊維(NDF)の含有量と関連して
消化輸送の速度が刺激され、アニマルウェルフェアに役立ち、便秘の発生率、常動行動お
よびストレスが低減される(Gerrits and Verstegen, 2006)。
【0020】
発酵性繊維の割合は、可溶性繊維の含有量と正の関連を示し、リグニンのレベルと負の
関連を示す。これは、腸内環境(pH、アンモニア濃度、SCFAの産生)の変化に関連
する。可溶性の低リグニン化繊維(例えば、甜菜パルプ)および不溶性のリグニン化繊維
(例えば、オーツ麦ふすま)の両方のタイプの繊維は、異なるメカニズムによってブタの
腸の健康に影響を与える:a)後腸発酵によるSCFAの産生、ならびにb)腸の運動性
および機能性の改善(Nutritional requirements for swine, FEDNA, 2013)。
【0021】
雌ブタは繊維を消化するようによく適応している。雌ブタは、仔ブタまたは肥育ブタよ
りも容積の大きい大腸を備えている。消化管内容物は、総消化時間の70~85%の間、
大腸にとどまり、後腸の微生物叢と接触させられる。この特殊性は、例えば、幼若ブタよ
りもはるかに高いセルロース分解活性を雌ブタに与える。実際、雌ウシのルーメンに局在
する、繊維を消化できる細菌の多くは、雌ブタの結腸でも確認できる。セルロース分解性
細菌は、増殖し且つ代謝的に活性となるためには嫌気性環境を必要とすることに留意する
ことが重要である。しかし、腸粘膜を刺激する巨大な血管新生が酸素をもたらし、微生物
プロファイルに悪影響を及ぼす可能性があるため、これは必ずしも当てはまるとは限らな
い。雌ブタの微生物叢が仔ブタの早期コロニー形成に強い影響を与えることがはっきりと
実証されているため、雌ブタにおける繊維分解性細菌集団の増加は、仔ブタの場合にも興
味深い可能性がある。
【0022】
胆汁酸が、成長促進剤としての抗生物質の使用に代わる効果的なものを開発するための
有望な標的として浮上している。実際、ブタにおいて成長の刺激または離乳後の腸炎を予
防に一般的に使用される用量での抗生物質および酸化亜鉛の使用は、腸における胆汁酸(
BA)の微生物産生の促進に集中することが実証されている。これは、BAの割合を組織
特異的に変更し、それによって腸、肝臓および白色脂肪組織におけるBAシグナル伝達が
増幅される。BA調節経路の活性化は、細菌感染ならびに体液および電解質の病的分泌に
対する腸の保護を最終的に強化し、結腸の炎症を減弱し、肝臓におけるタンパク質および
脂質代謝を変化させる。これらの変化は、成長のための栄養素を節約し、処置された単胃
動物の代謝効率を改善する可能性があると考えられる。したがって、これら胆汁酸を産生
できる細菌集団の促進は、動物の成長を促進するために興味深い。
【0023】
本開示は、単胃動物へのサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株
またはそれを含む組成物の給餌が、下部腸内発酵に影響を及ぼすことによって単胃動物の
繊維消化性を増大させることによって、およびまた、胆汁酸代謝に関連する細菌集団を刺
激することによって、単胃動物の飼料効率におよび単胃動物の平均1日増体量に影響を与
えるという予想外の発見から得られる。
【0024】
特定の理論に縛られるものではないが、単胃動物の腸内におけるサッカロミセス・セレ
ビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の作用機序の一部は、盲腸および結腸の両方におい
て酵母によって行われる酸素の急速な消費と関係があると考えられる。これにより、セル
ロース分解性細菌および胆汁酸代謝に関与する細菌を含む嫌気性細菌が増殖できる、より
良好な嫌気性条件が作り出される。結果として、SCFAの形態でのより多くのエネルギ
ーが同じ食餌からより短時間で放出される一方で、胆汁酸代謝の変化がより良好な成長効
率をもたらす。
【0025】
本開示は、単胃動物の平均1日増体量を増大させるのに有効な量のサッカロミセス・セ
レビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と
好適な担体とを含む組成物を提供する。
【0026】
本開示は、単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持する
または成長させるのに有効な量のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisi
ae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と好適な担体とを含む組成物をさらに
提供する。一実施形態において、微生物の集団は繊維消化、一次胆汁酸の二次胆汁酸への
変換または両方に関与する。
【0027】
一実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の
少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物は、プロバイオティクス株である。さらなる一
実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少な
くとも1種の生物学的に純粋な培養物は、サッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(
Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)株である。なおさらなる一実施形態におい
て、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生
物学的に純粋な培養物は、CNCM(すなわち、COLLECTION NATIONA
LE DE CULTURES DE MICROORGANISMES、Instit
ut Pasteur、25-28 rue du Docteur Roux、757
24 Paris Cedex 15、フランス)にアクセッション番号I-1079で
寄託されているサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae
var. boulardii)株である。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「有効な量の(で)」という表現は、単胃動物および/ま
たはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持するまたは成長させるのに少なくとも
十分である、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも
1種の生物学的に純粋な培養物の量を指すと理解するものとする。この表現はまた、単胃
動物の平均1日増体量を増大させるのに少なくとも十分である、サッカロミセス・セレビ
シエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物の量も
指す。
【0029】
一実施形態において、単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団
を維持するまたは成長させるのに少なくとも十分である、または単胃動物からの子孫の平
均1日増体量を増大させるのに少なくとも十分である、サッカロミセス・セレビシエ(Sa
ccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物の量は、組成物
1キログラム当たり少なくとも1×107CFU、組成物1キログラム当たり少なくとも
1×108または組成物1キログラム当たり少なくとも1×109CFUの量である。さ
らなる一実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)
株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物は、組成物1キログラム当たり1×107
CFU~1×1012CFUの範囲の量である。なおさらなる一実施形態において、サッ
カロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に
純粋な培養物は、組成物1キログラム当たり1×108CFU~1×1012CFUの範
囲の量である。いっそうさらなる一実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Sa
ccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物は、組成物1キ
ログラム当たり1×109CFU~1×1012CFUの範囲の量である。
【0030】
一実施形態において、好適な担体は、飼料または食品、より具体的には単胃動物に好適
な、任意の経口摂取可能な動物用飼料または食品である。当業者ならば、飼料または食品
は単胃動物によって異なり得ることがわかるであろう。飼料および食品としては、ブタお
よび家禽用のスープ、ペレットもしくはミールベースの食餌、またはイヌおよびネコ用の
キブル、ウェットタイプの食品およびおやつが挙げられるが、これらに限定されるもので
はない。さらなる一実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces ce
revisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物は、単胃動物の基礎食餌と混合
することができる。代替の一実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharo
myces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物は、飼料または食品上
にトップドレッシングする(top-dress)ことができる。さらなる代替の一実施形態にお
いて、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の
生物学的に純粋な培養物は、単胃動物の基礎食餌上にトップドレッシングすることができ
る。
【0031】
一実施形態において、単胃動物は、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギもしくは家禽であ
る。さらなる一実施形態において、ブタは、雌ブタ、成長中および肥育中のブタならびに
仔ブタを含む。なおさらなる一実施形態において、家禽はメンドリおよびヒヨコを含む。
なおいっそうの一実施形態において、単胃動物は、その子孫である。
【0032】
代替的な一実施形態において、前述の組成物は、少なくとも1種の追加の微生物株を
らに含むことができる。追加の微生物株としては、バチルス・スブチリス(Bacillus sub
tilis)、B.アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、B.リケフォルミス
(B. licheniformis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ペデ
ィオコッカス・アシディラクチシ(Pediococcus acidilacti)、ラクトコッカス・ラクテ
ィス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidop
hilus)、L.カゼイ(L. casei)、L.プランタルム(L. plantarum)、L.ラムノサ
ス(L. rhamnosus)またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものでは
ない。
【0033】
別の代替的実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisi
ae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物を含む組成物は、エンテロコッカス属
(Enterococcus)株を含まない。組成物は細菌株を含まなくてもよく、および/または追
加の酵母株を含まなくてもよい。組成物は、追加の微生物株を含まなくてもよい。組成物
は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の1種または複数の生
物学的に純粋な培養物と、好適な担体とからなってもよく、またはそれらから本質的にな
ってもよい。
【0034】
本明細書による組成物は、単胃動物に出される任意の形態であることができる。当業者
ならば、各単胃動物種にどの形態が好ましいかをわかるであろう。利用可能な種々の形態
を例示するために、本開示による組成物は、ゼラチンカプセル剤、プレス錠、ゲルキャッ
プ剤、動物用飼料またはサプリメント、動物用食品または液体飲料の形態であることがで
きる。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「繊維消化に関与する微生物の集団」という表現は、セル
ロース分解酵素およびヘミセルロース分解酵素を合成する能力のおかけで複雑な植物多糖
類を処理することができる微生物(しばしば、繊維分解性細菌と称される)を一般に指す
と理解するものとする。多糖類は、植物細胞の細胞壁に、主にセルロースおよびヘミセル
ロースから構成されるコンパクトな繊維の形態で存在する。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換に関与する微生物の集
団」という表現は、一次胆汁酸を代謝できる微生物を一般に指すと理解するものとする。
胆汁酸は、哺乳類の肝臓によってコレステロールおよび他の酸性ステロイドから産生され
る。
【0037】
一実施形態において、繊維消化に関与する微生物の集団は、フィブロバクター門(Fibr
obacteres)、放線菌門(Actinobacteria)または両方の微生物の集団である。さらなる
一実施形態において、繊維消化に関与する微生物の集団は、フィブロバクター属(Fibrob
acter)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)または両方の微生物の集団で
ある。いっそうさらなる一実施形態において、繊維消化に関与する微生物の集団は、フィ
ブロバクター・インテスティナリス(Fibrobacter intestinalis)、フィブロバクター・
スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)または両方である。
【0038】
一実施形態において、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換に関与する微生物は、放線菌門
(Actinobacteria)の微生物である。さらなる一実施形態において、一次胆汁酸の二次胆
汁酸への変換に関与する微生物は、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)の微生
物である。なおさらなる一実施形態において、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換に関与す
る微生物は、コリンセラ属(Collinsella)の種およびオルセネラ属(Olsenella)の種ま
たは両方の微生物である。
【0039】
いずれの場合にも、微生物の集団は、単胃動物の平均1日増体量を増大させることもで
きる。
【0040】
本開示は、これまでの実施形態の全てに定義されている組成物を含む飼料または食品添
加物をさらに提供する。
【0041】
本開示は、単胃動物の繊維消化性を増大させるための、前記の実施形態の全てに記載さ
れた組成物の使用をさらに提供する。使用の一実施形態において、前記の種々の実施形態
において定義された組成物が給餌された単胃動物の繊維消化性は、前記組成物が給餌され
なかった単胃動物の繊維消化性と比較した場合、少なくとも1、2、3、4、5、10、
15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、8
0、85、90、95または100%増大される。
【0042】
別の実施形態において、前記実施形態に記載された組成物は、単胃動物および/または
その同腹仔の腸内において微生物の集団を維持するまたは成長させるのに使用される。使
用のさらなる一実施形態において、前記組成物が給餌された単胃動物の腸内の微生物の集
団は、前記組成物が給餌されなかった単胃動物の微生物の集団と比較した場合、少なくと
も10、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、85、90、
100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、
145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、
200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、
250、255、260、265、270、275、280、285、290、295ま
たは300%増大される。使用のさらなる一実施形態において、微生物の集団は、繊維消
化、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換、または両方に関与する。
【0043】
なおさらなる一実施形態において、前記実施形態の全てに記載された組成物は、単胃動
物の平均1日増体量を増大させるのに使用される。さらなる一実施形態において、前記組
成物が給餌された単胃動物の平均1日増体量は、前記組成物が給餌されなかった単胃動物
の平均1日増体量と比較した場合、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、
25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、9
0、95または100%増大される。
【0044】
本開示は、単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持する
または成長させる方法であって、前記実施形態において定義された組成物の有効量を単胃
動物に給餌するステップを含む、方法をさらに提供する。一実施形態において、微生物の
集団は、繊維消化、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換または両方を可能にする、またはそ
れに関与する。方法の別の実施形態において、単胃動物の腸内の微生物の集団の成長は、
前記組成物が給餌されなかった単胃動物の微生物の集団と比較した場合、少なくとも10
、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、85、
90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、1
45、145、150、155、160、165、170、175、180、185、1
90、200、205、210、215、220、225、230、235、240、2
45、250、255、260、265、270、275、280、285、290、2
95または300%増大される。方法の別の実施形態において、組成物は、動物の基礎食
餌と混合することができる。
【0045】
方法のさらなる一実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces ce
revisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物の量は、組成物1キログラム当
たり少なくとも1×107CFU、組成物1キログラム当たり少なくとも1×108、ま
たは組成物1キログラム当たり少なくとも1×109CFUの量である。さらなる一実施
形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくと
も1種の生物学的に純粋な培養物は、組成物1キログラム当たり1×107CFU~1×
1012CFUの範囲の量である。なおさらなる一実施形態において、サッカロミセス・
セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物
は、組成物1キログラム当たり1×108CFU~1×1012CFUの範囲の量である
。いっそうさらなる一実施形態において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物は、組成物1キログラム当た
り1×109CFU~1×1012CFUの範囲の量である。
【0046】
方法の一実施形態において、組成物の有効量を単胃動物に給餌するステップは、毎日行
われる。方法のなおさらなる一実施形態において、組成物の有効量を前記単胃動物に給餌
するステップは、少なくとも10、12、13、14、15、16、17、18、19、
20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、3
3、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46
、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59ま
たは60日間の期間にわたって毎日行われる。
【0047】
前述の方法の一実施形態において、単胃動物は、妊娠中、授乳中、離乳中または成長中
である。
【0048】
方法の一実施形態において、単胃動物に組成物の有効量を給餌するステップは、分娩(
whelping)の少なくとも5日前に行う。本明細書による組成物の単胃動物への給餌はまた
、子孫の腸にも有益であることが判明した。さらなる一実施形態において、前記組成物が
給餌された単胃動物からの子孫の腸内の微生物の集団の成長は、前記組成物が給餌されな
かった単胃動物からの子孫の腸内の、繊維消化に関与する微生物の集団と比較した場合、
増大される。より具体的には、前記組成物が給餌された単胃動物からの子孫の腸内の、繊
維消化に関与する微生物の集団の成長は、前記組成物が給餌されなかった単胃動物からの
子孫における微生物の集団と比較した場合、少なくとも10、15、20、25、30、
35、40、45、50、55、60、70、80、85、90、100、105、11
0、115、120、125、130、135、140、145、145、150、15
5、160、165、170、175、180、185、190、200、205、21
0、215、220、225、230、235、240、245、250、255、26
0、265、270、275、280、285、290、295または300%増大され
る。
【0049】
前記実施形態に記載された方法の代替の実施形態において、単胃動物に組成物を給餌す
るステップは、少なくとも1種の抗生物質および/または酸化亜鉛と組み合わせて行うこ
とができる。抗生物質は、単胃動物を成長させるために農業で通常使用されるものである
。使用される抗生物質は、例えば、アモキシシリン、ドキシサイクリン、リンコマイシン
、コリスチン、チアムリン、またはそれらの任意の組み合わせであることができるが、こ
れらに限定されるものではない。他の好適な抗生物質も、前述の方法において本開示によ
る組成物と組み合わせて使用することができる。
【0050】
本開示は、単胃動物からの子孫の平均1日増体量を増大させるための方法であって、前
記実施形態の全てに記載された組成物の有効量を単胃動物に給餌するステップを含む、方
法をさらに提供する。この方法の一実施形態において、本明細書による組成物の有効量が
給餌された単胃動物からの子孫の平均1日増体量は、前記組成物の有効量が給餌されなか
った単胃動物からの子孫の平均1日増体量と比較して、少なくとも21日以内に増加され
る。この方法の別の実施形態において、前記組成物が給餌された単胃動物からの子孫の平
均1日増体量は、前記組成物が給餌されなかった単胃動物からの子孫の平均1日増体量と
比較した場合、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、
40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または10
0%増大される。
【0051】
前述の使用および方法のいずれにおいても、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomy
ces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物を含む組成物は、エンテ
ロコッカス属(Enterococcus)株を含まなくてもよい。組成物は細菌株を含まなくてもよ
く、および/または追加の酵母株を含まなくてもよい。組成物は、追加の微生物株を含ま
なくてもよい。前記方法および使用は、エンテロコッカス属(Enterococcus)株の投与を
含まなくてもよい。前記方法および使用は、追加の細菌株および/または追加の酵母株の
投与を含まなくてもよい。前記方法および使用は、追加の微生物株の投与を含まなくても
よい。
【0052】
前述の使用は、非治療的であってもよい。前述の方法は、非治療的であってもよい。本
明細書中には、単胃動物の平均1日増体量を増大させるための方法に使用するための、ま
たは単胃動物および/もしくはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持するもしく
は成長させるための方法に使用するための、前述の組成物も記載する。この方法は、治療
による動物体の処置のための方法であってもよい。
【0053】
前述の実施形態の全てにおいて、単胃動物は、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、家禽
またはその子孫である。ブタは、雌ブタ、成長中および肥育中のブタ、ならびに仔ブタを
含み得る。単胃動物は、妊娠中、授乳中、離乳中または成長中であることができる。
【実施例0054】
[実施例1]
サッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardi
i)CNCM I-1079が補給された離乳後の仔ブタ
材料および方法
離乳後の288匹の仔ブタについて実施した50日間の試験中に、糞便試料を収集した
。仔ブタは21日齢で離乳させ、3相の給餌プログラムに従った。基礎食餌に、最初の2
つの相(D0~D11およびD12~D33)においては抗生物質およびZnOを、第3
の相(D34~D50)においては抗生物質のみを補給した。仔ブタを3つの群:基礎食
餌、2×109CFU/kgのサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomy
ces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079が補給された基礎食餌、D1
1に投薬を行わずに2×109CFU/kgのサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウデ
ィ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079が補給された
食餌に割り当てた。D10、D34およびD50に処置群当たり24匹の仔ブタから、糞
便試料を収集した。畜産学的能力も測定した:体重(BW)を、試験の開始時および終了
時、ならびに食餌変更毎に個別に記録した。飼料摂取量(FI)を、食餌の変更毎、畜舎
毎に測定した。
【0055】
【0056】
微生物のDNA抽出および16S rRNA遺伝子シーケンシング
収集した糞便試料を、Qiagen製のDNA抽出キットを使用して処理した。微生物
DNAの抽出は、40~60mgの糞便からZR-96 Soil Microbe D
NA Kit(商標)(Zymo Research、Freiburg、ドイツ)を使
用して製造元の指示に従って行った。Retsch MM400 Mixer Mill
を使用して、30Hzで15分のビードビートステップを適用した。16S rRNA遺
伝子のV3およびV4超可変領域を、以下のプライマーを使用して増幅させた:
V3-V4領域
V3V4-343F 5’-CTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGAT
CTACGGRAGGCAGCAG-3’
V3V4-783R 5’-GGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGAT
CTTACCAGGGTATCTAATCCT-3’
【0057】
MiSeqシーケンサーでReagent Kit v3を使用して、製造元の指示(
Illumina Inc.、San Diego、CA)に従って、ハイスループット
シーケンシングを実行した。
【0058】
バイオインフォマティクス分析
バイオインフォマティクス分析は、GenoToulバイオインフォマティクス施設(
Toulouse、フランス)を使用して実行した。作成されたペアエンド250bp配
列を、Flashソフトウェアを使用してアセンブルした(最小オーバーラップ10bp
、最大ミスマッチ10%)。アセンブルした配列を、FROGSパイプラインを使用して
処理した(Escudie et al., 2018)。簡潔には、SWARMアルゴリズムを使用してOp
erational Taxonomic Unit(OTU)で配列をクラスター化し
た(Mahe et al., 2014)。次に、キメラ配列を、UCHIMEアルゴリズムを使用して
試料毎に検出し、全ての試料から取り除いた(Edgar et al., 2011)。各シーケンシング
データセットに希薄化ステップを適用して、シーケンシング深度の差異によるバイアスを
回避した。フィルタリングステップを適用して、全てのシングルトン(すなわち、1回の
みの読み取りで表されるOTU)を取り除いた。作成されたOTUカウントテーブルを、
累計スケーリングによって正規化した。OTUの分類学的アノテーションを、SILVA
SSUデータベースならびにBLAST+およびRDPアルゴリズムを使用して実行し
た。同一性アライメントおよびカバレッジアライメントが99%を超えるBLASTヒッ
トを、アノテーションのために保存した。それ以外の場合は、種は不明としてアノテート
し、RDP分類子の結果をより上位のランクに使用した。属ランクおよびそれより上位の
ランクにおけるアノテーションのために、ブートストラップ閾値をそれぞれ0.9および
0.8に設定した。門、科および属の相対存在量の表を作成した。
【0059】
統計分析
畜産学的能力。平均1日増体量(ADG)、飼料摂取量(FI)および飼料変換比(F
CR)を、畜舎毎での繰り返し測定のためにSAS(The SAS Stat. v.
9.3)のMIXED手順によって実行した。統計モデルは、処置と時間、処置と性別お
よび処置×時間×性別の間の相互作用も考慮して、処置、性別および時間の主効果を明ら
かにした。実験単位は畜舎とした。有意水準はA、BについてはP≦0.01に、a、b
についてはP≦0.05に固定し、0.05<P≦0.1をトレンドと考えた。
【0060】
微生物叢の分析。微生物叢の統計分析は、RソフトウェアおよびRStudioソフト
ウェアを使用して行った。Kruskal-Wallis順位和検定とそれに続く、平均
順位和の多重比較のためのペアワイズ検定(Conover検定、PMCMR Rパッケ
ージ)を使用して、組成データを分析した。差異分析は、全配列の0.005%超が相当
する分類群についてのみ実行した。Benjamini-Hochbergの手順を使用
して、生成されたP値を調整した。コンティンジェンシーデータを、Fischerの正
確確率検定を使用して分析した。
【0061】
結果
畜産学的能力。総合的には、平均1日増体量(ADG)に有意差(P<0.01)が認
められ、T1(酵母+抗生物質)が給餌された仔ブタは、Ctl(Ctl+抗生物質)お
よびT2(酵母のみ)が給餌された仔ブタよりも速く成長しているものであった(
図1)
。飼料変換比(FCR)において効果が認められ、T1が給餌された仔ブタは、Ctlが
給餌されたブタよりも飼料の体重増体量への変換が良好であった。飼料摂取量については
、有意差は認められず、全ての仔ブタは、処置がいずれであっても同じ量の飼料を摂食し
た。
【0062】
微生物叢の分析。フィブロバクター門(Fibrobacteres)の相対存在量は、処置がいず
れであっても、おそらくは結腸に到達する繊維量の増加により、時間と共に増加した(P
<0.001)。酵母の補給により、フィブロバクター門(Fibrobacteres)の平均存在
量(%として表す)およびフィブロバクター門(Fibrobacteres)検出頻度(%、P<0
.05;
図2)が増加した。これは、仔ブタにサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウデ
ィ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079を補給した場
合には、対照仔ブタに比べて、その結腸内のフィブロバクター門(Fibrobacteres)の存
在量が多いこと、およびこれらの仔ブタの結腸ではフィブロバクター門(Fibrobacteres
)の存在が高頻度に検出されたことを意味する。
【0063】
放線菌門(Actinobacteria)およびコリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)の相
対存在量も、サッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae v
ar. boulardii)CNCM I-1079が給餌された仔ブタからの糞便において、10
日目および50日目に増加していることが認められた(
図3)。コリオバクテリウム科(
Coriobacteriaceae)は、放線菌門(Actinobacteria)の中で、80%超を占める最も優
勢な科であった。コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)の中では、2つの属、オ
ルセネラ属(Olsenella)およびコリンセラ属(Collinsella)が、サッカロミセス・セレ
ビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1
079が給餌された仔ブタにおいてD10およびD50に増加した。
【0064】
[実施例2]
妊娠および授乳中にサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevi
siae var. boulardii)CNCM I-1079が補給された雌ブタ
材料および方法
実験計画
糞便試料は、雌ブタ(分娩の4週間前から離乳まで)および関連する離乳後の仔ブタに
対して行った試験中に収集した。雌ブタに、109CFU/kgのサッカロミセス・セレ
ビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1
079が補給された食餌または補給されていない(それぞれ、CtlまたはLSB食餌)
を給餌した。仔ブタは21日齢で離乳させ、2相の給餌プログラムに従った。その後、対
照またはサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var.
boulardii)CNCM I-1079で処置した雌ブタから生まれた仔ブタを、3つの群
:基礎食餌(Ctl)、2500ppmのZnO、420ppmの抗生物質が補給された
基礎食餌(抗生物質群;AB)、2×109CFU/kgのサッカロミセス・セレビシエ
変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079
が補給された基礎食餌(SB)に割り当てた。糞便試料は、初産および出産歴2回の雌ブ
タについて、処置毎に13匹および22匹の雌ブタからそれぞれ収集した。同じ雌ブタか
ら、分娩舎に移動してから2日後および分娩の翌日に試料採取した。糞便試料は、処置群
毎に10匹の仔ブタ、したがって合計60匹の仔ブタから採取した。仔ブタから試料採取
は、離乳日、離乳後6日目および離乳後20日目に行った。
【0065】
微生物のDNA抽出および16S rRNA遺伝子シーケンシング
収集した糞便試料を以下のようにして処理した:微生物DNAの抽出は、40~60m
gの糞便からZR-96 Soil Microbe DNA Kit(商標)(Zym
o Research、Freiburg、ドイツ)を使用して製造元の指示に従って行
った。Retsch MM400 Mixer Millを使用して、30Hzで15分
のビードビートステップを適用した。16S rRNA遺伝子のV4およびV5超可変領
域を、以下のプライマーを使用して増幅させた:
V4-V5領域
V4V5-515F 5’-CTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGAT
CTGTGYCAGCMGCCGCGGTA-3’
V4V5-928R 5’-GGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGAT
CTCCCCGYCAATTCMTTTRAGT-3’
【0066】
MiSeqシーケンサーでReagent Kit v3を使用して、製造元の指示(
Illumina Inc.、San Diego、CA)に従って、ハイスループット
シーケンシングを実行した。
【0067】
バイオインフォマティクス分析
バイオインフォマティクス分析は、GenoToulバイオインフォマティクス施設(
Toulouse、フランス)を使用して実行した。作成されたペアエンド250bp配
列を、Flashソフトウェアを使用してアセンブルした(最小オーバーラップ10bp
、最大ミスマッチ10%)。アセンブルした配列を、FROGSパイプラインを使用して
処理した(Escudie et al., 2018)。簡潔には、SWARMアルゴリズムを使用してOp
erational Taxonomic Unit(OTU)で配列をクラスター化し
た(Mahe et al., 2014)。次に、キメラ配列を、UCHIMEアルゴリズムを使用して
試料毎に検出し、全ての試料から取り除いた(Edgar et al., 2011)。各シーケンシング
データセットに希薄化ステップを適用して、シーケンシング深度の差異によるバイアスを
回避した。フィルタリングステップを適用して、全てのシングルトン(すなわち、1回の
みの読み取りで表されるOTU)を取り除いた。作成されたOTUカウントテーブルを、
累計スケーリングによって正規化した。OTUの分類学的アノテーションを、SILVA
SSUデータベースならびにBLAST+およびRDPアルゴリズムを使用して実行し
た。同一性アライメントおよびカバレッジアライメントが99%を超えるBLASTヒッ
トを、アノテーションのために保存した。それ以外の場合は、種は不明としてアノテート
し、RDP分類子の結果をより上位のランクに使用した。属ランクおよびそれより上位の
ランクにおけるアノテーションのために、ブートストラップ閾値をそれぞれ0.9および
0.8に設定した。門、科および属の相対存在量の表を作成した。
【0068】
統計分析
畜産学的能力。平均1日増体量(ADG)、飼料摂取量(FI)および飼料変換比(F
CR)を、繰り返し測定のためにSAS(The SAS Stat. v.9.3)の
MIXED手順によって実行した。統計モデルは、相互作用も考慮して、雌ブタの処置、
仔ブタの性別および時間の主効果を明らかにした。有意水準はA、BについてはP≦0.
01に、a、bについてはP≦0.05に固定し、0.05<P≦0.1をトレンドと考
えた。
【0069】
微生物叢の統計分析。微生物叢の統計分析は、RソフトウェアおよびRStudioソ
フトウェアを使用して行った。Kruskal-Wallis順位和検定とそれに続く、
平均順位和の多重比較のためのペアワイズ検定(Conover検定、PMCMR Rパ
ッケージ)を使用して、組成データを分析した。差異分析は、全配列の0.005%超が
相当する分類群についてのみ実行した。Benjamini-Hochbergの手順を
使用して、生成されたP値を調整した。コンティンジェンシーデータを、Fischer
の正確確率検定を使用して分析した。
【0070】
結果
畜産学的能力。雌ブタにサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces
cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079を補給すると、離乳時における仔
ブタの体重が有意に増加した(表1)。さらに、雌ブタへの補給の、成長能力に対する効
果を、35日齢までの離乳後能力について示す(表2)。
【0071】
これらの結果は、雌ブタにサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyce
s cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079を給餌した場合、それらの子ブ
タの成長は、その母親にサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces ce
revisiae var. boulardii)CNCM I-1079が給餌されなかった仔ブタにおいて
得られる成長よりもめざましかった。
【0072】
【0073】
【0074】
微生物叢の分析。雌ブタにおいて、本発明者らは、サッカロミセス・セレビシエ変種ブ
ラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079補給の
、微生物叢のアルファ多様性に対する効果を立証した。サッカロミセス・セレビシエ変種
ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079群内
で、試料のより高い均一性が観察された。
【0075】
雌ブタにおけるサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisi
ae var. boulardii)CNCM I-1079補給は、分娩前のフィブロバクター門(Fib
robacteres)の有意に高い相対存在量と関連していた(
図4)。
【0076】
加えて、本発明者らは、その母親にサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Sacc
haromyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079補給物が給餌された仔
ブタにおいて、フィブロバクター・インテスティナリス(Fibrobacter intestinalis)の
出現頻度がより高いことを観察した(
図5)。際だったことに、これらの母親効果は、離
乳後の食餌が何であっても、離乳後20日まで持続していた。さらにまた、仔ブタにおけ
る投薬がフィブロバクター・インテスティナリス(Fibrobacter intestinalis)の出現頻
度を低減したのに対し;興味深いことに、雌ブタにおけるサッカロミセス・セレビシエ変
種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079補
給は、仔ブタにおける投薬の効果を遅延させた(
図5)。このような結果は、雌ブタにサ
ッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii
)CNCM I-1079が給餌された場合における、おそらくそれらの仔ブタの早期コ
ロニー形成に影響を与えることによる、母体刷り込み効果を示唆している。
【0077】
図6に示されるように、分娩前の雌ブタにおけるフィブロバクター門(Fibrobacteres
)の相対存在量と仔ブタの能力(平均離乳時体重)との間に正の相関も見られた。
【0078】
これらの結果を全て、総合すると、サッカロミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Sacc
haromyces cerevisiae var. boulardii)CNCM I-1079の補給は、フィブロバ
クター門(Fibrobacteres)の集団を、雌ブタの結腸内において増加させたが、サッカロ
ミセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)CN
CM I-1079が給餌された雌ブタの仔ブタの結腸内においても増加させたことが示
唆される。第1の実施例においては、フィブロバクター門(Fibrobacteres)に対する効
果に加えて、本発明者らは、放線菌門(Actinobacteria)、特に、一次胆汁酸を代謝でき
ると記載されている2つの属、コリンセラ属(Collinsella)およびオルセネラ属(Olsen
ella)に対する効果を観察した。示した2つの実施例において、仔ブタは同時により大き
な成長を示した。
【0079】
本発明をそれらの具体的な実施形態に関連して記載したが、特許請求の範囲の範囲は、
実施例中に記載した好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての明
細書と一致する最も広範な解釈を与えられるべきであると理解するものとする。
【0080】
発明のさらなる実施形態:
1.単胃動物の平均1日増体量を増大させるのに有効な量のサッカロミセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と好適な担
体とを含む、組成物。
2.単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持するまたは成
長させるのに有効な量のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の
少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と好適な担体とを含む、組成物。
3.(a)微生物の集団が繊維消化、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換もしくは両方に関
与する、場合によっては、繊維消化に関与する微生物がフィブロバクター門(Fibrobacte
res)、放線菌門(Actinobacteria)もしくは両方の微生物である、好ましくは、繊維消
化に関与する微生物がフィブロバクター門(Fibrobacteres)の属、ビフィドバクテリウ
ム科(Bifidobacteriaceae)もしくは両方の微生物である、より好ましくは繊維消化に関
与する微生物がフィブロバクター・インテスティナリス(Fibrobacter intestinalis)株
である;または
(b)一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換に関与する微生物が放線菌門(Actinobacteria)
の微生物である、場合によっては、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換に関与する微生物が
コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)の微生物である、
実施形態2の組成物。
4.微生物の集団が単胃動物の平均1日増体量を増大させることができる、実施形態2ま
たは3の組成物。
5.(a)サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株がプロバイオテ
ィクス株である;
(b)サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株が、サッカロミセス
・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)株である;
(c)サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株が、CNCMにアク
セッション番号I-1079で寄託されているサッカロミセス・セレビシエ変種ブラウデ
ィ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)株である;
(d)好適な担体が飼料である;
(e)サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の
生物学的に純粋な培養物が、組成物1キログラム当たり少なくとも1×109CFUの量
である;
(f)組成物が少なくとも1種の追加の微生物株をさらに含む;
(g)組成物が、ゼラチンカプセル剤、プレス錠、ゲルキャップ剤、動物飼料または液体
飲料の形態である;ならびに/あるいは
(h)単胃動物が、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギもしくは家禽またはその子孫である
、
実施形態1から4のいずれかの組成物。
6.実施形態1から5のいずれか1つに記載の組成物を含む、飼料または食品添加物。
7.単胃動物の平均1日増体量を増大させるための、実施形態1、4および5のいずれか
に記載の組成物の使用。
8.組成物が給餌された単胃動物の平均1日増体量が、前記組成物が給餌されなかった単
胃動物の平均1日増体量と比較した場合、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、
20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、8
5、90、95または100%増大される、実施形態7の使用。
9.単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持するまたは成
長させるための、実施形態2から5のいずれか1つに記載の組成物の使用。
10.(a)組成物が給餌された単胃動物の腸内の微生物の集団が、前記組成物が給餌さ
れなかった単胃動物の微生物の集団と比較した場合、少なくとも10、15、20、25
、30、35、40、45、50、55、60、70、80、85、90、100、10
5、110、115、120、125、130、135、140、145、145、15
0、155、160、165、170、175、180、185、190、200、20
5、210、215、220、225、230、235、240、245、250、25
5、260、265、270、275、280、285、290、295もしくは300
%増大される、および/または
(b)微生物の集団が、繊維消化、一次胆汁酸の二次胆汁酸への変換もしくは両方に関与
する、
実施形態9の使用。
11.単胃動物および/またはその同腹仔の腸内において微生物の集団を維持するまたは
成長させる方法であって、実施形態2から5のいずれか1つに記載の組成物の有効量を前
記単胃動物に給餌するステップを含む、方法。
12.(a)単胃動物の腸内の微生物の集団の成長が、前記組成物が給餌されなかった単
胃動物の微生物の集団と比較した場合、少なくとも10、15、20、25、30、35
、40、45、50、55、60、70、80、85、90、100、105、110、
115、120、125、130、135、140、145、145、150、155、
160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、
215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、
265、270、275、280、285、290、295もしくは300%増大される
;
(b)方法が、前記組成物を前記動物の基礎食餌と混合するステップを含む;
(c)前記組成物の有効量を前記単胃動物に給餌するステップが、少なくとも10、11
、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、
25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、3
8、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51
、52、53、54、55、56、57、58、59もしくは60日間の期間にわたって
毎日行われる;
(d)前記単胃動物に給餌される前記組成物が、少なくとも1種の抗生物質、酸化亜鉛も
しくはそれらの混合物をさらに含み、場合により、前記抗生物質がアモキシシリン、ドキ
シサイクリン、リンコマイシン、コリスチン、チアムリン、もしくはそれらの任意の組み
合わせである;
(e)単胃動物が、妊娠中、授乳中、離乳中もしくは成長中である;および/または
(f)前記組成物が給餌された単胃動物からの子孫の腸内の微生物の集団の成長が、前記
組成物が給餌されなかった単胃動物からの子孫の腸内の微生物の集団と比較した場合に増
大される、場合によっては、前記組成物が給餌された単胃動物からの子孫の腸内の微生物
の集団の成長が、前記組成物が給餌されなかった単胃動物からの子孫における微生物の集
団と比較した場合、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、
40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは1
00%増大される、
実施形態11の方法。
13.単胃動物の平均1日増体量を増大させるための方法であって、実施形態1、4およ
び5のいずれか1つに記載の組成物の有効量を単胃動物に給餌するステップを含む、方法
。
14.(a)前記組成物の有効量が給餌された単胃動物の平均1日増体量が、前記組成物
の有効量が給餌されなかった単胃動物の平均1日増体量と比較して、少なくとも21日以
内に増加される;
(b)前記組成物が給餌された単胃動物の平均1日増体量が、前記組成物が給餌されなか
った単胃動物の平均1日増体量と比較した場合、少なくとも1、2、3、4、5、10、
15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、8
0、85、90、95もしくは100%増大される;
(c)単胃動物が、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、家禽もしくはその子孫である;場
合によっては、前記ブタが、雌ブタ、成長中および肥育中のブタならびに仔ブタからなる
群から選択される;ならびに/または
(d)単胃動物が、妊娠中、授乳中、離乳中もしくは成長中である、
実施形態13の方法。
単胃動物の平均1日増体量を増大させるのに有効な量のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の少なくとも1種の生物学的に純粋な培養物と好適な担体とを含む、組成物。