(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020219
(43)【公開日】2025-02-12
(54)【発明の名称】改良されたコロナウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/215 20060101AFI20250204BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20250204BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250204BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20250204BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20250204BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250204BHJP
C12N 15/50 20060101ALN20250204BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20250204BHJP
【FI】
A61K39/215 ZNA
A61P31/14
A61P37/04
A61K39/39
C07K14/165
A61K39/215
C12N15/09 Z
C12N15/50
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024188812
(22)【出願日】2024-10-28
(62)【分割の表示】P 2023502656の分割
【原出願日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】63/173,752
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/190,199
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,チー-ヒューイ
(72)【発明者】
【氏名】マー,チェー
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ハン-イー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新型コロナウイルス感染症をより良好に予防及び処置するための改良された免疫原、ワクチン、及び方法を提供する。
【解決手段】本開示は、SARS-CoV-2及びそのバリアントの天然スパイクタンパク質と比較して免疫応答の増強を誘発することができる、糖鎖改変型SARS-CoV-2スパイクタンパク質を提供する。糖鎖改変型スパイクタンパク質は、グリコシル化部位を露出すると同時に、スパイクタンパク質の三次構造を保持する。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の短縮型N-グリカン及び1つ以上の未改変O-グリカンを含む糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質を含む免疫原であって、糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアント、又はその免疫学的に活性な断片からなる、免疫原。
【請求項2】
複数の短縮型N-グリカンが単糖である、請求項1に記載の免疫原。
【請求項3】
単糖がN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)である、請求項2に記載の免疫原。
【請求項4】
複数の短縮型N-グリカンが受容体結合ドメイン(RBD)に位置しており、それによって、TESIVRFPNITNL(配列番号41)、NITNLCPFGEVFNATR(配列番号42)、LYNSASFSTFK(配列番号43)、LDSKVGGNYN(配列番号44)、KSNLKPFERDIST(配列番号45)、KPFERDISTEIYQAG(配列番号46)及び/又はGPKKSTNLVKNKC(配列番号47)のアミノ酸配列を有する複数の高度に保存されたエピトープが露出される、請求項1に記載の免疫原。
【請求項5】
複数の短縮型N-グリカンが、ヘプタッドリピート2(HR2)ドメインに位置しており、それによって、NCDVVIGIVNNTVY(配列番号48)、PELDSFKEELDKYFKNHTS(配列番号49)、VNIQKEIDRLNEVA(配列番号50)、NLNESLIDLQ(配列番号51)及び/又はLGKYEQYIKWP(配列番号52)のアミノ酸配列を有する複数の高度に保存されたエピトープが露出される、請求項1に記載の免疫原。
【請求項6】
糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質が、インビトロでの糖鎖改変により天然コロナウイルススパイクタンパク質から誘導される、請求項1に記載の免疫原。
【請求項7】
天然コロナウイルススパイクタンパク質が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SAR-CoV-2)又はそのバリアントのスパイクタンパク質である、請求項6に記載の免疫原。
【請求項8】
バリアントが、D614G、アルファ(B.1.1.7及びQ系列)、ベータ(B.1.351及び子孫系列)、ガンマ(P.1及び子孫系列)、イプシロン(B.1.427及びB.1.429)、イータ(B.1.525)、イオタ(B.1.526)、カッパ(B.1.617.1)、1.617.3、ミュー(B.1.621、B.1.621.1)、ゼータ(P.2)、デルタ(B.1.617.2及びAY系列)、並びにオミクロン(B.1.1.529及びBA系列)からなる群から選択される、請求項7に記載の免疫原。
【請求項9】
糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質が三量体として存在する、請求項1に記載の免疫原。
【請求項10】
糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質が、天然コロナウイルススパイクタンパク質と同じ三次構造を保持している、請求項6に記載の免疫原。
【請求項11】
糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質が、天然コロナウイルススパイクタンパク質と比較して免疫応答の増強を誘発することができる、請求項4に記載の免疫原。
【請求項12】
免疫応答の増強が、IgG力価の増加、IgM力価の増加、中和力価の増加、CD4 T細胞応答の増加、CD8 T細胞応答の増加、又はそれらの組合せである、請求項11に記載の免疫原。
【請求項13】
糖鎖改変型スパイクタンパク質が、化学的方法又は酵素的方法の1つ以上を使用して生成される、請求項6に記載の免疫原。
【請求項14】
糖鎖改変型スパイクタンパク質が、エンドグリコシダーゼH(Endo H)を使用して生成される、請求項13に記載の免疫原。
【請求項15】
糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、ポリペプチドが、GlcNAc部分をそれぞれ有する22個の短縮型N-グリカンからなる、請求項1に記載の免疫原。
【請求項16】
糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、ポリペプチドが、GlcNAc部分をそれぞれ有する21個の短縮型N-グリカンからなる、請求項1に記載の免疫原。
【請求項17】
(a)請求項1~16のいずれか一項に記載の免疫原、及び(b)任意選択的にアジュバントを含む、免疫原性組成物。
【請求項18】
アジュバントが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、不完全フロイントアジュバント(IFA)、スクアレン、ミョウバン、アルヒドロゲル、MF59、QS-21、CpG 1018、AS03、AS37、Matrix-M、又はそれらの組合せである、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
天然コロナウイルススパイクタンパク質を使用するワクチンと比較して免疫応答の増強を誘発することができる改良されたコロナウイルスワクチンである、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
コロナウイルスがSAR-CoV-2又はそのバリアントである、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する免疫応答を必要とする対象において、SARS-CoV-2に対する免疫応答を誘発する方法であって、対象に有効量の請求項17又は18に記載の免疫原性組成物を投与することを含む、方法。
【請求項22】
免疫応答がSARS-CoV-2又はそのバリアントに対する中和抗体の産生を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
バリアントが、D614G、アルファ(B.1.1.7及びQ系列)、ベータ(B.1.351及び子孫系列)、ガンマ(P.1及び子孫系列)、イプシロン(B.1.427及びB.1.429)、イータ(B.1.525)、イオタ(B.1.526)、カッパ(B.1.617.1)、1.617.3、ミュー(B.1.621、B.1.621.1)、ゼータ(P.2)、デルタ(B.1.617.2及びAY系列)、並びにオミクロン(B.1.1.529及びBA系列)からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
SARS-CoV-2又はそのバリアントに対する免疫応答を必要とする対象においてSARS-CoV-2又はそのバリアントに対する免疫応答を誘発するための請求項17又は18に記載の免疫原性組成物の使用であって、SARS-CoV-2又はそのバリアントに対する免疫応答を必要とする対象に有効量の免疫原性組成物を投与することを含む、使用。
【請求項25】
免疫応答がSARS-CoV-2又はそのバリアントに対する中和抗体の産生を含む、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
バリアントが、D614G、アルファ(B.1.1.7及びQ系列)、ベータ(B.1.351及び子孫系列)、ガンマ(P.1及び子孫系列)、イプシロン(B.1.427及びB.1.429)、イータ(B.1.525)、イオタ(B.1.526)、カッパ(B.1.617.1)、1.617.3、ミュー(B.1.621、B.1.621.1)、ゼータ(P.2)、デルタ(B.1.617.2及びAY系列)、並びにオミクロン(B.1.1.529及びBA系列)からなる群から選択される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
SARS-CoV-2又はそのバリアントによる感染からの防御を必要とする対象を、SARS-CoV-2又はそのバリアントによる感染から防御するための請求項17又は18に記載の免疫原性組成物の使用であって、SARS-CoV-2又はそのバリアントによる感染からの防御を必要とする対象に有効量の免疫原性組成物を投与することを含む、使用。
【請求項28】
COVID-19疾患への罹患の予防を必要とする対象者がCOVID-19疾患に罹患するのを予防するための請求項17又は18に記載の免疫原性組成物の使用であって、COVID-19疾患への罹患の予防を必要とする対象者に有効量の免疫原性組成物を投与することを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる、2021年4月12日に出願した米国仮出願第63/173,752号、及び2021年5月18日に出願した米国仮出願第63/63/190,199号に対する優先権及び利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
Covid-19の発生は、2019年12月に最初の症例が報告されて以来、世界中で300万人以上の死者をもたらしている。現在、SARS-CoV-2感染症に対するいくつかのCOVID-19ワクチンが臨床試験段階で開発されており、一部のワクチンは、ヒトへの使用が承認されている。多くの認可されたワクチンが高い有効性を示したが、SARS-CoV-2の遺伝子バリアントが出現し、COVID-19パンデミックを通して世界中に流行している。
【0003】
したがって、新型コロナウイルス感染症のより良好な予防、及び/又は生命を脅かすコロナウイルス感染症の重症度の軽減のための改良されたCOVID-19ワクチンが緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(本開示の要旨)
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質は、広範にグリコシル化されている。本開示は、SARS-CoV-2又はそのバリアントの天然スパイクタンパク質と比較して、グリカンシールドを欠いている又はグリカンによるシールドが少ない改変型SARS-CoV-2スパイクタンパク質による免疫化が、SARS-CoV-2及び懸念されるバリアント(例えば、アルファ、ガンマ、デルタ及びオミクロン)に対する免疫応答の増強を誘発するという認識に基づいている。受容体結合ドメイン(RBD)とヘプタッドリピート2(HR2)ドメインを含むサブユニット2(S2)とに位置する12個の高度に保存されたエピトープ(配列番号1~12)は、GISAIDからの600万を超えるSタンパク質配列のアラインメントに基づき同定された。N-グリカントリミング(N-glycan trimming)によってグリカンシールドを除去してこれらの高度に保存されたエピトープをより良好に露出させることにより、SARS-CoV-2及びバリアントに対する広範な防御ワクチンを開発するための効果的なアプローチを提供する。スパイクタンパク質のN-グリカントリミングは、インビトロでの糖鎖改変操作によって達成することができる。これによって、糖鎖改変型スパイクタンパク質は、グリカンによりシールドされた高度に保存されたエピトープを露出すると同時に、スパイクタンパク質の三次構造を保持する。したがって、本開示は、新型コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)感染症をより良好に予防及び処置するための改良された免疫原、ワクチン、及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本開示は、複数の短縮型N-グリカン及び未改変O-グリカン(例えば、O-結合型オリゴ糖)を含む糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質を含む免疫原を提供する。一部の実施形態では、複数の短縮型N-グリカンは、受容体結合ドメイン(RBD)に位置しており、それにより、TESIVRFPNITNL(配列番号41)、NITNLCPFGEVFNATR(配列番号42)、LYNSASFSTFK(配列番号43)、LDSKVGGNYN(配列番号44)、KSNLKPFERDIST(配列番号45)、KPFERDISTEIYQAG(配列番号46)及び/又はGPKKSTNLVKNKC(配列番号47)のアミノ酸配列を有する複数の高度に保存されたエピトープが露出される。一部の実施形態では、複数の短縮型N-グリカンは、ヘプタッドリピート2(HR2)ドメインに位置しており、それによって、NCDVVIGIVNNTVY(配列番号48)、PELDSFKEELDKYFKNHTS(配列番号49)、VNIQKEIDRLNEVA(配列番号50)、NLNESLIDLQ(配列番号51)及び/又はLGKYEQYIKWP(配列番号52)のアミノ酸配列を有する複数の高度に保存されたエピトープが露出される。
【0006】
一部の実施形態では、複数の短縮型N-グリカンは、受容体結合ドメイン(RBD)及びヘプタッドリピート2(HR2)ドメインに位置しており、それによって、TESIVRFPNITNL(配列番号41)、NITNLCPFGEVFNATR(配列番号42)、LYNSASFSTFK(配列番号43)、LDSKVGGNYN(配列番号44)、KSNLKPFERDIST(配列番号45)、KPFERDISTEIYQAG(配列番号46)、GPKKSTNLVKNKC(配列番号47)、NCDVVIGIVNNTVY(配列番号48)、PELDSFKEELDKYFKNHTS(配列番号49)、VNIQKEIDRLNEVA(配列番号50)、NLNESLIDLQ(配列番号51)及び/又はLGKYEQYIKWP(配列番号52)のアミノ酸配列を有する複数の高度に保存されたエピトープが露出される。
【0007】
本明細書に記載の糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアント、又はアミノ酸配列若しくはバリアントの免疫学的に活性な断片を含む。
【0008】
一部の実施形態では、糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、ポリペプチドは、GlcNAc部分をそれぞれ有する22個の短縮型N-グリカンからなる。
【0009】
一部の実施形態では、糖鎖改変型コロナウイルススパイクタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、ポリペプチドは、GlcNAc部分をそれぞれ有する21個の短縮型N-グリカンからなる。
【0010】
一部の実施形態では、短縮型N-グリカンは、単糖、二糖又は三糖である。一部の実施形態では、短縮型N-グリカンは単糖である。好ましい実施形態では、単糖はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)である。
【0011】
好ましい実施形態では、本明細書に記載の短縮型N-グリカンは、実質的に均質である。「均質」という用語は、1つの所望するグリカン種によって表されるグリコシル化パターンを意味することを意図する。本明細書で使用される「実質的に均質な」という用語は、組成物中に存在する糖タンパク質の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%が1つの所望するグリコフォーム(例えば、GlcNAc修飾)によって表され、微量の望ましくないグリコフォームが組成物中に存在することを意味することを意図する。「微量」とは、糖タンパク質組成物中に存在する任意の所与の望ましくないグリコフォームが、総糖タンパク質の5%未満、好ましくは4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、さらには0.5%未満、又はさらには0.1%未満で存在することを意図する。
【0012】
本明細書に記載されている場合、「スパイクタンパク質」及び「スパイク糖タンパク質」及び「コロナウイルススパイクタンパク質」という用語は、交換可能に使用される。本明細書に記載の糖鎖改変型スパイクタンパク質は、糖鎖改変操作(例えば、インビトロ又はインビボにおける糖鎖改変操作)によって、天然コロナウイルススパイクタンパク質から生成され得る。一部の実施形態では、糖鎖改変型スパイクタンパク質は、化学的方法又は酵素的方法の1つ以上を使用して生成される。一部の実施形態では、糖鎖改変型スパイクタンパク質は、エンドグリコシダーゼH(Endo H)を使用して生成される。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書に記載の天然コロナウイルススパイクタンパク質は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SAR-CoV-2)又はそのバリアントのスパイクタンパク質である。本明細書に記載のSARS-CoV-2は、SARS-CoV-2の武漢株(hCoV/Wuhan/WH01/2019)である。本明細書に記載のSARS-CoV-2のバリアントには、限定するものではないが、D614G、アルファ(B.1.1.7及びQ系列)、ベータ(B.1.351及び子孫系列)、ガンマ(P.1及び子孫系列)、イプシロン(B.1.427及びB.1.429)、イータ(B.1.525)、イオタ(B.1.526)、カッパ(B.1.617.1)、1.617.3、ミュー(B.1.621、B.1.621.1)、ゼータ(P.2)、デルタ(B.1.617.2及びAY系列)、並びにオミクロン(B.1.1.529及びBA系列)が含まれる。一部の実施形態では、天然コロナウイルススパイクタンパク質は、コウモリコロナウイルスRaTG13又はそのバリアントのスパイクタンパク質である。
【0014】
本明細書に記載されている場合、「天然コロナウイルススパイクタンパク質」、「天然コロナウイルススパイク糖タンパク質」、「天然スパイク糖タンパク質」及び「天然スパイクタンパク質」という用語は、交換可能である。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書に記載の糖鎖改変型スパイクタンパク質は、三量体(例えば、溶液中の三量体)として存在する。本明細書に記載の糖鎖改変型スパイクタンパク質は、その天然コロナウイルススパイクタンパク質と同じ三次構造を保持し得る。
【0016】
本明細書に記載されている場合、糖鎖改変型スパイクタンパク質は、その天然コロナウイルススパイクタンパク質と比較して免疫応答の増強を誘導することができる。免疫応答の増強は、IgG力価の増加、IgM力価の増加、CD4 T細胞応答の増加、CD8 T細胞応答の増加、中和力価の増加、又はそれらの組合せである。
【0017】
別の態様では、本発明は、(a)本開示の免疫原、及び(b)任意選択的にアジュバントを含む免疫原性組成物を提供する。
【0018】
本明細書に記載されている場合、アジュバントには、限定するものではないが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、フロイント不完全アジュバント(IFA)、スクアレン、ミョウバン、アルヒドロゲル、MF59、QS-21、CpG 1018、AS03、AS37、Matrix-M、又はそれらの組合せが含まれる。
【0019】
本明細書に記載のコロナウイルスにはSARS-CoV-2及びそのバリアントが含まれる場合があり、コウモリコロナウイルスRaTG13又はそのバリアントが含まれ得る。好ましい実施形態では、コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2及びそのバリアントによって引き起こされる。
【0020】
本明細書に記載されている場合、免疫原性組成物は、その天然SAR-CoV-2スパイクタンパク質を使用するワクチンに比較して免疫応答の増強を誘発することができ、それによって、SAR-CoV-2又はそのバリアントによって引き起こされるコロナウイルス感染症に対する改良されたCOVIDー19ワクチンとして機能する。
【0021】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象においてSAR-CoV-2又はバリアントに対する免疫応答を誘発する方法であって、対象に有効量の本発明の免疫原性組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象をSAR-CoV-2又はバリアントによる感染から防御する方法であって、対象に有効量の本発明の免疫原性組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象がCOVID-19疾患に罹患するのを予防する方法であって、対象に有効量の本発明の免疫原性組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象においてSARS-CoV-2に対する免疫応答を誘発するための本発明の免疫原性組成物の使用を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象をSARS-CoV-2による感染から防御するための本発明の免疫原性組成物の使用を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象がCOVID-19疾患に罹患するのを予防するための本発明の免疫原性組成物の使用を提供する。
【0027】
これら及び他の態様は、以下の図面と併せて得られる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるが、本開示の新規概念の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変形及び改変がとられる場合がある。
【0028】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の態様をさらに示すために含まれており、その発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することによってよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1-1】(a)~(b)。モノ-GlcNAc-装飾(S
MG)タンパク質ワクチンによる糖鎖改変型スパイクタンパク質の設計及び特性評価。(a)組換えSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質構築物の模式図。タンパク質ドメインは、N-末端ドメイン(NTD)、受容体結合ドメイン(RBD)、融合ペプチド(FP)、ヘプタッドリピート1(HR1)、ヘプタッドリピート2(HR2)、中央ヘリックス(CH)、及び連結ドメイン(CD)として図示されている。可溶性スパイクタンパク質のC末端は、配列上のフォールドとHisタグ(His
6)に結合されている。フリン切断部位はGSAG(配列番号9)残基で置換され、2つのプロリン変異(K986P及びV987P)はスパイクタンパク質を融合前状態で固定する。N-結合グリコシル化シークオン(N-X-S/T、式中、X≠P)の位置は、分岐として示す(N、Asn;X、任意の残基;S、Ser;T、Thr;P、Pro)。ポンド記号の部位はトロンビン切断部位を示す。(b)モノ-GlcNAcで装飾したスパイクワクチン生産の概略図。S
HM、高マンノース型N-グリカンを含むスパイク。S
MG、N-グリコシル化部位にGlcNAcを有するスパイク。
【
図1-2】(c)。モノ-GlcNAc-装飾(S
MG)タンパク質ワクチンによる糖鎖改変型スパイクタンパク質の設計及び特性評価。(c)精製したS
MGのサイズ排除クロマトグラフィー。黒色の曲線はS
MGを表し、灰色の曲線はタンパク質分子量マーカーを示す。
【
図1-3】(d)~(e)。モノ-GlcNAc-装飾(S
MG)タンパク質ワクチンによる糖鎖改変型スパイクタンパク質の設計及び特性評価。(d)S
FG(典型的な複合型N-グリカンを含むスパイク)、S
HM及びS
MGのSDS-PAGE分析。(e)S
MGの構造モデル。モデルは、プログラムChimeraXで表示されるWincootmandを使用してグリカンを付加することによってProtein Data Bank(PDB)IDコード7CN9で作成した。
【
図1-4】(f)。モノ-GlcNAc-装飾(S
MG)タンパク質ワクチンによる糖鎖改変型スパイクタンパク質の設計及び特性評価。(f)S
FG及びS
MGのN-グリカン組成の質量分析。
【
図2-1】(A)~(C)。S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(A)シリアンハムスターの免疫スケジュールを示す。S
FG(青色)、S
MG(赤色)、及び対照(灰色)。(B)体重変化をWT SARS-CoV-2抗原負荷後のシリアンハムスターにおいて測定した。(C)抗原負荷されたハムスターの肺ウイルス力価を示す。破線は検出の下限を示す。
【
図2-2】(D)。S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(D)代表的な画像は、感染したハムスターの肺の組織病理学、免疫組織化学、及び免疫蛍光(3dpi)を示す。1列目:ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色;スケールバー、50μm。2列目:免疫組織化学(IHC)染色;スケールバー、50μm。3列目:免疫蛍光(IF)染色;スケールバー、100μm。SARS-CoV-2 N特異的ポリクローナル抗体は、IHCでは茶色の点及びIF染色では緑色の点としてウイルス検出に使用された。青色:4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)。
【
図2-3】(E)。S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(E)CAG-hACE2又はK18-hACE2トランスジェニックマウスの免疫スケジュールを示す。
【
図2-4】(F)~(I)。S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(F)~(I)抗S IgG力価(F)、SARS-CoV-2 WTマイクロ中和力価(G)、並びにIgG1、IgG2c(H)、及びIgG2c:IgG1比(I)を含むサブタイプIgG分析を、免疫したCAG-hACE2トランスジェニックマウス(n=7)から採取した血清試料について示す。
【
図2-5】(J)。S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(J)感染したマウスの肺の代表的な組織病理学、免疫組織化学、及び免疫蛍光(7dpi)を示す。スケールバーは、(D)と同じである。
【
図2-6】(K)~(M)。(K)~(M)S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(K)感染したCAG-hACE2マウス(n=3)の肺ウイルス力価。破線は検出の下限を示す。(L)~(M)体重変化(L)及び生存分析(M)をWT-SARS-CoV-2で抗原負荷したCAG-hACE2トランスジェニックマウス(n=4)について示す。
【
図2-7】(N)~(O)。S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(N)~(O)体重変化(N)及び生存分析(O)をSARS-CoV-2アルファバリアントで抗原負荷したCAG-hACE2トランスジェニックマウス(n=5)について示す。
【
図2-8】(P)~(Q)。S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(P)~(Q)体重変化(P)及び生存分析(Q)をSARS-CoV-2ガンマバリアントで抗原負荷したCAG-hACE2トランスジェニックマウス(n=5)について示す。
【
図2-9】(R)~(S)。S
MGワクチン接種は、インビボでのSARS-CoV-2感染に対する防御の増強を提供する。(R)~(S)体重変化(R)及び生存分析(S)をSARS-CoV-2デルタバリアントで抗原負荷したK18-hACE2トランスジェニックマウス(n=4)について示す。データは平均値±SEMとして示し、2つの実験群を比較するために両側マン・ホイットニーU検定によって分析する。ns、有意でない;
*P<0.05。
【
図3-1】(a)。S
MGワクチン接種は、トランスジェニックhACE2マウスにおける致死量のSARS-CoV-2感染に対するより良好な防御を提供する。(a)トランスジェニックマウスの免疫及び抗原負荷のスケジュール。
【
図3-2】(b)~(c)。S
MGワクチン接種は、トランスジェニックhACE2マウスにおける致死量のSARS-CoV-2感染に対するより良好な防御を提供する。(b)最初のワクチン接種後28日目及び42日目に採取した血清を抗スパイク特異的IgGについて検査した。(c)最初のワクチン接種後42日目に採取した血清を、CPEアッセイによる中和抗体力価について検査した。
【
図3-3】(d)~(e)。S
MGワクチン接種は、トランスジェニックhACE2マウスにおける致死量のSARS-CoV-2感染に対するより良好な防御を提供する。(d)抗原負荷後のトランスジェニックマウスの体重変化。(n=3)。(e)抗原負荷後のトランスジェニックマウスの生存率。(n=3)。 データは、平均±SEM(平均の標準誤差)である。比較は、スチューデントt検定(対応なし、両側)により実施した。S
FGワクチンに対するS
MGによって誘発された抗体の結合及び中和倍率の増加は、棒の上に数字で示す。青色の四角形、S
FGで免疫したトランスジェニックマウス;赤色の三角形、S
MGで免疫したトランスジェニックマウス;灰色の点、対照群の動物(ミョウバンのみの群)。
【
図4-1】(a)。SARS-CoV-2バリアントに対する結合及び中和の幅及び効力を増強するためにマウスにおいてS
MGワクチンによって誘導された抗体。(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質構造の模式図及びこの研究において使用したバリアントの変異ランドスケープを示す。RBD、受容体結合ドメイン。変異マップにおいて、ドット(.)は野生型とその位置のアミノ酸が同じであることを示し、ダッシュ(-)は欠失を示す。
【
図4-2】(b)。SARS-CoV-2バリアントに対する結合及び中和の幅及び効力を増強するためにマウスにおいてS
MGワクチンによって誘導された抗体。(b)SARS-CoV-2特異的IgG抗体価をELISAにより測定した。S
FGワクチンに対するS
MGにより誘発された抗体の結合倍率の増加は、棒上に数字により示す。
【
図4-3】(c)。SARS-CoV-2バリアントに対する結合及び中和の幅及び効力を増強するためにマウスにおいてS
MGワクチンによって誘導された抗体。(c)SARS-CoV-2バリアントシュードウイルス中和曲線を示す。
【
図4-4】(d)。SARS-CoV-2バリアントに対する結合及び中和の幅及び効力を増強するためにマウスにおいてS
MGワクチンによって誘導された抗体。(d)SARS-CoV-2バリアントの50%シュードウイルス中和(pNT50)を達成する力価がプロットされている。S
FGワクチンに対するS
MGにより誘発された抗体の中和倍率の増加は、棒上に数字により示す。
【
図4-5】(e)。SARS-CoV-2バリアントに対する結合及び中和の幅及び効力を増強するためにマウスにおいてS
MGワクチンによって誘導された抗体。(e)プラーク減少中和試験(PRNT)により決定した感染性SARS-CoV-2バリアントの中和曲線を示す。
【
図4-6】(f)。SARS-CoV-2バリアントに対する結合及び中和の幅及び効力を増強するためにマウスにおいてSMGワクチンによって誘導された抗体。(f)SARS-CoV-2バリアントの50%中和(PRNT50)を達成する力価がプロットされている。 データは平均±SEM(平均の標準誤差)である。曲線はGraphPrism9.0を使用した非線形回帰によりフィッティングされ、比較は複数のt検定(対応なし、両側)により実施した。力価の比較は、スチューデントt検定(対応なし、両側)により実施した。S
FGワクチンに対するS
MGにより誘発された抗体の中和倍率の増加は、棒上に数字で示す。青色の四角形、S
FGで免疫したトランスジェニックマウス;赤色の三角形、S
MGで免疫したトランスジェニックマウス;灰色の点、対照群の動物(PBS群)。
【
図5-1】(A)~(B)。Sタンパク質グリコシル化は、ACE2受容体結合及びSARS-CoV-2感染に影響を及ぼす。(A)~(B)ACE2の結合活性を、Endo H消化有り又は無し(C)のBEAS-2B(A)、HEK293T(B)、及びHEK293S(GnTI
-)細胞からの異なるグリコシル化Sタンパク質エクトドメインについて測定した(S
FG;元の完全グリコシル化、青色;deS、非シアリル化、水色;S
HM、高マンノース、黄色;S
MG、モノ-GlcNAc修飾、赤色)。3つの技術的反復実験のデータを平均値±SDとして示し、曲線はEC
50値の非線形回帰によりフィッティングさせる。
【
図5-2】(C)~(D)。Sタンパク質グリコシル化は、ACE2受容体結合及びSARS-CoV-2感染に影響を及ぼす。ACE2の結合活性を、Endo H消化有り又は無し(C)のBEAS-2B(A)、HEK293T(B)、及びHEK293S(GnTI-)細胞からの異なるグリコシル化Sタンパク質エクトドメインについて測定した(S
FG;元の完全グリコシル化、青色;deS、非シアリル化、水色;S
HM、高マンノース、黄色;S
MG、モノ-GlcNAc修飾、赤色)。3つの技術的反復実験のデータを平均値±SDとして示し、曲線はEC50値の非線形回帰によりフィッティングさせる。(D)異なるグリコシル化Sタンパク質を持つシュードウイルスについて、(C)と同様に色付けした同じ投入量(p24相当量の0.3μg/ml)でウイルス感染力を測定した。RLU、相対発光単位。6つの技術的反復実験のデータを平均±SDとして示し、通常の一方向ANOVAテストとそれに続くTukey多重比較テストにより分析した。ns、有意でない;
****P<0.0001。
【
図5-3】(E)。Sタンパク質グリコシル化は、ACE2受容体結合及びSARS-CoV-2感染に影響を及ぼす。(E)SARS-CoV-2Sタンパク質[野生型(WT)]の模式図を、N末端ドメイン(NTD;14~306;オレンジ色)、受容体結合ドメイン(RBD;319~541;赤色)、2つのサブドメイン(SD1/2;542~685;黄色)、融合ペプチド近位領域(FPPR;816~856;緑色)、ヘプタッドリピート1(HR1;912~984;青緑色)、連結ドメイン(CD;1063~1162;青色)、ヘプタッドリピート2(HR2;1163~1211;紫色)、及び膜貫通ドメイン(TM;1214~1234;白色)を含むドメインにより色付けして示した。N-グリカン(枝として描かれている)及びO-グリカン(円)の部位には、残基番号が付けられている。S1ドメイン及びS2ドメインは上に示されている。
【
図5-4】(F)~(G)。Sタンパク質グリコシル化は、ACE2受容体結合及びSARS-CoV-2感染に影響を及ぼす。(F)WT Sタンパク質又は示した各グリコサイトでグリカンが除去された変異体を持つシュードウイルスについてウイルス力価を示し、p24定量により正規化し、(E)に従い色付けする。(G)5つのhACE2発現細胞株で試験した(F)と同じシュードウイルスのパネルの感染力。(F)及び(G)の値は、WT値(100%として定義、濃い灰色で色付け)に対して、3つの独立した実験の平均±SDにより正規化されている。
【
図6-1】(A)。Sタンパク質グリカンのプロファイルは2つの細胞株における差異を示しており、配列保存と相関している。(A)BEAS-2B肺上皮細胞から発現された組換えSタンパク質のN-グリコシル化のプロファイルの比較を示す。グリカンはグループ化され、以下に応じて色付けされている:複合体-S(シアリル化複合体タイプ;濃紺色)、複合体(非シアリル化複合体タイプ;水色)、ハイブリッド-S(シアリル化ハイブリッドタイプ;濃い黄色)、及びハイブリッド(非シアリル化ハイブリッドタイプ;明るい黄色)、高マンノース(緑色)、及び非占有(灰色)。各グリコサイトについての各グループのパーゼンテージを円グラフで示し、各グリコフォーム(番号1~27)の割合を棒グラフで示す。棒グラフは、3つの生物学的反復実験の平均±SDを示す。ハイブリッドは、フコシル化ハイブリッド型糖鎖を示す。
【
図6-2】(B)。Sタンパク質グリカンのプロファイルは2つの細胞株における差異を示しており、配列保存と相関している。(B)HEK293T腎臓上皮細胞から発現された組換えSタンパク質のN-グリコシル化のプロファイルの比較を示す。グリカンはグループ化され、以下に応じて色付けされている:複合体-S(シアリル化複合体タイプ;濃紺色)、複合体(非シアリル化複合体タイプ;水色)、ハイブリッド-S(シアリル化ハイブリッドタイプ;濃い黄色)、及びハイブリッド(非シアリル化ハイブリッドタイプ;明るい黄色)、高マンノース(緑色)、及び非占有(灰色)。各グリコサイトについての各グループのパーゼンテージを円グラフで示し、各グリコフォーム(番号1~27)の割合を棒グラフで示す。棒グラフは、3つの生物学的反復実験の平均±SDを示す。ハイブリッドは、フコシル化ハイブリッド型糖鎖を示す。
【
図6-3】(C)。Sタンパク質グリカンのプロファイルは2つの細胞株における差異を示しており、配列保存と相関している。(A)及び(B)からのグリカンのプロファイルを、S外部ドメインの3D構造にマッピングした(6VSBからモデル化)。グリカンは、表示されているように、BEAS-2B(左)又はHEK293T(右)のデータについて、最も豊富なグループにより色分けされている(複合型、青色;ハイブリッド型、黄色;高マンノース、緑色)。非複合型N-グリコサイトは、残基番号で表示されている。
【
図6-4】(D)~(E)。Sタンパク質グリカンのプロファイルは2つの細胞株における差異を示しており、配列保存と相関している。(D)モデル化されたS構造タンパク質の相対表面アクセシビリティ(RSA)のマッピングを示し、埋もれている残基は濃い黄色で色付けされ、シールドされたグリカンは黄色で色付けされ、露出されているものは明るい黄色で色付けされている。(E)モデル化されたSタンパク質構造の配列バリアントのマッピングを示し、ヒートマップで色付けされており、濃い赤色は高い変異率を示す。いくつかの高度に保存されたグリカンシールド領域を強調表示している。(D)及び(E)に関する詳細については、
図S9及びデータファイルS1で確認することができる。
【
図7-1】(A)~(B)。S
MGワクチン接種は、BALB/cマウスにおいてS
FGよりも強い体液性及び細胞性免疫応答を誘発する。(A)S
FG及びS
MGタンパク質ワクチンの構造モデルを(
図2Cに従って)示す。青色:グリカン;灰色:タンパク質。S
FGは、さらに改変することなくHEK293Eにより発現された。S
MGは、HEK293S GnTI
-によって発現されたS
HMのすべてのN-グリカンを単一GlcNAcに切断する酵素消化により得られたが、O-グリカンは未改変であった。(B)BALB/cマウスにおける免疫原として(A)のようなタンパク質を使用した免疫化スケジュール(各実験においてn=5)。S
FG(青色)、S
HM(黄色)、S
MG(赤色)、及び対照(灰色)。ミョウバン、水酸化アルミニウム。
【
図7-2】(C)~(G)。S
MGワクチン接種は、BALB/cマウスにおいてSFGよりも強い体液性及び細胞性免疫応答を誘発する。(C)血清試料の抗Sタンパク質IgG力価をELISAにより分析した。(D)血清試料の中和力価は、WT Sタンパク質を含むシュードウイルスを使用して測定した。(E)~(G)IgG1(E)、IgG2a(F)、及びIgG2a:IgG1比(G)を含む、血清のIgG サブタイプ分析。
【
図7-3】(H)~(N)。S
MGワクチン接種は、BALB/cマウスにおいてSFGよりも強い体液性及び細胞性免疫応答を誘発する。(H)~(K)活性化非調節性CD4 T細胞(H)でのTfhのパーセンテージ、及びフローサイトメトリーによるBALB/cマウスのリンパ節(LN)においてIFN-γ(I)発現、IL-4(J)発現、及びIL-21(K)発現Tfh細胞(CD4
+CD19
-CD44
hiFoxp3
-PD-1
+CXCR5
+)のパーセンテージ。(L)フローサイトメトリーにより分析したBALB/cマウスのLNにおけるグランザイムB産生CD8
+ T細胞(CD3
+B220
-CD8
+CD49b
-)のパーセンテージ。(M)脾臓におけるfluorescence minus one(FMO)対照染色(Sタンパク質なしで染色)(パーセンテージ)に対して正規化されたSタンパク質特異的B細胞(CD3
-CD19
+Sタンパク質
+)の比率(パーセンテージ)を示す。(N)カッパ及びラムダ軽鎖使用を示す。
【
図7-4】(O)~(P)。S
MGワクチン接種は、BALB/cマウスにおいてSFGよりも強い体液性及び細胞性免疫応答を誘発する。(O)~(P)B細胞レパートリー分析の重鎖(O)及びカッパ鎖(P)分布。5%未満の使用は白色で示す。
【
図7-5】(Q)~(S)。S
MGワクチン接種は、BALB/cマウスにおいてSFGよりも強い体液性及び細胞性免疫応答を誘発する。(Q)~(S)抗Sタンパク質IgG力価(Q)、シュードウイルス中和力価(R)、及び真正ウイルス中和力価(S)は、SARS-CoV-2 WT(又はD614G)及びバリアントに対する提示したワクチンを3回投与した後にBALB/cマウスから単離された血清について示す(各棒の上の数字は、S
FG群と比較したS
MGの増加の倍率を示す)。pNT
50は、50%中和を達成する逆数希釈を示す。棒グラフにおける点線は、検出下限を示す。データは平均値±SEMとして示し、2つの実験群を比較するために、両側マン・ホイットニーU検定により分析したが、ただし(N)では、5つの試料をともにプールし、カイ二乗検定を使用した。P値は各棒の上に示した。
*P<0.05;
**P<0.01。
【
図8-1】(A)~(C)。S
MGワクチン接種によって誘発された抗体m31A7の機能的、予防的、及び構造的特性決定は交差中和能力を示唆している。(A)m31A7のS1、S2、RBD、又はS外部ドメイン全体へのELISA結合。(B)SARS-CoV-2 WT及びバリアントのSタンパク質を発現するHEK293T細胞へのm31A7結合のフローサイトメトリー分析。(C)WT又はバリアントのSタンパク質を有するシュードウイルスに対するm31A7の中和活性。(A)、(B)及び(C)に関する3つの技術的反復実験のデータは、平均値±SDとして示され、曲線はEC
50値の非線形回帰によりフィッティングされる。
【
図8-2】(D)~(F)。S
MGワクチン接種によって誘発された抗体m31A7の機能的、予防的、及び構造的特性決定は交差中和能力を示唆している。(D)K18-hACE2トランスジェニックマウス(n=3)に対する抗体注射及び抗原負荷スケジュールを示す。(E)~(F)m31A7又はPBSで処理したマウスについての体重変化(E)及び体温変化(F)を示す。データは平均±SEMとして表す。
【
図8-3】(G)。S
MGワクチン接種によって誘発された抗体m31A7の機能的、予防的、及び構造的特性決定は交差中和能力を示唆している。(G)m31A7 IgG及びFabのSタンパク質への結合速度を表し、解離定数(K
d)は上部に示している。
【
図8-4】(H)。S
MGワクチン接種によって誘発された抗体m31A7の機能的、予防的、及び構造的特性決定は交差中和能力を示唆している。(H)m31A7のHDX-MSによるエピトープマッピングを時間経過で示しており、2つのペプチド候補419~433及び471~482が15秒で10%を超えるΔHDXであることが明らかである。データは平均値±SDとして示し、各時点で複数のt検定により分析されている。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001。
【
図8-5】(I)~(J)。S
MGワクチン接種によって誘発された抗体m31A7の機能的、予防的、及び構造的特性決定は交差中和能力を示唆している。(I)m31A7-Fab/Sタンパク質複合体構造とフィッティングしたクライオ-EMマップを示す。重鎖、濃い緑色;軽鎖、薄い緑色;RBD、赤色;NTD、オレンジ色;S1の残り、薄い灰色;S2、濃い灰色;N-グリカン、青色。(J)RBD-m31A7境界面の拡大図を示す。星印は、m31A7軽鎖とN165-グリカンの間の近傍をマークしている。
【
図8-6】(K)~(L)。S
MGワクチン接種によって誘発された抗体m31A7の機能的、予防的、及び構造的特性決定は交差中和能力を示唆している。(K)以前に報告されているmAb S2E12(マゼンタ色)、COV253(ピンク色)、及びB1-182.1(水色)(PDB 7BEN、7K4N、及び7MLZ)のm31A7結合RBD(灰色)への重ね合わせ。受容体結合モチーフ及びRBD先端を強調表示している。(L)RBD(灰色)上のCOV253(ピンク色)及びm31A7(緑色)のフットプリント比較は類似性を示し、VOCの残基を赤い球体として示し描いている。
【
図9-1】(A)~(B)。デルタS
MGワクチン接種はSARS-CoV-2バリアントシュードウイルスに対するより多くの中和抗体を誘発した。(A)ワクチン接種のスキーム。BALB/cマウス(n=5)を、デルタS
FGワクチン又はS
MGワクチンで0週目及び2週目に2回免疫した。6週目に血清を採取し、続いてシュードウイルスアッセイを使用して中和能力を試験した。(B)野生型(WH01)を含むSARS-CoV-2バリアントシュードウイルス、並びにアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ及びオミクロンを含む懸念されるバリアント(VOC)に対する血清の50%逆数中和力価(pNT50)。データは平均(各棒の上に表示)±SEMとして示し、2つの実験群を比較するために両側マン・ホイットニーU検定により分析した。
*P<0.05。
【
図9-2】(C)。デルタS
MGワクチン接種はSARS-CoV-2バリアントシュードウイルスに対するより多くの中和抗体を誘発した。(C)異なる希釈の血清によって提供されたSARS-CoV-2バリアントシュードウイルス細胞感染の阻害(%)。データを平均±SEMとして示し、曲線はGraph Prism 9.0を使用した非線形回帰によりフィッティングさせた。
【
図10】(A)~(B)。デルタ又はWT S
MGワクチン接種は、SARS-CoV-2オミクロンバリアントシュードウイルスに対するより多くの中和抗体を誘発した。(A)ワクチン接種のスキーム。BALB/cマウス(n=5)を、デルタ/WT S
FG又はS
MGワクチンで0週目及び2週目に2回免疫した。血清を6週目に採取し、続いてシュードウイルスアッセイを使用して中和能力を試験した。(B)異なる希釈の血清によって提供されたSARS-CoV-2バリアントシュードウイルス細胞感染の阻害(%)。データを平均±SEMとして示し、曲線はGraph Prism 9.0を使用した非線形回帰によりフィッティングさせた。
【
図11-1】(A)~(B)。デルタS
MGタンパク質は、溶液又は粉末中で室温にて保存することができる。(A)~(B)2つのアミノ酸(pbs-aa)、50mMのL-アルギニン及び50mMのL-グルタミン酸を含むリン酸緩衝生理食塩水添加剤中のデルタS
MGタンパク質を、0.22μmフィルターを用いて濾過し、室温(RT)又は4℃で保存した。タンパク質を、3日、7日、14日、21日、及び3ヶ月を含む様々な時点で回収した。回収した試料を5X SDS-PAGE Loading Dyeと混合し、100℃で5分間加熱し、ゲル泳動するまで4℃で保存した。
【
図11-2】(C)。デルタS
MGタンパク質は、溶液又は粉末中で室温にて保存することができる。(C)異なる緩衝液及び凍結乾燥条件におけるデルタS
MGタンパク質の保存試験。50mMのL-アルギニン及び50mMのL-グルタミン酸含有又は非含有のPBSを、デルタS
HM又はS
MG(最初の3レーン)の4℃での保存について試験した。デルタS
MGを、賦形剤含有又は非含有で凍結乾燥試験を行い、RTで2週間以上保存した(最後の2レーン)。
【
図12】N末端ドメイン(NTD)、受容体結合ドメイン(RBD)、融合ペプチド(FP)、ヘプタペプチドリピート配列1(HR1)、ヘプタペプチドリピート配列2(HR2)、膜貫通ドメイン(TM)、細胞質ドメイン(CD)、及びS2サブユニットを含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に存在する高度に保存されたエピトープ(E1、E2、E3、E4、E5、E6及びE7)(配列番号41-47)の模式図を示す。
【
図13】SARS-CoV-2スパイクタンパク質のヘプタペプチドリピート配列2(HR2)に存在する高度に保存されたエピトープ(E8、E9、E10、E11、E12)(配列番号48-52)の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明では、同様の参照が同様の要素を示し、本開示が実施され得る特定の実施形態を例示として示す、添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本開示を実施することができるように十分詳細に説明されており、また、他の実施形態を利用することができ、論理的、構造的、機能的、及び他の変更を本開示の範囲から逸脱することなく行うことができることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味でとらえられるべきではない。
【0031】
本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、以下で特段の定義がされない限り、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有することを意図する。本明細書で使用される技術への言及は、当業者に明らかと予想されるそれらの技術の変形又は同等若しくは後で開発された技術の代替を含めた、当技術分野において一般的に理解されている技術を指すことを意図している。さらに本発明である主題をより明確かつ簡潔に説明するために、以下の定義が本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語について提供される。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに特段の指示をしない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「タンパク質」への言及は、1つのタンパク質又はそのようなタンパク質の混合物を指すことができ、「方法」への言及は、当業者に公知の同等のステップ及び/又は方法などの言及を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、「変異」という用語は、ウイルスのゲノム(遺伝子コード)における単一の変化を指す。変異は頻繁に起こるが、ウイルスの特性はたまにしか変化しない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「系列」という用語は、共通の祖先を有する密接に関連したウイルスの群を指す。SARS-CoV-2は多くの系列を有する。すべてがCOVID-19を引き起こす。
【0035】
本明細書で使用される場合、「バリアント」という用語は、1つ以上の変異を含み得るウイルスゲノム(遺伝子コード)を指す。いくつかの場合には、系列又は系列の群などの類似の遺伝的変化を有するバリアントの群は、公衆衛生上の措置を必要とし得る共通の属性及び特性により、懸念されるバリアント(VOC)又は関心のあるバリアント(VOI)として公衆衛生機関によって指定され得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、免疫原と組み合わせて使用した場合に、免疫原に対して誘導される免疫応答を増強又は変化又は改変する化合物を指す。免疫応答の改変には、抗体及び細胞性免疫応答のいずれか又は両方の特異性の強化又は拡大が含まれる場合がある。
【0037】
本明細書で使用される場合、数値の前にある「約」又は「およそ」という用語は、その数値にプラス10%又はマイナス10%の範囲を示す。例えば、「約100」は、90及び110を包含する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「免疫原性組成物」とは、組成物の対象への投与により、抗原に対する体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を対象において発達させる抗原を含む組成物である。
【0039】
本明細書に記載される場合、「スパイクタンパク質」及び「スパイク糖タンパク質」及び「コロナウイルススパイクタンパク質」という用語は、交換可能に使用される。
【0040】
本明細書で使用される「実質的に均質な」という用語は、組成物中に存在する糖タンパク質の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%が、1つの所望のグリコフォーム(例えば、モノ-GlcNAc-修飾)によって表され、組成物中に微量の望ましくないグリコフォームが存在することを意味することを意図する。「微量」とは、糖タンパク質組成物中に存在する任意の所与の望ましくないグリコフォームが、総糖タンパク質の5%未満、好ましくは4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、さらには0.5%未満、さらには0.1%未満で存在することを意図する。
【0041】
「処置する」、「処置」、及び「処置する」という用語は、本明細書で使用される場合、有益な又は所望の結果、例えば臨床結果を得るためのアプローチを指す。本開示の目的のために、有益な又は望ましい結果は、感染若しくは疾患の発症若しくは進行を阻害若しくは抑制すること;感染症若しくは疾患の症状を改善すること、若しくはその発症を軽減すること;又はそれらの組合せを含み得る。
【0042】
「予防する」及び「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、「発症予防(prophylaxis)」と交換可能に使用され、感染症の完全な予防、若しくはその感染症の症状の発生の予防;感染症又はその症状の発症の遅延;又は、その後に発生した感染症若しくはその症状の重症度の低下を意味し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、病原体感染の少なくとも1つの症状を軽減する免疫応答を誘導するのに十分な免疫原の量を指す。有効用量又は有効量は、例えば、中和分泌抗体及び/又は血清抗体の量を測定することによって、例えば、プラーク中和、補体固定、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、又はマイクロ中和アッセイによって決定することができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ワクチン」という用語は、コロナウイルス由来の免疫原などの免疫原性組成物(アジュバントの有無を問わない)を意味し、これは防御免疫(例えば、コロナウイルスによる感染から対象を保護する免疫及び/又はコロナウイルスによる感染によって引き起こされる状態の重症度を低減する免疫)を提供するコロナウイルスに対する免疫応答を誘導するために使用される。防御免疫応答は、抗体の形成及び/又は細胞性応答を含み得る。文脈に応じて、「ワクチン」という用語はまた、防御免疫を生成するために対象に投与される免疫原の懸濁液又は溶液を指し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語には、ヒト及び他の動物が含まれる。典型的には、対象はヒトである。例えば、対象は、成人、10代、子供(2歳~14歳)、幼児(誕生~2歳)、又は新生児(2ヶ月まで)であってよい。特定の態様では、対象は、生後4ヶ月以下、又は生後6ヶ月以下である。一部の態様では、成人は、約65歳以上、又は約60歳以上の高齢者である。一部の態様では、対象は、妊婦又は妊娠を希望する女性である。他の態様では、対象はヒトではない。例えば、ヒト以外の霊長類であり、例えば、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ、マカクである。ある特定の態様では、対象は、ペットであり、例えば、イヌ又はネコであり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、米国連邦政府又は州政府の規制機関によって承認されているか、米国薬局方、欧州薬局方、又は哺乳動物、より詳しくはヒトにおいて使用するために一般に認められている他の薬局方にリストされていることを意味する。これらの組成物は、脊椎動物において防御免疫応答を誘導するためのワクチン及び/又は抗原組成物として有用であり得る。
【0047】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こす、エンベロープ型ポジティブセンスの一本鎖RNAウイルスである。ウイルス粒子には、RNA遺伝物質及び宿主細胞の侵入に必要な構造タンパク質が含まれている。細胞内に入ると、感染性RNAは、ウイルス粒子を構成する構造タンパク質、ウイルスのアセンブリ、転写、複製、宿主制御を指示する非構造タンパク質、及び機能が決定されていないアクセサリータンパク質をコードするために使用される。SARS-CoV-2の構造タンパク質には、エンベロープタンパク質(E)、スパイク又は表面糖タンパク質(S)、膜タンパク質(M)、及びヌクレオキャプシドタンパク質(N)が含まれる。スパイク糖タンパク質はウイルス粒子の外側で確認されており、コロナウイルスウイルスに王冠様の外観を与える。この糖タンパク質は、ウイルス粒子の付着及び宿主細胞への侵入を媒介する。
【0048】
肺上皮細胞により生成されるSタンパク質は、感染力の増加に関連するグリコフォームを有する。完全にグリコシル化されたSタンパク質と比較して、モノGlcNAc装飾状態(SMG)にトリミングされたN-グリカンを有するSタンパク質で免疫すると、より強い免疫応答が誘発され、懸念されるバリアント(VOC)に対するヒトアンギオテンシン変換酵素2(hACE2)トランスジェニックマウスのより良好な保護が誘導された。さらに、広範中和モノクローナル抗体が、野生型SARS-CoV-2及びVOCをサブピコモル効力で中和することができるSMG免疫マウスから同定された。
【0049】
本開示の糖鎖改変型スパイクタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するバリアント、又はそのアミノ酸配列若しくはバリアントの免疫学的に活性な断片を含む。配列番号1のアミノ酸配列を以下に示す。
【0050】
【0051】
一実施形態では、本開示の糖鎖改変型スパイクタンパク質は、以下の配列番号2に示したアミノ酸を有するポリペプチドを含む。
配列番号2
【0052】
【0053】
本明細書に記載されているように、SARS-CoV-2の糖鎖改変型スパイクタンパク質又はそのバリアントは、(i)配列番号1に示すアミノ酸配列と実質的に同一である(例えば、配列番号2などの配列番号1と少なくとも90%、95%又は97%同一である);及び(ii)本明細書に記載のスパイクタンパク質をコードする任意の核酸配列に少なくとも中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるか、又は同義のコドン(例えば、同一のヌクレオチド配列を有していないが、同一のアミノ酸をコードするコドン)を使用するために、本明細書に記載のスパイクタンパク質をコードする任意の核酸配列に少なくとも中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる核酸配列によってコードされる、アミノ酸配列を含むものを含み得る。
【0054】
細胞特異的グリコフォーム分布、配列保存、グリカンシールド、及びそれらの相互相関の分析によって、本質的にすべてのグリカンシールドが除去されたSMGワクチンを設計するに至った。SARS-CoV-2 Sタンパク質のグリコシル化は、ウイルス感染、タンパク質の完全性、及び免疫応答に大きな影響を及ぼす。肺上皮細胞由来のSタンパク質は、受容体結合を促進するためにより多くシアリル化された複合型グリカンを含み、グリコサイトN801及びN1194は、Sタンパク質のフォールディング及びウイルス感染に必須であることが示された。これにより、保存されたエピトープが免疫系に対してより良好に露出されることになり、より効果的で広範な防御性のB細胞及びT細胞応答がウイルス及びバリアントに対して引き出され得る。
【0055】
本開示の糖鎖改変型コロンウイルススパイクタンパク質は、Sタンパク質外部ドメイン全体、特にグリカンによりシールドされた保存ドメインを標的とし、RBD及び非RBD中和抗体の両方の誘発と交差防御に重要なCD8 T細胞応答を刺激する。
【0056】
ある特定の態様では、本開示は、本明細書に記載の免疫原を含むワクチン又は医薬組成物を提供する。本開示はまた、コロナウイルス感染症を処置又は予防する方法であって、有効量の本明細書に記載の免疫原、医薬組成物、又はワクチンを、それを必要とする対象(例えば哺乳動物)に投与することを含む、方法を提供する。
【0057】
一実施形態では、ワクチンはアジュバントを含み得る。例示的なアジュバントには、限定するものではないが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、フロイント不完全アジュバント(IFA)、スクアレン、ミョウバン、アルハイドロゲル、MF59、QS-21、CpG 1018、AS03、AS37、Matrix-M、又はそれらの組合せが含まれる。
【0058】
ワクチン又は医薬組成物は、任意の適切な方法を使用して製剤化され得る。標準的な薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いる製剤化は、製薬技術における通常の方法を使用して実施することができる。製剤の正確な性質は、投与されるワクチン及び所望する投与経路を含めたいくつかの要因によって決まる。製剤の適切なタイプは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Company、Eastern Pennsylvania、USAに十分に記載されている。
【0059】
本明細書に記載のワクチン又は医薬組成物は、任意の経路により投与することができる。そのような方法は、例えば非経口的な適用、例えば皮膚への又は皮膚を介した、例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、粘膜、粘膜下、又は皮下のすべての注射経路による適用を含む。また、それらは、滴剤、スプレー剤、ゲル剤、又は軟膏として、目、鼻、口、肛門、若しくは膣の粘膜上皮、又は身体の任意の部分の外皮の表皮に局所適用により適用することができる。他の可能性のある適用の経路は、気道を介した吸入によるスプレー剤、エアロゾル剤、又は粉末剤の適用によるものである。あるいは、適用は、消化器経路を介してされ得る。ワクチン組成物の有効量は、限定するものではないが、種、血統、サイズ、身長、体重、年齢、患者の全体的な健康状態、製剤の種類、又は投与の様式若しくは方法を含む、任意の数の不確定要素に依存し得る。適切な有効量は、日常的な最適化技術、及び当業者の熟練した情報に基づいた判断、及び当業者に明白な他の要因を使用して、当業者によって日常的に決定することができる。
【0060】
一実施形態では、組成物は、追加の治療剤、例えば抗ウイルス剤などを含むことができる。提供される医薬組成物は、コロナウイルス感染症の処置に有用である。追加の抗ウイルス剤の例には、限定するものではないが、リバビリン、ペンシクロビル、ニタゾキサニド、ナファモスタット、クロロキン、レムデシビル(GS-5734)及びファビピラビル(T-705)、インターフェロン、アデホビル、テノホビル、アシクロビル、ブリブジン、シドホビル、フォミビルセン、フォスカルネット、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ザナミビル、レムデシビル、モルヌピラビル、及びパクスロビドが含まれる。
【0061】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されているすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾のある場合は、定義を含め、本明細書に従う。さらに、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【実施例0062】
[実施例1] 遺伝子構築物
SARS-CoV-2スパイク配列は、GISAIDデータベースからダウンロードした遺伝子配列に基づいて設計した。すべての入手可能なSARS-CoV-2株の総計1,117,474個のSタンパク質配列を、GISAID(鳥インフルエンザデータの共有についてのグローバルイニシアチブ(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data))データベース(バージョン:2021年4月18日)から抽出した。
【0063】
SARS-CoV-2 Wuhan/WH01/2019及びデルタバリアント由来のスパイクタンパク質のDNA配列をヒト細胞発現に最適化したコドンで合成した。フリン切断部位をGSAG(配列番号9)で置換し、2P置換はタンパク質が融合前状態を維持するように設計した。膜貫通ドメインは、トロンビン切断部位、foldon、及びスパイクのC末端のヒスチジンタグで置き換えた。改変されたHA配列をpTTベクターにクローニングし、タンパク質を発現し精製した。
【0064】
[実施例2] SARS-CoV-2Sタンパク質の発現及び精製
分泌型SARS-CoV-2スパイクをコードするプラスミドを、トランスフェクション試薬(ポリエチレンイミン又はFectoPROのいずれか)を使用することによって、HEK293EBNA(ATCC番号CRL-10852)又はHEK293S GnTI-細胞のいずれかのヒト胎児腎臓細胞株にトランスフェクトし、0.5%ウシ血清を補充したFreestyle 293発現培地(Invitrogen社)で培養した。上清をトランスフェクションの5日後に回収し、遠心分離により清澄化した。次に、スパイクタンパク質をニッケルキレートクロマトグラフィーで精製し、溶出画分をミリポア・アミコンウルトラフィルター(100kDa)により濃縮し、トリスベースの緩衝液(20mMのトリス/HCl、20mMのNaCl、50mMのグルタミン酸、50mMのアルギニン)で予め平衡化したsuperpose(商標)6ゲル濾過カラム(10/300 GL;GE社)上にロードし、対応する三量体画分を収集した。精製したSHMをEndo H(NEB)で一晩室温にて処理し、グリコシル化部位に単一GlcNAcを有するスパイクタンパク質、スパイクmgを生成した。Endo Hを除去するため、ミリポア・アミコンウルトラフィルター(100kDa)を使用した緩衝液交換によりSMGをさらに精製した。発現及び精製方法は、PNASに公表されている研究室の既存の研究から変更している。
【0065】
(
図1D)における糖鎖改変型シュードウイルスの生成は、以前の研究に従った(Y. Watanabe、J. D. Allen、D. Wrapp、J. S. McLellan、M. Crispin、Site-specific glycan analysis of the SARS-CoV-2 spike. Science 369、330~333頁(2020);Q. Yang、T. A. Hughes、A. Kelkar、X. Yu, K. Cheng、S. Park、W.-C. Huang、J. F. Lovell、S. Neelamegham、Inhibition of SARS-CoV-2 viral entry upon blocking N-and O-glycan elaboration. eLife 9、e61552 (2020))。グリコサイト特異的S変異体シュードウイルス(
図1F)を生成するため、HEK293T細胞に、各グリコサイトに変異を有するpVax-nCoV-SΔ19構築物とルシフェラーゼ発現HIV-1ゲノムプラスミド(pNL4-3.luc.RE)を一過的にトランスフェクトした。
【0066】
[実施例3] SMGタンパク質の特性決定
SMGタンパク質を特性決定するため、トリスベースの緩衝液(20mMのトリス/HCl、20mMのNaCl、50mMのグルタミン酸、50mMのアルギニン)で予め平衡化したENrich(商標)SEC 650(10×300カラム;Biorad社)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーを実施した。次いで、タンパク質試料の純度を確認するため、試料をローディング緩衝液と合わせ、7.5%のSDS-PAGEで分離し、クーマシーブリリアントブルー-プラス(EBL)で染色した。
【0067】
[実施例4] 質量分析によるグリコペプチド分析
2つの生物学的複製物からのSARS-CoV-2スパイクタンパク質の2つの20μgアリコートを、10mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンを含有する50mMの重炭酸トリエチルアンモニウム緩衝液中、55℃で1時間変性させた。次いで、スパイクタンパク質を、18mMのヨードアセトアミド(IAA)を添加することによって還元及びアルキル化し、暗所で30分間インキュベートした。アルキル化Envタンパク質は、1:10(w/w)の割合のキモトリプシン若しくはアルファ溶解性プロテアーゼ、又は1:20(w/w)の割合のトリプシンの異なる組合せを使用して別々に消化した。(Mass Spectrometry Grade、Promega社)。一晩消化した後、試料をSpeedVac濃縮器で乾燥させ、LC-MS/MS測定のために処理した。グリカンの分類は、Graphpad Prism 9.0.0によって検出及び可視化された組成に基づき以前の研究に従った。
【0068】
[実施例5] ワクチン接種実験及び抗原負荷実験
メスの6~7週齢のゴールデンシリアン・ハムスター(n=5)を、水酸化アルミニウム250μgと混合した25μgの精製SFG又はSMGタンパク質で0日目及び14日目に筋肉内免疫した。初回免疫から28日後、42日後に血液を採取し、各ハムスターから血清試料を回収した。ハムスターは、2回目のワクチン接種の4週間後に、1×104PFUのSARS-CoV-2 TCDC#4(hCoV-19/Taiwan/4/2020、GISAID登録ID:EPI_ISL_411927)をハムスターあたり100μLの量で経鼻的に抗原負荷した。各ハムスターの体重を、感染後、毎日記録した。抗原負荷後3日目に、ハムスターを二酸化炭素により安楽死させた。右肺をウイルス負荷決定(TCID50アッセイ)のために回収した。左肺を病理組織学的検査するため、4%パラホルムアルデヒドで固定した。すべての動物実験は、中央研究院(Academia Sinica)の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)により評価及び承認された。
【0069】
あるいは、2回投与スケジュールによるマウスワクチン接種のため、メスの6~8週齢BALB/cマウス(n=5)を、水酸化アルミニウム(50μg)と混合した10μgの精製SFG、SHM、又はSMGで0日目及び14日目に筋肉内免疫した。抗S IgG量、IgGサブタイプ、中和力価を評価するため(補足資料及び方法に記載)、血清を初回ワクチン接種後28日目に採取した。T細胞応答分析のため(補足資料及び方法に記載)、SFG又はSMG免疫化マウスのリンパ節を初回ワクチン接種後21日目に回収した。B細胞レパートリー分析及びバリアントに対する血清力価については、メスの6~8週齢BALB/cマウス(n=5)を、水酸化アルミニウム(20μg)と混合した20μgの精製SFG又はSMGで0、14、及び56日目に筋肉内免疫した。マウスを84日目に安楽死させ、抗S IgG及び中和力価を評価するために全血を採取し、Sタンパク質特異的B細胞を選別するための脾臓を採取した(補足資料及び方法に記載)。
【0070】
ハムスターワクチン接種及びウイルス抗原負荷を研究するため、オスの6~7週齢のゴールデンシリアンハムスター(n=5)を、水酸化アルミニウム(250μg)と混合した25μgの精製SFG又はSMGで0日目及び14日目に筋肉内免疫した。2回目の免疫から4週間後、各ハムスターに、100μlのPBS中の1×104TCID50のSARS-CoV-2(hCoV-19/Taiwan/4/2020)を経鼻的に抗原負荷した。体重を感染後に毎日記録した。抗原負荷後の3日目に、ハムスターを二酸化炭素により安楽死させた。左肺の上葉を組織病理学的検査のために10%パラホルムアルデヒドで固定し、残りの肺をウイルス量測定(TCID50アッセイ)のために回収した。
【0071】
トランスジェニックマウスのワクチン接種及びウイルス抗原負荷研究については、オスの6~8週齢のCAG-hACE2トランスジェニックマウス又はオスの12週齢のK18-hACE2トランスジェニックマウス(Jackson Laboratoryから購入)に、水酸化アルミニウム(50μg)と混合した10μgの精製SFG又はSMGを0日目及び14日目に筋肉内免疫した。CAG-hACE2トランスジェニックマウスに、2回目の免疫の4週間後に1×103TCID50のWT SARS-CoV-2を経鼻的に抗原負荷した。第1の試験(n=3)では、左肺の上葉の組織病理学的検査のため、すべてのマウスを7dpiで安楽死させた。第2の試験(n=7)では、肺ウイルス力価のため3匹のマウスを4dpiで安楽死させ、生存分析のため4匹のマウスを14dpiまで保持した。血清は、ウイルス抗原負荷の1日前に採取した。
【0072】
VOCを使用した抗原負荷の研究については、CAG-hACE2マウスを、マウスあたりPBS 50μl中のSARS-CoV-2のアルファバリアント(hCoV-19/Taiwan/792/2020)(n=5)又はガンマバリアント(hCoV-19/Taiwan/906/2021)の1×103TCID50で抗原負荷した。さらに、K18-hACE2マウスは、マウスあたりPBS 50μl中のデルタSARS-CoV-2(hCoV-19/Taiwan/1144/2021)(n=4)1×104TCID50で、2回目の免疫の4週間後に経鼻的に抗原負荷した。すべてのSARS-CoV-2バリアントの抗原負荷モデルについて、各マウスの体重を14dpiまで毎日記録した。
【0073】
抗体の予防的防御試験については、オスの8週齢K18-hACE2トランスジェニックマウス(n=3)に、m31A7(15mg/kg)又はPBSを腹腔内注射し、その後1×103TCID50のWT SARS-CoV-2(hCoV-19/Taiwan/4/2020)を経鼻的に抗原負荷した。体重及び体温を5dpiまで毎日記録した。すべての動物実験は、中央研究院の動物実験委員会によって評価及び承認された(承認番号21-10-1716、18-12-1272、及び20-10-1522)。
【0074】
[実施例6] 組織学及び免疫組織化学(IHC)染色
3dpiのハムスター肺を直ちに回収し、10%中性緩衝ホルマリン固定に24時間置いた後、70%エタノールに72時間移した。パラフィン包埋した肺組織を5mmの厚さに切り取った。組織学的染色については、組織をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。免疫組織化学(IHC)染色については、切片化した組織をキシレンで脱パラフィンし、エタノール勾配で再水和した。抗原賦活化は、スライドを10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中で10分間、95℃に電子レンジで加熱することにより実施した。室温で冷却し、PBSで洗浄した後、3%のH2O2を適用して内因性ペルオキシダーゼ活性を除去した。切片化した組織を1X PBST中の5%正常ヤギ血清及び1%のBSAで1時間ブロッキングし、続いて1:50希釈のウサギ抗N及び抗S一次抗体(抗SARS-CoV-2ポリクローナル抗体)と一晩4℃でインキュベートした。次いで、組織を1:500希釈のヤギ抗ウサギHRP二次抗体と1時間インキュベートし、3,3-ジアミノベンジジン(DAB)基質とインキュベートすることにより可視化し、ヘマトキシリンで対比染色した。
【0075】
[実施例7] 免疫蛍光(IF)染色
免疫蛍光染色については、抗原賦活化ステップの後、組織をPBS中のトリトンX-100で透過処理した。切片化した組織を1X PBST中の5%の正常ヤギ血清及び1%のBSAで1時間ブロッキングした。次いで、自家蛍光クエンチャーで5分間インキュベートした。続いて、試料を1:50希釈のウサギ抗N及び抗S一次抗体(抗SARS-CoV-2ポリクローナル抗体)と一晩4℃でインキュベートし、二次抗体Alexa Fluor-488(1:500、Thermo Fisher社)と室温で1時間インキュベートし、核色素の4,6-ジアミジノ-2フェニルインドール(DAPI)と3分間、室温でインキュベートした。カバースリップを顕微鏡スライドにマウントし、HC PL APO CS210x/1.40レンズ(Leica社、Wetzlar、Germany)を取り付けたLeica TCS SP8X共焦点顕微鏡で画像化した。
【0076】
[実施例8] トランスジェニックマウスのワクチン接種実験及び抗原負荷実験
オスの8週齢CAG-hACE2トランスジェニックマウス(n=3)に、水酸化アルミニウム50μgと混合した精製SFG又はSMGタンパク質10μgで0日目及び14日目に筋肉内免疫した。血液を初回免疫後の28日目及び42日目に回収し、血清試料を各トランスジェニックマウスから採取した。ハムスターに、1×103 PFUのSARS-CoV-2 TCDC#4(hCoV-19/Taiwan/4/2020、GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_411927)をマウスあたり100μLの量で、2回目のワクチン接種の6週間後に経鼻的に抗原負荷した。各トランスジェニックマウスについて体重及び生存率を感染後毎日記録した。抗原負荷後の7日目に、すべてのトランスジェニックマウスを二酸化炭素で安楽死させた。肺を組織病理学的検査のために4%パラホルムアルデヒドで固定した。すべての動物実験は、中央研究院の動物実験委員会によって評価及び承認された。
【0077】
[実施例9] 細胞培養感染アッセイによる肺組織中のウイルス力価の定量化(TCID50)
ハムスターの中肺葉、下肺葉、及び後肺葉を、ホモジナイザーを使用して、2%のFBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMの600μl中でホモジナイズした。組織ホモジネートを15,000rpmで5分間遠心分離し、上清を生ウイルス力価測定のために回収した。簡単に説明すると、各試料の10倍連続希釈物を4つの組でVero E6細胞単層に添加し、4日間インキュベートした。次いで、細胞を10%ホルムアルデヒドで固定し、0.5%のクリスタルバイオレットで20分間染色した。プレートを水道水で洗浄し、感染についてスコア化した。50%組織培養感染量(TCID50)/mLは、Reed and Muench法によって算出した。
【0078】
[実施例10] マウスワクチン接種研究
メスの6~8週齢BALB/cマウス(n=5)に、水酸化アルミニウム20μgと混合した精製SFG又はSMGタンパク質20μgで0日目、14日目及び56日目に筋肉内免疫した。第3回の免疫後14日目に血液を採取し、各マウスから血清試料を回収した。すべての動物実験は、中央研究院の動物実験委員会によって評価及び承認された。
【0079】
[実施例11] 血清抗体価の評価
血清IgG価を決定するために抗S ELISAを使用した。プレートを5%スキムミルクでブロッキングし、マウスポリクローナル抗S一次抗体及びHRP結合二次抗体を順次添加した。ペルオキシダーゼ基質溶液(TMB)及び1MのH2SO4停止溶液を使用し、吸光度(OD450nm)をマイクロプレートリーダーにより読み取った。試験した株には、SARS-CoV-2(野生型、バリアントB.1.1.7及びB.1.135)、RnGT13、並びにSARS-CoV-1が含まれていた。
【0080】
m31A7抗体をシングルB細胞スクリーニングアッセイにより単離し、次いで、特性決定した。プライマーは、以前の刊行物に基づいて設計した(T. Tiller、C. E. Busse、H. Wardemann、Cloning and expression of murine Ig genes from single B cells. J. Immunol. Methods 350、183~193頁(2009))。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を50℃で30分間、95℃で15分間実施し、続いて94℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で1分間のインキュベーションを40サイクル行い、72℃で10分間、最終伸長を行った。セミネステッドセカンドラウンド(Seminested second-round)PCRは、KOD One PCRマスターミックス(TOYOBO社)を使用し、1μlの未精製のファーストラウンドPCR産物で、98℃で2分間実施し、続いて98℃で10秒間、55℃で10秒間、68℃で10秒間の45サイクルのインキュベーションを行い、68℃で1分間、最終伸長を行った。次いで、PCR産物を電気泳動及びシーケンシングによって分析した。Ig V及びL遺伝子は、international ImMunoGeneTics information system(http://imgt.org/IMGT_vquest/input)により同定した。次いで、ヒトIgH又はIgL発現バックボーンを含むベクターにクローニングするための制限部位を含む単一遺伝子特異的V及びL遺伝子プライマーを用いて、セカンドラウンドPCR産物から遺伝子を増幅した。キメラIgH及びIgL発現構築物を抗体産生用のExpi293にコトランスフェクトした。m31A7を単離した後、続いて、抗体をELISA及び蛍光活性化セルソーティング、シュードウイルス中和効力、結合速度、エピトープマッピング、及び構造決定によってSタンパク質結合について評価した。
【0081】
[実施例12] シュードウイルス中和アッセイ
シュードタイプのレンチウイルスベクターの感染単位を決定するため、本発明者らは、感染の1日前に、96ウェル(ウェルあたり100μL)組織培養プレートに293T-ACE2細胞を適切な密度で播種した。一晩インキュベートした後(37℃、5%CO2)、100mLの3種のプレミックスしたシュードウイルス上清、及び免疫化マウス血清の4倍連続希釈液を播種した細胞に添加した。細胞を48時間、37℃/5%CO2でインキュベートし、ナノルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現させた。ルシフェラーゼ活性は、ELISAリーダーによって測定した。阻害パーセントは、次式100*[1-(RLU試料/RLU偽性-処置)]によって算出した。データはGraphpad Prismを使用して分析し、pNT50値はすべての試料について50%阻害濃度値を取得することにより算出した。
【0082】
[実施例13] プラーク減少アッセイ
Vero E6細胞を、感染の1日前に24ウェル培養プレートに10%FBS及び抗生物質を含むDMEMで播種した。SARS-CoV-2を抗体と37℃で1時間インキュベートした後、細胞単層にさらに1時間加えた。その後、ウイルス-抗体混合物を除去し、細胞単層をPBSで1回洗浄した後、1%メチルセルロース含有培地で5~7日間覆った。細胞を10%ホルムアルデヒドで一晩固定した。オーバーレイ培地を除去した後、細胞を0.7%クリスタルバイオレットで染色し、プラークをカウントした。阻害のパーセンテージは[1-(VD/VC)]×100%として算出され、式中、VD及びVCは、それぞれ血清の存在下及び非存在下におけるウイルス力価を指す。
【0083】
CPEベースの中和アッセイについては、Vero E6細胞を2×105細胞/ウェルで6ウェルプレートに一晩で90%コンフルエンスになるようプレーティングした。血清とウイルスを混合した後、単層にさらに1時間加えた。プレートを室温で30分間固化させ、次いで37℃で細胞変性効果(CPE)が観察されるまでインキュベートする。
【0084】
統計分析:すべてのデータは、平均±平均の標準誤差として表される。すべての分析において、P値は、スチューデントt検定(対応、両側)を使用した曲線比較を除き、スチューデントt検定(対応なし、両側)から取得した。すべてのグラフは、GraphPad Prismのバージョン9.0.0ソフトウェアで作成した。
【0085】
[実施例14] 糖鎖改変型モノ-GlcNAc修飾スパイク(S
MG)タンパク質ワクチンの設計及び特性決定
元のSARS-CoV-2武漢株(hCoV/Wuhan/WH01/2019)からの配列(アミノ酸14~1209)を有する組換えネイティブは、ヒト細胞発現用に最適化されたコドンであり、元のフリン切断部位を置き換えるGSAG(配列番号9)残基と、スパイクネイティブを融合前状態で固定する2個のプロリン変異を有し、そのC末端にフォルドン三量体化配列及びHisタグが付加され、ヒトHEK293S細胞で発現される(
図1)。分岐記号で示した(
図1a)すべてのN-グリカンがMan5 N-グリカンである、中間体高マンノース型スパイク組換えネイティブ(S
HM)が最初に得られ、精製した。次いで、エンドグリコシラーゼEndoHを使用し、過剰のグリカンを除去し、最終生成物のモノグリコシル化スパイクネイティブを生成した(
図1b)。精製S
MGは、溶液中の見かけの分子量が約520kDaで、高純度三量体である(
図1c及び
図1d)。N-グリカンの除去によるサイズの縮小は、通常のS
FG及び中間体S
HMと比較し、SDS-PAGEにより分析した(
図1d)。S
MGの質量分析からは、ほとんどのN-グリコシル化部位は、GlcNAcが90%を超えるN603及びN1194を除き、ほぼ100%の単糖、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を含むことが示された(
図1f)。反対に、元の完全グリコシル化スパイクネイティブは、複合型、ハイブリッド型などを含むすべてのそのN-グリコシル化部位に異種性N-グリカンを有する。
【0086】
[実施例15] S
MGワクチンはインビボでSARS-CoV-2及びバリアントに対して優れた防御を提供する
SARS-CoV-2に対するS
MGワクチンのインビボでの防御効果を評価するために、本発明者らは、まず、S
MG又はS
FGをワクチン接種したシリアンハムスターでWT SARS-CoV-2抗原負荷を実施した(
図2A)。S
MGをワクチン接種したハムスター(n=5)は、S
FG群及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)群と比較して体重の減少が少ないことが観察されたが(
図2B)、S
FG及びS
MGの両方のワクチン接種した両ハムスターの肺で同様のウイルス力価が減少することが観察された(
図2C)。さらに、組織病理学的染色及び抗ヌクレオカプシド(N)タンパク質免疫染色データによると、免疫したハムスターの肺では病変がより少ないことが観察された(
図2D)。ハムスターがSARS-CoV-2感染の際に軽度~中等度の病態しか示さなかったので、本発明者らは、その後、重症疾患モデルの高感受性CAG-hACE2(C.-Y. Tsai、C.-Y. Chen、J.-T. Jan、Y.-C. Chou、M.-L. Chang、L. A. Lu、P.-Y. Huang、M. F. C. Chul、T.-T. Hsu、Y.-P. Hsueh、Sex-biased response to and brain cell infection by SARS-CoV-2 in a highly susceptible human ACE2 transgenic model.bioRxiv、2021)又はK18-hACE2(E. S. Winkler、A. L. Bailey、N. M. Kafai、S. Nair、B. T. McCune、J. Yu、J. M. Fox、R. E. Chen、J. T. Earnest、S. P. Keeler、J. H. Ritter、L.-I. Kang、S. Dort、A. Robichaud、R. Head、M. J. Holtzman、M. S. Diamond、SARS-CoV-2 infection of human ACE2-transgenic mice causes severe lung inflammation and impaired function. Nat. Immunol.21、1327~1335頁(2020)トランスジェニックマウスを使用した(
図2E)。CAG-hACE2マウスにおける抗S IgG結合力価、中和力価、抗SサブタイプIgG、及びIgG2c:IgG1比の分析(
図2、F~I)は、すべてBALB/cマウス(
図6、C~G)と同様の結果を示した。WT SARS-CoV-2を経鼻的に抗原負荷した後、ウイルスは、感染後7日目の抗N染色(dpi)(
図2J)又は4dpiでの中央組織培養感染量(TCID
50)アッセイによって(
図K)、S
FG及びS
MGワクチン接種されたCAG-hACE2マウス(n=3)の両肺で検出されなかったが、TCID
50が1,000を超えるウイルス力価が対照群で観察された(
図2K)。S
MG群(n=4)は、14dpiでS
FG(50%)よりも良好な生存率(75%)を示した(
図2、L及びM)。次いで、本発明者らは、CAG-hACE2マウス(n=5)においてアルファバリアントによる抗原負荷に対するS
MGワクチン接種により付与された防御の程度を評価した。本発明者らは、S
MGワクチン接種により14dpiまで100%の生存率が得られることを確認した(
図2、N及びO)。またS
MGワクチン接種したマウスは、CAG-hACE2マウス(n=5)のガンマバリアント抗原負荷で60%の生存率を示し(
図22P及びQ)、K18-hACE2マウスのデルタバリアント抗原負荷で75%の生存率を示したが(n=4)(
図4R及びS)、50%未満のS
FGワクチン接種したマウスは、ガンマバリアント及びデルタバリアントの抗原負荷で14dpiまで生存した(
図2、Q~S)。S
MGワクチン接種によって付与されたインビボ防御における改善は、免疫原からグリカンシールドを除去することが優れた免疫応答を誘発する有利な戦略であるということのさらなる証拠を提供している。
【0087】
[実施例16] S
MGワクチン接種はトランスジェニックhACE2マウスにおいて致死量SARS-CoV-2感染に対してより良好な防御を提供する
CAG-hACE2トランスジェニックマウスは、SARS-CoV-2ウイルスに感染した場合、重篤な疾患を発症し、死亡し得る。S
FG、S
MGのワクチン、又はアジュバントのみを0日目及び14日目に筋肉内に2回投与し、28日目及び42日目に血清を採取し、1×10
3TCID
50のSARS-CoV-2を使用し、各マウスに経鼻的に感染させた(
図3a)。S
MG免疫したマウスのスパイク特異的抗体IgG力価は、S
FG群よりも1.9倍高く(40,000対20,000)、S
MGの中和力価は、S
FG群よりも2.8倍高い(
図3b及び
図3c)。驚いたことに、この重症疾患モデルにおいては、体重の急速な減少及びウイルス感染後7日目までにすべてのモデルが死亡したことからわかるように、S
FGワクチン接種はCAG-hACE2トランスジェニックマウスを重症疾患から防御することはできなかった。S
FGワクチン接種群の疾患進行は、アジュバントのみの群よりもわずかに良好であった(
図3d及び
図3e)。反対に、S
MGワクチン接種した群は、わずかな体重減少を示し、すべてがSARS-CoV-2感染で生存する。この結果は、SARS-CoV-2重症疾患トランスジェニックマウスモデルにおけるS
MGワクチン接種の優位性を示している。
【0088】
[実施例17] SARS-CoV-2バリアントに対する結合及び中和の幅及び効力を増強するためにマウスにおいてS
MGワクチンにより誘導された抗体
次いで、本発明者らは、懸念される新たに出現したSARS-CoV-2バリアントを中和する能力に関して、武漢株由来のスパイクネイティブ配列を有するS
FG又はS
MGのいずれかのワクチン接種から誘発される抗体応答に差異があるかどうかを分析した(
図4)。S
FGと比較して、S
MG免疫化は、WT(武漢株)由来のスパイクネイティブだけでなく、バリアントD614G、B.1.1.7、B.1.351、bat CoV RnGT13、及びSARS-CoV-1にも結合する優れたスパイク特異的抗体IgGを誘発した(
図4b)。SARS-CoV-2バリアントのシュードウイルスを使用し、ワクチンで免疫した血清から感染を中和する能力を測定した。繰り返すと、S
MG免疫からの血清は、D614G、B.1.1.7、及びB.1.351のシュードウイルスに対して優れた中和能力を持ち、それぞれ、S
FG誘導血清よりも1.4倍、2.7倍、及び1.5倍優れている(
図4c及び
図4d)。最後に、SARS-CoV-2実在ウイルスD614G及びB.1.1.7をプラーク減少中和アッセイで使用した(
図4e及び
図4f)。S
MGワクチン接種は、S
FGワクチン接種と比較して、D614G及びB.1.1.7バリアントに対する良好な中和抗体応答を誘発し、それぞれ2.0倍及び1.4倍良好である。
【0089】
[実施例18] グリコシル化はいくつかの細胞型上のACE2と相互作用するシュードウイルスSタンパク質に影響する
グリコシル化の重要性を理解するため、本発明者らは、感染の主要細胞である肺上皮細胞からSタンパク質を発現させ、Sタンパク質のシアリル化が受容体への高いアビディティに必要であることを見出した(
図5A)。同様のパターンは、HEK293T細胞で生成されたSタンパク質でも観察され(
図5B)、アビディティはまた、高マンノース型グリカンのみを含むSタンパク質の場合に、又はすべてのN-グリカンが単一N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)にトリミングされたグリコフォームの形態で低下した(
図5C)。そのグリコシル化の影響を、ヒトアンギオテンシン変換酵素2(hACE2)を発現するHEK293T細胞でのシュードウイルス感染によりさらに試験し、同量のウイルスが適用された場合、一貫した傾向が見られた(
図5D)。このことから、複合型グリカン及びシアリル化がSタンパク質媒介型の感染力にとって機能的に重要であると結論付けることができた。HEK293T、Vero-E6、並びに3つのヒト肺細胞株、A549細胞、Calu-1細胞、及びCalu-3細胞を含む5つのhACE2発現細胞株におけるウイルス侵入効率を評価するため、24種のレンチウイルスベースのシュードウイルスバリアント(22種のN-グリコサイト及び2種のO-グリコサイトを含む)の完全なパネルも作製した(
図5、E~G)。これらのシュードウイルスは、C末端の19アミノ酸が欠失したS構築物をベースにしており、最も高いウイルス力価を示した。シュードウイルス産生をp24イムノアッセイにより定量し、結果を各変異株の力価に対して正規化した(
図5F)。N-グリコサイトのアスパラギン(Asn)をすべてグルタミン(Gln)に置換し、それらの化学的な類似性という理由によって構造への影響を最小限にし、各O-グリコサイトスレオニン(Thr)又はセリン(Srn)はアラニン(Ala)に置換した。変異誘発によってアミノ酸が変化したので、結果として生じる感染力の変化は、受容体結合に影響を及ぼすグリコシル化関連の構造シフト、並びにタンパク質の発現、フォールディング、輸送により影響を受けるSタンパク質の表面存在量を含む、複合的要因から生じる。結果から、Sタンパク質グリコシル化の破壊により感染力が低下することが明らかであった。受容体結合ドメイン(RBD)の2つの変異、N331Q及びN343Q、並びに2つのO-グリコサイトの変異(T323A及びS325A)での実質的な低下が、後者の占有率が低いにもかかわらず、観察された(
図5G)。さらに、N末端ドメイン(NTD)のN122グリコシル化の欠失により、感染力が低下し、タンパク質発現が低下した(
図5G)。2つのNTD変異、N149Q及びN165Qは、それぞれ、Vero-E6細胞及びCalu-1細胞で感染力を増加したが、他の細胞では感染力の低下が観察された(
図5G)。このN165残基に結合したグリカンは、三量体Sタンパク質において隣接するRBDに構造的に近位にあり、おそらくRBDの「ダウン」状態への構造シフトへの理由によって、その変異がACE2結合を低下させることに留意されたい。本発明者らは、5つの細胞すべてでウイルス感染力を普遍的に消失させた、N801Q及びN1194Qの2つの変異体を同定した(
図5F)。グリコサイトN801は融合ペプチド近位領域(FPPR)近くに位置しており、N1194はヘプタッドリピート2(HR2)ヘリックスの中心近くにあり、膜貫通ドメインに先行する最後のN-グリコサイトである(
図5E)。これらの変異体は、両方とも低収量発現を引き起こした。N801Q変異体はより分解されやすく、N1194Q変異体はSタンパク質の三量体化を阻害し、これらの変異を持つシュードウイルスによる感染力の低下を説明する一因であり得る。
【0090】
[実施例19] 肺上皮細胞由来のSタンパク質は、より多くのシアリル化複合型グリカンを含み、Sタンパク質中の高度に保存されたエピトープはグリカンによって大部分がシールドされている
Sタンパク質のグリカンのプロファイル分析の結果、ヒト腎臓上皮細胞株HEK293Tで産生されるSタンパク質(それぞれ、61%及び23%)と比較して(
図6B)、ヒト肺上皮細胞株BEAS-2Bでは、Sタンパク質の複合型グリカンがより多く生成され(78%)、ハイブリッド型グリカンの生成は少なかった(1%未満)(
図6A)。高マンノース型グリカンのうち、N-結合型マンノース-5グリカン(man5)は、HEK293T発現Sタンパク質全体に見られる優勢な種類であったが、BEAS-2B細胞のN61部位にのみ見られた。さらに、BEAS-2B細胞のN74、N149、N282、及びN1194部位の複合型グリカンは、HEK293T細胞のものよりも多様に処理された(複数のアンテナ、ガラクトシル化、フコシル化、又はシアリル化)。反対に、N122、N331、N1098、及びN1134の部位のグリカンは、それほど多様ではなかった。さらに、N149及びN17は、コアフコースをBEAS-2Bで有していなかった。本発明者らは、BEAS-2Bの22種のN-グリコサイトすべてでのシアリル化(53%)が、HEK293T(35%)、HEK293E(26%)、又は以前に報告されたHEK293F細胞(15%)(Y. Watanabe、J. D. Allen、D. Wrapp、J. S. McLellan、M. Crispin、Site-specific glycan analysis of the SARS-CoV-2 spike. Science 369、330~333頁(2020))のシアリル化よりも全体的に高程度であることを観察した。特に、RBDの2つのN-グリコサイト(N331及びN343)は、HEK293T(49%及び15%)よりも、BEAS-2B(99%及び39%)でよりシアリル化されている。違いはあるものの、すべての細胞型のSタンパク質は、S2ドメインの中央部分付近に位置する非複合型グリカンベルトを含み(
図6C)、ここで、N-グリコサイトN801は感染において重要であり(
図5G)、N1074は多様なグリカンを含み、N717はSタンパク質発現に必須である。
【0091】
モデル化したSARS-CoV-2のSタンパク質構造とBEAS-2B細胞からのグリカンのプロファイルから、本発明者らは、タンパク質表面領域上のグリカンカバレッジの構造解析を行い、1,117,474個のSタンパク質配列を使用してマルチプルアラインメント結果を重ね合わせた(S. Elbe、G. Buckland-Merrett, Data, disease and diplomacy: GISAID’s innovative contribution to global health. Global Chall.1、33~46頁(2017))。RBDの下部側面、非複合型グリカンベルトを含むS2ステム領域、並びに接続ドメイン(CD)及びHR2が関与するS2のC末端部分を含む、高度に保存されているがグリカンによってシールドされている、いくつかの領域が明らかになった(
図6、D及びE)。一次配列レベルでは、これらの領域は保存されたエピトープとして示された。配列保存分析はまた、ほとんどのグリコサイト領域が高度に保存されていることを示し、最も保存されているもの(変異率が0.02%未満)には、NTD(N61、N122、N165、及びN234)、RBD(S325、N331、及びN343)、サブドメイン1/2(SD1/2)(N603及びN657)、サブユニット2(S2)のステム領域(N709、N1098、N1134、N1158、N1173、及びN1194)、並びにFPPR近くのN801のものが含まれていた。これらの領域のほとんどは、約20~40%の保存された表面残基を含み、そのうち、RBDでは36%、他の領域では約50%の、ある一定の割合の残基がグリカンによってシールドされていた。N-グリコサイトを有していないが、HR1領域は、隣接するドメインに由来するグリカンによって覆われている69%の保存された表面残基を有していた。これらの結果から、構造的にも進化的にもSタンパク質グリコシル化の重要性が強調され、グリカンでシールドされた保存領域の露出により、保存されたエピトープに対する免疫応答が誘発される可能性があるという考えが得られた。(12個の保存されたエピトープをワクチンの標的として説明することがより重要である。12個のエピトープのうち10個はグリカンによってシールドされている。シールドされたグリカンを除去することにより、保存されたエピトープが露出し、広範な防御反応が誘発される。)
【0092】
[実施例20] S
MGはワクチンとして開発され、S
MGワクチンは異なる抗体サブクラスを使用してより良好な免疫応答を誘発した
複数のグリコサイトを変異させる本発明者らの最初の試みは、Sタンパク質の発現を著しく低下させるに至った。しかし、本発明者らがGnTI HEK293S細胞からそれを発現させた場合、高マンノース型グリコフォームSタンパク質(S
HM)を良好な収率及び純度で生成することができた。次いで、本発明者らはエンドグリコシダーゼH(Endo H)を使用してグリカンを各N-グリコサイトで単一GlcNAcにトリミングし、本発明者がS
MGと称する可溶性トリマーモノ-GlcNAc修飾Sタンパク質を生成した(
図7A)。S
MGは、質量分析により、すべてのN-グリコサイトが単一GlcNAcでほとんど占有されていることが確認され、未処理のO-グリカンの占有率は低すぎて検出されなかった。この改変S
MG、S
HM、及び元の完全グリコシル化Sタンパク質(S
FG)を、アジュバントとして水酸化アルミニウム(ミョウバン)と混合し、次いで、筋肉内注射によりBALB/cマウス(n=5)を免疫するために使用した(
図7B)。この研究で比較に使用したS
FGは、HEK293E細胞により発現され、多様なグリカンを含んでいた。これは、Sanofi社及びNovavax社の昆虫細胞発現Sタンパク質ワクチン(P. J. Klasse、D. F. Nixon、J. P. Moore、Immunogenicity of clinically relevant SARS-CoV-2 vaccines in nonhuman primates and humans. Sci. Adv.7、eabe8065(2021))、Medigen社のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞発現組換えSワクチン(T.-Y. Kuo、M.-Y. Lin、R. L. Coffman、J. D. Campbell、P. Traquina、Y.-J. Lin、L. T.-C. Liu、J. Cheng、Y.-C. Wu、C.-C. Wu、W.-H. Tang、C.-G. Huang、K.-C. Tsao、C. Chen、Development of CpG-adjuvanted stable prefusion SARS-CoV-2 spike antigen as a subunit vaccine against COVID-19.Sci. Rep.10、20085(2020))、AstraZeneca社及びJohnson & Johnson社のアデノウイルスベースのワクチン、並びにPfizer-BioNTech社及びModerna社のmRNAワクチン(P. J. Klasse、D. F. Nixon、J. P. Moore、Immunogenicity of clinically relevant SARS-CoV-2 vaccines in nonhuman primates and humans. Sci. Adv.7、eabe8065(2021))を含めた、承認済み又は臨床試験中の多くの現行のCOVID-19ワクチンで使用されている免疫原に似ている。S
FGタンパク質及びS
MGタンパク質の両方とも、ネガティブ染色分析により、溶液中で本質的に同じ三量体構造を示す。
【0093】
S
MGで免疫したマウスは、S
FGと比較して、1.44倍の有意に高いSタンパク質に対する免疫グロブリンG(IgG)力価で(エンドポイント力価:S
FG、39,408±1,619;S
MG、56,957±5,091;P=0.0079)(
図7C)、また3.6倍の強いSARS-CoV-2シュードウイルス感染の阻害に基づいた抗体中和効力で(半値逆数中和力価pNT
50:S
FG、1346±285;S
MG、4791±767;P=0.0159)(
図6D)で、2回目の免疫後に優れた体液性免疫応答が誘導され、一方、S
HM免疫群は、S
FG群と比較して、同様の抗S IgG力価(39,086±11,654)を示し、pNT
50力価に差はなかった。IgGサブタイプ力価及び濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞によるインターフェロン-γ(IFN-γ)又はインターロイキン-4(IL-4)産生の分析から、S
MGワクチンは、S
FG及びS
HMワクチン接種群と比較して、BALB/cマウスにおけるTヘルパー1細胞(T
H1)リンパ球のマーカーであるIgG2aをより多く誘導し、よりバランスのとれたT
H1/T
H2応答を誘導し、より多くのIFN-γ発現Tfh細胞を誘導したことが確認された(
図7、E~J)。さらに、S
MGワクチンは、より高頻度のIL-21
+Tfh細胞を誘導し(
図7K)、グランザイムB産生CD8
+T細胞の頻度の上昇を誘導した(
図7L)。これらのデータにより、S
FGによって誘導されるものと比較して、より強力な体液性及び細胞性適応免疫応答がS
MGによって誘発されることが示唆された。次いで、本発明者らは、S
FG又はS
MGの3回目投与後に免疫されたマウスの脾臓から得たSタンパク質特異的B細胞(CD3
-CD19
+S
+)の頻度を試験したところ(
図6A)、S
MGで免疫したマウスは、より多くのSタンパク質特異的B細胞を生成することが確認された(
図6M)。S
FGで免疫したマウス及びS
MGで免疫したマウス(n=5)からのB細胞レパートリー分析からは、S
FG群におけるものと比較して、S
MG群ではより多くのラムダ軽鎖遺伝子が使用されたことが示された(S
FG、1.92%;S
MG、9.68%)(
図7N)。さらに、Ig重鎖可変領域(IGHV)(
図7O)及びIgカッパ鎖可変領域(IGKV)遺伝子(
図7P)、特にIGHV1-18遺伝子(
図7O)のいくつかの特定の遺伝子座に由来する抗体は、S
FG群よりもS
MG群においてより多く示された。この発見は、B細胞エピトープがこれら2つの群において異なってプロセッシングされる可能性があることを示唆しており、この違いが免疫学的に有益であるかどうか、またなぜそうであるのかについてさらに調査する必要がある。さらに、3回S
MGワクチン接種は、野生型(WT)Sタンパク質に対する2回ワクチン接種よりも高いエンドポイント力価IgGを誘発した(エンドポイント力価:S
FG、208,911±50,092;S
MG、376,410±80,873)。本発明者らは、アルファ(B.1.1.7;P=0.0488)、ベータ(B.1.351;P=0.0010)、ガンマ(P.1;P=0.0068)、及びデルタ(B.1.617.2;P=0.0068)を含む、SARS-CoV-2 VOC由来のSタンパク質に対する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定した血清IgG結合曲線において、S
MG群とS
FG群の間の差異を観察したが(P. R. Krause、T. R. Fleming、I. M. Longini、R. Peto、S. Briand、D. L. Heymann、V. Beral、M. D. Snape、H. Rees、A.-M. Ropero、R. D. Balicer、J. P. Cramer、C. Munoz-Fontela、M. Gruber、R. Gaspar、J. A. Singh、K. Subbarao、M. D. Van Kerkhove、S. Swaminathan、M. J. Ryan、A.-M. Henao-Restrepo、SARS-CoV-2 variants and vaccines. N. Engl. J. Med 385、179~186頁(2021))、エンドポイントの力価分析においては、統計的差異はなかった(
図7Q)。アルファ(P=0.0156)、ベータ(P=0.0156)、及びデルタ(P=0.0078)を含む、シュードウイルス中和曲線によるVOCに対する中和抗体応答の差異もまた確認されたが、シュードウイルス又は真正ウイルスの中和のpNT
50力価値(
図7、R及びS)には、S
FGと比較して差異は確認されなかった。
【0094】
[実施例21] 広範な中和抗体がS
MGで免疫したマウスのB細胞から単離された
S
MGで免疫したマウスからのSタンパク質特異的B細胞の選別により、S
MGで免疫したB細胞レパートリーに特有的に豊富なサブセット、IGHV1-18増幅クローンからのモノクローナル抗体(mAb)m31A7が同定された(
図8O)。このmAbは、全長Sタンパク質、S1、及びRBDと相互作用するが、S2とは相互作用せず(
図8A)、異なるSARS-CoV-2バリアント由来のSタンパク質を発現するHEK293T細胞に結合する(
図8B)。さらに、m31A7は、報告されているヒトmAb EY6Aよりも最高で1000倍高いpM以下の半数阻害濃度(IC
50)であり、様々なシュードウイルスバリアント(WT、D614G、アルファ、ベータ、及びデルタ)を中和することが示された(
図8C)。また予防研究では、WT SARS-CoV-2で抗原負荷したK18-hACE2マウス(n=3)においても、m31A7の良好なインビボ効力が実証された(
図8D)。予防的に処置されたマウスは、体重及び体温ともに維持された(
図8、E及びF)。バイオレイヤー干渉法(BLI)分析を使用し、Sタンパク質に結合するm31A7及びそのFabの解離定数をそれぞれ70.pM及び4.66nMで測定した(
図8G)。水素-重水素交換質量分析(HDX-MS)によるエピトープマッピングにより、RBD上のその結合可能性領域が明らかになり(
図8H)、これは、m31A7-Fabとの複合体でのRBDの結晶構造で観察されたエピトープと重なっていた。クライオ電子顕微鏡(EM)構造からは、m31A7が「アップ(up)」状態のRBDにのみ結合し(
図8I)、隣接するNTDからのN165-グリカンがRBD-m31A7境界面の近くにある(
図8J)ことがさらに明らかになった。RBD上のm31A7のフットプリントは、ヒトVH1-58クラスmAbのフットプリントと似ているが(
図8K)、異なる角度からRBDに接近し、先端ループ上の局所的接触領域をシフトさせ、E484及びK417などのVOCの主要な変異残基のほとんどをバイパスするが、T478はバイパスしない(
図8L)。詳しいRBD-m31A7境界面及びこのS
MG誘発mAbの阻害メカニズムは、現在さらに調査されている。
【0095】
[実施例22] デルタSMGワクチン接種は、SARS-CoV-2バリアントシュードウイルスに対してより多くの中和抗体を誘発した
SARS-CoV-2デルタバリアントのSMGタンパク質発現構築物
【0096】
配列番号3
【0097】
【0098】
A/ブリスベン/59/2007(H1N1))由来のシグナルペプチド:MKVKLLVLLCTFTATYAGT(配列番号4)
トロンビン切断部位:LVPRGS(配列番号5)
T4 foldon:PGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLG(配列番号6)
HRV3C切断部位:GSGSLEVLFQGP(配列番号7)
Hisタグ:HHHHHH(配列番号8)
【0099】
BALB/cマウス(n=5)をデルタS
FG又はS
MGワクチンで0週目及び2週目に2回免疫した。血清を6週目に採取し、続いてシュードウイルスアッセイを使用して中和能力を試験した(
図9A)。SARS-CoV-2デルタバリアントのシュードウイルスを使用し、ワクチンで免疫した血清から感染を中和する能力を測定した。繰り返すが、S
MG免疫の血清は、WT、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、及びオミクロンシュードウイルスに対して優れた中和能力を有する。デルタS
FG対S
MGのそれらのそれぞれの力価(pNT
50、高いほど良好)は、それぞれ、1018対3336(WTシュードウイルスに対して)、1396対2680(アルファシュードウイルスに対して)、337対2282(ベータシュードウイルスに対して)、814対4424(ガンマシュードウイルスに対して)、1138対6680(デルタシュードウイルスに対して)、及び144対2628(オミクロンシュードウイルスに対して)である。
【0100】
[実施例23] デルタ又はWT S
MGワクチン接種は、SARS CoV 2オミクロンバリアントシュードウイルスに対するより多くの中和抗体を誘発した
BALB/cマウス(n=5)を、デルタ/WT S
FG又はS
MGワクチンで0週目及び2週目に2回免疫した。血清を6週目に採取し、続いてシュードウイルスアッセイを使用して中和能力を試験した(
図10A)。SARS-CoV-2オミクロンバリアントのシュードウイルスを使用し、WT S
FG/S
MG又はデルタS
FG/S
MGのいずれかからのワクチン免疫血清から感染を中和する能力を測定した。WT S
FGワクチン接種は、オミクロンシュードウイルスに対する中和を誘発しないが、WT S
MGはわずかに防御を提供する。同様に、デルタS
FGワクチン接種は、オミクロンシュードウイルス感染に対してほとんど中和を誘発しないが、デルタS
MGは優れた中和を提供する。
【0101】
[実施例24] デルタS
MGタンパク質は、溶液中又は粉末中で室温にて保存することができる
2種のアミノ酸、50mMのL-アルギニン及び50mMのL-グルタメートを含むリン酸緩衝生理食塩水添加物(pbs-aa)中のデルタS
MGタンパク質を0.22μmフィルターで濾過し、室温(RT)又は4℃で保存した。タンパク質は、3日、7日、14日、21日、及び3ヶ月を含む様々な時点で回収した。回収した試料を5X SDS-PAGE Loading Dyeと混合し、100℃で5分間加熱し、ゲル泳動まで4℃で保存した(
図11A及びB)。50mMのL-アルギニン及び50mMのL-グルタミン酸含有又は非含有PBSを、デルタS
HM又はS
MG(最初の3レーン)の4℃での保存について試験した。デルタS
MGを、賦形剤の有無による凍結乾燥試験を行い、RTで2週間以上保存した(最後の2レーン)(
図11C)。安定性試験は、デルタS
MGタンパク質が溶液中で保存することができ、室温又は4℃で少なくとも21日間安定であることを示している。さらに、デルタS
MGは凍結乾燥し、RTで保存することができ、少なくとも3ヶ月間安定を維持する。
【0102】
配列
配列番号1
【0103】
【0104】
配列番号2
【0105】
【0106】
SARS-CoV-2デルタバリアントのSMGタンパク質発現構築物
【0107】
配列番号:3
【0108】
【0109】
A/ブリスベン/59/2007(H1N1)から改変されたシグナルペプチド
MKVKLLVLLCTFTATYAGT(配列番号4)
【0110】
トロンビン切断部位
LVPRGS(配列番号5)
【0111】
T4 foldon
PGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLG(配列番号6)
【0112】
HRV3C切断部位
GSGSLEVLFQGP(配列番号7)
【0113】
Hisタグ
HHHHHH(配列番号8)
【0114】
元のフリン切断部位を置換する残基
GSAG(配列番号9)
【0115】
高度に保存されたエピトープ
【0116】