(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020224
(43)【公開日】2025-02-12
(54)【発明の名称】培養培地での植物タンパク質相同体の利用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/415 20060101AFI20250204BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20250204BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20250204BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20250204BHJP
【FI】
C07K14/415 ZNA
C12N1/00 G
C12N5/071
A23L13/00
C07K14/415
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024189045
(22)【出願日】2024-10-28
(62)【分割の表示】P 2022544694の分割
【原出願日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】62/963,808
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592024572
【氏名又は名称】イッサム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522292264
【氏名又は名称】フューチャー・ミート・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ナーミアス,ヤーコブ
(72)【発明者】
【氏名】コヘン,メラブ
(72)【発明者】
【氏名】カスピ,ヨナサン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増殖又は接着因子血清成分の動物製品又は組換えタンパク質生産の望ましくない副作用を伴わない培地サプリメントを提供する。また、動物血清由来成分を本質的に欠く細胞増殖培地及び培地中で細胞を増殖させ、それにより培養肉を生産する方法を提供する。
【解決手段】動物血清由来タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む細胞培養培地サプリメント、無血清基本培地及び1つ又はそれ以上の植物ベースのタンパク質を含む細胞培養培地、並びにin vitroで細胞を増殖する方法及び細胞培養培地を使用して培養肉を生産する方法を提供する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む細胞培養培地サプリメント。
【請求項2】
前記サプリメントが、任意の血清タンパク質を欠く、請求項1に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項3】
前記サプリメントが、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く、請求項1又は2に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項4】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物タンパク質単離物の水溶性画分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項5】
前記水溶性画分が、植物アルブミン及びグロブリンを含む、請求項4に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項6】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、血清アルブミン、血清カタラーゼ、血清スーパーオキシドジスムターゼ、血清トランスフェリン、血清フィブロネクチン、血清ビトロネクチン、血清インシュリン、血清ヘモグロビン、血清アルドラーゼ、血清リパーゼ、血清トランスアミナーゼ、血清アミノトランスフェラーゼ、血清フェチュイン、又はこれらの組合せの相同体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項7】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物アルブミン、植物カタラーゼ、植物スーパーオキシドジスムターゼ、植物トランスフェリン、植物フィブロネクチン、植物ビトロネクチン、植物インシュリン、植物レグヘモグロビン、植物アルドラーゼ、植物リパーゼ、植物トランスアミナーゼ、植物アミノトランスフェラーゼ、植物シスタチン、又はこれらの組合せである、請求項6に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項8】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物アルブミン、植物カタラーゼ、植物フィブロネクチン、及び植物インシュリンを含む、請求項7に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項9】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物アルブミンである、請求項7に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項10】
前記植物アルブミンが、ヒヨコマメアルブミン、ヘンプシードアルブミン、ヒラマメアルブミン、エンドウアルブミン、ダイズアルブミン、コムギアルブミン又はジャガイモアルブミンである、請求項8又は9に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項11】
前記植物アルブミンが、エンドウアルブミン又はジャガイモアルブミンである、請求項10に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項12】
前記植物アルブミンが、植物タンパク質単離物の水溶性画分由来である、請求項9に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項13】
前記植物アルブミンが、約13~110キロダルトンの分子量を有する、請求項7~12のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項14】
前記植物アルブミンが、約13~17キロダルトンの分子量を有する、請求項13に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項15】
前記植物アルブミンが、約20~35キロダルトンの分子量を有する、請求項13に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項16】
前記植物アルブミンが、約50~110キロダルトンの分子量を有する、請求項13に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項17】
前記植物アルブミンが、前記細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると前記植物アルブミンが前記細胞培養培地中約0.01重量%~約10重量%の最終濃度を有する濃度で、前記細胞培養培地サプリメント中に存在する、請求項7~16のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項18】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物カタラーゼである、請求項7に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項19】
前記植物カタラーゼが、シロイヌナズナ(Arabidopsis)カタラーゼ、キャベツカタラーゼ、キュウリカタラーゼ、綿カタラーゼ、ジャガイモカタラーゼ、カボチャカタラーゼ、ホウレンソウカタラーゼ、ヒマワリカタラーゼ、タバコカタラーゼ又はトマトカタラーゼである、請求項8又は18に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項20】
前記植物カタラーゼが、キャベツカタラーゼ、キュウリカタラーゼ又はジャガイモカタラーゼである、請求項19に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項21】
前記植物カタラーゼが、約50~70キロダルトンの分子量を有する、請求項18~20のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項22】
前記植物カタラーゼが、前記細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると前記植物カタラーゼが前記細胞培養培地中約1ng/ml~約100ng/mlの最終濃度を有する濃度で、前記細胞培養培地サプリメント中に存在する、請求項18~21のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項23】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物フィブロネクチンである、請求項7に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項24】
前記植物フィブロネクチンが、マメフィブロネクチン、ヒヨコマメフィブロネクチン、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン、ダイズフィブロネクチン、タバコフィブロネクチン又はコムギフィブロネクチンである、請求項8又は23に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項25】
前記植物フィブロネクチンが、ヒヨコマメフィブロネクチン、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン、ダイズフィブロネクチン又はコムギフィブロネクチンである、請求項24に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項26】
前記植物フィブロネクチンが、約40~60キロダルトンの分子量を有する、請求項23~25のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項27】
前記植物フィブロネクチンが、前記細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると前記植物フィブロネクチンが前記細胞培養培地中約0.1μg/ml~約100μ
g/mlの最終濃度を有する濃度で、前記細胞培養培地サプリメント中に存在する、請求項23~26のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項28】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物インシュリンである、請求項7に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項29】
前記植物インシュリンが、グルコキニン、チャランチン、又はコロソリン酸である、請求項8又は28に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項30】
前記植物インシュリンが、前記細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると前記植物インシュリンが前記細胞培養培地中約0.05μg/ml~約10μg/mlの最終濃度を有する濃度で、細胞培養培地サプリメント中に存在する、請求項28又は29に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項31】
前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物抽出物画分の形態又は純粋形態である、請求項1~30のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメント。
【請求項32】
無血清培地及び請求項1~31のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメントを含む細胞培養培地であって、前記無血清培地は、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く、細胞培養培地。
【請求項33】
前記無血清培地が、基本生理的緩衝液である、請求項32に記載の細胞培養培地。
【請求項34】
請求項1~31のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメントと、任意の動物血清由来成分を欠く無血清培地と前記細胞培養培地サプリメントを混合するための説明書とを含むキット。
【請求項35】
培養肉を生産する方法であって、請求項32又は33に記載の細胞培養培地中で細胞を培養するステップ、及び培養細胞から肉を生産するステップを含む方法。
【請求項36】
前記細胞が食用動物由来である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記食用動物が、家畜、狩猟動物、家禽、魚、又は甲殻類である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、繊維芽細胞である、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記線維芽細胞が、ウシ線維芽細胞又はニワトリ線維芽細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項35~39のいずれか一項に記載の方法によって生産される培養肉。
【請求項41】
任意の動物タンパク質及び/又は成分を欠く細胞培養培地を生産する方法であって、無血清基本培地と請求項1~31のいずれか一項に記載の細胞培養培地サプリメントとを混合するステップを含み、前記無血清基本培地及び細胞培養培地サプリメントは、それぞれ任意の動物血清由来成分を本質的に欠く、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法によって生産される細胞培養培地。
【請求項43】
細胞培養培地サプリメント中の動物タンパク質の代わりの、動物タンパク質の植物タン
パク質相同体の使用。
【請求項44】
前記動物タンパク質が血清タンパク質である、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
前記サプリメントが、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く、請求項43又は44に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2020年1月21日に出願された米国特許仮出願第62/963808号の優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表
[0002]本出願の出願と同時に提出された、55,930バイトを含む、2021年1月19日に作成された表題108912-675980_SL.txtのASCIIファイルは参照によって本明細書に組み込まれる。これにより提出された配列表は、本出願の一部を形成する配列表と同一である。
【0003】
技術分野 [0003]本発明は、通常、細胞増殖に関する。より詳細には、本発明は、動物血清由来成分を本質的に欠く細胞増殖培地及び培地中で細胞を増殖させ、それにより培養肉を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]現在の世界人口は70億人を超え、依然として急速に増加している。この人口増加の栄養所要量を支えるため、ますます広い土地が食料生産に割り当てられる。天然源は要求を満たすのには不十分である。これは、世界の一部の地域では食料不足をもたらす。世界の他の地域では、問題は、厳しい条件下の密集した工場式農場での動物の大規模生産によって対処されている。この大規模生産は、動物に多大な苦痛をもたらすだけでなく、食品効率を増加させ、感染を制御するために使用する有機ヒ素化合物及び抗生物質により肉製品のヒ素レベル及び薬剤耐性菌も増加させ、したがって、動物とヒトの両方で疾患の数をさらに増加させ、その結果を悪化させる。現在の食料要求を満たすためには大規模な屠殺が必要であり、結果として、ブタペスチウイルス及び狂牛病の出現など、大規模な疾患の発生をもたらし得る。これらの疾患は、ヒトの消費のための食肉の不足を生じ、したがってそもそも動物が飼育される目的を完全に否定する。
【0005】
[0005]さらに、大規模生産は、最終製品の風味を低下させる。バタリー不使用で産ませた卵及びバタリー不使用で生産された肉を供給することができるものが好まれる。味だけの問題ではなく、それにより成長ホルモンのような様々な食品添加物の消費を避ける健康上の選択もある。大量の動物生産と関連する別の問題は、動物からの莫大な排泄物によって引き起こされ、続いて環境が対応しなければならない環境問題である。さらに、他の作物の生育、住宅、レクリエーション、野生及び森林のような代替の目的のために使用できない、動物又は動物の飼料の生産に現在必要とされる広大な土地は問題である。
【0006】
[0006]当技術分野で公知の技術の主な問題の1つは、生産に長時間かかり、コストが非常に高く、製品が、家畜由来の現在の肉を置き換えることができない及び置き換えないであろう平凡な質であることである。例えば、Just-Inc.は、抽出した動物細胞を培地中で増殖させてチキンナゲットを製造したが、その製造コストは、ナゲット当たり50ドルかかる。
【0007】
[0007]ヒト又は動物への投与のための、in vitro実験又はex vivo培養のため、細胞、例えば哺乳動物細胞又は昆虫細胞の培養は、ヒト疾患の研究及び処置の重要な手段である。細胞培養は、様々な生物学的に活性な製品、例えばウイルスワクチン、モノクローナル抗体、ポリペプチド増殖因子、ホルモン、酵素、腫瘍特異的抗原及び食品製品の生産に広く使用される。しかしながら、細胞を培養するために使用される多くの培
地又は方法は、細胞増殖及び/又は未分化細胞培養の維持に負の効果を有し得る成分を含む。例えば、哺乳動物又は昆虫細胞培養培地は、培養中の細胞の増殖及び成長を促進する増殖因子、キャリアタンパク質、接着及び拡散因子、栄養及び微量元素を提供するため、ウシ胎仔血清(FCS)又はウシ胎仔血清(FBS)のような血液由来血清を補充することが多い。しかしながら、トランスフォーミング成長因子(TGF)ベータ又はレチノイン酸のような、FCS又はFBSに見出される因子は、ある特定の細胞型の分化を促進する(Ke et al.,Am J Pathol.137:833-43,1990)か又は培養中の望まない細胞活性を促進する細胞の意図しない下流のシグナル伝達を開始する(Veldhoen et al.,Nat Immunol.7(11):1151-6,2006)ことができる。
【0008】
[0008]培養培地のコストは、培養肉生産のコストの主要因である。培養培地は、炭水化物、アミノ酸、ビタミン及びミネラルを含む比較的簡単な基本培地と、アルブミン、増殖因子、酵素、接着因子及びホルモンを含むより高価な血清代替物成分から構成される。動物成分の使用を除くため、現在、産業は、細胞治療及びワクチン生産への適用のための組換えヒトタンパク質に頼っている。しかしながら、培養肉適用はヒトタンパク質の使用に限定されず、したがって、ヒトの消費に好適な材料のより容易に入手可能な供給源を利用することができる可能性がある。
【0009】
[0009]血清組成が本質的に特徴づけられていないこと及び血清のロット間のバリエーションにより、血清代替物の使用及び無血清培地中での培養が望ましい(Pei et al.,Arch Androl.49(5):331-42,2003)。さらに、細胞培養で増殖される、治療使用のための細胞、組換えタンパク質又はワクチンでは、ヒトに投与された場合、ウイルス夾雑の可能性及び/又は動物タンパク質の免疫原性効果の可能性により、動物由来成分の添加は望ましくない。
【0010】
[0010]血清代替物は、細胞培養でのFCSの効果を最小限にする、並びにヒト細胞を培養するために使用される動物タンパク質の量を最小限にするために開発された。KNOCKOUT(商標)血清代替物(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)のような血清代替物は、血清を欠如し、細胞増殖のための基本栄養及び他のタンパク質を含有する既知の化学組成の培養培地である。KNOCKOUT(商標)は、この製剤での不十分な細胞接着をもたらす、接着因子の欠如により、フィーダー細胞のプレーティングにおいてFBSの代替物として使用することができない。PC-1(商標)無血清培地(Lonza,Walkersville,Md.)は、特別に改変されたDMEM/F12培地ベース中で配合された低タンパク質の無血清培地であり、既知量のインシュリン、トランスフェリン、脂肪酸及び専売タンパク質を含む完全HEPES緩衝系を含有する。
【0011】
[0011]Cellgro COMPLETE(商標)(Cellgro,Manassas,Va.)は、DMEM/F12、RPMI1640及びMcCoy’s 5A基本培地の混合物に基づく、無血清、低タンパク質培養培地である。Cellgro COMPLETE(商標)は、インシュリン、トランスフェリン、コレステロール、増殖又は接着因子を含有しないが、微量元素及び高分子量炭水化物、余分なビタミン、非動物タンパク質源、及びウシ血清アルブミンの混合物を含む。
【0012】
[0012]動物細胞又は植物で生産された組換えタンパク質が、現在、培養培地で使用される。例えば、組換えヒトアルブミンはイネで生産されるが、組換えフィブロネクチンはマウス細胞で生産される。増殖又は接着因子血清成分の動物製品又は組換えタンパク質生産の望ましくない副作用を伴わない培地サプリメントの必要性がある。本発明は、この長年の要求を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0013]培養培地のコストは、培養肉生産のコストの主要因である。培養培地は、炭水化物、アミノ酸、ビタミン及びミネラルを含有する比較的簡単な基本培地と、アルブミン、増殖因子、酵素、接着因子及びホルモンを含むより高価な血清代替物成分から構成される。動物成分の使用を除くため、現在、産業は、細胞治療及びワクチン生産への適用のための組換えヒトタンパク質に頼っている。しかしながら、培養肉適用はヒトタンパク質の使用に限定されず、したがって、ヒトの消費に好適な材料のより容易に入手可能な供給源を利用することができる可能性がある。
【0014】
[0014]本開示は、一部では、血清の最も高価な成分の一部の代替物が、植物界のタンパク質相同体に見出すことができるという発見に基づく。例えば、植物アルブミン及びグロブリンは、驚くべきことに、培養培地の脂質及び増殖因子担体として血清アルブミンを置き換えることができる。カタラーゼは、過酸化水素を除去する動物血清中の重要な酵素であり、ジャガイモ、キュウリ及び他の植物にも豊富である。フィブロネクチン及びビトロネクチンのような一般的な接着因子の相同体は、植物細胞壁とそれらの膜の間に見出され得る。そのような植物ベースのタンパク質の培養培地での使用は、培養肉の生産のための培地のコストを著しく削減する。
【0015】
[0015]本開示の一態様は、血清タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む細胞培養培地サプリメントを提供する。
[0016]一部の実施形態では、細胞培養培地サプリメントは、任意の血清タンパク質を欠く。一部の実施形態では、細胞培養培地サプリメントは、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く。
【0016】
[0017]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物タンパク質単離物の水溶性画分を含む。一部の実施形態では、水溶性画分は、植物アルブミン及びグロブリンを含む。
【0017】
[0018]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、血清アルブミン、血清カタラーゼ、血清スーパーオキシドジスムターゼ、血清トランスフェリン、血清フィブロネクチン、血清ビトロネクチン、血清インシュリン、血清ヘモグロビン、血清アルドラーゼ、血清リパーゼ、血清トランスアミナーゼ、血清アミノトランスフェラーゼ、血清フェチュイン、又はこれらの組合せの相同体である。
【0018】
[0019]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物アルブミン、植物カタラーゼ、植物スーパーオキシドジスムターゼ、植物トランスフェリン、植物フィブロネクチン、植物ビトロネクチン、植物インシュリン、植物レグヘモグロビン、植物アルドラーゼ、植物リパーゼ、植物トランスアミナーゼ、植物アミノトランスフェラーゼ、植物シスタチン、又はこれらの組合せである。
【0019】
[0020]一部の実施形態では、サプリメントは、植物アルブミン、植物カタラーゼ、植物フィブロネクチン、及び植物インシュリンを含む。
[0021]一部の実施形態では、サプリメントは、植物トランスフェリンをさらに含む。
【0020】
[0022]一部の実施形態では、サプリメントは、植物スーパーオキシドジスムターゼをさらに含む。
[0023]一部の実施形態では、サプリメントは、植物ビトロネクチンをさらに含む。
【0021】
[0024]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物アルブミンである。一部の実施形態では、植物アルブミンは、ヒヨコマメアルブミン、ヘンプシードアルブミン、ヒラマメアルブミン、エンドウアルブミン、ダイズアルブミン、コムギアルブミン又はジャガイモアルブミンである。一部の実施形態では、植物アルブミンは、エンドウアルブミン又はジャガイモアルブミンである。
【0022】
[0025]一部の実施形態では、植物アルブミンは、植物タンパク質単離物の水溶性画分由来である。
[0026]一部の実施形態では、植物アルブミンは、約13~110キロダルトンの分子量を有する。一部の実施形態では、植物アルブミンは、約13~17キロダルトンの分子量を有する。一部の実施形態では、植物アルブミンは、約20~35キロダルトンの分子量を有する。一部の実施形態では、植物アルブミンは、約50~110キロダルトンの分子量を有する。
【0023】
[0027]一部の実施形態では、植物アルブミンは、植物アルブミンが細胞培養培地中約0.01重量%~約10重量%の最終濃度を有する濃度で、細胞培養培地サプリメント中に存在する。
【0024】
[0028]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は植物カタラーゼである。
[0029]一部の実施形態では、植物カタラーゼは、シロイヌナズナ(Arabidopsis)カタラーゼ、キャベツカタラーゼ、キュウリカタラーゼ、綿カタラーゼ、ジャガイモカタラーゼ、カボチャカタラーゼ、ホウレンソウカタラーゼ、ヒマワリカタラーゼ、タバコカタラーゼ又はトマトカタラーゼである。一部の実施形態では、植物カタラーゼは、キャベツカタラーゼ、キュウリカタラーゼ又はジャガイモカタラーゼである。
【0025】
[0030]一部の実施形態では、植物カタラーゼは、約50~70キロダルトンの分子量を有する。
[0031]一部の実施形態では、植物カタラーゼは、細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると植物カタラーゼが細胞培養培地中で約1ng/ml~約100ng/mlの最終濃度を有する濃度で、細胞培養培地サプリメント中に存在する。
【0026】
[0032]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物フィブロネクチンである。
[0033]一部の実施形態では、植物フィブロネクチンは、マメフィブロネクチン、ヒヨコマメフィブロネクチン、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン、ダイズフィブロネクチン、タバコフィブロネクチン又はコムギフィブロネクチンである。一部の実施形態では、植物フィブロネクチンは、ヒヨコマメフィブロネクチン、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン、ダイズフィブロネクチン又はコムギフィブロネクチンである。
【0027】
[0034]一実施形態では、前記植物フィブロネクチンは、約40~60キロダルトンの分子量を有する。
[0035]一部の実施形態では、植物フィブロネクチンは、細胞培養培地中約0.1μg/ml~約100μg/mlの最終濃度を有する。
【0028】
[0036]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物インシュリンである。
[0037]一部の実施形態では、植物インシュリンは、グルコキニン、チャランチン、又はコロソリン酸である。
【0029】
[0038]一部の実施形態では、植物インシュリンは、細胞培養培地中約0.05μg/ml~約10μg/mlの最終濃度を有する。
[0039]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物トランスフェリンである。
【0030】
[0040]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物ビトロネクチンである。
[0041]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物スーパーオキシドジスムターゼである。
【0031】
[0042]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物抽出物画分の形態又は純粋形態である。
[0043]本開示のさらに別の態様は、無血清培地及び本明細書に開示の任意の細胞培養培地サプリメントを含む細胞培養培地を提供する。
【0032】
[0044]一部の実施形態では、細胞培養培地は任意の動物血清タンパク質を欠く。
[0045]一部の実施形態では、細胞培養培地は、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く。
【0033】
[0046]一部の実施形態では、無血清培地は基本培地である。一部の実施形態では、基本培地は基本生理的緩衝液(base physiological buffer)である。
【0034】
[0047]本開示のさらに別の態様は、任意の本明細書に開示の細胞培養培地サプリメントと、任意の動物成分及び/又は動物タンパク質を欠く無血清培地と前記サプリメントを混合するための説明書とを含むキットを提供する。
【0035】
[0048]本開示のさらに別の態様は、任意の本明細書に開示の細胞培養培地中で細胞を培養するステップによって培養肉を生産する及び培養細胞から肉を生産する方法を提供する。
【0036】
[0049]一部の実施形態では、細胞は食用動物由来である。一部の実施形態では、食用動物は家畜、狩猟動物、家禽、魚、又は甲殻類である。
[0050]一部の実施形態では、方法は培養細胞を含み、細胞は繊維芽細胞である。一実施形態では、線維芽細胞は、ウシ線維芽細胞又はニワトリ線維芽細胞である。
【0037】
[0051]本開示のさらに別の態様は、上記及び本明細書に開示される方法によって生産された培養肉を提供する。
[0052]本開示のさらに別の態様は、任意の動物タンパク質及び/又は動物成分を欠く細胞培養培地を生産する方法を提供する。方法は、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く無血清基本培地と任意の動物血清由来成分を本質的に欠く任意の本明細書に開示の細胞培養培地サプリメントとを混合するステップを含む。
【0038】
[0053]本開示のさらに別の態様は、上記の方法によって生産される細胞培養培地を提供する。
[0054]本開示のさらなる態様は、細胞培養培地サプリメント中の動物タンパク質の代わりに動物タンパク質の植物タンパク質相同体の使用を提供する。一実施形態では、動物タンパク質は血清タンパク質である。一部の実施形態では、サプリメントは、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く。
【0039】
[0055]特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面(複数可)を有するこの特許又は公開特許公報の副本は、特許庁からの要求及び必要経費の支払いによって提供されるであろう。
【0040】
[0056]本発明の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関して以下の記載で説明される:
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】[0057]
図1は、血清アルブミンのマメ科のアルブミン相同体のアライメントを示す図である(配列番号1~13)。
【
図2-1】[0058]
図2は、血清アルブミンの種子貯蔵アルブミン相同体のアライメントを示す図である(配列番号14~43)。
【
図2-2】
図2は、血清アルブミンの種子貯蔵アルブミン相同体のアライメントを示す図である(配列番号14~43)。
【
図3A】[0059]
図3A~3Eは、抽出したジャガイモのマススペクトロメトリー(MS)解析を示す図である。
図3Fは、抽出したジャガイモのSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図3B】
図3A~3Eは、抽出したジャガイモのマススペクトロメトリー(MS)解析を示す図である。
図3Fは、抽出したジャガイモのSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図3C】
図3A~3Eは、抽出したジャガイモのマススペクトロメトリー(MS)解析を示す図である。
図3Fは、抽出したジャガイモのSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図3D】
図3A~3Eは、抽出したジャガイモのマススペクトロメトリー(MS)解析を示す図である。
図3Fは、抽出したジャガイモのSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図3E】
図3A~3Eは、抽出したジャガイモのマススペクトロメトリー(MS)解析を示す図である。
図3Fは、抽出したジャガイモのSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図3F】
図3A~3Eは、抽出したジャガイモのマススペクトロメトリー(MS)解析を示す図である。
図3Fは、抽出したジャガイモのSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図4】[0060]
図4は、エンドウタンパク質のSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図5】[0061]
図5は、5つの植物粉末(デュラム、ヒヨコマメ、ヒラマメ、トウモロコシ、イネ)及び2つの市販の植物タンパク質単離物(ヘンプ、エンドウ)の水溶性タンパク質画分のSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図6】[0062]
図6は、2つのジャガイモ型(赤又は白)からの4つのジャガイモ抽出物のMS解析の結果を示す図である。
【
図7】[0063]
図7は、血清及び動物由来ECMタンパク質の非存在下での培養細胞におけるダイズ、ヒヨコマメ、ヒラマメ、イネ及びコムギ抽出物の接着を示す図である。
【
図8】[0064]
図8は、ウシ血清アルブミン(BSA)の代替物として、完全タンパク質バルクの調製を示す模式図である。
【
図9】[0065]
図9は、Albusorb精製前と後のダイズタンパク質(水溶性画分)のSDS-PAGE解析を示す図である。
【
図10A】[0066]
図10Aは、上位10個の水溶性ダイズタンパク質群のMS解析を示す図である。
図10Bは、上位10個のAlbusorb精製したダイズタンパク質群のMS解析を示す図である。
【
図10B】
図10Aは、上位10個の水溶性ダイズタンパク質群のMS解析を示す図である。
図10Bは、上位10個のAlbusorb精製したダイズタンパク質群のMS解析を示す図である。
【
図11】[0067]
図11は、ヒヨコマメタンパク質のマススペクトロメトリー(MS)解析を示す図である。
【
図12】[0068]
図12は、BSAタンパク質を欠く特別な無血清サプリメントを使用するニワトリ線維芽細胞への異なる植物の水溶性画分タンパク質の効果を示す図である。
【
図13】[0069]
図13は、無血清培地中のBSAを置き換える、浮遊培養中でのニワトリ線維芽細胞へのヒヨコマメと有機エンドウタンパク質の両方の用量依存的効果を示す図である。
【
図14】[0070]
図14は、ヒヨコマメタンパク質の用量依存的毒性を示す図である。
【
図15】[0071]
図15は、細胞増殖のためのヒヨコマメタンパク質最適化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[0072]本開示の原理の理解を促進する目的のため、ここで実施形態が参照され、特定の言語がそれを記載するために使用されるであろう。しかしながら、それにより本開示の範囲の限定が意図されず、本明細書に示したように本開示のそのような変更及びさらなる改変は、本開示が関連する当業者に通常想起されるであろうと考えられる。
【0043】
[0073]本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、本発明を限定することを意図しない。
[0074]本明細書で使用される場合、用語「動物成分」又は「動物成分(複数)」は、成分が動物から由来する、得られる、産生される、又は生産される組成物を指す。成分は、それらが組換えにより生産されるか又は植物若しくは動物以外の供給源由来である場合、「動物成分」ではない。本明細書で使用される場合、「動物成分」は、組換え動物成分を含む、細胞系における培地の成分の組換え生産を含まない。また「動物成分」は、動物細胞系で生産された成分を含まない。
【0044】
[0075]本明細書で使用される場合、用語「動物血清由来成分」又は「動物血清由来成分(複数)」は、成分が動物血清から由来する、得られる、産生される、又は生産される組成物を指す。成分は、それらが組換えにより生産されるか又は植物若しくは動物血清以外の供給源由来である場合、「動物血清由来成分」ではない。本明細書で使用される場合、「動物血清由来成分」は、組換え動物成分を含む、細胞系における培地の成分の組換え生産を含まない。また「動物血清由来成分」は、動物細胞系で生産された成分を含まない。
【0045】
[0076]本明細書で使用される場合、「欠く(devoid of)」又は「含まない(free)」(「動物成分を含まない」のように)、「本質的に欠く(essentially devoid of)」又は「本質的に含まない(essentially free)」は、非検出可能な、又は少量の、又はわずかな量の成分を意味する。用語「非検出可能な(non-detectable)」は、本出願の時点で、当技術分野で公知の検出の標準的な方法論に基づくと理解される。一部の実施形態では、「少量(small amouont)」は、1重量%未満を指す。
【0046】
[0077]本明細書で使用される場合、「動物成分を含まない」、「動物成分を欠く」、又は「動物成分を本質的に欠く」は、成分が動物から由来しない、得られない、産生されない、又は生産されない組成物を指す。成分は、組換えにより生産されるか又は植物若しくは動物以外の供給源由来であるかのいずれかであると考えられる。本明細書で使用される場合、「動物成分を含まない」、「動物成分を欠く」、又は「本質的に欠く」は、動物ベ
ースの細胞系における培地の成分の組換え生産を可能にする。
【0047】
[0078]本明細書で使用される場合、用語「基本培地(basal media)」、「基本培地(basal medium)」、「基本培地(base media)」、「基本培地(base medium)」、「基本栄養培地(base nutritive medium)」、又は「基本栄養培地(base nutritive media)」は、正常な細胞代謝に必須の、並びに細胞内外の浸透圧の平衡を維持する水及びある特定のバルク無機イオンを細胞に提供する、基本塩栄養(複数可)又は塩の水溶液(複数可)及び他の要素を指す。一部の実施形態では、基本培地は、エネルギー源として少なくとも1つの炭水化物、及び/又は生理学的なpH範囲内に培地を維持する緩衝システムを含む。市販の基本培地の例としては、限定はされないが、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、イーグル基礎培地(BME)、RPMI1640、Ham’s F-10、Ham’s F-12、α-最小必須培地(αMEM)、グラスゴー最小必須培地(G-MEM)、イスコフ改変ダルベッコ培地、又はX-VIVO(Lonza)のような多能性細胞との使用のために改変された多目的培地、又は造血基本培地が挙げられる。
【0048】
[0079]本明細書で使用される場合、「B27サプリメント」(「B22サプリメント」としても知られている)は、例えば、Neurobasal培地(Invitrogen21103-049×2ユニット)中で集合した、21個の成分及び100gのBSA(例えば、画分V IgG 脂肪酸不含有 低 Invitrogen30036578×1ユニット)を含有する培地サプリメントである。以下の21個の成分はB27サプリメントに存在する:1)カタラーゼ、2)還元型グルタチオン、3)ヒトインシュリン、4)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、5)ヒトHolo-トランスフェリン、6)T3、7)L-カルニチン、8)エタノールアミン、9)D+-ガラクトース、10)プトレシン、11)亜セレン酸ナトリウム、12)コルチコステロン、13)リノール酸、14)リノレン酸、15)プロゲステロン、16)酢酸レチノール、17)DL-アルファトコフェロール(vit E)、18)DL-アルファ酢酸トコフェロール、19)オレイン酸、20)ピペコリン酸及び21)ビオチン。B27サプリメントは、ビタミンA不含B27サプリメント:酢酸レチノールを除去、T3不含B27サプリメント:T3(#6)が適切な場合省かれる、抗酸化剤(AO)不含B27サプリメント:以下の5個の抗酸化剤:#1、#2、#4、#17、#18が省かれるべきであり、及びBSA不含B27サプリメント:BSAを除去として改変される。必要であれば、ヒト組換えアルブミン又は血清アルブミンが代わりに使用され得る。
【0049】
[0080]本明細書で使用される場合、「完全培地」は、細胞増殖に貢献することができる、増殖因子、ホルモン、タンパク質、血清又は血清代替物、微量元素、糖、抗生物質、抗酸化剤等のような、添加したサプリメントをさらに含む基本培地を指す。例えば、市販の完全培地は、エタノールアミン、グルタチオン(還元)、アスコルビン酸リン酸、インシュリン、ヒトトランスフェリン、脂質リッチウシ血清アルブミン、微量塩、亜セレン酸ナトリウム、メタバナジン酸(matavanadate)アンモニウム、硫酸銅及び塩化マンガン(DMEM ADVANCED(商標)培地、Life Technologies)のようなサプリメントを含む。
【0050】
[0081]本明細書で使用される場合、用語「結合組織細胞」は、結合組織を作り上げる様々な細胞型を指す。例えば、結合組織細胞は、線維芽細胞、軟骨細胞、骨細胞、脂肪細胞及び平滑筋細胞、又は線維芽細胞から自然に分化され得る細胞型である。本明細書で使用される場合、用語「自然分化(natural differentiation)」又は「自然分化形態(naturally differentiated form)」は、自然に生じる分化を指すために使用され、実験室で人工的に達成され得るもののよう
な分化転換を指すためには使用されず、また脱分化ではない。線維芽細胞から自然分化され得る細胞型は、軟骨細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、骨細胞、筋線維芽細胞、筋芽細胞及び筋細胞を含む。結合組織細胞は、間葉系幹細胞(MSC)又はMSC由来細胞又は多能性細胞ではない。
【0051】
[0082]本明細書で使用される場合、語句「自然発生的に不死化した線維芽細胞(spontaneously immortalized fibroblast)」は、不死化を引き起こす人為的な突然変異、例えば遺伝子操作に供されることなく、無制限に細胞分化、及び好ましくは細胞増殖も行うことができる線維芽細胞を指す。自然発生的に不死化した線維芽細胞は、非遺伝的に改変されている。
【0052】
[0083]本明細書で使用される場合、「液体ベース混合物」又は「ベース生理学的緩衝液混合物」は、細胞培養培地組成物を完成させるためにリポソームが懸濁される血清代替物又は培地サプリメントのベース溶液を指す。細胞培養の細胞に融合される/取り込まれる場合、リポソームが細胞へと液体ベース混合物を送達するように、液体ベース混合物をリポソームにロードすることが考えられる。本明細書では、液体ベース混合物又はベース生理学的緩衝液体混合物が、リポソーム及び/又は本明細書の他の成分と併せて使用され、血清代替物、完全培地、培地サプリメント、又は細胞凍結保存培地を形成することができる、基本培地、完全培地又は生理学的緩衝溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び他の平衡塩類溶液であることも考えられる。
【0053】
[0084]本明細書で使用される場合、「培地」又は「細胞培養培地」は、細胞の増殖、生存能、又は保存を提供する水ベース溶液を指す。本明細書で検討する培地は、1つ又はそれ以上の栄養素を補充し、所望の細胞活性、例えば培地中で培養した細胞の細胞生存能、成長、増殖、分化を促進することができる。培地は、本明細書で使用される場合、血清代替物、培地サプリメント、完全培地又は細胞凍結保存培地を含む。培養培地のpHは、微生物が増殖するのに好適であるはずである。ほとんどの細菌はpH6.5~7.0で増殖するが、ほとんどの動物細胞はpH7.2~7.4で成長する。
【0054】
[0085]本明細書で使用される場合、「培地サプリメント」は、細胞の培養の前に基本培地に添加される薬剤又は組成物を指す。培地サプリメントは、培養での細胞増殖に有益な薬剤、例えば増殖因子(複数可)、ホルモン(複数可)、タンパク質(複数可)、血清又は血清代替物、微量元素(複数可)、糖(複数可)、抗生物質(複数可)、抗酸化剤(複数可)等であり得る。典型的には、培地サプリメントは、細胞培養に適切な最終濃度に達するまで完全又は基本培地へと希釈される所望のサプリメントの濃縮溶液である。
【0055】
[0086]本明細書で使用される場合、「血清代替物」又は「血清代替物培地」は、培養中での細胞増殖及び生存を促進するために、基本培地と併せて又は完全培地として使用され得る組成物を指す。血清代替物は、in vitroでの細胞の培養のため、培地に特徴的に添加される任意の血清の代替物として基本又は完全培地で使用される。血清代替物は、培養中の細胞の増殖及び生存のためのタンパク質及び他の因子を含むことが考えられる。血清代替物は、細胞培養での使用の前に基本培地へと添加される。血清代替物は、血清代替物が細胞培養の無血清完全培地として有用であるように、基本培地及び、塩、アミノ酸、ビタミン、微量元素、抗酸化剤等のような基本栄養素を含み得ることがさらに考えられる。
【0056】
[0087]本開示では、特に請求項及び/又は段落では、用語、例えば「含む(comprises)」、「含む(comprised)」、「含む(comprising)」等は、米国特許法による意味を有することができ;例えば、それらは「含む(includes)」、「含む(included)」、「含む(including)」等を意味す
ることができ;並びに「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」のような用語は、米国特許法に帰する意味を有し、例えば明確に列挙されない要素を許容するが、先行技術に見出される、又は本発明の基本若しくは新規の特徴に影響する要素を除外することに注意されたい。
【0057】
[0088]本明細書に開示されるのは、動物タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む細胞培養培地サプリメント及びそれを作製する方法である。一部の実施形態では、動物タンパク質は血清タンパク質である。また、本明細書で開示されるのは、開示された細胞培養培地サプリメント中で細胞を培養する、及び培養肉の生産のために前記培養を利用する方法である。本明細書で開示される細胞培養培地サプリメントは、細胞培養培地及びキットでも使用され得る。驚くべきことに、任意の動物タンパク質及び/又は動物成分を欠く細胞培養を可能にする方法で、植物タンパク質相同体が細胞培養で利用され得ることが発見された。培養培地中でのそのような植物ベースタンパク質の使用は、培養肉の製造のための培地のコストを著しく削減する。
【0058】
[0089]本開示の一態様は、動物タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む細胞培養培地サプリメントを提供する。動物タンパク質は、血清タンパク質であり得る。そのように、一部の実施形態では、血清タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む細胞培養培地サプリメントが提供される。サプリメントは、いずれの動物血清タンパク質も欠き得る。サプリメントは、いずれの動物血清由来成分も本質的に欠き得る。
【0059】
[0090]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、血清アルブミン、血清カタラーゼ、血清スーパーオキシドジスムターゼ、血清トランスフェリン、血清フィブロネクチン、血清ビトロネクチン、血清インシュリン、血清ヘモグロビン、血清アルドラーゼ、血清リパーゼ、血清トランスアミナーゼ、血清アミノトランスフェラーゼ、血清フェチュイン、又はこれらの組合せの相同体であり得る。
【0060】
[0091]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物アルブミン、植物カタラーゼ、植物スーパーオキシドジスムターゼ、植物トランスフェリン、植物フィブロネクチン、植物ビトロネクチン、植物インシュリン、植物レグヘモグロビン、植物アルドラーゼ、植物リパーゼ、植物トランスアミナーゼ、植物アミノトランスフェラーゼ、植物シスタチン、又はこれらの組合せである。
【0061】
[0092]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物アルブミン、植物カタラーゼ、植物フィブロネクチン、及び植物インシュリンを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物ビトロネクチンをさらに含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物スーパーオキシドジスムターゼをさらに含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は植物トランスフェリンをさらに含む。
【0062】
[0093]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物アルブミン相同体であり得る。一部の実施形態では、植物アルブミン相同体は、植物タンパク質単離物の水溶性画分由来である。植物タンパク質単離物の水溶性画分は、植物アルブミン及びグロブリンを含み得る。
【0063】
[0094]アルブミンは、球状タンパク質のファミリーであり、通常グロブリンタンパク質ファミリーに関連する。アルブミンは、水溶性タンパク質であり、濃縮した塩溶液中で適度に可溶性であり、及び熱変成を経験する。
【0064】
[0095]動物アルブミンは、一般に、血漿中に見出される。他の血液タンパク質とは異なり、それらはグリコシル化されない。最も一般的に特徴付けられた、及び医学的に使用されるアルブミンは、ウシ血清アルブミン(BSA)、65~70キロダルトン(Kd)である。これらの血清アルブミンは、集合して心臓型タンパク質を形成する3つの相同体ドメインを含む。各ドメインは、共通の構造モチーフを持つ2つのサブドメインの産物である。他のアルブミン型は、卵白中の保存タンパク質オボアルブミン、及び一部の植物の種子中の異なる保存アルブミンを含む。アルブミンは、細胞表面受容体アルボンジンに結合するが、ピノサイトーシスによって細胞膜に入ることもできる。
【0065】
[0096]血清アルブミンは、血液の膠質浸透圧の維持に重要な役割を果たし、脂肪酸、脂質、及び増殖因子を細胞に送達する重要な運搬タンパク質として利用される。好ましい実施形態では、アルブミン相同体は、少なくとも50μMのオレイン酸に結合するのに十分な濃度で使用され得る脂質担体である。
【0066】
[0097]植物アルブミンは、多くの植物、例えばエンドウ(Croy et al.,Biochem J.1984 Mar 15;218(3):795-803)、ヒラマメ(Neves et al.,Arch Latinoam Nutr.1996 Sep;46(3):238-42)、及びヘンプ(Wang et al.,2019,Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety,18(4):936-952)などの種子に豊富である。それらは、ジャガイモのような澱粉植物の根にも一般的である(Jirgensons,1946,Journal of Polymer Science,1(6):484-494)。植物アルブミンは、通常、保存タンパク質として機能する。それらは、通常、45~55Kdのホモ二量体として同定される(Croy et al.,Biochem J.1984 Mar 15;218(3):795-803)。
【0067】
[0098]植物保存アルブミンは、種子発芽の間に壊され、実生の発生のための窒素及び硫黄を提供する。種子成熟の間、これらのタンパク質は、翻訳後修飾、及びそれらが液胞中に大量に及び優れた安定性で堆積する前に輸送に供される(Mylne et al.,2014,Functional Plant Biology,41(7):671-677)。Sharma et al.(Planta.2015 May;241(5):1061-73))は、ヘモペキシンフォールド及び血球凝集活性を持つヒヨコマメ(Cicer arietinum)(chickpea)由来の植物アルブミンの結晶構造を提供する。Dziuba et al.(Acta Sci.Pol.,Technol.Aliment.2014,13(2):181-190)は、エンドウ(Pisum Sativum L.)種子のアルブミン及びグロブリン画分のプロテオミクス解析を提供する。
【0068】
[0099]アルブミンは、培養中でウシ血清アルブミンを置き換える、ジャガイモ、エンドウ、トウモロコシ、ダイズ、コムギ、オオムギ、ライムギ、オーツムギ、及びキビ中で同定及び精製された。一部の実施形態では、植物アルブミンは、ヒヨコマメアルブミン、ヘンプシードアルブミン、ヒラマメアルブミン、エンドウアルブミン、ダイズアルブミン、コムギアルブミン、ジャガイモアルブミン、又はこれらの組合せである。別の実施形態では、植物アルブミンは、エンドウアルブミン、ジャガイモアルブミン、又はこれらの組合せである。一実施形態では、植物アルブミンは、エンドウアルブミンである。一実施形態では、植物アルブミンは、ジャガイモアルブミンである。
【0069】
[00100]一部の実施形態では、植物アルブミンは、マメ科植物のアルブミンを含む。非
限定的な例としては、エンドウマメ(Pisum sativum)(Garden p
ea)(UniProtKB:P62931,P62930,P62927,P62926,P62928,P62929)、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)(Barrel medic)(UniProtKB:G7KHS2,I3SW97,I3S2Y7,A0A072V8Z6,A0A072UYJ7)、ジグザグクローバー(Trifolium medium)(UniProtKB:A0A392M2G9)及びヒヨコマメ(Cicer arietinum)(Chickpea)(UniProtKB:A0A1S2Z3C2)のアルブミンが挙げられる。そのようなタンパク質のアライメントは、高い配列類似性及び機能(例えば栄養保存活性)を実証するタンパク質のファミリー内の実質的な配列バリエーションを示す。参照のため、前述のタンパク質のアライメントを
図1に示し、血清アルブミンの相同体である13個のマメ科植物アルブミンの比較を示す。詳細には、A2U01_0001997(ジグザグクローバー(Trifolium medium))の78~122と比較したP62927の71~113の配列にわたり、A2U01_0001997とのP62927(マメアルブミン)のアライメントは、43アミノ酸のうち29が同一であり、43アミノ酸のうち34が同一又は保存されている。非保存領域では、本発明の相同体はよりバリエーション、例えば少なくとも95%同一性、少なくとも90%同一性、少なくとも85%同一性、少なくとも80%同一性、少なくとも70%同一性、少なくとも60%同一性、又は少なくとも50%同一性を有する。アライメントは、当業者による、血清タンパク質の相同体である植物タンパク質のファミリーの同定を例示する。置換、挿入及び欠失のような突然変異に関して、アライメントは、高い配列同一性及び類似性の領域を例示する。
【0070】
[00101]一部の実施形態では、植物アルブミンは、パタチン又はパタチン相同体を含む
。パタチンは、糖タンパク質のファミリー及び主要な塊茎保存タンパク質を含む。パタチンは、ジャガイモ並びにトウガラシ、タバコ、及びトマトのようなナス属の植物に見出される。パタチンは、脂質アシルヒドラーゼ(LAH)を含むエステラーゼ活性及びアシルトランスフェラーゼ活性を有することが示されている。植物アルブミンの非限定的な例は、MSによってジャガイモ抽出物において同定され、パタチン(UniProtKB:M1AGX5、Q2MYP6、Q2VBI2、Q2VBJ3、A0A097H149)及びパタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパク質(PNPLA)(UniProtKB:M1B3W0)が挙げられる。血清タンパク質相同体は、限定はされないが、パタチン、及び以下のUniProtKB受入番号によって記載されるアミノ酸配列を含むパタチン断片を含む:M1AGX5、P15477、Q2MY51、Q2MY37、Q2MY45、Q2MY36、P11768、Q3YJT2、Q2MY52、P15476、Q2MY42、Q2MY41、P07745、Q8LPW4、Q2MY48、Q2MY40、Q2MY44、P15478、Q42502、Q3YJT3、Q3YJT0、Q2MY56、Q2MY58、Q2MY54、Q2MY43、Q2MY50、Q2MY60、Q2MY39、Q2MY38、Q3YJT5、Q2MY59、Q2MY55、Q41487、Q3YJT4、Q3YJS9、Q8LSC1、Q2VBI5、A0A1S3YWX7、A0A1J6HXU4、A0A2G3DDK1、A0A1U8EX11、A0A1U8EML3、A0A2G2W4I9、A0A1U8EMR5、A0A2G3DDL4、M1BFJ1、A0A0V0HSH3、A0A1J6KIW4、O24152、A0A1J6I2H9、A0A1U7XFQ0、及びA0A1S4BJQ4。他の実施形態では、全パタチンの任意のパタチン断片は、以下のUniProtKB受入番号に記載の断片にサイズ及び位置が相当する並びに以下のUniProtKB受入番号に記載のアミノ酸配列を含み得る:Q9AUH5、Q2VB18、Q2VBJ4、Q9SB18、D1MI89、Q2VBI5、I6XCX7、Q2MYQ6、Q41475、Q2MYG0、Q2VBI9、Q7DMV4、Q2VBJ3、Q2VBI2、及びQ2MYP6。例示的な実施例として、Q9AUH5に記載の51アミノ酸(aa)相同体は、aa92~aa142のQ2MY48の断片である。Q2VB19に記載の132aa断片は、aa216~aa387のQ2MY58の断片である。同様に、Q2VBJ4に記載の132aa断片は、aa216
~aa387のQ2MY56の断片である。Q9SB18に記載の18aa断片は、aa369~aa386のQ8LPW4の断片である。記載した例におよそのサイズ及び位置が相当する任意のパタチンの断片は、本発明の血清タンパク質相同体を含む。
【0071】
[00102]一部の実施形態では、植物アルブミンは、種子保存アルブミン又はアルブミン
様タンパク質を含む。そのようなタンパク質は、栄養分保留、抗微生物又は抗真菌、セリン型エンドペプチダーゼ阻害剤のような活性及び機能を含み得る。非限定的な例としては、ピーナッツ(Arachis hypogaea)(Peanut)(UniProtKB:Q6PSU2、Q647G9)、ソバ(Fagopyrum esculentum)(Common buckwheat)(Polygonum fagopyrum)(UniProtKB:Q2PS07)、トウゴマ(Ricinus communis)(Castor bean)(UniProtKB:P01089、B3EWN4)、シロガラシ(Sinapis alba)(White mustard)(Brassica hirta)(UniProtKB:P15322)、ノハラガラシ(Sinapis arvensis)(Charlock mustard)(Brassica kaber)(UniProtKB:P38057)、カラシナ(Brassica
juncea)(Indian mustard)(Sinapis juncea)(UniProtKB:P80207)、チンゲンサイ(Brassica rapa subsp.chinensis)(Pak-choi)(Brassica chinensis)(UniProtKB:P84529)、ダイズ(Glycine max)(Soybean)(Glycine hispida)(UniProtKB:P19594)、ヘンプ(Hemp)(UniProtKB:A0A219D1L6)、バーソレシア・エクセルサ(Bertholletia excelsa)(ブラジルナッツ(Brazil nut))(UniProtKB:P04403、P0C8Y8)、マビンロウ(Capparis masaikai)(Mabinlang)(UniprotKB:P30233、P80352、P80351、P80353)、ゴマ(Sesamum indicum)(Oriental sesame)(Sesamum orientale)(UniProtKB:Q9XHP1、B3EWE9)、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)(Common dandelion)(Leontodon taraxacum)(UniProtKB:P86783)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)(Rape)(UniProtKB:P24565、P09893、P17333、P27740、P0C8Y8、P80208)、セイヨウカボチャ(Cucurbita maxima)(Pumpkin)(Winter squash)(UniProtKB:Q39649)、ヘリアンサス・アナス(Helianthus annuus)(ヒマワリ(Common sunflower))(UniProtKB:P23110、P15461)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Mouse-ear cress)(UniProtKB:Q9FH31、P15457、P15460、P15458)、ルピナス・アングスティフォリウス(Lupinus angustifolius)(Narrow-leaved blue lupine)(UniProtKB:F5B8W8、Q99235、F5B8X0、F5B8X1)、ジャポニカ米(Oryza sativa subsp.japonica)(イネ(Rice))(UniProtKB:P29835)、クサソテツ(Matteuccia struthiopteris)(European ostrich fern)(Osmunda struthiopteris)(UniProtKB:P17718)、トウヨウカボチャ(Cucurbita moschata)(Winter crookneck squash)(Cucurbita pepo var.moschata)(UniProtKB:P84576)、パッションフルーツ(Passiflora edulis)(Passion fruit)(UniProtKB:P84884)、及びカナダトウヒ(Picea glauca)(White spruce)(Pinus glauc
a)(UniProtKB:P26986)が挙げられる。そのようなタンパク質のアライメントは、実質的な配列バリエーションを示すが、高度の配列類似性及び機能を実証するタンパク質のファミリー内である。例えば、前述のタンパク質の選択のアライメントは
図2に示し、血清アルブミンの30個の種子の保存アルブミン相同体の比較を示す。アライメントは、血清タンパク質の相同体である植物タンパク質のファミリーの同定を例示する。置換、挿入及び欠失のような突然変異に関して、アライメントは、高い配列同一性及び類似性の領域を例示する。
【0072】
[00103]植物アルブミンは、一般に、約50~110Kdの高分子量アルブミン、約2
0~35Kdの平均分子量アルブミン、及び約13~17Kdの低分子量アルブミンに分類される。植物アルブミンは、通常、ホモ二量体として機能する。一部の実施形態では、植物アルブミンは、約13~110キロダルトン(Kd)の分子量を有する。一部の実施形態では、植物アルブミンは、約13~17Kdの分子量を有する。一部の実施形態では、植物アルブミンは、約20~35Kdの分子量を有する。一部の実施形態では、植物アルブミンは、約50~110Kdの分子量を有する。
【0073】
[00104]植物アルブミンは、培地中約0.01%~約10%(w/w)の濃度を有し得
る。一部の実施形態では、植物アルブミンは、培地中約0.01%~約5%(w/w)の濃度を有し得る。一部の実施形態では、植物アルブミンは、細胞培養培地中約0.01重量%~約5重量%の濃度である。一部の実施形態では、植物アルブミンは、約0.01重量%~約0.05重量%、約0.01重量%~約0.05重量%、約0.05重量%~約0.1重量%、約0.1重量%~約0.15重量%、約0.15重量%~約0.2重量%、約0.2重量%~約0.25重量%、約0.25重量%~約0.3重量%、約0.3重量%~約0.35重量%、約0.35重量%~約0.4重量%、約0.4重量%~約0.45重量%、又は約0.45重量%~約0.5重量%の濃度である。
【0074】
[00105]本明細書に開示される細胞培養培地サプリメント中の所与の成分の量が、細胞
培養培地の最終重量又は容積中で所望の濃度を提供するように算出され得ることが、当業者には理解され得るだろう。例えば、細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加される場合、細胞培養培地中の植物アルブミンの最終濃度が所望の通り(例えば、最終細胞培養培地中0.01%~約5% w/w)であるように、当業者は、細胞培養培地サプリメント中に含まれる植物アルブミンの適切な濃度を決定することができる。
【0075】
[00106]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物カタラーゼであり得る。
[00107]過剰な過酸化水素は、ほとんど全ての細胞成分に有害であり、そのため、その
速く、効率的な除去は、好気的に生活する生物に非常に重要である。細胞は、FBSを補充された培地中で増殖及び成長する。FBSが、細胞培養の保護的役割を有し、その除去が細胞の生存能を非常に減少させることが知られるようになって久しい。Lieberman及びOve(J Exp Med.1958 Nov 1;108(5):631-7)は、生存能のこの減少が、肝臓からのタンパク質抽出物を使用してレスキューされ、酵素カタラーゼが次いでその重要な成分として同定されたことを示した。したがって、B27サプリメント(Henna labからのakaB22サプリメント)を含む、細胞の無血清培養を支持する既知組成のサプリメントは、多くのカタラーゼを含有する。
【0076】
[00108]細胞培養中のカタラーゼは、ヒト赤血球(例えばSigma #C3556)
又はウシ肝臓(例えばSigma #C1345)由来であることが最も多い。カタラーゼは、単球菌(Micrococcus lysodeikticus)(例えばSigma #60634)若しくはコリネバクテリウム・グルタミウム(Corynebacterium glutamicum)(例えばSigma #02071)のような細菌から、又はクロコウジカビ(Aspergillus niger)(例えばSigm
a #C3513)のような真菌から産生されてもよい。
【0077】
[00109]カタラーゼ(CAT)は、ほとんど全ての生存生物で共通の抗酸化酵素である
。それは、過酸化水素の水と酸素への分解を触媒し、したがって、活性酸素種(ROS)による酸化的損傷から細胞を保護する。カタラーゼ機能は、細菌からヒトまで進化的に保存されている(Zamocy et al.,Antioxid Redox Signal.,2008 September;10(9):1527-1548)。植物カタラーゼファミリーは、3つのカタラーゼを含み、それらは葉及び根に豊富に発現される(Sharma and Ahmad,Chapter 4-Catalase:A Versatile Antioxidant in Plants Oxidative Damage to Plants Antioxidant Networks and Signaling,2014,P.131-148)。活性なカタラーゼは、非常に簡単に植物から単離することができ、その保護機能は、ウシ肝臓カタラーゼがジャガイモ/キャベツカタラーゼ(Gholamhoseinian et al.,2006,Asian Journal of Plant Sciences,5(5):827-831)又はキュウリカタラーゼ(Hu et al.,Genetics and Molecular Biology,39(3):408-415,2016)と交換される無血清培養に、既知組成のサプリメントを使用して、組織培養中で試験することができる。
【0078】
[00110]カタラーゼは、酸素に暴露されるほぼ全ての生存生物に見出される共通の水溶
性酵素である。それは、過酸化水素の水と酸素への分解を触媒する。それは、活性酸素種(ROS)による酸化的損傷から細胞を保護するのを助ける。その代謝回転速度は、自然界で公知の最も速いものの1つである。
【0079】
[00111]ヒトカタラーゼは、それぞれ500アミノ酸長の、4つのポリペプチド鎖の四
量体である。それは、酵素を過酸化水素と反応させる4つの鉄含有ヘム基を含有する。
[00112]植物カタラーゼは、それらの成長条件に応じて、それらの最適温度及びpH範
囲が異なる。それらは、それらが不均化反応を触媒する際に還元剤を必要としないことにより、ペルオキシダシンを代謝することができる他の酵素と最も明確に区別される(Mhamdi et al.,2010,Journal of Experimental
Botany,61(15):4197-4220)。これらの酵素は、質量で50~70Kdのポリペプチドからなり、ヘム補欠分子族を担持する各単量体により四量体に編成される(Regelsberger et al.,Plant Physiology and Biochemistry,2002,40:479-490)。
【0080】
[00113]ヘム依存性カタラーゼの第2の型は、一部の真菌及び原核生物に見出される構
造的に異なるタンパク質である、二機能性カタラーゼ-ペルオキシダーゼである(Mutsada et al.,Biochemical Journal,1996,316:251-257;Regelsberger et al.,Plant Physiology and Biochemistry,2002,40:479-490)。
【0081】
[00114]Martins及びEnglish(RedoxBiology,2014,
2:308-313)により、カタラーゼ活性はリッチ培養培地中でH2O2によって刺激され、酵母でのH2O2耐性及び適応に必要とされる。
【0082】
[00115]カタラーゼの複数の分子形態は、異なる植物種、例えばタバコ(Nicoti
ana tobacco)(Havir and McHale,1987,Plant
Physiol.84:450-455.)、綿(Ni et al.,1990,Biochim.Biophys.Acta.1049:219-222)、ニコチアナ・
プルムバギニフォリア(Nicotiana plumbaginlfolia)(Willekens et al.,1994,FEBS Lett.352:79-83.)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Zhong et
al.,1994,Plant Physiol.104:889-898)、テーダマツ(Pinus taeda)(Mullen and Gifford,1993,Plant Physiol.103:477-483)、ヒマワリ(Eising et al.,1989,Arch.Biochem.Biophys.278:258-264)、カボチャ(Yamaguchi et al.,1986,Eur.J.Biochem.159:315-322)及びトマト(Gianinetti et al.,1993,Physiol.Plant.89:157-164)で報告された。カタラーゼの命名は、異なる植物種でのそのアイソフォームにも基づく。Willekens et al.(1995,EMBO J.16:4806-4816)によって提唱された分類により、クラスI、クラスII及びクラスIIIカタラーゼは、それぞれ光合成組織、維管束組織及び生殖組織において特異的に発現される。複数のカタラーゼアイソザイムの存在は、様々な植物種におけるカタラーゼの構造的及び機能的多様性を示唆する。様々なカタラーゼのcDNAは、遺伝子及びそれらの制御成分を理解するために、異なる植物種から単離され特徴付けられている(Scandalios,1992,Current Communications in Cell and Molecular
Biology:Molecular Biology of Free Radical Scavenging Systems(5).Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)。カタラーゼのアイソザイムは、植物における発生段階及び器官特異性を示す。
【0083】
[00116]植物カタラーゼは、シロイヌナズナカタラーゼ、キャベツカタラーゼ、キュウ
リカタラーゼ、綿カタラーゼ、ジャガイモカタラーゼ、カボチャカタラーゼ、ホウレンソウカタラーゼ、ヒマワリカタラーゼ、タバコカタラーゼ、トマトカタラーゼ、又はこれらの組合せであってもよい。一実施形態では、植物カタラーゼは、キャベツカタラーゼ、キュウリカタラーゼ、ジャガイモカタラーゼ、又はこれらの組合せである。一実施形態では、植物カタラーゼは、キュウリカタラーゼである。一実施形態では、植物カタラーゼはジャガイモカタラーゼである。
【0084】
[00117]植物カタラーゼは、約50~70キロダルトンの分子量を有し得る。
[00118]一部の実施形態では、培地中の植物カタラーゼの濃度は、約1~約100ng
/ml、例えば約7ng/ml、約11ng/ml、約14ng/ml、約18ng/ml、約21ng/ml、約28ng/ml、約35ng/ml、又は約55ng/mlの濃度であり得る。一部の実施形態では、培地中の植物カタラーゼの最終濃度は、約1g/l~約5g/l、及び有利には2.5g/lであり得る。
【0085】
[00119]Uniprotデータベースは、ジャガイモカタラーゼ(UniprotKB
:M1ALT0)に90%同一性を有する少なくとも128タンパク質及びジャガイモカタラーゼに50%同一性を有する少なくとも958タンパク質を含有する。同様に、UniProtデータベースは、コムギ(Triticum)カタラーゼ(UniProtKB:Q43206)に90%同一性を有する少なくとも23タンパク質及びコムギカタラーゼに50%同一性を有する少なくとも958タンパク質を含有する。本発明に従って使用した植物カタラーゼの供給源及びそれらの植物由来の例示的なカタラーゼは、限定はされないが、ダイズ(UniProtKB:O48561)、ヒヨコマメ(UniProtKB:A0A1S2Y835、Q9ZRU4)、ペポカボチャ(Summer squash)(UniProtKB:P48350)、リョクトウ(UniProtKB:P32290)、インゲンマメ(UinProtKB:T2DN96、V7AQS4)、及び
綿(UniProtKB:P17598、A0A5D2M8G9、A0A5J5SMB2)がさらに挙げられる。別の緑色植物データベース源は、Phytozome、the Plant Comparative Genomics portal of the
Department of Energy’s Joint Genome Institute(Heinze,et al.,(2002)Plant Catalases.In:Baker A.,Graham I.A.(eds)Plant Peroxisomes.Springer,Dordrecht.)である。
【0086】
[00120]本明細書に記載及び例示されるように、血清カタラーゼの植物相同体並びにフ
ァミリーのタンパク質間及び個々のメンバー間の保存及び非保存配列の領域が容易に認識される。置換、挿入及び欠失のような突然変異に関して、アライメントは、高い配列同一性及び類似性の領域に位置する。
【0087】
[00121]植物カタラーゼの単離は、当業者に周知であり、液体分画、遠心分離、カラム
交換を含み、その全てが日常的な実験である。カタラーゼは、本開示において、ジャガイモで同定された。
【0088】
[00122]少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物フィブロネクチン、植物ビト
ロネクチン、又はこれらの組合せであり得る。
[00123]培養中での細胞生存は、接着のために提供される表面によることが多い。In
vivoでは、基底膜の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質は、表面糖タンパク質のインテグリンファミリーを結合することにより、細胞を近隣組織へと接着させる。ラミニン、コラーゲンIV及びヘパラン硫酸は、成体組織において基底膜タンパク質を構成し、胚組織及び再生組織はフィブロネクチンも示す。同じECMタンパク質の多くは、動物由来であるか又は組換えにより発現され、in vitroでの細胞接着及び増殖を支持する。
【0089】
[00124]植物では、支持体及び足場のECM様タンパク質の役割も認識されている。い
くつかの動物ECM様タンパク質は、植物細胞壁で何年にもわたり発見された(Seymorr et al.2004,Biotechnology and Genetic
Engineering Reviews,21(1):123-132)。フィブロネクチン様タンパク質は、細胞壁-細胞膜接着に関与し、塩ストレス/水分欠乏の条件下で豊富であることが示されている(Zhu et al.,1993)。Pellenc及びcolleagues(Pellenc et al.,2004,Protein
Expression and Purification 34:208-214)は、ヒト血漿からのフィブロネクチン単離のものと類似のプロトコールを使用して、植物からフィブロネクチン様タンパク質を単離することができた。
【0090】
[00125]ヒトビトロネクチンに免疫学的に関連するタバコタンパク質は、非適応及び塩
適応タバコ細胞の細胞壁及び膜に見出され、適応細胞に豊富である(Zhu,J.K.et al.,Plant J.for Cell and Molecular Biology,30 Apr 1993,3(5):637-646)。タバコ細胞の55Kdのポリペプチドに特異的なSandersが発見した抗体は、ヒトVnも認識することができた(Sanders et al.,1991,Plant Cell,3:629-635)。タバコミクロソーム膜の59Kdタンパク質に特異的な単一特異性抗体は、ヒトフィブロネクチンを認識する。
【0091】
[00126]フィブロネクチンの植物相同体は、マメフィブロネクチン(UniProtK
B:V7C3U9、V7CSV1、A0A0L9VRR4、A0A1S3UT35、A0A1S3UV51)、ヒヨコマメフィブロネクチン(UniProtKB:A0A1S2
Z0R0、A0A1S2YDZ6、A0A1S3E9P2、A0A1S3E9K8、A0A1S2YE00)、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン(UniProtKB:1NXC4、A0A0E0JVM6、J3L9M7、A0A0E0N9Z2)、ダイズフィブロネクチン(UniProtKB:I1MSQ1、I1KIT9、K7L4U6、A0A0R0IKE0)タバコフィブロネクチン(UniProtKB:A0A1J6IU80、A0A1S4B3E7、A0A1S4AF52、A0A1J6HY83)又はコムギフィブロネクチン(UniProtKB:A0A3B6NN97、A0A3B6KF25、A0A3B6QBJ6)、又はヒヨコマメ病害真菌フィブロネクチン(UniProtKB:A0A163LSC5、A0A163GQI0)であり得る。
【0092】
[00127]フィブロネクチン及びビトロネクチン様タンパク質は、いくつかの植物で同定
され、粗製の植物抽出物を使用して、細胞培養培地中での細胞の接着及び増殖を支持した。
【0093】
[00128]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物フィブ
ロネクチンであり得る。一部の実施形態では、植物フィブロネクチンは、マメフィブロネクチン、ヒヨコマメフィブロネクチン、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン、ダイズフィブロネクチン、タバコフィブロネクチン、コムギフィブロネクチン又はこれらの組合せである。一部の実施形態では、植物フィブロネクチンは、ヒヨコマメフィブロネクチン、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン、ダイズフィブロネクチン、コムギフィブロネクチン、又はこれらの組合せである。一実施形態では、植物フィブロネクチンは、ヒラマメフィブロネクチンである。一実施形態では、植物フィブロネクチンは、イネフィブロネクチンである。一実施形態では、植物フィブロネクチンは、ダイズフィブロネクチンである。一実施形態では、植物フィブロネクチンは、コムギフィブロネクチンである。
【0094】
[00129]植物フィブロネクチンは、約40~60Kdの分子量を有し得る。動物血清フ
ィブロネクチンは、より大きい、約250Kdの2つのサブユニットからなることが多い。一部の実施形態では、植物フィブロネクチンは、約40~60Kdの分子量を有する。
【0095】
[00130]一部の実施形態では、植物フィブロネクチンは、培地中約0.1μg/ml~
約100μg/mlの濃度である。一部の実施形態では、植物フィブロネクチンは、培地中約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約15μg/ml、約20μg/ml、約30μg/ml、約40μg/ml、又は約50μg/mlの濃度である。
【0096】
[00131]一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物ビトロ
ネクチンであり得る。
[00132]一部の実施形態では、植物ビトロネクチンは、培地中約0.1μg/ml~約
100μg/mlの濃度である。一部の実施形態では、植物ビトロネクチンは、培地中約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約15μg/ml、約20μg/ml、約30μg/ml、約40μg/ml、又は約50μg/mlの濃度である。
【0097】
[00133]植物フィブロネクチン及びビトロネクチンの単離は、当業者に周知であり、液
体分画、遠心分離、カラム交換を含み、その全てが日常的な実験である。
[00134]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物レグヘモグロビンであり得る
。
【0098】
[00135]一部の実施形態では、植物レグヘモグロビンは、培地中約1μg/ml~約1
00μg/mlの濃度である。
[00136]レグヘモグロビンは、窒素固定細菌が根に定着することに応答してマメ科植物
によって産生される、マメ科植物の窒素固定根粒に見出される酸素運搬タンパク質である。レグヘモグロビンは、本発明の血清タンパク質相同体を含む。レグヘモグロビンは、限定はされないが、エンドウマメ(Pisum sativum)(Garden pea)(UniProtKB:LGB1_PEA、LGB2_PEA、LGB3_PEA、LGB4_PEA、LGB5_PEA、LGB6_PEA)、アルファルファ(Medicago sativa)(Alfalfa)(UniProtKB:LGB1_MEDSA、LGB2_MEDSA、LGB4_MEDSA、Q42928_MEDSA、Q43786_MEDSA、ハマナタマメ(Canavalia lineata)(ハマアズキ(Beach bean))(Dolichos lineatus)(UniProtKB:LGB_CANLI)、ヒヨコマメ(Cicer arietinum)(Chickpea)(Garbanzo)(UniProtKB:A0A1S2YZ78、A0A1S2XXT5、A0A1S2XKV1、A0A1S2XMF3)、ダイズ(Glycine MAX)(Soybean)(Glycine hispida)(UniProtKB:A0A0R0HW51、Q96428、Q42801)、ツルマメ(Glycine soja)(Wild soybean)(UniProtKB:A0A445IPX6)、及びアルファルファ(Medicago sativa)(Alfalfa)(UniProtKB:P28010、14962、Q42928、Q43786)を含む。
【0099】
[00137]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物リパーゼであり得る。
[00138]一部の実施形態では、植物リパーゼは、培地中約1μg/ml~約100μg
/mlの濃度である。
【0100】
[00139]血清タンパク質相同体のさらなる非限定的な例としては、以下の血清タンパク
質の相同体が挙げられる。リパーゼは、脂肪の脂肪酸及びグリセロール又は他のアルコールへの分解を触媒する酵素である。リパーゼの多くは、エンドウマメ(garden pea)(Pisum sativum)(UniProtKB:Q01517)、コムギ(Triticum aestivum)(wheat)(UniProtKB:A0A1D5UIX7、A0A2X0SGN9、A0A3B6GZV3、A0A3B6GY43)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Mouse-ear cress)(UniProtKB:A0A178WBX6)及び多くの他のものを含む供給源からの植物間で見出すことができる。植物リパーゼ調製方法は、当業者で周知である(例えば、Wagenknecht,A.C.et al.,1958,Journal of Food Science,23(5):439-445;Barros,M.et al.,2010,Brazilian Journal of Chemical Engineering 27(1):15-29参照)。
【0101】
[00140]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物シスタチンであり得る。
[00141]一部の実施形態では、植物シスタチンは、培地中約1μg/ml~約100μ
g/mlの濃度である。
【0102】
[00142]フェチュインは、肝臓内で製造され、血流へと分泌される血液タンパク質であ
り、血清アルブミンを含む。それらは、血流中の広範な積荷物質の輸送及び利用可能性を媒介する結合タンパク質の群に属する。血清アルブミンは、成体動物の血漿中に最も豊富なタンパク質であるが、フェチュインは、胎児血液中により豊富である。フェチュインAは、循環中における遊離脂肪酸の主要な担体タンパク質である。フェチュインAは、細胞
接着及びシグナル伝達に役割を果たし、ある特定のがん細胞型の増殖、運動性、及び侵入を調節することが報告されている。フェチュインは、タンパク質のシスタチンスーパーファミリーに属し、遺伝子重複及び遺伝子セグメントの交換によってタンパク質シスタチンから進化した。哺乳動物では、フェチュインA及びフェチュインBは、シスタチンスーパーファミリーのパラロガスな血漿タンパク質である(例えば、Karmilin et al.,2019,Sci Rep.2019;9:546参照)。多くのシスタチンは、パパイン様システインプロテイナーゼの阻害剤として同定された。フェチュインAはプロテアーゼの阻害剤であることが公知ではないが、フェチュインBは、ある特定のメタロプロテイナーゼを選択的に阻害する。哺乳動物シスタチンは、通常、システインプロテアーゼ阻害剤であり、全ての生体体液中に見出される。哺乳動物シスタチンCは、分泌タンパク質であり、細胞によって内部移行され(Ekstrom,U.et al.,2008,FEBS Journal 275:4571-4582)、細胞培養応用で使用され、ポリオ、ヘルペス単純及びコロナウイルス複製の阻害を含む、細胞内プロセスを阻害し得る。
【0103】
[00143]MEROPデータベースは、I25ファミリーのメンバーとしてシスタチンタ
ンパク質を分類する。シスタチンファミリー(I25と示す)は、4つのサブファミリー:I25A、I25B、I25C、及び未分類へと細分されたシスタチン分類を含むシステインプロテアーゼ阻害剤を含む(Rawlings et al.,2014,Nucleic Acids Res.42:D503-D509;Martinez,M.et al.,2009,Plant Physiol.2009,Nov;151(3):1531-45)。植物シスタチン(フィトシスタチンとして分類)は、N末端アルファヘリックス(植物シスタチンにのみ存在)を含み、主に種子から同定され、一部は他の植物組織で検出された。ジャガイモ(Solanum tuberosum)及びトマト(Solanum lycopersicum)のマルチシスタチンは、液胞中及び細胞質中に見出すことができる(Nissen et al.,2009,Plant Cell 21:861-875;Madureira et al,2006,Environ Exp Bot 55:201-208)。
【0104】
[00144]血清タンパク質の植物相同体は、植物シスタチンを含む。1つは、N末端アル
ファヘリックスの存在であり、植物シスタチンにのみ存在する。非限定的な例としては、ササゲ(Vigna unguiculata)(cowpea)シスタチン(UniProtKB:A0A4D6KLC0、A0A4D6NH52)、ダイズ(Glycine
max)(Soybean)シスタチン(UniProtKB:I1K3Q1、P25973、A0A0R4J598、I1MYC1)、オオムギ(Hordeum vulgare)(Barley)シスタチン(UniProtKB:Q9LEI7)、イネ(Oryza sativa)(rice)シスタチン(UniProtKB:A2XS65、Q6K309、A0A1S4AF52、A0A1J6HY83)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)(potato)シスタチン(UniProtKB:P37842、M1B0W4、M1C699、M1B0W5、M1BIR8)、トウモロコシ(Zea mays)(maize)シスタチン(UniProtKB:P31726、B6SNY0、B6UGN8)、コムギ(Triticum)(wheat)シスタチン(UniProtKB:Q8W252)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)(kidney bean)シスタチン(UniProtKB:V7C6Q5、V7BNT8)、ピーナッツ(Arachis hypogaea)(peanut)シスタチン(UniProtKB:A0A445AB69、A0A445DKL4、E5BDA5)、ヒマワリ(Helianthus annuus)(common sunflower)シスタチン(UniProtKB:Q10992、Q109923)、又はキイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)(粘菌(slime mold))シスタチン(UniProtKB:Q65YR7、Q65
YR8、Q5R1U3)(緑色植物データベースリソースPhytozome及びシスタチンのUniProtを参照)が挙げられる。
【0105】
[00145]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物アルドラーゼであり得る。
[00146]一部の実施形態では、植物アルドラーゼは、培地中約1μg/ml~約100
μg/mlの濃度である。
【0106】
[00147]アルドラーゼは、ある特定の糖の分解を助ける酵素であり、筋肉組織で多く見
出され、血液中で検出可能である。植物相同体の例は、フルクトース-1,6-ビスフォスフェートアルドラーゼ(FBA)であり、解糖系、糖新生、及びカルビン回路に関与する重要な植物酵素である(Lv et al.,2017,Front Plant Sci.8:1030)。別の供給源は、エンドウマメである(UniProtKB:Q01517)。
【0107】
[00148]タンパク質の他の好適な植物相同体は、トランスアミナーゼ及びアスパラギン
酸アミノトランスフェラーゼを含む。
[00149]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物トランスアミナーゼであり得
る。トランスアミナーゼの非限定的な例としては、エンドウマメ(garden Pea)(Pisum sativum)(UniProtKB:P49364、Q9AVH0、O22464)及びコムギ(Triticum)(Wheat)(UniProtKB:P84188)が挙げられる。一部の実施形態では、植物トランスアミナーゼは、培地中約1μg/ml~約100μg/mlの濃度である。
【0108】
[00150]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物アミノトランスフェラーゼで
あり得る。Matheronは、エンドウマメのアミノトランスフェラーゼの精製及び特性を記載する(Matheron et al.,Plant Physiol.1973,52:63-67)。アスパラギン酸アミノトランスアミナーゼの非限定的な例としては、ダイズ(Soy)(Glycine max)(UniProtKB:I1JUS6)及びコムギ(Triticum)(Wheat)(UniProtKB:B5B1F8)が挙げられる。一部の実施形態では、植物アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼは、培地中約1μg/ml~約100μg/mlの濃度である。
【0109】
[00151]植物起源からのインシュリン相同体は、本開示の一部のように細胞培養サプリ
メントとしても使用され得る。
[00152]一部の実施形態では、インシュリンの構造的及び機能的相同体は、細胞培養培
地サプリメントに含まれ得る。そのようなインシュリン相同体の例としては、限定はされないが、グルコキニン、チャランチン、及びコロソリン酸が挙げられる。グルコキニンは、インシュリンの構造的相同体である。チャランチンは、ニガウリ(Momordica
charantia)植物、又はビターレモン由来である、2つのステロイド配糖体の混合物である。コロソリン酸は、バナバ(Lagerstroemia speciose)植物に見出される5環のトリテルペン酸であり、通常バナナの葉から抽出される。
【0110】
[00153]一部の実施形態では、植物インシュリンは、グルコキニン、チャランチン、コ
ロソリン酸、又はこれらの組合せである。一実施形態では、植物インシュリンは、グルコキニンである。一実施形態では、植物インシュリンは、チャランチンである。一実施形態では、植物インシュリンは、コロソリン酸である。
【0111】
[00154]一部の実施形態では、植物インシュリンは、約6Kdの分子量を有する。一部
の実施形態では、植物インシュリンは、培地中約0.05μg/ml~約10μg/mlの濃度である。
【0112】
[00155]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物スーパーオキシドジスムター
ゼ(SOD)であり得る。一部の実施形態では、植物SODは、約80~89Kdの分子量を有する。一部の実施形態では、植物SODは、培地中約1μg/ml~約20μg/mlの濃度である。
【0113】
[00156]少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物トランスフェリンであり得る
。
[00157]本明細書で特異的に同定された血清代替タンパク質は、例示であり、限定では
ない。非動物タンパク質のオルソログ及び/又はパラログも含まれる。オルソログは、種分化イベントの結果である相同遺伝子又はタンパク質として定義されることが多い。簡単なモデルでは、種分化イベントの後、オルソログは第1及び第2の種の遺伝子又はタンパク質が分岐する時に生じる。オルソログの配列は異なってもよいが、オルソログタンパク質及びコードするヌクレオチドは、同じ又は類似の機能若しくは活性を有するか、又は異なる種で同じ役割を果たす傾向があり、種分化イベントで維持されている。パラログは、種における複製イベントの結果である相同遺伝子又はタンパク質として定義されることが多い。簡単なモデルでは、パラログは遺伝子複製イベント、及び他からの1コピーの分岐の後に生じる。パラログは、同じ種で別々に進化することができ、したがってそれらの役割がより多様である傾向があるが、それらの機能は類似していてもよい。例えば、パラログは、類似の酵素活性を有するが、異なる基質に作用してもよく、又は異なる組織で、又は異なる発生段階で発現されてもよい。オルソログとパラログの間の関係は、より複雑であり得、例えば遺伝子複製後に種分化がある。
【0114】
[00158]代替の実施形態は、置換、挿入、及び欠失を含む、突然変異を含む血清タンパ
ク質相同体を含む。特定のアミノ酸配列バリアントは、1アミノ酸、2、3、4、5~10、10~20又は20~30アミノ酸の挿入、付加、置換又は欠失によって参照配列から異なり得る。一部の実施形態では、代替の実施形態配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の残基が挿入、欠失又は置換された参照配列を含み得る。例えば、5、10、15、最大20、最大30又は最大40残基が、挿入、欠失又は置換されてもよい。
【0115】
[00159]血清タンパク質の任意の特定の植物相同体に関し、オルソログ及びパラログを
含む非動物相同体の比較は、作製又は選択され得る突然変異のガイドとして寄与する。例えば、相同体タンパク質のどの部分が、保存度がより高いか又はより低いか、及びどの部分がより大きい又はより小さいバリエーションを含み得るかは、そのような配列アライメントから明らかである。したがって、タンパク質が好適な非動物血清タンパク質相同体であるかどうか決定する1つの方法は、本明細書で提供される相同体をアラインし、相同体のどの部分がより高いか若しくはより低い保存度又はより大きい若しくはより小さいバリエーションを含むか、又はどこに挿入及び欠失があり得るか同定し、次いで問題のタンパク質を、本明細書で提供される1つ又はそれ以上の相同体と比較することである。Smith and Watermanのような位置アライメントアルゴリズムを使用して、2つ又はそれ以上の相同体をアラインすることができる。そのようなアルゴリズムは、コンピューターに内蔵され、アライメントを最適化し得る。いくつかのコンピュータープログラムが利用可能であり、Smith and Watermanアルゴリズムを用いる。例えば、BestFitはSmith-Watermanアルゴリズムを使用し、2つの配列間の最高の位置アライメントを見出す。他のアルゴリズム、例えばBLAST、psiBLAST又はTBLASTN(Altschul Et Al.(1990)J.Mol.Biol.215:405-410の方法を使用する)、FASTA(Pearson and Lipman(1988)PNAS USA 85:2444-2448の方法を使用する)が使用されてもよい。
【0116】
[00160]複数の配列のアライメントにより、高度に保存されたアミノ酸残基又はインバ
リアントが同定される。配列比較は、配列間で同一又はほぼ同一であり、機能のために重要でありそうなアミノ酸残基、保存又は高度に保存されているアミノ酸、及び可変的であるアミノ酸を強調する。アライメントは、1つのタンパク質から別のタンパク質へ、したがって必ずしも必要ではないタンパク質の配列の挿入又は欠失があることも示す。
【0117】
[00161]参照として特に開示されるタンパク質のいずれか1つをとり、オルソログ、パ
ラログ及びそれらの変異体を含む、本発明の相同体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の保存置換によって、保存領域おいて参照と異なり得る。ガイドとして、開示される配列の対比較を見ることができる。保存置換は、類似の特性を有する異なるアミノ酸とのアミノ酸の置換を含む。例えば、脂肪族残基が別の脂肪族残基によって置き換えられてもよく、非極性残基が別の非極性残基によって置き換えられてもよく、酸性残基が別の酸性残基によって置き換えられてもよく、塩基性残基が別の塩基性残基によって置き換えられてもよく、極性残基が別の極性残基によって置き換えられてもよく、又は芳香族残基が別の芳香族残基によって置き換えられてもよい。
【0118】
[00162]アミノ酸は、共通の側鎖特性にしたがって異なるクラスにグループ分けされ得
る:a.疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;b.中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;c.酸性:Asp、Glu;d.塩基性:His、Lys、Arg;e.鎖の方向に影響する残基:Gly、Pro;芳香族:Trp、Try、Phe。非保存置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを必要とする。アミノ酸は、共通の側鎖特性にしたがって異なるクラスにグループ分けされ得る:a.疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;b.中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;c.酸性:Asp、Glu;d.塩基性:His、Lys、Arg;e.鎖の方向に影響する残基:Gly、Pro;芳香族:Trp、Try、Phe。非保存置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを必要とする。
【0119】
[00163]以下の表1に示される保存置換
【0120】
【0121】
[00164]一部の実施形態では、同定した相同体に、少なくとも50%、少なくとも55
%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%配列同一性を有する相同体が含まれる。
【0122】
[00165]一部の実施形態では、相同体は、同定した相同体と少なくとも50%配列同一
性を有する。
[00166]一部の実施形態では、相同体は、同定された相同体と少なくとも60%の配列
同一性を有する。
【0123】
[00167]一部の実施形態では、相同体は、同定された相同体と少なくとも70%の配列
同一性を有する。
[00168]一部の実施形態では、相同体は、同定された相同体と少なくとも80%の配列
同一性を有する。
【0124】
[00169]一部の実施形態では、相同体は、同定された相同体と少なくとも90%の配列
同一性を有する。
[00170]一部の実施形態では、相同体は、同定された相同体と少なくとも95%の配列
同一性を有する。
【0125】
[00171]一部の実施形態は、血清タンパク質相同体の、他のタンパク質及びポリペプチ
ドへの融合を含む。融合タンパク質は、生産、活性、安定性、及び/又は標的化の増強を示し得る。血清タンパク質類似体は、単独で、又は組み合わせて評価され得る。
【0126】
[00172]一部の実施形態では、植物タンパク質相同体は、糖鎖工学的に操作され得る。
グリコシル化は、主な翻訳後タンパク質修飾の1つである。N結合型グリコシル化は、グリカンと呼ばれることもある、いくつかの糖分子からなるオリゴ糖、炭水化物の窒素原子への結合である(タンパク質のアスパラギン(Asn)残基のアミド窒素)。O結合型グリコシル化は、タンパク質のセリン(Ser)又はスレオニン(Thr)残基の酸素原子への糖分子の結合である。グリコシル化は、タンパク質の構造及び機能に必須であることが多い。N-及びO-グリカンは、タンパク質の構造、安定性、凝集、及び熱変成に重要な役割を果たすことが示されており、組換え治療タンパク質の薬力学及び薬物動態に影響することが観察されている。植物及び昆虫糖タンパク質のN及びO結合型炭水化物部分は豊富な環境免疫決定因子でもある。
【0127】
[00173]糖鎖工学は、グリカンの選択又はリモデリングを指す。糖鎖工学は、発現のた
めの宿主生物を選択するステップを含む。CHOのような、非ヒト哺乳動物細胞が、ヒト様グリコシル化プロファイルを有する生物製剤の生産のために主に使用されてきた。
【0128】
[00174]酵母及び他の真菌宿主は、組換えタンパク質の生産のための重要な生産プラッ
トフォームである。酵母株ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の細胞系は、ヒトでのグリコシル化のプロセスを模倣する一連の酵素反応を実行するように開発された。例えば米国特許第7029872号、同第7326681号、及び同第7449308号は、シアル酸付加二分岐複合体であるN結合型グリカンを含む、ヒトタンパク質に類似の組換え糖タンパク質を生産するための方法を記載する。糖鎖工学は、特定のグリコシル化を行うために工学的に操作された生物でタンパク質を発現するステップを含み得る。
【0129】
[00175]糖鎖工学は、例えば、エンドグリコシダーゼ及びグリコシンターゼのような酵
素を用いるなど、酵素的なものであり得る。例示的なエンドグリコシダーゼとしては、限定はされないが、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼH(Endo-H)が挙げられ、高マンノースのキトビオースコア内部及び一部のN結合型糖タンパク質のハイブリッドオリゴ糖内部で切断する組換えグリコシダーゼである。エンド-N-アセチルグルコサミニダーゼF2(Endo-F2)は、高マンノース及び二分岐N-グリカンを切断し、エンド-N-アセチルグルコサミニダーゼF3(Endo-F3)は、ペプチド及びタンパク質の三分岐及びアルファ-(1-6)-フコシル化二分岐Nグリカンを切断する(Plummer et al.,Anal Biochem 235:98-101,1996)。そのような酵素は、オリゴ糖を単一の糖単位(例えばGlcNAc)に消化するために使用することができ、次いでグリコシルトランスフェラーゼによって媒介されるグリコシル化による選択のオリゴ糖によって伸長することができる。α-フコシダーゼは、アスパラギン結合末端GlcNAcを脱フコシル化するために用いることができる。単一の糖単位を伸長するためのグリコシルトランスフェラーゼとしては、限定はされないが、エンド-β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが挙げられる。オリゴ糖は、シアル化され得る。シアリルトランスフェラーゼを使用して、シアル酸部分のオリゴ糖アクセプターの末端部分への移行を触媒することができる。各シアリルトランスフェラーゼは、特定の糖基質に特異的である。
【0130】
[00176]オリゴ糖を完全に除去するため、アミダーゼであるPNGase Fは、最も
奥のGlcNAcと高マンノース、ハイブリッド、及び複合体オリゴ糖のアスパラギン残基の間を切断し、ほとんど全てのN結合型オリゴ糖を除去するのに有効であり、さらなる
解析のためにNグリカンコアオリゴ糖を無傷のままにする(国際公開第2013/120066号)。
【0131】
[00177]代謝糖鎖工学(MGE)は、グリコシル化を調節するために細胞の代謝を操作
するための技術である。MGEを使用して、天然グリカンのレベルを増加させる並びに非天然単糖を複合多糖に置換することができる(Agatemor et al.,Nat
Rev Chem 3:605-620(2019))。例えば、MGEを使用するステップは、代謝基質(例えば、ManNAc、Neu5Ac、及びCMP-Neu5Ac類似体)をシアル酸生合成経路に供給するために用いることができ、非天然のシアロシドディスプレイを生じる(Du et al.,2009,Glycobiology 19(12):1382-401)。
【0132】
[00178]ある特定の非哺乳動物(例えば植物)タンパク質は、本開示の血清タンパク質
の相同体ではない。例えば、細胞培養システムはセリンプロテアーゼ阻害活性を含む成分を含み得るが、ダイズトリプシン阻害剤は、少なくとも1つの植物タンパク質相同体ではない。同様に、ダイズベースの抗酸化剤は、血清タンパク質相同体ではない。したがって、一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、トリプシン阻害剤ではない。一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、ダイズベースの抗酸化剤ではない。
【0133】
[00179]植物タンパク質相同体は、多くの供給源から得ることができる。
[00180]一部の実施形態では、植物タンパク質相同体は、血清タンパク質の少なくとも
1つの植物タンパク質相同体を含む、任意の植物抽出物又は植物抽出物の画分であり得る。非限定的な例により、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物タンパク質抽出物の水溶性画分由来又はその中であり得る。植物タンパク質単離物の水溶性画分は、植物アルブミン及び植物グロブリンを含み得る。他の実施形態では、植物タンパク質単離物の水溶性画分は植物アルブミンを含み得る。植物抽出物及び画分を得る方法は、当技術分野で公知である。
【0134】
[00181]植物タンパク質抽出物は、1つ又はそれ以上の植物タンパク質相同体を含み得
る。例えば、一部の実施形態では、植物タンパク質単離物は、植物アルブミン及び植物グロブリンを含み得る。他の実施形態では、植物タンパク質単離物は、植物アルブミンを含み得る。
【0135】
[00182]一部の実施形態では、植物タンパク質相同体は、植物抽出物から単離される。
植物タンパク質の単離は、当業者に周知であり、非限定的な例により、液体分画、遠心分離、カラム交換を含み、その全てが日常的な実験である。
【0136】
[00183]植物タンパク質相同体は、植物抽出物から精製され得る。したがって、一部の
実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体が純粋形態であり得る。
[00184]他の実施形態では、植物タンパク質相同体は、植物抽出物又は植物単離物から
、それらの純粋形態に精製されない。むしろ、少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む植物抽出物又は単離物は、少なくとも1つの植物タンパク質相同体の供給源として使用される。したがって、一部の実施形態では、少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、植物抽出物画分の形態であり得る。植物画分は、単離物又はさらなる画分へとプロセス又はさらに分離され得る。一部の実施形態では、植物画分又は単離物は濃縮され得る。
【0137】
[00185]一部の実施形態では、血清タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同
体は、組換えにより生産される。植物タンパク質の組換え生産の方法は、当業者に公知である。一度生産されると、一部の実施形態では、組換え植物タンパク質相同体は、当業者
に公知の方法によって単離及び/又は精製され得る。
【0138】
[00186]本開示のさらに別の態様は、本明細書に開示の細胞培養培地サプリメントと、
無血清培地と前記サプリメントを混合するための説明書とを含むキットを提供する。一部の実施形態では、無血清培地は、任意の動物タンパク質を欠く。一部の実施形態では、無血清培地は、任意の動物成分を欠く。キットは、細胞培養のための追加の成分をさらに含み得る。
【0139】
[00187]本開示のさらなる態様は、細胞培養培地サプリメント中の動物タンパク質の代
わりに動物タンパク質の植物タンパク質相同体の使用を提供する。一部の実施形態では、動物タンパク質は血清タンパク質である。一部の実施形態では、サプリメントは、任意の動物タンパク質を欠く。一部の実施形態では、サプリメントは、任意の動物成分を欠く。植物タンパク質相同体は、本明細書に開示のものの1つ又はそれ以上であり得る。
【0140】
[00188]本開示の一態様では、血清相同体の動物細胞又は組織増殖促進活性を測定する
アッセイを提供する。一部の実施形態では、細胞又は組織の供給源は、消費に望ましい任意の食用種であり、限定はされないが、家畜、家禽、魚、貝、甲殻類、及び軟体動物が挙げられる。
【0141】
[00189]一部の実施形態では、細胞又は組織の供給源は、家畜、例えばウシ、ヒツジ、
ブタ、ヤギ、ラム、ウマ、ロバ、ウサギ、及びラバである。一部の実施形態では、細胞又は組織の供給源は、伝統的に「狩猟動物」と考えられる動物、例えばカリブー、クマ、イノシシ、シカ、ヘラジカ、及びムースである。一部の実施形態では、細胞又は組織の供給源は、家禽、例えばニワトリ、カモ、ガン、ホロホロチョウ、ウズラ、及びシチメンチョウである。一部の実施形態では、細胞又は組織の供給源は、魚、例えばバス、コイ、ナマズ、マジェランアイナメ、タラ、カレイ、オヒョウ、マヒマヒ、アンコウ、カワカマス、パーチ、オレンジラフィー、サケ、ニシンダマシ、フエダイ、メカジキ、ティラピア、マス、及びマグロである。一部の実施形態では、細胞又は組織の供給源は、甲殻類、例えばカニ、ザリガニ、ロブスター、クルマエビ、及びシュリンプである。一部の実施形態では、細胞又は組織の供給源は、軟体動物、例えば、二枚貝、ムラサキガイ、タコ、カキ、ホタテガイ、及びイカである。
【0142】
[00190]一部の実施形態では、アッセイは、血清相同体が所定の培地の成分の代わりと
して機能するかどうか決定するために設計され、血清相同体は、培地の1つ又はそれ以上の所定の成分が低減、除去、又は添加されない増殖培地に添加することによって試験される。一部の実施形態では、アッセイは、所定の培地へのサプリメントとして使用される場合、血清相同体が細胞増殖及び/又は密度を増加させるかどうか決定するために設計される。
【0143】
[00191]一部の実施形態では、アッセイシステムは、動物細胞若しくは組織及び動物細
胞若しくは組織の増殖及び/又は発生に好適な培地を含む。一部の実施形態では、培地は、動物細胞又は組織の増殖に十分な量の成分を含む。一部の実施形態では、培地は、動物細胞又は組織の増殖に十分な量のほとんどだが全てではない成分を含む。一部の実施形態では、培地は無血清である。一部の実施形態では、培地は、ある特定の血清成分を含むが、他の血清成分を欠損する。一部の実施形態では、例えば、免疫学的(例えば抗体)手段によって、1つ又はそれ以上の血清成分が低減、差し引き又は除去される。
【0144】
[00192]一部の実施形態では、培地が無血清完全培地として使用することができるよう
に、培地又は液体ベース混合物は、本明細書に記載のように基本培地及びサプリメントの1つ又はそれ以上の要素、例えば塩、アミノ酸、ビタミン、緩衝液、ヌクレオチド、抗生
物質、微量元素、抗酸化剤及びグルコース又は等価なエネルギー源を含み得る。
【0145】
[00193]例示的な無機塩としては、限定はされないが、リン酸カリウム、塩化カルシウ
ム(無水)、硫酸銅、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(無水)、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム二塩基性無水物、リン酸ナトリウム一塩基性、塩化スズ及び硫酸亜鉛が挙げられる。例示的な有機塩としては、限定はされないが、重炭酸ナトリウム又はHEPESが挙げれる。
【0146】
[00194]例示的な糖としては、限定はされないが、デキストロース、グルコース、ラク
トース、ガラクトース、フルクトース及びこれらの糖の多量体が挙げられる。
[00195]例示的な抗酸化剤としては、限定はされないが、トコフェロール、トコトリエ
ノール、アルファ-トコフェロール、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロール、アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、アルファ-トコフェロールキノン、トロロクス(6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、フラボノイド、イソフラボン、リコピン、ベータカロチン、セレン、ユビキノン、ルテイン(luetin)、S-アデノシルメチオニン、グルタチオン、タウリン、N-アセチルシステイン、クエン酸、L-カルニチン、BHT、モノチオグリセロール、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、メチオニン、システイン、ホモシステイン、グルタチオン、シスタミン及びシスタチオニン(cysstathionine)、並びにグリシン-グリシン-ヒスチジン(トリペプチド)が挙げられる。
【0147】
[00196]例示的な微量元素としては、限定はされないが、銅、鉄、亜鉛、マンガン、ケ
イ素、モリブデン酸(molybdnate)、モリブデン、バナジウム、ニッケル、スズ、アルミニウム、銀、バリウム、臭素、カドミウム、コバルト、クロム、カルシウム、二価カチオン、フッ素、ゲルマニウム、ヨウ素、ルビジウム、ジルコニウム、又はセレンが挙げられる。さらなる微量元素は、国際公開第2006/004728号に開示される。
【0148】
[00197]一部の実施形態では、培地又は液体ベース混合物は、鉄源又は鉄トランスポー
ターを含む。例示的な鉄源としては、限定はされないが、第二鉄塩及び第一鉄塩、例えば硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、第二鉄アンモニウム化合物、例えばクエン酸第二鉄アンモニウム、蓚酸第二鉄アンモニウム、フマル酸第二鉄アンモニウム、リンゴ酸第二鉄アンモニウム及びコハク酸第二鉄アンモニウムが挙げられる。例示的な鉄トランスポーターとしては、限定はされないが、トランスフェリン及びラクトフェリンが挙げられる。
【0149】
[00198]一部の実施形態では、培地又は液体ベース混合物は、銅源又は銅トランスポー
ター(例えばGHK-Cu)をさらに含み得る。例示的な銅源としては、限定はされないが、塩化銅及び硫酸銅が挙げられる。
【0150】
[00199]一部の実施形態では、鉄源又は銅源は、約0.05~250ng/ml、0.
05~100ng/ml、約0.05~50ng/ml、約0.05~10ng/ml、約0.1~5ng/ml、約0.5~2.5ng/ml、又は約1~5ng/mlの範囲の最終濃度で血清代替培地に添加される。鉄源又は銅源が、約0.05、0.1、0.25、0.35、0.45、0.5、0.6、0.7、0.8、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、又は10ng/mlの血清代替物の最終濃度であることがさらに考えれる。
【0151】
[00200]一部の実施形態では、血清代替物又は培地サプリメントが基本培地に添加され
た。標準的な基本培地は、細胞培養の分野で公知であり、市販されている。基本培地の例としては、限定はされないが、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM F12(1:1)、イスコフ改変ダルベッコ培地、Ham’s栄養混合物F-10又はF-12、ロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI)、MCDB131、Click’s培地、McCoy’s 5A培地、培地199、William’s培地E、並びにGrace’s培地及びTNM-FHのような昆虫培地が挙げられる。
【0152】
[00201]本明細書に記載される血清代替物及び培地サプリメントは、市販の無血清培養
培地での使用のためにも考えられる。例示的な無血清培地としては、限定はされないが、AIM-V(Life Technologies,Carlsbad,Calif.)、PER-C6(Life Technologies,Carlsbad,Calif.)、Knock-Out(商標)(Life Technologies)、StemPro(登録商標)(Life Technologies)、CellGro(登録商標)(Corning Life Sciences-Mediumtech Inc.,Manassas,VA.)が挙げられる。
【0153】
[00202]任意のこれらの培地は、場合により、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグ
ネシウム、及びリン酸など)、アミノ酸、ビタミン、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン薬など)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、抗酸化剤及びグルコース又は等価なエネルギー源を供給される。任意の他の必要なサプリメントも、当業者に公知であろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pH等のような培養条件は、当業者には明らかであろう。
【0154】
[00203]培地組成物は、単位形態でパッケージされることが考えられる。一実施形態で
は、培地(血清代替物、培地サプリメント、完全培地又は凍結保存培地)は、10ml、50ml、100ml、500ml又は1Lの容積でパッケージされる。
【0155】
[00204]本開示の一態様では、本明細書に開示の細胞培地サプリメント及び/又は培地
を含む、細胞を培養する方法を提供する。
[00205]培地、例えば本明細書に記載される血清代替物、培地サプリメント、完全培地
は、in vitroでの細胞の培養、好ましくは、典型的にはin vitroでの十分な増殖のために血清代替物又は既知組成の培地を必要とする細胞に有用である。そのような細胞は、哺乳動物細胞、及び昆虫細胞のような真核細胞を含む。血清代替物、完全培地又は培地サプリメントの使用から利益を考えられる哺乳動物細胞としては、限定はされないが、ハムスター、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウシ/雄ウシ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ及びヒト細胞が挙げられる。昆虫細胞としては、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(毛虫(caterpillar))、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊(mosquito))、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊(mosquito))、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ(fruitfly))、及びカイコ(Bombyx mori)由来の細胞が挙げられる。
【0156】
[00206]血清代替物、完全培地又は培地サプリメントによって培養された細胞は、不死
化細胞(細胞系)又は非不死化(一次又は二次)細胞であり、in vivoで見出される広範な細胞型のいずれかであり得ることが考えられる。例示的な細胞型としては、限定はされないが、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、卵巣細胞、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の形成要素(例えば、リンパ球、骨髄細胞)、軟骨細胞及び他の骨由来細胞、肝細胞、膵臓、及びこれらの体細胞型の前駆体が挙げられる。
【0157】
[00207]一部の実施形態では、培地による使用を考えられる細胞は、哺乳動物対象から
単離される。哺乳動物対象から単離される細胞としては、限定はされないが、多能性幹細胞、胚性幹細胞、骨髄間質細胞、造血前駆細胞、免疫幹細胞、骨髄幹細胞、リンパ球、T細胞、B細胞、マクロファージ、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、軟骨細胞及び他の骨由来細胞、肝細胞、膵臓細胞、体細胞型の前駆体、及び任意の癌腫又は腫瘍由来細胞が挙げられる。
【0158】
[00208]一部の実施形態では、細胞は細胞系である。例示的な細胞系としては、限定は
されないが、CHOK1、DXB-11、DG-44、及びCHO/-DHFRを含むチャイニーズハムスター卵巣細胞;サル腎臓CV1、COS-7;ヒト胎児由来腎臓(HEK)293;ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(TM4);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO);ヒト子宮頸部癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝癌細胞(HepG2;SK-Hep);マウス乳房腫瘍(MMT);TRI細胞;MRC 5細胞;FS4細胞;T細胞系(Jurkat);B細胞系、マウス3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6.RTM.、SP2/0、NS-0、U20S、HT1080、L929、ハイブリドーマ、腫瘍細胞、及び不死化一次細胞が挙げられる。
【0159】
[00209]例示的な昆虫細胞系としては、限定はされないが、Sf9、Sf21、HIG
H FIVE.TM.、EXPRESSF+.RTM.、S2、Tn5、TN-368、BmN、Schneider2、D2、C6/36及びKC細胞が挙げられる。
【0160】
[00210]さらなる細胞型及び細胞系が、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開
第2006/004728号に開示される。これらの細胞としては、限定はされないが、CD34+造血幹細胞及び骨髄系列の細胞、293胎児由来腎臓細胞、A-549、ジャーカット、Namalwa、Hela、293BHK細胞、HeLa子宮頸部上皮細胞、PER-C6網膜細胞(PER.C6)、MDBK(NBL-I)細胞、911細胞、CRFK細胞、MDCK細胞、BeWo細胞、Chang細胞、Detroit562細胞、HeLa229細胞、HeLa S3細胞、Hep-G2細胞、KB細胞、LS 180細胞、LS 174T細胞、NCI-H-548細胞、RPMI2650細胞、SW-13細胞、T24細胞、WI-28 VA13、2RA細胞、WISH細胞、BS-C-I細胞、LLC-MK2細胞、Clone M-3細胞、1-10細胞、RAG細胞、TCMK-I細胞、Y-I細胞、LLC-PK1細胞、PK(15)細胞、GH1細胞、GH3細胞、L2細胞、LLC-RC256細胞、MH1C1細胞、XC細胞、MDOK細胞、VSW細胞、TH-I、B1細胞、又はこれらの誘導体、任意の組織又は器官(限定はされないが、心臓、肝臓、腎臓、結腸、腸、食道、胃、神経組織(脳、脊髄)、肺、血管組織(動脈、静脈、毛細)、リンパ組織(リンパ節、アデノイド、扁桃、骨髄、及び血液)、脾臓、線維芽細胞及び線維芽細胞様細胞系)、TRG-2細胞、IMR-33細胞、Don細胞、GHK-21細胞、シトルリン血症細胞、Dempsey細胞、Detroit551細胞、Detroit510細胞、Detroit525細胞、Detroit529細胞、Detroit532細胞、Detroit539細胞、Detroit548細胞、Detroit573細胞、HEL299細胞、MR-90細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WI-26細胞、MiC11細胞、CV-I細胞、COS-I細胞、COS-3細胞、COS-7細胞、Vero細胞、DBS-FrhL-2細胞、BALB/3T3細胞、F9細胞、SV-T2細胞、M-MSV-BALB/3T3細胞、K-BALB細胞、BLO-I1細胞、NOR-IO細胞、C3H/IOTI/2細胞、HSDM1C3細胞、KLN205細胞、McCoy細胞、マウスL細胞、Strain 2071(マウスL)細胞、L-M株(マウスL)細胞、L-MTK(マウスL)細
胞、NCTCクローン2472及び2555、SCC-PSA1細胞、NSO、NS1、Swiss/3T3細胞、Indian muntjac細胞、SIRC細胞、Cn細胞、Jensen細胞、COS細胞及びSp2/0細胞、それらの模倣細胞及び/又は誘導体が挙げられる。
【0161】
[00211]本明細書で考えた細胞培養条件は、細胞を増殖させるために好適な任意の培養
基材に適用してもよい。好適な表面を有する基材としては、組織培養ウェル、培養フラスコ、ローラーボトル、ガス透過容器、平又は平行プレートバイオリアクター又は細胞工場が挙げられる。細胞が、撹拌槽の懸濁液中に維持されるマイクロキャリア又は粒子に接着される培養条件も考えられる。
【0162】
[00212]細胞培養方法は、通常、Culture of Animal Cells:
A Manual of Basic Technique,6.Sup.th Edition,2010(R.I.Freshney ed.,Wiley & Sons);General Techniques of Cell Culture(M.A.Harrison & I.F.Rae,Cambridge Univ.Press)、及びEmbryonic Stem Cells:Methods and Protocols(K.Turksen ed.,Humana Press)に記載される。他の参照テキストは、Creating a High Performance Culture(Aroselli,Hu.Res.Dev.Pr.1996)及びLimits to Growth(D.H.Meadows et al.,Universe
Publ.1974)を含む。組織培養サプリ及び試薬は、当業者に周知であり、市販されている。
【0163】
[00213]血清代替物、完全培地又は培地サプリメントによって使用される特定の細胞系
又は単離した細胞型に適切な密度で細胞が培養中に置かれることが理解される。一部の実施形態では、細胞は、1×103、5×103、1×104、5×104、1×105、5×105、1×106又は5×106個の細胞/mlで培養される。
【0164】
[00214]一部の実施形態では、培養細胞は、線維芽細胞である。一実施形態では、細胞
は、ウシ線維芽細胞である。一実施形態では、細胞は、ニワトリ線維芽細胞である。
[00215]ニワトリ胚線維芽細胞は、ウイルス及びワクチンの製造に広く使用される。ニ
ワトリ胚肝臓細胞と共に、それらは特定の病原体フリー(SPF)の胚から生産され、Charles River Laboratories(Wilmington,MA)及び他の会社によって販売される。ニワトリ肝臓細胞は、それらの哺乳動物相対物のように、培養で限定的な増殖を示すが、ニワトリ線維芽細胞は、腫瘍化せずに自然に不死化する前に、約2.6トンの細胞を生産する、30を超えて集団倍加することができる。UMNSAH/DF-1(CRL-12203)のような、自然に形質転換したニワトリ線維芽細胞は、ATCC(Manassas、VA)から直接購入することができる。線維芽細胞の増殖能は優れているが、細胞は主に食べられない結合組織を形成する。
【0165】
[00216]ニワトリ胚内皮は、容易に単離され得るが、それらの増殖能が未知であり、器
官特異的であり得る。マウス微小血管細胞は、30集団倍加することができるが、ヒト細胞はめったに12集団倍加を超えない。ニワトリ胚筋肉細胞(筋細胞)は同様に単離され得るが、非常に限定された増殖能を有する。マウス及びヒト細胞は、めったに12集団倍加を超えない。筋形成、新しい筋肉組織の形成は、ほとんどの種の一生の新生児期の一般的ではない経過である。小分子は、概念的に使用され、この挙動を調節することができる。
【0166】
[00217]多くのグループが、ここ10年にわたり、ニワトリ胚幹細胞(cESC)を生
産した。細胞は、受精したニワトリ卵から単離され、本質的に不死である。ニワトリ人工多能性幹細胞(ciPSC)は、再プログラム化因子OCT4、NANOG、SOX2、LIN28、KLF4、及びC-MYCによりウズラ胚線維芽細胞から、より近年では、OCT4、KLF4、及びC-MYCを使用してニワトリ線維芽細胞から生産された。細胞は、本質的に不死であるが、遺伝的に操作されている。
【0167】
[00218]近年、マウス多能性幹細胞は、筋細胞、肝細胞、及び内皮細胞並びに複合胚葉
体を含む、複数の細胞型の分化を可能にする小分子を使用して線維芽細胞から誘導された。ciPSCの化学誘導は、線維芽細胞を他の細胞型に変換する代替の手法を提供する。
【0168】
[00219]より近年の研究では、ヒト線維芽細胞を誘導し、心筋細胞へと変化させる9つ
の化合物の組合せが同定されたが、その他はマウス細胞を形質転換する7つの化合物の組合せを使用した。多くのシグナル伝達経路が保存されていることを考慮して、比較的類似の組合せを使用して、ニワトリ線維芽細胞を筋細胞へと形質転換することができる。
【0169】
[00220]上記のように、細胞培養培地は、接着因子、脂肪酸、増殖因子、ホルモン、及
びアルブミンを提供するウシ胎仔血清(FBS)を含有することが多い。FBSは、通常、トランスフェリン、インシュリン、及び脂質の多いウシ血清アルブミンに加えてアミノ酸、ビタミン、及び微量元素から構成される血清代替物(例えばKO血清)と置き換えることができる。トランスフェリンとインシュリンの両方が、組換え技術を使用して細菌において生産されるが、アルブミンは通常動物由来である。しかしながら、植物及び細菌由来組換えヒトアルブミン(例えばCellastim(商標))は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)を含む、いくつかの会社から入手できる。
【0170】
[00221]ニワトリ線維芽細胞培地は、伝統的には、10% FBS、トリプトースリン
酸及びグルタミンを補充したMI 99培地から構成される。しかしながら、哺乳動物線維芽細胞の増殖のための無血清培地は、現在、容易に入手できる。培地は、0.5mg/mLアルブミン、0.6μMリノレン酸、0.6μg/mLレシチン、5ng/niL bEGF、5ng/niL EGF、30pg/mL TGFpi、7.5mMグルタミン、1μg/mLヒドロコルチゾン、50μg/mLアスコルビン酸、及び5μg/mLインシュリンを補充したMI 99培地から構成される。この培地PSC-201-040は、ATCC(Manassas,VA)から入手でき、ヒト線維芽細胞の4倍速い増殖を支持することが報告されている。ニワトリ肝細胞は、ヒト及びマウス肝細胞のために設計された無血清培養培地によって同様に支持される。培地は、アルブミン、インシュリン、トランスフェリン、及びヒドロコルチゾンを補充したWilliams E基本培地から構成される。
【0171】
[00222]ニワトリ及びウシ足場非依存性線維芽細胞は、標準的な分化プロトコールによ
って足場非依存性脂肪細胞へと分化させる。FMT-SCF-2(ニワトリ非接着線維芽細胞)及びFMT-SBF-1(ウシ非接着線維芽細胞)は、PPARガンマアゴニストと共に200μMオレイン酸を含有する脂肪生成培地中で増殖させた。合成阻害剤(ロシグリタゾン)及び天然阻害剤(プリスタン酸)は両方試験された。
【0172】
[00223]灌流した培養培地は、酸素担体も含み得る。ヘモグロビンベースの酸素担体は
、組換え又は化学改変のいずれかのヘモグロビン誘導体、カプセル化ヘモグロビン又は改変(例えば架橋)赤血球を含む。代替物は、Nahmias et al.(The FASEB Journal,20(14):2531-2533)において開発されたもののような、パーフルオロカーボンベースの代替物を含む。
【0173】
[00224]通常、一次線維芽細胞は、限定細胞分化でき、したがって、約30集団倍加(
例えば10継代)後に細胞性老化することに注意すべきである。不死化線維芽細胞系を生成する方法は、公知の方法を使用するテロメラーゼ遺伝子、又はSV40、又はHPVE6/E7遺伝子の導入による遺伝子操作を含む。
【0174】
[00225]他の鳥類の線維芽細胞、例えばカモ、ガン、及びウズラ線維芽細胞も好適であ
ることが考えられる。
[00226]本開示の別の態様は、本明細書に開示の任意の細胞培養培地中で細胞を培養す
ることによって培養肉を生産する方法及び培養細胞から肉を生産する方法を提供する。
【0175】
[00227]一部の実施形態では、細胞は、食用動物由来である。一部の実施形態では、動
物は、家畜動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラム、ウマ、ロバ、ウサギ、及びラバである。一部の実施形態では、動物は、伝統的に「狩猟動物」と考えられる動物、例えばカリブー、クマ、イノシシ、シカ、ヘラジカ、及びムースである。一部の実施形態では、動物は、家禽、例えばニワトリ、カモ、ガン、ホロホロチョウ、ウズラ、及びシチメンチョウである。一部の実施形態では、動物は、魚、例えばバス、コイ、ナマズ、マジェランアイナメ、タラ、カレイ、オヒョウ、マヒマヒ、アンコウ、カワカマス、パーチ、オレンジラフィー、サケ、ニシンダマシ、フエダイ、メカジキ、ティラピア、マス、及びマグロである。一部の実施形態では、動物は、甲殻類、例えばカニ、ザリガニ、ロブスター、クルマエビ、及びシュリンプである。一部の実施形態では、動物は、軟体動物、例えば、二枚貝、ムラサキガイ、タコ、カキ、ホタテガイ、及びイカである。
【0176】
[00228]一部の実施形態では、細胞は線維芽細胞である。一実施形態では、線維芽細胞
としては、限定はされないが、ウシ線維芽細胞及びニワトリ線維芽細胞である。一実施形態では、線維芽細胞は、ウシ線維芽細胞である。一実施形態では、線維芽細胞は、ニワトリ線維芽細胞である。
【0177】
[00229]本開示のさらに別の態様は、上記の方法によって生産された培養肉を提供する
。
[00230]本開示のさらに別の態様は、任意の動物タンパク質及び/又は動物成分を欠く
細胞培養培地、及び前記細胞培養培地を生産するための方法を提供する。
【0178】
[00231]細胞培養培地は、無血清培地及び少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含
む任意の本明細書に開示の細胞培養培地サプリメントを含み得る。細胞培養培地は、任意の動物成分を欠いてもよく、及び/又は任意の動物タンパク質を欠いてもよい。少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、動物タンパク質の相同体であり得る。少なくとも1つの植物タンパク質相同体は、血清タンパク質の相同体であり得る。血清タンパク質のそのような植物タンパク質相同体の例は、上記及び本明細書に開示される。
【0179】
[00232]一部の実施形態では、無血清培地は、基本生理学的緩衝液であり、動物夾雑物
、ヒト夾雑物、又は任意の抗生物質(複数可)を欠く。一部の実施形態では、無血清培地は、基本生理学的緩衝液であり、任意の動物タンパク質を欠く。一部の実施形態では、無血清培地は、基本生理学的緩衝液であり、任意の動物成分を欠く。
【0180】
[00233]例示的な無血清培地としては、限定はされないが、AIM-V(Life T
echnologies,Carlsbad,Calif.)、PER-C6(Life
Technologies,Carlsbad,Calif.)、Knock-Out(商標)(Life Technologies)、StemPro(登録商標)(Life Technologies)、CellGro(登録商標)(Corning Life Sciences-Mediumtech Inc.,Manassas,VA.)が挙げられる。
【0181】
[00234]任意のこれらの培地は、場合により、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグ
ネシウム、及びリン酸など)、アミノ酸、ビタミン、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン薬など)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、抗酸化剤及びグルコース又は等価なエネルギー源を補充される。任意の他の必要なサプリメントも、当業者に公知であろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pH等のような培養条件は、当業者には明らかであろう。
【0182】
[00235]一部の実施形態では、細胞培養培地が無血清完全培地として使用することがで
きるように、細胞培養培地は、本明細書に記載の基本培地の1つ又はそれ以上の要素及びサプリメント、例えば塩、アミノ酸、ビタミン、緩衝液、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素、抗酸化剤及びグルコース又は等価なエネルギー源を含んでもよい。
【0183】
[00236]例示的な無機塩としては、限定はされないが、リン酸カリウム、塩化カルシウ
ム(無水)、硫酸銅、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(無水)、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム二塩基性無水物、リン酸ナトリウム一塩基性、塩化スズ及び硫酸亜鉛が挙げられる。例示的な有機塩としては、限定はされないが、重炭酸ナトリウム又はHEPESが挙げれる。
【0184】
[00237]例示的な糖としては、限定はされないが、デキストロース、グルコース、ラク
トース、ガラクトース、フルクトース及びこれらの糖の多量体が挙げられる。
[00238]例示的な抗酸化剤としては、限定はされないが、トコフェロール、トコトリエ
ノール、アルファ-トコフェロール、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロール、アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、アルファ-トコフェロールキノン、トロロクス(6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、フラボノイド、イソフラボン、リコピン、ベータカロチン、セレン、ユビキノン、ルテイン(luetin)、S-アデノシルメチオニン、グルタチオン、タウリン、N-アセチルシステイン、クエン酸、L-カルニチン、BHT、モノチオグリセロール、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、メチオニン、システイン、ホモシステイン、グルタチオン、シスタミン及びシスタチオニン(cysstathionine)、並びにグリシン-グリシン-ヒスチジン(トリペプチド)が挙げられる。
【0185】
[00239]例示的な微量元素としては、限定はされないが、銅、鉄、亜鉛、マンガン、ケ
イ素、モリブデン酸(molybdnate)、モリブデン、バナジウム、ニッケル、スズ、アルミニウム、銀、バリウム、臭素、カドミウム、コバルト、クロム、カルシウム、二価カチオン、フッ素、ゲルマニウム、ヨウ素、ルビジウム、ジルコニウム、又はセレンが挙げられる。さらなる微量元素は、国際公開第2006/004728号に開示される。
【0186】
[00240]一部の実施形態では、細胞培養培地は、鉄源又は鉄トランスポーターを含む。
例示的な鉄源としては、限定はされないが、第二鉄塩及び第一鉄塩、例えば硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、第二鉄アンモニウム化合物、例えばクエン酸第二鉄アンモニウム、蓚酸第二鉄アンモニウム、フマル酸第二鉄アンモニウム、リンゴ酸第二鉄アンモニウム及びコハク酸第二鉄アンモニウムが挙げられる。例示的な鉄トランスポーターとしては、限定はされないが、トランスフェリン、ラクトフェリンが挙げられる。
【0187】
[00241]一部の実施形態では、細胞培養培地は、銅源又は銅トランスポーター(例えば
GHK-Cu)をさらに含み得る。例示的な銅源としては、限定はされないが、塩化銅及び硫酸銅が挙げられる。
【0188】
[00242]一部の実施形態では、鉄源又は銅源は、約0.05~250ng/ml、0.
05~100ng/ml、約0.05~50ng/ml、約0.05~10ng/ml、約0.1~5ng/ml、約0.5~2.5ng/ml、又は約1~5ng/mlの範囲の最終濃度で細胞培養培地に添加される。
【0189】
[00243]細胞培養培地は、単位形態でパッケージされることが考えられる。一実施形態
では、細胞培養培地は、10ml、50ml、100ml、500ml又は1Lの容積でパッケージされる。
【0190】
[00244]細胞培養培地は、他の成分をさらに含んでもよく、前記成分は任意の動物成分
及び/又は動物タンパク質を欠くと考えられる。
[00245]本明細書に記載される細胞培養培地を生産する方法も開示される。細胞培養培
地を生産する方法は、無血清基本培地と細胞培養培地サプリメントを混ぜるステップを含んでもよく、細胞培養培地は任意の動物タンパク質及び/又は動物成分を欠く。細胞培養培地サプリメントは、動物タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む。一部の実施形態では、動物タンパク質は、血清タンパク質である。植物タンパク質相同体は、本明細書に開示されるものの1つ又はそれ以上であってもよい。
【0191】
[00246]例示的な無血清培地が本明細書で提供される。
[00247]一部の実施形態では、方法は、1つ又はそれ以上の追加の成分を添加するステ
ップをさらに含み、前記成分は任意の動物成分を欠くと考えられる。例示的な追加の成分は本明細書に提供される。
【0192】
[00248]本開示は、本明細書に記載される細胞培養培地と使用のための説明書とを含む
キットをさらに提供する。一部の実施形態では、細胞培養培地は、ラベルが貼り付けられた容器中にパッケージされるか又はin vitro、in vivo、又はex vivoでの使用のための組成物の使用を記載するパッケージ中に含まれる。例示的な容器としては、限定はされないが、容器、バイアル、チューブ、アンプル、ボトル、フラスコ等が挙げられる。容器は、液体又は凍結形態の培地、例えば血清代替物、培地サプリメント若しくは凍結保存培地パッケージするために適当であることがさらに考えられる。容器は、限定はされないが、ガラス、ポリプロピレン、ポリスチレン、及び他のプラスチックを含む、当技術分野で周知の材料から作製されることが考えられる。様々な態様では、組成物は、単位剤形でパッケージされる。キットは、場合により、血清代替物、培地サプリメント又は凍結保存培地を基本培地と組み合わせる、あるいは培地を追加の増殖因子と組み合わせるのに好適な装置を含む。様々な態様では、キットは、ラベル及び/又は細胞培養若しくは凍結保存のための培地の使用を記載する説明書を含有する。
【0193】
[00249]本明細書に引用した又はそれらの審査中の全ての出願及び全ての文書(「出願
に引用した文書」)並びに出願に引用した文書に引用した若しくは参照した全ての文書、並びに本明細書に引用又は参照した全ての文書(「本明細書に引用した文書」)、並びに本明細書に引用した文書に引用又は参照した全ての文書は、本明細書又は本明細書に参照によって組み込まれる任意の文書に記載される任意の製品のための任意の製造業者の説明書、記載、製品仕様、及び製品シートと共に、参照によって本明細書に組み込まれ、本発明の実施に用いられてもよい。より詳細には、全ての参照した文書は、各個々の文書が参照によって組み込まれることを特に及び個々に示されたように、同程度まで参照によって組み込まれる。
【0194】
[00250]以下の実施例は、例示のために提示され、限定のためではない。
【実施例0195】
実施例1:植物アルブミンの単離及び精製
[00251]植物アルブミンの単離は、当業者に周知であり、液体分画、遠心分離、カラム
交換を含み、その全てが日常的な実験である。この研究では、ジャガイモの2つの種(白及び赤)を購入した。それぞれの種は、ジュースにするか(ジューサー)又はブレンドした(ブレンダー)。ジャガイモアルブミンを抽出し、生の白及び赤ジャガイモの液体画分抽出は、フルーツジューサー又は台所用ブレンダーのいずれかで行った。後に、ジャガイモを刻み、過剰な水と共にブレンダーに加えた。ブレンドした物質は、二層のガーゼを使用して篩い/濾過し、液体画分を得た。試料は、4℃で10分間、11000rpmでスピンダウンし、不溶性物質を除去した。上清(アルブミン画分)を回収し、ペレットを廃棄した。
【0196】
[00252]上清試料は、Jirgensons(1946,Journal of Po
lymer Science,1(6):484-494)に従ってpH3に調整し、次いで再度スピンダウンして、不溶性タンパク質不純物を除去した。上清は、20mM TRIS-HCl、pH8に対して終夜透析した。試料中の過剰な塩を取り除くため、それぞれを緩衝液A(以下参照)に対して透析した。1 lit 1時間、次いで1 lit
ON(低温室、流動しながら(with strearing))。
【0197】
[00253]4つの試料を、pI~5に従って陰イオン交換カラムにロードし、アルブミン
画分を分けた。試料ローディング緩衝液は、20mM TRIS HCl、pH8であり、放出緩衝液は、20mM TRIS HCl、1M NaCl、pH8であった。抽出した画分からの8μlの試料を、タンパク質純度表示及び解析のために4~20% SDS-PAGEにロードし(
図3F)、1%BSAを対照としてロードした。適切な画分を合わせ、それぞれ数μgをMS解析にかけ、BSA様タンパク質含量を確認した(
図3A~3E)。
【0198】
[00254]5グラムのエンドウタンパク質単離物を、Nadal et al.,J.A
gric.Food Chem.2011,59,2752-2758にしたがって、50mlの10mM CaCl
2、10mM MgCl
2、pH8中に懸濁した。試料を、30分間室温でボルテックスし、次いで4℃で15分間11000rpmでスピンダウンし、上清を回収し、SDS-PAGEにかけた(
図4)。
【0199】
[00255]5つの植物粉(デュラム、ヒヨコマメ、ヒラマメ、トウモロコシ、イネ)の粉
末及び2つの市販の植物タンパク質単離物(ヘンプ、エンドウ)を液体分画して、DNA及びRNA由来、並びにタンパク質由来の脂質を分離する。タンパク質抽出物の水画分を回収し、SDS-PAGEにかけた。ヒヨコマメ、トウモロコシ、ヘンプ及びエンドウ試料は、事前に報告されたアルブミンタンパク質のサイズに相当するタンパク質のバンドを含有する(
図5)。四角で囲ったバンドをゲルから単離し、さらなる同定のためにMS解析に送った。
【0200】
[00256]2つのジャガイモ型(赤又は白)からの4つのジャガイモ抽出物のMS解析の
結果を
図6に示す。それぞれは、フルーツジューサー(J)又は水とのブレンド(B)のいずれかで液体化し、篩いにかけ、繊維画分を除去した。BSAを陽性対照として解析した。全てのジャガイモ試料は、著しい量のBSA様タンパク質を含有することが示された。バレイショ(Solanum tubrosum)の同定されたタンパク質は、アルブミン(パタチン)(UniProtKB:M1AGX5,Q2MYP6,Q2VBI2,Q2VBJ3,A0A097H149)、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有タンパ
ク質(PNPLA)(UniProtKB:M1B3W0)、及びプロテイナーゼ阻害剤(Kunitz-typeプロテイナーゼ阻害剤群A1)(UniProtKB:H9B8I9);20kDa Kunitz-typeプロテイナーゼ阻害剤(UniProtKB:Q9S8K2)を含む。
【0201】
実施例2:無血清培地中での培養細胞の接着
[00257]可溶性植物ECM様タンパク質は、血清及び動物由来ECMタンパク質の非存
在下で培養細胞の接着を支持できるであろうことが仮定された。ヒヨコマメ、ヒラマメ、デュラム及び玄米粉末からのタンパク質抽出は、それらを24時間室温で震盪しながらPBS中に懸濁し、13000×gでスピンダウンし、0.22μmのシリンジフィルターを使用して濾過することにより行った。15%FBSを補充したDMEM/F12中で培養した一次ニワトリ線維芽細胞をトリプシン処理し、上記タンパク質構築物の1:50又は1:100希釈を補充した無血清培地で洗浄及び再播種した。接着の程度は、Sulforhodamin B染色(Vichai and kirtikara,Nat Protoc.2006;1(3):1112-6)を使用して、8時間後に評価した。結果は、ダイズ、ヒヨコマメ、ヒラマメ、イネ及びコムギ抽出物において細胞接着を実証する(
図7)。
【0202】
実施例3:完全タンパク質バルクの調製
[00258]ウシ血清アルブミン(BSA)の代替物として完全タンパク質バルクを調製す
るため、異なる植物源からのタンパク質粉末をまず水又は生理食塩水(PBS)と攪拌機で混合した。異なる植物タンパク質源を測定すると、タンパク質の回収%は10%~15%の範囲であった。次いで、混合物は、高速でSorvalを使用して遠心分離し、不溶性画分を除去し、次いでカットオフ値10キロダルトンのセントリコン、アンプリコン、又はホローファイバーのいずれかを使用して可溶性画分を濾過及び濃縮した(
図8)。その後、混合物は+4℃で保存し、1~2ヶ月の期間で使用した。
【0203】
実施例4:ダイズタンパク質のAlbusorb精製
[00259]ダイズタンパク質(水溶性画分)を精製するため、50mgのAlbuSor
b(商標)粉末をスピンチューブ/マイクロチューブに入れた。400μlの結合緩衝液BB1をチューブに添加し、AlbuSorb(商標)粉末を調整した。3分間手動又はボルテックスのいずれかにより内容物を混合した後、チューブは、次いで3000rpmで2分間遠心分離した。上清は廃棄した。別の400μlのBB1緩衝液を再度チューブに添加し、次いで混合及び遠心分離した。上清は再び廃棄した。
【0204】
[00260]アルブミン結合の必要条件として、250μlのBB1緩衝液を添加し、次い
で25μlの血清を添加した。次いで、チューブは10分間回転振盪機に置いた。その後、チューブは、10000rpmで4分間遠心分離した。生じる上清は、アルブミンを含まない血清タンパク質を含有する。場合により、ペレット(ほとんどアルブミン)は200μlのストリッピング緩衝液(0.2M Tris+0.5M NaCl、pH10)により、10分間振盪機で混合し10000rpmで4分間遠心分離することによって溶出することができる。
【0205】
[00261]上清を回収し、SDS-PAGEにかけた。
図9は、Albusorb精製前
後のダイズタンパク質(水溶性画分)を示す。SDS-PAGE(4~15%)のタンパク質を観察すると、他のタンパク質がアルブミンと同じ領域に移動し、完全に分解されていない可能性がある。
【0206】
[00262]水溶性ダイズタンパク質及びAlbusorb精製ダイズタンパク質は、さら
なる同定のためMS解析に送られた。
図10A及び
図10Bは、それぞれ、Albuso
rb精製前後のダイズ水溶性画分の上位10個のタンパク質群を示す。
【0207】
実施例5:ヒヨコマメタンパク質のMS解析
[00263]8M尿素、25mM Tris-HCl、pH8.0、10mM ジチオスレ
イトール(DTT)中に溶解した10μgのヒヨコマメタンパク質は、室温で30分間、55mMヨードアセトアミドによってアルキル化した。試料は、Tris-HCl、pH8.0で8倍希釈した。次いで、0.3μgトリプシン(シークエンスグレード、Promega Corp.,Madison,WI,USAから)を試料に添加し、37℃で終夜、消化を実施した。トリプシンペプチドは、C18 Stage tip上で脱塩した((Rappsilber J,Mann M,Ishihama Y.Protocol for micro-purification,enrichment,pre-fractionation and storage of peptides for proteomics using StageTips.Nat Protoc.2007;2(8):1896-906)。全部で0.8μgのペプチド(O.D.280nmにより)を解析のため、マススペクトロメトリー(MS)に注入した(
図11)。
【0208】
[00264]MS解析は、オンラインでナノフローUHPLC装置(Ultimate 3
000 Dionex,Thermo Fisher Scientific)と繋がったQ Exactive Plusマススペクトロメーター(Thermo Fisher Scientific)を使用して実施した。溶出したペプチドは、逆相25cm-ロングC18カラム(75um ID、2um、100Å、Thermo PepMap(登録商標)RSLC)に0.2μl/分の流速で90分勾配ランにかけ分離した。サーベイスキャン(380~2000m/z、標的値3E6チャージ、最大イオン注入時間200ms)を獲得し、高エネルギー衝突解離(HCD)ベース断片化(ノーマライズした衝突エネルギー25)へと続いた。サーベイスキャンのために解像度70000を使用して、最大15個の動力学的に選択した最も豊富な前駆体イオンを断片化した(isolation window 1.6m/z)。MS/MSスキャンは、解像度35000(標的値2E5チャージ、最大イオン注入時間121ms)で獲得した。ダイナミックエクスクルージョンは15秒であった。
【0209】
[00265]MSデータは、MaxQuant computational platf
orm,version 1.6.6.0(Cox,J. & Mann,M.MaxQuant enables high peptide identification
rates,individualized p.p.b.-range mass accuracies and proteome-wide protein quantification,Nat.Biotechnol.26:1367-1372(2008))を使用して処理した。ピークリストは、57497エントリーを含有するUniprotのヒヨコマメ(Cicer arietinum)データベースに対して検索した。検索は、固定修飾としてシステインのカルバミドメチル化並びに可変修飾としてメチオニンの酸化及びN末端アセチル化を含んだ。最小で7アミノ酸長を有するペプチドを検討し、必要なFDRはペプチド及びタンパク質レベルで1%に設定した。タンパク質同定は、少なくとも2つのユニーク又はrazorペプチドを必要とした。
【0210】
実施例6:ウシ血清アルブミンを置き換える植物タンパク質
[00266]異なる植物水溶性画分タンパク質の効果は、BSAが枯渇した特別な無血清サ
プリメントを使用してニワトリ線維芽細胞で試験した。懸濁培養に適応させたニワトリ線維芽細胞は、フラスコの全容積20ml中に30万個/mlで播種した。細胞培養フラスコは、100rpm、39℃、及び5% CO2で、震盪インキュベーター中に維持した。3日目に、各フラスコからの1mlの試料は、APOIを使用する自動細胞計数器(C
ellaca)を使用して計数し、死細胞から生細胞を決定した。生細胞数は
図12に示す。0.1mg/mlが、動物タンパク質(BSA)を置き換えるのに十分であったことが示された。しかしながら、ヘンプ及びコムギタンパク質は、この濃度ではニワトリ線維芽細胞の増殖を支持しなかった。
【0211】
実施例7:植物タンパク質及び用量依存的効果
[00267]ヒヨコマメタンパク質と有機エンドウタンパク質の両方の勾配濃度は、懸濁培
養中のニワトリ線維芽細胞で試験し、無血清培地中の動物タンパク質(BSA)を置き換えた。懸濁培養に適応させたニワトリ線維芽細胞は、フラスコの全容積20ml中に30万個/mlで播種した。細胞培養フラスコは、100rpm、39℃、及び5% CO2で、震盪インキュベーター中に維持した。
図13に示すように、異なる範囲のタンパク質濃度は、ほとんどBSAと同様に、又はBSAよりよく作用する。細胞計数は、本発明者らの計数から死細胞を除くためにAPOI染色を使用する自動細胞計数器(Cellaca)を使用して3日目に行った。
【0212】
[00268]ヒヨコマメ又はダイズタンパク質(データは示さない)の濃度の増加は、用量
依存的な毒性を生じる(
図14)。セントリコンを使用するタンパク質混合物からの<10キロダルトンの画分の欠失は、この毒性を著しく取り除く。懸濁培養に適応させたニワトリ線維芽細胞は、フラスコの全容積20ml中に30万個/mlで播種した。細胞培養フラスコは、100rpm、39℃、及び5% CO2で、震盪インキュベーター中に維持した。5日目に、各フラスコからの1mlの試料は、死細胞から生細胞を決定するためにAOPIを使用する自動細胞計数器(Cellaca)を使用して計数した。生細胞数は
図14に示す。
【0213】
[00269]勾配濃度のヒヨコマメは、カットオフ値10キロダルトンのホローファイバー
で3回洗浄した。5mg/mlのヒヨコマメは、ニワトリ細胞に毒性を示さなかった(
図15)。懸濁培養に適応させたニワトリ線維芽細胞は、フラスコの全容積20ml中に30万個/mlで播種した。細胞培養フラスコは、100rpm、39℃、及び5% CO2で、震盪インキュベーター中に維持した。3日目~6日目に、各フラスコからの1mlの試料は、死細胞から生細胞を決定するためにAOPIを使用する自動細胞計数器(Cellaca)を使用して計数した。生細胞数は
図15に示す。
【0214】
[00270]本発明及びその利点を詳細に記載したが、添付の請求項に規定した本発明の精
神及び範囲を逸脱することなく、様々な変更、置換及び改変が本明細書で行われ得ることは理解されるはずである。
【0215】
[00271]当業者は、本発明が、目的を実行する、並びに記載した並びにそれらに固有の
目的及び利点を得るために十分に適応されることを容易に理解するであろう。本明細書に記載の方法に沿った本実施例は、現在、好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本発明の範囲の限定として意図されない。その変更及び他の使用は、当業者に想起され、それらは請求項の範囲によって規定されたように、本発明の範囲内に包含される。
[00271]当業者は、本発明が、目的を実行する、並びに記載した並びにそれらに固有の目的及び利点を得るために十分に適応されることを容易に理解するであろう。本明細書に記載の方法に沿った本実施例は、現在、好ましい実施形態の代表であり、例示であり、本発明の範囲の限定として意図されない。その変更及び他の使用は、当業者に想起され、それらは請求項の範囲によって規定されたように、本発明の範囲内に包含される。
発明の態様
[態様1]血清タンパク質の少なくとも1つの植物タンパク質相同体を含む細胞培養培地サプリメント。
[態様2]前記サプリメントが、任意の血清タンパク質を欠く、態様1に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様3]前記サプリメントが、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く、態様1又は2に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様4]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物タンパク質単離物の水溶性画分を含む、態様1~3のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様5]前記水溶性画分が、植物アルブミン及びグロブリンを含む、態様4に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様6]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、血清アルブミン、血清カタラーゼ、血清スーパーオキシドジスムターゼ、血清トランスフェリン、血清フィブロネクチン、血清ビトロネクチン、血清インシュリン、血清ヘモグロビン、血清アルドラーゼ、血清リパーゼ、血清トランスアミナーゼ、血清アミノトランスフェラーゼ、血清フェチュイン、又はこれらの組合せの相同体である、態様1~3のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様7]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物アルブミン、植物カタラーゼ、植物スーパーオキシドジスムターゼ、植物トランスフェリン、植物フィブロネクチン、植物ビトロネクチン、植物インシュリン、植物レグヘモグロビン、植物アルドラーゼ、植物リパーゼ、植物トランスアミナーゼ、植物アミノトランスフェラーゼ、植物シスタチン、又はこれらの組合せである、態様6に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様8]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物アルブミン、植物カタラーゼ、植物フィブロネクチン、及び植物インシュリンを含む、態様7に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様9]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物アルブミンである、態様7に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様10]前記植物アルブミンが、ヒヨコマメアルブミン、ヘンプシードアルブミン、ヒラマメアルブミン、エンドウアルブミン、ダイズアルブミン、コムギアルブミン又はジャガイモアルブミンである、態様8又は9に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様11]前記植物アルブミンが、エンドウアルブミン又はジャガイモアルブミンである、態様10に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様12]前記植物アルブミンが、植物タンパク質単離物の水溶性画分由来である、態様9に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様13]前記植物アルブミンが、約13~110キロダルトンの分子量を有する、態様7~12のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様14]前記植物アルブミンが、約13~17キロダルトンの分子量を有する、態様13に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様15]前記植物アルブミンが、約20~35キロダルトンの分子量を有する、態様13に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様16]前記植物アルブミンが、約50~110キロダルトンの分子量を有する、態様13に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様17]前記植物アルブミンが、前記細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると前記植物アルブミンが前記細胞培養培地中約0.01重量%~約10重量%の最終濃度を有する濃度で、前記細胞培養培地サプリメント中に存在する、態様7~16のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様18]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物カタラーゼである、態様7に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様19]前記植物カタラーゼが、シロイヌナズナ(Arabidopsis)カタラーゼ、キャベツカタラーゼ、キュウリカタラーゼ、綿カタラーゼ、ジャガイモカタラーゼ、カボチャカタラーゼ、ホウレンソウカタラーゼ、ヒマワリカタラーゼ、タバコカタラーゼ又はトマトカタラーゼである、態様8又は18に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様20]前記植物カタラーゼが、キャベツカタラーゼ、キュウリカタラーゼ又はジャガイモカタラーゼである、態様19に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様21]前記植物カタラーゼが、約50~70キロダルトンの分子量を有する、態様18~20のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様22]前記植物カタラーゼが、前記細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると前記植物カタラーゼが前記細胞培養培地中約1ng/ml~約100ng/mlの最終濃度を有する濃度で、前記細胞培養培地サプリメント中に存在する、態様18~21のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様23]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物フィブロネクチンである、態様7に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様24]前記植物フィブロネクチンが、マメフィブロネクチン、ヒヨコマメフィブロネクチン、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン、ダイズフィブロネクチン、タバコフィブロネクチン又はコムギフィブロネクチンである、態様8又は23に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様25]前記植物フィブロネクチンが、ヒヨコマメフィブロネクチン、ヒラマメフィブロネクチン、イネフィブロネクチン、ダイズフィブロネクチン又はコムギフィブロネクチンである、態様24に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様26]前記植物フィブロネクチンが、約40~60キロダルトンの分子量を有する、態様23~25のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様27]前記植物フィブロネクチンが、前記細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると前記植物フィブロネクチンが前記細胞培養培地中約0.1μg/ml~約100μg/mlの最終濃度を有する濃度で、前記細胞培養培地サプリメント中に存在する、態様23~26のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様28]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物インシュリンである、態様7に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様29]前記植物インシュリンが、グルコキニン、チャランチン、又はコロソリン酸である、態様8又は28に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様30]前記植物インシュリンが、前記細胞培養培地サプリメントが細胞培養培地に添加されると前記植物インシュリンが前記細胞培養培地中約0.05μg/ml~約10μg/mlの最終濃度を有する濃度で、細胞培養培地サプリメント中に存在する、態様28又は29に記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様31]前記少なくとも1つの植物タンパク質相同体が、植物抽出物画分の形態又は純粋形態である、態様1~30のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメント。
[態様32]無血清培地及び態様1~31のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメントを含む細胞培養培地であって、前記無血清培地は、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く、細胞培養培地。
[態様33]前記無血清培地が、基本生理的緩衝液である、態様32に記載の細胞培養培地。
[態様34]態様1~31のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメントと、任意の動物血清由来成分を欠く無血清培地と前記細胞培養培地サプリメントを混合するための説明書とを含むキット。
[態様35]培養肉を生産する方法であって、態様32又は33に記載の細胞培養培地中で細胞を培養するステップ、及び培養細胞から肉を生産するステップを含む方法。
[態様36]前記細胞が食用動物由来である、態様35に記載の方法。
[態様37]前記食用動物が、家畜、狩猟動物、家禽、魚、又は甲殻類である、態様36に記載の方法。
[態様38]前記細胞が、繊維芽細胞である、態様35~37のいずれかに記載の方法。
[態様39]前記線維芽細胞が、ウシ線維芽細胞又はニワトリ線維芽細胞である、態様38に記載の方法。
[態様40]態様35~39のいずれかに記載の方法によって生産される培養肉。
[態様41]任意の動物タンパク質及び/又は成分を欠く細胞培養培地を生産する方法であって、無血清基本培地と態様1~31のいずれかに記載の細胞培養培地サプリメントとを混合するステップを含み、前記無血清基本培地及び細胞培養培地サプリメントは、それぞれ任意の動物血清由来成分を本質的に欠く、方法。
[態様42]態様41に記載の方法によって生産される細胞培養培地。
[態様43]細胞培養培地サプリメント中の動物タンパク質の代わりの、動物タンパク質の植物タンパク質相同体の使用。
[態様44]前記動物タンパク質が血清タンパク質である、態様43に記載の使用。
[態様45]前記サプリメントが、任意の動物血清由来成分を本質的に欠く、態様43又は44に記載の使用。