(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002023
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】柱の固定構造および柱の固定方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20241226BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20241226BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
E04B1/58 600E
E04B1/24 R
E04B1/30 H
E04B1/58 511F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101922
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】三輪 隆治
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA56
2E125AG43
2E125BB11
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】ベース部の大きさを最小限に抑えることができるとともに、ベース部の形状を柱の周りに集約した形状にできる柱の固定構造および柱の固定方法を提供する。
【解決手段】
スラブ21の上に設けられた間柱3と、間柱3の下端部に接合されスラブ21の上面211に設けられたベース部4と、スラブ21の下方においてスラブ21を支持する梁22の側面221に沿って設けられた固定部材5と、スラブ21を貫通しベース部4と固定部材5とを固定するアンカーボルト6と、固定部材5を梁22に側方から固定する接着系アンカー7と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブの上に設けられた柱と、
前記柱の下端部に接合され前記スラブの上面に設けられたベース部と、
前記スラブの下方において前記スラブを支持する梁の側面に沿って設けられた固定部材と、
前記スラブを貫通し前記ベース部と前記固定部材とを固定するアンカーボルトと、
前記固定部材を前記梁に側方から固定する接着系アンカーと、を有する柱の固定構造。
【請求項2】
スラブの上に設けられた柱と、
前記柱の下端部に接合され前記スラブの上面に設けられたベース部と、
前記ベース部よりも上方において前記柱に接合されたブラケットと、
前記スラブの下方において前記スラブを支持する梁の側面に沿って設けられた固定部材と、
前記ベース部を前記スラブの上から前記梁に固定する第1接着系アンカーと、
前記スラブを貫通し前記ブラケットと前記固定部材とを固定するアンカーボルトと、
前記固定部材を前記梁に側方から固定する第2接着系アンカーと、を有する柱の固定構造。
【請求項3】
前記柱には、ブレースが接合される請求項1または2に記載の柱の固定構造。
【請求項4】
柱の下端部に接合されスラブの上面に設けられたベース部を、前記スラブの下方において前記スラブを支持する梁の側面に沿って設けられた固定部材に前記スラブを貫通するアンカーボルトで固定し、
前記固定部材を前記梁に側方から接着系アンカーで固定する柱の固定方法。
【請求項5】
柱の下端部に接合されスラブの上面に設けられたベース部を、前記スラブの上から前記スラブを支持する梁に第1接着系アンカーで固定し、
前記ベース部よりも上方において前記柱に接合されたブラケットを、前記スラブの下方において前記梁の側面に沿って設けられた固定部材に前記スラブを貫通するアンカーボルトで固定し、
前記固定部材を前記梁に側方から第2接着系アンカーで固定する柱の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱の固定構造および柱の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼製の柱をコンクリート製の梁や基礎の上に設置する場合、柱の脚部に設けられたベースプレートをアンカーボルトで梁や基礎に固定している(例えば、特許文献1参照)。
耐震補強などを目的として既存建屋を補強する際に、既存建屋に鋼製の間柱およびブレースを設置して補強することがある。このような場合、間柱の脚部に設けられたベースプレートを接着系アンカーで梁に固定することがある。接着系アンカーは、例えば、ケミカルアンカー(登録商標)などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
間柱には、ブレースの作用によって圧縮力および引張力の両方の軸力が生じる。このため、間柱に引張力の軸力が作用した場合にコーン状破壊の発生を防止できるように、接着系アンカーを多く設ける必要がある。接着系アンカーの本数が多くなると、その本数に合わせてベースプレートが大きくなる。また、接着系アンカーは梁に挿入されるため、多数の接着系アンカーを設けるには、接着系アンカーを梁の長さ方向に配列して設ける必要があり、ベースプレートが梁の長さ方向に沿った細長い形状になる。このため、間柱の周囲に設置する予定の設備などが、ベースプレートと干渉し、所望の位置に設置できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、ベース部(ベースプレート)の大きさを最小限に抑えることができるとともに、ベース部の形状を柱(間柱)の周りに集約した形状にできる柱の固定構造および柱の固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る柱の固定構造は、スラブの上に設けられた柱と、前記柱の下端部に接合され前記スラブの上面に設けられたベース部と、前記スラブの下方において前記スラブを支持する梁の側面に沿って設けられた固定部材と、前記スラブを貫通し前記ベース部と前記固定部材とを固定するアンカーボルトと、前記固定部材を前記梁に側方から固定する接着系アンカーと、を有する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る柱の固定方法は、柱の下端部に接合されスラブの上面に設けられたベース部を、前記スラブの下方において前記スラブを支持する梁の側面に沿って設けられた固定部材に前記スラブを貫通するアンカーボルトで固定し、前記固定部材を前記梁に側方から接着系アンカーで固定する。
【0008】
本発明では、固定部材を梁に固定する接着系アンカーがスラブの下側で梁に側方から挿入されているため、スラブの上から梁に挿入される接着系アンカーと比べてコーン状破壊に対する耐力を大きくできて接着系アンカーの本数を少なくできる。これにより、梁の長さ方向に配列される接着系アンカーの本数を少なくでき、固定部材および固定部材と固定されるベース部材の長さ方向を小さくできる。その結果、ベース部の大きさを最小限に抑えることができるとともに、ベース部の形状を柱の周りに集約した形状にできる。また、本発明では、固定部材を梁に固定する接着系アンカーは、スラブを介さずに梁に挿入されるため、接着系アンカーがスラブを介して梁に挿入される場合、すなわちスラブと梁に挿入される場合と比べて、埋め込み長さ(挿入長さ)を短くできる。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る柱の固定構造は、スラブの上に設けられた柱と、前記柱の下端部に接合され前記スラブの上面に設けられたベース部と、前記ベース部よりも上方において前記柱に接合されたブラケットと、前記スラブの下方において前記スラブを支持する梁の側面に沿って設けられた固定部材と、前記ベース部を前記スラブの上から前記梁に固定する第1接着系アンカーと、前記スラブを貫通し前記ブラケットと前記固定部材とを固定するアンカーボルトと、前記固定部材を前記梁に側方から固定する第2接着系アンカーと、を有する。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る柱の固定方法では、柱の下端部に接合されスラブの上面に設けられたベース部を、前記スラブの上から前記スラブを支持する梁に第1接着系アンカーで固定し、前記ベース部よりも上方において前記柱に接合されたブラケットを、前記スラブの下方において前記梁の側面に沿って設けられた固定部材に前記スラブを貫通するアンカーボルトで固定し、前記固定部材を前記梁に側方から第2接着系アンカーで固定する。
【0011】
本発明では、ベース部を第1接着系アンカーで固定するとともに、ベース部よりも上方において柱に接合されたブラケットとアンカーボルトで接合された固定部材をスラブより下方において第2接着系アンカーで梁に固定している。このため、ベース部のみを接着系アンカーでスラブの上から梁に固定する場合と比べて、ベース部を固定する第1接着系アンカーを減らすことができる。その結果、ベース部の大きさを最小限に抑えることができるとともに、ベース部の形状を柱の周りに集約した形状にできる。また、本発明では、固定部材を梁に固定する第2接着系アンカーがスラブを介さずに梁に挿入されるため、接着系アンカーがスラブを介して梁に挿入される場合、すなわちスラブと梁に挿入される場合と比べて、第2接着系アンカーの埋め込み長さ(挿入長さ)を短くできる。
【0012】
また、本発明に係る柱の固定構造では、前記柱には、ブレースが接合されていてもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、ブレースから作用する圧縮力および引張力を確実に柱から梁に伝達できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベース部の大きさを最小限に抑えることができるとともに、ベース部の形状を柱の周りに集約した形状にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態による柱の固定構造の鉛直断面図である。
【
図2】第1実施形態による柱の固定構造の平面図である。
【
図4】第2実施形態による柱の固定構造の鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による柱の固定構造および柱の固定方法について、
図1-
図3に基づいて説明する。
図1から
図3に示す第1実施形態による柱の固定構造1Aおよび柱の固定方法は、既存建屋2に間柱3(柱)およびブレース(不図示)を設けて補強する場合の、間柱3を既存建屋2に固定する構造および方法である。
【0017】
間柱3は、例えば、鉄骨柱などの鋼製の柱である。本実施形態の間柱3は、H形鋼である。間柱3は、既存建屋2のスラブ21の上に設けられる。ブレースは、間柱3に接合される。ブレースは、例えば、形鋼などの鋼材である。スラブ21の下には、スラブ21を支持する梁22が設けられている。間柱3は、梁22の鉛直方向の上側に重なって設けられている。以下では、梁22が延びる水平方向をX方向と表記する。梁22の幅方向でX方向に直交する水平方向をY方向と表記する。間柱3の2つのフランジ31,31は、X方向に対向している。間柱3のウェブ32の面は、Y方向を向いている。
スラブ21は、鉄筋コンクリート造や鉄筋鉄骨コンクリート造などのコンクリートスラブである。梁22は、例えば、鉄筋コンクリート造や鉄筋鉄骨コンクリート造などのコンクリート梁である。
【0018】
柱の固定構造1Aは、間柱3と、ベース部4と、固定部材5と、アンカーボルト6と、接着系アンカー7と、を有する。ベース部4は、間柱3の下端部に接合され、スラブ21の上面211に設置されている。固定部材5は、梁22の側面に沿って設けられている。アンカーボルト6は、ベース部4と固定部材5とを固定している。接着系アンカー7は、固定部材5を梁22に側方から固定している。
【0019】
ベース部4は、鋼製の部材である。ベース部4は、ベースプレート41と、第1リブプレート42と、第2リブプレート43と、を有する。ベースプレート41は、板面形状が長方形の鋼板である。ベースプレート41の上面に間柱3の下端部が接合されている。間柱3は、ベースプレート41の平面視における中央部に接合されている。
ベースプレート41は、梁22の鉛直方向の上側となる位置においてスラブ21の上面211に設置される。ベースプレート41のY方向の寸法は、梁22のY方向の寸法(梁幅寸法)よりも大きい。ベースプレート41のY方向の両端部分411,411は、平面視において梁22の側面221,221よりもY方向の外側に位置している。ベースプレート41のY方向の両端部分411,411には、上下方向に貫通する孔部412がX方向に間隔をあけて複数形成されている。孔部412には、アンカーボルト6が挿入される。
【0020】
第1リブプレート42および第2リブプレート43は、ベースプレート41の上面に接合されている。第1リブプレート42は、板面がY方向を向く姿勢でベースプレート41のY方向の中央部に接合されている。第1リブプレート42は、間柱3のX方向の両側それぞれに配置されている。第2リブプレート43は、板面がX方向を向く姿勢で、X方向に間隔をあけてベースプレート41の上面に複数接合されている。第1リブプレート42および第2リブプレート43は、いずれも間柱3と接触する端部は、間柱3と接合されている。
【0021】
固定部材5は、L字形ピース51と、リブプレート52と、を有する。L字形ピース51は、断面形状がL字形状の鋼製の部材である。L字形ピース51は、X方向に延びる長尺の部材であり、Y方向から見てL字形状となる向きに設置される。リブプレート52は、L字形ピース51のX方向の両端部それぞれに接合されている。
【0022】
固定部材5は、スラブ21の下面212と梁22の側面221とが成す角部23に沿って設置されている。固定部材5は、梁22のY方向の両側それぞれに設けられている。固定部材5は、ベースプレート41のY方向の両端部分411,411とスラブ21を介して上下方向に重なっている。固定部材5のX方向の寸法は、ベース部4のX方向の寸法とほぼ同じである。L字形ピース51は、断面形状のL字形の一方の片となる第1固定片511と他方の辺となる第2固定片512とを有する。
【0023】
第1固定片511は、板面が水平面となる姿勢でスラブ21の下面212と接触している。第2固定片512は、板面がY方向を向く姿勢で梁22の側面221と接触している。第1固定片511と第2固定片512との角部515は、梁22の側面221とが成す角部23に沿って配置されている。第1固定片511には、上下方向に貫通する孔部513がX方向に間隔をあけて複数形成されている。孔部513には、アンカーボルト6が挿入される。第2固定片512には、Y方向に貫通する孔部514がX方向に間隔をあけて複数形成されている。孔部514には、接着系アンカー7が挿入される。
第1固定片511は、スラブ21を介してベースプレート41のY方向の両端部分411と上下方向に重なっている。梁22のY方向の両側それぞれに設けられている固定部材5の第2固定片512は、梁22を介してY方向に対向している。
【0024】
アンカーボルト6は、スラブ21を貫通し、ベース部4のベースプレート41と固定部材5の第1固定片511とを固定している。アンカーボルト6は、ベースプレート41の孔部412および第1固定片511の孔部513に挿入されている。アンカーボルト6は、頭部61が上側、軸部62が下側となる向きで、ベースプレート41の孔部412、スラブ21および第1固定片511の孔部513を上方から貫通し、第1固定片511の下側において軸部62にナット63が締結されている。
【0025】
接着系アンカー7は、固定部材5の第2固定片512を梁22に固定している。接着系アンカー7は、第2固定片512の孔部514に挿入されている。接着系アンカー7は、第2固定片512の孔部514および梁22にY方向から挿入されている。接着系アンカー7は、Y方向に延びる姿勢で固定部材5を梁22に固定している。接着系アンカー7の軸部73および薬剤74(接着剤)は、梁22の内部に挿入される。
【0026】
第1実施形態による柱の固定方法では、まず、スラブ21の上にベース部4を接合した間柱3を設置する。スラブ21の下側に固定部材5を設置し、ベースプレート41と固定部材5とをスラブ21を貫通するアンカーボルト6で固定する。固定部材5を軸部がY方向に延びる接着系アンカー7で梁22に固定する。
【0027】
次に、第1実施形態による柱の固定構造および柱の固定方法の作用・効果について説明する。
第1実施形態による柱の固定構造1Aおよび柱の固定方法では、固定部材5を梁22に固定する接着系アンカー7がスラブ21の下側で梁22に側方から挿入されているため、スラブ21の上から梁22に挿入される接着系アンカー7と比べてコーン状破壊に対する耐力を大きくできて接着系アンカー7の本数を少なくできる。これにより、X方向に配列される接着系アンカー7の本数を少なくでき、固定部材5および固定部材5と固定されるベースプレート41のX方向の寸法を小さくできる。その結果、ベースプレート41の大きさを最小限に抑えることができるとともに、ベース部4の形状を間柱3の周りに集約した形状にできる。また、固定部材5を梁22に固定する接着系アンカー7は、スラブ21を介さずに梁22に挿入されるため、接着系アンカーがスラブ21を介して梁22に挿入される場合、すなわちスラブ21と梁22に挿入される場合と比べて、埋め込み長さ(挿入長さ)を短くできる。
第1実施形態による柱の固定構造1Aでは、間柱3には、ブレースが接合されている。第1実施形態による柱の固定構造1Aでは、ブレースから作用する圧縮力および引張力を確実に間柱3から梁22に伝達できる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、説明する。上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
図4に示すように、第2実施形態による柱の固定構造1Bは、間柱3と、ベース部4Bと、ブラケット8と、固定部材5Bと、アンカーボルト6Bと、第1接着系アンカー71と、第2接着系アンカー72と、を有する。
図4および
図5に示すように、ベース部4Bは、ベースプレート41Bを有する。第2実施形態のベース部4Bには、第1実施形態のベース部4のようなリブプレートが設けられていない。ベースプレート41Bは、平板状に形成され、板面が水平面となる向きでスラブ21の上面211に設置されている。ベースプレート41は、梁22と上方向に重なる位置に配置されている。ベースプレート41のY方向の寸法は、スラブ21の幅寸法(Y方向の寸法)と略同じである。間柱3は、ベースプレート41Bの平面視における中央部に接合されている。ベースプレート41Bには、上下方向に貫通する孔部413が形成されている。孔部413には、第1接着系アンカー71が挿入される。
【0029】
図4、
図6および
図7に示すように、ブラケット8は、断面形状がC字形状の鋼製の部材である。ブラケット8は、Y方向に延び、断面形状のC字形がX方向に開口する姿勢でベース部4Bよりも上方において間柱3に接合されている。ブラケット8は、第1片81と、第2片82と、第3片83と、を有する。第1片81、第2片82および第3片83は、それぞれ平板状である。第1片81および第2片82は、それぞれ板面が水平面となる姿勢であり、第1片81が第2片82の上側に配置される。第3片83は、板面がX方向を向く鉛直面となる姿勢であり、上縁部が第1片81のX方向の端部と接続され、下縁部が第2片82のX方向の端部と接続されている。本実施形態では、3つのブラケット8がX方向に間隔をあけて設けられている。3つのブラケット8をX方向の一方側から他方側に向かって第1ブラケット84、第2ブラケット85、第3ブラケット86と表記する。
【0030】
第1ブラケット84は、断面形状のC字形がX方向の一方側に開口する姿勢で、第3片83が間柱3のX方向の一方側のフランジ31にX方向の一方側から接合されている。第3ブラケット86は、断面形状のC字形がX方向の他方側に開口する姿勢で、第3片83が間柱3のX方向の他方側のフランジ31にX方向の他方側から接合されている。第2ブラケット85は、断面形状のC字形がX方向の他方側に開口する姿勢である。第2ブラケット85は、Y方向に2つに分割されている。第2ブラケット85の分割された一方851が間柱3のウェブ32にY方向の一方側から接合され、他方852がウェブ32にY方向の他方側から接合されている。
【0031】
3つのブラケット84-86は、互いに同じ高さに配置されている。3つのブラケット84-86それぞれのY方向の寸法は、ベース部4BのY方向の寸法よりも大きく設定されている。3つのブラケット84-86それぞれのY方向の端部は、ベース部4BのY方向の端部よりもY方向の外側に配置されている。3つのブラケット84-86それぞれの第1片81および第2片82のY方向の端部には、上下方向に貫通する孔部811,812が形成されている。孔部811,812には、アンカーボルト6Bが挿入される。
【0032】
図4および
図7に示すように、固定部材5Bは、第1実施形態の固定部材5と同様に、L字形ピース51とリブプレート52と、を有する。L字形ピース51の第1固定片511および第2固定片512には、それぞれ孔部513,514が形成されている。固定部材5Bは、スラブ21の下方において梁22の両側方それぞれに上下方向に2つ並んで設けられている。上下方向に2つならんだ上側の固定部材5Bは、スラブ21の下面212と梁22の側面221とが成す角部23に沿って設けられている。下側の固定部材5Bは、第1固定片511が上側の固定部材5の第2固定片512の下端部と接触し、第2固定片512がスラブ21の側面と接触している。
【0033】
図4から
図7に示すように、アンカーボルト6Bは、スラブ21を貫通し、ブラケット8と固定部材5Bとを接合している。アンカーボルト6Bは、ブラケット8の孔部811に上方から挿入され、スラブ21を貫通して上下2つ並んで配置された固定部材5Bそれぞれの第1固定片511の孔部513に挿入されている。アンカーボルト6Bは、上側の固定部材5の第1固定片511の下側および下側の第1固定片511の上下において軸部62にナット63が締結されている。
【0034】
第1接着系アンカー71は、ベースプレート41Bを上方から梁22に固定している。第1接着系アンカー71は、ベースプレート41Bの孔部413に挿入され、スラブ21およびスラブ21に挿入されている。
【0035】
第2接着系アンカー72は、上下2つの固定部材5Bそれぞれの第2固定片512を梁22に固定している。接着系アンカー7は、第2固定片512の孔部514に挿入されている。接着系アンカー7は、第2固定片512の孔部514および梁22にY方向から挿入されている。接着系アンカー7は、Y方向に延びる姿勢で固定部材5を梁22に固定している。第2接着系アンカー72の軸部73および薬剤74は、梁22の内部に挿入される。
【0036】
第2実施形態による柱の固定方法では、まず、スラブ21の上にベース部4およびブラケット8を接合した間柱3を設置する。ベース部4のベースプレート41Bを第1接着系アンカー71でスラブ21の上方から梁22に固定する。
スラブ21の下側に固定部材5Bを設置し、ブラケット8と固定部材5Bとをスラブ21を貫通するアンカーボルト6Bで固定する。固定部材5Bを軸部がY方向に延びる第2接着系アンカー72で梁22に固定する。
【0037】
上記の第2実施形態による柱の固定構造1Bおよび柱の固定方法では、ベース部4を第1接着系アンカー71でスラブ21の上から梁22に固定するとともに、ベース部4よりも上方において間柱3に接合されたブラケット8とアンカーボルト6Bで接合された固定部材5Bをスラブ21の下方において第2接着系アンカー72で梁22に固定している。このため、ベース部4のみを接着系アンカーで梁22に固定する場合と比べて、ベース部4を固定する第1接着系アンカー71を減らすことができる。その結果、ベース部4の大きさを最小限に抑えることができるとともに、ベース部4の形状を間柱3の周りに集約した形状にできる。また、固定部材5Bを梁22に固定する第2接着系アンカー72は、スラブ21を介さずに梁22に挿入されるため、接着系アンカーがスラブ21を介して梁22に挿入される場合、すなわちスラブ21と梁22に挿入される場合と比べて、埋め込み長さ(挿入長さ)を短くできる。
【0038】
以上、本発明による柱の固定構造および柱の固定方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態の柱の固定構造1A,1Bおよび柱の工程方法は、ブレースが接合される間柱3の固定構造および固定方法に採用しているが、間柱3以外の柱の固定構造および固定方法に採用されてもよいし、ブレースが接合されない柱の固定構造1A,1Bおよび固定方法に採用されてもよい。
【0039】
上記の実施形態では、間柱3は、H形鋼の鉄骨柱であるが、H形鋼以外の鋼製柱であってもよい。
第1実施形態のベース部4は、アンカーボルト6を固定可能な形状であれば、ベースプレート41のみで構成されていてもよい。第2実施形態のベース部4Bは、第1接着系アンカー71を固定可能な形態であれば、第1実施形態のようにリブプレートが設けられていてもよい。
上記の実施形態では、固定部材5,5Bは、L字形ピース51とリブプレート52と、を有する構成であるが、梁22の側方に設置され、アンカーボルト6,6Bが固定可能であるとともに、接着系アンカー7や第2接着系アンカー72によって梁22に固定可能な形態であれば、上記以外の形態であってもよい。例えば、固定部材5,5Bは、L字形ピース51のみで構成されていてもよいし、断面形状がL字形以外の例えばC字形の鋼材や、角形鋼管などであってもよい。
【0040】
上記の第2実施形態では、ブラケット8は、断面形状がC字形の鋼材であるが、L字形等のC字形以外の断面形状の鋼材であってもよいし、角形鋼管などであってもよい。
上記の実施形態では、梁22は、コンクリート製の梁であるが、鉄骨梁であってもよい。
【0041】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。
本実施形態に係る柱の固定構造および柱の固定方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基板をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B 固定構造
3 間柱(柱)
4,4B ベース部
5,5B 固定部材
6,6B アンカーボルト
7 接着系アンカー
8 ブラケット
21 スラブ
22 梁
41,41B ベースプレート
71 第1接着系アンカー
72 第2接着系アンカー
84 第1ブラケット
85 第2ブラケット
86 第3ブラケット
211 上面
221 側面