(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020271
(43)【公開日】2025-02-12
(54)【発明の名称】エポキシアクリレート樹脂、アルカリ可溶性樹脂、それを含む樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/17 20060101AFI20250204BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20250204BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20250204BHJP
C08F 4/00 20060101ALI20250204BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20250204BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20250204BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20250204BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
C08G59/17
C08F2/44 C
C08F283/00
C08F4/00
C08F20/00 510
C08F290/14
G03F7/027 515
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024191969
(22)【出願日】2024-10-31
(62)【分割の表示】P 2022521835の分割
【原出願日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2020083923
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501479710
【氏名又は名称】株式会社 国都化▲学▼
【氏名又は名称原語表記】KUKDO CHEMICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】61 Gasan digital 2-ro,Geumcheon-gu,Seoul,KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】宗 正浩
(72)【発明者】
【氏名】石原 一男
(72)【発明者】
【氏名】柳 起煥
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲清▼來
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光又は熱硬化が可能なエポキシアクリレート樹脂又はアルカリ可溶性樹脂と、アルカリ現像によるパターニングが可能な感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシアクリレート樹脂は、一般式(1)で表され、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂をエポキシ化した樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させて得られる。また、アルカリ可溶性樹脂はこのエポキシアクリレート樹脂に、多価カルボン酸類を反応させて得られる。一般式(1)中、Xは式(1a)で表される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエポキシアクリレート樹脂。
【化1】
ここで、R
1は独立に、炭素数1~8の炭化水素基を示し、
R
2は独立に、水素原子又はジシクロペンテニル基を示し、少なくとも1つはジシクロペンテニル基である。
Xは上記式(1a)で表される不飽和結合含有基であり、R
3は水素原子又はメチル基を示す。
nは繰り返し数を示し、その平均値は1~5である。
【請求項2】
請求項1に記載のエポキシアクリレート樹脂と重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【請求項4】
下記一般式(2)で表され、分子内にカルボキシル基及び重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂。
【化2】
ここで、R
1は独立に、炭素数1~8の炭化水素基を示し、
R
2は独立に、水素原子又はジシクロペンテニル基を示し、少なくとも1つはジシクロペンテニル基である。
R
3は水素原子又はメチル基を示す。
Yは上記式(2a)で表される不飽和結合含有基であり、R
3は水素原子又はメチル基を示す。
nは繰り返し数を示し、その平均値は1~5である。
Lは水素原子又は上記式(3)で表されるカルボキシル基含有基を示し、Lの50モル%以上はカルボキシル基含有基である。
Mはp+1価のカルボン酸残基を示し、pは1又は2である。
【請求項5】
請求項4に記載のアルカリ可溶性樹脂と、少なくとも1個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項6】
更にエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
アルカリ可溶性樹脂と光重合性モノマーの合計100質量部に対して、光重合開始剤を0.1~10質量部含有する請求項5又は6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
アルカリ可溶性樹脂と光重合性モノマーの合計100質量部に対して、エポキシ樹脂を10~40質量部含有する請求項6又は7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシアクリレート樹脂、これを用いた硬化性樹脂組成物、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、それを必須成分とする感光性樹脂組成物及びそれらの硬化物に関する。本発明の硬化性樹脂組成物、感光性樹脂組成物及びその硬化物は、回路基板作製のためのオーバーコート、アンダーコート、絶縁コート等の永久保護膜、ソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジストや、半導体素子を搭載する配線基板の多層化用の絶縁膜、半導体のゲート絶縁膜、感光性接着剤等に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ソルダーレジストインキはプリント配線板の露出した導体回路の絶縁保護被膜用や回路のハンダ不要部分へのハンダ付着防止用等に用いられる。塗膜形成法としては通常スクリーン印刷法が従来から採用され、硬化被膜にはハンダ耐熱性、耐湿性、密着性、耐薬品性、耐メッキ性、耐電解腐蝕性が要求される。このタイプのソルダーレジストには熱硬化型と紫外線硬化型の二種があるが、前者は主にエポキシ樹脂、後者はエポキシアクリレート樹脂が多用されてきた。しかし、近年、各種プリント配線板における導体回路パターンの微細化と位置精度向上と、更に実装部品の小型化により、ソルダーレジストによる絶縁被膜形成はスクリーン印刷法に代わり、フォト法による画像形成が主流になりつつある。また、フォト法によるレジストの現像は、従来は有機溶剤が用いられてきたが、大気汚染や安全性の観点から希アルカリ水溶液を使用することが望まれている。このような背景により、ソルダーレジストには従来のスクリーン印刷対応のエポキシ樹脂やエポキシアクリレート樹脂では満足できないという問題が生じている。
【0003】
フォト法や希アルカリ水溶液現像への対応として、例えば、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂又はビスフェノールAエポキシアクリレート樹脂、あるいはこれらエポキシアクリレート樹脂と酸二無水物の反応によるハーフエステル化物等が知られている(特許文献1,2)。しかし、これらの公知のエポキシアクリレート樹脂又はその酸無水物変成物をソルダーレジスト用樹脂組成物として用いた場合、希アルカリ水溶液の現像性は満足するものの、物性を安定させるために硬化温度が少なくとも180℃以上必要であり、加熱設備にコストがかかるだけでなく、例えば、コア基板にガラスエポキシ基板を用いた場合、硬化温度が高すぎて基板の変色や反りをきたす恐れがある。更に、これら公知のエポキシアクリレート樹脂又はその酸無水物変成物から得られる硬化被膜は、ハンダ耐熱性、耐湿性、密着性、耐薬品性、耐メッキ性、又は耐電解腐蝕性等が十分でないという問題がある。
【0004】
近年、プリント配線板の高密度化に伴い、マルチチップモジュール(MCM)用ビルドアップ基板やチップサイズパッケージ(CSP)等のチップ実装基板用の絶縁層には信頼性と耐プレッシャークッカー性や耐サーマルサイクル性が要求されており、上記公知のエポキシアクリレート樹脂やその酸無水物変成物をソルダーレジスト用樹脂組成物とした場合、十分な信頼性を発揮できないという問題もある。
【0005】
また、近年の電子機器や表示部材等の高性能化、高精細化に伴い、そこに使用される電子部品においては小型化や高密度化が要求されている。そして、それらに使用されている絶縁材料の加工性においても微細化及び加工したパターンの断面形状の適正化が要求されるようになってきている。絶縁材料の微細加工の有効な手段として露光、現像によってパターニングする方法が知られており、そこには感光性樹脂組成物が用いられてきたが、高感度化、基板に対する密着性、信頼性、耐熱性、耐薬品性等の多くの諸特性が要求されるようになってきている。また、有機TFT用のゲート絶縁膜において有機絶縁材料を使用する検討も種々行われてきているが、ゲート絶縁膜を薄膜化して有機TFTの動作電圧を低減する必要性がある。ここで、絶縁材料の絶縁耐圧が1MV/cm程度の有機絶縁材料の場合、絶縁膜の膜厚は0.2μm程度の薄膜の適用が検討されている。
【0006】
従来の感光性樹脂組成物からなる絶縁材料は、光反応性を有するアルカリ可溶性樹脂と光重合開始剤との反応による光硬化反応が利用されており、光硬化させるための露光波長として主に水銀灯の線スペクトルの一つであるi線(365nm)が使用されている。しかし、このi線は感光性樹脂そのもの自身や着色剤により吸収され光硬化度の低下が発生する。しかも、厚膜であればその吸収量は増大する。そのため、露光された部分は膜厚方向に対する架橋密度に差が生じる。これにより、塗膜表面で十分に光硬化していても、塗膜底面では光硬化し難いため、露光部分と未露光部分における架橋密度の差をつけることは著しく困難である。それにより、所望するパターン寸法安定性、現像マージン、パターン密着性、パターンのエッジ形状及び断面形状を有する高解像度で現像できる感光性絶縁材料を得ることは困難である。
【0007】
また、特許文献3には、1分子中に重合性不飽和基とカルボキシル基とを有するアルカリ可溶性不飽和化合物が、カラーフィルター等のネガ型パターン形成に有効であることについて開示されている。しかしながら、各分子の分子量及びカルボキシル基の量に広い分布が生じることからアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度の分布が広くなるので、微細なネガ型パターンを形成することが困難である。
【0008】
更に、特許文献4には、カルボキシル基含有共重合体の分子量を増加させるアルカリ可溶性樹脂組成物の多官能化が開示されている。しかしながら、重合性不飽和結合数が少なく、架橋密度が十分に得られないため、1分子中の重合性不飽和結合の割合を高める等の共重合体構造の改良の余地がある。
【0009】
また、感光性樹脂組成物を、半導体装置の層間絶縁膜や、液晶表示装置のTFT電極を被覆する平坦化膜に使用することも検討されている。この場合、感光性樹脂組成物は、デバイスの機能を阻害しないように、誘電率を低くすることが求められている。
【0010】
基板材料の耐熱性の制約や製造設備等の観点から低温硬化が可能でフォト法による希アルカリ水による現像が可能で、かつ誘電率を低くでき、プリント配線板のソルダーレジストに必要な密着性、耐薬品性等の高密度実装基板等の絶縁層硬化膜に要求される信頼性を十分に満足するものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61-243869号公報
【特許文献2】特開2003-026762号公報
【特許文献3】特開平4-340965号公報
【特許文献4】特開平9-325494号公報
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明の目的は、光又は熱硬化が可能で誘電特性の良好な新規エポキシアクリレート樹脂を提供すること、又はアルカリ現像によるパターニングが可能な感光性樹脂組成物を提供することである。更に、誘電特性が良好であり、プリント配線板のソルダーレジストや絶縁膜等に必要な密着性、耐薬品性等の信頼性に優れた硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することであり、電極形成等の加工プロセスを経る場合に優れた耐薬品性を示す硬化物(硬化膜)を提供することである。
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ジシクロペンテニル基を置換基として有するジシクロペンタジエン型フェノール樹脂をエポキシ化した樹脂に、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂を用いた硬化性樹脂組成物が信頼性に優れた硬化物(絶縁膜)を得るのに好適であること、そしてそのエポキシアクリレート樹脂に、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類又はその酸一無水物を反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物が、プリント配線板のソルダーレジストや絶縁膜等に好適であることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるエポキシアクリレート樹脂である。
【化1】
ここで、
R
1は独立に、炭素数1~8の炭化水素基を示し、
R
2は独立に、水素原子又はジシクロペンテニル基を示し、1以上はジシクロペンテニル基である。
R
3は水素原子又はメチル基を示す。
Xは上記式(1a)で表される不飽和結合含有基である。
nは繰り返し数を示し、その平均値は1~5である。
【0015】
また、本発明は、下記一般式(2)で表されて、1分子内にカルボキシル基及び重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂である。
【化2】
ここで、R
1、R
2、R
3は、それぞれ一般式(1)と同意である。
Yは上記式(2a)で表される不飽和結合含有基であり、Lは水素原子又は上記式(3)で表されるカルボキシル基含有基を示し、Lの50モル%以上はカルボキシル基含有基である。Mはp+1価のカルボン酸残基を示し、pは1又は2である。
【0016】
また、本発明は、上記エポキシアクリレート樹脂と重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0017】
また、本発明は、上記アルカリ可溶性樹脂と、少なくとも1個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。この感光性樹脂組成物は、更にエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0018】
また、本発明の他の実施形態は、上記硬化性樹脂組成物又は上記感光性樹脂組成物を硬化させて得た硬化物に関する。
【0019】
本発明のエポキシアクリレート樹脂は、光又は熱で硬化可能であり、その酸無水物付加体であるアルカリ可溶性樹脂の中間体としても有用である。本発明のアルカリ可溶性樹脂は、フォトリソグラフィーにより微細な硬化膜パターンを形成できる感光性樹脂組成物を与える。
更に、本発明によれば、耐薬品性(耐アルカリ性等)に優れ、基板に対する密着性、耐熱性、電気的信頼性等について優れるため、プリント配線板のソルダーレジストや、光パターニングを必要とする絶縁膜等の硬化膜パターンも提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシアクリレート樹脂は、上記一般式(1)で表される。
一般式(1)において、R1は炭素数1~8の炭化水素基を示し、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数7~8のアラルキル基、又はアリル基が好ましい。炭素数1~8のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、メチルブチル基、n-ヘキシル基、ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、トリメチルブチル基、n-オクチル基、ジメチルペンチル基、エチルペンチル基、イソオクチル基、エチルヘキシル基などの炭化水素基や、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基などの炭素数5~8のシクロアルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。炭素数6~8のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。炭素数7~8のアラルキル基としては、ベンジル基、α-メチルベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの置換基の中では、入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、メチル基又はフェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0021】
上記R
2は独立に、水素原子、ジシクロペンテニル基を示し、1以上はジシクロペンテニル基である。ジシクロペンテニル基は、ジシクロペンタジエンに由来する基であり、下記式(1b)又は式(1c)で表される。この基の存在によって、本発明のエポキシアクリレート樹脂の硬化物は誘電率を低くすることができる。
【化3】
【0022】
nは繰り返し数であって、1以上の数を示し、その平均値で1~5の数を示し、1.1~4.0が好ましく、1.2~3.0がより好ましく、1.3~2.0が更に好ましい。平均値は数平均である。
【0023】
Xは式(1a)で表される不飽和結合含有基であり、R3は水素原子又はメチル基を示す。式(1a)、(2a)及び(3)において、COはカルボニル基(C=O)であり、COで表しても、OCで表してもよい。
【0024】
一般式(1)のエポキシアクリレート樹脂は、下記一般式(4)で表されるエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させることにより有利に得られる。上記エポキシ樹脂は、2,6-ジ置換フェノール類をジシクロペンタジエンと反応させて得られるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂をエポキシ化して得られる。
【0025】
【化4】
ここで、R
1、R
2、及びnは一般式(1)における定義とそれぞれ同義である。Gはグリシジル基を示す。
【0026】
エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応は、公知の方法を使用することができる。例えば、エポキシ基に対し、等モルの(メタ)アクリル酸を使用して行う。全てのエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させるため、エポキシ基とカルボキシル基の等モルよりも若干過剰に(メタ)アクリル酸を使用してもよい。通常、反応温度は50~150℃であり、反応時間は1~20時間である。また、このとき使用する溶媒、触媒及びその他の反応条件は、特に制限されない。
【0027】
溶媒としては、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有することが好ましい。このような溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート及びブチルセロソルブアセテートなどを含むセロソルブ系溶媒や、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを含む高沸点のエーテル系又はエステル系の溶媒や、シクロヘキサノン及びジイソブチルケトンなどを含むケトン系溶媒や、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物等が挙げられる。
【0028】
触媒としては、例えば、トリエチルアミン、1,4-ジアザ[5,4,0]ビシクロウンデセン-7等のアミン類や、テトラエチルアンモニウムブロマイド及びトリエチルベンジルアンモニウムクロライドなどを含むアンモニウム塩や、トリフェニルホスフィン及びトリス(2、6-ジメトキシフェニル)ホスフィンなどを含むホスフィン類や、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類等の公知の触媒が挙げられる。
【0029】
更に、その反応の際、重合禁止剤として、ハイドロキノン、4-メチルキノリン、フェノチアジン等を添加することもできる。また、不飽和結合による重合反応を抑制するため、場合により、空気等の気流下で反応が行われる。
【0030】
また、エポキシアクリレート樹脂の原料であるエポキシ樹脂の製造方法は、例えば、特開平5-339341号公報に記載の製造方法を参考にすることができる。
上記エポキシ樹脂は、まず、2,6-ジ置換フェノール化合物とジシクロペンタジエンとを三フッ化ホウ素・エーテル錯体などの触媒の存在下で反応させることにより、下記一般式(5)で表されるフェノール樹脂を合成する。そして、得られたフェノール樹脂をエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンと反応させてエポキシ化することにより得ることができる。
【0031】
【化5】
ここで、R
1、R
2、及びnは一般式(1)における定義とそれぞれ同義である。
【0032】
上記フェノール樹脂は、2,6-ジ置換フェノールに対して、ジシクロペンタジエンを所定の比率で反応させることにより得ることができ、ジシクロペンタジエンを数段階に分けて添加し(二回以上の分割逐次添加)、間欠的に反応させてもよい。比率は、2,6-ジ置換フェノールに対し、ジシクロペンタジエンを0.28~2倍モルである。ジシクロペンタジエンを連続的に添加し反応させる場合の比率は、2,6-ジ置換フェノールに対し、ジシクロペンタジエンを0.25~1倍モルであり、0.28~1倍モルが好ましく、0.3~0.5倍モルがより好ましい。ジシクロペンタジエンを分割逐次添加して反応させる場合は、全体として0.8~2倍モルが好ましく、0.9~1.7倍モルがより好ましい。なお、この場合の各段階でのジシクロペンタジエンの使用比率は、0.28~1倍モルが好ましい。
ジシクロペンタジエンは、2,6-ジ置換フェノールを連結する架橋基となるほか、一部はジシクロペンタジエニル基として、R2の一部又は全部となる。
一分子中のR2中には、平均して少なくとも1個以上、好ましくはフェノール環1つ当たり、0.5~1個ジシクロペンタジエニル基を有する。これは、一般式(5)に限らず、一般式(1)及び一般式(2)におけるR2においても同様である。
【0033】
上記一般式(5)で表されるフェノール樹脂の原料のフェノール類は、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,6-ジプロピルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ(n-ブチル)フェノール、2,6-ジ(t-ブチル)フェノール、2,6-ジヘキシルフェノール、2,6-ジシクロヘキシルフェノール、2,6-ジフェニルフェノールなどが挙げられるが、入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、2,6-ジフェニルフェノール、又は2,6-ジメチルフェノールが好ましく、2,6-ジメチルフェノールが特に好ましい。
【0034】
フェノール類とジシクロペンタジエンを反応させる際に用いられる酸触媒は、ルイス酸であり、具体的には、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・エーテル錯体などの三フッ化ホウ素化合物や、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛、四塩化チタン、塩化鉄などの金属塩化物や、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸などの有機スルホン酸などであるが、中でも取り扱いの容易さから、三フッ化ホウ素・エーテル錯体が好ましい。酸触媒の使用量は、三フッ化ホウ素・エーテル錯体の場合で、ジシクロペンタジエン100質量部に対して、0.001~20質量部であり、好ましくは0.5~10質量部である。
【0035】
上記一般式(5)で表されるフェノール樹脂中に、式(1b)又は式(1c)で表されるジシクロペンテニル基が導入されたことを確認する方法としては、質量分析法とFT-IR測定を用いることができる。
【0036】
質量分析方法を用いる場合、エレクトロスプレー質量分析法(ESI-MS)やフィールドデソープション法(FD-MS)などを用いることができる。GPC等で核体数が異なる成分を分離したサンプルを質量分析法にかけることにより、ジシクロペンテニル基が導入されたことを確認できる。
【0037】
FT-IR測定法を用いる場合、THF等の有機溶媒に溶解させたサンプルをKRS-5セル上に塗布し、有機溶媒を乾燥させて得られたサンプル薄膜付セルをFT-IRで測定すると、フェノール核におけるC-O伸縮振動に由来するピークが1210cm-1付近に現れ、ジシクロペンテニル基が導入されている場合のみ、ジシクロペンタジエン骨格のオレフィン部位のC-H伸縮振動に由来するピークが3040cm-1付近に現れる。目的のピークの始まりと終わりを直線的につないだものをベースラインとし、ピークの頂点からベースラインまでの長さをピーク高さとしたとき、3040cm-1付近のピーク(A3040)と1210cm-1付近のピーク(A1210)の比率(A3040/A1210)によって、ジシクロペンテニル基の導入量が定量できる。その比率は大きいほど物性値がよくなることが確認できており、目的の物性を満たすための好ましい比率(A3040/A1210)は0.05以上であり、より好ましくは0.1以上である。
【0038】
反応方法としては、2,6-ジ置換フェノールと触媒を反応器に仕込み、ジシクロペンタジエンを1~10時間かけて滴下していく方式がよい。
【0039】
反応温度としては、50~200℃が好ましく、100~180℃がより好ましく、120~160℃が更に好ましい。反応時間は1~10時間が好ましく、3~10時間がより好ましく、4~8時間が更に好ましい。
【0040】
反応終了後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリを加えて触媒を失活させる。その後、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の溶媒を加えて溶解し、水洗した後、減圧下で溶媒を回収することにより、目的とするフェノール樹脂を得ることができる。なお、ジシクロペンタジエンを可及的に全量反応させ、2,6-ジ置換フェノール類の一部を未反応、好ましくは10%以下を未反応として、それを減圧回収することが好ましい。
【0041】
なお、反応に際しても、粘度調整など必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類や、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングルコールジメチルエーテルなどエーテル類等の溶媒を用いてもよい。
【0042】
一般式(4)で表されるエポキシ樹脂は、上記フェノール樹脂にエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンを反応させることによって有利に得られる。この反応は従来公知の方法に従って行われる。
【0043】
例えば、フェノール樹脂と、フェノール樹脂の水酸基に対して過剰モルのエピハロヒドリンとの混合物に、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を固形又は濃厚水溶液として加え、30~120℃の反応温度で0.5~10時間反応させるか、又はフェノール樹脂と過剰モルのエピハロヒドリンにテトラエチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩を触媒として加え、50~150℃の温度で1~5時間反応して得られるポリハロヒドリンエーテルに水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を固形又は濃厚水溶液として加え、30~120℃の温度で1~10時間反応させることにより得ることができる。
【0044】
上記反応において、エピハロヒドリンの使用量はフェノール樹脂の水酸基に対して1~10倍モルで、好ましくは2~5倍モルの範囲であり、またアルカリ金属水酸化物の使用量はフェノール樹脂の水酸基に対して0.85~1.1倍モルの範囲である。
【0045】
これらの反応で得られたエポキシ樹脂は、未反応のエピハロヒドリンとアルカリ金属のハロゲン化物を含有しているので、反応混合物より未反応のエピハロヒドリンを蒸発除去し、更にアルカリ金属のハロゲン化物を水による抽出、濾別などの方法により除去して、目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
【0046】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、244~3700が好ましく、260~2000がより好ましく、270~700が更に好ましい。
【0047】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の分子量分布は、エポキシ化反応の際のフェノール樹脂とエピハロヒドリンの仕込み比率を変更することにより変更可能であり、エピハロヒドリンの使用量をフェノール樹脂の水酸基に対して等モルに近づけるほど高分子量分布となり、20モル倍に近づけるほど低分子量分布となる。また、得られたエポキシ樹脂に対し、再度フェノール樹脂を作用させることにより、高分子量化させることも可能である。
【0048】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂と、アクリル酸又はメタアクリル酸を反応させて一般式(1)で表されるエポキシアクリレート樹脂とすることができる。このエポキシアクリレート樹脂は後記するように硬化性樹脂組成物とされ、硬化物とすることができる。
【0049】
本発明の一般式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、一般式(1)で表されるエポキシアクリレート樹脂から得ることができる。このような意味では、一般式(1)で表されるエポキシアクリレート樹脂は、一般式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の中間体でもある。
【0050】
一般式(2)において、R1、R2、及びnは一般式(1)と同意であり、Yは式(2a)で表される不飽和結合含有基であり、Lは水素原子又は式(3)で表されるカルボキシル基含有基を示す。ここで、Lの50モル%以上は式(3)で表されるカルボキシル基含有基である。R3は式(1a)と同意であり、Mはp+1価のカルボン酸残基を示し、pは1又は2である。ここで、カルボン酸残基は2又は3価のカルボン酸又はカルボン酸無水物からカルボキシル基又は酸無水物基を取って生じる基である。
Lは全部が式(3)で表されるカルボキシル基含有基であってもよいが、水素原子とカルボキシル基含有基の両方を有していてもよい。カルボキシル基含有基は、全L中の50モル%以上であり、70~100モル%が好ましく、90~100モル%がより好ましく、100モル%が更に好ましい。カルボキシル基含有基は、アルカリと反応性であるため、アルカリ可溶性樹脂又はその重合反応物(未硬化物)にアルカリ可溶性を与える。Lにおけるカルボキシル基含有基の存在比を変化させることにより、アルカリ可溶性を調整することができ、アルカリ現像性を最適化することができる。また、式(3)で表わされるカルボキシル基含有基の種類を変化させることによっても、アルカリ現像性を初めとする樹脂特性を変化させることができる。
【0051】
一般式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、一般式(1)で表されるエポキシアクリレート樹脂の水酸基と、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はそれらの酸無水物(酸一無水物)から選ばれるカルボン酸類とを反応させることにより、得ることができる。
【0052】
上記カルボン酸類としては、酸無水物を使用して反応を行うことが多いので、酸無水物として例示する。カルボン酸類から生じるカルボン酸残基は、更にアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基等の置換基により置換されていてもよい。
飽和鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸としては、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物が含まれる。
飽和環式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸としては、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等の酸一無水物が含まれる。
不飽和ジカルボン酸又はトリカルボン酸としては、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸等の酸一無水物が含まれる。
その他のジカルボン酸又はトリカルボン酸としては、フタル酸、トリメリット酸等の酸無水物が含まれる。これらのなかでは、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、又はトリメリット酸の酸無水物が好ましく、コハク酸、イタコン酸、又はテトラヒドロフタル酸の酸無水物がより好ましい。なお、これらのカルボン酸類は1種類で使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0053】
上記アルカリ可溶性樹脂を合成する際の反応温度は、20~120℃が好ましく、40~90℃がより好ましい。この際のエポキシアクリレート樹脂とカルボン酸類のモル比は、上記Lにおけるカルボキシル基含有基の割合が上記範囲となるように選択することがよい。
【0054】
このアルカリ可溶性樹脂は、感光性樹脂組成物とすることができ、それを硬化させて硬化物とすることができる。
【0055】
本発明のエポキシアクリレート樹脂、又はアルカリ可溶性樹脂は、重合性の不飽和基を平均して2個以上有するので硬化性の樹脂組成物とすることができる。
エポキシアクリレート樹脂を使用した場合はアルカリ現像性を有しないが、アルカリ可溶性樹脂を使用した場合はアルカリ現像性を有し得る。
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のエポキシアクリレート樹脂と重合開始剤を含む。本発明の感光性樹脂組成物は、本発明のアルカリ可溶性樹脂と光重合性モノマーと光重合開始剤を含む
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物は、開始剤として光重合開始剤やラジカル重合開始剤を配合することができ、その他多官能アクリレート等を配合してもよい。硬化性樹脂組成物中の樹脂成分(エポキシアクリレート樹脂及び硬化後樹脂となる成分で、溶剤を含まない)は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0057】
光重合開始剤としては、公知の種々の光重合開始剤を使用することができる。例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類や、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類や、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類や、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル))ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類や、2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類や、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル-s-トリアジン系化合物類や、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート等のo-アシルオキシム系化合物類や、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物や、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類や、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物や、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物や、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が挙げられる。なお、これらの光重合開始剤は、1種類で使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0058】
更に、これらの光重合開始剤と公知の光増感剤の1種又は2種以上を同時に使用することができる。光増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。光増感剤の使用量は、エポキシアクリレート樹脂100質量部に対して、0~20質量部が好ましく、0.02~10質量部がより好ましく、0.05~2質量部が更に好ましい。
【0059】
熱重合を行わせるためには、ラジカル重合開始剤を配合することが好ましいが、光硬化のみを行わせる場合は配合しなくてもよい。好ましいラジカル重合開始剤としては、例えば、公知のベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート、t-ブチルパーオキシピパレート等の過酸化物、及び1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(メチルイソブチレート)、α,α-アゾビス-(イソブチロニトリル)、4,4’-アゾビス-(4-シアノバレイン酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0060】
重合開始剤の使用量はエポキシアクリレート樹脂100質量部に対して、0.01~100質量部が好ましく、0.5~40質量部がより好ましく、1~10質量部が更に好ましい。
熱重合開始剤と光重合開始剤は同時に使用してもよく、どちらか一方だけを使用してもよい。
光重合開始剤の使用量はエポキシアクリレート樹脂100質量部に対して、0.01~100質量部が好ましく、0.5~40質量部がより好ましく、1~10質量部が更に好ましい。また、樹脂組成物100質量部に対して、通常0.01~50質量部であり、好ましくは1~20質量部である。
熱重合開始剤の使用量は、エポキシアクリレート樹脂100質量部に対して、0.01~100質量部が好ましく、0.02~60質量部がより好ましく、0.05~2質量部が更に好ましい。また、硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.01~50質量部が好ましく、0.01~30質量部がより好ましい。
い。
【0061】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、一般式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂を30質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましい。
【0062】
感光性樹脂組成物としての特徴を生かすためには、下記(A)~(C)成分を必須成分として含有することが好ましく、更に(D)成分を含有することがより好ましい。
(A)上記アルカリ可溶性樹脂、
(B)少なくとも1個の重合性不飽和基を有する光重合性モノマー、
(C)光重合開始剤、
(D)エポキシ樹脂
【0063】
(B)成分である光重合性モノマーの例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が含まれる。アルカリ可溶性樹脂の分子同士の架橋構造を形成する必要性がある場合には、2個以上の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーを用いることが好ましく、3個以上の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーを用いることがより好ましい。なお、これらの化合物は、1種類で使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0064】
これら(B)成分と(A)成分との配合割合[(A)/(B)](質量比)は、20/80~90/10が好ましく、40/60~80/20がより好ましい。ここで、アルカリ可溶性樹脂の配合割合が少ないと、光硬化反応後の硬化物が脆くなる。また、未露光部は、塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下するため、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる。反対に、アルカリ可溶性樹脂の配合割合が上記範囲より多くなると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なくなるため、光硬化反応による架橋構造の形成が不十分となるおそれがある。また、樹脂成分における酸価が高過ぎる場合、露光部は、アルカリ現像液に対する溶解性が高くなるため、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなりやすく、パターンの欠落が生じやすくなるといった問題が生じるおそれがある。
【0065】
(C)成分の光重合開始剤には、前記本発明の硬化性樹脂組成物の説明において挙げられた光重合開始剤と同様のものが例示される。
(C)成分添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、2~5質量部がより好ましい。ここで、光重合開始剤の添加量が0.1質量部未満であると感度が十分に得られず、光重合開始剤の添加量が10質量部を超えるとテーパー形状(現像パターン断面の膜厚方向形状)がシャープにならないで裾を引いた状態になるハレーションが起こりやすくなる。更に、後工程で高温に暴露した場合に分解ガスが発生するおそれがある。
【0066】
(D)エポキシ樹脂の例には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、p-ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を少なくとも1個有する化合物が含まれる。アルカリ可溶性樹脂の架橋密度を上げる必要性がある場合は、エポキシ基を少なくとも2個以上を有する化合物が好ましい。
【0067】
(D)成分を使用する場合の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して10~40質量部の範囲が好ましい。ここで、エポキシ樹脂を添加する1つの目的としては、硬化膜の信頼性を高めるためにパターニング後に硬化膜を形成した際に残存するカルボキシル基の量を少なくすることがあり、この目的の場合はエポキシ樹脂の使用量が10質量部より少ないと、絶縁膜として使用する際の耐湿信頼性が確保できないおそれがある。また、エポキシ樹脂の使用量が40質量部より多い場合は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分における感光性基の量が減少して、パターニングするための感度が十分に得られないおそれがある。
【0068】
上記(A)~(C)成分、又は(A)~(D)成分含む感光性樹脂組成物は、必要により溶剤に溶解させたり、各種添加剤を配合して用いることもできる。例えば、本発明の感光性樹脂組成物を絶縁材料用途等に使用する場合においては、上記必須成分の他に溶剤を使用することが好ましい。溶剤の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類や、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類や、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類や、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類や、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらを単独又は2種類以上を併用して溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0069】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。このうち、硬化促進剤としては、例えばエポキシ樹脂に通常適用される硬化促進剤、硬化触媒、潜在性硬化剤等として知られる公知の化合物を利用でき、三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類、ジアザビシクロ系化合物等が含まれる。熱重合禁止剤及び酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物、リン系熱安定剤等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填材の例には、グラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。また、消泡剤及びレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が含まれる。カップリング剤の例には、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランが含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が含まれる。
【0070】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分中に、上記(A)~(D)成分が合計で70質量%以上、好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%以上含まれることがよい。
溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して10~80質量%が好ましい。
【0071】
また、本発明の塗膜(硬化物)は、例えば、感光性樹脂組成物の溶液を基板等に塗布し、溶剤を乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射して硬化させることで得られる。フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの塗膜が得られる。
【0072】
感光性樹脂組成物の塗布・乾燥による成膜方法の各工程について、具体的に例示すると、感光性樹脂組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥又はこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択されうるが、例えば、80~120℃で、1~10分間行われることが好ましい。
【0073】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、g線、i線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250~450nmが好ましい。
また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20~35℃が好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0074】
このようにして現像した後、180~250℃で、20~100分間、熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。パターニングされた塗膜は、フォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。そして、熱により重合又は硬化(両者を合わせて硬化ということがある)を完結させ、所望のパターンの絶縁膜等の硬化膜とする。このときの硬化温度は160~250℃が好ましい。本発明の硬化物は、硬化膜の他種々の形態をとり得る。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分が1分子内に有する重合性不飽和基数が多いために光硬化性が向上し、光重合開始剤を増量することなく硬化後の架橋密度を高めることができる。すなわち、厚膜で紫外線又は電子線を照射した場合、硬化部は底部まで硬化するため、露光部と未露光部分におけるアルカリ現像液に対する溶解度差が大きくなることから、パターン寸法安定性、現像マージン、パターン密着性が向上し、高解像度でパターン形成することができる。そして、薄膜の場合にも、高感度化されたことにより、露光部の残膜量の大幅な改善や現像時の剥離を抑制することができる。
【0076】
本発明の感光性組成物は回路基板作製のためのソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジストや、半導体素子を搭載する配線基板の多層化用の絶縁膜、半導体のゲート絶縁膜、感光性接着剤(特にフォトリスグラフィーによるパターン形成後にも加熱接着性能を必要とするような接着剤)等に極めて有用である。
【実施例0077】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。実施例において、特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。また、これらの実施例における樹脂の評価は、断りのない限り以下のとおりに行った。
【0078】
[固形分濃度]
樹脂溶液、感光性樹脂組成物等(約1g)をガラスフィルター〔質量:W0(g)〕に含浸させて精秤し〔W1(g)〕、160℃で2時間加熱した後の質量〔W2(g)〕の値を用いて、下記式により算出した。
固形分濃度(%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0079】
[酸価]
JIS K 0070規格に準拠して測定した。具体的には、樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて0.1N-KOH水溶液で滴定して、固形分1gあたりに必要としたKOHの量(mg)を酸価とした。
【0080】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)(「HLC-8220GPC」東ソー株式会社製、カラム:TSKgelSuperH2000(2本)+TSKgelSuperH3000(1本)+TSKgelSuperH4000(1本)+TSKgelSuperH5000(1本)(いずれも東ソー株式会社製)、溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃、速度:0.6mL/min)にて測定し、標準ポリスチレン(「PS-オリゴマーキット」東ソー株式会社製)換算値として求めた値を重量平均分子量(Mw)とした。
【0081】
[比誘電率、誘電正接]
空洞共振法(ベクトルネットワークアナライザー(VNA)E8363B(アジレント・テクノロジー製)、空洞共振器摂動法誘電率測定装置(関東電子応用開発製))を用いて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の、1GHzの値を測定した。
【0082】
[密着性]
硬化膜付きガラス基板の膜上に少なくとも100個の碁盤目状になるようにクロスカットを入れて、次いでセロハンテープを用いてピーリング試験を行い、碁盤目の状態を目視によって評価した。
◎:全く剥離がみられないもの
○:僅かに塗膜に剥離が確認できるもの
△:一部塗膜に剥離が確認できるもの
×:膜が殆ど剥離してしまうもの
【0083】
[耐アルカリ性]
硬化膜付きガラス基板を、2-アミノエタノール30部、グリコールエーテル70部の混合液の80℃に保持した溶液に浸漬し、10分後に引き上げて純水で洗浄、乾燥して、薬品浸漬したサンプルを作製して、上記密着性を評価した。
【0084】
[耐酸性]
硬化膜付きガラス基板を、王水(塩酸:硝酸=7:3)の50℃に保持した溶液に浸漬し、10分後に引き上げて純水で洗浄、乾燥して、薬品浸漬したサンプルを作製して、上記密着性を評価した。
【0085】
また、使用する材料の略号は次のとおりである。
E1:合成例1で得られたエポキシ樹脂
E2:合成例2で得られたエポキシ樹脂
E3:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YDPN-638、エポキシ当量177g/eq.)
E4:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YD-127、エポキシ当量182g/eq.)
E5:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YDCN-700-3、エポキシ当量203g/eq.、軟化点73℃)
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
HQ:ハイドロキノン
TEAB:臭化テトラエチルアンモニウム
MIBK:メチルイソブチルケトン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
B1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
C1:光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184)
C2:光重合開始剤(4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン))
【0086】
合成例1
撹拌機、温度調節装置、窒素導入装置、滴下装置、及び還流冷却管を備えた反応装置に、2,6-キシレノール970部、47%BF3エーテル錯体14.5部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン300部(2,6-キシレノールに対し0.29倍モル)を2時間で滴下した。更に125~135℃の温度で6時間反応し、水酸化カルシウム2.3部を加えた。更に10%のシュウ酸水溶液4.6部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK1000部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水400部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂を540部得た。水酸基当量は213であり、軟化点は71℃であり、吸収比(A3040/A1210)は0.11であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0087】
撹拌機、温度調節装置、真空度調節装置、窒素導入装置、滴下装置、及び還流冷却管を備えた反応装置に、得られたフェノール樹脂250部、エピクロルヒドリン544部とジエチレングリコールジメチルエーテル163部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液108部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK948部を加えて生成物を溶解した。その後、263部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E1)を298部得た。エポキシ当量は282、全塩素含有量980ppm、室温半固形の樹脂であった。
【0088】
合成例2
合成例1と同様の反応装置に、2,6-キシレノール95.0部、47%BF3エーテル錯体6.3部を仕込み、撹拌しながら70℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン58.8部(2,6-キシレノールに対し0.56倍モル)を1時間で滴下した。更に115~125℃の温度で3時間反応した後、更に同温度でジシクロペンタジエン69.2部(2,6-キシレノールに対し0.67倍モル)を1時間で滴下し、115℃~125℃の温度で2時間反応した。水酸化カルシウム1.0部を加えた。更に10%のシュウ酸水溶液2.0部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。MIBK520部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水150部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色のフェノール樹脂を221部得た。水酸基当量は377であり、軟化点は102℃であり、吸収比(A3040/A1210)は0.18であった。ESI-MS(ネガティブ)によるマススペクトルを測定したところ、M-=253、375、507、629が確認された。
【0089】
合成例1と同様の反応装置に、得られたフェノール樹脂180部、エピクロルヒドリン221部とジエチレングリコールジメチルエーテル33部を加えて65℃に加温した。125mmHgの減圧下、63~67℃の温度に保ちながら、49%水酸化ナトリウム水溶液39部を4時間で滴下した。この間、エピクロルヒドリンは水と共沸させて、流出してくる水は順次系外へと除去した。反応終了後、5mmHg、180℃になる条件でエピクロルヒドリンを回収し、MIBK482部を加えて生成物を溶解した。その後、146部の水を加えて副生した食塩を溶解し、静置して下層の食塩水を分離除去した。リン酸水溶液にて中和した後、水洗液が中性になるまで樹脂溶液を水洗し、ろ過した。5mmHgの減圧下、180℃に加温して、MIBKを留去し、赤褐色透明の2,6-キシレノール・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E2)を200部得た。エポキシ当量は446、全塩素含有量431ppm、軟化点91℃の樹脂であった。
【0090】
実施例1
撹拌機、温度調節装置、還流冷却器、及び空気導入装置を備えた反応容器に、282部のE1を63部のPGMEAに溶解し、更にアクリル酸72部、TPP3.5部、HQ0.1部を加えて、空気を吹きこみながら、110℃で8時間反応させた後、PGMEA293部加えて、エポキシアクリレート樹脂(R1)のPGMEA溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は50%であった。
【0091】
得られた樹脂溶液を減圧留去により溶剤を除去し、得られた固形分100部をフッ素樹脂製の型に入れ、ジクミルパーオキサイド1部を加え、100℃のオーブン中で30分、170℃で1時間加熱し硬化させて、硬化物を得た。この硬化物より、厚み0.2mm、0.2cm×10cmの試験片を作成し、比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0092】
実施例2
実施例1と同様の装置に、446部のE2を97部のPGMEAに溶解し、更にアクリル酸72部、TPP3.5部、HQ0.1部を加えて、空気を吹きこみながら、110℃で8時間反応させた後、PGMEA450部加えて、エポキシアクリレート樹脂(R2)のPGMEA溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は50%であった。実施例1と同様にして比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0093】
比較例1
実施例1と同様の装置に、177部のE3を44部のPGMEAに溶解し、更にアクリル酸72部、TPP3.5部、HQ0.1部を加えて、空気を吹きこみながら、110℃で8時間反応させた後、PGMEA208部加えて、エポキシアクリレート樹脂(HR1)のPGMEA溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は50%であった。実施例1と同様にして比誘電率及び誘電正接を測定した。
結果を表1に示す。
【0094】
【0095】
実施例3
実施例1と同様の装置に、R1の50%PGMEA溶液450部と、THPA95部と、TEAB1.8部と、PGMEA38部とを仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(A1)を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55%であった。
【0096】
53部のA1、12.5部のB1、1.3部のC1、0.2部のC2、6.3部のE5、及び28部のPGMEAを配合して、感光性樹脂組成物を得た。
【0097】
得られた感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が30μmとなるように塗布し、110℃で5分間プリベークして塗布板を作製した。その後、500W/cm2の高圧水銀ランプで波長365nmの紫外線を照射し、全面露光の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.8%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、23℃のシャワー現像にて60秒間の処理を行い、更にスプレー水洗を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間加熱硬化処理を行って、硬化膜付きガラス基板を得た。
【0098】
実施例4
実施例1と同様の装置に、R2の50%PGMEA溶液450部と、THPA62部と、TEAB1.8部と、PGMEA11部とを仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(A2)を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55%であった。
【0099】
A1の代わりにA2を使用した以外は、実施例3と同様の操作を行い、感光性樹脂組成物及び硬化膜付きガラス基板を得た。
【0100】
比較例2
実施例1と同様の装置に、HR1の50%PGMEA溶液450部と、THPA135部と、TEAB1.8部と、PGMEA70部とを仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(HA1)を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55%であった。
【0101】
A1の代わりにHA1を使用した以外は、実施例3と同様の操作を行い、感光性樹脂組成物及び硬化膜付きガラス基板を得た。
【0102】
比較例3
実施例1と同様の装置に、182部のE4を45部のPGMEAに溶解し、更にアクリル酸72部、TPP3.5部、HQ0.1部を加えて、空気を吹きこみながら、110℃で8時間反応させた後、PGMEA212部加えて、エポキシアクリレート樹脂のPGMEA溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は50%であった。得られた樹脂溶液291部と、ジメチロールプロピオン酸4.0部と、1,6-ヘキサンジオール11.8部と、PGMEA104部とを仕込み、45℃に昇温した。次に、イソホロンジイソシアネート61.8部を滴下した。滴下終了後、75~80℃で6時間撹拌した。更に、THPA21部を仕込み、90~95℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(HA2)を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55%であった。
【0103】
A1の代わりにHA2を使用した以外は、実施例3と同様の操作を行い、感光性樹脂組成物及び硬化膜付きガラス基板を得た。
【0104】
得られた樹脂溶液について酸価(固形分換算)と分子量(Mw)を測定した結果と、得られた硬化膜付きガラス基板について密着性、耐アルカリ性、及び耐酸性試験を行った結果を表2に示した。
【0105】
本発明の硬化性樹脂組成物、感光性樹脂組成物、及びその硬化物は、回路基板作製のためのソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジストや、半導体素子を搭載する配線基板の多層化用の絶縁膜、半導体のゲート絶縁膜、感光性接着剤等に適用可能である。