IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランド株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図1
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図2
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図3
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図4
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図5
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図6
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図7
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図8
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図9
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図10
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図11
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図12
  • 特開-鍵盤装置および鍵のガイド方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002028
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】鍵盤装置および鍵のガイド方法
(51)【国際特許分類】
   G10B 3/12 20060101AFI20241226BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G10B3/12 111
G10B3/12 100
G10B3/12 130
G10H1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101932
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】澤田 睦夫
(72)【発明者】
【氏名】宇野 史郎
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478BD01
5D478BD05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】押鍵感触を向上できる鍵盤装置および鍵のガイド方法を提供すること。
【解決手段】スケール方向に並ぶ各白鍵2aの仮想軸Vaは、各白鍵2a同士で異なる位置に設定される。即ち、白鍵2aのガイド溝60の角度は、白鍵2a同士で異なるため、各白鍵2aの前後方向における寸法を変化させることなく、それらの各白鍵2aを異なる変位軌跡で揺動させることができる。よって、各鍵の全長を変化させることによって各鍵の変位軌跡を変化させる構造とは異なり、一部の白鍵2aの全長を長くすることを不要にできるので、鍵盤装置1の大型化を抑制できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、前記支持部材に揺動可能に支持される鍵と、を備え、
前記支持部材または前記鍵のいずれか一方は、前記鍵の後部の揺動をガイドするガイド溝を備え、
前記支持部材または前記鍵のいずれか他方は、スケール方向に延びて前記ガイド溝に挿入され、前記鍵の揺動時に前記ガイド溝に沿って摺動するガイド軸を備え、
前記鍵は、白鍵および黒鍵から構成され、
前記鍵が押鍵される前の状態において、前記ガイド軸の中心が位置する点を前記ガイド溝の始点とし、前記鍵が終端位置まで押鍵された状態において、前記ガイド軸の中心が位置する点を前記ガイド溝の終点とし、前記始点および前記終点を結ぶ直線を前記ガイド溝の角度とした場合に、
前記ガイド溝の角度は、前記白鍵同士または前記黒鍵同士で異なることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記ガイド溝が形成され、前記支持部材または前記鍵に取り付けられる取付部材を備えることを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記支持部材または前記鍵は、スケール方向で前記取付部材を挿入可能に構成され、前記取付部材が取り付けられる取付穴を備え、
前記取付穴の内周面に沿う前記取付部材の外形は、前記白鍵同士または前記黒鍵同士で共通であることを特徴とする請求項2記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記取付部材の外形は、スケール方向に沿う軸回りの回転対称性を持たない形状であることを特徴とする請求項3記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記取付部材は、前記鍵よりも軟質な材料を用いて形成されることを特徴とする請求項3記載の鍵盤装置。
【請求項6】
鉛直方向に対する前記ガイド溝の角度は、低音側から高音側の前記鍵にかけて徐々に大きくなることを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。
【請求項7】
前記鍵の揺動支点よりも前方側で前記鍵に係合し、所定の回転軸回りに回転するハンマーと、前記ハンマーに前記終端位置で接触して前記ハンマーの回転を規制するストッパと、を備え、
前記ハンマーと前記ストッパとの間隔が低音側から高音側の前記鍵にかけて徐々に狭くなることを特徴とする請求項6記載の鍵盤装置。
【請求項8】
前記ガイド溝が形成され、前記支持部材または前記鍵に取り付けられる取付部材を備え、
鉛直方向に対する前記ガイド溝の角度は、低音側から高音側の前記鍵にかけて段階的に大きくなることを特徴とする請求項6記載の鍵盤装置。
【請求項9】
支持部材と、前記支持部材に揺動可能に支持される鍵と、を備え、
前記支持部材または前記鍵のいずれか一方が、前記鍵の後部の揺動をガイドするガイド溝を備え、
前記支持部材または前記鍵のいずれか他方が、スケール方向に延びて前記ガイド溝に挿入されるガイド軸を備え、
前記鍵が、白鍵および黒鍵から構成され、
前記鍵が押鍵される前の状態において、前記ガイド軸の中心が位置する点を前記ガイド溝の始点とし、前記鍵が終端位置まで押鍵された状態において、前記ガイド軸の中心が位置する点を前記ガイド溝の終点とし、前記始点および前記終点を結ぶ直線を前記ガイド溝の角度とした場合に、
前記ガイド溝の角度が、前記白鍵同士または前記黒鍵同士で異なる鍵盤装置における前記鍵のガイド方法であって、
前記鍵の押鍵時の揺動を前記ガイド溝と前記ガイド軸との摺動によってガイドすることを特徴とする鍵のガイド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤装置および鍵のガイド方法に関し、特に、鍵の変位軌跡を鍵毎に変化させつつ、前後方向における鍵盤装置の大型化を抑制できる鍵盤装置および鍵のガイド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティックのグランドピアノ(以下「アコースティックピアノ」という。)には、低音側から高音側の鍵にかけて、鍵の揺動支点の位置が徐々に演奏者側に近付く構造を持つものがある。揺動支点が鍵毎に異なる位置にある場合、押鍵時の鍵の変位軌跡も鍵毎に変化するため、このようなアコースティックピアノの各鍵の変位軌跡を電子ピアノにおいても模擬する技術がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、白鍵11w及び黒鍵11bの前後方向寸法を低音側から高音側の鍵にかけて徐々に短くする技術が記載されている。この技術によれば、アコースティックピアノと同様、各鍵の揺動支点の位置を低音側から高音側の鍵にかけて徐々に演奏者側に近付けることができるので、アコースティックピアノと同様の変位軌跡で鍵を揺動させることができる。即ち、演奏者にアコースティックピアノに近い演奏感を付与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-034853号公報(例えば、段落0014、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、高音側に比べて低音側の鍵の前後方向寸法が大きくなるので、その分、前後方向で鍵盤装置が大型化するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、鍵の変位軌跡を鍵毎に変化させつつ、前後方向における鍵盤装置の大型化を抑制できる鍵盤装置および鍵のガイド方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の鍵盤装置は、支持部材と、前記支持部材に揺動可能に支持される鍵と、を備え、前記支持部材または前記鍵のいずれか一方は、前記鍵の後部の揺動をガイドするガイド溝を備え、前記支持部材または前記鍵のいずれか他方は、スケール方向に延びて前記ガイド溝に挿入され、前記鍵の揺動時に前記ガイド溝に沿って摺動するガイド軸を備え、前記鍵は、白鍵および黒鍵から構成され、前記鍵が押鍵される前の状態において、前記ガイド軸の中心が位置する点を前記ガイド溝の始点とし、前記鍵が終端位置まで押鍵された状態において、前記ガイド軸の中心が位置する点を前記ガイド溝の終点とし、前記始点および前記終点を結ぶ直線を前記ガイド溝の角度とした場合に、前記ガイド溝の角度は、前記白鍵同士または前記黒鍵同士で異なる。
【0008】
本発明の鍵のガイド方法は、支持部材と、前記支持部材に揺動可能に支持される鍵と、を備え、前記支持部材または前記鍵のいずれか一方が、前記鍵の後部の揺動をガイドするガイド溝を備え、前記支持部材または前記鍵のいずれか他方が、スケール方向に延びて前記ガイド溝に挿入されるガイド軸を備え、前記鍵が、白鍵および黒鍵から構成され、前記鍵が押鍵される前の状態において、前記ガイド軸の中心が位置する点を前記ガイド溝の始点とし、前記鍵が終端位置まで押鍵された状態において、前記ガイド軸の中心が位置する点を前記ガイド溝の終点とし、前記始点および前記終点を結ぶ直線を前記ガイド溝の角度とした場合に、前記ガイド溝の角度が、前記白鍵同士または前記黒鍵同士で異なる鍵盤装置における前記鍵のガイド方法であって、前記鍵の押鍵時の揺動を前記ガイド溝と前記ガイド軸との摺動によってガイドする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態における鍵盤装置の斜視図である。
図2】鍵盤装置の断面図である。
図3図2の状態から白鍵が終端位置まで押鍵された状態を示す鍵盤装置の断面図である。
図4図2のIV-IV線における鍵盤装置の部分拡大断面図である。
図5】(a)は、側板および接続板を成形する様子を示す金型の断面図であり、(b)は、第1の変形例の白鍵を示す断面図である。
図6】(a)は、第2の変形例の白鍵の断面図であり、(b)は、金型を用いて側板および接続板を成形する様子を示す金型の断面図であり、(c)は、第3の変形例の白鍵の断面図である。
図7】(a)は、取付穴から取付部材を取り外した状態を示す白鍵の斜視図であり、(b)は、取付部材の側面図である。
図8】(a)は、取付部材を弾性変形させながら取付穴に挿入する様子を示す白鍵の側面図であり、(b)は、取付部材をその中心回りに反転させて取付穴に挿入する様子を示す白鍵の側面図である。
図9】(a)は、最も高音側に位置する白鍵の側面図であり、(b)は、最も低音側に位置する白鍵の側面図であり、(c)は、各白鍵の仮想軸の位置を模式的に示した鍵の上面図である。
図10図2のX部分と対応した位置における鍵盤装置1の部分拡大断面図である。
図11】(a)は、第1の変形例における仮想軸の位置を模式的に示した鍵の上面図であり、(b)は、第2の変形例における仮想軸の位置を模式的に示した鍵の上面図であり、(c)は、第3の変形例における仮想軸の位置を模式的に示した鍵の上面図である。
図12】(a)は、第4の変形例の白鍵の側面図であり、(b)は、取付穴から取付部材を取り外した状態を示す白鍵の斜視図である。
図13】(a)は、第5の変形例の白鍵の斜視図であり、(b)は、突出部から取付部材を取り外した状態を示す白鍵の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、鍵盤装置1の全体構成について説明する。図1は、一実施形態における鍵盤装置1の斜視図であり、図2は、鍵盤装置1の断面図である。
【0011】
なお、図1では、シャーシ4の一部を破断してハンマー7の受け部72を露出させた状態を図示し、図2では、スケール方向(複数の鍵2が並ぶ方向)に直交する平面で切断した断面を図示している。また、図2では、理解を容易にするために軸部41のハッチングを省略している。図1及び図2の矢印U-D方向、F-B方向、L-R方向は、それぞれ鍵盤装置1の上下方向、前後方向、スケール方向を示しており、図3以降においても同様とする。
【0012】
図1及び図2に示すように、鍵盤装置1は、複数(本実施形態では、88個)の鍵2を備える鍵盤楽器(電子ピアノ)である。鍵2は、幹音を演奏するための複数(本実施形態では、52個)の白鍵2aと、派生音を演奏するための複数(本実施形態では、36個)の黒鍵2bと、から構成され、それら複数の白鍵2a及び黒鍵2bがスケール方向(矢印L-R方向)に並べられる。
【0013】
鍵盤装置1は、白鍵2a及び黒鍵2bを支持するための棚板3を備える。棚板3は、合成樹脂や鋼板等を用いてスケール方向に延びる平板状に形成され、この棚板3の上面には樹脂製のシャーシ4が支持される。シャーシ4は、その前後(矢印F-B方向)の両端部がチャンネル材5を介して棚板3に固定される。以下に、シャーシ4に対する白鍵2aの支持構造や、白鍵2aの詳細構成について説明するが、かかる構成は黒鍵2bにおいても実質的に同一である。
【0014】
シャーシ4の後端側(矢印B側)の上面からは、壁部40が上方に立ち上がっており、壁部40の上端側の側面からは略円柱状の軸部41がスケール方向に突出している(図1の拡大部分参照)。これらの壁部40及び軸部41は、シャーシ4と一体に形成されるが、シャーシ4とは別体に形成しても良い。
【0015】
壁部40は、スケール方向に複数並べられており(図1参照)、複数の壁部40の対向間には、白鍵2aの突出部20が挿入される。以下の説明においては、突出部20を挟んで対面する一対の壁部40(軸部41)を単に「一対の壁部40(軸部41)」などと記載して説明する。
【0016】
突出部20は、白鍵2aの後端部から後方側に突出する部位であり、突出部20は、白鍵2aの前端側(矢印F側)の部位(押鍵される部位)よりもスケール方向の寸法が小さく形成される。突出部20には、ガイド溝60を有する取付部材6が取り付けられる。取付部材6は、突出部20に形成された取付穴21に嵌め込まれる部品であるが(図7参照)、この白鍵2a(突出部20)への取付部材6の取付方法については後述する。
【0017】
ガイド溝60は、取付部材6のスケール方向両側の側面の各々に形成され、ガイド溝60には、一対の壁部40に形成された軸部41が嵌め込まれる。ガイド溝60に軸部41を嵌め込む際には、一対の軸部41の間に白鍵2aの突出部20を上方から挿入する。
【0018】
軸部41には、その先端面の上端を斜めに切欠くように傾斜する傾斜面42(図1の拡大部分参照)が形成されており、白鍵2aの突出部20を一対の軸部41の対向間に上方から挿入することにより、突出部20が軸部41の傾斜面42に沿って摺動する。この摺動により、板状の壁部40が弾性変形して一対の軸部41の対向間隔が拡大するので、軸部41をガイド溝60に容易に嵌め込むことができる。
【0019】
ガイド溝60に軸部41が嵌め込まれることにより、一対の壁部40の対向間に白鍵2aがスライド(揺動)可能に支持される。白鍵2aの下方には、白鍵2aの揺動に連動するハンマー7が設けられる。
【0020】
シャーシ4の前後方向略中央部分には、スケール方向に沿う回転軸43(図2参照)が形成され、この回転軸43にハンマー7が回転可能に支持される。ハンマー7は、白鍵2aの押鍵時に押鍵感触を付与するための質量部70(質量体)を備え、質量部70は、回転軸43よりも後方側(矢印B側)に位置している。
【0021】
ハンマー7のうち、回転軸43よりも前方側(矢印F側)の部位は、白鍵2aの押鍵時に基板8のスイッチ80を押し込むための押圧部71として構成される。押圧部71の上面には、下方に凹む受け部72が形成され、この受け部72に挿入される突起部22が白鍵2aの下面から下方に突出する。
【0022】
突起部22は、受け部72に単に挿入されている(乗っている)だけであるので、白鍵2aを組み付ける際には、突起部22を受け部72に乗せた後、上述した通り、突出部20を壁部40の対向間に挿入してガイド溝60に軸部41を嵌め込むだけで良い。よって、シャーシ4に対する白鍵2aの組み付け作業を容易にできる。
【0023】
一方、シャーシ4から白鍵2aを取り外す際には、壁部40を弾性変形させて(壁部40を押し広げて)ガイド溝60から軸部41を外した後、受け部72から突起部22を引き抜くだけで良い。よって、白鍵2aの取り外しの作業も容易にできるので、白鍵2aのメンテナンス性を向上できる。
【0024】
白鍵2aの突起部22の下面は、下方に凸の円弧状に形成され、ハンマー7の受け部72の底面も同様に、下方に凸の円弧状に形成される。突起部22の下面と受け部72の底面との接触部分における曲率は同一であり、白鍵2aが押鍵される前の初期状態(図2の状態)(以下、「押鍵前の初期位置」などという。)では、これらの突起部22の下面と受け部72の底面とが面接触する。
【0025】
次いで、図2及び図3を参照して、白鍵2aが押鍵された時の動作について説明する。図3は、図2の状態から白鍵2aが終端位置まで押鍵された状態を示す鍵盤装置1の断面図である。
【0026】
図2及び図3に示すように、初期位置から白鍵2aが押鍵された際には、突起部22の下面が受け部72の底面に沿って摺動しつつ、突起部22によって押圧部71(受け部72)が下方に押し込まれ、これによってハンマー7が回転軸43回り(図2,3の時計回り)に回転する(図3参照)。
【0027】
ハンマー7の押圧部71の下方にはスイッチ80が設けられており、白鍵2aの押鍵時のハンマー7の回転に伴い、スイッチ80が押圧部71によって押し込まれる。このスイッチ80のオン/オフによって白鍵2aの押鍵情報(ノート情報)が検出され、この検出結果に基づく楽音信号が外部に出力される。
【0028】
このように、押鍵時の白鍵2aの前端側の部位の揺動は、回転軸43回りのハンマー7の回転によって案内される。一方、白鍵2aの後端側の部位(白鍵2aの前後方向中央よりも後方側の後部)の揺動は、シャーシ4の軸部41に沿うガイド溝60の摺動によって案内される。
【0029】
このような白鍵2aの上下の揺動時には、前後方向の軸回りにおける白鍵2aの回転(所謂ローリング)等、白鍵2aに不安定な動きが生じることがあるため、シャーシ4には、白鍵2aの揺動を安定させるための前部ガイド44が設けられる。
【0030】
前部ガイド44は、シャーシ4に取り付けられる板状の金具である。前部ガイド44は、シャーシ4の前端部から上方に立ち上がっており、白鍵2aの前端部の下面に形成された凹部23に前部ガイド44が挿入される。前部ガイド44にはゴム製のカバー45が装着され、凹部23の内面(スケール方向内側を向く面)がカバー45に接触することにより、白鍵2aの前端部の揺動がガイドされる。
【0031】
前部ガイド44(カバー45)は、白鍵2aとハンマー7との係合位置よりも前方側で白鍵2aの揺動をガイドしているが、白鍵2aの後端側の部位の揺動は、後部ガイド46(図2,3の拡大部分参照)によってガイドされる。後部ガイド46は、シャーシ4の軸部41よりも後方側に形成される壁部46aと、その壁部46aの側面から突出するガイド凸部46bとを備え、このガイド凸部46bによって白鍵2a(突出部20)の上下の揺動がガイドされる。この後部ガイド46の詳細構成について、図4を参照して説明する。図4は、図2のIV-IV線における鍵盤装置1の部分拡大断面図である。なお、図4では、白鍵2aの端面(断面形状のみ)を図示している。
【0032】
図4に示すように、後部ガイド46の壁部46aは、シャーシ4から上方に立ち上がる壁状に形成され、この壁部46aからはガイド凸部46bがスケール方向に突出する。壁部46a及びガイド凸部46bは、シャーシ4と一体に形成されるが、シャーシ4と別体に形成しても良い。
【0033】
壁部46aは、スケール方向(矢印L-R方向)に複数並べられており、この複数の壁部46aの対向間に設けられた一対のガイド凸部46bに白鍵2aの突出部20が挟まれる。以下の説明においては、突出部20を挟んで対面する一対の壁部46a(ガイド凸部46b)を単に「一対の壁部46a(ガイド凸部46b)」などと記載して説明する。
【0034】
突出部20は、スケール方向で対面する一対の側板20aと、それら一対の側板20aの下端部同士をスケール方向で接続する接続板20bと、を備えた箱状に形成される。ガイド凸部46bの先端面(側板20a側を向く面)は、側板20aの上下の揺動をガイドするガイド面46cであり、ガイド面46cとスケール方向で対面する突出部20の側面(側板20aの外面)は、被ガイド面20cである。
【0035】
ガイド面46cは、スケール方向と直交する平面であり、一対のガイド面46cの上端には、互いの対向間(突出部20側)から離れる方向に上昇傾斜する切欠き46dが形成される。このような切欠き46dを形成することにより、一対のガイド凸部46bの対向間に上方から突出部20を挿入する際に、その挿入を切欠き46dによって案内できる。
【0036】
白鍵2aの被ガイド面20cは、側板20aの上端から下端側にかけてガイド面46cとの間隔が徐々に広くなるように傾斜する傾斜面20c1と、その傾斜面20c1の下端に接続される湾曲面20c2と、から構成される。
【0037】
傾斜面20c1は、ガイド面46c(鉛直方向)に対して0.5°以上1°未満の角度で傾斜する平面であり、湾曲面20c2は、傾斜面20c1(側板20aの外面)の下端と接続板20bの下面20dとを接続する円弧状の曲面である。
【0038】
図4では、白鍵2aの押鍵前の初期状態が図示されているが、この状態から白鍵2aが押鍵された際には、被ガイド面20c(傾斜面20c1及び湾曲面20c2)がガイド面46cに対して下方に摺動(スライド)し、押鍵状態から白鍵2aが離鍵された際には、被ガイド面20cがガイド面46cに対して上方に摺動する。
【0039】
この離鍵時における被ガイド面20cの上方への摺動により、ガイド面46cと被ガイド面20cとに塗布されたグリスが上方に掻き上げられるが、本実施形態では、この上方に掻き上げられたグリスがガイド面46cと被ガイド面20cとの摺動領域(以下「被ガイド面20cの摺動領域」という。)に保持され易くなっている。
【0040】
具体的には、押鍵前の初期位置においては、被ガイド面20cの全体(傾斜面20c1の上端から湾曲面20c2の下端にかけて)がガイド面46cとスケール方向で対面する。つまり、白鍵2aが押鍵された後に初期位置(図4の状態)に復帰した場合に、被ガイド面20c(傾斜面20c1)がガイド面46cよりも上方側に突出しないように構成される。
【0041】
これにより、白鍵2aの揺動によって上方に掻き上げられたグリスが切欠き46dやガイド凸部46bの上面側に押し出されることを抑制できる。そして、上方に掻き上げられたグリスは、自重によってガイド面46cに沿って下方に流下するので、被ガイド面20cの摺動領域にグリスが保持され易くなる。よって、白鍵2aの押鍵感触を向上できる。
【0042】
また、ガイド面46cと被ガイド面20c(傾斜面20c1及び湾曲面20c2)との間隔が、被ガイド面20cの上端側から下端にかけて徐々に広く形成される。よって、ガイド面46cと被ガイド面20cの下端部との間に僅かな隙間が形成され、この隙間は、被ガイド面20cの下端に近付くにつれて徐々に大きく形成される。これにより、ガイド面46cに対して被ガイド面20cが下方に摺動した場合に、グリスが下方に掻き落とされることを抑制できる。これによっても、被ガイド面20cの摺動領域にグリスが保持され易くなるので、白鍵2aの押鍵感触を向上できる。
【0043】
ここで、グリスが掻き落とされ難くすることを目的とする場合、例えば、湾曲面20c2を省略し(傾斜面20c1と接続板20bの下面20dとを延長して接続し)、ガイド面46cに対する傾斜面20c1の傾斜角を比較的大きく形成することも可能である。しかしながら、このような構成の場合、ガイド面46cに対する傾斜面20c1の傾斜角が大きくなる程、ガイド面46cに対する被ガイド面20cの摺動にガタつきが生じ易くなるため、白鍵2aの揺動を安定的にガイドできなくなる。この一方で、傾斜面20c1の傾斜角をガイド面46cと平行に近付ける程、白鍵2aの揺動時にグリスが下方に掻き落とされ易くなる。
【0044】
これに対して本実施形態の被ガイド面20cは、ガイド面46cに対して傾斜する平面である傾斜面20c1と、その傾斜面20c1の下端に接続される湾曲面20c2とから構成される。湾曲面20c2は、ガイド面46cとの間隔の広がりの度合いが傾斜面20c1よりも大きく、湾曲面20c2とガイド面46cとの間には比較的広い隙間が形成されるので、この隙間によってグリスの掻き落としを効果的に抑制できる。
【0045】
つまり、グリスの掻き落としを抑制する機能を主に湾曲面20c2に持たせることにより、その分、ガイド面46cに対する傾斜面20c1の角度を極力平行に近付けることを可能にしつつ、グリスの掻き落としの機能を十分に発揮させることができる。よって、ガイド面46cに対する被ガイド面20cの摺動にガタつきが生じることを抑制しつつ、かかる摺動によってグリスが掻き落とされることを抑制できる。
【0046】
なお、本実施形態では、傾斜面20c1の下端に湾曲面20c2を形成することにより、被ガイド面20cの下端部とガイド面46cとの間隔の広がりの度合いを大きくしているが、必ずしもこれに限られない。例えば、湾曲面20c2をガイド面46cに対して傾斜する傾斜面(平面)とし、かかる傾斜面の傾斜角(ガイド面46cに対する角度)を傾斜面20c1よりも大きくする構成でも良い。この構成においても、ガイド面46cに対する被ガイド面20cの摺動にガタつきが生じることを抑制しつつ、かかる摺動によってグリスが掻き落とされることを抑制できる。
【0047】
次いで、図5(a)を参照して、金型100を用いて側板20a及び接続板20b(白鍵2aの突出部20)を成形する方法について説明する。図5(a)は、側板20a及び接続板20bを成形する様子を示す金型100の断面図である。
【0048】
図5(a)に示すように、側板20a及び接続板20bを成形する金型100は、下型101及び上型102を備える。下型101には凹部101aが形成され、この凹部101aに挿入される凸部102aが上型102に形成される。凹部101aに凸部102aが挿入された場合には、一対の側板20a及び接続板20bに対応する形状のキャビティが金型100に形成される。このキャビティ内に加熱溶融された樹脂材料を注入口(図示せず)から注入した後、その樹脂材料を冷却(固化)することによって側板20a及び接続板20bが成形される。
【0049】
成形後の側板20a及び接続板20bは金型100から離型されるが、上述した通り、側板20aの側面を構成する傾斜面20c1には0.5°以上1°未満の角度がつけられおり、この傾斜は、下型101の凹部101aから側板20aを離型するための抜き勾配としても機能する。
【0050】
また、一対の側板20aの間で対面する側板20aの内面20eも同様に、傾斜面20c1と平行な角度で傾斜しており、この傾斜も上型102の凸部102aから側板20aを離型するための抜き勾配となる。
【0051】
このような樹脂材料による白鍵2aの成形時には、その成形性の悪化を防止するために白鍵2aの各部の板厚を2~3mmにする必要がある。この場合、図5(b)に示す第1の変形例の白鍵202aのように、突出部220を1枚の板状に形成すると、突出部220の剛性を確保することが難しくなる。突出部220の剛性が低いと、ガイド凸部46bに挟まれた突出部220が白鍵202aの揺動時に変形し易くなるため、白鍵202aの揺動を安定的にガイドできないという問題点や、突出部220が破損し易くなるという問題点が生じ得る。
【0052】
これに対して本実施形態の突出部20は、スケール方向を向く外面が被ガイド面20cとして構成される一対の側板20aと、それら一対の側板20a同士をスケール方向で接続する接続板20bと、を備える箱状に形成される。これにより、樹脂材料を用いて白鍵2aを金型成形する場合、即ち、突出部20の各板20a,20bの厚みが2~3mmに制限される場合であっても、突出部20の剛性を確保できる。突出部20の剛性を確保することにより、白鍵2aの揺動を安定的にガイドできると共に、突出部20が破損することを抑制できる。
【0053】
ここで、白鍵2aの突出部20を箱状に形成することを目的とする場合、例えば図6(a)に示す第2の変形例の白鍵302aのように、突出部320の側板20aの上端同士を接続板320bで接続することも可能である。このような突出部320を金型200で成形する方法は図6(b)を参照して後述するが、金型200による成形時の抜き勾配を突出部320に設けると、側板20aの板厚を先細りに形成する必要がある。よって、突出部320の成形性が悪くなるという問題点や、突出部320の剛性が低下するという問題点が生じる。
【0054】
これに対して本実施形態では、図5(a)に示すように、一対の側板20aの下端同士を接続板20bで接続することによって突出部20を箱状に形成し、一対の側板20aの内面20e同士の間隔を、側板20aの下端側に近付くにつれて徐々に狭く形成している。これにより、下型101及び上型102に対する抜き勾配を側板20aに形成しつつ、側板20aの板厚を略一定にできる(傾斜面20c1と側板20aの内面20eとを略平行に形成できる)ので、突出部20の成形性を向上できる。更に、側板20aの板厚を一定に形成することにより、突出部20の剛性を確保できるので、白鍵2aの揺動を安定的にガイドできる。
【0055】
このように、本実施形態では、一対の側板20aと接続板20bとによって突出部20の後端側が箱型に形成されるが、これらの各板20a,20bによって取り囲まれる空間の後端側は、閉塞板20f(図3の拡大部分参照)によって閉塞される。閉塞板20fの下端は接続板20bに接続され、スケール方向(図3の矢印L-R方向)における閉塞板20fの両端は一対の側板20aに接続される。このような閉塞板20fを設けることにより、突出部20の剛性を向上できるので、白鍵2aの揺動を安定的にガイドできる。
【0056】
次いで、図5(b)を参照して、第1の変形例の白鍵202aについて説明する。なお、上記実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図5(b)は、第1の変形例の白鍵202aの断面図である。なお、図5(b)では、図4と対応した位置で切断した鍵盤装置1(図2参照)の断面を図示している。
【0057】
図5(b)に示すように、第1の変形例の白鍵202aは、突出部220を1枚の板状に形成し、その板状の突出部220の側面に、上記実施形態で説明した被ガイド面20c(傾斜面20c1及び湾曲面20c2)を形成したものである。
【0058】
この突出部220をスケール方向両側から挟む一対のガイド凸部246bは、壁部46aからの突出長さを長くした点を除き、上記実施形態で説明したガイド凸部46b(図4参照)と同一の構成である。つまり、ガイド凸部246bの先端面には、上記実施形態と同様のガイド面46cが形成される。
【0059】
この第1の変形例の白鍵202aにおいても、押鍵される前の初期位置において、被ガイド面20c(傾斜面20c1及び湾曲面20c2)の全体がガイド面46cと対面する。これにより、押鍵後の白鍵202aが初期位置(図5(b)の状態)に復帰した場合に、白鍵202aによって掻き上げられたグリスが切欠き46dやガイド凸部246bの上面側に押し出されることを抑制できる。よって、グリスが被ガイド面20cの摺動領域に保持され易くなる。
【0060】
また、ガイド面46cと被ガイド面20c(傾斜面20c1及び湾曲面20c2)との間隔が、被ガイド面20cの上端側から下端にかけて徐々に広くなるので、白鍵202aの押鍵時にガイド面46cに対して被ガイド面20cが下方に摺動しても、それらの各面20c,46cに塗布されているグリスが下方に掻き落とされ難くなる。これによっても、被ガイド面20cの摺動領域にグリスが保持され易くなる。
【0061】
次いで、図6(a)及び図6(b)を参照して、第2の変形例の白鍵302aについて説明する。図6(a)は、第2の変形例の白鍵302aの断面図であり、図6(b)は、金型200を用いて側板20a及び接続板320bを成形する様子を示す金型200の断面図である。なお、図6(a)では、図4と対応した位置で切断した鍵盤装置1(図2参照)の断面を図示している。
【0062】
第2の変形例の白鍵302aは、突出部320の接続板320bが側板20aの上端同士をスケール方向で接続する点を除き、上記実施形態で説明した白鍵2a(図4参照)と同一の構成である。
【0063】
即ち、突出部320は、下面側に開口を有する箱状に形成され、この箱状の突出部320(側板20a)の側面には被ガイド面20cが形成される。被ガイド面20cの湾曲面20c2のスケール方向内側の端部は、側板20aの内面20eの下端と接続される。
【0064】
この第2の変形例の白鍵302aにおいても、押鍵される前の初期位置において、被ガイド面20c(傾斜面20c1及び湾曲面20c2)の全体がガイド面46cと対面する。これにより、押鍵後の白鍵302aが初期位置(図6(a)の状態)に復帰した場合に、白鍵302aによって掻き上げられたグリスが切欠き46dやガイド凸部46bの上面側に押し出されることを抑制できる。よって、グリスが被ガイド面20cの摺動領域に保持され易くなる。
【0065】
また、ガイド面46cと被ガイド面20c(傾斜面20c1及び湾曲面20c2)との間隔が、被ガイド面20cの上端側から下端にかけて徐々に広くなるので、白鍵302aの押鍵時にガイド面46cに対して被ガイド面20cが下方に摺動しても、それらの各面20c,46cに塗布されているグリスが下方に掻き落とされ難くなる。これによっても、被ガイド面20cの摺動領域にグリスが保持され易くなる。
【0066】
図6(b)に示すように、側板20a及び接続板320bを成形する金型200は、上記実施形態で説明した凸部102a(図5(a)参照)を上型202から省略すると共に、その凸部102aを下型201の凹部101aの底面に(上下反転させて)形成したものである。
【0067】
このような凸部102aを下型201に形成した場合、下型201に対する抜き勾配を側板20aに形成するためには、側板20aの内面20eを、その上端から下端にかけて傾斜面20c1に近付く方向に傾斜させる必要がある。つまり、側板20aの下端側が先細りの形状になる。よって、突出部320の剛性をより確保したい場合や、突出部320の成形性を向上させたい場合には、上記実施形態(図5(a)参照)のように、側板20aの下端同士を接続板20bで接続することが好ましい。
【0068】
次いで、図6(c)を参照して、第3の変形例の白鍵402aについて説明する。図6(c)は、第3の変形例の白鍵402aの断面図である。なお、図6(c)では、図4と対応した位置で切断した鍵盤装置1(図2参照)の断面を図示している。
【0069】
図6(c)に示すように、第3の変形例の白鍵402aは、突出部420に上下に延びる挿入穴420gが形成され、この挿入穴420gには、シャーシ4から立ち上がる柱状の後部ガイド447が挿入される。
【0070】
後部ガイド447のスケール方向両側を向くガイド面447aは、スケール方向と直交する平面である。挿入穴420gのスケール方向内側を向く一対の内面は、それぞれガイド面447aと対面する被ガイド面420hである。
【0071】
被ガイド面420hは、その上端から下端側にかけてガイド面447aとの間隔が徐々に広くなるように傾斜する傾斜面420h1と、その傾斜面420h1の下端に接続される湾曲面420h2と、から構成される。
【0072】
傾斜面420h1は、ガイド面447a(鉛直方向)に対して0.5°以上1°未満の角度で傾斜する平面であり、湾曲面420h2は、傾斜面420h1の下端と突出部420の側面とを接続する円弧状の曲面である。
【0073】
この第3の変形例の白鍵402aにおいても、押鍵される前の初期位置において、被ガイド面420h(傾斜面420h1及び湾曲面420h2)の全体がガイド面447aと対面する。これにより、押鍵後の白鍵402aが初期位置(図6(c)の状態)に復帰した場合に、突出部420によって掻き上げられたグリスが後部ガイド447の上面側に押し出されることを抑制できる。よって、グリスが被ガイド面420hの摺動領域に保持され易くなる。
【0074】
また、ガイド面447aと被ガイド面420h(傾斜面420h1及び湾曲面420h2)との間隔が、被ガイド面420hの上端側から下端にかけて徐々に広く形成される。よって、ガイド面447aと被ガイド面420hの下端部との間に僅かな隙間が形成され、この隙間は、被ガイド面420hの下端に近付くにつれて徐々に大きく形成される。これにより、白鍵402aの押鍵時にガイド面447aに対して被ガイド面420hが下方に摺動しても、それらの各面420h,447aに塗布されているグリスが下方に掻き落とされ難くなる。これによっても、被ガイド面420hの摺動領域にグリスが保持され易くなる。
【0075】
図2及び図3に戻って説明する。上述した通り、白鍵2aの後端部の揺動は、シャーシ4の軸部41に沿うガイド溝60の摺動によって案内される。このガイド溝60が形成される取付部材6は、可撓性を有する樹脂材料(例えば、エラストマやゴム)を用いて形成される。即ち、取付部材6は、白鍵2aやシャーシ4の材料となる樹脂(例えば、ABS樹脂)よりも硬度が低い軟質な材料を用いて形成されるので、例えば取付部材6を白鍵2aやシャーシ4と同一の(比較的硬質な)材料を用いて形成する場合に比べ、シャーシ4の軸部41に沿うガイド溝60の摺動時にノイズが生じることを抑制できる。よって、演奏者に良好な演奏感を付与できる。
【0076】
ここで、押鍵前の初期位置において、軸部41の中心が位置する点をガイド溝60の始点P1(図2の拡大部分参照)とし、押鍵の終端位置において、軸部41の中心が位置する点をガイド溝60の終点P2(図3の拡大部分参照)と記載して説明する。
【0077】
ガイド溝60は、側面視において前方下側に下降傾斜するようにして直線状に延びており、その始点P1が終点P2よりも前方下側に位置している。また、ガイド溝60の始点P1及び終点P2は、いずれも白鍵2aの仮想的な回転軸(以下「仮想軸Va」という。)を中心にした仮想円Vb上に位置している。
【0078】
仮想軸Vaは、側面視において軸部41よりも後方下側に位置する点であって、アコースティックピアノの鍵の揺動支点(回転軸)と同一の位置を示す点である。よって、白鍵2aが押鍵された際には、軸部41に沿うガイド溝60の摺動によってアコースティックピアノの鍵に近い変位軌跡で白鍵2aを揺動させることができる。従って、演奏者にアコースティックピアノに近い演奏感を付与できる。
【0079】
軸部41がガイド溝60の始点P1に位置する状態(図2の拡大部分参照)では、軸部41とガイド溝60の始端(下端)側の内周面との間に隙間が形成される。一方、軸部41がガイド溝60の終点P2に位置する状態(図3の拡大部分参照)においても同様に、軸部41とガイド溝60の終端(上端)側の内周面との間に隙間が形成される。
【0080】
つまり、ガイド溝60の内周面のうち、始点P1から終点P2にかけて軸部41が摺動する領域をガイド溝60の摺動面とした場合に、押鍵前の初期位置と押鍵の終端位置との各々において、軸部41の外周面がガイド溝60の摺動面のみに接触する。これにより、白鍵2aを終端位置まで押鍵した場合や、その終端位置から白鍵2aが初期位置に復帰した際に、ガイド溝60の始端側や終端側の内周面に軸部41が接触(衝突)することを抑制できる。よって、かかる接触によるノイズも抑制できるので、演奏者に良好な演奏感を付与できる。
【0081】
次いで、図7及び図8を参照して、取付部材6の詳細構成について説明する。図7(a)は、取付穴21から取付部材6を取り外した状態を示す白鍵2aの斜視図であり、図7(b)は、取付部材6の側面図である。図8(a)は、取付部材6を弾性変形させながら取付穴21に挿入する様子を示す白鍵2aの側面図であり、図8(b)は、取付部材6をその中心C回りに反転させて取付穴21に挿入する様子を示す白鍵2aの側面図である。
【0082】
図7に示すように、白鍵2aの突出部20には、取付部材6を嵌め込むための断面円形の取付穴21が形成され、取付部材6の外形は、スケール方向に沿う中心軸を有した円柱状(取付穴21に対応した形状)に形成される。以下の説明においては、取付部材6の外周面回りの方向や取付穴21の内周面回りの方向を周方向と記載して説明する。
【0083】
取付部材6の外周面には、直方体状の第1突起61及び第2突起62,63が一体に形成される。第1突起61は、取付穴21に対する取付部材6の回転を規制するための突起であり、第2突起62,63は、取付穴21からの取付部材6の脱落を規制するための突起である。
【0084】
第1突起61は、取付部材6の周方向の1箇所に形成され、第2突起62,63は、取付部材6の周方向の2箇所に形成される。一対の第2突起62,63のうち、一方の第2突起62は、第1突起61の外周面(先端面)のスケール方向中央部分から突出しており、他方の第2突起63は、取付部材6の外周面のスケール方向中央部分から第2突起62(第1突起61)とは反対方向に突出する。
【0085】
第1突起61は、取付部材6の一対の側面の各々に連なるようにしてスケール方向に延びる一方、第2突起62,63は、スケール方向における寸法が第1突起61(取付部材6)よりも小さく形成される。
【0086】
取付穴21の内周面には、第1突起61と対応する位置に嵌合穴24が形成され、第2突起62,63と対応する位置に嵌合穴25,26が形成される(嵌合穴26については、図8参照)。
【0087】
嵌合穴24は、第2突起62が挿入される嵌合穴25を挟んで(スケール方向に並んで)一対に形成され、この一対の嵌合穴24は、白鍵2aの突出部20の側面に連なる(突出部20の側面に露出する)。白鍵2aの取付穴21の内径は、取付部材6の外径(各突起61~63が形成されていない領域における直径)よりも僅かに大きく形成されるので、例えば取付部材6が第2突起62,63を有さない形状であれば、取付部材6を弾性変形させることなく、取付穴21に取付部材6を挿入する(嵌合穴24に第1突起61を挿入する)ことは可能である。
【0088】
一方、本実施形態では、取付部材6に第2突起62,63が形成されるため、取付部材6を弾性変形させずに取付穴21に挿入しようとした場合、第2突起62,63が白鍵2a(突出部20)の側面に引っ掛かるようになっている。
【0089】
よって、取付穴21の嵌合穴24~26に取付部材6の各突起61~63を嵌め込む際には、図8(a)に示すように、少なくとも第2突起62,63の合計の突出寸法L1+L2(図7(b)参照)の分、第2突起62,63が形成される領域を窪ませるように取付部材6を弾性変形(圧縮)させつつ取付穴21に挿入する。そして、第2突起62,63が嵌合穴25,26に達する位置まで取付部材6を挿入することにより、弾性変形した取付部材6の形が復元することによって各突起61~63が嵌合穴24~26に嵌め込まれる。これにより、取付穴21への取付部材6の取り付けが完了する。
【0090】
取付穴21の周方向における嵌合穴24の寸法は、同方向における第1突起61の寸法と同一に(又は僅かに大きく)形成される一方、取付穴21の周方向における嵌合穴25,26の寸法は、同方向における第2突起62,63よりも大きく形成される。よって、取付部材6を弾性変形させつつ取付穴21に挿入した際には、嵌合穴24と第1突起61との周方向における相対位置が多少ずれた状態であっても、嵌合穴25,26への第2突起62,63の嵌め込みが可能になっている。
【0091】
嵌合穴24と第1突起61との相対位置がずれた状態で取付部材6が元の形に復元すると、取付穴21の内周面に第1突起61が押さえ付けられた(引っ掛かった)状態になるものの、嵌合穴24と第1突起61との相対位置が一致するまで取付部材6をその中心C回りで回転させることにより、取付部材6の復元力によって嵌合穴24に第1突起61を嵌め込むことができる。よって、例えば、周方向における嵌合穴25,26と第2突起62,63との寸法が一致している場合に比べ、嵌合穴24~26に対する各突起61~63の嵌め込みを容易にできるので、取付部材6の取り付け作業の作業性を向上できる。
【0092】
このように、本実施形態では、側面にガイド溝60が形成された取付部材6が白鍵2a(突出部20)に取り付けられる構造である。これにより、例えば可撓性を有するガイド溝60を2色成形によって白鍵2aと一体に形成する構成に比べ、白鍵2aを成形するための金型を簡素化できるので、白鍵2aの製造コストを低減できる。
【0093】
また、ガイド溝60を有する取付部材6を白鍵2aとは別体に形成する場合、例えば後述する第5の変形例の白鍵602a(図13参照)のように、環状に形成した取付部材606を白鍵602aの突出部620に嵌め込む構成を採用することも可能である。このような構成の場合、詳細は後述するが、突起状の第2規制部628を乗り越えるようにして取付部材606を突出部620側に押し込む必要があり、この押し込みには比較的力を要する。取付部材606は、作業者が指先で取り扱うような小型の部品であるため、環状の取付部材606を突出部620側に押し込んで取り付ける構造では、その取り付け作業に手間を要する。
【0094】
これに対して本実施形態では、図7に示すように、取付部材6を挿入可能に構成される取付穴21が白鍵2aに形成され、この取付穴21に取付部材6が嵌め込まれる構造である。この嵌め込みを行う際には、図8(a)に示すように取付部材6を弾性変形させる必要があるものの、この弾性変形は、作業者が指先で取付部材6を掴みながら圧縮させることで比較的容易にできる。よって、取付穴21に対する取付部材6の取り付け作業の作業性を向上できる。
【0095】
また、本実施形態では、取付部材6が白鍵2aに取り付けられる構造であるが、例えば、取付部材6を取り付けるための取付穴をシャーシ4の壁部40(図1参照)に形成し、取付部材6のガイド溝60に挿入可能なガイド軸(軸部41に相当する部位)を白鍵2aの突出部20に設ける構成を採用することも可能である。しかしながら、シャーシ4の壁部40はスケール方向に複数並んで一体に形成されるため、それらの各壁部40に取付部材6を取り付ける構造では、その取付作業に手間を要する。
【0096】
これに対して本実施形態では、取付部材6を取り付けるための取付穴21が白鍵2aに形成される構成であり、スケール方向に並ぶ各白鍵2aは、シャーシ4からの取り外しが可能である。よって、取付穴21に取付部材6を取り付ける作業は、シャーシ4から白鍵2aを取り外した状態で、白鍵2a毎に個別に行うことができるので、取付部材6の取り付け作業の作業性を向上できる。
【0097】
取付穴21に取付部材6が取り付けられた状態では、第1突起61と嵌合穴24との引っ掛かりにより、取付穴21の周方向における取付部材6の取り付け角の変化が規制される。また、第2突起62,63と嵌合穴25,26との引っ掛かりにより、取付穴21からの取付部材6の脱落が規制される。
【0098】
このような取付部材6の取り付け角の変化や脱落を規制するための他の構成として、各突起61~63(嵌合穴24~26)を省略して取付穴21に取付部材6を接着させる構成が例示されるが、この構成では各白鍵2aへの取付部材6の取り付け作業に手間を要する。
【0099】
これに対して本実施形態では、取付穴21の内周面および取付部材6の外周面に対し、互い嵌合可能な凹凸からなる第1突起61及び嵌合穴24(位置決め部)や、第2突起62,63及び嵌合穴25,26(規制部)を形成する構成である。これらの凹凸の嵌合によって取付部材6の取り付け角の変化や脱落を規制することにより、各白鍵2aに取付部材6を接着させる作業を不要にできる。よって、取付部材6の取り付け作業の作業性を向上できる。
【0100】
また、取付部材6の取り付け角の変化や脱落を規制するための他の構成として、嵌合穴24のスケール方向外側の縁に壁を形成し、この壁と第1突起61との引っ掛かりによって取付部材6の脱落を規制する構成が例示される。このような構成の場合、取付部材6の取り付け角の変化と取付部材6の脱落との双方を第1突起61によって規制できるので、第2突起62,63(嵌合穴25,26)を省略することも可能である。しかしながら、嵌合穴24のスケール方向外側の縁に壁を形成してしまうと、白鍵2aを側面側から視た時に嵌合穴24の位置が把握し難くなるため、第1突起61を嵌合穴24に嵌め込む作業に手間を要する。
【0101】
これに対して本実施形態では、取付穴21の開口側(スケール方向外側)の縁に沿って嵌合穴24が形成される。即ち、白鍵2a(突出部20)の側面に嵌合穴24が露出するので、白鍵2aを側面側から視た時に嵌合穴24の位置を把握し易くなる。これにより、嵌合穴24に第1突起61を容易に嵌め込むことができるので、取付部材6の取り付け作業の作業性を向上できる。
【0102】
ここで、取付部材6の周方向における第2突起62,63の中央同士を結ぶ直線を仮想線Vcとする。ガイド溝60は、取付部材6の側面視において仮想線Vcと交わる(直交する)ように延びるため、上記のように取付部材6を圧縮させた場合(図8(a)参照)、取付部材6がガイド溝60の溝幅を狭めるようにして弾性変形する。ガイド溝60の溝幅を狭める方向への取付部材6の圧縮は、ガイド溝60の長手方向に取付部材6を圧縮させる場合に比べて取付部材6が弾性変形し易い。よって、取付部材6の取り付け作業の作業性を向上できる。
【0103】
本実施形態では、第1突起61が仮想線Vc上に配置される(第2突起62が第1突起61に重ねて形成される)が、例えば、取付部材6の周方向において第2突起62とは異なる位置に第1突起61を形成することも可能である。この場合には、嵌合穴24の位置も第1突起61の配置に合わせて変更すれば良い。
【0104】
しかしながら、第1突起61を第2突起62と異なる位置に形成すると、第2突起62,63を嵌合穴25,26に嵌め込むために取付部材6を弾性変形させた場合に、その取付部材6の歪みによって第1突起61の向き(嵌合穴24に対する相対的な向き)に変化が生じ易くなる。よって、取付穴21に取付部材6を挿入する際に、第1突起61が嵌合穴24に嵌まることなく白鍵2a(突出部20)の側面に引っ掛かり易くなってしまう。
【0105】
これに対して本実施形態では、第1突起61を仮想線Vc上に配置し、第1突起61に第2突起62を重ねて形成する構成である。これにより、第2突起62,63を嵌合穴25,26に嵌め込むために取付部材6を弾性変形させた場合に、嵌合穴24に対する第1突起61の相対的な向きが変化し難くなる。よって、取付部材6を弾性変形させながら取付穴21に挿入する場合に、第1突起61が白鍵2a(突出部20)の側面に引っ掛かることなく嵌合穴24に嵌まり易くなるので、取付部材6の取り付け作業の作業性を向上できる。
【0106】
また、仮想線Vcは、側面視において円形の取付部材6の中心Cを通る直線である。つまり、第2突起62,63は、取付部材6の中心Cを挟んで互いに反対の方向に突出する。よって、例えば第1突起61を省略し、第2突起62を取付部材6の外周面に直接形成する構成であると、第2突起62,63を含む取付部材6の外形が中心C(スケール方向に沿う軸)回りに回転対称性を有した形状になる。取付部材6が回転対称性を有する形状であると、第2突起62,63のうち、いずれの突起を嵌合穴25,26に挿入すべきか、即ち、取付部材6をどのような向きで取付穴21に取り付けるべきかを作業者が認識し難くなる。
【0107】
これに対して本実施形態では、各突起61~63を含む取付部材6の外形は、中心C(スケール方向に沿う軸)回りに回転対称性を有さない形状である。即ち、第2突起62は、第1突起61に重ねて形成される一方、第2突起63は、取付部材6の外周面に直接形成されるので、取付部材6(各突起61~63)の形状と取付穴21(各嵌合穴24~26)の形状とを照らし合わせることにより、取付部材6をどのような向きで取付穴21に取り付けるべきかを容易に認識できる。
【0108】
また、第1突起61に第2突起62が重ねて形成される分、取付部材6の外周面からの第2突起62の高さが高くなる。よって、例えば、図8(b)に示すように、図8(a)の状態から中心C回りに取付部材6を180°反転させた状態で、第2突起62,63の合計の突出寸法L1+L2程度に(図8(a)に示す程度に)取付部材6を弾性変形させつつ取付穴21に挿入しようとしても、第2突起62が白鍵2a(突出部20)の側面に引っ掛かり易くなる。よって、取付部材6が誤った向きで取付穴21に挿入されることを抑制できる。
【0109】
この一方で、例えば第2突起62,63の突出寸法L1+L2に加え、第1突起61の突出寸法L3(図7(b)参照)を合計した寸法L1+L2+L3程度に取付部材6を弾性変形させた場合、即ち、取付部材6を過剰に弾性変形させた場合、第2突起62が白鍵2a(突出部20)の側面に引っ掛かることなく、取付穴21への取付部材6の挿入が可能になるおそれがある。このような取付部材6の過剰な弾性変形は、取付部材6の隔壁64によって規制される。
【0110】
具体的には、ガイド溝60の内周面のスケール方向(矢印L-R方向)における略中央部分には、ガイド溝60の内周面から張り出す板状の隔壁64が形成される。言い換えると、ガイド溝60は、隔壁64を挟んで取付部材6のスケール方向両側の側面に一対に形成され、それら一対のガイド溝60が隔壁64によって区画される。
【0111】
隔壁64には、ガイド溝60に沿って延びる開口65が形成されるので、上記のように第2突起62,63を窪ませるようにして取付部材6を圧縮させた場合に(図8(a)参照)、ガイド溝60の溝幅を狭めるような取付部材6の弾性変形を許容できる。
【0112】
仮想線Vcに沿う方向における開口65の開口幅L4(図7(b)参照)は、第2突起62,63の合計の突出寸法L1+L2よりも大きく形成される(L4>L1+L2)。この開口65の開口幅L4の分、取付部材6の正しい姿勢(図8(a)の状態)での取付穴21への取り付けは可能となる。
【0113】
一方、開口65の開口幅L4は、第1突起61及び第2突起62,63の合計の突出寸法L1+L2+L3よりも小さく形成される(L4<L1+L2+L3)。これにより、中心C回りに取付部材6を180°反転させた状態(図8(b)の状態)で取付穴21に挿入しようとしても、嵌合穴26への第2突起62の挿入を可能とするような取付部材6の過剰な弾性変形を、開口65(隔壁64)の縁同士の接触によって規制できる。よって、取付部材6が誤った姿勢で取付穴21に取り付けられることを抑制できる。
【0114】
ここで、上述した通り、白鍵2aのガイド溝60の始点P1(図2の拡大部分参照)や終点P2(図3の拡大部分参照)は、仮想軸Vaを中心にした仮想円Vb上に位置しているが、仮想軸Vaの位置は、低音側の鍵2と高音側の鍵2とで異なる位置に設定される。この構成について、図9を参照して説明する。
【0115】
図9(a)は、最も高音側に位置する白鍵2aの側面図であり、図9(b)は、最も低音側に位置する白鍵2aの側面図であり、図9(c)は、各白鍵2aの仮想軸Vaの位置を模式的に示した鍵2の上面図である。
【0116】
図9(a)及び図9(c)に示すように、最も高音側に位置する音名がC8の白鍵2aは、白鍵2aからの距離が比較的近い仮想軸VaHを中心にした仮想円VbH回りにガイド溝60の始点P1及び終点P2が形成される。
【0117】
一方、図9(b)及び図9(c)に示すように、最も低音側に位置する音名がA0の白鍵2aは、音名がC8の白鍵2aに比べ、白鍵2aからの距離が遠い仮想軸VaLを中心にした仮想円VbL回りにガイド溝60の始点P1及び終点P2が形成される。
【0118】
そして、図9(c)に示すように、スケール方向に並ぶ各白鍵2aの仮想軸Vaは、各白鍵2a同士で異なる位置に設定される。即ち、各鍵2のガイド溝60の角度は、白鍵2a同士や黒鍵2b同士で異なるため、各白鍵2aや黒鍵2bの前後方向における寸法を変化させることなく、それらの各鍵2を異なる変位軌跡で揺動させることができる。よって、従来技術(例えば、特開2015-034853号公報)のように、各鍵の全長を変化させることによって各鍵の変位軌跡を変化させる構造とは異なり、一部の鍵2の全長を長くすることを不要にできるので、鍵盤装置1の大型化を抑制できる。
【0119】
また、本実施形態では、スケール方向に並ぶ各白鍵2aの仮想軸Vaの位置が、低音側から高音側の白鍵2aにかけて徐々に(比例的に)白鍵2aに近付けられている。即ち、鉛直方向に対するガイド溝60の角度は、低音側から高音側の白鍵2aにかけて徐々に大きくなっている。これにより、アコースティックのグランドピアノに近い変位軌跡で各白鍵2aを揺動させることができる。
【0120】
このように、白鍵2a同士や黒鍵2b同士でガイド溝60を異なる角度にする構成は、例えば、ガイド溝60が白鍵2aと一体に形成される場合でも採用可能である。しかし、白鍵2aと一体に形成されたガイド溝60の角度を変化させる構成であると、各白鍵2aを成形するための金型が複雑になり、白鍵2aの製造コストが増大する。
【0121】
これに対して本実施形態では、側面にガイド溝60が形成された取付部材6が白鍵2a(突出部20)に取り付けられる構造である。これにより、上記のように白鍵2aと一体に形成されたガイド溝60の角度を変化させる場合に比べ、白鍵2aを成形するための金型を簡素化できるので、白鍵2aの製造コストを低減できる。
【0122】
また、各白鍵2aには、共通の外形(各突起61~63)を有する取付部材6が取り付けられるので、取付穴21の形状も各白鍵2aにおいて共通化できる。これにより、各白鍵2aを成形するための金型の種類を低減できるので、白鍵2aの製造コストを低減できる。
【0123】
なお、各黒鍵2bに取り付けられる取付部材は、白鍵2aに取り付けられる取付部材6と同一の外形でも良いし異なる外形でも良い。いずれの場合においても、ガイド溝の形状(角度)を除き、共通の外形を有する取付部材を各黒鍵2bに取り付けることが好ましい。これにより、取付部材が取り付けられる取付穴の形状を各黒鍵2bにおいて共通化できるので、各黒鍵2bを成形するための金型の種類を低減できる。
【0124】
上述した通り、第1突起61を含む取付部材6の外形は、取付部材6の中心Cを軸にした回転対称性を有さない形状である。これにより、取付部材6が誤った向き(角度)で取付穴21に取り付けられることを抑制できるので、各白鍵2aにおけるガイド溝60の角度を目的の角度に確実に設定できる。
【0125】
ここで、低音側の白鍵2aと高音側の白鍵2aとで仮想軸Vaを異なる位置に設定した場合、各白鍵2aの前端部のストローク量には差が生じる。このストローク量の差について、図2及び図9を参照して説明する。
【0126】
図2に示すように、白鍵2aのうち、ガイド溝60よりも前端側(矢印F側)の部位の揺動は、上述した通りハンマー7の回転軸43回りの回転によって案内される。また、この揺動の終端位置は、ハンマー7とストッパ48との接触によって定められる。ストッパ48は、ハンマー7の質量部70の上方側において、シャーシ4に固定されるフェルトや発泡ウレタン製の緩衝材である。
【0127】
ハンマー7の回転軸43の位置や、ハンマー7と白鍵2a(突起部22の下端)との係合位置は、スケール方向に並ぶ各白鍵2aのそれぞれにおいて同一である(例えば各ハンマー7の回転軸43はスケール方向に沿って並んでいる)。よって、ストッパ48に接触するまでのハンマー7の回転角度が各白鍵2aのそれぞれにおいて一定である場合、ハンマー7との係合位置における白鍵2a(突起部22の下端)のストローク量は、各白鍵2aのそれぞれにおいて同一となる。
【0128】
一方、上述した通り、各白鍵2aの後端部の揺動はガイド溝60によって案内されており、図9(b)に示すように、低音側の白鍵2aにおいては、鉛直方向に対するガイド溝60の角度が比較的小さく(仮想軸Vaが比較的遠く)、図9(c)に示すように、高音側の白鍵2aにおいては、鉛直方向に対するガイド溝60の角度が比較的大きく(仮想軸Vaが比較的近く)なっている。
【0129】
よって、図2に示すストッパ48に接触するまでのハンマー7の回転角度が各白鍵2aのそれぞれにおいて一定である場合、押鍵前の初期位置から押鍵の終端位置にかけての各白鍵2aの後端部のストローク量(軸部41に対するガイド溝60の摺動量)は、低音側の白鍵2aに比べて高音側の白鍵2aの方が小さくなる。白鍵2aの後端部のストローク量が比較的小さいと、白鍵2aの前端部(ハンマー7との係合位置よりも前方側の部位)のストローク量が大きくなる(押鍵の終端位置における白鍵2aの角度が水平方向に対して比較的大きく傾斜する)。
【0130】
即ち、押鍵の終端位置までのハンマー7の回転角度が各白鍵2aにおいて一定に設定され、且つ仮想軸Vaまでの距離が低音側に比べて高音側の白鍵2aにおいて近く設定される場合、低音側の白鍵2aに比べ、高音側の白鍵2aの前端部のストローク量が大きくなる。各白鍵2aの前端部のストローク量に差が生じると、演奏者に良好な演奏感を付与することができない。
【0131】
この問題点を解決する構成について、図10を参照して説明する。図10は、図2のX部分と対応した位置における鍵盤装置1の部分拡大断面図である。なお、図10では、最も高音側に位置する(音名がC8の白鍵2aに対応する)ストッパ48Hを含む断面を図示しているが、図面を簡素化するためにストッパ48Hのハッチングを省略している。
【0132】
図10に示すように、ストッパ48のうち、最も低音側に位置する(音名がA0の白鍵2aに対応する)ものをストッパ48Lとし、最も高音側に位置する(音名がC8の白鍵2aに対応する)ものをストッパ48Hとする。ストッパ48Hの厚みは、ストッパ48Lの厚みよりも厚く形成される。そして、図示は省略するが、最も低音側の白鍵2aのストッパ48Lから、最も高音側の白鍵2aのストッパ48Hにかけて、ストッパ48の厚みが徐々に(比例的に)厚くなるように構成される。
【0133】
つまり、ハンマー7の回転方向における質量部70(白鍵2aの押鍵時にストッパ48と接触する部位)とストッパ48との間隔は、低音側の白鍵2aから高音側の白鍵2aにかけて徐々に狭くなっている。これにより、白鍵2aの押鍵時にストッパ48に接触するまでのハンマー7の回転角度を、低音側の白鍵2aに比べて高音側の白鍵2aにおいて小さくできる。よって、上記のように、仮想軸Vaまでの距離が低音側の白鍵2aに比べて高音側の白鍵2aにおいて近く設定される場合であっても、各白鍵2aの前端部のストローク量を均一にできる。よって、演奏者に良好な演奏感を付与できる。
【0134】
なお、本実施形態では、ストッパ48の厚みを変化させることによって各白鍵2aの前端部のストローク量を均一にしているが、必ずしもこれに限られない。例えば、各白鍵2aのストッパ48の厚みを各白鍵2aにおいて同一にしつつ、ハンマー7の質量部70の上下方向の厚みを低音側から高音側にかけて徐々に(比例的に)厚くする構成でも良い。この構成においても、ハンマー7の回転方向における質量部70とストッパ48との間隔を、低音側の白鍵2aから高音側の白鍵2aにかけて徐々に狭く形成できる。
【0135】
次いで、図11を参照して、仮想軸Vaの配置の変形例について説明する。図11(a)は、第1の変形例における仮想軸Vaの位置を模式的に示した鍵2の上面図であり、図11(b)は、第2の変形例における仮想軸Vaの位置を模式的に示した鍵2の上面図であり、図11(c)は、第3の変形例における仮想軸Vaの位置を模式的に示した鍵2の上面図である。
【0136】
図11(a)に示すように、仮想軸Vaの第1の変形例においては、最も低音側(音名がA0)の白鍵2aの仮想軸VaLよりも、最も高音側(音名がC8)の白鍵2aの仮想軸VaHの方が白鍵2aから遠い位置に設定される。そして、低音側から高音側の白鍵2aにかけて、仮想軸Vaが徐々に(比例的に)白鍵2aから遠ざかるように構成される。これにより、白鍵2aの変位軌跡を低音側の白鍵2aから高音側の白鍵2aにかけて徐々に変化させることができる。このような白鍵2aから仮想軸Vaまでの距離は、上述した通りガイド溝60(図9参照)の角度を変化させることによって調整できる。以下の他の変形例においても同様である。
【0137】
図11(b)に示すように、仮想軸Vaの第2の変形例においては、最も低音側の白鍵2aの仮想軸VaLと、最も高音側の白鍵2aの仮想軸VaHとで白鍵2aからの距離が同一である。一方、それらの仮想軸VaL,VaHよりも、中音域(例えば音名がE4)の白鍵2aの仮想軸VaMの方が白鍵2aに近い位置に設定される。そして、低音側および高音側の白鍵2aから中音域の白鍵2aにかけて、仮想軸Vaが徐々に(2次関数的に)白鍵2aに近付くように構成される。これにより、低音側および高音側の白鍵2aから中音域の白鍵2aにかけて白鍵2aの変位軌跡を徐々に変化させることができる。
【0138】
図11(c)に示すように、仮想軸Vaの第3の変形例においては、最も低音側の白鍵2aの仮想軸VaLから、最も高音側の白鍵2aの仮想軸VaHにかけて、仮想軸Vaが徐々に(段階的に)白鍵2aに近付くように構成される。
【0139】
より具体的には、各白鍵2aの音域を4つの音域に分割(等分)し、最も低音側の音域(例えば音名がA0~E2)の各白鍵2aに比べ、それよりも中音域側(例えば音名がF2~E4)の各白鍵2aは、仮想軸Vaが近い位置に設定される。一方、同じ分割領域を構成する(例えば音名がA0~E2の)各白鍵2aは、仮想軸Vaまでの距離が同一である。
【0140】
これと同様に、中音域における比較的高音側(例えば、音名がF4~E6の)各白鍵2aに比べ、最も高音側の音域(例えば音名がF6~C8)の各白鍵2aは、仮想軸Vaが近い位置に設定されるが、同じ分割領域を構成する(例えば音名がF4~E6の)各白鍵2aは、仮想軸Vaまでの距離が同一である。
【0141】
このように、低音側から高音側の白鍵2aにかけて仮想軸Vaを徐々に近付けることにより、上記実施形態(図9(c)参照)と同様、アコースティックのグランドピアノに近い変位軌跡で各白鍵2aを揺動させることができる。更に、仮想軸Vaの位置が低音側から高音側にかけて段階的に白鍵2aに近づいているため、鉛直方向に対するガイド溝60の角度も同様に、低音側から高音側の白鍵2aにかけて段階的に大きくすることができる。これにより、仮想軸Vaの位置が同一(例えば、音名がA0~E2)の白鍵2aについては、ガイド溝60の角度も同一に設定すれば良いため、それらの各白鍵2aに取り付けられる取付部材6を共通化できる。これにより、使用する取付部材6の種類を減らすことができるので、取付部材6の製造コストを低減できる。
【0142】
次いで、図12を参照して、第4の変形例の白鍵502aについて説明する。なお、上記実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図12(a)は、第4の変形例の白鍵502aの側面図であり、図12(b)は、取付穴521から取付部材506を取り外した状態を示す白鍵502aの斜視図である。
【0143】
図12に示すように、第4の変形例の白鍵502aは、取付穴521の内周面の形状が楕円形である点を除き、上記実施形態で説明した白鍵2a(図9参照)と同一の構成である。即ち、白鍵502aの取付穴521には、白鍵2aと同様の嵌合穴24~26が形成される。
【0144】
取付穴521に取り付けられる取付部材506は、外形がガイド溝60の形状に沿う楕円形(取付穴521に対応した形状)である点を除き、上記実施形態で説明した取付部材6と同一の構成である。即ち、取付部材506には、第1突起61及び第2突起62,63や、隔壁64(開口65)が形成される。
【0145】
取付部材506は、白鍵502aの材料となる樹脂よりも硬度が低い軟質な材料を用いて形成されるので、軸部41(図3参照)に沿うガイド溝60の摺動時にノイズが生じることを抑制できる。
【0146】
ここで、上記実施形態では、ガイド溝60の角度が各白鍵2a(又は各黒鍵2b)同士で異なる角度に設定される場合を説明したが、図12に示す変形例では、ガイド溝60の角度が、スケール方向に並ぶ全ての白鍵502aにおいて同一の角度に設定される。つまり、各白鍵502aには共通の形状の取付穴521が形成され、それらの取付穴521には共通の取付部材506が取り付けられる。
【0147】
そして、取付部材506の外周面回りの方向における第2突起62,63の中央同士を結ぶ直線を仮想線Vcとすると、取付部材506の外形は、側面視において仮想線Vcを対象軸にした線対称の形状である。また、ガイド溝60の形状も、側面視において仮想線Vcを対象軸にした線対称の形状である。つまり、取付部材506は、仮想線Vcを軸にした回転対称(2回対称)の形状であり、取付部材506の表裏を仮想線Vc回りに180°反転させても、取付穴521への取り付けが可能になっている。これにより、スケール方向に並ぶ全ての白鍵502aに対し、仮想線Vc回りにおける取付部材506の表裏を考慮することなく取り付けることができる。よって、取付部材506の取り付け作業の作業性を向上できる。
【0148】
なお、このような仮想線Vcを対象軸にした回転対称(2回対称)の形状を、上記実施形態の各取付部材6(図9(a)及び図9(b)参照)に適用しても良い。この場合には、取付穴21の形状(各嵌合穴24~26の位置)、即ち取付部材6の取り付け角を低音側から高音側の白鍵2aにかけて徐々に変化させることにより、ガイド溝60の角度(仮想軸Vaの位置)も同様に変化させることができる。
【0149】
次いで、図13を参照して、第5の変形例の白鍵602aについて説明する。図13(a)は、第5の変形例の白鍵602aの斜視図であり、図13(b)は、突出部620から取付部材606を取り外した状態を示す白鍵602aの斜視図である。
【0150】
図13に示すように、第5の変形例の白鍵602aの突出部620は、前後方向(矢印F-B方向)に延びる板状(直方体状)に形成され、この突出部620に取付部材606が取り付けられる。取付部材606は、前後方向に延びる挿入孔666を有した角筒状に形成され、取付部材606の側面にはガイド溝60がスケール方向(矢印L-R方向)に貫通する。
【0151】
突出部620の上下方向およびスケール方向の各方向における寸法は、同方向における挿入孔666の寸法と同一に(又は僅かに小さく)形成されており、突出部620を取付部材606の挿入孔666に挿入することにより、取付部材606が白鍵602aに取り付けられる。これにより、取付部材606を取り付けるための穴を突出部620に形成することを不要にできるので、突出部620の剛性を確保できる。
【0152】
取付部材606は、白鍵602aの材料となる樹脂よりも硬度が低い軟質な材料を用いて形成されるので、軸部41(図3参照)に沿うガイド溝60の摺動時にノイズが生じることを抑制できる。
【0153】
白鍵602aには、突出部620に装着された取付部材606の前後の変位を規制する第1規制部627及び第2規制部628が形成される。第1規制部627は、スケール方向および上下方向における寸法が突出部620よりも大きく形成される部位である。この第1規制部627の後面から突出部620が後方側に突出するので、突出部620に取付部材606が装着された状態においては、取付部材606の前方側への変位が第1規制部627によって規制される。
【0154】
一方、突出部620の後端側には、第2規制部628が形成される。第2規制部628は、上下に延びる突起であり、突出部620のスケール方向両側の側面から突出する。第2規制部628の後面は、スケール方向外側に向かうに連れて前方側に傾斜する傾斜面である。よって、取付部材606の挿入孔666に突出部620を挿入する際には、傾斜する第2規制部628の後面に沿って取付部材606(挿入孔666)が押し広げられつつ、取付部材606が第2規制部628を乗り越えることにより、突出部620に取付部材606が取り付けられる。
【0155】
第1規制部627の後面から第2規制部628までの寸法は、取付部材606の前後方向と略同一であり、これらの各規制部627,628の間に取付部材606が挟まれることにより、取付部材606の前後の変位が規制される。これにより、取付部材606を白鍵602aに接着することを不要にしつつ、突出部620から取付部材606が脱落することを抑制できる。
【0156】
以上、上記実施形態に基づき説明をしたが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0157】
上記実施形態では、ガイド溝60を有する取付部材6,506,606が白鍵2a,202a,302a,402a,502a,602aに取り付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ガイド溝60を白鍵2a,202a,302a,402a,502a,602aと一体に形成しても良い。
【0158】
上記実施形態では、シャーシ4の軸部41に対し、白鍵2a,202a,302a,402a,502a,602aに取り付けられた取付部材6,506,606のガイド溝60を摺動可能に係合させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、シャーシ4にガイド溝60を形成し、そのガイド溝60に摺動可能なガイド軸を白鍵2a,202a,302a,402a,502a,602aに形成しても良い。このような構成の場合には、取付部材6,506,606に相当する部材を取り付け可能な取付穴をシャーシ4(壁部40)側に形成しても良いし、壁部40にガイド溝60を直接形成しても良い。
【0159】
上記実施形態では、被ガイド面20c,420hの傾斜面20c1,420h1及び湾曲面20c2,420h2の各々とガイド面46c,447aとの間に隙間が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限れられない。例えば、傾斜面20c1,420h1の全体(又は上端側の一部)をガイド面46c,420hと平行に形成して面接触させ、湾曲面20c2,420h2とガイド面46c,420hとの間のみに隙間を形成しても良い。また、湾曲面20c2,420h2を省略し、傾斜面20c1,420h1のみから被ガイド面20c,420hを形成しても良い。即ち、少なくとも被ガイド面20c,420hの下端を含む領域で、被ガイド面20c,420hとガイド面46c,447aとの間に隙間が形成されていれば、グリスが掻き落とされることを抑制できる。
【0160】
上記実施形態では、白鍵2aよりも硬度が低い材料を用いて取付部材6,506,606(ガイド溝60)を形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、白鍵2aよりも硬度が低い材料を用いてシャーシ4の軸部41(ガイド軸)を形成しても良い。この場合には、取付部材6,506,606(ガイド溝60)も同様に、白鍵2aよりも硬度が低い材料を用いて形成しても良いし、取付部材6,506,606(ガイド溝60)の硬度を白鍵2aと同一に(又はそれよりも高く)しても良い。また、取付部材6,506,606(ガイド溝60)及び軸部41(ガイド軸)の硬度が同一であっても良いし、いずれか一方の硬度が他方よりも高くても良い。
【0161】
上記実施形態では、取付部材6,506の外形が円形や楕円形である場合を説明したが、取付部材6,506の外形は、多角形であっても良いし、円形や多角形を組み合わせた形状であっても良い。即ち、ガイド溝60を備えるものであれば、取付部材6,506の形状は適宜設定できる。
【0162】
上記実施形態では、取付部材6,506の各突起61~63と、取付穴21,521の嵌合穴24~26との嵌合によって取付部材6,506が取付穴21,521に取り付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、各突起61~63(嵌合穴24~26)のいずれか又は全部を省略し、取付部材6,506を取付穴21,521に接着しても良い。また、各突起61~63に相当する凸部を取付穴21,521側に設ける一方、嵌合穴24~26に相当する凹部を取付部材6,506に設けても良い。
【0163】
上記実施形態では、取付穴21に対する取付部材6の取り付け角の変化が嵌合穴24及び第1突起61の嵌合によって規制される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、嵌合穴24及び第1突起61を省略し、第2突起62,63のいずれか一方または両方と嵌合穴25,26との嵌合によって取付部材6の取り付け角の変化を規制しても良い。この場合には、取付穴21の周方向における嵌合穴25,26の寸法を、同方向における第2突起62,63の寸法と同一(又は僅かに大きく)形成すれば良い。
【0164】
上記実施形態では、側面視において第2突起62,63(第1突起61)を結ぶ仮想線Vcとガイド溝60とが交わる場合や、仮想線Vc上に第1突起61が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、仮想線Vcとガイド溝60とが交わらない構成でも良いし、仮想線Vcと重ならない位置に第1突起61を形成しても良い。即ち、取付部材6,506の外周面における各突起61~63の形成位置は適宜設定できる。
【0165】
上記実施形態では、取付穴21の開口側(スケール方向外側)の縁に沿って嵌合穴24が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、嵌合穴24のスケール方向外側の縁に壁を形成し、この壁と第1突起61との引っ掛かりによって取付部材6の脱落を規制しても良い。この場合には、第2突起62,63(嵌合穴25,26)を省略しても良い。
【0166】
上記実施形態では、ガイド溝60が始点P1から終点P2にかけて直線状に形成される場合を説明したが、ガイド溝60を始点P1から終点P2にかけて円弧状に形成しても良い。
【0167】
上記実施形態では、押鍵前の初期位置と押鍵の終端位置との各々において、軸部41の外周面がガイド溝60の摺動面のみに接触する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、押鍵前の初期位置または押鍵の終端位置のいずれか一方または両方の位置において、軸部41の外周面がガイド溝60の下端側や上端側の内周面に接触していても良い。
【0168】
上記実施形態では、ガイド溝60を区画する隔壁64に開口65が形成される場合を説明したが、隔壁64又は開口65を省略しても良い。また、開口65の開口幅L4が、第1突起61及び第2突起62,63の合計の突出寸法L1+L2+L3よりも小さく形成される場合を説明したが、開口65の開口幅L4は、第1突起61及び第2突起62,63の合計の突出寸法L1+L2+L3と同一に(又はそれよりも小さく)形成されていても良い(少なくとも第2突起62,63の突出寸法L1+L2よりも大きければ良い)。
【0169】
上記実施形態では、取付部材506の外形(ガイド溝60の形状)が側面視において仮想線Vcを対象軸にした線対称の形状である場合を説明したが、取付部材506の外形(ガイド溝60の形状)は、仮想線Vcを軸にして非対称の形状でも良い。
【0170】
上記実施形態では、ハンマー7の回転方向における質量部70(白鍵2aの押鍵時にストッパ48と接触する部位)とストッパ48との間隔が、低音側の白鍵2aから高音側の白鍵2aにかけて徐々に狭くなる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ハンマー7の回転方向における質量部70とストッパ48との間隔は、低音側の白鍵2aから高音側の白鍵2aにかけて一定でも良い。
【符号の説明】
【0171】
1 鍵盤装置
2 鍵
2a,202a,302a,402a,502a,602a 白鍵(鍵)
2b 黒鍵(鍵)
21,521 取付穴
4,404 シャーシ(支持部材)
41 軸部(ガイド軸)
43 回転軸
48 ストッパ
6,506,606 取付部材
60 ガイド溝
7 ハンマー
P1 ガイド溝の始点
P2 ガイド溝の終点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13