(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020281
(43)【公開日】2025-02-12
(54)【発明の名称】バリア接着剤層を有する積層フィルム構造
(51)【国際特許分類】
B32B 7/12 20060101AFI20250204BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
B32B7/12
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024192502
(22)【出願日】2024-10-31
(62)【分割の表示】P 2020516407の分割
【原出願日】2018-07-17
(31)【優先権主張番号】62/561,950
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】シャー、ヴィラジ
(72)【発明者】
【氏名】セハノビシュ、カルヤン
(72)【発明者】
【氏名】マリーネ、アミラ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ドーヴェル、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ハープリード
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ハーレー エイ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バリア特性を依然として達成しながら、フィルム層の重量、厚さ、および/または数が既存の積層構造と比較して減少した積層フィルム構造、および所望のバリア性能を有する積層構造を形成するための方法を提供する。
【解決手段】開示された積層フィルム構造は、接着剤組成物と一緒に結合されたフィルムを含む。開示された積層フィルム構造は、ポリマーおよび/または金属化ポリマーから作製されたフィルムを含む。積層構造を形成する方法は、積層構造の所望のバリア性能を決定することと、バリア接着剤を選択することと、少なくとも第1のフィルム層および第2のフィルム層を含む2つ以上のフィルム層を選択することと、第1のフィルム層の表面上にバリア接着剤を塗布することと、第2のフィルム層の表面を第1のフィルム層の表面上に塗布されたバリア接着剤と接触させ、それにより所望のバリア性能を有する積層構造を形成することと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性包装での使用に適した積層フィルム構造であって、
フィルム層と、
前記フィルム層の表面上に配置されたバリア接着剤層と、を含み、
前記積層フィルム構造が、ASTM法D3985に従って測定された20ccO2/
m2/日以下の酸素透過率を有する、積層フィルム構造。
【請求項2】
前記第1のフィルム層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレ
ート、ナイロン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニルからなる群から選択されるポリマ
ーを含む、請求項1に記載の積層フィルム構造。
【請求項3】
前記第2のフィルム層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレ
ート、ナイロン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニルからなる群から選択されるポリマ
ーを含む、請求項1に記載の積層フィルム構造。
【請求項4】
前記積層構造が、金属化フィルム層を含まない、請求項1に記載の積層フィルム構造
。
【請求項5】
前記バリア接着剤層が、
単一種のポリイソシアネートを含むイソシアネート成分と、
キャリア溶媒中に実質的に混和性の固体として組み込まれたヒドロキシル末端ポリエ
ステルを含むイソシアネート反応性成分と、を含む接着剤を含み、前記ポリエステルが、
末端ヒドロキシル基および2~10個の炭素原子を有する単一種の線状脂肪族ジオール、
ならびに線状ジカルボン酸から形成され、前記ポリエステルが、300~5,000の数
平均分子量を有し、25℃で固体であり、かつ80℃以下の融点を有する、請求項1に記
載の積層フィルム構造。
【請求項6】
請求項1に記載の積層フィルム構造を含む物品。
【請求項7】
所望のバリア性能を有する積層構造を形成する方法であって、
前記積層構造の前記所望のバリア性能を決定することと、
バリア接着剤を選択することと、
少なくとも第1のフィルム層および第2のフィルム層を含む2つ以上のフィルム層を
選択することと、
前記第1のフィルム層の表面上に前記バリア接着剤を塗布することと、
前記第2のフィルム層の表面を前記第1のフィルム層の前記表面上に塗布された前記
バリア接着剤と接触させ、それにより所望のバリア性能を有する前記積層構造を形成する
ことと、を含む、方法。
【請求項8】
前記積層フィルム構造が、同等の所望のバリア性能を有する既存の積層構造の厚さよ
りも薄い厚さを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所望のバリア性能が、ASTM法D3985に従って測定された20ccO2/
m2/日以下の酸素透過率である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記所望のバリア性能が、ASTM法F1249に従って測定された5gmH2O/
m2/日以下の水蒸気透過率である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月22日に提出された米国仮出願第62/561,950号
の利益を主張する。
【0002】
本開示は、バリア特性を有する接着剤層を含む積層フィルム構造に関する。特に、開
示された積層フィルム構造は、接着剤層によって一緒に結合されたフィルムを含み、接着
剤層は、ガスおよび/または防湿性を有し、例えば、酸素および/または水蒸気透過率を
制御する。開示された積層フィルム構造は、ポリマーおよび/または金属化ポリマーから
作製されたフィルムを含み、それにより、同様のバリア特性を依然として達成しながら、
標準接着剤組成物の代わりにバリア接着剤組成物を使用することにより、フィルム層の重
量、厚さ、および/または数を減少させる。本開示はさらに、バリア接着剤層を有する積
層構造を形成する方法に関し、この方法は、同様のバリア特性を依然として達成しながら
、既存の積層構造に対して、積層構造中のフィルム層の重量、厚さ、および/または数の
減少を可能にする。
【背景技術】
【0003】
ポリマー材料、特にポリマー材料を含むフィルムは、包装目的で広く使用されている
。これらのポリマー材料は、食品および医薬品産業だけでなく、産業および消費者用途で
も広範囲に応用されている。これらおよび他の用途では、包装された製品を酸素(および
/または他のガス)ならびに水分にさらすことは、非常に望ましくない場合がある。これ
は、特に、そのようなガスおよび/または水分にさらされると、包装された製品が経時的
に劣化する場合である。残念ながら、多くのポリマーフィルムは、本質的にガスおよび/
または水分に対して比較的透過性である。調査されたバリア特性を高めるための1つの手
法は、ポリマー材料の複数の層を使用し、層を接着剤で一緒に結合して積層体を形成する
ことである。場合によっては、ポリマー材料層および/または接着剤は、それらのバリア
特性のために選択される。
【0004】
近年、食品の長期保存には、多層フィルムの高レベルの機能性が求められており、酸
化を抑制するために外部酸素の侵入を防ぐガスバリア特性、二酸化炭素バリア特性、およ
び様々な臭気成分に対するバリア特性が現在求められている。多層フィルムにバリア機能
を付与する場合、内層(シーラント側)として典型的に使用されるポリオレフィンフィル
ムは、ガスバリア特性が乏しく、これらのフィルムにコーティングまたは蒸着によってバ
リア機能を付与することは困難である。その結果、外層に使用される様々なフィルム(ポ
リエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂(以下「PET」と略す)、ポリアミ
ド樹脂、および延伸ポリオレフィン樹脂を含む)に多くの場合、バリア機能が付与される
。
【0005】
場合によっては、フィルム層自体にバリア機能が付与される。これらの外層フィルム
にバリア機能を付与するためにコーティングが使用される場合、広く使用されているバリ
アコーティング材料の一例は、優れた酸素バリア特性および水蒸気バリア特性を示す塩化
ビニリデンである。しかしながら、廃棄中に材料が焼却される際のダイオキシンの生成を
含む、塩化ビニリデンの使用と関連する問題がある。さらに、ポリビニルアルコール樹脂
およびエチレン-ポリビニルアルコールコポリマーもバリアコーティング材料として使用
されているが、これらの材料は、低湿度下では良好な酸素バリア特性を示すが、高湿度下
では酸素バリア特性が乏しく、ピンホール形成に対して脆弱であり、それによりバリア性
能を悪化させ、劣った耐沸騰性および耐レトルト性を示す。一方、ガスバリア層として提
供されるアルミニウムなどの金属の蒸着層を有するフィルムは、不透明であり、これは内
部の内容物を見ることができず、電子レンジで使用することもできないことを意味する。
さらに、ガスバリア層として提供されるシリカまたはアルミナなどの金属酸化物の蒸着層
を有するフィルムは、高価であり、可撓性に乏しく、ひび割れおよびピンホールによるガ
スバリア特性における大きな変動をもたらす。
【0006】
さらに、バリア機能を積層構造に追加するための既存の解決策は、一般に、構造の複
雑さを増すこと(例えば、特定のバリア機能を備えた層を増やす)および/またはフィル
ム層の厚さを増やすことにより、積層構造の重量を増加して、良好なバリア機能を提供す
ることを伴う。層の数または層の厚さのいずれかで、これらの構造の複雑さが増すと、製
造コストが増加する。
【0007】
したがって、ポリマーおよび/または金属化ポリマーから作製されたフィルム層を含
む積層フィルム構造を有し、それにより同様のバリア特性を依然として達成しながら、フ
ィルム層の重量、厚さ、および/または数が既存の積層構造と比較して減少することが望
ましくなる。
【0008】
バリア接着剤層を有する積層フィルム構造が本明細書に開示されている。開示された
積層フィルム構造は、例えば、可撓性包装用途での使用に適している。開示された積層フ
ィルム構造は、バリア接着剤層によって一緒に結合されたポリマーおよび/または金属化
ポリマーフィルム層を含み、それにより、フィルム層の重量、厚さ、および/または数は
、積層フィルム構造中のバリア接着剤層の包含により減少、交換、または除去される。い
くつかの実施形態では、開示された積層フィルム構造は、リサイクル可能である。開示さ
れた積層フィルム構造は、標準接着剤を使用して現行の積層フィルム構造と同等以上の所
望のバリア特性、例えばガスおよび/または水分透過率の制御、を達成することができる
。しかしながら、開示された積層フィルム構造は、現行の構造を製造するのに必要なコス
トおよび/またはプロセスステップの数を減らすという点で有益である。
【0009】
いくつかの実施形態では、積層フィルム構造は、フィルム層およびフィルム層の表面
上に配置されたバリア接着剤層を含む。いくつかの実施形態では、フィルム層は、ポリエ
チレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、エ
チレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、ポリ塩化ビニ
ル、ポリモノクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、シトレンブタジエン
などからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、バリア接着剤層は、溶媒ベー
スの接着剤、水ベースの接着剤、および/または無溶媒接着剤を含むことができる。いく
つかの実施形態では、開示された積層フィルム構造は、フィルム層およびフィルム層の表
面上に配置されたバリア接着剤層を含み、積層フィルム構造は、ASTM法D3985に
従って測定された20ccO2/m2/日以下の酸素透過率を有する。いくつかの実施形
態では、開示された積層フィルム構造は、フィルム層およびフィルム層の表面上に配置さ
れたバリア接着剤層を含み、積層フィルム構造は、ASTM法F1249に従って測定さ
れた5gmH2O/m2/日以下の水蒸気透過率を有する。
【0010】
所望のバリア性能を有する積層構造を形成するための方法も開示されている。いくつ
かの実施形態では、本方法は、積層構造の所望のバリア性能を決定することと、バリア接
着剤を選択することと、少なくとも第1のフィルム層および第2のフィルム層を含む2つ
以上のフィルム層を選択することと、第1のフィルム層の表面上にバリア接着剤を塗布す
ることと、第2のフィルム層の表面を第1のフィルム層の表面上に塗布されたバリア接着
剤と接触させ、それにより所望のバリア性能を有する積層構造を形成することと、を含む
。
【0011】
開示された積層フィルム構造を含む物品も開示されている。いくつかの実施形態では
、開示された物品には、例えば、可撓性包装、ポーチ、スタンドアップポーチ、鞄などが
含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面を参照する:
【
図1】現行のBOPP//金属化-BOPP積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた新しいBOPP/BOPP積層フィルム構造の概略図であり、現行のフィルム構造および新しいフィルム構造は、同様のバリア特性を有する。
【
図2】現行のBOPP//金属化-BOPP//PE積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた新しいBOPP//PE積層フィルム構造の概略図であり、現行のフィルム構造および新しいフィルム構造は、同様のバリア特性を有する。
【
図3】現行のBOPP//PE積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた新しいBOPP//PE積層フィルム構造の概略図であり、現行のフィルム構造および新しいフィルム構造は、同様のバリア特性を有する。
【
図4】現行のBOPP//BOPP積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた新しいBOPP/BOPP積層フィルム構造の概略図であり、現行のフィルム構造および新しいフィルム構造は、同様のバリア特性を有する。
【
図5】現行のPET//PE積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた新しいPET//PE積層フィルム構造の概略図であり、現行のフィルム構造および新しいフィルム構造は、同様のバリア特性を有する。
【
図6】現行のPET//PE/EVOH/PE積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた新しいPET//PE/EVOH/PE積層フィルム構造の概略図であり、現行のフィルム構造および新しいフィルム構造は、同様のバリア特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの実施形態では、開示された積層フィルム構造は、ポリマーまたは金属化ポ
リマーから作製されたフィルム層およびフィルム層の表面上に配置されたバリア接着剤層
を含む。いくつかの実施形態では、第1のフィルム層、第2のフィルム層、および第1の
フィルム層と第2のフィルム層との中間に配置されたバリア接着剤層を含む積層フィルム
構造が開示される。
【0014】
いくつかの実施形態では、フィルム層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチ
レンテレフタレート、ナイロン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニルからなる群から選
択される。いくつかの実施形態では、バリア接着剤層は、溶媒ベースの接着剤、水ベース
の接着剤、および/または無溶媒接着剤を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、積層フィルム構造は、ASTM法D3985に従って測定
された20ccO2/m2/日以下の酸素透過率を有する。いくつかの実施形態では、積
層フィルム構造は、ASTM法F1249に従って測定された5gmH2O/m2/日以
下の水蒸気透過率を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、バリア接着剤は、イソシアネート成分およびイソシアネー
ト反応性成分を含む。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、単一種のポリイ
ソシアネートを含む。いくつかの実施形態では、ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソ
シアネートである。いくつかの実施形態では、ポリイソシアネートは、ポリマーヘキサメ
チレンジイソシアネート(HDIトリマーイソシアヌレート)、メチレンジフェニルジイ
ソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、およびトルエンジ
イソシアネートから選択される。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分は
、キャリア溶媒中に実質的に混和性の固体として組み込まれたヒドロキシル末端ポリエス
テルを含み、ポリエステルは、末端ヒドロキシル基および2~10個の炭素原子を有する
単一種の線状脂肪族ジオール、ならびに線状ジカルボン酸から形成され、ポリエステルは
、300~5,000の数平均分子量を有し、25℃で固体であり、かつ80℃以下の融
点を有する。いくつかの実施形態では、キャリア溶媒は、酢酸エチル、メチルエチルケト
ン、ジオキソラン、アセトン、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実
施形態では、ヒドロキシル末端ポリエステルは、C3~C6ジオールとアジピン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸、およびそれらの組み合わせから選択されるジカルボン酸と、から
形成される。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分は、アクリレート粘度
調整剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、バリア接着剤中のイソシアネート成分対
イソシアネート反応性成分の重量比は、1:1~2:1である。
【0017】
いくつかの実施形態では、ポリマーまたは金属化ポリマーから作製された別のフィル
ム層は、その上に配置されたバリア接着剤層を有するフィルム層と接触し、それによって
積層フィルム構造を作り出す。積層フィルムは、多層または単層であり得る。本開示の各
実施形態では、開示された積層フィルム構造は、同様のバリア特性を依然として達成しな
がら、現行の積層構造と比較して、フィルム層の重量、厚さ、および/または数を減少さ
せる。標準接着剤の代わりにバリア接着剤層を使用することにより、積層構造を通る酸素
および/または水分の透過性が低下する。バリア接着剤の潜在的な用途をよりよく理解す
るために、性能データを生成するために試験される試料を調製することにより、使用され
ているバリア接着剤の透過性が評価される。バリア接着剤の透過性は、データから導出さ
れ、標準接着剤の代わりにバリア接着剤を使用したダウンゲージにより、潜在的なコスト
削減、層削減、構造の簡素化、または持続可能性を活用するために、様々なフィルム構造
の設計を可能にするモデルが作り出される。
【0018】
次いで、バリア接着剤を用いた場合と用いない場合の積層構造性能を予測するために
使用されるモデルを作り出す前に、バリア接着剤のバリア性能を最初に定量化する必要が
ある。モデルをサポートするデータを生成するために、25~35重量%の結晶性ポリエ
ステル樹脂、0.25%の消泡剤7R10(酢酸エチルとのアクリルコポリマー)、およ
び64.75重量%のウレタングレード酢酸エチルで構成されるバリア接着剤を使用して
、いくつかの試料を調製して試験する。ポリエステルは、脂肪族イソシアネート共反応物
で硬化される。
【0019】
試料は、試料に応じてLABO COMBI(商標)400ラミネーターまたはSU
PER COMBI(商標)3000ラミネーターを使用して、以下の表1および表2に
示すように、積層体に加工される。バリア接着剤は、グラビアシリンダーを介してフィル
ム上にコーティングされる。表1および表2では、コーティングされたフィルムは、特定
の構造用にリストされた第1のフィルムである。グラビアシリンダーの場合、15BCM
の130クワッドが使用される。接着剤は、約3g/m2のコーティング重量で塗布され
る。次いで、LABO COMBI(商標)400ラミネーターで実行する場合、フィル
ムは、第1のゾーンが90℃、第2のゾーンが100℃、第3のゾーンが110℃に温度
設定された3ゾーンオーブンを通過する。次いで、SUPER COMBI(商標)30
00ラミネーターで実行する場合、フィルムは、第1のゾーンが80℃および第2のゾー
ンが100℃に温度設定された2ゾーンオーブンを通過する。次いで、コーティングされ
たフィルムは、温度が90℃の加熱されたスチールロール下で別のフィルムにニップされ
、ニップ圧力は40psiに設定される。積層構造は、17℃の温度の最終冷却ロールを
通る。次いで、積層体を温度制御された部屋に置き、23℃、相対湿度50%で7日間硬
化させる。
【0020】
試料積層構造の酸素透過率は、ASTM法D3985(クーロメトリックセンサーを
使用したプラスチックフィルムおよびシートを通る酸素ガス透過率の標準試験方法)で概
説されている方法に従って試験される。積層構造の水蒸気透過率は、ASTM法F124
9で概説されている方法に従って試験される。
【0021】
試料積層構造の透過性データから、バリア接着剤自体の透過性を決定できる。固体バ
リアを通る蒸気の透過率(「TR」)は、透過性(「P」)(それが媒体を通して搬送さ
れるときの固体中の蒸気の溶解度および蒸気の拡散)と固体材料の経路長または厚さ(「
L」)との関数として記述することができる。異なる厚さ(L
1、L
2など)および透過
性(P
1、P
2など)の材料を有する多層固体の場合、合計水蒸気透過率TR
合計は、以
下のように説明することができる:
【数1】
【0022】
酸素および水蒸気のTR
合計に関する実験データを一連の実験的に製造された積層多
層構造で使用して、表1および表2に詳細に示すように、開示および比較の接着剤組成物
の厚さの関数として平均透過率を決定する。
【表1】
【表2】
【0023】
分析した試料から、表1および表2に示すように、バリア接着剤は、1.37ccO
2/m2/日の酸素透過率および1.20gmH2O/m2/日の水蒸気透過率を有する
ことが推定される。この特定のバリア接着剤は、様々な積層構造の性能を予測するために
、本明細書で議論するモデルで使用される。しかしながら、酸素透過率および水蒸気透過
率を決定した後、本開示に従って他のバリア接着剤を使用することができる。
【0024】
バリア接着剤の推定酸素透過率および水蒸気透過率を、表3および表4に示す様々な
プラスチックフィルムの既知の透過率値と一緒に使用して、
図1~6に模式的に表したも
のを含む、積層フィルム構造がモデル化される。
【表3】
【表4】
【0025】
例えば、
図1は、現行のBOPP//met-BOPP積層フィルム構造およびバリ
ア接着剤を用いた新しいBOPP/BOPP積層フィルム構造の概略図を示す。現行のB
OPP//met-BOPP積層フィルム構造は、標準接着剤を使用して20μmの金属
化BOPPフィルムに積層された20μmのBOPPフィルムを含み、14.9ccO
2
/m
2/日の計算された酸素透過率を有する。バリア接着剤を用いた新しいBOPP/B
OPP積層フィルム構造は、バリア接着剤を用いて別の20μmのBOPPフィルムに積
層された20μmのBOPPフィルムを含み、13.6ccO
2/m
2/日の計算された
酸素透過率を有する。
図1および計算された酸素透過率から明らかなように、金属化BO
PP層は、同じ酸素バリア性能を依然として達成しながら、積層構造から完全に除去でき
る。現行のフィルムおよび新しいフィルムは、同じ最終用途(例えば、包装用途)に適し
ている。
【0026】
図2は、現行のBOPP//met-BOPP//PE積層フィルム構造およびバリ
ア接着剤を用いた新しいBOPP//PE積層フィルム構造の概略図を示す。現行のBO
PP//met-BOPP//PE積層フィルム構造は、標準接着剤を用いて20μmの
金属化BOPPフィルムに積層された20μmのBOPPフィルムおよびさらに追加の標
準接着剤を使用して金属化BOPPフィルムに積層された50μmのPEフィルムを含む
。現行のBOPP//met-BOPP//PE積層フィルム構造は、14.8ccO
2
/m
2/日の計算された酸素透過率を有する。バリア接着剤を用いた新しいBOPP//
PE積層フィルム構造は、バリア接着剤を使用して50μmのPEフィルムに積層された
20μmのBOPPフィルムを含み、13.6ccO
2/m
2/日の計算された酸素透過
率を有する。
図2および計算された酸素透過率から明らかなように、金属化BOPP層は
、同じ酸素バリア性能を依然として達成しながら、積層構造から完全に除去できる。現行
のフィルムおよび新しいフィルムは、同じ最終用途(例えば、包装用途)に適している。
【0027】
図3は、現行のBOPP//PE積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた新し
いBOPP//PE積層フィルム構造の概略図を示す。現行のBOPP//PE積層フィ
ルム構造は、標準接着剤を用いて70μmのPEフィルムに積層された20μmのBOP
Pフィルムを含み、2.80gmH
2O/m
2/日の算出された水蒸気透過率を有する。
バリア接着剤を用いた新しいBOPP//PE積層フィルム構造は、バリア接着剤を使用
して40μmのPEフィルムに積層された20μmのBOPPフィルムを含み、2.82
gmH
2O/m
2/日の計算された水蒸気透過率を有する。
図3および計算された水蒸気
透過率から明らかなように、PEフィルムの厚さは、同じ防湿性能を達成しながら大幅に
下げることができる。現行のフィルムおよび新しいフィルムは、同じ最終用途(例えば、
包装用途)に適している。
【0028】
図4は、現行のBOPP//BOPP積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた
新しいBOPP//BOPP積層フィルム構造の概略図を示す。現行のBOPP//BO
PP積層フィルム構造は、標準接着剤を使用して20μmのBOPPフィルムに積層され
た20μmのBOPPフィルムを含み、3.15gmH
2O/m
2/日の算出された水蒸
気透過率を有する。バリア接着剤を用いた新しいBOPP//BOPP積層フィルム構造
は、バリア接着剤を使用して15μmのBOPPフィルムに積層された15μmのBOP
Pフィルムを含み、3.12gmH
2O/m
2/日の算出された水蒸気透過率を有する。
図4および計算された水蒸気透過率から明らかなように、BOPPフィルムの厚さは、同
じ防湿性能を達成しながら大幅に下げることができる。現行のフィルムおよび新しいフィ
ルムは、同じ最終用途(例えば、包装用途)に適している。
【0029】
図5は、現行のPET//PE積層フィルム構造およびバリア接着剤を用いた新しい
PET//PE積層フィルム構造の概略図を示す。現行のPET//PE積層フィルム構
造は、標準接着剤を使用して80μmのPEフィルムに積層された12μmのPETフィ
ルムを含み、4gmH
2O/m
2/日の算出された水蒸気透過率を有する。バリア接着剤
を用いた新しいPET//PE積層フィルム構造は、バリア接着剤を使用して50μmの
PEフィルムに積層された12μmのPETフィルムを含み、4gmH
2O/m
2/日の
計算された水蒸気透過率を有する。
図5および計算された水蒸気透過率から明らかなよう
に、PEフィルムの厚さは、同じ防湿性能を達成しながら大幅に下げることができる。現
行のフィルムおよび新しいフィルムは、同じ最終用途(例えば、包装用途)に適している
。
【0030】
図6は、現行のPET//PE/EVOH/PE積層フィルム構造およびバリア接着
剤を用いた新しいPET//PE/EVOH/PE積層フィルム構造の概略図を示す。現
行のPET//PE/EVOH/PE積層フィルム構造は、標準接着剤を使用して60μ
mのEVOHフィルムに積層された12μmのPETフィルムを含む。現行のPET//
PE/EVOH/PE積層フィルム構造は、1.60ccO
2/m
2/日の計算された酸
素透過率を有する。バリア接着剤を用いた新たなPET//PE/EVOH/PE積層フ
ィルム構造は、バリア接着剤を使用して50μmのEVOHフィルムに積層された12μ
mのPETフィルムを含み、1.63ccO
2/m
2/日の計算された酸素透過率を有す
る。
図6および計算された酸素透過率から明らかなように、EVOHフィルムは、同じ酸
素バリア性能を依然として達成しながら、大幅に下げることができる。現行のフィルムお
よび新しいフィルムは、同じ最終用途(例えば、包装用途)に適している。
【0031】
図1~6の積層フィルム構造ごとに測定または計算された性能OTRおよびWVTR
は、以下の表5および表6に要約される。下の各図の行の下の第1の行は、測定された特
性を表し、各図の行の下の第2の行は、計算された特性を表す。例えば、
図1の行を使用
することで、20μのBOPP/20μMET BOPP構造の行は、測定された特性を
識別し、20μのBOPP/20μのBOPP構造の行は、計算された特性を表す。
【表5】
【表6】
【0032】
試験およびモデル化された構造、すなわち、
図1~6に示された構造は、本開示に従
って改変または交換できる唯一のフィルム構造およびポリマーではない。バリア接着剤の
バリア性能が、ダウンゲージまたは積層構造中の他の材料の交換(他の材料の中でも特に
ナイロン、配向ポリスチレン、および/または二塩化ポリビニル(「PVDC」)など)
に適したものにする。積層フィルム構造の所望のバリア性能を決定し、既知/決定可能な
透過性を有するバリア接着剤を選択し、積層フィルム構造で使用されるフィルムの透過性
を特定することにより、構造中のフィルムの数および/または構造中のフィルムの厚さを
減らしながら、既存のフィルムと同様のバリア性能を達成するフィルム構造を調製するこ
とができる。
【0033】
開示された積層フィルム構造を含む物品も開示されている。いくつかの実施形態では
、物品は、可撓性包装およびスタンドアップポーチを含む。
【0034】
上記の実施形態に加えて、特定の組み合わせの多くの実施形態が本開示の範囲内にあ
り、そのいくつかを以下に説明する:
実施形態1.可撓性包装での使用に適した積層フィルム構造であって、
フィルム層と、
フィルム層の表面上に配置されたバリア接着剤層と、を含み、
積層フィルム構造が、ASTM法D3985に従って測定された20ccO2/m2
/日以下の酸素透過率を有する、積層フィルム構造。
実施形態2.可撓性包装での使用に適した積層フィルム構造であって、
フィルム層と、
フィルム層の表面上に配置されたバリア接着剤層と、を含み、
積層フィルム構造が、ASTM法F1249に従って測定された5gmH2O/m2
/日以下の水蒸気透過率を有する、積層フィルム構造。
実施形態3.可撓性包装での使用に適した積層フィルム構造であって、
第1のフィルム層と、
第2のフィルム層と、
第1のフィルム層と第2のフィルム層との中間に配置されたバリア接着剤層と、を含
み、
積層フィルム構造が、ASTM法D3985に従って測定された20ccO2/m2
/日以下の酸素透過率を有する、積層フィルム構造。
実施形態4.可撓性包装での使用に適した積層フィルム構造であって、
第1のフィルム層と、
第2のフィルム層と、
第1のフィルム層と第2のフィルム層との中間に配置されたバリア接着剤層と、を含
み、
積層フィルム構造が、ASTM法D3985に従って測定された205gmH2O/
m2/日以下の酸素透過率を有する、積層フィルム構造。
実施形態5.バリア接着剤層が、溶媒ベースの接着剤を含む、先行するまたは後続の実
施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態6.バリア接着剤層が、水ベースの接着剤を含む、先行するまたは後続の実施
形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態7.バリア接着剤層が、無溶媒接着剤を含む、先行するまたは後続の実施形態
のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態8.第1のフィルム層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレ
フタレート、ナイロン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニルからなる群から選択される
ポリマーを含む、先行するまたは後続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態9.第2のフィルム層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレ
フタレート、ナイロン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニルからなる群から選択される
ポリマーを含む、先行するまたは後続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態10.第1のフィルム層および第2のフィルム層が、同じポリマーを含む、先
行するまたは後続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態11.積層構造が、金属化フィルム層を含まない、先行するまたは後続の実施
形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態12.第1のフィルム層が、25μm以下の厚さを有する、先行するまたは後
続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態13.第1のフィルム層が、20μm以下の厚さを有する、先行するまたは後
続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態14.第1のフィルム層が、15μm以下の厚さを有する、先行するまたは後
続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態15.第2のフィルム層が、25μm以下の厚さを有する、先行するまたは後
続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態16.第2のフィルム層が、20μm以下の厚さを有する、先行するまたは後
続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態17.第2のフィルム層が、15μm以下の厚さを有する、先行するまたは後
続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態18.バリア接着剤層が、
単一種のポリイソシアネートを含むイソシアネート成分と、
キャリア溶媒中に実質的に混和性の固体として組み込まれたヒドロキシル末端ポリエ
ステルを含むイソシアネート反応性成分と、を含む接着剤を含み、ポリエステルが、末端
ヒドロキシル基および2~10個の炭素原子を有する単一種の線状脂肪族ジオール、なら
びに線状ジカルボン酸から形成され、ポリエステルが、300~5,000の数平均分子
量を有し、25℃で固体であり、かつ80℃以下の融点を有する、先行するまたは後続の
実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造。
実施形態19.先行するまたは後続の実施形態のいずれかに記載の積層フィルム構造を
含む物品。
実施形態20.物品が可撓性包装である、先行するまたは後続の実施形態に記載の物品
。
実施形態21.物品がスタンドアップポーチである、先行するまたは後続の実施形態に
記載の物品。
実施形態22.所望のバリア性能を有する積層構造を形成する方法であって、
積層構造の所望のバリア性能を決定することと、
バリア接着剤を選択することと、
少なくとも第1のフィルム層および第2のフィルム層を含む2つ以上のフィルム層を
選択することと、
第1のフィルム層の表面上にバリア接着剤を塗布することと、
第2のフィルム層の表面を第1のフィルム層の表面上に塗布されたバリア接着剤と接
触させ、それにより所望のバリア性能を有する積層構造を形成することと、を含む、方法
。
実施形態23.第3のフィルム層を選択し、第3のフィルム層の表面を第1のフィルム
層または第2のフィルム層の表面と接触させることをさらに含む、先行するまたは後続の
実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態24.積層フィルム構造が、同等の所望のバリア性能を有する既存の積層構造
の厚さより薄い厚さを有する、先行するまたは後続の実施形態のいずれかに記載の方法。
実施形態25.所望のバリア性能が、ASTM法D3985に従って測定された20c
cO2/m2/日以下の酸素透過率である、先行するまたは後続の実施形態のいずれかに
記載の方法。
実施形態26.所望のバリア性能が、ASTM法F1249に従って測定された5gm
H2O/m2/日以下の水蒸気透過率である、先行するまたは後続の実施形態のいずれか
に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性包装での使用に適した積層フィルム構造であって、
フィルム層と、
前記フィルム層の表面上に配置されたバリア接着剤層と、を含み、
前記積層フィルム構造が、ASTM法D3985に従って測定された20ccO2/m2/日以下の酸素透過率を有する、積層フィルム構造。