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特開2025-20500ヘパリン類似物質と第4級アンモニウム基を有する化合物とグリチルリチン酸とを含有する皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020500
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ヘパリン類似物質と第4級アンモニウム基を有する化合物とグリチルリチン酸とを含有する皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/14 20060101AFI20250205BHJP
   A61K 31/737 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250205BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20250205BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250205BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250205BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20250205BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20250205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
A61K31/14
A61K31/737
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/26
A61P17/00
A61P17/02
A61P29/00
A61K31/704
A61K31/4166
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123947
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】大塚 日加里
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA24
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC18
4C076CC19
4C076DD07F
4C076DD38
4C076DD39F
4C076DD45F
4C076DD46F
4C076FF16
4C076FF36
4C086BC38
4C086DA17
4C086EA10
4C086EA26
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA27
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA03
4C086ZA08
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZC75
4C206FA42
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA47
4C206MA48
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA03
4C206ZA08
4C206ZA89
4C206ZB11
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】ヘパリン類似物質と第4級アンモニウム基を有する化合物とグリチルリチン酸とを含有する皮膚外用剤において保存安定性が改善された皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】ヘパリン類似物質およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、第4級アンモニウム基を有する化合物と、グリチルリチン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、ポリオキシエチレン構造を有する界面活性剤少なくとも一種と、を含む、皮膚外用剤(ただし、界面活性剤が、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、またはモノステアリン酸ポリグリセリルである場合を除く)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリン類似物質およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、
第4級アンモニウム基を有する化合物と、
グリチルリチン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、
ポリオキシエチレン構造を有する界面活性剤少なくとも一種と、
を含む、皮膚外用剤(ただし、界面活性剤が、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、またはモノステアリン酸ポリグリセリルである場合を除く)。
【請求項2】
界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記界面活性剤が、
ポリオキシエチレンセチルエーテル、
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および
ポリソルベート80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記界面活性剤が、
ポリオキシエチレンセチルエーテル、
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、および
ポリソルベート80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、
からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
さらに多価アルコールを含む、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
多価アルコールが、1,3-ブチレングリコールである、請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
水を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
皮膚外用剤の全質量に対するヘパリン類似物質およびその塩の含有量が、0.1~1.0質量%である、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
皮膚外用剤の全質量に対する第4級アンモニウム基を有する化合物の含有量が、0.05~1.0質量%である、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
皮膚外用剤の全質量に対するグリチルリチン酸およびその塩の含有量が、0.1~3.0質量%である、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
皮膚外用剤の全質量に対する、界面活性剤の含有量が、0.5~10.0質量%である、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
ヘパリン類似物質およびその塩と第4級アンモニウム基を有する化合物との合計含有量に対する界面活性剤の含有量の比率が、1~20である、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項13】
ヘパリン類似物質およびその塩と第4級アンモニウム基を有する化合物との合計含有量に対するグリチルリチン酸およびその塩の含有量の比率が、0.1~10である、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項14】
前記第4級アンモニウム基を有する化合物が、ベンゼトニウム、ベンザルコニウム、セチルピリジニウムおよびその塩からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項15】
液剤、クリーム、ゲル、軟膏、スプレー、フォーム、またはパップである、請求項1~6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン類似物質と第4級アンモニウム基を有する化合物とグリチルリチン酸とを含有する皮膚外用剤に関する。より詳しくは、本発明は、ヘパリン類似物質と第4級アンモニウム基を有する化合物とグリチルリチン酸とを含有する皮膚外用剤における保存安定性を向上させた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質は、健康な食用獣、主としてウシの気管軟骨を含む肺臓から抽出したコンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖である。ムコ多糖類の硫酸エステルで、ウロン酸とグルコサミンが交互に1,4結合した構造を有するヘパリンに似た構造を持つためこのような名称で呼ばれている。ヘパリン類似物質は、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用等を有することが知られている。ヘパリン類似物質を配合した皮膚外用剤の効能効果は、血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結及び疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮質欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)とされている。ヘパリン類似物質含有皮膚外用剤の剤形としては、クリーム、ソフト軟膏、ローション、スプレーが販売されている。
【0003】
へパリン類似物質を他の有効成分とともに外用組成物に配合する場合、それぞれの有効成分の保存安定性や組成物としての品質の維持が課題となる。例えば、特許文献1には、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物において、リドカインとアミノアルコールとを配合するまたはピロリドンカルボン酸塩を配合することでヘパリン類似物質、リドカイン及びビタミンAパルミテートの安定性を向上させ得ることが開示されている。また、特許文献2には、ヘパリン類似物質とビタミンB6とを含有する皮膚外用組成物において、pHを4以上とすることでヘパリン類似物質とビタミンB6の安定性を向上させ得ることが開示されている。
【0004】
しかしながら、ヘパリン類似物質の多様な作用に基づいて更なる皮膚外用剤組成物の開発が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-307491
【特許文献2】WO2020/138403
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用剤を開発するにあたり、皮膚外用剤の保存安定性について本発明者らが検討したところ、ヘパリン類似物質と第4級アンモニウム基を有する化合物とグリチルリチン酸ジカリウムとを水中で混合すると製造直後および5℃1週間保管後において不溶物が出現し白濁するという課題を見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ヘパリン類似物質と第4級アンモニウム基を有する化合物とグリチルリチン酸とを含有する皮膚外用剤において保存安定性が改善された皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点を解決する為に鋭意検討を重ねた結果、ヘパリン類似物質と第4級アンモニウム基を有する化合物とグリチルリチン酸とを含有する皮膚外用剤に特定の界面活性剤を配合することによって、皮膚外用剤の保存安定性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1) ヘパリン類似物質およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、
第4級アンモニウム基を有する化合物と、
グリチルリチン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、
ポリオキシエチレン構造を有する界面活性剤少なくとも一種と、
を含む、皮膚外用剤(ただし、界面活性剤が、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、またはモノステアリン酸ポリグリセリルである場合を除く)。
(2) 界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種である、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3) 前記界面活性剤が、
ポリオキシエチレンセチルエーテル、
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、および
ポリソルベート80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)からなる群から選ばれる少なくとも一種である、(1)に記載の皮膚外用剤。
(4) 前記界面活性剤が、
ポリオキシエチレンセチルエーテル、
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、および
ポリソルベート80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、
からなる群から選択される少なくとも一種である、(1)に記載の皮膚外用剤。
(5) さらに多価アルコールを含む、(1)に記載の皮膚外用剤。
(6) 多価アルコールが、1,3-ブチレングリコールである、(5)に記載の皮膚外用剤。
(7) 水を含む、(1)~(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(8) 皮膚外用剤の全質量に対するヘパリン類似物質およびその塩の含有量が、0.1~1.0質量%である、(1)~(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(9) 皮膚外用剤の全質量に対する第4級アンモニウム基を有する化合物の含有量が、0.05~1.0質量%である、(1)~(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(10) 皮膚外用剤の全質量に対するグリチルリチン酸およびその塩の含有量が、0.1~3.0質量%である、(1)~(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(11) 皮膚外用剤の全質量に対する、界面活性剤の含有量が、0.5~10.0質量%である、(1)~(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(12) ヘパリン類似物質およびその塩と第4級アンモニウム基を有する化合物との合計含有量に対する界面活性剤の含有量の比率が、1~20である、(1)~(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(13) ヘパリン類似物質およびその塩と第4級アンモニウム基を有する化合物との合計含有量に対するグリチルリチン酸およびその塩の含有量の比率が、0.1~10である、(1)~(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(14) 前記第4級アンモニウム基を有する化合物が、ベンゼトニウム、ベンザルコニウム、セチルピリジニウムおよびその塩からなる群から選択される少なくとも一種である、(1)~(13)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(15) 液剤、クリーム、ゲル、軟膏、スプレー、フォーム、またはパップである、(1)~(14)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤によれば、皮膚外用剤の保存安定性が向上しているため、保存後でも薬効を効果的に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚外用剤は、
ヘパリン類似物質およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、
第4級アンモニウム基を有する化合物と、
グリチルリチン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、
ポリオキシエチレン構造を有する界面活性剤少なくとも一種と、
を含む、皮膚外用剤(ただし、界面活性剤が、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、またはモノステアリン酸ポリグリセリルである場合を除く)である。
【0012】
本発明におけるヘパリン類似物質は、別名ムコ多糖類多硫酸エステル又はヘパリノイドと呼ばれる物質であり、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖で、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用等を有することが知られている公知の薬剤である。ヘパリン類似物質には、例えば、ヘパリン;コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸Eのようなコンドロイチン多硫酸などが含まれる。本発明で使用されるヘパリン類似物質の由来については、特に制限されないが、例えば、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得られたもの、食用獣の組織(例えば、ウシやブタ等の気管軟骨を含む肺臓)から抽出したもの等が挙げられる。ヘパリン類似物質としては、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されているヘパリン類似物質が好ましい。
【0013】
ヘパリン類似物質は、必要に応じ、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物若しくは炭酸塩、又はアミン類等を用いる造塩反応により得られる生理学的に許容される塩形態のものでもよい。
本発明におけるヘパリン類似物質の有機硫酸基の割合(%)は、特に限定されないが、例えば、消炎鎮痛効果の向上及び皮膚刺激の低減などの観点から、20~40%(質量%)が好ましく、25~38%(質量%)が特に好ましい。なお、有機硫酸基の量は、日本薬局方外医薬品規格2002中、「ヘパリン類似物質」の項に記載の方法により測定する。
また、本発明におけるヘパリン類似物質の平均分子量は、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量(MW)にて、1,000~1,000,000が好ましく、5,000~100,000が特に好ましい。
【0014】
また、本発明の皮膚外用剤は、ヘパリン類似物質の類縁体も任意成分として含んでいてもよい。ヘパリン類似物質の類縁体としては、例えば、その他の酸性ムコ多糖であってよい。
ヘパリン類似物質の類縁体としての酸性ムコ多糖としては、例えば、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸B(デルマタン硫酸)、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸K等のコンドロイチン硫酸類、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸等が挙げられる。
すなわち、本発明の皮膚外用剤においては、ヘパリン類似物質と併せて、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ヘパリン類似物質の類縁体としての酸性ムコ多糖をさらに加えてもよい。
これらヘパリン類似物質の類縁体は、場合によっては製薬上許容される塩及び/又は溶媒和物の形態であってよい。製薬上許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
また、溶媒和物としては水和物が挙げられる。
【0015】
本発明における第4級アンモニウム基を有する化合物としては、ベンゼトニウム、ベンザルコニウム、セチルピリジニウムおよびその塩からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。
本発明において用いることができる第4級アンモニウム基を有する化合物としては、例えば、第18改正日本薬局方に掲載されている「ベンゼトニウム塩化物」、「ベンザルコニウム塩化物」、「塩化セチルピリジニウム」を挙げることができる。
【0016】
本発明におけるグリチルリチン酸およびその塩としては、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムなどを使用することができる。本発明において用いることができるグリチルリチン酸およびその塩としては、例えば、第18改正日本薬局方に掲載されている「グリチルリチン酸ジカリウム」を挙げることができる。
【0017】
本発明においては、界面活性剤として、ポリオキシエチレン構造を有する界面活性剤を使用する。
【0018】
界面活性剤は、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0019】
界面活性剤は、より好ましくは、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、およびポリソルベート80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0020】
界面活性剤は、さらに好ましくは、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、およびポリソルベート80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、さらに多価アルコールを含有してもよい。
【0022】
本発明における多価アルコールとは、可溶化剤、基剤、湿潤剤、粘稠剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で皮膚外用剤に用いられる、分子内に水酸基が2個以上あるアルコールであり、例えば、プロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、マクロゴール(ポリエチレングリコールともいう)、グリセリン、D‐ソルビトール、ジプロピレングリコールであり、医薬品添加物事典2021に収載されている。なお、マクロゴールの分子量は特に限定されないが、例えば、数平均分子量で200~20000であってもよい。
また、本発明におけるアルコール類の分子量は、特に限定されないが、例えば、400以下であってもよく、400未満であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、250以下であることがさらに好ましく、200以下であることが特に好ましく、100以下であってもよい。
【0023】
本発明の皮膚外用剤は、多価アルコール以外の低級アルコールを含有してもよい。
本発明における低級アルコールとは、可溶化剤、基剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で皮膚外用剤に用いられる炭素数1~4個の脂肪族アルコール類であり、例えば、メタノール、エタノール(エチルアルコールとも言う)、プロパノール、イソプロパノール(イソプロピルアルコールとも言う)、およびブチルアルコール等からなる群より選ばれる1種または2種以上であり、好ましくはエタノールである。
【0024】
本発明の皮膚外用剤における、ヘパリン類似物質およびその塩の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、皮膚外用剤全量に対して、0.1~10質量%であり、より好ましくは0.1~1.0質量%であり、さらに好ましくは、0.1~0.5質量%である。
【0025】
本発明の皮膚外用剤における、第4級アンモニウム基を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、皮膚外用剤全量に対して、0.05~10質量%であり、より好ましくは0.05~1.0質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.7質量%である。
【0026】
本発明の皮膚外用剤における、グリチルリチン酸およびその塩の含有量の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、皮膚外用剤全量に対して、0.05~10質量%であり、より好ましくは0.1~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.7質量%である。
【0027】
本発明の皮膚外用剤における、界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、皮膚外用剤全量に対して、0.5~10.0質量%であり、より好ましくは1.0~10.0質量%であり、さらに好ましくは、1.0~5.0質量%である。
【0028】
本発明の皮膚外用剤において、ヘパリン類似物質およびその塩と第4級アンモニウム基を有する化合物との合計含有量に対する界面活性剤の含有量の比率は、特に限定されないが、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~15であり、さらに好ましくは3~10である。
【0029】
本発明の皮膚外用剤において、ヘパリン類似物質およびその塩と第4級アンモニウム基を有する化合物との合計含有量に対するグリチルリチン酸およびその塩の含有量の比率は、特に限定されないが、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.1~5であり、さらに好ましくは0.2~1.0である。
【0030】
本発明の皮膚外用剤が、多価アルコールを含有する場合、多価アルコールの質量に対する、ヘパリン類似物質の含有量の比(ヘパリン類似物質/多価アルコール質量比)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-3~100であり、より好ましくは、1.4×10-3~10であり、さらに好ましくは2.0×10-3~5.0である。
【0031】
本発明の皮膚外用剤が、低級アルコールを含有する場合、低級アルコールの質量に対する、ヘパリン類似物質の含有量の比(ヘパリン類似物質/低級アルコール質量比)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×10-3~100であり、より好ましくは、1.4×10-3~10であり、さらに好ましくは1.4×10-3~5.0である。
【0032】
本発明の皮膚外用剤が多価アルコールを含有する場合、皮膚外用剤における多価アルコールの含有量の範囲は、特に限定されないが、剤形に応じて選択してよく、好ましくは皮膚外用剤全量に対して、0.1~70質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%であり、より好ましくは0.5~20質量%であり、さらに好ましくは、1.0~15質量%である。
例えば、本発明の皮膚外用剤が外用液剤・ゲル剤の場合には、多価アルコールの添加量含有量の範囲は、特に限定されないが、例えば、外用液剤・ゲル剤の全量に対して、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは、1.0~15質量%である。
例えば、本発明の皮膚外用剤がクリーム剤の場合には、多価アルコールの添加量含有量の範囲は、特に限定されないが、例えば、クリーム剤の全量に対して、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは、1.0~15質量%である。
【0033】
本発明の皮膚外用剤が低級アルコールを含有する場合、皮膚外用剤における低級アルコールの含有量の範囲は、特に限定されないが、剤形に応じて選択してよく、好ましくは、皮膚外用剤全量に対して、0.1~70.0質量%であり、より好ましくは、0.1~50.0質量%である。
【0034】
例えば、本発明の皮膚外用剤が外用液剤・ゲル剤の場合には、低級アルコールの添加量含有量の範囲は、例えば、外用液剤・ゲル剤の全量に対して、特に限定されないが、好ましくは1.0~70.0質量%であり、より好ましくは、5.0~60.0質量%である。
例えば、本発明の皮膚外用剤がパップ剤の場合には、低級アルコールの添加量含有量の範囲は、例えば、パップ剤の膏体全量に対して、好ましくは0.1~50質量% であり、より好ましくは0.1%~30質量%である。
【0035】
本発明の皮膚外用剤は、さらに水を含んでいてもよい。
本発明の皮膚外用剤が水を含む場合、水の含有量の範囲は、特に限定されないが、剤形に応じて選択してよく、好ましくは皮膚外用剤全量に対して、20~99質量%であり、より好ましくは25~98質量%であり、さらに好ましくは、30~98質量%である。
【0036】
また、皮膚外用剤のpHの範囲は、特に限定されないが、好ましくは4.0~7.5であり、より好ましくは4.5~7.5であり、さらに好ましくは4.5~7.0である。
【0037】
本発明の皮膚外用剤において、上記成分以外の鎮痛消炎用、化膿性疾患用薬の皮膚外用剤に通常使用される、薬物や医薬品添加物を添加することができる。
【0038】
上記成分以外の薬物(有効成分)としては、サリチル酸、イオウ、イブプロフェンピコノール、グリチルレチン酸、アラントイン、d-カンフル、ホモスルファミン、トコフェロール酢酸エステル、エタノール、イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシグルコン酸塩、スルファジン、酸化亜鉛、ピリドキシン塩酸塩、ジパルミチン酸ピリドキシン、ビタミンA油、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン、およびレゾルシン等を挙げることができる。
【0039】
医薬品添加物は、例えば、経時的な含量安定性や使用感の更なる向上等を目的として必要に応じて添加するものであり、例えば、湿潤剤、保湿剤、粘稠剤、粘着剤、粘着付与樹脂、架橋剤、充填剤、油脂類、軟化剤、防腐剤、経皮吸収促進剤、安定化剤、溶解補助剤、pH調節剤、抗酸化剤、清涼化剤、乳化剤、等を挙げることができる。また、本発明の皮膚外用剤は、その他、任意の成分を含んでいてもよい。
【0040】
湿潤剤としては、例えば、ヒアルロン酸、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウムまたはその塩(例えば、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム)等を用いることができる。
保湿剤としては、例えば、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、グリセリン、マクロゴール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の多価アルコールを用いることができる。
増粘剤(粘稠剤・ゲル化剤)としては、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、メチルセルロース、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸プロピレングリコール等を用いることができる。
【0041】
粘着剤としては、例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体溶液、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン溶液、メタクリル酸・アクリル酸n-ブチルコポリマー、アクリル酸シルクフィブロイン共重合樹脂、アクリル酸デンプン300、アクリル酸デンプン1000、アクリル酸ブチル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸イソノニル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル・ジアセトンアクリルアミド共重合体等のアクリル系粘着剤;シスイソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、シスポリイソプレンゴム、ハイシスポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、ポリイソプレン、ポリイソブチレン(PIB)、クロロプレンゴム、ポリブテン、天然ゴムラテックス、SBR合成ラテックス等の合成ゴム系粘着剤;ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のシリコーン系粘着剤の他、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、N-ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、グァーガム、トラガントガム、アラビアゴム等に加えて、これらをアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属塩で架橋したもの等を用いることができる。
【0042】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム、マレイン酸レジン、マレイン化ロジングリセリンエステル、テルペン樹脂、石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等を用いることができる。
【0043】
架橋剤としては、例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロサルタイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等を用いることができる。
充填剤としては、例えば、アルミナ、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、合成ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、ステアリン酸亜鉛、亜鉛酸カルシウム、タルク、炭酸カルシウム、シリカ(二酸化ケイ素)等を用いることができる。
【0044】
油脂類としては、例えば、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、ワセリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ゲル化炭化水素等の炭化水素類;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等の脂肪酸エステル類;べへニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;ベヘニン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;カルナウバロウ、鯨ロウ、セラック、ホホバ油、ミツロウ、サラシミツロウ、モンタンロウ、ラノリン、精製ラノリン、還元ラノリン等のロウ類;シリコーン油等を用いることができる。
【0045】
軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン;スクワレン;綿実油、パーム油、ヤシ油、アーモンド油、ナタネ油、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;シリコンオイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレートなどの二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル及びセバシン酸ジイソプロピル等の液状脂肪酸エステル類;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;サリチル酸グリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸トリエチル;クロタミトン;グリセリン等を用いることができる。
【0046】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸ベンジル、安息香酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。
経皮吸収促進剤としては、例えば、アルコール、脂肪酸、アジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、テルペン系化合物、ピロリドン誘導体、有機酸、有機酸エステル、精油、炭化水素、炭化プロピレン、エイゾン又はその誘導体等を用いることができる。
安定化剤としては、例えば、オキシベンゾン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エデト酸ナトリウム、UV吸収剤(例えば、ジベンゾイルメタン誘導体)、ジメチルポリシロキサン等を用いることができる。
【0047】
溶解補助剤としては、例えば、ベンジルアルコール;ピロチオデカン;ミリスチン酸イソプロピル;クロタミトン;N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドン類;高級アルコール類;アジピン酸ジエチル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2-ヘプチルウンデシル)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の多塩基酸類;ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;モノステアリン酸ポリエチレングリコール等のオキシアルキレン脂肪酸エステル等を用いることができる。
pH調節剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物、リン酸水素ナトリウム水和物、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、有機酸、有機アミン(例えば、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなど)、リン酸等を用いることができる。
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸水和物、無水クエン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、dI-αートコフェロール、ジクロルイソシアヌル酸カリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、プチルヒドロキシアニソール、大豆レシチン、ペンタエリスリルーテトラキス[3一(3,5-ジーt-ブチルー4-ヒドロキシフエニル)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル等を用いることができる。
清涼化剤としては、例えば、l-メントール、カンフル、dl-カンフル、ハッカ油、ユーカリ油、チモール等を挙げることができる。
【0048】
本発明における乳化剤は、例えば、上記各種界面活性剤、上記高級アルコール、セトステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリンなどで挙げたものを任意に用いてもよい。
【0049】
本発明におけるその他の任意の成分としては、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含んでいてもよい。NSAIDsとしては、ジクロフェナク及び/又はその塩やフェルビナクとは異なるものを使用してもい。より具体的には、本発明の皮膚外用剤は、さらにNSAIDs、例えば、ロキソプロフェン又はその塩を含んでいてもよい。
本発明における皮膚外用剤の剤形が軟膏剤の場合には、例えば、トリアムシノロンアセトニド、プレドニゾロン、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、セチルピリジニウム塩化物水和物、パンテノール、グリセリン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロース、硬化油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、カルメロースナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ステアリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ゲル化炭化水素、l-メントール、およびサッカリンナトリウムのうち1種または2種以上を含んでいてもよい。
【0050】
本発明の皮膚外用剤の具体的な剤形としては、例えば、液剤、クリーム、ゲル、軟膏、スプレー(外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤)、フォーム、またはパップ等を挙げることができ、各剤形に適した添加剤や基剤を適宜使用し、第18改正日本薬局方などに記載される通常の方法に従い、製造することができる。本発明における皮膚外用剤の剤形としては、液剤(特に外用液剤)が好ましい。
【0051】
本発明の皮膚外用剤の製剤は、例えば、ガラス製の容器・包装、又は、アルミニウム等の金属製の容器・包装、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂製の容器・包装に収容し、密封することができ、さらにアルミニウム等の金属を含む防湿袋に収容することができる。また、容器・包装には、再生プラスチックやバイオマス原料など環境に配慮された原料・材料を含む容器・包装を用いてもよく、必要に応じ、ラミネート構造の材料やガスバリア材料、高温環境などの際の熱や光など、医薬品の容器・包装の外部からの因子・要素・環境変化による皮膚外用剤の劣化を防ぎ、適切に皮膚外用剤の品質が保持されるような任意の材料などを用いてもよい本発明の一実施形態においては、適切な容器・包装に皮膚外用剤の製剤・組成物が収容された医薬品としてもよい。
【0052】
本発明は、一実施形態として、ポリオキシエチレン構造を有する界面活性剤((ただし、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、またはモノステアリン酸ポリグリセリルは除く)を、ヘパリン類似物質およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、第4級アンモニウム基を有する化合物(例えば、ベンゼトニウムおよびその塩からなる群から選択される少なくとも一種)と、グリチルリチン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種とを含有する皮膚外用剤の安定化剤として使用してもよい。具体的には、ポリオキシエチレン構造を有する界面活性剤((ただし、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、またはモノステアリン酸ポリグリセリルは除く)を含有する、ヘパリン類似物質およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種と、第4級アンモニウム基を有する化合物(例えば、ベンゼトニウムおよびその塩からなる群から選択される少なくとも一種)と、グリチルリチン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも一種とを含有する皮膚外用剤の安定化剤が提供される。
【0053】
以下に、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例0054】
(試験例1)ヘパリン類似物質、ベンゼトニウム塩化物およびグリチルリチン酸ジカリウムを含む組成物の外観安定性の検討
ヘパリン類似物質のおよびベンゼトニウム塩化物を含む組成物の外観安定性を向上させる成分について、検討した。
(1)試験材料及び検体の調製
以下の表1~3の各検体に記載された成分を混合・溶解後、クエン酸を2倍に希釈した溶液でpHを4.5になるよう調節し、検体1~19の液剤を得た。
なお、試薬は以下のものをそれぞれ使用した。
ヘパリン類似物質(アピ(株)製)(ヘパリン類似物質全体に対する有機硫酸基の割合が35.2%(質量%)のもの)
ベンゼトニウム塩化物(ロンザ株式会社)
グリチルリチン酸ジカリウム(丸善製薬株式会社)
1,3-ブチレングリコール(関東化学株式会社)
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル(NIKKOL PBC-34、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル(NIKKOL PBC-44、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレンセチルエーテル(NIKKOL BC-20、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレンステアリルエーテル(NIKKOL BS-20、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(NIKKOL BO-20V、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(NIKKOL BB-20、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(NIKKOL HCO-60、日光ケミカルズ株式会社)
ポリソルベート60(NIKKOL TS-10MV、日光ケミカルズ株式会社)
ポリソルベート80(NIKKOL TO-10MV、日光ケミカルズ株式会社)
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(NIKKOL GO-460V、日光ケミカルズ株式会社)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(NIKKOL MYS-40V、日光ケミカルズ株式会社)
モノステアリン酸ポリグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-SVEX、日光ケミカルズ株式会社)
クエン酸(富士フィルム和光純薬工業株式会社)
【0055】
(2)製造方法
得られた製剤を胴径35mmの透明ガラスバイアルに分注し、密栓した。透明ガラスバイアルは(株)マルエム製のマイティバイアル(透明、No.7)を使用した。分注した検体を5℃にて1週間保管した。
保管前のサンプルの室温における外観、及び5℃1週間保管後のサンプルの5℃における外観を観察した。外観が澄明で沈殿物のないものについては〇、澄明ではない又は沈殿物があるものについては×を付け評価した。
【0056】
(3)試験結果
各検体の結果を表1~3に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1の結果から、ヘパリン類似物質とベンゼトニウム塩化物を配合した検体1および、ヘパリン類似物質、ベンゼトニウム塩化物、グリチルリチン酸ジカリウムを配合した検体2は、製造直後および5℃1週間保管後も不溶物が出現し白濁した。また、検体2にさらに1,3-ブチレングリコールを配合した検体3、および検体1に1,3-ブチレングリコールとポリオキシエチレンセチルエーテルを配合した検体4についても5℃1週間保管後不溶物が出現し白濁した。一方、検体4にさらにグリチルリチン酸ジカリウムを配合した検体5では、不溶物が生じなかった。
【0061】
表2および表3の結果から、ヘパリン類似物質とベンゼトニウム塩化物とグリチルリチン酸ジカリウムを配合した検体6,7は、製造直後および5℃1週間保管後も不溶物が出現し白濁した。また、検体7にさらにポリオキシエチレンステアリルエーテルまたは、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリグリセリルを配合した検体8~13についても5℃1週間保管後不溶物が出現し白濁した。
【0062】
一方、検体7にさらにポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリソルベート80を配合した検体14~19では、不溶物が生じなかった。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0064】
(製剤例)
以下の表4~表17に記載した成分を攪拌・混合して溶解後、各製剤例の皮膚外用剤を得ることができる。
製造方法としては、上記成分及び分量を取り、日本薬局方製剤総則「外用液剤」、「クリーム剤」、「軟膏剤」の項に準じて製造することができる。
なお、例えば、液状又は半固形状の組成物を具体的な剤形として製剤化する場合においては、剤形に応じて適宜、液状又は半固形状の組成物を容器(例えば、ボトル状容器、チューブ状容器、シート状容器、スプレー剤用容器等)に収容する、液状又は半固形状の組成物を支持体に展延して成形する、噴射剤と混合したうえでエアゾール缶に収容する等、各剤形について公知の手段を適用すればよい。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【0074】
【表13】
【0075】
【表14】
【0076】
【表15】
【0077】
【表16】
【0078】
【表17】
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の皮膚外用剤は、保存安定性に優れており、極めて有用である。