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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002056
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】シャフト型電気炉のシャフトクーラ
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/24 20060101AFI20241226BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20241226BHJP
   F27D 13/00 20060101ALI20241226BHJP
   F27D 1/12 20060101ALI20241226BHJP
   F27D 17/18 20250101ALI20241226BHJP
【FI】
F27B3/24
F27D9/00
F27D13/00 F
F27D1/12 A
F27D17/00 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101970
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501120122
【氏名又は名称】スチールプランテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】庄司 真之
(72)【発明者】
【氏名】白崎 恭資
(72)【発明者】
【氏名】正司 信也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖浩
【テーマコード(参考)】
4K045
4K051
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K045AA04
4K045BA02
4K045DA09
4K045RA06
4K045RA09
4K045RB02
4K045RB22
4K045RC02
4K051AA05
4K051AB03
4K051HA06
4K051HA08
4K056AA05
4K056BB08
4K056BC01
4K056CA02
4K056DA33
4K063AA04
4K063AA12
4K063BA02
4K063CA05
4K063EA02
(57)【要約】
【課題】水漏れが発生しにくく、予熱シャフトの使用寿命を長くすることができる、シャフト型電気炉のシャフトクーラを提供すること。
【解決手段】シャフト型電気炉の排ガスを用いて冷鉄源を予熱する予熱シャフトの下部に設けられ、水冷構造を有するシャフトクーラ32であって、シャフト型電気炉の炉体の反対側である反炉側に設けられる第1壁部321が、ジャケットクーラパネル、スプレーパネル及び非水冷パネルから選択される少なくとも1種類の冷却パネルを有し、ジャケットクーラパネルは、内面側が平面であり、内部に冷却水が流れる冷却経路を有する冷却パネルであり、スプレーパネルは、内面側に設けられる平坦な板状部材と、板状部材の外面に冷却水を噴射する複数のノズル51とを有する冷却パネルであり、非水冷パネルは、水冷構造を有しない冷却パネルである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト型電気炉の排ガスを用いて冷鉄源を予熱する予熱シャフトの下部に設けられ、水冷構造を有する、シャフト型電気炉のシャフトクーラであって、
前記シャフト型電気炉の炉体の反対側である反炉側に設けられる第1壁部が、ジャケットクーラパネル、スプレーパネル及び非水冷パネルから選択される少なくとも1種類の冷却パネルを有し、
前記ジャケットクーラパネルは、内面側が平面であり、内部に冷却水が流れる冷却経路を有する冷却パネルであり、
前記スプレーパネルは、内面側に設けられる平坦な板状部材と、前記板状部材の外面に冷却水を噴射する複数のノズルとを有する冷却パネルであり、
前記非水冷パネルは、水冷構造を有しない冷却パネルである、シャフト型電気炉のシャフトクーラ。
【請求項2】
前記第1壁部は、前記スプレーパネル及び前記非水冷パネルから選択される少なくとも1種類の冷却パネルからなる、請求項1に記載のシャフト型電気炉のシャフトクーラ。
【請求項3】
前記第1壁部は、前記非水冷パネルからなる、請求項1に記載のシャフト型電気炉のシャフトクーラ。
【請求項4】
前記シャフト型電気炉の炉体側である炉側に設けられ、前記第1壁部に対向する第2壁部が、前記ジャケットクーラパネルからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のシャフト型電気炉のシャフトクーラ。
【請求項5】
前記シャフト型電気炉の排滓側及び出鋼側にそれぞれ設けられ、互いに対向する第3壁部及び第4壁部が、前記ジャケットクーラパネル、前記スプレーパネル及び前記非水冷パネルから選択される少なくとも1種類の冷却パネルを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のシャフト型電気炉のシャフトクーラ。
【請求項6】
前記第3壁部及び前記第4壁部は、前記シャフト型電気炉の炉体側である炉側が前記スプレーパネルからなり、前記反炉側が前記非水冷パネルからなる、請求項5に記載のシャフト型電気炉のシャフトクーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフト型電気炉のシャフトクーラに関する。
【背景技術】
【0002】
シャフト型電気炉は、スクラップなどの冷鉄源を溶解する際に、予熱シャフトにて排ガスの顕熱を利用して冷鉄源を予熱するため、エネルギー効率の高い電気炉である。
例えば、特許文献1には、シャフト型電気炉として、予熱シャフトを有する電気炉(溶解炉)が開示されている。特許文献1に記載のシャフト型電気炉では、溶解処理中に発生する高温の排ガスが予熱シャフトを通じて排出される。この際、溶解するスクラップ等の冷鉄源を、予熱シャフトを介して溶解室へと供給することで、発生する排ガスで予熱シャフト内の冷鉄源を予熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-241889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようなシャフト型電気炉において、予熱シャフトの下方側の部位をシャフトクーラという。このシャフトクーラは、高温の排ガスが通るため、一般的に、四方を囲む壁面にチューブクーラが設けられる。
チューブクーラは、冷却効率に優れるものの、延在方向に直交する断面形状が円形であるため、肉厚管理が難しい。チューブクーラの肉厚が薄くなると冷鉄源との衝突により亀裂が発生し易くなり、水漏れの発生が懸念される。チューブクーラは、冷却能を高めるために内部を流れる水の水圧が高くなっており、水漏れが発生した場合には水漏れ量が多量となる。また、補修回数が増えるため、シャフトクーラ本体の使用寿命が短くなり、長時間の生産停止が発生する。さらに、チューブクーラは、断面形状が円形であるため、肉厚が薄くなった場合や亀裂が発生した場合において、溶接による補修がし辛いものとなる。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、水漏れが発生しにくく、予熱シャフトの使用寿命を長くすることができる、シャフト型電気炉のシャフトクーラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、電気炉の排ガスを用いて冷鉄源を予熱する予熱シャフトの下部に設けられ、水冷構造を有するシャフトクーラであって、上記電気炉の炉体の反対側である反炉側に設けられる第1壁部が、ジャケットクーラパネル、スプレーパネル及び非水冷パネルから選択される少なくとも1種類の冷却パネルを有し、上記ジャケットクーラパネルは、内面側が平面であり、内部に冷却水が流れる冷却経路を有する冷却パネルであり、上記スプレーパネルは、内面側に設けられる平坦な板状部材と、上記板状部材の外面に冷却水を噴射する複数のノズルとを有する冷却パネルであり、上記非水冷パネルは、水冷構造を有しない冷却パネルである、シャフトクーラが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、水漏れが発生しにくく、予熱シャフトの使用寿命を長くすることができる、シャフト型電気炉のシャフトクーラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るシャフト型電気炉を示す、模式断面図である。
図2】シャフトクーラを示す模式図であり、(A)は平面図を示し、(B)は図2(A)のI-I線矢視断面図を示す。
図3】ジャケットクーラを示す模式図であり、(A)は正面図を示し、(B)は図3(A)のII-II線矢視断面図を示す。
図4】スプレークーラを示す模式図であり、(A)は正面図を示し、(B)は図4(A)のIII-III線矢視断面図を示す。
図5】非水冷パネルを示す模式図であり、(A)は正面図を示し、(B)は図5(A)のIV-IV線矢視断面図を示す。
図6】チューブクーラを示す模式図であり、(A)は正面図を示し、(B)は図6(A)のV-V線矢視断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するように、本発明の実施形態を例示して多くの特定の細部について説明する。しかしながら、かかる特定の細部の説明がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかである。また、図面は、簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
<シャフト型電気炉のシャフトクーラ>
図1図6を参照して、本発明の一実施形態に係るシャフト型電気炉1のシャフトクーラ32について説明する。なお、図面において、x軸、y軸及びz軸は互いに直交する軸であり、x軸及びy軸は水平方向に平行な軸であり、z軸は鉛直方向に平行な軸である。シャフト型電気炉1は、図1に示すように、スクラップ等の冷鉄源をアーク溶解することで溶鉄を製造する電気炉であり、溶解室2と、予熱シャフト3とを備える。
【0010】
溶解室2は、炉体21と、電極22と、プッシャー23とを有する。炉体21は、プッシャー23側となるx軸負方向側に傾斜部211を有する。このような溶解室2では、予熱シャフト3を通じて冷鉄源が傾斜部211へと投入される。投入された冷鉄源は、プッシャー23によって炉体21のx軸正方向側へと押し出される。そして、電極22を用いたアーク溶解によって投入された冷鉄源が溶解される。なお、炉体21のy軸正方向側には、溶鉄を排出するための出鋼口(不図示)が設けられ、炉体21のy軸負方向側には、スラグを排出するための排滓口(不図示)が設けられる。このため、シャフト型電気炉1において、y軸正方向側を出鋼側、y軸負方向側を排滓側ともいう。
【0011】
予熱シャフト3は、シャフト型電気炉1の排ガスを用いて、シャフト型電気炉1に投入する冷鉄源を予熱する、鉛直方向に延びるシャフト型の予熱装置である。予熱シャフト3は、z軸正方向側である上側に設けられるシャフト本体31と、z軸負方向側である下側に設けられるシャフトクーラ32とを有する。
シャフト本体31は、z軸正方向側となる上側に、冷鉄源投入口311と、排気口312とを有する。冷鉄源投入口311は、上方より冷鉄源が投入される開口部であり、冷鉄源投入口311を介して予熱シャフト3内に冷鉄源が供給される。排気口312は、不図示の排気ガス排出経路に接続され、冷鉄源をアーク溶解する際に炉体21から発生する排気ガスをこの排気ガス排出経路へと排出する。
【0012】
シャフトクーラ32は、予熱シャフト3の下側に設けられる角筒状の部材であり、シャフト本体31とは別体に構成されることで、シャフト本体31を高温の排気ガスから保護する。シャフトクーラ32は、図2に示すように、四方を囲む第1壁部321、第2壁部322、第3壁部323及び第4壁部324の4面の壁部を有する。第1壁部321は、x軸負方向側となる炉体21の反対側(以下、「反炉側」とも称する。)に設けられる壁部である。第2壁部322は、x軸正方向側となる炉体21側(以下、「炉側」とも称する。)に設けられる壁部である。つまり、第1壁部321及び第2壁部322は、x軸方向に互いに略対向して設けられる。なお、本実施形態では、第2壁部322は、図2(B)に示すように、y軸方向に直交する断面で視た場合に、上側への延在方向がz軸方向に対してx軸負方向側に傾きを持つように形成される。また、第3壁部323は、排滓側に設けられる壁部であり、第4壁部324は、出鋼側に設けられる壁部である。つまり、第3壁部323及び第4壁部324は、第1壁部321と第2壁部322との対向方向に直交する方向であるy軸方向に互いに対向して設けられる。
【0013】
第1壁部321は、ジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルからなる。冷却パネルとは、第1壁部321~第4壁部324の各壁部を形成する部材であり、1枚または内面の面内方向に並んだ2枚以上の冷却パネルによって各壁部が形成される。
ジャケットクーラパネル4は、図3に示すように、内部に冷却水が流れる冷却経路を有する水冷式の冷却パネルであり、少なくとも内面が鉄(鋼)などの金属からなる。なお、ジャケットクーラパネル4の内面とは、筒状のシャフトクーラ32の内部側の面であり、図3において、図3(A)の裏面側の面及び図3(B)の右側の面である。冷却水の経路は、ジャケットクーラパネル4の略全面にわたって形成されることが好ましい。冷却水は、ジャケットクーラパネル4の供給口41から供給され、ジャケットクーラパネル4の内部を流れて排出口42から排出される。また、ジャケットクーラパネル4は、少なくとも内面が平面である。
【0014】
スプレーパネル5は、図4に示すように、冷却水を噴射する複数のノズル51を有する水冷式の冷却パネルであり、少なくとも内面が鉄(鋼)などの金属からなる。なお、スプレーパネル5の内面とは、筒状のシャフトクーラ32の内部側の面であり、図4において、図4(A)の裏面側の面及び図4(B)の右側の面である。スプレーパネル5は、内面側が平坦な金属製の板状部材52で構成され、この板状部材52に外側に設けられた複数のノズル51から冷却水を板状部材52の外面に噴射することで冷却を行う。複数のノズル51より噴射された冷却水は、板状部材52に当たった後、スプレーパネル5の内部の空洞を通じて下部に設けられた排出口(不図示)より排出される。
【0015】
非水冷パネル6は、図5に示すように、鉄(鋼)などの金属からなる板状の非水冷式の冷却パネルである。非水冷パネル6は、ジャケットクーラパネル4やスプレーパネル5、チューブパネル等の冷却水を用いて冷却を行う冷却パネルとは異なり、冷却水が用いられず、主に空冷によって冷却が行われる。非水冷パネル6は、少なくとも内面側が平面である。なお、非水冷パネル6の内面とは、筒状のシャフトクーラ32の内部側の面であり、図5において、図5(A)の裏面側の面及び図5(B)の右側の面である。
【0016】
第1壁部321は、ジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルからなる。この場合、第1壁部321は、第1壁部321の全面が一枚の冷却パネルからなるものであってもよく、複数枚の冷却パネルをy軸方向あるいはz軸方向に並べたものであってもよい。また、第1壁部321は、2種類以上の冷却パネルが組み合わされたものであってもよい。この場合、第1壁部321は、2種類以上の冷却パネルを内面の面内方向、またはy軸方向ないしz軸方向に並べたものであってもよい。
【0017】
また、第1壁部321は、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルからなることが好ましく、非水冷パネル6からなることがより好ましい。
ここで、従来の予熱シャフトのシャフトクーラでは、各壁部を形成する冷却パネルとして、図6に示すチューブクーラパネル7が用いられてきた。チューブクーラパネル7は、断面が円形の鉄(鋼)などの金属製のチューブを這わせて形成される冷却パネルである。チューブクーラパネル7は、供給口71から供給され排出口72から排出される冷却水が、チューブの内部を流れることで冷却を行う。チューブクーラパネル7は、高圧の冷却水を流すことができるため、高い冷却能を有する。しかし、チューブクーラパネル7は、チューブの断面が円形であるため、筒状のシャフトクーラ32の内部側の面であり、図6において、図6(A)の裏面側の面及び図6(B)の右側の面である内面が平面とならない。このため、肉厚が薄くなった場合や亀裂が発生した場合において、補修がしにくいものとなる。
【0018】
上記の各種の冷却パネルでは、非水冷パネル6、スプレーパネル5、ジャケットクーラパネル4及びチューブクーラパネル7の順に冷却能が高くなる。また、溶接による補修のし易さ等のメンテナンス性は、チューブクーラパネル7、ジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6の順に高くなる。特に、ジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6は、薄肉化や亀裂の発生が生じる内面が平面であることから、これらの補修がチューブクーラパネル7に比べて容易となる。さらに、ジャケットクーラパネル4及びスプレーパネル5及び非水冷パネル6は、冷鉄源と接触する内面側が平坦であるため、チューブクーラに比べて肉厚の管理がし易い。このため、肉厚を適正に管理することができ、肉厚の薄い部分が生じにくくなることから、耐衝撃性に優れる。
【0019】
第1壁部321は、炉体21の反対側である反炉側に設けられるため、他の壁部に比べて熱負荷が小さい。このため、スプレーパネル5や非水冷パネル6のように冷却能の低い冷却パネルを適用しても問題がない。また、このようなパネルはメンテナンス性に優れ、補修を容易に行うことができることから、冷却パネルとして、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類を適用することが好ましく、非水冷パネル6を適用することがより好ましい。第1壁部321にスプレーパネル5を適用する場合、ジャケットクーラパネル4やチューブクーラパネル7に比べて、冷却パネルを流れる冷却水の水圧が低くなる。このため、亀裂が発生した場合において水漏れする冷却水の量が少なくなる。また、小さな亀裂であれば、水漏れが問題ない程度のものとなるため、補修をすぐにする必要がなくなる。また、第1壁部321に非水冷パネル6を適用する場合、水冷構造を有しない冷却パネルであることから、第1壁部321からの水漏れを防止することができる。また、亀裂が発生してもすぐに補修をする必要がなくなる。
【0020】
第2壁部322は、図3に示すジャケットクーラパネル4からなる。また、第2壁部322は、一枚のジャケットクーラパネル4からなるものでもよく、複数枚のジャケットクーラパネル4からなるものでもよい。第2壁部322は、炉体21側である炉側に設けられるため、他の壁部に比べて熱負荷が大きい。このため、スプレーパネル5や非水冷パネル6を適用した場合には、熱負荷に耐え切れずに、パネルの変形や亀裂が発生し易くなる可能性がある。ジャケットクーラパネル4は、チューブクーラパネル7に比べて冷却能が低いが、本発明者らは第2壁部322に適用したところ、冷却能が十分であることを確認した。このため、第2壁部322をジャケットクーラパネル4とすることで、冷却能を確保しながらも、耐衝撃性やメンテナンス性を向上することができる。
【0021】
第3壁部323及び第4壁部324は、図3に示すジャケットクーラパネル4、図4に示すスプレーパネル5及び図5に示す非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルからなるものであってもよい。第3壁部323及び第4壁部324は、第1壁部321よりも熱負荷が大きく、第2壁部322よりも熱負荷が小さいものとなる。このため、メンテナンス性と冷却能とを両立させるためには、冷却パネルとしてジャケットクーラパネル4またはスプレーパネル5を適用することが好ましい。また、第3壁部323及び第4壁部324は、炉側の領域の熱負荷が大きく、反炉側の領域の熱負荷が小さいものとなる。このため、炉側と反炉側とで用いる冷却パネルの種類を変えることが好ましい。この場合、炉側にスプレーパネル5を適用し、反炉側に非水冷パネル6を適用することが好ましい。また、この場合、例えば、第3壁部323及び第4壁部324のx軸方向の長さに対して、x軸正方向側の50%程度の長さの領域を炉側の領域とし、その他のx軸負方向側の領域を反炉側の領域としてもよい。
【0022】
上記構成の予熱シャフト3では、冷鉄源投入口311より冷鉄源が投入される。投入された冷鉄源は、傾斜部211の上に予熱シャフト3を通じて積層される。そして、積層された冷鉄源は、下側からプッシャー23によって徐々に押し出されることで炉体21に炉体21内に供給される。また、予熱シャフト3では、炉体21で発生した高温の排ガスが、シャフトクーラ32及びシャフト本体31の内部を通って、排気口312から排出される。この際、排ガスの流路には、投入された冷鉄源が有り、この冷鉄源が予熱される。
【0023】
<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
【0024】
例えば、上記実施形態では、ジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6の内面は、鉄(鋼)などの金属製であるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。ジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6の内面の材質は、耐熱性及び耐衝撃性が予熱シャフト3の実用に耐え得るものであれば、特に限定されない。なお、耐熱性及び耐衝撃性に加えて、製造コストの観点からは、材質は鉄(鋼)であることが好ましい。
【0025】
また、シャフトクーラ32は、第1壁部321がジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルからなればよく、第2壁部322~第4壁部324については、チューブクーラパネル7が適用されてもよい。上述のように、従来のシャフトクーラは、全ての壁部がチューブクーラパネル7からなるものであった。このため、このような従来のシャフトクーラに対して、少なくとも熱負荷の最も小さな第1壁部321をジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルからなるものとすることで、第1壁部321において、水漏れが発生しにくくなり、使用寿命を長くすることもできるようになる。特に、第1壁部321は、図2(B)に示すように、y軸方向から視て下側が鉛直方向に対して傾きを持って形成されることが多い。このため、第1壁部321は、他の壁部に比べて、上方から投入される冷鉄源と接触しやすくなることから、亀裂が生じやすい部位となる。しかし、上記のように、少なくとも第1壁部321の冷却パネルを変更することで、落下してくる冷鉄源や積層される冷鉄源と接触しやすい部位において、水漏れや亀裂が発生しにくくなる。このことから、予熱シャフト3全体でみても長寿命化を図ることができる。なお、シャフトクーラ32は、少なくともいずれかの壁部の少なくとも一部において、水冷構造を有するものであり、好ましくは、第2壁部322の少なくとも一部が水冷構造を有するものである。なお、水冷構造を有するとは、冷却パネルが冷却水を用いた冷却方式のものであることをいい、例えば、冷却パネルがチューブクーラパネル7、ジャケットクーラパネル4またはスプレーパネル5であることをいう。また、水冷構造を有しないとは、冷却パネルが冷却水を用いない冷却方式のものであることをいい、例えば、冷却パネルが非水冷パネル6であることをいう。
【0026】
<実施形態の効果>
(1)本発明の一態様に係るシャフト型電気炉1のシャフトクーラ32は、シャフト型電気炉1の排ガスを用いて冷鉄源を予熱する予熱シャフト3の下部に設けられ、水冷構造を有するシャフトクーラ32であって、シャフト型電気炉1の炉体21の反対側である反炉側に設けられる第1壁部321が、ジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルを有し、ジャケットクーラパネル4は、内面側が平面であり、内部に冷却水が流れる冷却経路を有する冷却パネルであり、スプレーパネル5は、内面側に設けられる平坦な板状部材52と、板状部材52の外面に冷却水を噴射する複数のノズル51とを有する冷却パネルであり、非水冷パネル6は、水冷構造を有しない冷却パネルである。
上記(1)の構成によれば、第1壁部321の水漏れや疵の発生を抑制することができ、予熱シャフト3の長寿命化を図ることができる。
【0027】
(2)上記(1)の構成において、第1壁部321は、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルからなる。
上記(2)の構成によれば、上記(1)の構成に比べて水漏れが発生しにくくなる。
(3)上記(1)の構成において、第1壁部321は、非水冷パネル6からなる。
上記(2)の構成によれば、第1壁部321が水冷構造を有しない非水冷パネル6からなるため、第1壁部321において水漏れが発生しなくなる。
【0028】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの構成において、シャフト型電気炉1の炉体21側である炉側に設けられ、第1壁部321に対向する第2壁部322が、ジャケットクーラパネル4からなる。
上記(4)の構成によれば、熱負荷が最も大きな第2壁部322にジャケットクーラパネル4を適用することで、チューブクーラパネル7を適用する場合に対して、必要な冷却能を得ながらも、耐衝撃性を向上することができ、さらに補修が容易となる。
【0029】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの構成において、シャフト型電気炉1の排滓側及び出鋼側にそれぞれ設けられ、互いに対向する第3壁部323及び第4壁部324が、ジャケットクーラパネル4、スプレーパネル5及び非水冷パネル6から選択される少なくとも1種類の冷却パネルを有する。
上記(5)の構成によれば、第3壁部323及び第4壁部324において、必要な冷却能を得ながらも、耐衝撃性を向上することができ、さらに補修が容易となる。
【0030】
(6)上記(5)の構成において、第3壁部323及び第4壁部324は、シャフト型電気炉1の炉体側である炉側がスプレーパネル5からなり、反炉側が非水冷パネル6からなる。
上記(6)の構成によれば、熱負荷の大きな炉側にスプレーパネル5を設け、熱負荷の小さな反炉側に非水冷パネル6を設けることで、冷却能とメンテナンス性の両立をより図ることができる。
【実施例0031】
本発明者らは、実施例として、第3壁部323について、上記実施形態と同様にシャフト型電気炉1の炉体側である炉側をスプレーパネル5、反炉側を非水冷パネル6へ改造し、チューブクーラパネルを用いた第4壁部324との排水温度の比較を行った。
【0032】
実施例の結果、第3壁部323と第4壁部324について、操業時の給水温度と排水温度との温度差を調査したところ、第3壁部323の温度差の平均が7.9℃、第4壁部324の温度差の平均が8.8℃となり、冷却能力が同等レベルであることが確認できた。また、1年間の使用期間において、スプレーパネル5での水漏れ発生と摩耗はゼロとなり、チューブパネルに対して使用寿命が長くなることが確認できた。
【符号の説明】
【0033】
1 シャフト型電気炉
2 溶解室
21 炉体
211 傾斜部
22 電極
23 プッシャー
3 予熱シャフト
31 シャフト本体
311 冷鉄源投入口
312 排気口
32 シャフトクーラ
321 第1壁部
322 第2壁部
323 第3壁部
324 第4壁部
4 ジャケットクーラパネル
41 供給口
42 排出口
5 スプレーパネル
51 ノズル
52 板状部材
6 非水冷パネル
7 チューブクーラパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6