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  • -ヘッドアップディスプレイ装置及び車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020568
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置及び車両
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20250205BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20250205BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20250205BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G09F9/00 362
G09F9/00 359
G09G5/00 550X
G09G5/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124036
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣木 健人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正則
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
5C182
5G435
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA33
2H199DA46
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD13
5C182AA04
5C182AA05
5C182AB25
5C182AB31
5C182DA42
5C182DA70
5G435AA19
5G435BB16
5G435BB19
5G435DD04
5G435GG10
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】 より確実に表示を行えるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 被投射部材に表示光を投射することで虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置100であって、表示光を出射する表示素子30と、表示素子30の動作パラメータを設定し、表示素子30の表示動作を制御する表示制御部92と、表示制御部92に接続され、動作パラメータを記憶領域に格納する記憶部93と、を備え、表示制御部92は、記憶部93び記憶領域に対して誤り検出動作を実行する誤り検出手段を備え、誤り検出手段は、記憶領域の内、一部の領域のみに誤り検出動作を実行する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被投射部材に表示光を投射することで虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
表示光を出射する表示素子と、
前記表示素子の動作パラメータを設定し、前記表示素子の表示動作を制御する表示コントローラと、
前記表示コントローラに接続され、前記動作パラメータを記憶領域に格納する記憶部と、を備え、
前記表示コントローラは、前記記憶領域に対して誤り検出動作を実行する誤り検出手段を備え、
前記誤り検出手段は、前記記憶領域の内、一部の領域のみに誤り検出動作を実行する
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記表示コントローラは、前記誤り検出動作の結果、前記一部の領域に誤りを検出した場合、前記表示素子の表示動作を停止する表示動作停止手段を更に備える
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記表示素子の表示性能を検査する検査用画像を格納し、
前記一部の領域は、前記検査用画像が格納されない領域である
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記表示光を反射する回転可能な凹面鏡と、
前記表示コントローラへ映像信号を出力し、前記凹面鏡を回転制御する制御部と、を更に備える
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置を備える
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
被投射部材に表示光を投射することで虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018/123554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のヘッドアップディスプレイ装置では、通常動作可能な状態であっても、動作を終了してしまう場合があった。
【0005】
そこで、本開示は、より確実に表示を行えるヘッドアップディスプレイ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
被投射部材に表示光を投射することで虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、表示光を出射する表示素子と、前記表示素子の動作パラメータを設定し、前記表示素子の表示動作を制御する表示コントローラと、前記表示コントローラに接続され、前記動作パラメータを記憶領域に格納する記憶部と、を備え、前記表示コントローラは、前記記憶領域に対して誤り検出動作を実行する誤り検出手段を備え、前記誤り検出手段は、前記記憶領域の内、一部の領域のみに誤り検出動作を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より確実に表示を行えるヘッドアップディスプレイ装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のヘッドアップディスプレイ装置を備えた車両の概略側面図である。
図2】ヘッドアップディスプレイ装置の光学的な構成を示す概略側面図である。
図3】ヘッドアップディスプレイ装置の制御構成を示すブロック図である。
図4】(A)は従来の誤り検出対象領域を示す図、(B)は本開示の誤り検出対象領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置100は、車両に搭載される。ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両のダッシュボード内に設けられ、表示画像を表す表示光Lをウインドシールド200で反射させることにより、運転者250等の乗員は、例えば車両情報を表す表示画像の虚像Vを視認することができる。
【0011】
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、例えば、照明部10と、照明光学系20と、表示素子30と、投射光学系50と、スクリーン60と、平面ミラー70と、凹面ミラー75と、表示画像Mが出射する窓部81を有するハウジング80と、を備えている。
【0012】
照明部10は、発光可能な光源部11(図3参照)を有する。光源部11は、例えば赤色光を発する発光ダイオード11r(第1の発光素子)と、例えば緑色光を発する発光ダイオード11g(第2の発光素子)と、例えば青色光を発する発光ダイオード11b(第3の発光素子)と、を備えている。
【0013】
照明光学系20は、例えば凹状のレンズ等で構成され、照明部10から出射された照明光Cを表示素子30の大きさに調整することができる。
【0014】
表示素子30は、例えば、可動式の複数のマイクロミラーを備えたDMD(Digital Micro-mirror Device)であり、複数のマイクロミラーの各々は、個別に制御される。マイクロミラーがONである時に、マイクロミラーは、ヒンジ(図示せず)を支点に例えば+12度傾斜し、照明光学系20から出射された照明光Cを投射光学系50方向に反射することができる。また、マイクロミラーがOFFである時に、マイクロミラーは、ヒンジを支点に例えば-12度傾斜し、照明光Cを投射光学系50方向に反射することができない。
【0015】
投射光学系50は、例えば凹レンズ又は凸レンズ等で構成され、表示素子30から投影された表示画像Mの表示光Lをスクリーン60に効率よく照射することができる。
【0016】
スクリーン60は、例えば拡散板、ホログラフィックディフューザ、マイクロレンズアレイ等で構成され、投射光学系50からの表示光Lをスクリーン60の下面で受光し、スクリーン60の上面に表示画像Mを表示することができる。
【0017】
平面ミラー70は、スクリーン60に表示された表示画像Mを凹面ミラー75に向かって反射させることができる。
【0018】
凹面ミラー75は、例えば凹面鏡等であり、平面ミラー70からの表示光Lを凹面で反射させ、反射光は、窓部81に向かって出射する。このような表示機構を介して表示光Lは、運転者250に到達し、運転者250によって認識される虚像Vは、スクリーン60に表示された表示画像Mが拡大された大きさを有する。
【0019】
凹面ミラー75は、回転可能な凹面鏡を有し、凹面鏡の回転によって表示光Lの反射角度を変更することで、運転者250によって認識される虚像Vの表示高さを調整することができる。
【0020】
ハウジング80の材料は、例えば硬質樹脂等であり、ハウジング80の上方に所定の大きさの窓部81が設けられている。窓部81の材料は、例えばアクリル等の透光性樹脂であり、窓部81の形状は、例えば湾曲形状である。窓部81は、凹面ミラー75からの表示光Lを透過させることができる。
【0021】
図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、例えば、制御部90、照明制御部91及び表示制御部92(表示コントローラ)によって制御される。図3に示すECU(Electronic Control Unit)は、映像信号300を生成し、制御部90は、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)方式の通信で映像信号300を入力することができる。制御部90は、典型的には、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されるが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロコンピュータ等で構成されてもよい。また、制御部90、照明制御部91及び表示制御部92は、例えば統合ICで構成されてもよい。
【0022】
制御部90は、映像信号300の要求する光の輝度と発光タイミングで照明部10を制御するための照明制御データD1を照明制御部91に出力する。また、制御部90は、映像信号300の要求する表示画像Mを表示素子30で形成するための表示制御データD2を表示制御部92に出力することができる。さらに、制御部90は、運転者250の調整操作に応じて凹面ミラー75の凹面鏡を回転制御し、虚像Vの表示高さを変更することができる。
【0023】
表示画像Mを表示する周期であるフレームは、複数の時間に分割されたサブフレームにより構成される。照明制御部91は、サブフレームごとに異なる色の発光ダイオード11r、11g、11bを照明制御データD1の要求する光強度とタイミングで高速に順次切替えさせるフィールドシーケンシャル駆動方式により照明部10を制御することができる。
【0024】
表示制御部92は、表示制御データD2に基づいて表示素子30の動作パラメータを設定し、表示素子30の表示動作を制御する。表示素子30の表示動作制御は、例えば、表示素子30の個々のマイクロミラーをPWM方式によりON/OFF制御することにより行われる。また、表示制御部92は、例えば、照明部10の出射する照明光Cをスクリーン60の方向へ反射させる時に、発光ダイオード11r、11g、11bの発光色を基本色として利用し、加法混合方式による混色又はフルカラーで表示画像Mを表現することができる。
【0025】
表示制御部92には、動作パラメータや検査用画像を記憶領域に格納する記憶部93(例えば、Flash ROM)が接続されている。表示制御部92は、通常表示動作において、記憶部93から読み込んだ動作パラメータに基づいて表示素子30の表示動作を制御する。通常、記憶部93における動作パラメータの記憶領域M1は、検査用画像の記憶領域M2に比べて小さい(図4参照)。
【0026】
検査用画像は、ヘッドアップディスプレイ装置100の組立・検査工程で使用される。例えば、検査用画像は、表示動作・表示性能の評価に適した画像データであり、単色又は数色で表される幾何模様や、グラデーションなどの模様で表される。通常、記憶部93には、複数の検査用画像が格納されており、各検査用画像に対応するコマンドの実行に応じて、表示制御部92が記憶部93から対応する検査用画像を読み込み、表示素子30に検査用画像を表示させる。ただし、検査後に車両に搭載された状態のヘッドアップディスプレイ装置100では、検査用画像は殆ど利用されない。
【0027】
表示制御部92は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能的な構成として、誤り検出手段と、表示操作停止手段とを備える。誤り検出手段は、記憶部93の記憶領域に対して誤り検出動作を実行する。表示動作停止手段は、誤り検出動作の結果、記憶部93の記憶領域に誤りを検出した場合、表示素子30の表示動作を停止させる。以下、本発明の要部である誤り検出手段について、図4を参照して説明する。
【0028】
誤り検出手段は、例えば、ヘッドアップディスプレイ装置100の起動時に、記憶部93に格納されているデータに誤り(エラー)が発生していないかの誤り検出動作(エラーチェック)を行う。誤り検出動作は、例えば、巡回冗長検査(CRC:Cyclic Redundancy Check)を用いて実施する。このようなCRC等を用いた記憶部93の誤り検出動作では、誤り検出を全く生じなくすることは技術的に難しい。その理由は、記憶部93では、不良品でなくとも、時間経過によるビットの電荷抜け(Bit flip)が生じることがあるからである。そして、この電荷抜けが生じると、起動時の誤り検出動作でエラーと見なされ、ヘッドアップディスプレイ装置100が動作を停止してしまう。
【0029】
図4(A)に示すように、従来の誤り検出手段は、記憶部93の全ての記憶領域を対象として誤り検出動作を実施していた。一方、図4(B)に示すように、本実施例の誤り検出手段は、記憶部93の記憶領域の内、一部の領域のみを対象として誤り検出動作を実施する。このような本実施例の誤り検出手段によれば、誤り検出動作の対象領域を限定することで、電荷抜けに起因する誤り検出の可能性を低減できる。
【0030】
また、図4(B)に示すように、本実施例の誤り検出手段は、記憶部93の記憶領域の内、動作パラメータが格納される記憶領域M1は誤り検出動作を実施し、検査用画像が格納される記憶領域M2は誤り検出動作を実施しない。このような本実施例の誤り検出手段によれば、動作パラメータの記憶領域M1については、適切に誤りを検出し、誤り検出に応じてヘッドアップディスプレイ装置100の動作を確実に停止させることができる。一方、車両搭載状態で殆ど利用されない検査用画像の記憶領域M2については、誤り検出動作を省くことにより、電荷抜けによる誤り検出の可能性を低減し、電荷抜けに起因するヘッドアップディスプレイ装置100の動作停止を防止できる。
【0031】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0032】
例えば、表示素子30は、DMDに限定されず、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)や有機EL(organic electro-luminescence)であってもよい。
【0033】
また、誤り検出手段による誤り検出動作は、ヘッドアップディスプレイ装置100の起動時に限らず、動作中に実施してもよい。
【0034】
また、誤り検出手段による誤り検出動作は、CRC以外の検査方式であってもよい。
【0035】
また、表示動作停止手段による表示停止動作には、表示素子30の動作終了、光源部11の消灯(電源供給の停止、PWMのDuty比0など)、表示制御部92又は制御部90のオフ、凹面ミラー75の非表示姿勢(パーキングポジション)への移行、変圧素子オフ、バッテリ電源の遮断などが含まれる。
【符号の説明】
【0036】
100 ヘッドアップディスプレイ装置
200 ウインドシールド
250 運転者
300 映像信号
10 照明部
11 光源部
11b 発光ダイオード
11g 発光ダイオード
11r 発光ダイオード
20 照明光学系
30 表示素子
50 投射光学系
60 スクリーン
70 平面ミラー
75 凹面ミラー(凹面鏡)
80 ハウジング
81 窓部
90 制御部
91 照明制御部
92 表示制御部(表示コントローラ)
93 記憶部
図1
図2
図3
図4