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特開2025-20600アジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置及び温度制御方法
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  • 特開-アジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置及び温度制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020600
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】アジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/42 20060101AFI20250205BHJP
   B60P 3/16 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B28C5/42
B60P3/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124084
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】小山 広光
(72)【発明者】
【氏名】宇野 洋志城
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 秀人
(72)【発明者】
【氏名】岡明 森衛
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩太
(72)【発明者】
【氏名】月山 圭二
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB02
4G056CC24
4G056CD36
4G056CD64
4G056CD68
4G056CE01
4G056CE05
(57)【要約】
【目的】
ドラム内に収容したフレッシュコンクリートを効率的に且つ確実に温度管理可能であり、しかも、アジテータ車を大幅に改造することなく適用可能なアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置及び温度制御方法を提供する。
【構成】
アジテータ車のドラム表面にペルチェ素子を面接触状態で配設させ、ドラム表面に面接触する側を冷却面又は加熱面とする構成であるアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置、及び
アジテータ車のドラム表面にペルチェ素子を面接触状態で配設し、該ペルチェ素子のドラム表面に面接触する側が冷却面となるように又は加熱面となるように前記ペルチェ素子に給電することにより、前記ドラム表面を冷却又は加熱することによりドラム内のフレッシュコンクリートの温度を制御する構成であるアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジテータ車のドラム表面にペルチェ素子を面接触状態で配設させ、ドラム表面に面接触する側を冷却面又は加熱面とする構成であることを特徴とするアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項2】
ドラムの温度及び該ドラム内のフレッシュコンクリートの温度のいずれか一方又は両方の温度を計測する計測部と、該計測部により計測された温度に基づきペルチェ素子への給電を制御する制御部を有する構成であることを特徴とする請求項1に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項3】
前記ペルチェ素子を既存のアジテータ車のドラムに着脱可能に配設させる構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項4】
通気性を有するシート体の一方の面にペルチェ素子を取り付け、この一方の面側がドラム表面に密接状態となるように前記シート体をドラム表面に取り付ける構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項5】
断熱性を有するシート体の一方の面にペルチェ素子を取り付け、この一方の面側がドラム表面に密接状態となるように前記シート体をドラム表面に取り付ける構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項6】
ペルチェ素子を複数の帯状に連設し、この複数の帯状のペルチェ素子をドラム表面に巻き回す構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項7】
前記ペルチェ素子の極性を変えることにより、ドラム表面側に面接触する側が暑中は冷却面とし、寒中は加熱面とする構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項8】
前記ペルチェ素子の電源部がアジテータ車の車体側に配設され、スリップリング又はトロリー線を介して電源部からペルチェ素子に給電される構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項9】
日光のドラムへの直接照射を抑制する日除け部材をアジテータ車に配設する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【請求項10】
アジテータ車のドラム表面にペルチェ素子を面接触状態で配設し、該ペルチェ素子のドラム表面に面接触する側が冷却面となるように又は加熱面となるように前記ペルチェ素子に給電することにより、前記ドラム表面を冷却又は加熱することによりドラム内のフレッシュコンクリートの温度を制御する構成であることを特徴とするアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【請求項11】
日平均気温が25℃超となったときにアジテータ車のドラムの温度が20~35℃の範囲内となるように冷却する構成であることを特徴とする請求項10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【請求項12】
暑中におけるフレッシュコンクリート積載前のアジテータ車のドラムの温度が20~35℃の範囲内となるように予め冷却しておく構成であることを特徴とする請求項10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【請求項13】
暑中におけるフレッシュコンクリート積載済のアジテータ車のドラムの温度が5~20℃の範囲内となるように冷却する構成であることを特徴とする請求項10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【請求項14】
日平均気温が4℃以下となったときにアジテータ車のドラムの温度が5~20℃の範囲内となるように加熱する構成であることを特徴とする請求項10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【請求項15】
寒中におけるフレッシュコンクリート積載前のアジテータ車のドラムの温度が5~20℃の範囲内となるように予め加熱しておく構成であることを特徴とする請求項10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【請求項16】
寒中におけるフレッシュコンクリート積載済のアジテータ車のドラムの温度が5~20℃の範囲内となるように加熱する構成であることを特徴とする請求項10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置及び温度制御方法に関し、詳しくは、コンクリート工場で製造されたフレッシュコンクリートをアジテータ車のドラムに収容して建設現場へ移送する際にドラム内のフレッシュコンクリートの品質低下を防ぐために温度を調整する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート工場で製造されたフレッシュコンクリートは、一般的にアジテータ車のドラムに収容して現場に移送される。この移送の際、暑中の高い気温や直射日光、或いはフレッシュコンクリート自体の水和反応熱等によってドラム内のフレッシュコンクリートの温度が規定値以上に上昇した場合、品質低下が生じる惧れがある。
JIS(日本工業規格)、土木学会及び建築学会等が定める規定範囲内の品質で製造されたフレッシュコンクリートは、練混ぜから打ち終わりまでの許容時間が日平均気温25℃以下の場合は2.0時間以内、25℃を超える場合は1.5時間以内で行うとされ、練混ぜから荷下ろし地点到着までの許容時間が外気温によらず1.5時間以内とされている。また、打ち込み時のコンクリート温度は35℃以下とされている。
【0003】
材料の温度変化とフレッシュコンクリートの温度変化の相対関係は、一般的に、セメント±8℃、水±4℃、骨材±2℃の温度変化につき、フレッシュコンクリートの温度変化は±1℃であるといわれている。したがって、移送中に、直射日光や高外気温による材料の温度上昇や水和反応によってドラム内のフレッシュコンクリートの温度が上昇してJIS等で定める規定範囲外の温度となった場合、コールドジョイント発生等の欠陥の危険性が増すという問題が生じてしまう。
【0004】
そこで、フレッシュコンクリートを収容するドラムの温度上昇を抑制することによって、該ドラム内のフレッシュコンクリートの温度上昇を抑制して移送中におけるフレッシュコンクリートの品質低下を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【0005】
特許文献1には、ドラムの下方に冷却媒体を蓄留した冷却パンを配設し、この冷却パンの冷却媒体に回転するドラムの下部を浸漬することによりドラムを冷却する構成が記載されている。
【0006】
特許文献2には、ドラムの長手方向に沿って水の噴射口を間欠的に複数配置し、回転するドラムの表面全体に水を分散して吹き付けることによりドラムを冷却する構成が記載されている。
【0007】
特許文献3には、ドラムの上下に2本の配管を配設し、水タンクから圧送した水をドラム表面に吹き付け、吹き付けられた水がドラム表面で蒸発する際の気化熱によりドラムを冷却する構成が記載されている。
【0008】
特許文献4には、表面に複数の溝が形成された水運搬シートをドラムの表面に配置し、シートの溝とドラム表面とによって水路を形成し、この水路に水を供給することによりドラムを冷却する構成が記載されている。
【0009】
特許文献5には、ドラムの外側に外殻を設け、ドラムと外殻との間隙に熱媒体を流動させることによりドラムの温度調節を行う構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4601384号
【特許文献2】特開2008-246816号
【特許文献3】実用新案登録第3154220号
【特許文献4】特開2017-170863号
【特許文献5】特開2013-244635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1~5の技術では、冷却手段としていずれも水を主とする流体冷媒を用いている。
この流体冷媒による冷却構成は、特許文献1~5のいずれの技術においても冷却のための特定の機構(例えば、特許文献1では冷却パン等)を追加架装する等の改造が必須である。
【0012】
また、冷却媒体として水を用いる場合、ドラム内のフレッシュコンクリートの冷却が最も必要である暑中、特に盛夏晴天時の日中においては蒸発によって失われる水分量も多くなるため、安定した状態で且つ持続的に冷却を行うためには常に水を補充供給する必要があり、補充用タンク及び補充用の水という重量物を車載しなければならない。
貨物自動車の一つであるアジテータ車は、道路交通法や貨物自動車運送事業法等の法律に基づいて最大積載量が規定されているため、その規定の範囲内に収まるように積載するフレッシュコンクリートの容量は複数段階に制限されている。従って、補充用タンク及び補充用の水を積載した場合、これらの重量も加わるため、この補充用タンク及び補充用の水の重量分だけフレッシュコンクリートの積載量を減らすか、或いは上の段階の最大積載量の車両を用いる必要がある。
【0013】
更に、特許文献5の技術の場合、既存のアジテータ車に冷却用の特定の機構を追加架装することに収まらず、専用構成を有するタンク(外殻を有する二重構造のタンク)を製造し、これを用いるという新設計・新製造のアジテータ車が必要となる。
【0014】
従って、特許文献1~5等に記載されている流体冷媒を用いる冷却構成では、アジテータ車の大幅な改造や車両の大型化、或いは新設計・新製造の車両が必要となる等の高コスト化が避けられないという問題点を有している。
【0015】
そこで本発明の課題は、ドラム内に収容したフレッシュコンクリートを効率的に且つ確実に温度管理可能であり、しかも、アジテータ車を大幅に改造することなく適用可能なアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置及び温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0017】
1.アジテータ車のドラム表面にペルチェ素子を面接触状態で配設させ、ドラム表面に面接触する側を冷却面又は加熱面とする構成であることを特徴とするアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0018】
2.ドラムの温度及び該ドラム内のフレッシュコンクリートの温度のいずれか一方又は両方の温度を計測する計測部と、該計測部により計測された温度に基づきペルチェ素子への給電を制御する制御部を有する構成であることを特徴とする上記1に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0019】
3.前記ペルチェ素子を既存のアジテータ車のドラムに着脱可能に配設させる構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0020】
4.通気性を有するシート体の一方の面にペルチェ素子を取り付け、この一方の面側がドラム表面に密接状態となるように前記シート体をドラム表面に取り付ける構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0021】
5.断熱性を有するシート体の一方の面にペルチェ素子を取り付け、この一方の面側がドラム表面に密接状態となるように前記シート体をドラム表面に取り付ける構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0022】
6.ペルチェ素子を複数の帯状に連設し、この複数の帯状のペルチェ素子をドラム表面に巻き回す構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0023】
7.前記ペルチェ素子の極性を変えることにより、ドラム表面側に面接触する側が暑中は冷却面とし、寒中は加熱面とする構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0024】
8.前記ペルチェ素子の電源部がアジテータ車の車体側に配設され、スリップリング又はトロリー線を介して電源部からペルチェ素子に給電される構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0025】
9.日光のドラムへの直接照射を抑制する日除け部材をアジテータ車に配設する構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置。
【0026】
10.アジテータ車のドラム表面にペルチェ素子を面接触状態で配設し、該ペルチェ素子のドラム表面に面接触する側が冷却面となるように又は加熱面となるように前記ペルチェ素子に給電することにより、前記ドラム表面を冷却又は加熱することによりドラム内のフレッシュコンクリートの温度を制御する構成であることを特徴とするアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【0027】
11.日中の平均気温が25℃超となったときにアジテータ車のドラムの温度が20~35℃の範囲内となるように冷却する構成であることを特徴とする上記10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【0028】
12.暑中におけるフレッシュコンクリート積載前のアジテータ車のドラムの温度が20~35℃の範囲内となるように予め冷却しておく構成であることを特徴とする上記10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【0029】
13.暑中におけるフレッシュコンクリート積載済のアジテータ車のドラムの温度が5~20℃の範囲内となるように冷却する構成であることを特徴とする上記10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【0030】
14.日中の平均気温が4℃以下となったときにアジテータ車のドラムの温度が5~20℃の範囲内となるように加熱する構成であることを特徴とする上記10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【0031】
15.寒中におけるフレッシュコンクリート積載前のアジテータ車のドラムの温度が5~20℃の範囲内となるように予め加熱しておく構成であることを特徴とする上記10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【0032】
16.寒中におけるフレッシュコンクリート積載済のアジテータ車のドラムの温度が5~20℃の範囲内となるように加熱する構成であることを特徴とする上記10に記載のアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御方法。
【発明の効果】
【0033】
請求項1又は10に示す発明によれば、ドラム内に収容したフレッシュコンクリートを効率的に且つ確実に温度管理可能であり、しかも、アジテータ車を大幅に改造することなく適用可能なアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置及び温度制御方法を提供することができる。
【0034】
特に、水を主とする冷媒を用いていないため冷媒漏れのおそれが無いだけでなく、補充用タンク及び補充用の水並びに水を供給する機構等のような重量の嵩む特定の機構を追加架装する必要がない。従って、最大積載量に重量増を招くことなく簡素な構成の追加だけでドラム及び該ドラムに収容したフレッシュコンクリートの温度制御が可能である。
また、ペルチェ素子は温度応答性が良いため、速やかに冷却又は加熱開始可能である。
【0035】
請求項2に示す発明によれば、計測温度に基づき移送中のフレッシュコンクリートの温度を品質保持可能な所望温度に制御することができる。
【0036】
請求項3に示す発明によれば、既存のアジテータ車に極めて容易に適用することができる。
【0037】
請求項4に示す発明によれば、ドラムに面接触する側を冷却面とした場合にはシート体側が加熱面となるが、このシート体が通気性を有するため放熱することができるため、熱効率の低下を防止乃至は抑制することができる。通気性を有するシート体としては、例えば、メッシュシートや網状シートを挙げることができる。
【0038】
請求項5に示す発明によれば、ドラムに面接触する側を加熱面として冬季の気温低下時の際に、加熱効率の維持することができるため、ドラム及び該ドラム内のフレッシュコンクリートの低温化を防ぐことができる。断熱性を有するシート体としては、例えば、発泡樹脂を塗布したシート、アルミ蒸着シート、キルティングを施したシートを挙げることができる。
【0039】
請求項6に示す発明によれば、帯状のペルチェ素子をドラム表面に巻き回すだけで配設することができる。
【0040】
請求項7に示す発明によれば、ペルチェ素子の極性を変えることにより、ドラム及び該ドラムに収容したフレッシュコンクリートを夏季は冷却、冬季は加熱することができるので、一年を通してフレッシュコンクリートを適切な温度帯に制御することができる。
【0041】
請求項8に示す発明によれば、ペルチェ素子の電源としては車載バッテリー等を用いることができる。また、スリップリング等を利用することで、回転体であるドラムに配設されるペルチェ素子に対して、既存の技術を用いて電源を供給することができる。
【0042】
請求項9に示す発明によれば、ドラムを日陰状態とすることによって直射日光によるドラムの温度上昇を抑制乃至は防ぐことができる。
【0043】
請求項11に示す発明によれば、暑中コンクリートとして考慮する必要がある時期に移送中のフレッシュコンクリートの品質を保持することができる。
【0044】
請求項12に示す発明によれば、日平均気温が25℃を超える暑中においてフレッシュコンクリートに熱が直接伝達するドラムをフレッシュコンクリート積載前に予め冷却しておくことにより積載するフレッシュコンクリートを品質保持可能な温度である35℃以下に保持することができる。
【0045】
請求項13に示す発明によれば、日平均気温が25℃を超える暑中においてフレッシュコンクリートに熱が直接伝達するドラムを冷却することにより該ドラム内に積載されているフレッシュコンクリートを品質保持可能な温度である35℃以下に保持することができる。
【0046】
請求項14に示す発明によれば、寒中コンクリートして考慮する必要がある時期に移送中のフレッシュコンクリートの品質を保持することができる。
【0047】
請求項15に示す発明によれば、日平均気温が4℃を下回る寒中においてフレッシュコンクリートに熱が直接伝達するドラムをフレッシュコンクリート積載前に予め加熱しておくことにより積載するフレッシュコンクリートを品質保持可能な温度である5℃以上に保持することができる。
【0048】
請求項16に示す発明によれば、日平均気温が4℃を下回る寒中においてフレッシュコンクリートに熱が直接伝達するドラムを加熱することにより該ドラム内に積載されているフレッシュコンクリートを品質保持可能な温度である5℃以上に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明に係るアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置の一実施例を示す概略構成図
図2】ドラム表面へのペルチェ素子の配設構成の一例を示す概略斜視図
図3】ドラム表面へのペルチェ素子の取付構成の一例を示す一部概略平面図
図4】ドラム表面へのペルチェ素子の取付構成の一例を示す一部概略断面図
図5】日除け部材の一例を示す概略斜視図
図6図1に示すアジテータ車に図5に示す日除け部材を付加した構成の一例を示す概略構成図
図7】ドラム表面へのペルチェ素子の取付構成の他の例を示す一部概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係るアジテータ車のフレッシュコンクリートの温度制御装置及び温度制御方法(以下、単に、温度制御装置、温度制御方法と言うこともある。)について説明する。
【0051】
前述したように、JIS(日本工業規格)、土木学会及び建築学会等が定める規定範囲内の品質で製造されたフレッシュコンクリートは、練混ぜから打ち終わりまでの許容時間が日平均気温25℃以下の場合は2.0時間以内、25℃を超える場合は1.5時間以内で行うとされ、練混ぜから荷下ろし地点到着までの許容時間が外気温によらず1.5時間以内とされている。また、打ち込み時のコンクリート温度は35℃以下とされている。
【0052】
日平均気温が25℃未満であればアジテータ車の移送中のフレッシュコンクリートの温度については特段の調整は不要であり、打ち込み後の養生にさえ注意すればよい。
しかし、日平均気温が25℃以上の暑中の場合には、外気温のみならず直射日光の照射によってアジテータ車のドラムの温度が上がり、この熱くなったドラムの熱が内部のフレッシュコンクリートに直接伝達して温度上昇して品質低下が生じる。
品質低下を防止するには、暑中においてはドラム2内のフレッシュコンクリートの温度が35℃を超えないようにドラム2の温度を調整することが必要である。
【0053】
即ち、日平均気温が25℃以上の時期でのフレッシュコンクリートの移送の際のアジテータ車のドラム温度を、日平均気温が25℃未満の際のドラム温度となるように冷却(温度調整・温度制御)すれば、移送中におけるフレッシュコンクリートの品質保持が可能となるものである。
【0054】
以下、本発明の温度制御装置、温度制御方法について添付図面に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、
本発明の温度制御装置は、アジテータ車1のドラム2表面にペルチェ素子3を面接触状態で配設させ、ドラム2表面に面接触する側を冷却面とする構成を主構成とするものである。
また本発明の温度制御方法は、アジテータ車1のドラム2表面にペルチェ素子3を面接触状態で配設し、該ペルチェ素子3のドラム2表面に面接触する側が冷却面となるように前記ペルチェ素子3に給電することにより、前記ドラム2表面を冷却することによりドラム2内のフレッシュコンクリートの温度を制御する構成を主構成とするものである。
【0055】
図1及び図2に示すように、ペルチェ素子3はドラム2の略全体を効率的に冷却するために、該ドラム2の表面の全体に適宜間隔を開けて多数個が取り付けられる。
取付個数としては、ドラム2の容量とペルチェ素子3の冷却能力に応じて適宜適正な個数が取り付けられるが、例えば、アジテータ車1が10トン車・ドラム2の容量が約4.0~4.4mである場合、30W/個のペルチェ素子を90個用いることにより1870W(30W×90個=2700Wの効率的な稼働率70%として算出)に相当する熱エネルギーの除去能力、即ち、ドラム温度を速やかに下げることができる冷却能力を有しており、酷暑時期においても充分対応可能である。
【0056】
また、ドラム3へのペルチェ素子3の取付構成としては、既存のアジテータ車に冷却パン・冷却水タンク等を追加架装する等の大幅な改造を施したり、或いは外殻を有する二重構造の冷却タンク等の専用構成を有するタンクを装備する等の新設計・新製造のアジテータ車を用いることなく、既存の一般構成のアジテータ車に適用することができるように、ペルチェ素子3を既存のアジテータ車1のドラム2に着脱可能な構成であることが好ましい。
【0057】
ペルチェ素子3の着脱可能構成としては、例えば、図3に示すように、通気性を有するシート体4の一方の面にペルチェ素子3を取り付け、この一方の面側がドラム2表面に密接状態となるように前記シート体4をドラム表面に取り付ける構成を挙げることができる。図3において、符号31はペルチェ素子3の配線を示す。
ペルチェ素子3は、一方の面が冷却面である場合、他方の面は放熱面(加熱面)となる。即ち、ドラム2に面接触する側を冷却面とした場合にはシート体4側が加熱面となるが、このシート体4が通気性を有することから放熱することができる。従って、熱効率の低下を防止乃至は抑制することができる。通気性を有するシート体4としては、例えば、メッシュシートや図3に示すような網状シートを挙げることができる。
【0058】
また、図4に示すように、ペルチェ素子3を複数の帯状に連設し、この複数の帯状のペルチェ素子3をドラム2表面の表面に巻き回す構成を挙げることもできる。必要とする冷却能力に応じて帯状の数を増減することにより対応することができる。図4において、符号31はペルチェ素子3の配線を示す。
【0059】
上記したようにドラム2表面に配設したペルチェ素子3は、電源部をアジテータ車1の車体側に配設し、この電源部からスリップリング又はトロリー線を介して給電する構成とすることが好ましい。図2に示す実施例では、トロリー線5を用いている。尚、スリップリング、トロリー線については公知公用のものを特別の制限なく用いることができる。
尚、電源部としては、既設の車載バッテリー、或いは追加の車載バッテリー等を用いることができる。
【0060】
また、本発明の温度制御装置は、ドラム2の温度及び該ドラム2内のフレッシュコンクリートの温度のいずれか一方又は両方の温度を計測する計測部と、該計測部により計測された温度に基づきペルチェ素子3への給電を制御する制御部と、を有する構成とすることが好ましい。
かかる構成によれば、計測温度に基づき移送中のフレッシュコンクリートの温度を品質保持可能な所望温度に制御することができる。
【0061】
先ず、日平均気温が25℃超となったときにアジテータ車1のドラム2の温度が20~35℃の範囲内となるように冷却する構成である。
かかる構成によれば、日平均気温が25℃超の暑中においてフレッシュコンクリートに熱が直接伝達するドラム2を冷却することによりフレッシュコンクリートを品質保持可能な温度である35℃以下に保持することができる。
【0062】
ペルチェ素子3によるドラム2の冷却は、ドラム2の温度が20~35℃の範囲内となるように冷却することが好ましく、フレッシュコンクリートを積載する前に予め冷却しておく構成、フレッシュコンクリート積載済のドラム2を冷却する構成を挙げることができる。
【0063】
本発明の温度制御装置、温度制御方法によれば、ドラム2内に収容したフレッシュコンクリートを効率的に且つ確実に温度管理可能であり、しかも、アジテータ車1を大幅に改造することなく適用可能である。
特に、水を主とする冷媒を用いていないため冷媒漏れのおそれが無いだけでなく、補充用タンク及び補充用の水並びに水を供給する機構等のような重量の嵩む特定の機構を追加架装する必要がない。従って、最大積載量に重量増を招くことなく簡素な構成の追加だけでドラム2及び該ドラムに収容したフレッシュコンクリートの温度制御が可能である。
また、ペルチェ素子3は温度応答性が良いため、速やかに冷却開始可能である。
【0064】
上記説明した本発明の温度制御装置において、冷却効果をより向上させるために、ドラム2への日光の直接照射を抑制する図5に示すような日除け部材6をアジテータ車1に図6に示すように配設する構成とすることもできる。図5及び図6において、符号61は日除け部材6を支持する柱部材や梁部材等の骨格部であり、符号62は遮光シートである。
かかる構成によれば、ドラム2を日陰状態とすることによって直射日光によるドラム2の温度上昇を抑制乃至は防ぐことができる。従って、より効率的にペルチェ素子3による冷却効果を発揮させることができる。
【0065】
尚、本発明の温度制御装置、温度制御方法は、上記した暑中コンクリートにおいてのみ適用されるものではなく、寒中コンクリートにおいても適用可能である。
即ち、前記した暑中におけるフレッシュコンクリートの温度制御装置・温度制御方法では、ペルチェ素子3のドラム2に接する側を冷却面としていたが、寒中の場合はペルチェ素子2のドラム2に接する側を加熱面とする。
【0066】
ペルチェ素子3は単に極性を変えることにより、ドラム2表面側に面接触する側を冷却面としたり、加熱面としたり、切り替え可能である。このペルチェ素子の極性の切り替えにより、ドラム2及び該ドラム2に収容したフレッシュコンクリートを夏季は冷却、冬季は加熱することができるので、一年を通してフレッシュコンクリートを適切な温度帯に制御することができる。
【0067】
即ち、日平均気温が4℃以下となったときにアジテータ車1のドラム2の温度が5~20℃の範囲内となるように加熱する構成とすることができる。
かかる構成によれば、日平均気温が4℃以下の寒中においてフレッシュコンクリートに熱が直接伝達するドラム2を加熱することによりフレッシュコンクリートを品質保持可能な温度である5℃以上に保持することができる。
【0068】
ペルチェ素子3によるドラム2の加熱は、ドラム2の温度が5~20℃の範囲内となるように加熱することが好ましく、フレッシュコンクリートを積載する前に予め加熱しておく構成、フレッシュコンクリート積載済のドラム2を加熱する構成を挙げることができる。
【0069】
日平均気温が4℃以下の寒中の場合、ペルチェ素子3による加熱をより効果的にするために通気性を有するシート体4に代えて、図7に示すような断熱性を有するシート体4を用いることが好ましい。この断熱性を有するシート体4の一方の面にペルチェ素子3を取り付け、この一方の面側がドラム2表面に密接状態となるように前記シート体4をドラム2表面に取り付ける構成でする。
かかる構成によれば、ドラム2に面接触する側を加熱面として冬季の気温低下時の際に、加熱効率の維持することができるため、ドラム2及び該ドラム2内のフレッシュコンクリートの低温化を防ぐことができる。断熱性を有するシート体4としては、例えば、発泡樹脂を塗布したシート、アルミ蒸着シート、キルティングを施したシートを挙げることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 アジテータ車
2 ドラム
3 ペルチェ素子
31 配線
4 シート体
5 トロリー線
6 日除け部材
61 骨格部
62 遮光シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7