(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020602
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】線香容器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
A01M1/20 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124087
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 夏基
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA13
2B121CA16
2B121CA20
2B121CA21
2B121CA31
2B121CA52
2B121CA62
2B121CA75
2B121CA81
2B121EA21
2B121FA15
(57)【要約】
【課題】表面温度が上昇するのを抑制できるとともに、燃焼状態を定常化させて燃焼時間の長大化を抑制することができ、安定した殺虫効果や忌避効果等が得られる線香容器を提供する。
【解決手段】線香Cを載置して燃焼させるための載置部材14が底部に配置された本体容器10と、載置部材14との間で線香Cを挟持して固定するための固定部材27と、線香Cの燃焼煙を外部に排出するための複数の排煙孔22が設けられた天板部21とを有し、本体容器10の開口部10Aを覆うように開閉自在に設けられる蓋体20と、を備え、蓋体20は、断面ハット状とされ、天板部21と離間して設けられる中板部23を内部に有し、中板部23は、天板部21に設けられた複数の排煙孔22と対応した位置で複数の貫通孔24が設けられており、天板部21と中板部23との間に、複数の排煙孔22と複数の貫通孔24との間を連通させる筒状の立壁部25が備えられている。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線香を載置して燃焼させるための載置部材が底部に配置された本体容器と、
前記載置部材との間で前記線香を挟持して固定するための固定部材と、前記線香の燃焼煙を外部に排出するための複数の排煙孔が設けられた天板部とを有し、前記本体容器の開口部を覆うように開閉自在に設けられる蓋体と、
を備えた線香容器であって、
前記蓋体は、断面ハット状とされ、前記天板部と離間して設けられる中板部を内部に有し、
前記中板部は、前記天板部に設けられた前記複数の排煙孔と対応した位置で複数の貫通孔が設けられており、
さらに、前記天板部と前記中板部との間に、前記複数の排煙孔と前記複数の貫通孔との間を連通させる筒状の立壁部が備えられていることを特徴とする線香容器。
【請求項2】
前記蓋体は、前記天板部と前記中板部とが1.5mm以上10mm以下で離間していることを特徴とする請求項1に記載の線香容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線香容器に関し、特に、線香を安全且つ安定的に燃焼させるための線香容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、線香の一種である蚊取り線香の使用方法としては、例えば、線香立てに支持させて燃焼させるか、あるいは、金属等からなる線香容器の内部に平置きして燃焼させる方法が知られている。なかでも、排煙孔が設けられた蓋体を備える線香容器は、持ち運びが容易で安全性も確保できることから、様々な場所において用いられている。
【0003】
一方、蓋体付きの線香容器を使用する場合、線香の燃焼熱によって蓋体や本体容器の表面温度が上昇するおそれがあるため、使用の際は容器表面に触れるのを避ける等の注意が必要であった。また、線香の表面の一部が蓋体で覆われることで、線香が燃焼し難くなり、結果として燃焼時間が長くなり過ぎたり、立ち消えが生じたりする等の懸念もあった。また、このような燃焼時間の長大化や立ち消えが生じた場合、線香の燃焼状態が不十分なものとなり、安定した殺虫効果や忌避効果等が得られなくなるという懸念もあった。
【0004】
上記のような、蓋体付きの線香容器を使用する際の問題点を解消するため、例えば、本体容器の底面に複数の小孔を設けることで、この位置から空気を供給し、線香を安全且つ定常的に燃焼させることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、特許文献1には、容器底面に部分的に凹凸を形成して、線香が据え置かれるシート材を底上げすることで、シート材と容器底面との間の空気層を形成し、この空気層によって断熱効果を高めることも開示されている。
【0005】
また、本体容器の内部に配置される中蓋に環状フランジを設けることで、線香の燃焼時に局所的な温度上昇が生じるのを抑制することも提案されている(例えば、特許文献2を参照)。また、特許文献2には、蓋体付きの線香容器を、例えば、吊り下げ式として使用するための吊り下げ具を備えた構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-187205号公報
【特許文献2】特開2002-272346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、特許文献2に開示されたような吊り下げ式の線香容器は、例えば、キャンプやハイキング等の屋外でのレジャーや、祭り等のイベント等に携行することで、使用者が蚊や害虫等に刺されたりするのを防止する目的で用いられる機会が増えている。また、このような吊り下げ式の線香容器は、線香の位置ずれや落下が生じるのを防止するため、上述した蓋体を備えることが必須となる。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されたような吊り下げ式の線香容器を用いて、例えば、太巻き仕様の蚊取り線香を燃焼させた場合、その燃焼熱量や燃焼姿勢等に起因し、特に蓋体の表面温度が上昇することがある。一般に、線香容器の本体側には不燃性を有する厚手のシート材が配置されていることから、本体の底面側の表面温度の上昇は抑制されているものの、蓋体の表面温度は上昇するため、使用者が蓋体に直接触れた場合に熱さを感じてしまう等の懸念があった。
【0009】
また、蓋体付きの線香容器の内部で太巻き仕様の蚊取り線香を燃焼させる場合、蓋体や本体容器に外部と連通する貫通孔を設けた場合でも、燃焼煙の外部への排煙や、燃焼状態の定常化に必要な空気の取り込みを十分に行うことが難しくなるおそれがある。このような場合、線香の燃焼速度が遅くなり、燃焼時間が長大化したり、立ち消えが生じたりする懸念もあった。また、燃焼時間の長大化や立ち消えが生じた場合には、上述したように、線香の燃焼状態が不十分なものとなり、安定した殺虫効果や忌避効果等が得られなくなるという懸念もあった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、表面の温度が上昇するのを抑制できるとともに、燃焼状態を定常化させて燃焼時間の長大化や立ち消えを防止することができ、安定した殺虫効果や忌避効果等が得られる線香容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討を重ねた。この結果、本体容器と組み合わせられる蓋体において、天板部に設けられた排煙孔と対応した位置で貫通孔が設けられた中板部を、天板部と離間した位置に配置した二重構造を採用することで、これらの間に空気層が確保されて熱伝導性が低くなり、太巻きの線香を使用した場合でも、蓋体の表面温度が上昇するのを抑制できることを知見した。また、排煙孔と貫通孔との間を連通させる筒状の立壁部を天板部と中板部との間に設けることで、本体容器を蓋体で覆いながら太巻きの線香を使用した場合においても、燃焼状態の定常化を阻害することなく、燃焼時間の長大化や立ち消えが生じるのを防止することが可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、線香を載置して燃焼させるための載置部材が底部に配置された本体容器と、前記載置部材との間で前記線香を挟持して固定するための固定部材と、前記線香の燃焼煙を外部に排出するための複数の排煙孔が設けられた天板部とを有し、前記本体容器の開口部を覆うように開閉自在に設けられる蓋体と、を備えた線香容器であって、前記蓋体は、断面ハット状とされ、前記天板部と離間して設けられる中板部を内部に有し、前記中板部は、前記天板部に設けられた前記複数の排煙孔と対応した位置で複数の貫通孔が設けられており、さらに、前記天板部と前記中板部との間に、前記複数の排煙孔と前記複数の貫通孔との間を連通させる筒状の立壁部が備えられていることを特徴とする線香容器を提供する。
【0013】
本発明の線香容器は、上記の態様において、前記蓋体は、前記天板部と前記中板部とが1.5mm以上10mm以下で離間している構成を採用できる。
【0014】
なお、本明細書で説明する天板部と中板部との離間寸法は、天板部と中板部との隙間、すなわち、これらの間に形成された空気層の厚み寸法のことをいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明の線香容器によれば、上記のように、まず、蓋体における天板部と離間した位置に中板部を配置することで、太巻きの線香を使用した場合でも、蓋体の表面温度が上昇するのを抑制できる。さらに、天板部と中板部との間に、排煙孔と貫通孔との間を連通させる筒状の立壁部を設けることで、本体容器を蓋体で覆いながら太巻きの線香を使用した場合においても、燃焼状態の定常化を阻害することなく、燃焼時間の長大化や立ち消えが生じるのを防止できる。
従って、使用者が蓋体に直接触れた場合であっても、熱さを感じてしまうことが無く、且つ、安定した殺虫効果や忌避効果等が得られる線香容器を提供することが可能となる。
本発明の他の目的、特徴及び利点については、添付図面を参照した以下の本発明の実施の形態の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係る線香容器の一実施形態について説明する図であり、本体容器の開口部側を覆うように蓋体を取り付けた状態を示す全体斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明に係る線香容器の一実施形態について説明する図であり、本体容器の開口部側を覆うように蓋体を取り付けた状態を、蓋体側からみた平面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明に係る線香容器の一実施形態について説明する図であり、
図2A中に示すA-A切断線からみた断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る線香容器の一実施形態について説明する図であり、蓋体に備えられる中板部、立壁部、及び空気層について詳細に示す部分破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る線香容器の実施の形態を挙げ、図面を適宜参照しながら詳しく説明する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、本発明の線香容器の特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を若干拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更を施して実施することが可能である。
【0018】
[線香容器の全体構成]
図1は、本実施形態の線香容器1について説明する図で、本体容器10の開口部10A側を覆うように蓋体20を取り付けた状態を示す全体斜視図である。
図2Aは、本実施形態の線香容器1を蓋体20側からみた平面図であり、
図2Bは、
図2A中に示したA-A切断線からみた断面図である。
図3は、本実施形態の線香容器に備えられる蓋体20を示す図で、天板部21、中板部23及び空気層28について詳細に示す部分破断図である。
【0019】
本実施形態の線香容器1は、線香Cを載置して燃焼させるための載置部材14が底部に配置された本体容器10を備える。さらに、線香容器1は、載置部材14との間で線香Cを挟持して固定するための固定部材27と、線香Cの燃焼煙を外部に排出するための複数の排煙孔22が設けられた天板部21とを有し、本体容器10の開口部10Aを覆うように開閉自在に設けられる蓋体20を備える。
【0020】
そして、本実施形態の線香容器1は、蓋体20における天板部21と離間した位置に中板部23が設けられ、さらに、天板部21と中板部23との間に、天板部21に設けられる複数の排煙孔22と、この排煙孔22と対応した位置で中板部23に設けられる貫通孔24との間を連通させる筒状の立壁部25が設けられ、概略構成される。
【0021】
本実施形態の線香容器1は、
図2Bに示すように、載置部材14と固定部材27との間で線香Cを挟持することで、線香Cが上下左右にずれたりすることなく燃焼させることが可能なものである。このような構成により、線香容器1は、一般的な平置き形態での使用に加え、例えば、詳細を後述する吊り下げバネ15及び吊り下げフック16により、使用者が手で持つか、あるいは、ベルトやリュックサック等に吊り下げて屋外に携行したり、壁や柱等に取り付けられたフックに吊り下げたりすることができる。即ち、本実施形態の線香容器1は、線香Cを水平状態で燃焼させる形態に加え、線香Cを垂直状態とした場合でも、線香Cを安定して支持しながら燃焼させることが可能なものである。
【0022】
本実施形態の線香容器1に収容・セットして燃焼させる線香Cとしては、例えば、平面視渦巻状に巻回された蚊取り線香が挙げられる。このような蚊取り線香からなる線香Cとしては、例えば、殺虫成分、及び、蚊や害虫が忌避する成分を所定量で含むとともに、必要に応じて芳香成分等を選択的に含有する線香が挙げられる。また、線香Cとしては、例えば、殺虫成分、忌避成分、及び芳香成分のうちの少なくとも何れかを単独で含む線香も挙げられる。即ち、本実施形態において説明する線香Cには、殺虫成分等を含んでなる蚊取り線香等のみならず、例えば、忌避や芳香用途で用いられる線香等も含まれる。
【0023】
本体容器10は、
図1、
図2A及び
図2Bに示すように、開口部10Aを有する平面視円形状とされた缶状の容器であり、底部11の周縁から胴部12が延出した有底筒状に構成されている。
図示例の本体容器10は、胴部12における開口部10Aの近傍の位置が、胴部12の他の位置に比べて径方向の寸法が若干大きめの大径部10Bとされており、この部分に、後述する蓋体20のフランジ部20Bが収容可能に構成されている。
さらに、本体容器10の底部11には、
図2Bの断面図中では図示を省略しているが、線香Cの燃焼用空気を本体容器10の内部に取り込むための孔部が複数で設けられている。底部11に設けられた図示略の孔部から取り込まれる燃焼用空気は、後述の載置部材14を透過して線香Cに供給される。
【0024】
本体容器10の内部には、線香Cが載置可能な載置部材14が収容されており、図示例では、平面視円形状の載置部材14が底部11上に配置されている。
載置部材14の材質としては、線香Cの燃焼に耐えうる不燃性の材料であれば特に限定されず、例えば、ロックウールやグラスウール等、当該分野で通常用いられている不燃性材料を何ら制限なく採用することが可能である。
【0025】
さらに、図示例の本体容器10には、胴部12の側面に取り付けられる一端13a側を支点として回動可能に設けられ、開口部10Aに対して蓋体20を着脱可能に固定する固定フック13が備えられている。固定フック13は、本体容器10を平面視したとき、対向する位置で計2箇所に設けられている。線香容器1は、上記の固定フック13を有することで、本体容器10の開口部10Aに対して、蓋体20を開閉可能に取り付けることが可能となる。
【0026】
また、図示例の本体容器10には、上述したように、さらに、吊り下げバネ15及び吊り下げフック16が取り付けられている。吊り下げバネ15は、上記の固定フック13と同様、胴部12の側面に取り付けられる一端15a側を支点として回動可能に設けられる。
吊り下げフック16は、一端16aが、吊り下げバネ15の他端15b側に連結されている。また、吊り下げフック16の他端16b側は、例えば、ベルトやリュックサック、あるいは壁や柱に取り付けられた金具等に吊り下げることができるよう、断面略コの字状に構成されている。
【0027】
本体容器10における容器部分、即ち、底部11及び胴部12の材質としては、所定の耐熱性を有した金属材料等であれば、特に限定されず、例えば、一般的なSPTE(ぶりき)材料等を何ら制限なく採用することが可能である。即ち、本体容器10は、例えば、SPTE等からなる板材を絞り加工する工程等によって得ることが可能である。
【0028】
また、吊り下げバネ15の材質としても、特に限定されないが、例えば、一般的なステンレス材料や真鍮材料等を何ら制限なく採用することが可能である。
また、吊り下げフック16の材質としても、特に限定されず、例えば、本体容器10と同様、SPTE材料等を何ら制限なく採用することが可能である。
さらに、固定フック13の材質としても、上述した吊り下げバネ15と同じ材料を採用することが可能である。
【0029】
蓋体20は、上述したように、天板部21と、線香Cを固定するための固定部材27と、中板部23を有する。
また、蓋体20は、
図2B中に示す例のように、天板部21の周縁から胴部26が延出するとともに、胴部26の下端側に開口端20Aを有する、有天筒状に構成されている。
また、開口端20Aの近傍においては、この部分が径方向で外側に延出することでフランジ部20Bが形成されている。これにより、蓋体20は、概略で断面ハット状に構成されている。
【0030】
蓋体20は、上記の形状を有することで、本体容器10の開口部10Aを開閉自在に覆うことが可能な構成とされている。また、胴部26に設けられたフランジ部20Bに、本体容器10に備えられる固定フック13を係合させることで、蓋体20が本体容器10から外れることのないよう、強固に固定することが可能な構成とされている。
【0031】
天板部21は、蓋体20の上板として機能するものであり、上述したように、線香Cの燃焼煙を外部に排出するとともに、線香Cの燃焼に必要な空気を外部から取り込むための、複数の排煙孔22が穿設されている。
図2A等に示す例では、天板部21において、平面視円形状とされた複数の排煙孔22が格子状に配列されている。一方、図示例においては、天板部21の表面の一部が、商品名等を表示することを目的とした、複数の排煙孔22が設けられていない無孔エリア21aとされている。
【0032】
複数の排煙孔22のサイズは、特に限定されないが、図示例のような平面視円形状の排煙孔22とした場合、直径が5~30mmの範囲であることが好ましい。複数の排煙孔22の直径が5mm以上であれば、線香Cの燃焼で生じる排煙の上昇気流に伴い、外部からの燃焼用空気の取り入れと外部への排煙の両方の作用が効果的に得られる。また、複数の排煙孔22の直径が30mm以下であれば、天板部21ひいては蓋体20全体の十分な強度を確保できる。
上記の観点からは、複数の排煙孔22を平面視円形状とした場合の直径は、10~20mmの範囲であることがより好ましい。
【0033】
また、天板部21における複数の排煙孔22の形成数としても、特に限定されず、天板部21全体の面積も考慮し、十分な強度を確保しながら、上記のような排煙の上昇気流に伴う、外部からの燃焼用空気の取り入れと外部への排煙の両方の作用が得られること等を勘案しつつ、適宜決定すればよい。
【0034】
また、複数の排煙孔22の形状としても、図示例のような平面視円形状には限定されず、例えば、平面視矩形状や多角形状等、上記のような排煙の上昇気流に伴って得られる、外部からの燃焼用空気の取り入れと外部への排煙の両方の作用に加え、線香容器1としてのデザイン等も勘案しながら、適宜決定すればよい。
【0035】
また、天板部21における複数の排煙孔22の配列形態としても、図示例のような格子状配列には限定されず、例えば、その他の規則的な配列形態の他、ランダムな配列形態とすることも可能である。
【0036】
中板部23は、蓋体20の内部に配置され、天板部21と所定の距離で離間して設けられる。
図2Bに示すように、中板部23は、天板部21に穿設された複数の排煙孔22と対応した位置で、複数の貫通孔24が穿設されている。
【0037】
さらに、蓋体20は、天板部21と中板部23との間に、複数の排煙孔22と複数の貫通孔24との間を連通させる筒状の立壁部25が複数で備えられている。立壁部25は、筒状に構成されることで、内部が線香Cの燃焼煙の排出経路とされるとともに、外部から燃焼用空気を取り入れる経路としても機能する。
また、
図3の破断図にも示すように、蓋体20においては、天板部21と中板部23との間における立壁部25の外側、即ち、筒状の立壁部25の外側の空間が空気層28とされている(
図2Bの断面図も参照)。なお、
図3においては、説明の都合上、固定部材の図示を省略している。
【0038】
天板部21と中板部23との離間距離、即ち、これら天板部21と中板部23との隙間に確保された空気層28の厚み方向の寸法は、特に限定されず、天板部21及び中板部23の二重構造、並びに、空気層28による遮熱効果を勘案しながら適宜決定できる。このような観点からは、天板部21と中板部23とが1.5mm以上10mm以下で離間していることが好ましい。天板部21と中板部23とが1.5mm以上で離間していることで、空気層28の十分な厚みを確保でき、優れた遮熱性が得られる。また、天板部21と中板部23との離間距離を10mm以下に制限することで、中板部23が線香Cに近づきすぎることがなく、十分な遮熱性が得られるとともに、蓋体20全体をコンパクトに構成できる。
また、上記の観点からは、天板部21と中板部23とが1.7mm以上5.0mm以下で離間していることがより好ましい。
【0039】
複数の貫通孔24のサイズは、特に限定されないが、図示例のような平面視円形状の貫通孔24とした場合、先に説明した天板部21の排煙孔22の直径と同じ範囲であることが好ましい。即ち、複数の貫通孔24の直径が5mm以上であれば、線香Cの燃焼で生じる排煙の上昇気流に伴う、外部からの燃焼用空気の取り入れと外部への排煙の両方の作用が効果的に得られる。また、複数の貫通孔24の直径が30mm以下であれば、中板部23ひいては蓋体20全体の十分な強度を確保できる。
上記の観点からは、複数の貫通孔24を平面視円形状とした場合の直径は、10~20mmの範囲であることがより好ましい。
【0040】
また、中板部23における複数の貫通孔24の形成数、平面視形状、配列形態としても、特に限定されるものではない。上述したように、複数の貫通孔24は、立壁部25により、先に説明した複数の排煙孔22との間で連通されていることから、複数の排煙孔22に対応した形成数、平面視形状、配列形態とすればよい。
【0041】
蓋体20は、詳細を後述する固定部材27の部分を除き、本体容器10と同様、SPTE材料等のような所定の耐熱性を有した金属材料から構成することができる。即ち、蓋体20を構成する天板部21、胴部26及びフランジ部20Bは、本体容器10と同様、例えば、SPTE等からなる板材を絞り加工する工程等によって一体に同時成形することが可能である。この場合、立壁部25についても、天板部21を打ち抜き加工して複数の排煙孔22と同時形成することで、天板部21と一体に形成することができる。
【0042】
蓋体20の内部に設けられる中板部23については、天板部21、胴部26及びフランジ部20Bとは別部材として形成することができ、また、天板部21等と同様、SPTE材料等から構成することができる。
中板部23は、例えば、上記材料からなる板材を平面視円形状に打ち抜き加工するのと同時に、複数の貫通孔24を打ち抜き加工することで、1回の工程で得ることが可能である。
そして、上記工程で得られる中板部23を、天板部21に設けられる複数の排煙孔22、及び、立壁部25と位置合わせしながら、複数の貫通孔24の各々の周縁部を、かしめ加工等によって立壁部25の先端に固定する。これにより、天板部21及び立壁部25と中板部23とが一体化される。
【0043】
固定部材27は、上述したように、本体容器10の底部11上に配置された載置部材14との間で線香Cを挟持して固定する部材であり、図示例においては、蓋体20の開口端20Aの近傍に、この開口端20A側を覆うように張架されている。詳細な図示は省略するが、固定部材27の周縁部は、例えば、耐熱性を有する接着材料等により、開口端20Aの近傍に接着されている。
【0044】
固定部材27の材質としても、線香Cの燃焼に耐えうる程度の不燃性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、上述した本体容器10の底部11に配置された載置部材14と同様、グラスウール等からなるものを用いることが可能である。
また、固定部材27としては、線香Cの燃焼煙を複数の貫通孔24及び複数の排煙孔22に向けて効率よく導く観点から、図示例のような、不燃性材料からなる糸が格子状に組み合わされた、気体透過性を有するネット状の部材を用いることが好ましい。
【0045】
本実施形態の線香容器1によれば、上記のように、蓋体20の内部に、天板部21と所定の距離で離間した位置で、遮熱性を有する中板部23が設けられていることで、蓋体20の表面側が実質的に二重構造とされている。このような二重構造により、天板部21と中板部23との間に空気層28が確保されることで熱伝導性が低くなり、天板部21まで熱が伝わり難くなるため、蓋体20の表面温度が上昇するのを抑制できる効果が得られる。
【0046】
また、複数の排煙孔22と複数の貫通孔24との間を連通させる筒状の立壁部25を天板部21と中板部23との間に設けることで、燃焼状態の定常化を阻害することなく、燃焼時間の長大化や立ち消えが生じるのを防止できる効果が得られる(後述の実施例も参照)。このような効果が得られるメカニズムは、決して明らかではない。一方、本発明者等が鋭意実験検討を繰り返したところ、立壁部25が設けられることにより、先に説明したように、線香Cの燃焼で生じる排煙の上昇気流に伴い、外部からの燃焼用空気の取り入れと外部への排煙の両方の作用が得られ、燃焼効率が向上することで、上記効果が得られるのではないかと考えられる(後述の実施例も参照)。
【0047】
なお、本実施形態の線香容器1においては、蓋体20における胴部26の長さや固定部材27の位置等を調整することにより、線香Cと中板部23とが5mm以上30mm以下で離間する構成を採用することがより好ましい。線香Cと中板部23とが上記範囲で離間することで、線香Cの燃焼状態をより最適に定常化でき、燃焼時間の長大化や立ち消えが生じるのをより確実に防止できる。
また、上記の観点からは、線香Cと中板部23とが7mm以上20mm以下で離間するように、蓋体20における胴部26の長さや固定部材27の位置等を調整、決定することがより好ましい。
【0048】
[線香容器の使用方法(線香の保持及び燃焼手順)]
本実施形態の線香容器1に線香Cをセットし、この線香Cを燃焼させる手順について、上記同様、
図1、
図2A及び
図2Bを参照しながら以下に説明する。
【0049】
図1、
図2A及び
図2Bにおいては詳細な図示を省略しているが、まず、本体容器10に設けられた固定フック13と、蓋体20のフランジ部20Bとの係合を解除することにより、本体容器10に対して蓋体20が開閉自在な状態とする。
次いで、蓋体20を本体容器10から取り外すことにより、本体容器10の開口部10Aを開放することで載置部材14が露出した状態とする。そして、
図2Bに示すように(
図2Aも適宜参照)、載置部材14の上に、先端側が着火されて燃焼状態にある線香Cを載置する。
【0050】
次いで、本体容器10の開口部10Aを覆うように蓋体20を取り付けることにより、載置部材14上に載置された線香Cを、固定部材27と載置部材14とで挟持して固定する(
図2Bを参照)。この際、本体容器10の大径部10Bに、蓋体20のフランジ部20Bが完全に収容された状態とした後、本体容器10に設けられた固定フック13をフランジ部20Bに係合させる。これにより、線香Cを固定状態で燃焼させることができるので、線香容器1を平置きにして使用することのみならず、例えば、本体容器10に設けられた吊り下げフック16を所望の箇所に吊り下げた直立状態で使用するか、あるいは使用者が携行しながら使用することが可能となる。
【0051】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態の線香容器1によれば、まず、蓋体20における天板部21と離間した位置に中板部23を配置することで、それらの間に空気層28が確保されて熱伝導性が低くなるので、太巻きの線香Cを使用した場合でも、天板部21までは熱が伝わり難くなり、蓋体20の表面温度が上昇するのを抑制できる。さらに、天板部21と中板部23との間に、複数の排煙孔22と複数の貫通孔24との間を連通させる筒状の立壁部25を設けることで、本体容器10を蓋体20で覆いながら太巻きの線香Cを使用した場合においても、燃焼状態の定常化を阻害することなく、燃焼時間の長大化や立ち消えが生じるのを防止できる。
従って、使用者が蓋体20に直接触れた場合であっても、熱さを感じてしまうことが無く、且つ、安定した殺虫効果や忌避効果等が得られる。
【0052】
[本発明の変形例]
上記においては、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の線香容器は上記の実施形態によって限定されるものではなく、本発明の原理及び添付の特許請求の範囲の範囲を逸脱しない限り、種々の変更及び修正を施して実施することが可能である。
【0053】
例えば、上記の実施形態においては、線香容器1の平面視形状を、線香Cに合わせた円形状としているが、これには限定されず、線香容器としての性能を維持できる形状であれば、如何なる形状を採用してもよい。このような線香容器の平面視形状としては、デザイン性やサイズ等も勘案し、例えば、平面視矩形状や多角形状、あるいはキャラクターデザイン等を採用することも可能である。
【実施例0054】
以下、本発明の線香容器の実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明の線香容器は、以下の実施例で説明する仕様や条件によってその構成が限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
実施例1においては、以下に示す各条件で試験を行うことにより、蓋体における中板部の有無による、太巻きの線香を使用した場合の表面温度について確認試験を実施した。
【0056】
[1]実施例1で準備したサンプル
本実施例においては、
図1、
図2A及び
図2Bに示すような外形状を有する、本体容器及び蓋体を備えた線香容器のサンプルを、蓋体における中板部の有無、並びに、天板部と中板部との距離を適宜変更して各々準備した。
本実施例で用いた、本発明例1~3及び比較例1,2のサンプルの各々における、天板部と中板部との間の距離(蓋体)を以下に示す(中板部の有無も含む)。
(1)本発明例1:1.8mm
(2)本発明例2:3mm
(3)本発明例3:4mm
(4)比較例1:中板部無し
(5)比較例2:0mm(天板部と中板部とが密着)
【0057】
なお、上記の各サンプルにおいては、本体容器における容器部分、並びに蓋体における固定部材を除いた部分は、SPTEからなるものを用いた。
【0058】
[2]試験方法及び条件
上記仕様とされた本発明例1~3及び比較例1,2の線香容器のサンプルを用い、内部に収容した線香を燃焼させたときの、蓋体の天板部表面の無孔エリア(
図2A中に示す符号21aを参照)における最高到達温度を確認した。この際、線香として、市販の太巻き蚊取り線香である「アース極太虫よけ線香(アース製薬株式会社製:登録商標)」を用いた。
【0059】
また、蓋体の天板部表面の最高到達温度としては、上述した無孔エリアの表面に熱電対(データロガー)を固定し、線香の火点が無孔エリアに最も近接した際の温度を測定した。
【0060】
[3]試験結果
実施例1における試験結果の一覧を下記表1に示す。
【0061】
【0062】
表1に示した本発明例1~3のように、蓋体における天板部と離間するように中板部を設けた場合、具体的には、天板部と中板部とに1.8~4mmの隙間を確保して離間させた場合には、中板部を設けなかった比較例1に比べて、天板部表面の温度が平均で18℃程度、低下することが確認できた。
【0063】
一方、蓋体における天板部と中板部との間隔が0mm、即ち、これら天板部と中板部とを密着させて配置した比較例2においては、中板部を設けなかった比較例1に対する天板部表面の温度低下は、平均で6℃程度であった。
これにより、蓋体の天板部表面の温度を効果的に低下させるためには、天板部と中板部とを離間させることで一定の厚みを有する空気層を確保することが必要であることが明らかとなった。
【0064】
<実施例2>
実施例2においては、以下に示す各条件で試験を行うことにより、蓋体における天板部と中板部との間の立壁部の有無による燃焼時間への影響について確認試験を実施した。
【0065】
[1]実施例2で準備したサンプル
本実施例においては、実施例1と同様、
図1、
図2A及び
図2Bに示すような外形状を有する、本体容器を備えた線香容器のサンプルを、蓋体の有無、並びに、蓋体における中板部の有無を適宜変更して各々準備した。
本実施例で用いた、本発明例1、比較例3,及び参考例1のサンプルの各々の仕様を以下に示す。
(1)本発明例1:実施例1と同様(天板部と中板部との距離=1.8mm)
(2)比較例3:中板部無し;市販の線香容器である「アース渦巻香 線香皿(アース製薬株式会社製:登録商標)」の蓋体をそのまま使用。
(3)参考例1:蓋体を用いなかった点以外は実施例1と同様。
【0066】
[2]試験方法及び条件
上記仕様とされた本発明例1、比較例3及び参考例1の線香容器のサンプルを用い、内部に収容した線香を燃焼させたときの所定条件下における燃焼時間を、各々、n=3で確認した。
実施例2においても、線香として、実施例1と同様、市販の太巻き蚊取り線香である「アース極太虫よけ線香(アース製薬株式会社製:登録商標)」を用いた。
【0067】
実施例2においては、事前に線香の重量と水分含有率を測定した。この際、水分含有率は、市販の測定器(株式会社ケツト科学研究所製;機種名:WOOD MOISTURE TESTER MT-700)を用いて測定した。
次いで、温度及び湿度の制御が可能な試験室内において、線香に着火した後、線香容器の各サンプルに支持させた。
そして、線香の着火を確認した後、所定時間後に各々のサンプル内で燃焼させた線香を回収し、下記(a)式によって各々の燃焼時間を求めた。
燃焼時間=[試験終了時の燃焼経過時間]+[試験終了時の燃焼経過時間/(試験開始前の重量-試験終了時の重量)]×[試験終了時の重量] ・・・・・(a)
【0068】
[3]試験結果
実施例2における試験結果の一覧を下記表2に示す。
【0069】
【0070】
表2に示すように、本体容器を覆うように従来の構成の蓋体を取り付けた状態で線香を燃焼させた比較例3においては、蓋体を使用せずに線香を燃焼させた参考例1に対して燃焼時間が54分長くなった。即ち、比較例3においては、燃焼状態が最適な状態までには定常化しておらず、殺虫効果や忌避効果等にも若干の影響があるものと考えられる。
【0071】
一方、天板部と離間させて中板部を配置した本発明例1においては、蓋体を使用せずに線香を燃焼させた参考例1に対し、燃焼時間が24分ほど長くなるのに留まり、燃焼状態が定常化していると考えられる。上述したように、このような効果が得られるメカニズムは明らかではないが、本発明例1では、天板部と中板部との間に立壁部が設けられた蓋体を用いていることで、線香の燃焼で生じる排煙の上昇気流に伴う、外部からの燃焼用空気の取り入れと外部への排煙の両方の作用が得られるためではないかと考えられる。
【0072】
<結論>
上記のような実施例1の結果より、本発明の線香容器の構成を採用することで、太巻きの線香を使用した場合でも、蓋体の表面温度が上昇するのを抑制できることが確認できた。これにより、使用者が蓋体に直接触れた場合であっても、熱さを感じてしまうことが無いことが明らかとなった。
さらに、実施例2の結果より、本発明の線香容器の構成を採用することで、蓋体で覆いながら太巻きの線香を使用した場合でも、燃焼状態の定常化を阻害することがなく、燃焼時間の長大化や立ち消えが生じるのを防止できることが確認できた。これにより、安定した殺虫効果や忌避効果等が得られることが明らかとなった。
本発明の線香容器は、蓋体の表面温度が上昇するのを抑制できるとともに、燃焼状態を定常化させて燃焼時間の長大化を抑制することができ、安定した殺虫効果や忌避効果等が得られるものである。従って、本発明の線香容器は、例えば、一般的な平置きでの使用に加え、キャンプやハイキング等の屋外でのレジャーや、祭り等のイベント等に携行することで、使用者が蚊や害虫等に刺されたりすること等を防止する用途において非常に好適である。